以下、本発明の実施形態に係る複合機10について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(前面)から視て左右方向9が定義される。
[複合機10の全体構成]
図1に示されるように、複合機10は、概ね直方体に形成されており、インクジェット記録方式で記録用紙Sなどのシートに画像を記録するプリンタ部11を備えている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。
プリンタ部11は、前面に開口13が形成された筐体14を有している。また、各種サイズの記録用紙Sを収容可能な給送トレイ20及び排出トレイ21が、開口13から前後方向8に挿抜可能である。筐体14の底面が、複合機10が設置される載置面に当接する。
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ20から記録用紙Sを給送する給送部15、記録用紙Sに画像を記録する記録部24、第1搬送ローラ対59、及び第2搬送ローラ対180などを備えている。
図1に示されるように、プリンタ部11の上方には、スキャナ部12が設けられている。スキャナ部12の筐体16の前後方向8及び左右方向9の寸法は、プリンタ部11の筐体14と同じである。したがって、プリンタ部11の筐体14及びスキャナ部12の筐体16が一体となって、複合機10の概ね直方体形状の外形を形成している。スキャナ部12は、フラットベッドスキャナである。なお、フラットベッドスキャナの構造は公知であるので、ここでは詳細な説明が省略される。また、スキャナ部12には、複数枚の原稿を1枚ずつ分離して搬送する自動原稿搬送装置(ADF)が設けられていてもよい。
[プリンタ部11]
以下、プリンタ部11の詳細な構造が説明される。プリンタ部11は画像記録装置の一例である。
[給送トレイ20]
図1及び図2に示される給送トレイ20は、前後方向8及び左右方向9の長さが上下方向7の長さよりも長い外形であって、上面が開放された箱型の形状を有している。給送トレイ20の上面前側には、排出トレイ21が設けられている。給送トレイ20は、例えば日本工業規格によるA4サイズから写真記録に用いられるL版などの大小様々なサイズの記録用紙Sを支持面で支持することにより記録用紙Sを収容可能である。給送トレイ20は、筐体14の開口13に通ずる内部空間に着脱自在に装着される。この給送トレイ20は、開口13を通じて筐体14に対して前後方向8に沿って進退可能である。
[給送部15]
図2に示されるように、給送部15は、給送ローラ25、給送アーム26、駆動伝達機構27及び分離パッド181を備えている。給送部15は、給送トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部に回転可能に軸支されている。給送アーム26は、基端部に設けられた回動軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20の支持面に対して当接及び離間が可能である。したがって、記録用紙Sを収容して給送トレイ20が筐体14内に装着されたとき、給送ローラ25は、給送トレイ20に収容された記録用紙Sに当接可能である。記録用紙Sを収容していない給送トレイ20が筐体14内に装着されたとき、給送ローラ25が給送トレイ20の支持面に当接する位置には分離パッド181が設けられている。分離パッド181は、記録用紙Sに対して、給送トレイ20の支持面の摩擦係数より大きな摩擦係数を有する材料で形成されている。
給送ローラ25には、モータ(不図示)の駆動力が駆動伝達機構27を通じて伝達される。駆動伝達機構27は、回動軸28に伝達された回転を無端ベルトにより給送ローラ25の軸へ伝達する。給送ローラ25が、給送トレイ20の支持面上に支持された記録用紙Sのうち一番上側の記録用紙Sに当接された状態で回転することにより、当該記録用紙Sが搬送経路65へ向けて給送される。記録用紙Sが搬送経路65へ向けて給送されるとき、記録用紙Sの先端が、給送トレイ20の前後方向8の後側に設けられた分離部材197と当接する。その結果、一番上側の記録用紙Sのみが下側の記録用紙Sから分離されて搬送される。そして、一番上側の記録用紙Sよりも下側の記録用紙Sは、一番上側の記録用紙Sに引き摺られることなく給送トレイ20内に収容されたままで保持される。
[搬送経路65]
図2に示されるように、筐体14の内部空間に設けられた搬送経路65は、給送トレイ20の後側から上方へUターンするように湾曲して延び、さらにプリンタ部11の後ろ側から前側へ曲がった後、更に前側へ向かってほぼ真っ直ぐに延びて排出トレイ21に至っている。搬送経路65は、Uターンする湾曲路65Aと、真っ直ぐな直線路65Bとに大別される。
湾曲路65Aは、記録用紙Sが通過可能な空間を隔てて対向する外側ガイド部材18、内側ガイド部材19、及びガイド部材31などによって規定されている。直線路65Bは、記録用紙Sが通過可能な空間を隔てて対向する記録部24及びプラテン42、並びにガイド部材34及びガイド部材33などによって規定されている。
給送トレイ20の給送ローラ25によって搬送経路65に沿って給送された記録用紙Sは、湾曲路65Aに沿って下方から上方へ向かって搬送向き17が反転され、直線路65Bに沿って搬送向き17が反転することなく後方から前方へ向かって搬送される。
外側ガイド部材18は、湾曲路65Aに沿って記録用紙Sが搬送されるとき、外側の案内面を構成する部材である。内側ガイド部材19は、湾曲路65Aに沿って記録用紙Sが搬送されるとき、内側の案内面を構成する部材である。なお、各案内面は、1つの面で構成されていてもよいし、複数のリブの先端面の群として構成されていてもよい。
ガイド部材31は、第1搬送ローラ対59の直上流(後ろ側)において内側ガイド部材19の上方に配置されている。外側ガイド部材18及びガイド部材31は、後述されるバイパス経路182を規定する部材でもある。
[後面カバー22]
図2に示されるように、後面カバー22は、外側ガイド部材18を支持して筐体14の後面の一部を構成する部材である。後面カバー22は、下側の左右両端において筐体14に対して回動可能に軸支されている。後面カバー22が、下側の左右方向9に沿った回動軸周りに、上側が後ろ向きへ倒伏するように回動することにより、搬送経路65の一部及び後述されるバイパス経路182の一部が筐体14の外方に開放(露出)される。
外側ガイド部材18も、後面カバー22と同様に、下側の左右両端において筐体14に対して回動可能に軸支されている。後面カバー22が後ろ向きへ倒伏するように回動された状態において、外側ガイド部材18も、下側の左右方向9に沿った回動軸周りに、上側が後ろ向きへ倒伏するようにして回動可能である。外側ガイド部材18が後ろ向きへ倒伏するように回動することにより、湾曲路65Aの少なくとも一部が開放(露出)される。図2に示されるように、後面カバー22が起立状態となるように閉じられると、外側ガイド部材18は、後面カバー22に後方から支持されて起立状態に維持され、内側ガイド部材19と対向して湾曲路65Aの一部を規定する。
[第1搬送ローラ対59及び第2搬送ローラ対180]
図2に示されるように、搬送経路65に沿った記録用紙Sの搬送向き17における記録部24の上流側には、第1搬送ローラ対59が設けられている。第1搬送ローラ対59は、第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを有する。同様に、搬送向き17における記録部24の下流側には、第2搬送ローラ対180が設けられている。第2搬送ローラ対180は、第2搬送ローラ62と拍車ローラ63とを有する。第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、モータ(不図示)の回転が伝達されて回転する。第1搬送ローラ対59及び第2搬送ローラ対180は、それぞれを構成する各ローラの間に記録用紙Sを挟持した状態において、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62が回転することによって、記録用紙Sを搬送経路65に沿って搬送向き17に搬送する。
[記録部24]
図2に示されるように、第1搬送ローラ対59と第2搬送ローラ対180との間に記録部24が設けられている。記録部24は、キャリッジ40と記録ヘッド39とを備えている。キャリッジ40は、プラテン42の後側及び前側に設けられたガイドレール43,44によって左右方向9に往復動可能に支持されている。ガイドレール44には、公知のベルト機構が設けられている。キャリッジ40は、ベルト機構の無端ベルトと連結されており、無端ベルトの回動によってガイドレール43,44に沿って左右方向9に往復動する。キャリッジ40と記録ヘッド39とが、プラテン42と空間を隔てて対向しているとき、キャリッジ40、記録ヘッド39、及びプラテン42は、直線路65Bの一部を規定する。
