JP2015111266A - 光学樹脂材料および光学フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性、異物欠陥が少なく、優れた耐熱性、機械的強度を有する光学樹脂材料、および光学フィルムを提供する。【解決手段】少なくとも1層の架橋構造を有するビニル系重合体(A)の存在下に、ビニル系単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体(C)を含有し、前記グラフト共重合体(C)の配向複屈折が−15?10−4から15?10−4、光弾性定数が−10?10−12から10?10−12Pa−1である、光学樹脂材料。【選択図】なし
Description
本発明は、光学樹脂材料および光学フィルムに関する。
各種の光学関連機器で用いられるフィルム状、板状、レンズ状等の光学部材(例えば、液晶表示装置で用いられるフィルムや基板、プリズムシート等;光ディスク装置の信号読み取り用レンズ系中のレンズ、プロジェクションスクリーン用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等)を構成する材料として、光透過性の樹脂が汎用されており、このような樹脂は一般に「光学樹脂」あるいは「光学ポリマー」と呼ばれている。
光学樹脂で光学部材を構成する場合に考慮しなければならない重要な光学的特性の1つに複屈折性がある。即ち、光学樹脂が大きな複屈折性を持つことは、多くの場合好ましくない。特に、上記の例示した用途(液晶表示装置、光ディスク装置、プロジェクションスクリーン等)においては、複屈折性を持つフィルム、レンズ等が光路中に存在すると、像質や信号読み取り性能に悪影響を及ぼすため、複屈折性をできるだけ小さく抑えた光学樹脂で構成された光学部材の使用が望まれる。また、カメラ用のレンズ、眼鏡レンズ等においても、複屈折性は小さい方が望ましいことも言うまでもないことである。
ところで、当技術分野において良く知られているように、光学ポリマーが示す複屈折には、その主因がポリマーの主鎖の配向にある「配向複屈折」と、応力に起因する「光弾性複屈折」がある。配向複屈折及び光弾性定数の符号は、ポリマーの化学構造に由来し、それぞれのポリマーに固有の性質である。
即ち、配向複屈折は、一般に鎖状のポリマーの主鎖(ポリマー鎖)が配向することにより発現する複屈折であり、この主鎖の配向は、例えばポリマーフィルム製造時の押出成形や延伸のプロセス、あるいは、各種形状の光学部材の製造時に多用されている射出成形のプロセスなど、材料の流動を伴うプロセスで生じ、それが光学部材に固定されて残る。ここで、ポリマー鎖の配向方向に対して、平行方向に屈折率が大きくなる場合は「配向複屈折は正」、直交する方向に屈折率が大きくなる場合は「配向複屈折は負」と表現する。
一方、光弾性複屈折は、ポリマーの弾性的な変形(歪み)に伴って引き起こされる複屈折である。ポリマーを用いた光学部材においては、例えばそのポリマーのガラス転移温度付近からそれ以下の温度に冷却された際に生じる体積収縮により、弾性的な変形(歪み)が材料中に生じて残存し、それが光弾性複屈折の原因となる。また、例えば光学部材が通常温度(ガラス転移温度以下)で使用される機器に固定した状態で受ける外力によっても、材料は弾性的に変形し、それが光弾性複屈折を引き起こす。ここで、引張応力がかかっている方向(ポリマー鎖の配向方向)に対して、平行方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は正」、直行する方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は負」と表現する。
上記複屈折を抑制する報告は種々検討されている。たとえば、特許文献1には、配向複屈折の符号がお互いに逆で、且つ完全に相溶する2種類の高分子樹脂をブレンドすることにより、非複屈折性の光学樹脂材料が開示されている。しかしながら、該特許記載の2種類の高分子樹脂を均一に混合させ、全体的にムラ無く低配向複屈折を示す実用的な高分子樹脂を得ることは困難であり、凝集した高分子樹脂が異物欠陥の原因になりうる。また、それらブレンドされた高分子樹脂が固有に持っている屈折率の違いから、屈折率の不均一性による光散乱が生じ、透明性に優れた光学材料を得ることが出来ない。また、光弾性複屈折についての記載はないが、実施例のポリマー組成では光弾性複屈折がかなり大きくなることが予想される。さらには機械的強度、特には耐衝撃性が必ずしも十分ではなく、割れ等の課題が発生するなど、実用上問題がある。
特許文献2には、透明な高分子樹脂からなるマトリックスに、前記高分子樹脂材料が有する配向複屈折性を打ち消す傾向の配向複屈折性を示す低分子物質を添加することにより、非複屈折性の光学樹脂材料を得る方法が開示されている。この低分子物質は分子量が5000以下であり、得られた成形体の透明性に関しては良好であるが、光弾性複屈折や機械的強度の改善に関しては記載されていない。
特許文献3には、透明な高分子樹脂に、前記高分子樹脂が外力により配向するのに伴ってこの結合鎖の配向方向と同じ方向に配向し、かつ、複屈折性を有する微細な無機物質を配合することにより、低配向複屈折の光学樹脂材料を得る方法が開示されている。この方法においても配向複屈折は低くできるが、光弾性複屈折や機械的強度の改善に関しては記載されていない。
特許文献4には、2元系以上の共重合系を含む3成分以上の複合成分系を持つ光学材料について、それら複合成分系の成分の組み合わせ及び成分比(組成比)を、該光学材料が配向複屈折性と光弾性複屈折性の双方が同時に相殺されるように選択することにより、配向複屈折と光弾性複屈折が小さい非複屈折性光学樹脂材料を得る方法が開示されている。この方法では従来実現できなかった配向複屈折、光弾性複屈折の両方を同時に極めて小さくできる。ただし、配向複屈折、光弾性複屈折を同時に相殺できるようにするためには組成がある程度限定されるため、ガラス転移温度が80℃未満になるなど低くなり、また機械的強度も低くなるなどの課題がある。また、溶融押出によるフィルム成形など、高温で滞留するような成形条件において、ポリマーが分解するなどの課題も想定される。
特許文献5には、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂と、アクリル系ゴム状重合体に、ビニル基重合性単量体をグラフト重合させて得られたグラフト共重合体(「コア/シェル」型の耐衝撃性改良剤、以下コアシェルポリマーとも記載する)の組み合わせにより、高い耐熱性を有しながら、フィルムとしての機械的強度、とりわけ耐折り曲げ性に優れた樹脂組成物、並びに光学フィルムを得る方法が提示されている。ただし、実施例には配向複屈折、光弾性複屈折のデータがなく、複屈折の改良効果は不明である。特に光弾性複屈折の改善に関しては明細書中に記載がない。また、グラフト共重合体は機械的強度改善のために添加されていることは記載されているが、グラフト共重合体の説明に複屈折への影響に関しては全く記載されておらず、また実施例にも配向複屈折、光弾性複屈折に関する記載がないことから、グラフト共重合体に複屈折を調整させる機能も持たせるという技術思想は存在しないことは明らかである。
特許文献6には、アクリル系樹脂、及びアクリル系ゴムを含む樹脂組成物を成形してなる光学フィルムであって、前記アクリル系樹脂が、メタクリレート単量体由来の繰り返し単位、ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位、芳香族基を有するメタクリレート単量体由来の繰り返し単位、環状酸無水物繰り返し単位を含有する耐熱アクリル系樹脂であることを特徴とする光学フィルムに関して開示されている。当該文献では、高い耐熱性、及び優れたトリミング性を有し、かつ、延伸時においても光学特性に優れる光学フィルムであることが記載されている。ただし、トリミング性の改善に関しては記載があるが、フィルムの折り曲げ時の耐割れ性など、トリミング性以外の機械的強度に関しては記載がなく、当該文献だけでは機械的強度が実用上問題ないレベルかどうかは不明である。また、100%延伸時(2倍延伸時)の複屈折(配向複屈折)が実施例にて高いままであり、配向複屈折と光弾性係数(光弾性複屈折)の両方がともに小さい実施例はなく、複屈折の改善は十分ではない。さらに、当該文献のアクリル系ゴムは実施例より、いわゆるグラフト共重合体(コアシェルポリマー)であり、ヘイズ等の透明性を維持しながら機械的強度を改善することを目的に添加されていることは記載されているが、複屈折への影響に関しては全く考慮されていない。たとえば、実施例と比較例を比較した場合、アクリル系ゴムを添加することで、アクリル樹脂のみの比較例に対して配向複屈折は逆に大きくなっており、また光弾性係数(光弾性複屈折)はアクリル樹脂のみの比較例と同等である。また、耐熱アクリル系樹脂の光弾性定数は負であり、またアクリル系ゴムも組成から光弾性定数は負と推定されることより、アクリル系ゴムは配向複屈折、光弾性複屈折を悪化はさせても、調整する技術思想は当該文献には記載されていないことは明らかである。
本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性、異物欠陥が少なく、優れた耐熱性、機械的強度を有する光学樹脂材料、および光学フィルムを提供することを目的とする。
光学部材、特には光学フィルムにおいて、高い耐熱性、および機械的強度が必要とされるケースが多い。特に、液晶ディスプレイ用の光学フィルムとして使用される場合には、実使用時はもちろん、フィルムコーティング工程等の製造工程で高温にさらされたりするため、高い耐熱性が必要となる。また、フィルム製造時はもちろん、フィルムにコーティングしたあとや、他の部材と張り合わせしたあとでの打ち抜き工程など、トリミング性や、耐割れ性などの機械的強度も必要となる。
しかし、先述した従来技術のとおり、2種類の樹脂のブレンドでは複屈折制御をしながら完全に相溶性をあわせるポリマー設計が難しい。また、有機低分子化合物、無機物質の添加による方法では配向複屈折、光弾性複屈折の両方をゼロに近づけ、かつ機械的強度、耐熱性を満たすことは難しい。2元系以上の共重合系を含む3成分以上の複合成分系を持つ光学材料による方法では、複屈折制御をするためにポリマー設計がかなり制限されるため、特に、機械的強度、耐熱性を満たすことは難しい。そのため、実用化のためには、非複屈折性、機械的強度、耐熱性を同時に満たす光学樹脂材料、および光学フィルムの開発が望まれている。
このような事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討したところ、同組成のポリマーでも、架橋構造を形成しているか、架橋構造を形成していないかによって、複屈折の発現性が大きく異なることを新たに発見した。具体的には、少なくとも1層の架橋構造を有する多層構造体(グラフト共重合体)において、架橋重合体層は複屈折への寄与が小さいが、硬質重合体層は複屈折への寄与が大きい点を発見した。このことより、硬質重合体層を複屈折が小さくなるようにポリマー設計することで、グラフト共重合体全体の非複屈折化を実現できることを見出した。
さらに、グラフト共重合体は、架橋重合体層と硬質重合体層とが共有結合しているため、架橋重合体層からなる島ドメインが均一分散した成形体とすることができ、高い機械的強度を有しながら、耐熱性も同時に満たす成形体が得られることも発見した。また、従来技術にある2種類のポリマーブレンドによる方法にくらべ、ポリマーの相溶性を考慮する必要性が低い。これらの見地から、ポリマー設計の自由度が高く、かつ、より優れた光学樹脂材料、および光学フィルムを実現できることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも1層の架橋構造を有するビニル系重合体(A)の存在下に、ビニル系単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体(C)を含有し、前記グラフト共重合体(C)の配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である、光学樹脂材料に関する。
