JP2015117418A - アルミニウム材の電解研磨処理方法 - Google Patents

アルミニウム材の電解研磨処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光沢のある均一で優れた外観を有するアルミニウム材を工業的に容易に製造することができるアルミニウム材の電解研磨処理方法を提供する。【解決手段】アルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であって、電解研磨処理の前処理として陽極酸化処理を行う方法、電解研磨処理時に気泡拡散防止処理を行う方法、及び電解研磨処理の後処理として電解研磨皮膜の皮膜剥離処理を行う方法からなるアルミニウム材の電解研磨処理方法である。【選択図】なし

Description

この発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の電解研磨処理方法に係り、特に、光沢のある均一で優れた外観を有するアルミニウム材を製造する上で好適なアルミニウム材の電解研磨処理方法に関する。
アルミニウム材の電解研磨処理においては、その電解研磨処理時にアルミニウム材の電解反応に伴って大量の水素ガスが発生し、この水素ガスが電解液中で気泡となって被処理物であるアルミニウム材の表面に付着し、この付着した気泡がアルミニウム材の表面における電解反応を阻害し、結果として付着した部分が電解研磨後に点状欠陥となって顕在化し、電解研磨後のアルミニウム材の表面における光沢性や均一性等を損なう結果となる。
そこで、光沢性や均一性に優れた外観を有するアルミニウム材を得るためには、電解研磨処理中に被処理物であるアルミニウム材の表面に気泡が付着するのを防止すること、あるいは、付着した気泡を取り除くことが必要になり、例えば、アルミニウム材を振動させる振動方法(非特許文献1)や、アルミニウム材の搖動や振動羽根攪拌機により電解液を撹拌する電解液撹拌方法(非特許文献2)等の方法が提案されている。
しかしながら、これら非特許文献1及び2に記載された振動方法や電解液撹拌方法については、アルミニウム材が複雑な形状である場合や大面積を有する場合には、アルミニウム材の表面全体において均一に気泡の付着を完全に防止し、また、付着した気泡を完全に除去することは難しく、しかも、電解研磨処理が濃厚な酸を用いて行う処理であって、アルミニウム材を振動、あるいは、搖動させる装置や振動羽根攪拌機を耐酸性に優れた高価な材料で作る必要があり、設備の維持管理にも多大な労力と費用とを必要として産業的に好ましいものではない。
また、電解研磨処理が終了して通電を停止すると、溶解性の強い電解研磨液中で電解研磨後のアルミニウム材の表面に不均一な溶解が発生し、表面の外観や鏡面性が損なわれることから、電解研磨処理の際に生成した陽極酸化皮膜(以下、「電解研磨皮膜」と称する。)を意識的に残存させる場合がある。しかしながら、用途によっては電解研磨後のアルミニウム材の表面に残存する電解研磨皮膜を除去することが必要になる場合がある。
そこで、従来においても、電解研磨後のアルミニウム材の表面に残存する電解研磨皮膜を除去することが行われており、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、リン酸とクロム酸の混合水溶液、硫酸又は硝酸とフッ素化合物の水溶液等の剥離溶液中に電解研磨後のアルミニウム材を浸漬し、アルミニウム材の表面に残存した陽極酸化皮膜を溶解して除去する皮膜剥離処理が行われている(非特許文献3)。
しかしながら、リン酸とクロム酸の混合水溶液や硫酸又は硝酸とフッ素化合物の水溶液からなる剥離溶液を用いる皮膜剥離処理の方法は、電解研磨皮膜を選択的に溶解し除去することができるので優れた方法ではあるが、主成分であるクロム酸やフッ素化合物が環境衛生上の有害物質であって、現在では事実上使用困難であり、また、水酸化ナトリウム水溶液からなる剥離溶液を用いる皮膜剥離処理の方法は、水酸化ナトリウム水溶液が素地のアルミニウム又はアルミニウム合金を溶解するので、表面の電解研磨皮膜の溶解に伴って不可避的に素地も溶解され、結果として電解研磨処理により発現させた光沢をある程度は犠牲にすることになる。
1980年10月17日軽金属出版株式会社発行「アルミニウム表面技術便覧」106頁 近畿アルミニウム表面処理研究会会誌No.188, ’97, 6-10頁 1969年11月1日株式会社軽金属通信社発行「アルミニウム百科事典」1017頁
そこで、本発明者らは、上述したアルミニウム材の電解研磨処理に伴って生じる種々の問題を解決し、光沢のある均一で優れた外観を有するアルミニウム材を工業的に容易に製造することができるアルミニウム材の電解研磨処理方法について鋭意検討を行い、アルミニウム材の電解研磨処理の開始時や処理中にアルミニウム材の化学的溶解に伴って発生する気泡付着に起因する点状欠陥の問題や、アルミニウム材の電解研磨後に行われるアルミニウム材の表面に残存した電解研磨皮膜の溶解除去に伴う問題について、以下のような検討を行って以下のような問題を解決できる方法を開発した。