記録ヘッド39は、キャリッジ40に搭載されている。記録ヘッド39の下面には、複数のノズル38が形成されている。記録ヘッド39には、インクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。記録ヘッド39は、複数のノズル38からインクを微小なインク滴として選択的に吐出する。キャリッジ40が左右方向9へ移動しているときに、ノズル38からプラテン42に支持されている記録用紙Sに対してインク滴が吐出される。吐出されたインク滴がプラテン42上の記録用紙Sに付着することにより、記録用紙Sに画像が記録される。
[バイパス経路182]
図2に示されるように、筐体14の後面において後面カバー22の上方に開口184が設けられている。筐体14の内部には、開口184から第1搬送ローラ対59へと延びるバイパス経路182が形成されている。バイパス経路182は、筐体14の内部において前後方向8の後方から前方へ斜め下方に向かって延びる経路である。バイパス経路182は、ガイド部材31、外側ガイド部材18及び後面カバー22などによって規定されている。ガイド部材31は、バイパス経路182に沿って記録用紙Sが搬送されるとき、上側の案内面を構成する部材である。外側ガイド部材18及び後面カバー22は、バイパス経路182に沿って記録用紙Sが搬送されるとき、下側の案内面を構成する部材である。搬送経路65の湾曲路65A及び直線路65Bは、いずれもバイパス経路182より下方に配置されている。外側ガイド部材18及び後面カバー22が、上側が後ろ向きへ倒伏するように回動することによって、搬送経路65の一部と共にバイパス経路182の一部が筐体14の外方に開放(露出)される。
後述されるバイパストレイ71に収容された記録用紙Sは、バイパス経路182に沿って斜め下方へ案内される。その記録用紙Sは、搬送経路65の直線路65Bに沿って案内され、第1搬送ローラ対59により搬送される。その記録用紙Sは、更に記録部24によって画像記録が行われて、排出トレイ21へ排出される。このように、バイパストレイ71に収容された記録用紙Sは、ほぼ直線形状の経路(記録用紙Sの表面と裏面とが上下方向7において反転することのない経路)に沿って搬送される。
[給送装置70]
プリンタ部11は、給送装置70を備えている。給送装置70は、バイパストレイ71と、給送部72とから構成されている。給送部72は、図3に示されるように、給送ローラ75(本発明の給送ローラの一例)と、給送アーム76(本発明のアームの一例)と、給送用モータ78(本発明の駆動源の一例)と、駆動伝達機構79(本発明の駆動伝達部の一例)と、回動部材30とを備えている。
[バイパストレイ71]
図1及び図5に示されるように、バイパストレイ71は、複合機10の後面側に設けられている。バイパストレイ71は、給送トレイ20とは独立して記録用紙Sを収容する。
図1及び図4に示されるように、スキャナ部12の筐体16の後面側には、開口184(図2参照)を覆うようにして下方へ延びる固定部185が設けられている。固定部185は、バイパストレイ71の搬送向き17下流側の一部を構成している。図4に示されるように、固定部185の上側には、可動部186が固定部185に対して矢印80、82の方向に回動可能に設けられている。固定部185及び可動部186によって、バイパストレイ71が構成されている。
図5に示されるように、固定部185の上面には、左右方向9に沿って延びるスリット形状の開口187が形成されている。バイパストレイ71には、この開口187からバイパス経路182(図2参照)へと至る通路が形成されている。図4に示されるように、固定部185には、支持面188を有する支持部材189が設けられている。支持面188は、バイパス経路182(図2参照)まで斜め下方へ延びている。支持部材189の下端は、バイパス経路182に沿って搬送される記録用紙Sを案内するガイド面の一部を形成している。
支持部材189の上端側であって支持面188の上方には、図4に示されるように、給送アーム76の回動軸66(図7参照)を回転可能に支持する補強部材183が設けられている。回動軸66は、駆動伝達機構79の一部を構成しており、給送用モータ78(図3参照)から回転駆動力が伝達されることにより回転する。駆動伝達機構79は、後に詳細に説明される。
回動軸66には、給送アーム76が回動可能に支持されている。すなわち、給送アーム76は、回動軸66の周りに回動自在である。この給送アーム76の回動先端側に給送ローラ75が回転可能に支持されている。給送アーム76は、回動軸66から支持部材189の支持面188へ向かって下方へ延出されている。給送アーム76は、固定部185における左右方向9の中央に配置されている。給送アーム76の構成は、後に詳細に説明される。
給送ローラ75は、回動軸66と複数のギヤ48C、48D、48E、49(図7参照)によって連結されている。回動軸66の回転が複数のギヤ48C、48D、48E、49によって給送ローラ75に伝達され、給送ローラ75が回転する。給送ローラ75が、バイパストレイ71の支持面188に支持された記録用紙Sのうち一番上側の記録用紙Sに当接された状態で回転することにより、この一番上側の記録用紙Sがバイパス経路182(図2参照)に沿って給送向き87(図3,図7参照)に給送される。この一番上側の記録用紙Sより下側の記録用紙Sは、後述する下側ガイド部材97の分離部材132によって捌かれて、一番上側の記録用紙Sに引き摺られることなくバイパストレイ71に保持される。このように、給送ローラ75、回動軸66、及び給送アーム76などから構成される給送部72が、筐体14の外側であって支持面188の上方の空間に配置されている。給送ローラ75の構成は、後に詳細に説明される。
図4及び図7に示されるように、可動部186は、固定部185の上側に固定部185に対して回動可能に設けられている。可動部186は、図1に示されるように上下方向7に沿って起立した起立状態と、図4に示されるように上下方向7に対して傾斜した倒伏状態との間で回動可能である。
起立状態とは、筐体14の後面側における可動部186のためのスペースを小さくするための状態であり、バイパストレイ71の不使用状態である。起立状態である可動部186の後面は、筐体14の後面と略平行となっている。起立状態の可動部186は、回動先端が回動基端よりも上方に位置している。倒伏状態とは、可動部186を筐体14の外側へ向かって斜め上方へ傾斜させることにより、傾斜した支持面188,193を実質的に1つの平面とした状態であり、バイパストレイ71の使用可能状態である。倒伏状態の可動部186は、回動先端が回動基端よりも筐体14の後面から離間している。可動部186を起立状態とするか倒伏状態とするかは、ユーザが任意に操作することにより選択可能である。
図4に示されるように、可動部186の左右方向9の両側には、側壁190,191が設けられている。側壁190,191は、固定部185の左右方向9の両側の一部を覆っている。固定部185の左右方向9の右側に設けられた駆動伝達機構79は、可動部186の側壁190によって覆われている。
図4に示されるように、可動部186の側壁190,191の間に渡って、支持部材192が設けられている。倒伏状態において、支持部材192の上面に設けられた支持面193は、支持面188と実質的に同一の平面をなす。つまり、可動部186が倒伏状態にあるバイパストレイ71において、支持部材189の支持面188及び支持部材192の支持面193によって形成される平面45が記録用紙Sを支持する。つまり、支持部材189、192は、本発明の支持部の一例である。また、可動部186が起立状態にあるとき、支持面193は、複合機10の載置面に対して直交する、つまり上下方向7及び左右方向9に沿った状態となる。なお、本実施形態において複合機10が載置される載置面は、左右方向9と前後方向8とに沿って拡がる面である。ここで、「実質的に1つの平面(同一の平面)」とは、2つの面の間に僅かに段差があったとしても、支持された記録用紙Sが撓んだり湾曲したりしない平面のこと、すなわち、後述する分離部材132により安定した分離性能が発揮されるように記録用紙Sを支持する平面のことをいう。
図4に示されるように、支持部材192には、一対のサイドガイド194が設けられている。一対のサイドガイド194は、左右方向9に離間されて設けられており、支持面193より上方へ突出されている。サイドガイド194は、バイパストレイ71の給送向き87に沿って延出されたガイド面195を有している。支持面193上の記録用紙Sが搬送されるとき、記録用紙Sにおける給送向き87に沿った端縁は、ガイド面195によって案内される。