本発明の光学樹脂材料において、前記ビニル系単量体混合物(B)は、単独重合させた場合に配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1であることが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記架橋構造の少なくとも一層が軟質層であることが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記ビニル系重合体(A)が、(メタ)アクリル系架橋重合体層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)が硬質重合体層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)が非架橋構造の硬質重合体層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記ビニル系重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能な単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるものが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)は、架橋構造の軟質の内層、および硬質の非複屈折性の外層を有し、前記内層が(メタ)アクリル系架橋重合体層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)は、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、前記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、前記中間層が(メタ)アクリル系架橋重合体の軟質重合体層を有し、前記外層が硬質の非複屈折性の重合体層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)が、さらに軟質の最内層を有することが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、前記グラフト共重合体(C)が有する少なくとも1層の架橋構造のうち、最も外側に位置する架橋構造層までの体積平均粒子径が20〜450nmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
本発明の光学樹脂材料において、前記ビニル系重合体(A)が有する架橋構造重合体の含有量が、光学樹脂材料100重量部において1〜60重量部であることが好ましい。
本発明の光学樹脂材料において、さらに、複屈折性を有する無機微粒子を含有させてもよい。
本発明の光学樹脂材料において、さらに、複屈折性を有する低分子化合物を含有させてもよい。
本発明の光学樹脂材料において、さらに、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である樹脂(D)を含有させてもよい。
本発明の光学材料は、本発明の光学樹脂材料を成形してなる。
本発明の光学フィルムは、本発明の光学樹脂材料からなる。
本発明の光学フィルムは、溶融押出法により得られることができる。
本発明の光学フィルムは、厚みが10〜500μmであることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、配向複屈折が−2×10−4から2×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1であることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、引張破断点伸度が10%以上であることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、アクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、未延伸フィルムであってもよい。
本発明の光学フィルムは、延伸されてもよい。
本発明の積層品は、本発明の光学フィルムを基材に積層してなる。
本発明の光学樹脂材料によれば、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性、異物欠陥が少なく、耐熱性に優れ、機械的強度を有する成形品を得ることができ、得られる成形品は光学部材に好適であり、特に光学フィルムに最適である。
本発明の光学フィルムは、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性、異物欠陥が少なく、且つ、優れた耐熱性、機械的強度を有する。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されない。
本発明の光学樹脂材料は、必須成分として、少なくとも1層の架橋構造を有するビニル系重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合して得られ、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1を満たすグラフト共重合体(C)を含有することを特徴とする。
ここで本発明の技術思想について説明する。
(1)架橋構造を含有する多層構造にする技術思想
本発明のグラフト共重合体(C)は、少なくとも1層の架橋構造(架橋重合体層)を有するビニル系単量体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合することによって得られるものである。これにより、グラフト共重合体(C)を含有する光学樹脂材料で成形体を作製した場合、成形体中では、ビニル系単量体混合物(B)を重合してなる層がマトリックス(海)、架橋重合体層が分散するドメイン(島)となる、「海島構造」をとる事ができる。
本発明のグラフト共重合体(C)は、少なくとも1層の架橋構造(架橋重合体層)を有するビニル系単量体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合することによって得られるものである。これにより、グラフト共重合体(C)を含有する光学樹脂材料で成形体を作製した場合、成形体中では、ビニル系単量体混合物(B)を重合してなる層がマトリックス(海)、架橋重合体層が分散するドメイン(島)となる、「海島構造」をとる事ができる。
特に、本発明のグラフト共重合体(C)は、ビニル系重合体(A)の架橋重合体層の少なくとも1層を「軟質」に、ビニル系単量体混合物を重合してなる層を「硬質」にする場合、軟質の島ドメインが硬質の樹脂層に分散した形態を有する不連続な海島構造をとるため、機械的強度を飛躍的に向上させると同時に、高い耐熱性も同時に実現可能である。この技術思想とは別に、機械的強度を向上させるために軟質のポリマー(例えば、エラストマー)を添加する方法も挙げられるが、この場合、マトリックス樹脂と軟質ポリマーが均質に混ざってしまい、得られる成形体の耐熱性を下げてしまう。
更に、ビニル系重合体(A)が有する架橋構造層がサブミクロンサイズに調整され、更にビニル系単量体混合物(B)の重合体によってビニル系重合体(A)の表面が被覆されている場合には、分散するドメイン(島)の大きさがサブミクロンサイズに固定され、数mm、数cmなどの大きさに凝集・肥大することがない。従って、透明性を悪化させにくく、またフィッシュアイなどの異物になりにくくすることができる。更に、ドメインとマトリックス(島と海)の屈折率が多少ずれていても、透明性の悪化度を小さくできる。
(2)複屈折を小さくする技術思想
本発明のグラフト共重合体(C)は、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1であることも特徴である。
本発明のグラフト共重合体(C)は、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1であることも特徴である。
光学的に等方にするためには、配向複屈折と光弾性複屈折をいかに小さくするかというのが重要である。そのため、ここでは、本発明におけるグラフト共重合体(C)、光学樹脂材料、並びに光学フィルムの「配向複屈折」および「光弾性複屈折」について説明する。
(配向複屈折に関する考え方)
高吐出条件、フィルム引取条件、低温成形など、フィルム中でポリマーが配向するような成形以外の、通常の溶融押出成形にてフィルムを作製した場合、フィルム中のポリマーの配向はそれほど大きくない。実際にPMMAで代表されるアクリル系樹脂であれば、意図的な延伸工程がない溶融押出フィルム(以下、原反フィルムまたは原料フィルムと呼ぶ。)の複屈折はそれほど大きくなく、用途にもよるが実用上問題が無い場合もある。もちろん、ポリマーが配向するような成形条件や、原反フィルムを延伸工程させた場合には、フィルム中でポリマーが配向し、その結果複屈折が発生する。この場合の複屈折は、ポリマーが配向することによって発生する複屈折であるため、一般に配向複屈折と呼ばれる。本発明の光学樹脂材料をどのように成形するか、またフィルムの場合には延伸させるのか、ということによって、本発明の光学樹脂材料から得られる成形体、特には光学フィルムの配向複屈折を小さくするため、グラフト共重合体(C)の配向複屈折を小さくする必要がある。逆に、フィルム等の成形体中でポリマーがほとんど配向せず、複屈折が十分に小さい場合には、グラフト共重合体(C)の配向複屈折に関してはそれほど考慮する必要が無く、樹脂設計上、特に制限を受けないことになる。
高吐出条件、フィルム引取条件、低温成形など、フィルム中でポリマーが配向するような成形以外の、通常の溶融押出成形にてフィルムを作製した場合、フィルム中のポリマーの配向はそれほど大きくない。実際にPMMAで代表されるアクリル系樹脂であれば、意図的な延伸工程がない溶融押出フィルム(以下、原反フィルムまたは原料フィルムと呼ぶ。)の複屈折はそれほど大きくなく、用途にもよるが実用上問題が無い場合もある。もちろん、ポリマーが配向するような成形条件や、原反フィルムを延伸工程させた場合には、フィルム中でポリマーが配向し、その結果複屈折が発生する。この場合の複屈折は、ポリマーが配向することによって発生する複屈折であるため、一般に配向複屈折と呼ばれる。本発明の光学樹脂材料をどのように成形するか、またフィルムの場合には延伸させるのか、ということによって、本発明の光学樹脂材料から得られる成形体、特には光学フィルムの配向複屈折を小さくするため、グラフト共重合体(C)の配向複屈折を小さくする必要がある。逆に、フィルム等の成形体中でポリマーがほとんど配向せず、複屈折が十分に小さい場合には、グラフト共重合体(C)の配向複屈折に関してはそれほど考慮する必要が無く、樹脂設計上、特に制限を受けないことになる。
ここで、本発明における「配向複屈折」は、ポリマー鎖が配向することにより発現する複屈折であることは先に述べたとおりであるが、ポリマー鎖の配向度によってポリマーフィルム中の複屈折(配向複屈折)は変わる。よって、本発明では、「配向複屈折」を求める際には以下の条件で測定することと定義する。
光学樹脂材料やグラフト共重合体(C)やビニル系単量体混合物(B)の単独重合体はなんらかの成形体にして、その配向複屈折を測定する必要があり、本発明ではフィルムまたはシートとする。ここでは、溶融押出成形フィルムとプレス成形シートとを挙げて説明する。
・フィルムでの「配向複屈折」の測定
まず、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、複屈折を測定する。
・シートでの「配向複屈折」の測定
本発明のグラフト共重合体(C)は、そのポリマー組成によっては溶融押出することが困難な場合もある。そのため、グラフト共重合体(C)はプレス成形シートにより配向複屈折を測定する。また、グラフト共重合体(C)と同様に、光学樹脂材料等がフィルム化困難である場合にも、プレス成形シートにより配向複屈折を測定する。
・フィルムでの「配向複屈折」の測定
まず、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、複屈折を測定する。
・シートでの「配向複屈折」の測定
本発明のグラフト共重合体(C)は、そのポリマー組成によっては溶融押出することが困難な場合もある。そのため、グラフト共重合体(C)はプレス成形シートにより配向複屈折を測定する。また、グラフト共重合体(C)と同様に、光学樹脂材料等がフィルム化困難である場合にも、プレス成形シートにより配向複屈折を測定する。
以下に、プレス成形シートを用いた場合の「配向複屈折」の測定条件について説明する。