先ず、アルミニウム材の電解研磨処理の開始時や処理中における気泡付着に起因する点状欠陥の問題について、以下のような検討と開発を行った。
すなわち、本発明者らが電解研磨処理時に発生する点状欠陥の生成機構を詳細に検討した結果、電解研磨後のアルミニウム材の表面に発生する点状欠陥は、これまで考えられていたようなピット(窪み)ではなくて突起であることを突き止め、また、このような点状欠陥の原因となる水素ガスは、単に通電状態の電解研磨の処理中に電解反応の結果として発生するだけでなく、電解研磨処理前にアルミニウム材を無通電状態で電解処理液中に浸漬する際に、アルミニウム材が電解処理液と接触して化学的溶解反応を起こし、この際に発生した水素ガスが気泡となってアルミニウム材の表面に付着し、この付着した気泡も後の電解研磨処理時に電解反応を阻害し、点状欠陥の原因となることを突き止めた。
このため、従来の被処理物であるアルミニウム材を振動させる振動方法やアルミニウム材の搖動又は振動羽根攪拌機による電解液撹拌方法では、何らの対策も採らずに静置した場合と比較すれば、アルミニウム材の電解研磨処理時における気泡付着に起因する点状欠陥の問題を大幅に改善することはできるが、これら振動方法や電解液撹拌方法には振動、搖動、あるいは撹拌の強さや大きさを調整する上で多くの経験と高度の熟練が必要であり、しかも、電解研磨処理時当初の無通電状態でアルミニウム材を電解処理液中に浸漬する際に発生する気泡の付着を防止することができないこと、また、一旦アルミニウム材の表面に付着した気泡を電解研磨処理時の振動方法や電解液撹拌方法で完全に取り除くことは困難であること、更には、特に電解研磨後のアルミニウム材の表面に対して僅かな欠陥も許容されないような鏡面として光沢のある均一で優れた高度の外観には対応できないことを突き止めた。
そこで、本発明者らは、アルミニウム材の電解研磨処理の際には、アルミニウム材に対して極めて強い溶解性を有する電解処理液中において、アルミニウム材の表面では電解研磨皮膜が形成される電解反応と電解処理液中に金属アルミニウムが化学的に溶解される溶解反応のいずれかが起っていること、及び、電解研磨処理の初期には、溶解性の強い電解処理液中で電解反応を行うために、金属アルミニウムの化学的溶解に打ち勝って速やかに電解研磨皮膜が形成されるように一時的に大電流を流す必要があることに着目し、電解研磨処理の前処理として所定の条件で陽極酸化処理を行い、アルミニウム材の表面に予め形成された陽極酸化皮膜により電解研磨処理の初期にアルミニウム材の表面の化学的溶解による水素ガス発生を抑制すると共に、この陽極酸化皮膜を電解研磨処理の初期に必要とされる電解研磨皮膜として利用する方法を開発し、本発明を完成した。
また、アルミニウム材の電解研磨処理の開始時や処理中における気泡付着に起因する点状欠陥の問題について、以下のような検討と開発を行った。
すなわち、本発明者らは、アルミニウム材の電解研磨処理の処理中における気泡の発生及び付着がどのようにして発生するかについて更に検討を行い、通電開始後の電解研磨処理の処理中においては、陽極となるアルミニウム材側ではほとんど水素ガスの発生が起こらず、水素ガスの発生は主としてこのアルミニウム材の対極となる陰極側で起こることを突き止め、また、この陰極側で発生した水素ガスの気泡が陽極であるアルミニウム材側に拡散し、この拡散した気泡がアルミニウム材の表面に付着し、点状欠陥の問題を引き起こすことを突き止めた。
そこで、本発明者らは、この陰極側で発生した水素ガスの気泡が陽極であるアルミニウム材側に拡散するのを防止する方法について種々検討し、電解処理層内に発生する気泡に対して非透過性(気泡非透過性)であると共に電解処理液に対して透過性であって電極間の導電性を確保できる液透過性の材料で形成された陰極仕切室を形成し、この陰極仕切室内に陰極を配置することにより、陰極で発生した水素ガスの気泡が陽極のアルミニウム材側に拡散するのを効果的に防止できることを突き止め、本発明を完成した。
更に、アルミニウム材の電解研磨後に行われるアルミニウム材の表面に残存した電解研磨皮膜の溶解除去に伴う問題について、以下のような検討と開発を行った。
すなわち、アルミニウム材の電解研磨処理の際には、処理終了後にアルミニウム材をそのまま電解処理液中に浸漬しておくとこの電解処理液によりアルミニウム材の表面が化学的に溶解され、この際に不均一な化学的溶解が生じて局部的な凸部が発生し、結果として点状欠陥の原因になることから、処理終了後には直ちに電解処理液中から電解研磨後のアルミニウム材を取り出す必要がある。しかるに、電解研磨処理が多孔質型の電解研磨皮膜を形成しながら高速でこの電解研磨皮膜を溶解する方法であることから、電解処理液はアルミニウム材に対して強い溶解性を有し、通電を停止すると直ちにアルミニウム材の表面の化学的溶解が始まるので、電解研磨処理時の電解反応や化学的溶解反応を良好な状態に保って優れた鏡面性を得つつ、電解研磨処理の終了直後の不均一な化学的溶解を防止するのは困難である。