サイドガイド194は、支持部材192の支持面193に沿った支持面196を有する。つまり、サイドガイド194は、ガイド面195と支持面196とが直交する略L字形状をなしている。支持面196は、支持面193とは僅かに段差があるものの、実質的に同一の平面をなしており、支持面188,193とともに記録用紙Sを支持する。一対のサイドガイド194が左右方向9に沿って離間する距離は可変である。これにより、支持面193,196に支持された様々なサイズの記録用紙Sの端縁をサイドガイド194のガイド面195によって案内することができる。
[給送ローラ75及び給送アーム76]
図7に示されるように、給送ローラ75は、固定部185の支持面188と対向して配置されている。
図8に示されるように、給送ローラ75の回転軸83は左右方向9に延びている。給送ローラ75は、左右方向9に間隔を空けて2個設けられている。つまり、給送装置70は、一対の給送ローラ75を備えている。そして、一対の給送ローラ75は、共通の回転軸である回転軸83の軸方向、つまり左右方向9において互いに間隔を空けて配置されている。
図9に示されるように、給送アーム76は、一方の端部から給送向き87(図3,図7参照)の上流側に向かい且つ平面45から離間した向きに延びた一対の側板111と、一対の側板111を繋いでいる接続板112とを備えている。
一対の給送ローラ75のうち右側の給送ローラ75は、右側の側板111の一方の端部において回転可能に支持されている。一対の給送ローラ75のうち左側の給送ローラ75は、左側の側板111の一方の端部において回転可能に支持されている。
図8に示されるように、一対の側板111の給送向き87の上流端部、つまり給送アーム76の他方の端部は、第2駆動伝達部36に設けられた回動軸66に回動可能に支持されている。これにより、給送アーム76は、回動軸66を中心に回動可能である。換言すると、給送アーム76は、他方の端部を回動軸として回動可能である。その結果、給送ローラ75は、平面45または当該平面45に支持された記録用紙Sに対して、当接及び離間が可能である。
給送アーム76と回動軸66とは、トーションばね(不図示)によって連結されている。これにより、給送アーム76は、図7に示されるように、トーションばねによって矢印67の向き、つまりバイパストレイ71の平面45側に付勢される。なお、給送アーム76を矢印67の向きに付勢する構成は、トーションばねを備えた構成に限らない。例えば、一端を給送アーム76に接続され且つ他端をプリンタ部11のフレームに接続されたコイルばねが給送アーム76の前側に配置されていてもよい。この構成であっても、給送アーム76は、コイルばねによって矢印67の向きに付勢される。
[下側ガイド部材97]
図7に示されるように、下側ガイド部材97が、バイパストレイ71の支持部材189よりも給送向き87下流側に設けられている。下側ガイド部材97の上面69は、支持面188(平面45)に対して傾斜している。下側ガイド部材97の上面69は、上下方向7において開口184(図2参照)とほぼ同等の高さに位置されている。
給送ローラ75によって記録用紙Sの給送向き87への給送が開始されると、下側ガイド部材97は、当接した記録用紙Sの先端を、上面69に沿って案内する。下側ガイド部材97の上面69の左右方向9の中央部に、上面69から上方へ突出され且つ前後方向8に沿って並んだ複数の歯を有する分離部材132(図7,図8参照)が設けられている。これらの歯によって、バイパストレイ71に支持される複数枚の記録用紙Sの先端が捌かれる。また、給送ローラ75によって複数枚の記録用紙Sの先端が上面69に沿って案内された場合であっても、分離部材132は、複数枚の記録用紙Sのうち給送ローラ75と当接している最上位置の記録用紙Sを、他の記録用紙Sから分離する。その結果、給送ローラ75は最上位置の記録用紙Sだけをバイパス経路182へ向けて給送することになる。
図8に示されるように、下側ガイド部材97の上面69に、前後方向8に沿って延びた一対の凹部86が設けられている。凹部86は、左右方向9において、分離部材132の右方及び左方にそれぞれ設けられている。すなわち、分離部材132は、一対の凹部86の左右方向9におけるほぼ中央に配置されている。後述する移動部材64が、凹部86に配置される。図12に示されるように、凹部86は、底面84、第1側面122、及び第2側面123によって規定されている。
[駆動伝達機構79]
プリンタ部11には、正転及び逆転する給送用モータ78(図3参照)が設けられている。また、図3,図8に示されるように、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構79が、プリンタ部11に設けられている。但し、図3においては、第3駆動伝達部37における回動軸50以降の構成が省略されている。また、図8においては、第1駆動伝達部35におけるギヤ47A以降の構成が省略されている。給送用モータ78が正転及び逆転することによって発生する回転駆動力は、駆動伝達機構79を介して給送ローラ75及び移動部材64に伝達される。
図3,図8に示されるように、駆動伝達機構79は、第1駆動伝達部35と、第2駆動伝達部36と、第3駆動伝達部37と、中間ギヤ46とを備えている。
図8に示されるように、第1駆動伝達部35は、バイパストレイ71(図5参照)及び下側ガイド部材97よりも左右方向9において右方に配置されている。図3に示されるように、第1駆動伝達部35は、5個のギヤ47A、47B、47C、47D、47Eを備えている。4個のギヤ47A、47B、47C、47Dは、互いに噛合したギヤ列を構成している。当該ギヤ列の一端に配置されたギヤ47Aは、給送用モータ78の回転軸52に取り付けられた駆動ギヤ53と噛合している。
ギヤ47D、47Eは、上記ギヤ列の他端に配置されている。ギヤ47D、47Eは、スラスト方向に並んで配置され且つ同じ回転軸を中心に一体に回転する。ギヤ47Dは、ギヤ47Cと噛合している。ギヤ47Eは、中間ギヤ46と噛合している。以上より、第1駆動伝達部35は、給送用モータ78から中間ギヤ46へ回転駆動力を伝達する。
図8に示されるように、第2駆動伝達部36は、5個のギヤ48A〜48Eとローラギヤ49と回動軸66とを備えている。ギヤ48A、48Bは、互いに噛合している。回動軸66は、バイパストレイ71及び下側ガイド部材97よりも右方から、バイパストレイ71及び下側ガイド部材97の左右方向9におけるほぼ中央部まで、左右方向9に沿って延設されている。ギヤ48Aは、中間ギヤ46と噛合している。ギヤ48Bは、回動軸66の右端部と連結されており、回動軸66と一体に回転可能であり且つ回動軸66とは独立して回転可能である。なお、ギヤ48Bと回動軸66との連結は、後述される。
ギヤ48C〜48Eは、互いに噛合したギヤ列を構成している。当該ギヤ列の一端に配置されたギヤ48Cは、回動軸66の左端部に取り付けられており、回動軸66と一体に回転する。当該ギヤ列の他端に配置されたギヤ48Eは、ローラギヤ49と噛合している。ギヤ48D、48Eは、給送アーム76に回転可能に支持されている。つまり、第2駆動伝達部36は、給送アーム76に支持され互いに噛合したギヤ列を備えている。ローラギヤ49は、一対の給送ローラ75の間において給送ローラ75の回転軸83に取り付けられおり、回転軸83を中心に回転軸83と一体に回転可能である。
以上より、第2駆動伝達部36は、中間ギヤ46から給送ローラ75へ回転駆動力を伝達する。第2駆動伝達部36を介して給送用モータ78から正転の回転駆動力を伝達された給送ローラ75は、バイパストレイ71の平面45に支持された記録用紙Sを給送向き87に給送するように回転する。
図10に示されるように、ローラギヤ49は、当該ローラギヤ49の軸線方向である左右方向9に沿って延びた凹部54を備えている。凹部54は、ローラギヤ49の内側面55及び底面110によって規定されている。後述する圧縮コイルばね114が、凹部54内に配置される。ローラギヤ49における底面110と対向する面に、開口56が形成されている。また、ローラギヤ49の底面110に、開口56よりも小径の開口57が形成されている。給送ローラ75の回転軸83が、開口56、57を通じてローラギヤ49を貫通することになる。
図8に示されるように、回動軸66の右端部に、回動軸66の径方向に突出したキー73が設けられている。また、ギヤ48Bの中心部には、回動軸66が挿通可能な貫通孔が設けられている。そして、当該貫通孔におけるキー73に対応する位置に、キー73と嵌合可能な略扇形形状のキー溝74が設けられている。ギヤ48Bの周方向において、キー溝74の円弧の長さはキー73の周方向の長さよりも長く設計されている。これにより、ギヤ48Bの回転時にキー溝74がキー73に当接していなければ、ギヤ48Bは回動軸66に対して空回りするため、キー溝74がキー73に当接するまで回動軸66は回転しない。換言すれば、回動軸66の回転時にキー73がキー溝74に当接していなければ、回動軸66はギヤ48Bに対して空回りするため、キー73がキー溝74に当接するまでギヤ48Bは回転しない。一方、ギヤ48Bの回転時にキー溝74がキー73に当接しており、且つキー溝74がキー73を押していれば、回動軸66はギヤ48Bと一体に回転する。換言すれば、回動軸66の回転時にキー73がキー溝74に当接しており、且つキー73がキー溝74を押していれば、ギヤ48Bは回動軸66と一体に回転する。以上より、第2駆動伝達部36は、キー73及びキー溝74においてギヤ48Bの周方向のいわゆる遊びを有する。