まず、グラフト共重合体(C)を190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス成形シートを作製する。得られたプレス成形シートの中央部から、25mm×90mmの試験片を切り出し、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたシートを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、複屈折を測定する。
上記の「配向複屈折」は、ポリマーの配向度に依存するため、延伸条件を含め、種々のサンプル作製条件により影響を受けるため、上記のように評価条件を明示した。たとえば延伸温度はガラス転移温度に対して−30℃〜+30℃、+0℃〜+30℃がより好ましく、+5℃〜+30℃の温度範囲にするなど、適宜設定すればよい。ただし、各サンプル間での複屈折性の符号、相対的な大小関係を定量的に得るためには、延伸条件等の測定条件がほぼ同じところでの測定値を用いることが重要である。
(光弾性複屈折(光弾性定数)に関する考え方)
先に説明したとおり、光弾性複屈折は成形体に応力が加わった場合に成形体中のポリマーの弾性的な変形(歪)に伴って引き起こされる複屈折である。光弾性定数は、以下式のとおり応力差Δσによって複屈折差Δnが生じた場合のΔσの係数γとして定義される。
先に説明したとおり、光弾性複屈折は成形体に応力が加わった場合に成形体中のポリマーの弾性的な変形(歪)に伴って引き起こされる複屈折である。光弾性定数は、以下式のとおり応力差Δσによって複屈折差Δnが生じた場合のΔσの係数γとして定義される。
Δn=γΔσ
ここで、引張応力がかかっている方向(ポリマー鎖の配向方向)に対して、平行方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は正」、直行する方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は負」と表現する。
ここで、引張応力がかかっている方向(ポリマー鎖の配向方向)に対して、平行方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は正」、直行する方向に屈折率が大きくなる場合は「光弾性複屈折は負」と表現する。
実際には、そのポリマーに固有の「光弾性定数」を求めることで、その材料の光弾性複屈折の度合いを評価することができる。まずポリマー材料に応力を印加し、弾性的な歪みが生じた際の複屈折を測定する。得られた複屈折と応力との比例定数が光弾性定数である。この光弾性定数を比較することにより、ポリマーの応力印加時の複屈折性を評価することができる。
上述の「配向複屈折」と同様に、光学樹脂材料やグラフト共重合体(C)やビニル系単量体混合物(B)の単独重合体はなんらかの成形体にして、その配向複屈折を測定する必要があり、本発明ではフィルムまたはシートとする。ここでは、溶融押出成形フィルムとプレス成形シートとを挙げて説明する。
・フィルムの「光弾性定数」
上記「配向複屈折」の項の記載同様、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、TD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断する(TD方向に長辺がくるように切り出す)。次に、23℃において、試験片フィルムの長辺の一方を固定し、他方に無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で、各々の印加時の複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出し、光弾性定数を算出する。
・シートの「光弾性定数」
本発明のグラフト共重合体(C)は、そのポリマー組成によっては溶融押出することが困難な場合もある。そのため、グラフト共重合体(C)はプレス成形シートにより光弾性複屈折を測定する。また、グラフト共重合体(C)と同様に、光学樹脂材料等がフィルム化困難である場合にも、プレス成形シートにより配向複屈折を測定する。
上記「配向複屈折」の項の記載同様、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、TD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断する(TD方向に長辺がくるように切り出す)。次に、23℃において、試験片フィルムの長辺の一方を固定し、他方に無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で、各々の印加時の複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出し、光弾性定数を算出する。
・シートの「光弾性定数」
本発明のグラフト共重合体(C)は、そのポリマー組成によっては溶融押出することが困難な場合もある。そのため、グラフト共重合体(C)はプレス成形シートにより光弾性複屈折を測定する。また、グラフト共重合体(C)と同様に、光学樹脂材料等がフィルム化困難である場合にも、プレス成形シートにより配向複屈折を測定する。
以下、プレス成形シートを用いた場合の「光弾性定数」の測定について説明する。
プレス成形シートは、グラフト共重合体(C)を190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス成形シートを作製し、得られたプレス成形シートの中央部から25mm×90mmの試験片を切り出す。
測定条件および算出法は、前述の溶融押出成形フィルムの場合と同じとする。
比較するサンプル間の厚み差が大きい場合、サンプル中での応力のかかり方が変わってくる可能性があり、光弾性定数の厳密な比較が難しい場合がある。ただし、本発明で説明している膜厚125μmのフィルム、膜厚500μmのプレス成形シートに関して、この程度の厚み差であれば、両サンプル間での応力のかかり方に大差はなく、光弾性定数の比較をすることが可能である。したがって、前記フィルムでも、プレス成形シートでも光弾性定数(複屈折)を測定するのに好適に使用できるが、評価サンプルの厚みが厚いほど、応力のかかり方にムラが生じる可能性があるため、フィルムを用いて測定することがより好ましい。配向複屈折の測定についても同様である。
光弾性複屈折は、そのポリマー構造に固有の特性であり、得られるポリマー(共重合体)の光弾性定数と、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの光弾性定数との間には、加成性が成り立つことが知られている。このことから、グラフト共重合体(C)自体の光弾性定数を小さくなるようにポリマー設計をする必要がある。
配向複屈折に関しては、先述のように、本発明の光学樹脂材料からなる成形体、特には光学フィルムにおいて、成形体中でポリマーの配向度がそれほど大きくなく、その成形体の配向複屈折が実用上問題が無い場合には、グラフト共重合体(C)の設計において配向複屈折の考慮をする必要は特にない。
ここで、非複屈折性でありながら、たとえば機械的強度や耐熱性を高くしようとした場合、先に説明した特許第4624845号に記載の非複屈折性のマトリックスに、ゴム状重合体にビニル基重合性単量体をグラフト重合させて得られたグラフト共重合体(「コア/シェル」型の耐衝撃性改良剤)の組み合わせにより、達成できるようにも思える。しかし、マトリックスとグラフト共重合体は厳密に相溶性をあわすことは困難な場合もあり、精密成形時にはお互いに分離して、凝集異物になるなどの恐れがある。また、場合によっては、マトリックスの非複屈折性を低くしても、グラフト共重合体をいれることで複屈折が生じてしまうおそれもある。一方、本発明は、グラフト共重合体(C)のみからなる樹脂材料にすることができ、非複屈折性と、機械的強度や耐熱性との両立を容易に達成しうる。つまり、ポリマーの相溶性を考慮する必要性が低くなることでポリマー設計の自由度が高くなり、より優れた光学樹脂材料の提供が可能になる。
本発明は、非複屈折性のグラフト共重合体(C)を成形材料として使用することにより、非複屈折性と、機械的強度、耐熱性、剛性、硬度などの物性を同時に発現することができる。グラフト共重合体(C)における架橋構造を有するビニル系重合体(A)は、マトリックスとなるビニル系単量体混合物(B)の重合体と共有結合している部分がある。これにより、架橋構造を有するビニル系重合体(A)からなる島ドメインがマトリックス中に均一に分散することが可能となる。
次にグラフト共重合体(C)の詳細な説明をする。
<ビニル系重合体(A)>
ここでは、グラフト共重合体(C)に含まれるビニル系重合体(A)について説明する。このビニル系重合体(A)は、少なくとも1層の架橋構造を有する。
ここでは、グラフト共重合体(C)に含まれるビニル系重合体(A)について説明する。このビニル系重合体(A)は、少なくとも1層の架橋構造を有する。
架橋構造の少なくとも1層は、架橋重合体層であれば「軟質」であっても「硬質」であってもよいが、「軟質」重合体層であることが好ましい。
本願において、「軟質」とは、重合体のガラス転移温度が20℃未満であることを意味する。軟質層の衝撃吸収能力を高め、耐割れ性などの耐衝撃性改良効果を高める観点から、重合体のガラス転移温度が0℃未満であることが好ましく、−20℃未満であることがより好ましい。
本願において、「硬質」および「軟質」重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値を用いることとする(例えば、ポリメチルメタクリレートは105℃であり、ポリブチルアクリレートは−54℃である)。
「軟質」重合体としては、ガラス転移温度が20℃未満の重合体であれば公知の重合体で良く、中でもゴム状重合体が好適に使用される。具体的には、例えば、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体などが挙げられる。なかでも、光学樹脂材料、および光学フィルムの耐候性(耐光性)、透明性の点で、(メタ)アクリル系架橋重合体が特に好ましい。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリルまたはメタクリル」を示す。
ここでは、好適な「軟質」の架橋重合体層である、(メタ)アクリル系架橋重合体層に関して、詳細に説明する。
(メタ)アクリル系架橋重合体層は、(メタ)アクリル系の架橋重合体であれば特に限定されないが、耐割れ性などの耐衝撃性の観点から、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なビニル単量体50〜0重量%、ならびに多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能なビニル単量体の総量(単官能性単量体成分の総量)100重量部に対して)を重合してなるものが好ましい。(メタ)アクリル系架橋重合体層は、単量体成分を全部混合して1段で重合してなる層であってもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してなる層であってもよい。
ここで用いられるアクリル酸アルキルエステルとしては、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。アクリル酸アルキルエステルは、単官能性単量体全体(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能なビニル単量体の総量)に対し50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの耐割れ性が悪化する場合がある。
アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体(以下、「共重合可能な単量体」と称することがある。)としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステルがあげられ、重合性やコストの点よりアルキル基の炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられる。また、他の共重合可能な単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルおよびその誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類等があげられる。これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