そこで、電解研磨後の化学的溶解に起因する問題を解決するための方法として、電解研磨後のアルミニウム材の表面に電解研磨皮膜を意図的に残存させ、電解研磨後にこの表面に残存した電解研磨皮膜を溶解して除去することが行われるが、上述したように、この電解研磨後に行われる電解研磨皮膜の溶解除去には問題がある。
そこで、本発明者らは、電解研磨後のアルミニウム材の表面における電解研磨皮膜の溶解除去について更なる検討を重ね、電解研磨皮膜(酸化物)の溶解が電荷の移動を伴わない化学的溶解反応であり、これに対して、素地(金属)の溶解が電荷の移動を伴う電気化学反応であることに着目し、電気化学反応を抑制しながら化学的溶解反応を促進するような選択的溶解性に優れた後処理液を開発すべく検討し、硫酸とアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液に到達し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、光沢のある均一で優れた外観を有するアルミニウム材を工業的に容易に製造することができるアルミニウム材の電解研磨処理方法を提供することにある。
すなわち、本願は以下の第1の発明から第4の発明を提供するものであり、これら第1の発明から第4の発明までをまとめて本発明ということがある。
本願の第1の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、前記電解研磨処理の前処理として、前記電解処理槽とは別に設けられた前処理槽内で、前記電解処理液よりもアルミニウム材に対する溶解性の弱い多塩基酸水溶液からなる前処理液を用い、かつ、前記電解研磨処理の際の電解電圧よりも低い電圧で前記アルミニウム材を陽極酸化し、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
また、本願の第2の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、前記電解処理槽内には、前記アルミニウム材の対極となる陰極で発生する水素ガスの気泡に対して気泡非透過性であると共に液透過性の材料で形成され、前記陰極をアルミニウム材から仕切ると共に、前記水素ガスを槽外に排出する排気口を有する陰極仕切室を形成し、アルミニウム材の電解研磨処理時には、前記陰極仕切室内の陰極で発生した前記水素ガスの気泡がアルミニウム材側に拡散するのを防止すると共に、この水素ガスを前記排気口から槽外に排出させる気泡拡散防止処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
更に、本願の第3の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、前記電解研磨処理の後処理として、硫酸及びアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液からなる後処理液中に電解研磨後のアルミニウム材を浸漬し、このアルミニウム材の表面に存在する電解研磨皮膜を溶解させて除去する皮膜剥離処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
そして、本願の第4の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、前記第1の発明で行われる前処理としての陽極酸化処理、前記第2の発明で行われる電解研磨処理時の気泡拡散防止処理、及び前記第3の発明で行われる後処理としての電解研磨皮膜の皮膜剥離処理から選ばれた2種又は3種の処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
本発明において、電解研磨処理の対象となるアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材については、特に制限されるものではなく、電解研磨処理により鏡面化が求められる種々のアルミニウム材が対象になるものであり、例えば、Al-Cu系の2000系材料、Al-Mg系の5000系材料、Al-Mg-Si系の6000系材料が挙げられる。これらのうち、特にアルミニウム純度(Al純度)が高くて高度の鏡面化が求められるアルミニウム材としては、例えば純度99.99%以上の高純度アルミニウム材料や、純アルミニウム系の1000系材料(例えば、A1050材)等を例示することができる。