なお、上記とは逆に、回動軸66にキー溝74が設けられ、ギヤ48Bにキー73が設けられていてもよい。また、キー73及びキー溝74は、駆動伝達機構79における回動軸66及びギヤ48B以外の箇所に設けられていてもよい。例えば、ギヤ48Dの軸85にキー73が設けられ、ギヤ48Dにキー溝74が設けられていてもよいし、ギヤ47Cの軸41にキー73が設けられ、ギヤ47Cにキー溝74が設けられていてもよい。これらの場合にも各軸にキー溝74が設けられ、各ギヤにキー73が設けられていてもよい。
図8に示されるように、第3駆動伝達部37は、2個のギヤ77A、77Bと、突起51と、当該突起51の回動軸50とを備えている。回動軸50は、バイパストレイ71及び下側ガイド部材97よりも右方から、バイパストレイ71及び下側ガイド部材97の左右方向9におけるほぼ中央部まで、左右方向9に沿って延設されている。
ギヤ77A、77Bは、互いに噛合したギヤ列を構成している。当該ギヤ列の一端に配置されたギヤ77Aは、中間ギヤ46と噛合している。当該ギヤ列の他端に配置されたギヤ77Bは、後述するトルクリミッタ127を介して回動軸50の右端部に連結されている。これにより、ギヤ77Bは、回動軸50と一体に回転可能であり且つ回動軸50とは独立して回転可能である。図8及び図12に示されるように、突起51は、移動部材64へ向けて突出している。後述するように、移動部材64のスライド部材116は、突起51に押されることによって移動する。以上より、第3駆動伝達部37は、中間ギヤ46から移動部材64へ回転駆動力を伝達する。
なお、駆動伝達機構79のギヤの個数は、図3,図8に示される個数に限らない。また、駆動伝達機構79の少なくとも一部が、ギヤ以外によって構成されていてもよい。例えば、2つの軸の間に無端ベルトを掛け渡し、一方の軸の回転を他方の軸に伝達するように構成されていてもよい。
[回動部材30]
図7に示されるように、回動部材30は、矢印105、106の方向に回動することによって給送アーム76を矢印67、68の方向に回動させ、その結果、給送ローラ75をバイパストレイ71の平面45または当該平面45に支持された記録用紙Sに対して接離させるための部材である。図8及び図9に示されるように、回動部材30は、給送アーム76の一方の端部に設けられている。図10に示されるように、回動部材30は、回動体91と、コロ92と、挟持部材93と、を備えている。
回動体91は、一対の側板94と、この一対の側板94の一部同士を繋いでいる接続板95と、この接続板95から突出する突出部96とを備えている。回動体91の材質は、POM(ポリアセタールまたはポリオキシメチレン)などの樹脂である。
図9に示されるように、右側の側板94は、給送アーム76の右側の側板111とローラギヤ49との間に配置されている。左側の側板94は、給送アーム76の左側の側板111とローラギヤ49との間に配置されている。ここで、右側の側板111の右方及び左側の側板111の左方に、給送ローラ75がそれぞれ配置されている。つまり、左右方向における左側の側板94は、ローラギヤ94と左側の給送ローラ75との間に配置され、左右方向9における右側の側板94は、ローラギヤ94と右側の給送ローラ75との間に配置されている。また、左右方向9における左側の側板111は、左側の側板94と左側の給送ローラ75との間に配置され、左右方向9における右側の側板111は、右側の側板94と右側の給送ローラ75との間に配置されている。
図10(B)に示されるように、一対の側板94の中心部に、開口100がそれぞれ設けられている。給送ローラ75の回転軸83が、各開口100に挿通される。この構成により、一対の側板94、接続板95、及び突出部96よりなる回動体91は、給送ローラ75の回転軸83を中心に回動可能となる。
図10(B)に示されるように、突出部96は、ローラギヤ49の外周面から離間する向きに、接続板95から突出している。換言すると、突出部96は、ローラギヤ49の径方向外側に向かって接続板95から突出している。
図10(A)に示されるように、コロ92は、突出部96、つまり回動部材30の回動先端に設けられている。コロ92は、回転軸92A(図10(B)参照)を回転の中心として、突出部96に回転可能に支持されている。回転軸92Aは、給送ローラ75の回転軸83と同じ方向(左右方向9)に延びている。コロ92が突出部96に支持された状態において、コロ92の周面の一部が、突出部96よりもローラギヤ49の径方向外側に向かって突出している。
図11に示されるように、コロ92は、左右方向9において一対の給送ローラ75の各々から等距離の中間位置に配置されている。換言すると、コロ92と右側の給送ローラ75との左右方向9における距離L1は、コロ92と左側の給送ローラ75との左右方向9における距離L2と等しい。
図10(B)に示されるように、挟持部材93は、一対の側板101と、この一対の側板101同士を繋いでいる接続板102とを備えている。挟持部材93の材質は、SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)などの金属である。
図9に示されるように、右側の側板101は、回動体91の右側の側板94と給送アーム76の右側の側板111との間に配置されている。図9では隠れた位置にあるために見えないが、左側の側板101は、回動体91の左側の側板94と給送アーム76の左側の側板111との間に配置されている。つまり、挟持部材93の一対の側板101は、左右方向9において、回動体91の一対の側板94の外側に配置されている。すなわち、挟持部材93は、回動体91の一対の側板94を挟持している。
図10(B)に示されるように、左側の側板101の中心部に、開口103Aが設けられ、右側の側板101の中心部に、開口103Bが設けられている。給送ローラ75の回転軸83が、開口103A、103Bにそれぞれ挿通される。ここで、左側の側板101の開口103Aは円形状を有しているが、右側の側板101の開口103Bの一部の半径は、当該一部以外の半径よりも大きい。つまり、開口103Bは、異なる長さの半径を持つ2つの円形状の開口の一部ずつが、その中心を同一にして組み合わせられた形状を有している。そして、この開口103Bにおける半径が大きい開口部分に、回動体91の右側の側板94に設けられたリブ104が嵌合する(図10(A)参照)。この構成により、一対の側板101は、給送ローラ75の回転軸83を中心に、回動体91と一体に回動可能である。従って、回動体91と挟持部材93とは、給送ローラ75の回転軸83を中心に一体に回動する。つまり、回動部材30は、給送ローラ75の回転軸83を中心に回動する。
回動部材30の回動体91は、後述するトルクリミッタ32を介してローラギヤ49と連結している。ここで、上述したように、給送ローラ75の回転軸83が、ローラギヤ49を挿通しており、ローラギヤ49と給送ローラ75とは、回転軸83を回転の中心として一体に回転可能である。つまり、回動部材30は、トルクリミッタ32及びローラギヤ49を介して給送ローラ75と連結している。また、回動部材30は、第2駆動伝達部36のローラギヤ49からトルクリミッタ32を介して給送用モータ78の回転駆動力を付与される。これにより、回動部材30は、矢印105、106(図7参照)の方向に回動する。
図10(B)に示されるように、回動体91の一対の側板94の周面に、給送ローラ75の径方向外側に向かって突出した突起109が設けられている。一方、図14に示されるように、給送アーム76の一対の側板111には、第1規制部107及び第2規制部108が設けられている。第1規制部107及び第2規制部108は、突起109に当接することによって回動体91の回動を規制するものである。本実施形態において、第1規制部107及び第2規制部108は、一対の側板111の一方から他方へ向けて突出したリブである。なお、第1規制部107及び第2規制部108は、回動体91に当接することによって回動体91の回動を規制することができるものであるならば、リブに限らない。
図14(A)に示されるように、突起109は、矢印106の向きの上流側から第1規制部107に当接される。突起109と第1規制部107とが当接した状態において、回動部材30の突出部96及びコロ92は、給送ローラ75よりもバイパストレイ71の平面45側に突出している。図14(A)に示される状態のときの回動部材30の位置は、以下、第1位置と記される。つまり、第1規制部107は、回動部材30の回動を第1位置で規制する。