上述の単官能性単量体は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体と共重合されるため、得られる重合体が架橋体(ゴム)となる。ここで用いられる多官能性単量体としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
単官能性単量体に対する多官能性単量体の添加量は、単官能性単量体の総量100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えても、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
ビニル系重合体(A)は、少なくとも1層の架橋構造を有しておればよく、架橋構造の1層からなる重合体粒子であってもよいし、2層以上の多段重合体粒子であってもよいが、非複屈折性の発現のためには、少なくとも架橋した層がビニル系重合体(A)の最外層にあることが好ましい。
<ビニル系単量体混合物(B)の重合>
本発明のグラフト共重合体(C)は、上述のビニル系重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合して得られる。架橋構造を有するビニル系重合体(A)に、ビニル系単量体混合物(B)の重合体が共有結合(グラフト結合)することによって、ビニル系重合体(A)からなる島ドメインがマトリックス中に均一に分散しやすくなる。
本発明のグラフト共重合体(C)は、上述のビニル系重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合して得られる。架橋構造を有するビニル系重合体(A)に、ビニル系単量体混合物(B)の重合体が共有結合(グラフト結合)することによって、ビニル系重合体(A)からなる島ドメインがマトリックス中に均一に分散しやすくなる。
本発明において、ビニル系単量体混合物(B)の重合体は、「硬質」重合体であることが好ましい。本願において、「硬質」とは重合体のガラス転移温度が20℃以上であることを意味する。好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上、最も好ましくは70℃以上である。重合により合成したグラフト共重合体(C)を粉体として回収する際、粗大化や塊状化が起こりにくい。また、本発明の光学樹脂材料およびその成形体(フィルムなど)の耐熱性が良好である。さらに、ビニル系単量体混合物(B)の重合体は、光学的等方性の観点から、非架橋構造の硬質重合体であることが好ましい。
本発明の光学樹脂材料からなる成形体、特には光学フィルムの複屈折を極めて小さくすることができる効果は、主として、ビニル系単量体混合物(B)を重合してなる重合体により発現される。少なくとも1層の架橋構造を有するビニル系重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体(C)は、ビニル系重合体(A)とビニル系単量体混合物(B)の重合体のいずれかに限定せず、一方または両方の重合体の複屈折を、重合体組成の調整等により小さく設計を行うことができる。
架橋構造を有するビニル系重合体(A)は、架橋構造の存在により外力に対して変形し難く、ポリマー鎖の配向が起こり難く、複屈折の発現が抑えられる。また、架橋構造を有するビニル系重合体(A)の架橋密度を低く設定する場合には、外力により変形しやすく、ポリマー鎖の配向を生じる傾向があるため、架橋構造を有するビニル系重合体(A)の複屈折を小さくする設計とすることが好ましい。
ビニル系単量体混合物(B)の重合体は、成形時や応力をかけた時に、架橋構造を有するビニル系重合体(A)よりもポリマー鎖が応力方向に配向しやすく、複屈折を発現しやすい傾向にある。そのため、特にビニル系単量体混合物(B)の重合体の複屈折を小さく設計とすることが好ましい。
より好ましくは、ビニル系単量体混合物(B)の重合体からなる層が、グラフト共重合体(C)の外層であり、マトリックスと相互作用しやすくすると効果的である。
延伸工程を経ないなど、成形体中のポリマーの配向度が大きくなく、配向複屈折が実用上問題が無い場合には、成形体の光弾性定数が極めて小さくなるように、ビニル系単量体混合物(B)の重合体の光弾性定数を小さくするようポリマー組成を調整すればよい。一方、延伸工程を経るなど、フィルム等の成形体中のポリマーの配向度が大きくなり、成形体の配向複屈折が実用上問題となる場合には、成形体の光弾性定数および配向複屈折を小さくするようポリマー組成を調整することが好ましい。
具体的には、ビニル系単量体混合物(B)が、ビニル系単量体単量体(B)を単独重合した場合に得られる単独重合体の配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、前記単独重合体の光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1となるように組成を調整することが好ましい。配向複屈折は、より好ましくは−10×10−4〜10×10−4、さらに好ましくは−5×10−4〜5×10−4、なおさら好ましくは−1×10−4〜1×10−4、特に好ましくは−0.5×10−4〜0.5×10−4、最も好ましくは−0.2×10−4〜0.2×10−4である。また、光弾性定数は、より好ましくは−4×10−12〜4×10−12、さらに好ましくは−2×10−12〜2×10−12、なおさら好ましくは−1×10−12〜1×10−12、特に好ましくは−0.5×10−12〜0.5×10−12、最も好ましくは−0.3×10−12〜0.3×10−12である。
本発明の光学樹脂材料、および光学フィルムの光学的等方性を高める効果が高い、グラフト共重合体(C)の外層に位置する、ビニル系単量体混合物(B)重合体を例として、以下に説明することにする。
ビニル系重合体混合物(B)の単独重合体自体の光弾性複屈折を小さくするのに適したモノマー種に関しては、光弾性定数が異符号となるモノマー種を組み合わせて使用すればよい。
ポリマーの光弾性定数を設定する上で、参考になる具体的なモノマーの例を以下に記すが、これらに限定されるわけではない。([ ]内は対応するホモポリマーの光弾性定数)
正の光弾性複屈折を示すモノマー:
ベンジルメタクリレート [48.4×10−12Pa−1]
ジシクロペンタニルメタクリレート [6.7×10−12Pa−1]
スチレン [10.1×10−12Pa−1]
パラクロロスチレン [29.0×10−12Pa−1]
負の光弾性複屈折を示すモノマー:
メチルメタクリレート [−4.3×10−12Pa−1]
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート [−1.7×10−12Pa−1]
2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート [−10.2×10−12Pa−1]
イソボルニルメタクリレート [−5.8×10−12Pa−1]
共重合体の光弾性定数は、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの光弾性定数との間に加成性が成り立つことが知られている。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とベンジルメタクリレート(BzMA)の2元共重合系については、poly−MMA/BzMA=92/8(wt%)にて光弾性複屈折がほぼゼロになることが報告されている。また、2種以上のポリマー混合(アロイ)についても同様であり、各ポリマーが有する光弾性定数との間に加成性が成り立つ。以上のことから、本発明の光学樹脂材料、および光学フィルムの光弾性複屈折が小さくなるように、ビニル系単量体混合物(B)の重合体の光弾性定数を低くし、且つその配合量(wt%)を調整することが必要である。
正の光弾性複屈折を示すモノマー:
ベンジルメタクリレート [48.4×10−12Pa−1]
ジシクロペンタニルメタクリレート [6.7×10−12Pa−1]
スチレン [10.1×10−12Pa−1]
パラクロロスチレン [29.0×10−12Pa−1]
負の光弾性複屈折を示すモノマー:
メチルメタクリレート [−4.3×10−12Pa−1]
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート [−1.7×10−12Pa−1]
2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート [−10.2×10−12Pa−1]
イソボルニルメタクリレート [−5.8×10−12Pa−1]
共重合体の光弾性定数は、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの光弾性定数との間に加成性が成り立つことが知られている。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とベンジルメタクリレート(BzMA)の2元共重合系については、poly−MMA/BzMA=92/8(wt%)にて光弾性複屈折がほぼゼロになることが報告されている。また、2種以上のポリマー混合(アロイ)についても同様であり、各ポリマーが有する光弾性定数との間に加成性が成り立つ。以上のことから、本発明の光学樹脂材料、および光学フィルムの光弾性複屈折が小さくなるように、ビニル系単量体混合物(B)の重合体の光弾性定数を低くし、且つその配合量(wt%)を調整することが必要である。
また、共重合体ポリマーの配向複屈折は、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの固有複屈折との間に加成性が成り立つことが知られている。また、2種以上のポリマー混合(アロイ)についても同様であり、各ポリマーが有する固有複屈折との間に加成性が成り立つ。ビニル系単量体混合物(B)の重合体自体の配向複屈折を小さくするのに適したモノマー種に関しては、配向複屈折が異符号となるモノマー種を組み合わせて使用すればよい。
ポリマーの配向複屈折を設定する上で、参考になる具体的なモノマー(そのモノマーからなるホモポリマーの固有複屈折)の例を以下に記すが、これらに限定されるわけではない。なお、固有複屈折とは、ポリマーが完全に一方向に配向した状態のときの複屈折(配向複屈折)である。
正の固有複屈折を示すポリマー:
ポリベンジルメタクリレート [+0.002]
ポリフェニレンオキサイド [+0.210]
ビスフェノールAポリカーボネート [+0.106]
ポリビニルクロライド [+0.027]
ポリエチレンテレフタレート [+0.105]
ポリエチレン [+0.044]
負の固有複屈折を示すポリマー:
ポリメチルメタクリレート [−0.0043]
ポリスチレン [−0.100]
以上、一部のポリマーの光弾性定数、配向複屈折のデータを記載したが、ポリマーによっては配向複屈折が「正」、光弾性定数が「負」など、両方の複屈折が同じ符号であるとは限らない。次表に一部のホモポリマーの配向複屈折と光弾性複屈折(定数)の符号の例を示す。
ポリベンジルメタクリレート [+0.002]
ポリフェニレンオキサイド [+0.210]
ビスフェノールAポリカーボネート [+0.106]
ポリビニルクロライド [+0.027]
ポリエチレンテレフタレート [+0.105]
ポリエチレン [+0.044]
負の固有複屈折を示すポリマー:
ポリメチルメタクリレート [−0.0043]
ポリスチレン [−0.100]
以上、一部のポリマーの光弾性定数、配向複屈折のデータを記載したが、ポリマーによっては配向複屈折が「正」、光弾性定数が「負」など、両方の複屈折が同じ符号であるとは限らない。次表に一部のホモポリマーの配向複屈折と光弾性複屈折(定数)の符号の例を示す。
たとえば、poly(MMA/BzMA=82/18(wt%))付近の組成は配向複屈折がほぼゼロとなること、poly(MMA/BzMA=92/8(wt%))付近の組成は光弾性複屈折(定数)がほぼゼロとなることが知られている。