また、このアルミニウム材については、その表面が予めバフ研磨、切削加工、あるいは化学研磨等の手段で事前の予備的な鏡面処理がされていてもよく、本発明はこのように表面が事前の予備的な鏡面処理を施されたアルミニウム材についても効果的である。
また、本発明において、電解処理槽内の電解処理液中でアルミニウム材を電解研磨処理する際の処理条件については、従前のアルミニウム材の電解研磨処理の場合と特に変わるところはなく、これまでに電解処理液の組成、電解電圧、処理温度、処理時間、電解研磨処理開始時の突入電流、その他の諸条件において、これまでに行われてきた電解研磨処理の処理条件をそのまま採用することができる。ここで、電解処理液としては、例えば、リン酸‐硫酸(体積比7:3)の組成を有するものや、リン酸‐硫酸(体積比1:1)の組成を有するもの等を例示することができる。
本願の第1の発明は、前記電解研磨処理の前処理として、この電解研磨処理で用いる電解処理槽とは別に設けられた前処理槽内で、前記電解処理液よりもアルミニウム材に対する溶解性の弱い多塩基酸水溶液からなる前処理液を用い、かつ、前記電解研磨処理の際の電解電圧よりも低い電圧で前記アルミニウム材を陽極酸化し、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理を行うアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
ここで、前処理としての陽極酸化処理において重要なことは、電解処理槽とは別に設けられた前処理槽内で陽極酸化処理を行うことであり、また、陽極酸化処理においては前記電解研磨処理の際の電解処理液よりもアルミニウム材に対する溶解性の弱い多塩基酸水溶液からなる前処理液を用いると共に、前記電解研磨処理の際の電解電圧よりも低い電圧でアルミニウム材を陽極酸化することであり、これによって、前処理時にはアルミニウム材の表面に容易にかつ所望の陽極酸化皮膜を形成できる。しかも、前処理としてこのような陽極酸化処理を採用することにより、電解研磨処理の際の電源仕様をそのまま利用することができるので、専用の電源を別途用意する必要が無く、また、電解研磨処理の初期に大電流を流してアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成させる必要が無くなるので、電解研磨処理の際の電源についてもその容量を低減させることが可能になり、比較的小さくて安価な電源装置を採用することができる。
また、この前処理としての陽極酸化処理で用いられる電解研磨処理の際の電解処理液よりもアルミニウム材に対する溶解性の弱い多塩基酸水溶液からなる前処理液については、具体的には、例えば、硫酸濃度15質量%の組成を有する硫酸水溶液、シュウ酸濃度2質量%の組成を有するシュウ酸水溶液等が挙げられ、電解処理液とこの前処理液とが同じ酸である場合、例えば酸が硫酸である場合には、前処理液としては電解処理液よりも硫酸濃度の低い、あるいは、pH値の高い硫酸水溶液が用いられる。また、前処理としての陽極酸化処理の処理条件については、通常の陽極酸化処理の処理条件と変わるところがない。
更に、この前処理としての陽極酸化処理おいてアルミニウム材の表面に形成される陽極酸化皮膜の膜厚については、一般の陽極酸化処理で形成される膜厚でよく、特に制限はなく、通常は数十nm〜数十μm程度である。
また、本願の第2の発明は、前記電解処理槽内には、アルミニウム材の対極となる陰極で発生する水素ガスの気泡に対して気泡非透過性であると共に液透過性の材料で形成され、前記陰極をアルミニウム材から仕切ると共に、前記水素ガスを槽外に排出する排気口を有する陰極仕切室を形成し、アルミニウム材の電解研磨処理時には、前記陰極仕切室内の陰極で発生した水素ガスの気泡がアルミニウム材側に拡散するのを防止すると共に、この水素ガスを前記排気口から槽外に排出させる気泡拡散防止処理を行うアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
ここで、前記陰極を陽極のアルミニウム材から仕切る陰極仕切室については、少なくとも気泡非透過性及び液透過性の材料で形成されていて、陰極とアルミニウム材との間を仕切る仕切壁と水素ガスの排気口とを有し、また、この陰極仕切室内で発生した水素ガスを排気口から槽外に排出できればよく、そして、この陰極仕切室を形成する材料としては、例えばテフロン(登録商標)製の多孔質フィルム、例えばガラス焼結フィルタやガラス繊維等のガラスで作られた濾材等を例示することができる。
更に、本願の第3の発明は、前記電解研磨処理の後処理として、硫酸及びアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液からなる後処理液中に電解研磨後のアルミニウム材を浸漬し、このアルミニウム材の表面に存在する電解研磨皮膜を溶解させて除去する皮膜剥離処理を行うアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