上述したように、給送アーム76は、トーションばねによってバイパストレイ71の平面45側に付勢されている。よって、回動部材30が第1位置のとき、コロ92は、バイパストレイ71の平面45、または、当該平面45に支持された記録用紙Sに当接している。一方で、給送ローラ75は、回動部材30に持ち上げられることによって、バイパストレイ71の平面45、または、当該平面45に支持された記録用紙Sから離間している。
図14(B)に示されるように、突起109は、矢印105の向きの上流側から第2規制部108に当接される。突起109と第2規制部108とが当接した状態において、回動部材30の突出部96及びコロ92は、バイパストレイ71の平面45に対して給送ローラ75よりも退避している。図14(B)に示される状態のときの回動部材30の位置は、以下、第2位置と記される。つまり、第2規制部108は、回動部材30の回動を第2位置で規制する。
回動部材30が第2位置のとき、コロ92は、バイパストレイ71の平面45から離間している。一方で、給送ローラ75は、給送アーム76がトーションばねによってバイパストレイ71の平面45側に付勢されているため、バイパストレイ71の平面45、または、当該平面45に支持された記録用紙Sに当接している。
以上より、回動部材30は、第1規制部107及び第2規制部108によって回動を規制されることによって、第1位置及び第2位置の間の範囲においてのみ回動可能である。
[トルクリミッタ32]
トルクリミッタ32は、第2駆動伝達部36から回動部材30へ回動駆動力を伝達するものである。また、トルクリミッタ32は、第1規制部107または第2規制部108によって回動部材30の回動が規制された場合に、第2駆動伝達部36から回動部材30への回転駆動力の伝達を切断するものである。
図10(B)に示されるように、トルクリミッタ32は、摩擦部材113と、圧縮コイルばね114とを備えている。
摩擦部材113は、厚みが薄い円柱形状の部材である。なお、摩擦部材113の形状は任意である。摩擦部材113は、ローラギヤ49と回動体91の右側の側板94との間に配置されている。つまり、摩擦部材113を備えるトルクリミッタ32は、ローラギヤ49を備える第2駆動伝達部36及び回動部材30の間に設けられている。図10(A)、図10(B)に示されるように、摩擦部材113の一方の面は、ローラギヤ49の底面110に当接している。摩擦部材113の一方の面の裏側の面は、右側の側板94に当接している。摩擦部材113は、ローラギヤ49及び側板94よりも高い摩擦係数を持つ材料、例えばフェルト生地で構成されている。以上より、摩擦部材113は、ローラギヤ49から側板94へ、つまり第2駆動伝達部36から回動部材30へ回転駆動力を伝達する。
図10(B)に示されるように、摩擦部材113の中心部に、開口115が設けられている。給送ローラ75の回転軸83が、開口115に挿通される。
なお、摩擦部材113は、ローラギヤ49と左側の側板94との間に配置されていてもよい。また、摩擦部材113は2つ設けられており、一方の摩擦部材113がローラギヤ49と右側の側板94との間に配置され、他方の摩擦部材113がローラギヤ49と左側の側板94との間に配置されていてもよい。
圧縮コイルばね114は、ローラギヤ49の凹部54内に配置されている。圧縮コイルばね114の一端は、ローラギヤ49の底面110(凹部54内の内側面)に当接している。圧縮コイルばね114の他端は、回動体91における左側の側板94に当接している。給送ローラ75の回転軸83が、圧縮コイルばね114の中心部に挿通される。
なお、ローラギヤ49の配置は左右逆であってもよい。この場合、底面110がローラギヤ49の左側に位置する。そのため、圧縮コイルばね114の一端が回動体91における右側の側板94に当接し、圧縮コイルばね114の他端が底面110(凹部54内の内側面)に当接する。以上より、圧縮コイルばね114は、一方の側板94とローラギヤ49との間に配置されている。
ローラギヤ49の凹部54内に配置された圧縮コイルばね114は、自然長に戻ろうとして、左右方向9における右向き及び左向きに力を作用させる。そして、当該右向きに作用された力により、ローラギヤ49の底面110が摩擦部材113に圧接される。つまり、圧縮コイルばね114は、ローラギヤ49を摩擦部材113側へ付勢する。
図13(A)及び図14(A)に示される状態において、給送用モータ78から第1駆動伝達部35及び第2駆動伝達部36を介して正転の回転駆動力を付与されることによって、給送ローラ75が矢印125の向き(図7参照)に回転すると、当該回転駆動力は、トルクリミッタ32を介して回動部材30に伝達される。これにより、回動部材30は、第1位置(図13(A)及び図14(A)に示される状態のときの回動部材30の位置)から第2位置(図13(C)及び図14(B)に示される状態のときの回動部材30の位置)へ向けて矢印105の向きに回動する。つまり、回動部材30は、回転する給送ローラ75と一体に回動する。
回動部材30の突起109が第2規制部108に当接すると、すなわち、回動部材30が第2位置に到達すると(図13(C)及び図14(B)参照)、回動部材30の回動は停止される。これにより、給送ローラ75及び回動部材30のうち給送ローラ75のみが、摩擦部材113による摩擦力に抗って矢印125の向きへの回転を継続する。つまり、回動部材30への回動駆動力の伝達がトルクリミッタ32によって切断される。
一方、図13(C)及び図14(B)に示されるように、給送用モータ78から第1駆動伝達部35及び第2駆動伝達部36を介して逆転の回転駆動力を付与されることによって、給送ローラ75が矢印126の向き(図7参照)に回転すると、当該回転駆動力は、トルクリミッタ32の摩擦部材113を介して回動部材30に伝達される。これにより、回動部材30は、第2位置から第1位置へ向けて矢印106の向きに回動する。つまり、回動部材30は、回転する給送ローラ75と一体に回動する。
回動部材30の突起109が第1規制部107に当接すると、すなわち、回動部材30が第1位置に到達すると(図13(A)及び図14(A)参照)、回動部材30の回動は停止される。これにより、給送ローラ75及び回動部材30のうち給送ローラ75のみが、摩擦部材113による摩擦力に抗って矢印126の向きへの回転を継続する。つまり、回動部材30への回動駆動力の伝達がトルクリミッタ32によって切断される。
[移動部材64]
図8に示されるように、移動部材64は、下側ガイド部材97の上面69に設けられた凹部86に配置されている。つまり、移動部材64は、下側ガイド部材97に設けられている。
図12に示されるように、移動部材64は、スライド部材116と、当接部材117と、を備えている。スライド部材116は、凹部86の底面84に支持されている。当接部材117はスライド部材116に支持されており、バイパストレイ71に支持された記録用紙Sの先端に当接可能である。
スライド部材116は、凹部86の底面84に沿って前後方向8に移動可能である。スライド部材116の面120、すなわち、凹部86の底面84と接するスライド部材116の面と反対側の面120に、第1凹部118及び第2凹部119が設けられている。第1凹部118に、第3駆動伝達部37の突起51が挿入される。第2凹部119に、後述する当接部材117の突起58が挿入可能である。
当接部材117は、スライド部材116の面120に当接している。当接部材117は、スライド部材116側へ突出した突起58を備えている。当接部材117は、スライド部材116の移動に連動して、下側ガイド部材97の上面69から突出した突出位置(図12(B)に示される状態のときの当接部材117の位置)と、上面69から退避した退避位置(図12(A)に示される状態のときの当接部材117の位置)に移動可能である。
以下に詳述する。図12(A)に示されるように、スライド部材116が下側ガイド部材97の凹部86の第1側面122に当接している状態において、当接部材117の突起58は、スライド部材116の第2凹部119に挿入されている。この状態において、当接部材117は、上面69から凹部86内へ退避しており、退避位置である。
この状態において、第3駆動伝達部37のギヤ77Bが矢印124の向きに回転すると、スライド部材116は、回転するギヤ77Bと一体に回動した突起51に押されて、凹部86の第2側面123に向けて移動する。これにより、第2凹部119に挿入されていた突起58は、第2凹部119から脱出して、図12(B)に示されるように、面120に支持される。すなわち、スライド部材116の面120はカム面を構成している。その結果、当接部材117の面121は、下側ガイド部材97の上面69から突出する。つまり、当接部材117は、突出位置となる。
なお、スライド部材116は、第2側面123に当接するまで移動可能である。つまり、第2側面123は、移動部材64のスライド部材116に当接してスライド部材116の移動を規制することにより、移動部材64の当接部材117の移動を突出位置で規制する。