光弾性複屈折と配向複屈折の両方を極めて小さく、理想的には両方ともほぼゼロにするためのポリマー組成の好適な例として、特許第4624845号記載の、poly(MMA/3FMA/BzMA=55.5/38.0/6.5)が挙げられる。ただし、このポリマー組成はメタクリル酸エステル系のモノマーのみで構成されているため、高温成形においてはジッパー解重合が生じて分子量の低下がおき、機械的強度の低下、着色、発泡等の課題がある。この解決方法として、少量のアクリル酸エステルを共重合させることが挙げられ、高温成形時のジッパー解重合による過度の分解を抑えることが可能となる。
ビニル系単量体混合物(B)の組成に関しては特に限定はない。そのなかでも特に好適に使用されうるモノマー(単量体)を挙げるとすれば、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メタクリル酸イソボロニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジニル、メタクリル酸テトラメチルピペリジニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ペンタメチルピペリジニル、アクリル酸テトラメチルピペリジニル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボン酸類およびそのエステル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジフェニル無水マレイン酸等の無置換及び/又は置換無水マレイン酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチル等の(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;アクリロニトニル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類;マレイン酸、フマール酸およびそれらのエステル等;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレンなどのアルケン類;ハロゲン化アルケン類;アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーが挙げられる。これらのビニル系単量体は単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。特に複屈折制御の点から、応力に対してポリマー鎖が配向できる程度に多官能性モノマーを使用することが好ましいが、多官能性モノマーは使用しないことが特に好ましい。
上記のモノマーのうち、複屈折を小さくするという観点からは、分子構造中に、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基等の環構造を有するビニル系単量体が好ましく、中でも、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体を含有することがより好ましい。例えば、脂環式構造を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、芳香族基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類、または(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等を挙げることができる。複素環式構造を有する単量体としては、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。脂環式構造を有するビニル系単量体においては、その環構造は、多環式構造が好ましく、縮合環式構造がより好ましい。脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体としては、下記式(4)で表される単量体であることが好ましい。
上記式(4)において、R9は、水素原子、または、置換もしくは無置換で直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。R10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造または複素環式構造を有する。R9およびR10が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、カルボニル基(ケトン構造)、アミノ基、アミド基、エポキシ基、炭素−炭素間の二重結合、エステル基(カルボキシル基の誘導体)、メルカプト基、スルホニル基、スルホン基、及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。なかでも、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。lは1〜4の整数を示し、好ましくは0または1である。mは0〜1の整数を示す。nは0〜10の整数を示し、好ましくは0〜2の整数を示し、より好ましくは0または1である。
中でも、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体は、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましい。具体的には、上記式(4)において、R9が水素原子、もしくは、置換もしくは無置換で直鎖状または分岐状の炭素数1のアルキル基である(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましく、上記式(4)において、R10が置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造を有する(メタ)アクリレート系単量体であることがより好ましい。また、上記式(4)において、lは1〜2の整数である、nは0〜2の整数である、(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましい。
式(4)で表される(メタ)アクリレート系単量体のなかでも、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが好ましい。
式(4)で表される(メタ)アクリレート系単量体のなかでも、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが好ましい。
また、上記式(4)で表される単量体は、ビニル系単量体混合物(B)100重量%のうち、1〜99重量%含まれることが好ましく、より好ましくは1〜70重量%、さらにより好ましくは1〜50重量%含まれることが好ましい。
ビニル系単量体混合物(B)は全部混合して1段で重合してもよい。ビニル系単量体混合物(B)を単独で重合した際に得られるポリマーからなる成形体の複屈折が本発明を満たすのに十分な非複屈折性を有しておれば、単量体組成を変化させて2段以上で重合してもよい。
本発明に用いられるグラフト共重合体(C)のガラス転移温度は使用する条件、用途に応じて設定することができる。好ましくはガラス転移温度が80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上、よりさらに好ましくは110℃以上、最も好ましくは120℃以上である。
本発明のグラフト共重合体(C)は、配向複屈折が−15×10−4〜15×10−4、光弾性定数が−10×10−12〜10×10−12を満たす。配向複屈折は、好ましくは−10×10−4〜10×10−4、より好ましくは−5×10−4〜5×10−4、更に好ましくは−1.6×10−4〜1.6×10−4、なおさら好ましくは−1×10−4〜1×10−4、とりわけ好ましくは−0.5×10−4〜0.5×10−4、最も好ましくは−0.2×10−4〜0.2×10−4である。また、光弾性定数は、好ましくは−4×10−12〜4×10−12、より好ましくは−2×10−12〜2×10−12、更に好ましくは−1×10−12〜1×10−12、なおさら好ましくは−0.5×10−12〜0.5×10−12、最も好ましくは−0.3×10−12〜0.3×10−12である。
グラフト共重合体(C)は、多層構造中に、ビニル系重合体(A)が有する架橋構造の重合体層と、ビニル系単量体混合物(B)の重合体層を有すれば特に限定されないが、最外層が硬質であることが好ましく、この最外層がさらに非複屈折性であることがより好ましく、さらに非架橋構造であることが特に好ましい。硬質の最外層に有することにより、マトリックス成分(海)として機能しやすくなり、また、非架橋であるがゆえに応力に対して容易にポリマー鎖が配向するため、その非複屈折性を最大限に発揮でき、配向複屈折および光弾性定数をより小さくできるため、さらに光学的等方性に優れるフィルムを得やすくなる。ここで、「非複屈折性」の(重合体)層という場合における、「非複屈折性」とは配向複屈折および光弾性複屈折が低いことを意味し、具体的には配向複屈折が−15×10−4〜15×10−4、光弾性定数が−10×10−12〜10×10−12を満たすことが好ましい。
また、ビニル系重合体(A)とビニル系単量体混合物(B)との割合は、重量比で5:95〜95:5が好ましく、より好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜80:30、なおさら好ましくは25:75〜75:25、最も好ましくは30:70〜70:30である。ビニル系重合体(A)が5%より少ないと、十分な機械的強度が出ない場合がある。また、ビニル系重合体(A)が95%より多いと、成形時の溶融粘度が高くなり良好な成形体が得られなかったり、十分な非複屈折性も得られない、さらにはグラフト共重合体(C)を粉体化する際に粗粒化したり、塊状となり、生産性が悪くなる場合がある。
ビニル系単量体混合物(B)の一部は、ビニル系重合体(A)に共有結合して多層構造重合体を形成する。ビニル系重合体(A)に対して、ビニル系単量体混合物(B)がどのくらい共有結合しているかは、グラフト率で表すことができる。
グラフト共重合体(C)のグラフト率とは、ビニル系重合体(A)の重量を100とした場合の、ビニル系重合体(A)に対して、グラフト結合されたビニル系単量体混合物(B)の重量比率を表す指標である。このグラフト率は10〜250%が好ましく、より好ましくは40〜230%、最も好ましくは60〜220%の範囲である。グラフト率が10%未満では、グラフト共重合体(C)に他の非架橋の非複屈折性樹脂を添加した場合にグラフト共重合体(C)が凝集気味となり、透明性が低下したり、異物原因となる場合がある。また、引張破断時の伸びが低下しフィルム切断時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。一方、250%を超える場合では、成形時、たとえばフィルム成形時の溶融粘度が高くなりフィルムの成形性が低下する傾向がある。算出式は実施例の項にて説明する。
ビニル系単量体混合物(B)の一部は、ビニル系重合体(A)と結合していない(グラフトしていない)ポリマー(フリーポリマーとも言う)として存在する場合がある。本発明のグラフト共重合体(C)は、このフリーポリマーも含むものとする。
グラフト共重合体(C)は、ビニル系重合体(A)の有する架橋構造の重合体層およびビニル系単量体混合物(B)の重合体層を有する多層構造重合体であればよく、ビニル系単量体混合物(B)の重合体層が硬質重合体層であることが好ましく、さらに非架橋構造であることがより好ましい。グラフト共重合体(C)の好ましい一形態を例示すれば、軟質の内層および硬質の外層を有し、上記内層が(メタ)アクリル系架橋重合体層を有し、上記外層が非複屈折性の硬質の重合体層を有する形態を挙げることができる。この形態は生産性の観点から好ましい。その他の好ましい一形態を例示すれば、グラフト共重合体(C)が、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、上記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、上記中間層が(メタ)アクリル系架橋重合体層を有し、上記外層が非複屈折性の硬質重合体層を有する形態を挙げることができ、この形態はさらに軟質の最内層を有していてもよい。本発明においては、これらを適宜1種、または2種以上を組合せて使用することができる。