この後処理としての皮膜剥離処理で使用される後処理液については、硫酸及びアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液が用いられ、この硫酸酸性溶液には少なくとも水溶液中に硫酸イオン及び/又は亜硫酸イオンとアミン類由来のアンモニウムイオンとが含まれており、そのpHが通常2以下であり、好ましくは1.5以下である硫酸酸性溶液であるのがよく、この硫酸酸性溶液のpH値が2を超えると皮膜の溶解が殆ど進まなくなる恐れがある。このような後処理液としては、アミン類の硫酸塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、硫酸とアミン類とを水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、硫酸、アミン類、及びアミン類の硫酸塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、又は、アミド硫酸(スルファミン酸: sulfamic acid)又はそのアンモニウム塩等のアミド硫酸塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるのがよく、より好ましくはアミド硫酸の水溶液であるのがよい。更に、後処理液としての硫酸酸性溶液を調製するためのアミン類としては、例えば、アンモニアや、メチルアミンやプロピルアミン等のアルキルアミン等を例示することができる。
この第3の発明で行われる皮膜剥離処理の具体例としては、例えば後処理液として3質量%-スルファミン酸水溶液を用いた場合、70℃及び10分間の処理条件で浸漬する方法等が例示される。
そして、本願の第4の発明は、上述した第1の発明に係る前処理としての陽極酸化処理、第2の発明に係る電解研磨処理時の気泡拡散防止処理、及び第3の発明に係る後処理としての電解研磨皮膜の皮膜剥離処理から選ばれた2種又は3種の処理を行うアルミニウム材の電解研磨処理方法である。
この第4の発明において、2種の処理を組み合わせる場合には、上述した第1の発明、第2の発明、及び第3の発明に係る処理をどのように組み合わせてもよく、アルミニウム材の電解研磨処理において、例えば、第1の発明の陽極酸化処理と第2の発明の気泡拡散防止処理とを組み合わせてもよく、また、第1の発明の陽極酸化処理と第3の発明の皮膜剥離処理とを組み合わせてもよく、更に、第2の発明の気泡拡散防止処理と第3の発明の皮膜剥離処理とを組み合わせてもよく、また、3種の処理を組み合わせる場合には、第1の発明の陽極酸化処理と、第2の発明の気泡拡散防止処理と、第3の発明の皮膜剥離処理とを組み合わせてアルミニウム材の電解研磨処理を実施する。
これら2種又は3種の処理を組み合わせてアルミニウム材の電解研磨処理を実施した場合には、前処理、電解研磨処理、及び後処理の各工程において各処理で得られる効果をそれぞれ達成することができるので、電解研磨処理の対象であるアルミニウム材に対して求められる光沢性、均一性等の外観に対する要求に応じて、これら2種又は3種の処理を組み合わせて実施するのがよい。
第1の発明によれば、アルミニウム材の電解研磨処理の際、特にアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬する際に、アルミニウム材の表面における化学的溶解反応による水素ガスの発生を抑制することができ、気泡付着に起因する点状欠陥を顕著に低減でき、電解研磨後のアルミニウム材において光沢性及び均一性に優れた外観を達成することができるほか、電解研磨処理時の初期に大電流を流す必要がなくなり、電源設備の小型化も達成することができる。
また、第2の発明によれば、アルミニウム材の対極である陰極で発生する水素ガスが拡散してアルミニウム材の表面に気泡を形成することがなくなるので、気泡付着による点状欠陥を防止することができ、電解研磨後のアルミニウム材において光沢性及び均一性に優れた外観を達成することができる。
更に、第3の発明によれば、皮膜剥離処理により電解研磨後のアルミニウム材に残存した電解研磨皮膜を選択的に溶解して除去することができ、電解研磨後のアルミニウム材において光沢性及び均一性に優れた外観を達成することができる。
更にまた、第4の発明によれば、上記の第1の発明、第2の発明、及び第3の発明を組み合わせて処理することにより、電解研磨後のアルミニウム材において光沢性及び均一性に優れた外観を達成することができる。
図1は、第1の発明の概念を説明するための説明図であり、(a)は前処理としての陽極酸化処理工程を示し、また、(b)は電解研磨処理工程を示す。
図2は、第2の発明の概念を説明するための説明図であり、(A)は従来の電解研磨処理工程を示し、また、(B)は第2の発明の電解研磨処理工程を示す。