図12(B)に示されるように、スライド部材116が第2側面123に当接し、且つ当接部材117が突出位置である状態において、ギヤ77Bが矢印124と逆向きに回転すると、スライド部材116は、突起51に押されて、凹部86の第1側面122に向けて移動する。これにより、突起58は、面120に当接しながら移動し、図12(A)に示されるように、第2凹部119へ挿入される。その結果、当接部材117の面121は、下側ガイド部材97の上面69から凹部86内へ退避する。つまり、当接部材117は、退避位置となる。
なお、スライド部材116は、第1側面122に当接するまで移動可能である。つまり、第1側面122は、移動部材64のスライド部材116に当接してスライド部材116の移動を規制することにより、移動部材64の当接部材117の移動を退避位置で規制する。
第3駆動伝達部37のギヤ77Bと回動軸50との間に、トルクリミッタ127(図6及び図8参照)が設けられている。トルクリミッタ127は、第3駆動伝達部37における回転駆動力の伝達の有無を切り替えるものである。
トルクリミッタ127は、フランジ部128(図8参照)と、摩擦部材(不図示)と、圧縮コイルばね129(図6参照)と、を備えている。フランジ部128は、回動軸50の周面から突出している。摩擦部材(不図示)は、フランジ部128とギヤ77Bとの間に配置されている。圧縮コイルばね129は、ギヤ77Bに対して摩擦部材の反対側に配置されておりギヤ77Bを摩擦部材側に付勢する。ギヤ77Bは、圧縮コイルばね129に付勢されることによって、摩擦部材を介してフランジ部128に押しつけられている。なお、トルクリミッタ127の構成は、上述した構成に限定されず、任意のトルクリミッタの構成を採用可能である。
上述した移動部材64の動作において、スライド部材116が移動可能な状態である場合、トルクリミッタ127は、ギヤ77Bから摩擦部材を介してフランジ部128に回転駆動力を伝達する。つまり、ギヤ77Bとフランジ部128が設けられた回動軸50とは、トルクリミッタ127を介して一体に回転する。
一方、上述した移動部材64の動作において、第1側面122に向けて移動するスライド部材116が第1側面122に当接した場合、または、第2側面123に向けて移動するスライド部材116が第2側面123に当接した場合、トルクリミッタ127は、ギヤ77Bから回動軸50への回転駆動力の伝達を切断する。つまり、回動軸50の回転がスライド部材116の第1側面122または第2側面123に対する当接によって規制されるため、回動軸50の回転は停止し、ギヤ77Bは回動軸50に対して空回りする。すなわち、ギヤ77Bは、回動軸50とは独立して回転する。以上より、トルクリミッタ127は、第1側面122または第2側面123によって移動部材64の移動が規制されると、第3駆動伝達部37における回転駆動力の伝達を切断する。
なお、トルクリミッタ127が設けられる位置は、ギヤ77Bと回動軸50との間に限らない。例えば、トルクリミッタ127は、ギヤ77Bと当該ギヤ77Bの回転軸との間に設けられていてもよい。
当接部材117が突出位置のとき、給送向き87に給送された記録用紙Sは、当接部材117の面121(図12参照)に当接可能である。図12に示されるように、面121は、左右方向9(図2の紙面に対して鉛直方向)に延びた溝が一定間隔で形成されていることによって、右方または左方から見た側面視で鋸刃形状となっている。これにより、面121に当接した記録用紙Sの先端、すなわち、給送向き87における記録用紙Sの下流端は、上記溝に嵌り込む。その結果、記録用紙Sの移動は、面121によって制止される。なお、面121は、当接した記録用紙Sを制止可能であるならば、鋸刃形状でなくてもよい。例えば、面121は、摩擦係数が高いコルクなどが貼り付けられることによって、当接した記録用紙Sの移動を制止するものであってもよい。
[給送装置70の動作]
以下、給送用モータ78が正転及び逆転したときの、給送装置70の動作が説明される。なお、初期状態は、図13(A)に示される状態であるとする。ただし、図13(A)〜図13(C)では、給紙装置70の各構成の動作を理解しやすくするために、記録用紙Sは記載されていない。以下の説明においては、バイパストレイ71の平面45に複数の記録用紙Sが支持されているものとする。
最初に、図13(A)に示される初期状態において、給送用モータ78が正転する場合の給送装置70の動作が説明される。図13(A)に示される状態において、回動部材30は、第1位置である。このとき、上述したように、コロ92がバイパストレイ71の平面45に支持された記録用紙Sに当接している。一方、給送ローラ75は、回動部材30に持ち上げられることによって、当該記録用紙Sから離間した離間位置である。また、図13(A)に示される状態において、移動部材64の当接部材117は突出位置であり、移動部材64のスライド部材116は第2側面123に当接している(図12(B)参照)。
この状態において、給送用モータ78が正転すると、給送用モータ78の正転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第2駆動伝達部36を介して給送ローラ75に伝達される。また、給送用モータ78の正転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、第2駆動伝達部36、及びトルクリミッタ32を介して回動部材30にも伝達される。更に、給送用モータ78の正転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第3駆動伝達部37を介して移動部材64にも伝達される。
給送用モータ78の正転の回転駆動力が伝達されることにより、給送ローラ75は矢印125の向き(記録用紙Sを給送向き87に給送する向き、図7参照)に回転し、回動部材30は矢印105の向き(第1位置から第2位置へ向かう向き)に回動する。
回動部材30が第1位置から第2位置へ向けて回動すると、コロ92が記録用紙Sから離間する。これにより、給送アーム76がトーションばねに付勢されて矢印67の向きに回動する。その結果、回動部材30によって持ち上げられていた給送ローラ75は、離間位置(図13(A)に示される状態のときの給送ローラ75の位置)から、バイパストレイ71に支持された記録用紙Sに当接する当接位置(図13(C)に示される状態のときの給送ローラ75の位置)に向かって移動する。以上より、回動部材30は、給送用モータ78から正転の回転駆動力が付与されると、給送ローラ75を離間位置から当接位置に移動させる。
図13(A)に示される状態において、給送ローラ75は、記録用紙Sから離間している。換言すれば、給送ローラ75は、記録用紙Sに当接していない。よって、図13(A)に示される状態において給送ローラ75が矢印125の向き(図7参照)へ回転しても、給送ローラ75は、記録用紙Sを給送向き87へ給送しない。給送ローラ75が記録用紙Sの給送向き87への給送を開始するのは、回動部材30の第2位置へ向けての回動によってコロ92が記録用紙Sから離間することにより、矢印125の向きに回転している給送ローラ75が当接位置に到達したときである。
また、給送用モータ78の正転の回転駆動力が伝達されることにより、第3駆動伝達部37の回動軸50は、図12(B)に示されるように、矢印124と逆の向きに回転する。これにより、移動部材64のスライド部材116が、突起51に押されることによって、第2側面123から第1側面122に向けて移動する。その結果、移動部材64の当接部材117は突出位置から退避位置へ向けて移動する。
ここで、上述したように、第2駆動伝達部36は、キー73及びキー溝74の構成を有することにより、ギヤ48Bは周方向の遊びを有する。これにより、ギヤ48Bから回動軸66への回転駆動力の伝達に遅延が生じる。その結果、給送用モータ78の正転開始後において、給送ローラ75の回転開始及び回動部材30の回動開始タイミングは、移動部材64の移動開始タイミングよりも後になる。また、回動部材30が回動を開始してから給送ローラ75が記録用紙Sに当接するまでの時間と、移動部材64の当接部材117が突出位置から退避位置へ向けて移動を開始してから退避位置へ到達するまでの時間とは、相違する。
ギヤ48の周方向におけるキー73及びキー溝74の長さは、以上のタイミングの相違や時間の相違に基づいて、下記の条件を満たすように決定されている。
当該条件は、給送ローラ75が離間位置から当接位置へと移動する前に、当接部材117が突出位置から退避位置へと移動していることである。つまり、移動部材64の当接部材117が突出位置にあり且つ給送ローラ75が離間位置にある状態(図13(A)参照)において、給送用モータ78の正転が開始されて第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第2駆動伝達部36を通じて駆動力が回動部材30に伝達されることにより、回動部材30が給送ローラ75を離間位置から当接位置へ移動する。このために要する時間をT1とする。一方、給送用モータ78の正転が開始されて第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第3駆動伝達部37を通じて駆動力が移動部材64に伝達されることにより、移動部材64の当接部材117が突出位置から退避位置へ移動する。このために要する時間をT2とする。このとき、T1はT2よりも長く設定されるのである(T1>T2)。