本願における、軟質の内層、軟質の中間層および軟質の最内層(以下、軟質層)は、少なくとも1種の軟質重合体からなる内層、中間層および最内層のことをいう。
一方、本願における、硬質の(最)外層および硬質の内層は、少なくとも1種の硬質重合体からなる(最)外層および内層のことをいう。
グラフト共重合体(C)が、例えば、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層からなる多層構造体のように、最内層に硬質層を有する場合は、最内層の硬質重合体としては、硬度や耐割れ性バランスの観点から、メタクリル酸エステル40〜100重量%、アクリル酸エステル0〜60重量%、芳香族ビニル単量体0〜60重量%、多官能性単量体0〜10重量%、ならびにメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、および芳香族ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体0〜20重量%からなる硬質重合体が好適に例示されうる。
グラフト共重合体(C)は、例えば、(メタ)アクリル系架橋重合体層を有する軟質の内層、および、硬質の外層からなる多層構造体である場合、軟質の内層を外層の硬質重合体が完全に被覆した層構造が一般的であるが、軟質の内層と硬質の外層の重量比等によっては、層構造を形成するための硬質重合体量が不充分な場合もありうる。そのような場合は、完全な層構造である必要はなく、軟質の内層の一部を外部となる硬質重合体が被覆した構造、或いは軟質の内層の一部に外部となる硬質重合体がグラフト重合した構造も好適に用いることができる。なお、その他形態の多層構造体についても同様のことが当てはまる。
グラフト共重合体(C)の架橋構造の重合体層までの体積平均粒子径は、20〜450nmが好ましく、20〜300nmがより好ましく、20〜150nmが更に好ましく、30〜80nmが最も好ましい。20nm未満では耐割れ性が悪化する場合がある。一方、450nmを超えると透明性が低下する場合がある。さらに、耐折り曲げ白化性の観点から、80nm未満にすることが好ましい。また、トリミング性の観点からは、20〜450nmが好ましく、50〜450nmがより好ましく、60〜450nmがより好ましく、100〜450nmが更に好ましい。なお、体積平均粒子径は、動的散乱法により、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。ここで、グラフト共重合体(C)の架橋構造の重合体層までの体積平均粒子径とは、具体的には、グラフト共重合体(C)粒子の中心から架橋構造の重合体層までの粒子の体積平均粒子径を指す。グラフト共重合体(C)が架橋構造の重合体層を2層以上有する場合は、中心に対して最も外側に位置する架橋構造の重合体層までの体積平均粒子径をいうものとする。
グラフト共重合体(C)中の架橋重合体の含有量は、グラフト共重合体(C)を100重量%とした場合、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜60重量%がさらに好ましく、35〜55重量%が最も好ましい。10重量%未満では、光学用樹脂材料の耐割れ性等の機械的強度が低くなる場合がある。一方、90重量%を上回ると、グラフト共重合体(C)の分散性が損なわれ、成形体の表面の平滑性が得られず、フィッシュアイ等の外観不良が発生する傾向がある。また、ビニル系単量体混合物(B)の含有量が十分ではなく、配向時の複屈折や光弾性定数が大きくなるなど光学的等方性を保てなくなる傾向がある。
グラフト共重合体(C)は、多段重合により得られるものであればよいが、この多段重合の少なくとも1段の重合として、(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下において、非複屈折性のポリマー組成となるビニル系単量体混合物(B)を重合することによって得られる、多段重合の(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体を好ましく使用できる。
(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子は、少なくとも(メタ)アクリル系ゴムを含有する多段重合体粒子であればよく、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なビニル単量体50〜0重量%、ならびに多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能なビニル単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるゴム((メタ)アクリル系架橋重合体)部を有することが好ましい。ゴム部は、単量体成分を全部混合して1段で重合してもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してもよい。
(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子は、多段重合における少なくとも1段の重合として(メタ)アクリル系架橋重合体(ゴム部)が形成されるものであれば特に限定されず、(メタ)アクリル系架橋重合体の重合段階の前および/または後に、硬質重合体の重合を行なっても良い。
中でも、生産性の点から、グラフト共重合体(C)が、(c−1)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能な単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子を得、(c−2)上記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下に、非複屈折性のポリマー組成となるビニル系単量体混合物(B)を重合して、(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体として得られるものを使用するのが好ましい。ここで、(c−1)重合段階の単量体混合物、および/または(c−2)重合段階のビニル系単量体混合物(B)は、単量体成分を全部混合して1段で重合してもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してもよい。また、(c−1)における、アクリル酸アルキルエステル、これと共重合可能な単量体および多官能性単量体、並びにこれらの好ましい使用量は、上述の(メタ)アクリル酸架橋重合体における例示と同様である。
グラフト共重合体(C)の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。グラフト共重合体(C)の重合については乳化重合法が特に好ましい。
グラフト共重合体(C)を乳化重合により製造する場合には、公知の乳化剤を用いて通常の乳化重合により製造することができる。具体的には、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。このうち、得られたグラフト共重合体(C)の熱安定性を向上させる観点から、特にはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましい。
乳化重合により得られる多層構造重合体ラテックスは、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、あるいは塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩、または塩酸、硫酸等の酸を凝固剤として添加することで凝固を行ない、適宜加熱処理等により凝固した樹脂分を水相より分離して、洗浄、乾燥を行なう、等の既知の方法により処理することで、粉末状の多層構造重合体が得られる。重合体ラテックスの凝固により多層構造重合体を得る場合には、凝固剤としては、酸や塩などの公知の凝固剤が使用できるが、得られた共重合体の成形時の熱安定性を向上させる観点からマグネシウム塩、特には硫酸マグネシウムを用いることが特に好ましい。
本発明の光学用樹脂材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、透明性を有する樹脂を添加してもよい。好適な例としては、具体的には、ビスフェノールAポリカーボネートに代表されるポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-マレイミド樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂及びその水素添加物、非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、スチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂、およびそのイミド環化、ラクトン環化、メタクリル酸変性等により改質された耐熱性のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートあるいはシクロヘキサンジメチレン基やイソフタル酸等で部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等の非晶ポリエステル樹脂あるいは結晶相を微細化した透明なポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等の透明性を有する熱可塑性樹脂が幅広く例示される。実使用を考えた場合、得られた成形体の全光線透過率が85%以上、好ましくは90%、より好ましくは92%以上になるように樹脂を選定することが好ましい。
上記樹脂のなかでも、アクリル系樹脂は、優れた光学特性、耐熱性、成形加工性などの面で特に好ましい。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むビニル重合性単量体を重合してなる樹脂であればよいが、メタクリル酸メチル30〜100重量%およびこれと共重合可能なモノマー70〜0重量%を重合して得られるアクリル樹脂がより好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えばアルキル残基の炭素数1〜10である(メタ)アクリル酸エステル(ただしメタクリル酸メチルを除く)が好ましい。具体的には、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル類:、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル類:、メタクリル酸、アクリル酸などのカルボン酸類およびそのエステル類:、アクリロニトニル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類:、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類:、マレイン酸、フマール酸およびそれらのエステル等:、塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類:、酢酸ビニル:、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレンなどのアルケン類:ハロゲン化アルケン類:、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーが挙げられる。これらのビニル単量体は単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
メタクリル酸メチル重合体中、メタクリル酸メチルは、30〜100重量%、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは50〜98重量%含有され、メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーは、70〜0重量%、好ましくは50〜0.1重量%、より好ましくは50〜2重量%含有される。メタクリル酸メチルの含有量が30重量%未満では(メタ)アクリル樹脂特有の光学特性、外観性、耐候性、耐熱性が低下してしまう傾向がある。また、加工性、外観性の観点から、多官能性モノマーは使用しないことが望ましい。