以下、第1の発明について、図1に示す発明の概念図に基づいて実施の形態を説明し、また、第2の発明について、図2に示す発明の概念図に基づいて実施の形態を説明し、更に、第3の発明について、好適な実施の形態を説明する。
図1は、第1の発明に係るアルミニウム材の電解研磨処理方法の概念を説明するための説明図であり、前処理としての陽極酸化処理工程(a)と電解研磨処理工程(b)とからなる処理工程が示されている。
この図1において、陽極酸化処理工程(a)では、電解研磨処理工程(b)の電解処理槽1とは別に設けられた前処理槽2内に、前処理として実施する陽極酸化処理のための前処理液3が装填されており、被処理物であるアルミニウム材4を陽極とし、このアルミニウム材4の対極である陰極5との間に直流電圧を印加し、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜6が形成される。
次に、図1の電解研磨処理工程(b)においては、電解処理槽1内に電解処理液7が装填され、次いで、この電解処理液7内に前処理の陽極酸化処理工程(a)において表面に陽極酸化皮膜6が形成された被処理物のアルミニウム材4が浸漬され、その後、このアルミニウム材4を陽極としてアルミニウム材4の対極である陰極8との間に直流電圧が印加され、アルミニウム材4の表面に電解研磨処理が施される。
この電解研磨処理工程(b)において、電解処理液7内へのアルミニウム材4の浸漬時(S1)には、被処理物のアルミニウム材4が無通電状態で電解処理液7内に浸漬されることになるが、このアルミニウム材4の表面には陽極酸化皮膜6が形成されているので、無通電状態の浸漬時(S1)にアルミニウム材4の金属面が直接に電解処理液7と接触することがなく、また、この電解処理液7と直接に接触するアルミニウム材4表面の陽極酸化皮膜6は、電解処理液7中に徐々に溶解し、その際に水素ガスを発生することもない。
また、この電解研磨処理工程(b)において、陽極のアルミニウム材4と陰極8との間に直流電圧が印加されて電解研磨処理が開始されると、このアルミニウム材4の電解処理時(S2)には、アルミニウム材4表面の陽極酸化皮膜6は電解処理液7中に徐々に溶解して消失し、また、アルミニウム材4の表面では電解研磨皮膜9の生成と金属アルミニウムの化学的溶解とが起り、結果として陽極酸化皮膜6が徐々に溶解してなくなり、また、アルミニウム材4の表面が電解研磨されることになる。
このようにして電解研磨処理が終了した後には、通電を停止し、電解研磨後のアルミニウム材4を電解処理槽1から直ちに引き上げ、純水で洗浄し、風乾させて電解研磨後のアルミニウム材とする。
ここで、図1に示すように、電解研磨処理の通電終了時(S3)に電解研磨後のアルミニウム材4の表面に電解研磨皮膜9を意識的に残存させ、その後にこの残存させた電解研磨皮膜9を除去する場合には、引き続き第3の発明を実施することになる。なお、以下に説明する第3の発明は、電解研磨処理で生成したアルミニウム材表面の電解研磨皮膜を選択的に溶解して除去する上で効果的な方法であることから、第1の発明に引き続いて実施される場合に限られるものではなく、従来の電解研磨処理に引き続いて実施してもよいことは勿論である。
この第3の発明においては、電解研磨処理の終了時に電解研磨液から引き上げられた電解研磨後のアルミニウム材を硫酸及びアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液からなる後処理液に浸漬し、電解研磨後のアルミニウム材の表面に残存した電解研磨皮膜を選択的に溶解して除去する皮膜剥離処理が行われる。
この皮膜剥離処理が終了した後には、電解研磨後のアルミニウム材を後処理槽から引き上げ、直ちに純水で洗浄し風乾させて製品の電解研磨後のアルミニウム材とする。
次に、図2は、第2の発明に係るアルミニウム材の電解研磨処理方法の概念を説明するための説明図であり、図2(A)は従来の電解処理槽を用いた電解研磨処理工程を示す説明図であり、また、図2(B)は第2の発明に係る電解処理槽を用いた電解研磨処理工程を示す説明図である。
従来の電解処理槽1を示す図2(A)において、電解処理槽1には電解処理液7が装填されており、被処理物のアルミニウム材4が浸漬され、その後、このアルミニウム材4を陽極としてアルミニウム材4の対極である陰極8との間に直流電圧が印加され、アルミニウム材4の表面に電解研磨処理が施される。そして、この従来の電解処理槽1を用いた電解研磨処理においては、その電解研磨処理中、陰極8側で水素ガスの気泡10が発生し、電解処理液7中に拡散し、その多くが電解処理液7の液面から大気中に飛散するが、その一部は陽極のアルミニウム材4側へと拡散し、このアルミニウム材4の表面に付着し、電解研磨後のアルミニウム材の表面に点状欠陥を発生させる原因になる。