以上より、給送ローラ75が記録用紙Sに当接するタイミングは、移動部材64の当接部材117が退避位置に到達するタイミングよりも後になる。つまり、図13(A)に示される状態において、給送用モータ78が正転を開始した場合、突出位置から移動を開始した移動部材64が、まず退避位置に到達する(図13(B)参照)。このとき、給送ローラ75は未だ記録用紙Sに当接していない。つまり、給送ローラ75は未だ当接位置に到達していない。次に、給送ローラ75が記録用紙Sに当接する(図13(C)参照)。つまり、回動部材30の回動によって離間位置から移動を開始した給送ローラ75が当接位置に到達する。
給送ローラ75が当接した記録用紙Sは、給送ローラ75の矢印125の向きの回転(図7参照)によって給送向き87に給送される。なお、給送ローラ75が当接位置に到達すると同時に、または、給送ローラ75が当接位置に到達した後に、回動部材30は第2位置に到達する。また、移動部材64の当接部材117が退避位置に到達すると同時に、または、移動部材64の当接部材117が退避位置に到達した後に、移動部材64のスライド部材116は第1側面122に当接する(図12(A)参照)。
次に、図13(C)に示される状態において、給送用モータ78が逆転する場合の給送装置70の動作が説明される。図13(C)に示される状態において、回動部材30は、第2位置にある。このとき、上述したように、コロ92は、バイパストレイ71の平面45に支持された記録用紙Sから離間している。一方、給送ローラ75は、バイパストレイ71の平面45に支持された記録用紙Sに当接している。つまり、給送ローラ75は、当接位置にある。また、図13(C)に示される状態において、移動部材64の当接部材117は退避位置であり、移動部材64のスライド部材116は第1側面122に当接している(図12(A)参照)。
この状態において、給送用モータ78が逆転すると、給送用モータ78の逆転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第2駆動伝達部36を介して給送ローラ75に伝達される。また、給送用モータ78の逆転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、第2駆動伝達部36、及びトルクリミッタ32を介して回動部材30にも伝達される。更に、給送用モータ78の逆転の回転駆動力は、第1駆動伝達部35、中間ギヤ46、及び第3駆動伝達部37を介して移動部材64にも伝達される。
給送用モータ78の逆転の回転駆動力が伝達されることにより、給送ローラ75は矢印126の向き(記録用紙Sを給送向き87と逆向きに給送する向き、図7参照)に回転し、回動部材30は矢印106の向き(第2位置から第1位置へ向かう向き)に回動する。
回動部材30が第2位置から第1位置へ向けて回動すると、まずコロ92が記録用紙Sに当接する。更に回動部材30が第2位置から第1位置へ向けて回動すると、コロ92が給送ローラ75を持ち上げるため、給送アーム76がトーションばねによる付勢に抗って矢印68の向きに回動する。その結果、給送ローラ75は、当接位置から離間位置へと移動する。以上より、回動部材30は、給送用モータ78から逆転の回転駆動力が付与されると、給送ローラ75を当接位置から離間位置へと移動させる。
また、給送用モータ78の逆転の回転駆動力が伝達されることにより、第3駆動伝達部37の回動軸50は、図12(A)に示されるように、矢印124の向きに回転する。これにより、移動部材64のスライド部材116が、突起51に押されることによって、第1側面122から第2側面123に向けて移動する。その結果、移動部材64の当接部材117は退避位置から突出位置へ向けて移動する。
ここで、上述したように、第2駆動伝達部36は、キー73及びキー溝74の構成を有することにより、ギヤ48Bは周方向の遊びを有する。これにより、給送用モータ78が正転した場合と同様に、ギヤ48Bから回動軸66への回転駆動力の伝達に遅延が生じる。その結果、給送用モータ78の逆転開始後において、給送ローラ75の回転開始及び回動部材30の回動開始タイミングは、移動部材64の移動開始タイミングよりも後になる。また、回動部材30が回動を開始してから給送ローラ75が記録用紙Sから離間するまでの時間と、移動部材64の当接部材117が退避位置から突出位置へ向けて移動を開始してから突出位置へ到達するまでの時間とは、相違する。
よって、給送ローラ75が記録用紙Sから離間するタイミングは、移動部材64の当接部材117が突出位置に到達するタイミングよりも後になる。つまり、図13(C)に示される状態において、給送用モータ78が逆転を開始した場合、最初に、退避位置から移動を開始した移動部材64が突出位置に到達し、次に、当接位置から移動を開始した給送ローラ75が離間位置に到達する。
なお、給送ローラ75が離間位置に到達すると同時に、または、給送ローラ75が離間位置に到達した後に、回動部材30は第1位置に到達する。また、移動部材64の当接部材117が突出位置に到達すると同時に、または、移動部材64の当接部材117が突出位置に到達した後に、移動部材64のスライド部材116は第2側面123に当接する(図12(B)参照)。
[変形例1]
上述の実施形態において、キー73が回動軸66に設けられ、キー溝74がギヤ48Bに設けられることによって、回動軸66とギヤ48Bとの間に、ギヤ48Bの周方向の遊びが形成されていたが、このような遊びが、給送ローラ75とローラギヤ49との間に形成されていてもよい。
以下に、給送ローラ75とローラギヤ49との間に遊びが形成されている構成の一例が詳述される。上述の実施形態において、ローラギヤ49は、給送ローラ75の回転軸83に取り付けられており回転軸83と一体に回転可能であったが、本例において、ローラギヤ49は、上述の実施形態における回動軸66及びギヤ48Bに設けられていたキー及びキー溝によって、回転軸83と連結されている。つまり、給送ローラ75の回転軸83に、回動軸66に設けられていたものと同構成のキーが設けられ、ローラギヤ49における当該キーに対応する箇所に、当該キーと嵌合されるキー溝、つまりギヤ48Bに設けられていたものと同構成のキー溝が設けられる。
これにより、ローラギヤ49の回転時にキー73がキー溝74に当接してキー溝74を押していない状態で、ローラギヤ49は給送ローラ75の回転軸83に対して空回りするため、給送ローラ75の回転軸83は回転しない。一方、ギヤ48Bの回転時にキー73がキー溝74に当接してキー溝74を押している状態で、給送ローラ75の回転軸83はローラギヤ49と一体に回転する。以上より、給送ローラ75の回転軸83とローラギヤ49とは、互いに周方向の遊びを有するキー及びキー溝によって嵌合している。
変形例1によれば、給送ローラ75の回転軸83とローラギヤ49との間に遊びが設けられているため、給送ローラ75の回転開始は、当該遊びの分だけローラギヤ49の回転開始から遅れる。一方、回動部材30は、ローラギヤ49の回転開始と同時に回動を開始する。これにより、給送ローラ75の回転開始を回動部材30の回動開始から遅らせることができる。その結果、回動部材30が第1位置から第2位置に回動した後で、給送ローラ75の回転を開始させることができる。また、回動部材30が第2位置から第1位置に回動した後で、給送ローラ75の回転を開始させることができる。その結果、逆転の回転駆動力が付与された給送ローラ75の回転による記録用紙Sの逆送が防止可能である。
[変形例2]
上述の実施形態において、給送ローラ75は2個設けられていたが、給送ローラ75の個数は2個以外であってもよい。例えば、給送ローラ75は、1個のみ設けられていてもよい。
[変形例3]
上述の実施形態において、ローラギヤ49は、一対の給送ローラ75の間に配置されていたが、一対の給送ローラ75の間以外に配置されていてもよい。例えば、ローラギヤ49は、給送ローラ75の右方に配置されていてもよい。
[変形例4]
上述の実施形態において、回動部材30はコロ92を備えていたが、回動部材30はコロ92を備えていなくてもよい。この場合、回動部材30が第1位置のとき、突出部96が、バイパストレイ71の平面45、または、当該平面45に支持された記録用紙Sに当接する。
[変形例5]