樹脂のガラス転移温度は使用する条件、用途に応じて設定することができる。好ましくはガラス転移温度が100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である。
ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂として、具体的には、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、(メタ)アクリル酸単位、ラクトン構造を分子中に含むアクリル系樹脂が挙げられる。例えば、ポリグルタルイミドアクリル系樹脂、無水グルタル酸アクリル系樹脂、ラクトン環化アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂等が挙げられる。さらに、ガラス転移温度が120℃以上の樹脂としては、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン系重合体、環状酸無水物繰り返し単位を含有する重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
本発明の光学用樹脂材料には、非複屈折性のグラフト共重合体(C)を使用するため、配合される樹脂は、光弾性複屈折、配向複屈折が小さい非複屈折性の樹脂(D)が好ましい。具体的には、特許第4624845号の実施例に記載の非複屈折性のポリマーを例示することができる。また、この非複屈折性樹脂(D)は、本発明のビニル系単量体混合物(B)と同一組成の樹脂である必要はなく、グラフト共重合体(C)とあわせた成形樹脂材料からなる成形体、特には光学フィルムに適した光弾性複屈折、配向複屈折の範囲を満たすものであれば特に限定はなく、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である樹脂(D)であることが好ましい。樹脂(D)のポリマー組成は、上述の光弾性複屈折および配向複屈折を小さくするのに適したモノマー種を組み合わせて調整すればよい。中でも、ビニル系単量体混合物(B)を単独重合して得られた重合体であることが、グラフト共重合体(C)との相溶性の面で好ましい。また、非複屈折性樹脂(D)は1種以上の樹脂からなっていてもよい。
非複屈折性樹脂(D)として使用しうるものとして、グルタルイミドアクリル系樹脂は、得られるフィルムの耐熱性が向上し、かつ、延伸時の光学特性にも優れる。以下、グルタルイミドアクリル系樹脂について説明する。
(グルタルイミドアクリル系樹脂)
グルタルイミドアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であり、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを含むものである。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であり、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを含むものである。
上記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。上記一般式(1)で表される単位を、以下、「グルタルイミド単位」ともいう。
上記一般式(1)において、好ましくは、R1およびR2はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、R3は、水素、メチル基、ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくは、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基である。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3のいずれか又は全てが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド単位は、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより形成することができる。また、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル、または、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸)をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成することができる。
グルタルイミドアクリル系樹脂において、グルタルイミド単位の含有量は特に限定されず、例えば、R3の構造等を考慮して適宜決定することができる。しかしながら、グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)全量のうち1.0重量%以上が好ましく、3.0重量%〜90重量%がより好ましく、5.0重量%〜60重量%がさらに好ましい。グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。逆に上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に低くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
グルタルイミド単位の含有量は以下の方法により算出される。
1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行い、樹脂中のグルタルイミド単位またはエステル単位などの各モノマー単位それぞれの含有量(mol%)を求め、当該含有量(mol%)を、各モノマー単位の分子量を使用して含有量(重量%)に換算する。
例えば、上記一般式(1)においてR3がメチル基であるグルタルイミド単位とメチルメタクリレート単位からなる樹脂の場合、3.5から3.8ppm付近に現れるメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積aと、3.0から3.3ppm付近に現れるグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積bから、以下の計算式によりグルタルイミド単位の含有量(重量%)を求めることができる。
[メチルメタクリレート単位の含有量A(mol%)]=100×a/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量B(mol%)]=100×b/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量(重量%)]=100×(b×(グルタルイミド単位の分子量))/(a×(メチルメタクリレート単位の分子量)+b×(グルタルイミド単位の分子量))
なお、モノマー単位として上記以外の単位を含む場合においても、樹脂中の各モノマー単位の含有量(mol%)と分子量から、同様にグルタルイミド単位の含有量(重量%)を求めることができる。
[メチルメタクリレート単位の含有量A(mol%)]=100×a/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量B(mol%)]=100×b/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量(重量%)]=100×(b×(グルタルイミド単位の分子量))/(a×(メチルメタクリレート単位の分子量)+b×(グルタルイミド単位の分子量))
なお、モノマー単位として上記以外の単位を含む場合においても、樹脂中の各モノマー単位の含有量(mol%)と分子量から、同様にグルタルイミド単位の含有量(重量%)を求めることができる。
本発明のアクリル系樹脂組成物を例えば偏光子保護フィルムに使用する場合、グルタルイミド単位の含有量は、複屈折を抑制しやすいため20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
上記一般式(2)中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。上記一般式(2)で表される単位を、以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう。なお、本願において「(メタ)アクリル」とは、「メタクリルまたはアクリル」を指すものとする。
上記一般式(2)において、好ましくは、R4およびR5はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、R6は水素またはメチル基であり、より好ましくは、R4は水素であり、R5はメチル基であり、R6はメチル基である。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR4、R5およびR6のいずれか又は全てが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
上記一般式(3)中、R7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は、炭素数6〜10のアリール基である。
上記一般式(3)で表される芳香族ビニル単位としては特に限定されないが、スチレン単位、α−メチルスチレン単位が挙げられ、スチレン単位が好ましい。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、芳香族ビニル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R7およびR8のいずれか又は双方が異なる複数の単位を含んでいてもよい。
グルタルイミドアクリル系樹脂において、芳香族ビニル単位の含有量は特に限定されないが、グルタルイミドアクリル系樹脂全量のうち0〜50重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜15重量%が特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、グルタルイミドアクリル系樹脂の十分な耐熱性を得ることができない。
しかし本発明では、耐折り曲げ性および透明性の向上、フィッシュアイの低減、さらに耐溶剤性または耐候性の向上といった観点から、グルタルイミドアクリル系樹脂は芳香族ビニル単位を含まないことが好ましい。
グルタルイミドアクリル系樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに含まれていてもよい。
その他の単位としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単位、グルタル無水物単位、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単位、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単位等が挙げられる。
これらのその他の単位は、グルタルイミドアクリル系樹脂中に、ランダム共重合により含まれていてもよいし、グラフト共重合により含まれていてもよい。
これらのその他の単位は、その単位を構成する単量体を、グルタルイミドアクリル系樹脂、及び/又は、樹脂を製造する際の原料となる樹脂に対し共重合することで導入したものでもよい。また、前記のイミド化反応を行う際に、これらその他の単位が副生して樹脂に含まれることとなったものでもよい。
グルタルイミドアクリル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、1×104〜5×105の範囲にあることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
グルタルイミドアクリル系樹脂のガラス転移温度は、フィルムが良好な耐熱性を発揮するよう、120℃以上である。好ましくは125℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、フィルムが十分な耐熱性を発揮することができない。