これに対して、第2の発明においては、図2(B)に示すように、電解処理槽1内には、アルミニウム材4の対極となる陰極8で発生する水素ガスの気泡10に対して気泡非透過性であると共に液透過性の材料で形成され、この陰極8をアルミニウム材4から仕切ると共に、発生した気泡10を槽外に排出する排気口12を有する陰極仕切室11が形成されており、アルミニウム材4の電解研磨処理時には、この陰極仕切室11内の陰極8で発生した気泡10がアルミニウム材4側に拡散するのを防止すると共に、この気泡10を排気口12から槽外に排出させるようになっており、この気泡拡散防止処理によって電解研磨処理中に陰極8で発生した水素ガスの気泡10がアルミニウム材4の表面に付着するのを防止することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のアルミニウム材の電解研磨方法を説明する。
〔実施例1〜3〕
アルミニウム材としてAl純度99.99質量%の板材を用い、この板材から50mm×50mm×10mmの大きさのアルミ片を切り出し、表1に示す前処理液を用い、表1に示す処理条件(電圧、電気量及び温度)で前処理としての陽極酸化処理を行い、水洗し乾燥して実施例1〜3の前処理済アルミ片を得た。
このようにして得られた各実施例及び比較例の前処理済アルミ片について、表1に示す電解処理液を用い、表1に示す処理条件(温度、電圧、時間、及び突入電流)で電解研磨処理を行い、直ちに水洗し乾燥させて実施例1〜3の電解研磨後のアルミ片(試験片)を得た。
〔比較例1〕
上記の実施例1〜3で用いたものと同じアルミ片を使用し、前処理としての陽極酸化処理を行うことなく、表1に示す電解処理液を用い、表1に示す処理条件(温度、電圧、時間、及び突入電流)で電解研磨処理を行い、直ちに水洗し乾燥させて比較例1の電解研磨後のアルミ片(試験片)を得た。
〔処理中気泡付着抑止性の評価〕
上記実施例1〜3及び比較例1の電解研磨処理中、ガラス製処理槽外側から目視でアルミ片表面を観察して各実施例及び比較例のアルミ片の表面に付着した水素ガスの気泡を調べ、○:気泡付着なし、△:付着気泡2個以下(1cm2当り)、及び×:付着気泡3個以上(1cm2当り)の基準で電解研磨処理中における気泡付着の抑止効果(処理中気泡付着抑止性)を評価した。
結果を表1に示す。
〔外観観察の評価〕
また、上記実施例1〜3及び比較例1で得られた各試験片について、目視により以下の外観観察を行い、鏡面光沢性、点状欠陥、干渉色有無を調べて評価した。
鏡面光沢性については、目視観察でサンプルに写り込む物体の見え方が、○:歪みがなくて明瞭に写り込むもの、△:明瞭に写り込むが、一部に歪みが生じているもの、及び×:歪みがひどくて写り込まないもの、の基準で電解研磨処理中における気泡付着の程度を評価した。
また、点状欠陥については、各試験片の表面を蛍光灯下で目視により観察し、視認された点状欠陥の個数を数え、○:0個/cm2、△:1個/cm2以上3個/cm2未満、及び×:3個/cm2以上の基準で評価した。
干渉色の有無については、蛍光灯下で各試験片を70°傾けてその表面を目視により観察し、電解研磨皮膜による干渉色を確認し、○:干渉色が全く見えないもの、△:試料の一部に干渉色が見えたもの、及び×:試料の全体に干渉模様が見えたもの、の基準で評価した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2015117418
〔実施例4〜5〕
水素ガスに対して気泡非透過性であると共に液透過性の材料であるテフロン(登録商標)製多孔質フィルタ(実施例4)又はガラス繊維製フィルタ(実施例5)を使用し、電解研磨処理のための槽内に、陰極を陽極(アルミニウム材)から仕切ると共に、電解研磨処理中に発生する水素ガスの気泡を窓外に排出するための排気口を有する陰極仕切室を形成し、電解処理槽を構成した。
また、アルミニウム材としては、上記実施例1〜3で用いたものと同じAl純度99.99質量%のアルミ片を用いた。
次に、この電解処理槽内に表2に示す電解処理液(硫酸-リン酸の質量比1:5の溶液)を仕込み、表2に示す処理条件(温度、電圧、時間、及び突入電流)で陰極仕切室による気泡拡散防止処理を行いながら上記アルミ片の電解研磨処理を行い、直ちに水洗し乾燥させて実施例4〜5の電解研磨後のアルミ片(試験片)を得た。
得られた実施例4〜5の試験片について、上記実施例1〜3の場合と同様にして処理中気泡付着抑止性、鏡面光沢性、点状欠陥、及び干渉色有無を調べて評価した。
これらの結果を、気泡拡散防止処理無しの上記比較例1と共に、表2に示す。
Figure 2015117418
〔実施例6〜7及び比較例2〜3〕
上記の比較例1と同様にして電解研磨処理を行った後、表3に示す後処理液を用い、後処理として表3に示す条件で後処理液中に浸漬して電解研磨皮膜を剥がす皮膜剥離処理を行い、実施例6〜7及び比較例2〜3の電解研磨後のアルミ片(試験片)を得た。