上述の実施形態において、回動部材30は、ローラギヤ49から回転駆動力が付与されて回動したが、駆動伝達機構79におけるローラギヤ49以外のギヤから回転駆動力が付与されて回動してもよい。例えば、回動部材30は、ギヤ48Eから回転駆動力が付与されて回動してもよい。この場合、摩擦部材113の一方の面は、ギヤ48Eに当接し、摩擦部材113の一方の面の裏側の面は、右側の側板94に当接している。以上より、トルクリミッタ32は、駆動伝達機構79におけるギヤ列を構成するギヤのいずれかと回動部材30との間に設けられていればよい。
[変形例6]
上述の実施形態において、給送装置70は、バイパストレイ71の平面45に支持された記録用紙Sを給送する装置であったが、給送装置70は、バイパストレイ71の平面45以外のトレイに支持された記録用紙Sを給送する装置であってもよい。例えば、給送装置70は、給送トレイ20に支持された記録用紙Sを給送するための装置であってもよい。
この場合、給送装置70は、バイパストレイ71、給送ローラ75、給送アーム76、及び下側ガイド部材97の代わりに、給送トレイ20、給送ローラ25、給送アーム26、及び分離部材132を備えている。そして、回動部材30は、給送アーム26の先端部に設けられている。また、第1規制部107及び第2規制部108は、給送アーム26に設けられている。また、移動部材64は、分離部材197の右側及び左側に設けられた凹部(不図示)に配置されている。
[変形例7]
上述の実施形態において、給送装置70は、プリンタ部11に設けられていたが、給送装置70を備える装置はプリンタ部11に限らない。例えば、給送装置70は、スキャナ部12に設けられていてもよい。この場合、給送装置70は、スキャナ部12によって画像を読み取られる用紙をスキャナ部12内部へ給送するものである。
[変形例8]
上述の実施形態において、回動部材30は、給送ローラ75の回転軸83を中心に給送ローラ75に対して回動するものであった。これにより、図14に示される状態、つまりバイパストレイ71に支持可能な最大積載枚数の記録用紙Sが支持され且つ給送ローラ75及び回動部材30がバイパストレイ71に支持された最上の記録用紙Sに当接した当接状態において、回動部材30の回動軸は、回動部材30と最上の記録用紙Sとの当接位置150から、給送ローラ75の回転軸83と同じ距離だけ離間していた。
ここで、給送ローラ75及び回動部材30の双方が記録用紙Sに当接した当接状態となるのは、第1位置から第2位置に回動する回動部材30が記録用紙Sから離間する直前、または、第2位置から第1位置に回動する回動部材30が記録用紙Sに当接した直後である。
上述の実施形態と異なり、回動部材30は、給送ローラ75の回転軸83とは異なる回動軸151を中心に回動するものであってもよい。例えば、図15(A)に示されるように、当接状態において、回動部材30の回動軸151は、当接位置150に対して、給送ローラ75の回転軸83より離間していてもよい。
図15(A)に示される構成の場合、トルクリミッタ32の摩擦部材113は、図15(B)に示されるように、回動部材30の回動軸151と当接位置150との間において、回動部材30のローラギヤ49側の面に貼り付けられている。これにより、凹部54に配置された圧縮コイルばね114(図9(B)参照)によって、ローラギヤ49は摩擦部材113に押しつけられる。その結果、ローラギヤ49から回動部材30へ、回転駆動力が伝達される。以上より、トルクリミッタ32は、回動部材30の回動軸151と当接位置150との間において、ローラギヤ49から回動部材30へ回転駆動力を伝達する。
図15(A)に示される当接状態において、回動部材30が第2位置から第1位置へ向かう向き(矢印106の向き)に回動して、つまり回動部材30が最上位置の記録用紙Sを押して、給送ローラ75を持ち上げるための条件式は、f<=((T*11)/(L*l2))*cosθである。
ここで、f(単位はニュートン(N))は、回動する回動部材30が最上位置の記録用紙Sを押す力である。T(単位はN・m)は、ローラギヤ49の回転駆動力(トルク)である。L(単位はm)は、ローラギヤ49の回転軸(給送ローラ75の回転軸83)とローラギヤ49が回動部材30から摩擦を受ける作用位置152との距離である。l1(単位はm)は、回動部材30の回動軸151と作用位置152との距離である。l2(単位はm)は、回動部材30の回動軸151と当接位置150との距離である。θ(単位はrad)は、作用位置152におけるローラギヤ49の回転向きの力F(単位はN)と作用位置152における回動部材30の回動向きの力(単位はN)とのなす角である。
そして、ローラギヤ49の回転駆動力が摩擦部材113を介して回動部材30に伝達される際において、当該回転駆動力の伝達効率を高めるためには、上記条件式において、ローラギヤ49の回転駆動力Tをできるだけ小さく維持しつつ、回動部材30の回動駆動力f*(l2)を大きく維持する必要がある。つまり、上記条件式の右辺の値を変えることなく、Tを小さくする必要がある。そして、そのための1つの方法は、上記条件式の右辺のl1/l2を小さくすることである。
上述の実施形態によれば、図14に示されるように、回動部材30の回動軸は、当接位置150から、給送ローラ75の回転軸83と同じ距離だけ離間している。また、変形例8によれば、図15(A)に示されるように、回動部材30の回動軸151は、給送ローラ75の回転軸83よりも当接位置150から離間している。つまり、上述の実施形態及び変形例8によれば、回動部材30の回動軸151は、当接位置150から給送ローラ75の回転軸83以上に離間している。
また、摩擦部材113は、回動部材30の回動軸151と当接位置150との間において、ローラギヤ49から回動部材30へ回転駆動力を伝達するものであるため、l1<l2となる。よって、l1/l2は1未満である。
そして、この場合、作用位置152を変えることなく、回動部材30の回動軸151を当接位置150から大きく離間させる程、上記条件式において、l1/l2を1に近づける、つまりl1/l2を大きくすることができる。これにより、l1/l2を大きくした分だけTを小さくすることによって、上記条件式の右辺の値を変えることなく、Tを小さくすることができる。その結果、上記伝達効率を高めることができる。
つまり、上述の実施形態及び変形例8のように、回動部材30の回動軸151の当接位置150からの距離を、給送ローラ75の回転軸83の当接位置150からの距離以上に構成することによって、すなわち回動部材30の回動軸151の当接位置150からの距離を長くすることによって、上記伝達効率を高めることができる。
また、バイパストレイ71の平面45に最大積載枚数の記録用紙Sが支持された状態において、回動部材30が記録用紙Sを押して給送ローラ75を持ち上げるために必要な力が最も大きくなる。よって、上述したような当接状態において上記伝達効率を高めることによって、記録用紙Sの積載枚数にかかわらず、回動部材30に給送ローラ75を持ち上げさせることができる。
なお、変形例8及び後述する変形例9において、当接状態は、バイパストレイ71に支持可能な最大積載枚数の記録用紙Sが支持され且つ給送ローラ75及び回動部材30がバイパストレイ71に支持された最上の記録用紙Sに当接した状態であったが、当接状態においてバイパストレイ71に支持される記録用紙Sの枚数は最大積載枚数に限らない。例えば、当接状態においてバイパストレイ71に支持される記録用紙Sの枚数は1枚であってもよい。また、当接状態においてバイパストレイ71に支持される記録用紙Sの枚数は0枚であってもよい。つまり、当接状態において記録用紙Sがバイパストレイ71に支持されていなくてもよい。
[変形例9]
変形例9において、回動部材30の回動軸151は、図16に示される位置である。つまり、図16に示されるように、当接状態において、回動部材30の回動軸151は、右方または左方から見た側面視で、当接位置150と給送ローラ75の回転軸83とを結んだ直線153上に配置されている。なお、回動軸151の位置以外の回動部材30及び摩擦部材113の構成は、変形例8と同様である。
変形例8で述べたように、ローラギヤ49から回動部材30への回転駆動力の伝達効率を高めるためには、変形例8で述べた条件式の右辺の値を変えることなく、Tを小さくする必要がある。そして、そのための変形例8で述べた方法(上記条件式の右辺のl1/l2を小さくすること)とは異なる方法は、上記条件式の右辺のcosθを大きくすることである。
変形例9によれば、回動部材30の回動軸151は、右方または左方から見た側面視で当接位置150と給送ローラ75の回転軸83とを結んだ直線153上に配置されている。これにより、上記条件式において、作用位置152におけるローラギヤ49の回転向きの力Fと作用位置における回動部材30の回動向きの力Fcosθとを同じ向きにすることができる。つまり、θを零にして、cosθを最大値である1にすることができる。これにより、cosθを大きくした分だけTを小さくすることによって、上記条件式の右辺の値を変えることなく、Tを小さくすることができる。その結果、上記伝達効率を高めることができる。