得られた実施例6〜7及び比較例2〜3の試験片について、上記実施例1〜3の場合と同様にして処理中気泡付着抑止性、鏡面光沢性、点状欠陥、及び干渉色有無を調べて評価した。
これらの結果を表3に示す。
Figure 2015117418
〔実施例8〜11〕
アルミニウム材として上記実施例1〜3で用いたものと同じAl純度99.99質量%のアルミ片を用い、表4に示すように、実施例1の前処理(陽極酸化処理)、実施例4の気泡拡散防止処理、及び/又は、実施例6の後処理(皮膜剥離処理)を実施し、実施例8〜11の電解研磨後のアルミ片(試験片)を得た。
得られた実施例8〜11の試験片について、上記実施例1〜3の場合と同様にして処理中気泡付着抑止性、鏡面光沢性、点状欠陥、及び干渉色有無を調べて評価した。また、これらの評価項目において、全ての項目で良好な場合(干渉色がなく、広域に亘って欠陥が認められない鏡面光沢を有するもの)を◎とし、何れか2又は3の項目で良好な場合を○とし、総合評価を行った。
これらの結果を表4に示す。
Figure 2015117418
a…陽極酸化処理工程、b…電解研磨処理工程、S1…電解研磨処理の無通電状態の浸漬時、S2…電解研磨処理の電解処理時、S3…電解研磨処理の通電終了時、1…電解処理槽、2…前処理槽、3…前処理液、4…アルミニウム材(被処理物)、5,8…陰極、6…陽極酸化皮膜、7…電解処理液、9…電解研磨皮膜、10…水素ガスの気泡、11…陰極仕切室、12…排気口。

Claims (6)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、
    前記電解研磨処理の前処理として、前記電解処理槽とは別に設けられた前処理槽内で、前記電解処理液よりもアルミニウム材に対する溶解性の弱い多塩基酸水溶液からなる前処理液を用い、かつ、前記電解研磨処理の際の電解電圧よりも低い電圧で前記アルミニウム材を陽極酸化し、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法。
  2. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、
    前記電解処理槽内には、前記アルミニウム材の対極となる陰極で発生する水素ガスの気泡に対して気泡非透過性であると共に液透過性の材料で形成され、前記陰極をアルミニウム材から仕切ると共に、前記水素ガスを槽外に排出する排気口を有する陰極仕切室を形成し、アルミニウム材の電解研磨処理時には、前記陰極仕切室内の陰極で発生した水素ガスの気泡がアルミニウム材側に拡散するのを防止すると共に、この水素ガスを前記排気口から槽外に排出させる気泡拡散防止処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法。
  3. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、
    前記電解研磨処理の後処理として、硫酸及びアミン類を含むpH2以下の硫酸酸性溶液からなる後処理液中に電解研磨後のアルミニウム材を浸漬し、このアルミニウム材の表面に存在する電解研磨皮膜を溶解させて除去する皮膜剥離処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法。
  4. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材を電解処理槽内の電解処理液中に浸漬し、アルミニウム材を陽極として電解電圧を印加し、アルミニウム材の表面を電解研磨処理する電解研磨方法であり、
    前記請求項1に記載された前処理としての陽極酸化処理、前記請求項2に記載された電解研磨処理時の気泡拡散防止処理、及び前記請求項3に記載された後処理としての電解研磨皮膜の皮膜剥離処理から選ばれた2種又は3種の処理を行うことを特徴とするアルミニウム材の電解研磨処理方法。
  5. 前記後処理液が、アミン類の硫酸塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、硫酸とアミン類とを水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、硫酸、アミン類、及びアミン類の硫酸塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液であるか、又は、アミド硫酸又はそのアンモニウム塩を水に溶解して得られた硫酸酸性溶液である請求項3又は4に記載のアルミニウム材の電解研磨処理方法。
  6. 前記後処理液として用いる硫酸酸性溶液がアミド硫酸の水溶液である請求項4に記載のアルミニウム材の電解研磨処理方法。
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