グルタルイミドアクリル系樹脂の酸価は特に限定されないが、0.50mmol/g以下であることが好ましく、0.45mmol/g以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0mmol/g以上が好ましく、0.05mmol/g以上が好ましく、0.10mmol/g以上が特に好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、および成形加工性のバランスに優れたグルタルイミドアクリル系樹脂を得ることができる。一方、酸価が上記範囲より大きいと、フィルム成形のための溶融押出時に樹脂の発泡が起こりやすくなり、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。なお、酸価は、例えば特開2005−23272号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
グルタルイミドアクリル系樹脂は、例えば、特開2010−261025などに記載されている公知の方法によって製造できる。
本発明の光学用樹脂材料100重量部において、グラフト共重合体(C)に含まれる架橋構造の重合体層の総量が1〜60重量部含まれるように配合されることが好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜25重量部がさらに好ましい。1重量部未満ではフィルムの耐割れ性、真空成形性が悪化したり、また光弾性定数が大きくなり、光学的等方性に劣ったりする場合がある。一方、60重量部を越えるとフィルムの耐熱性、表面硬度、透明性、耐折曲げ白化性が悪化する傾向がある。
本発明の光学用樹脂材料は、配向複屈折を調整する意味合いで、特許第3648201号や特許第4336586号に記載の複屈折性を有する無機微粒子や、特許第3696649号に記載の屈折性を有する、分子量5000以下、好ましくは1000以下の低分子化合物を適宜配合してもよい。
本発明の光学用樹脂材料は、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、艶消し剤、光拡散剤、着色剤、染料、顔料、帯電防止剤、熱線反射材、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤、フィラー等の公知の添加剤、または、その他の樹脂を含有しても良い。
本発明の光学用樹脂材料は、粒状のままで、または押出機によりペレット状としたのち、加熱しながら押出成形や射出成形、圧縮成形、ブロー成形、紡糸成形等により、用途に適した形状の成形品とすることができる。特にフィルムとして有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好に加工される。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、特にガラス転移温度付近の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や、二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。
本発明の光学用樹脂材料はTダイ製膜を用いるような高温での成形条件下でも、紫外線吸収剤の飛散による成形機の汚染やフィルム欠陥を発生させることなく、フィルムを製造することができる。
本発明の光学用樹脂材料を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
本発明の光学用樹脂材料を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明の光学用樹脂材料を、押出機に供給し、該光学用樹脂材料を加熱溶融させる。
光学用樹脂材料は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明に係る光学用樹脂材料)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
また、本発明の光学用樹脂材料を成形するための押出機は、好ましくは加熱溶融時に発生する揮発分を除去するための脱揮装置を一つ以上有しているものが好ましい。脱気装置を有する事により、樹脂の発泡や分解劣化反応によるフィルム外観の悪化を軽減することができる。
更に、本発明の光学用樹脂材料を成形するための溶融押出に際しては、押出機のシリンダに、樹脂材料の供給とともに不活性ガスを供給する事が好ましい。不活性ガスの供給により、系中の酸素の濃度を低下させ、酸化劣化に伴う分解、架橋、黄変等の外観や品質の劣化を軽減することができる。
次に、押出機内で加熱溶融された光学用樹脂材料を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、光学用樹脂材料中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。フィルターはペレット化時、もしくはフィルム化時に使用する押出機等に好適に使用することができる。
次に、Tダイに供給された光学用樹脂材料を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜することが好ましい。
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、成膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで成膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却することで、フィルムが得られる。
本発明の光学用樹脂材料は、非常に靭性が高く柔軟性に富むため、強度向上のために延伸をする必要がなく、延伸工程を省略することによる生産性の向上、コスト面でのメリットがある。本発明の光学樹脂材料からなる光学フィルム(本発明の光学フィルム)は、透明性が高く、高い強度を有した10μm以上の厚みを有することが可能である。さらに、延伸による配向複屈折がほぼ発生せず、さらに光学的に等方である。
本発明の光学樹脂材料からなる成形体は、配向複屈折の値が、−15×10−4〜15×10−4であることが好ましく、−10×10−4〜10×10−4であることがより好ましく、−5×10−4〜5×10−4であることがさらに好ましく、−1.6×10−4〜1.6×10−4であることがなおさら好ましく、−1×10−4〜1×10−4であることがことさら好ましく、−0.5×10−4〜0.5×10−4であることが特に好ましく、−0.2×10−4〜0.2×10−4であることが最も好ましい。配向複屈折が上記範囲内であれば、成形加工時の複屈折が生じることなく、実用上問題ない成形体を得ることができる。
中でも、本発明の光学フィルムは、配向複屈折の値が、−2×10−4〜2×10−4であることが好ましく、−1.6×10−4〜1.6×10−4であることがより好ましく、−1.5×10−4〜1.5×10−4であることがさらに好ましく、−1.0×10−4〜1.0×10−4であることがなおさら好ましく、−0.5×10−4〜0.5×10−4であることが特に好ましく、−0.2×10−4〜0.2×10−4であることが最も好ましい。配向複屈折が上記範囲内であれば、成形加工時の複屈折が生じることなく、安定した光学特性を得ることができる。また液晶ディスプレイ等に使用される光学フィルムとしても非常に適している。
本発明の光学樹脂材料からなる成形体は、光弾性定数が、−10×10−12〜10×10−12であることが好ましく、−4×10−12〜4×10−12であることがより好ましく、−2×10−12〜2×10−12であることがさらに好ましく、−1×10−12〜1×10−12であることがよりさらに好ましく、−0.5×10−12〜0.5×10−12であることがさらに好ましく、−0.3×10−12〜0.3×10−12であることが最も好ましい。光弾性定数が上記範囲内であれば、高温高湿化などの環境化において成形体に応力がかかった際にも生じる複屈折が小さく、実用上問題ない成形体を得ることができる。
中でも、本発明の光学フィルムは、光弾性定数が−10×10−12Pa−1〜10×10−12Pa−1であることが好ましく、−7×10−12Pa−1〜7×10−12Pa−1であることがより好ましく、−4×10−12Pa−1〜4×10−12Pa−1であることがさらに好ましく、−2×10−12Pa−1〜2×10−12Pa−1であることが特に好ましい。さらに、−1.5×10−12Pa−1〜1.5×10−12Pa−1であることが好ましく、−1.0×10−12Pa−1〜1.0×10−12Pa−1であることがより好ましく、−0.5×10−12Pa−1〜0.5×10−12Pa−1であることがさらに好ましく、−0.3×10−12Pa−1〜0.3×10−12Pa−1以下であることがよりさらに好ましい。光弾性定数が上記範囲内であれば、本発明に係るフィルムを液晶表示装置に用いても、高温高湿化などの環境化において成形体に応力がかかった際にも生じる複屈折が小さく、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
本発明の光学フィルムは、ヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。本発明の光学フィルムのヘイズ値が上記範囲内であれば、フィルムの透明性を十分に高く、透明性が要求される光学用途、加飾用途、インテリアー用途、または、真空成形用途で好適である。
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率が上記範囲内であれば、フィルムの透明性を十分に高く、透明性が要求される光学用途、加飾用途、インテリアー用途、または、真空成形用途で好適に用いることができる。
本発明の光学フィルムは、引張破断点伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがなおさら好ましい。さらに、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがとりわけ好ましく、90%以上であることが最も好ましい。上記範囲内の引張破断点伸度を示す本発明の光学フィルムは、当該フィルムをトムソン刃またはカッター刃で切り抜く時にクラックが発生しにくいこと(トリミング性)、および、当該フィルムをロールに巻き取る時、または、当該フィルムの表面に対しコーティング、蒸着、スパッタリング、保護フィルムの貼り合わせ等の後加工をする時に、破断しにくい。またフィルムを折り曲げたときの耐割れ性が高く、後加工工程のみならず、実際に製品として使用する際にも割れ等のトラブルがおこらない。この割れ性については特に引張破断点伸度が相関しており、引張破断点伸度が高いほど、耐割れ性に優れる。
本発明の光学フィルムは、特に偏光子保護フィルムとして使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差、および、厚み方向位相差の絶対値がともに小さいことが好ましい。より具体的には、面内位相差は10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差の絶対値は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。このような位相差を有する光学フィルムは、液晶表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして好適に使用することができる。一方、フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差の絶対値が50nmを超えたりすると、液晶表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthがともに0となる。
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内において伸張方向(ポリマー鎖の配向方向)をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さを表し、nx−nyは配向複屈折を表す。なお、溶融押出フィルムの場合は、MD方向がX軸、さらに延伸フィルムの場合は延伸方向がX軸となる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内において伸張方向(ポリマー鎖の配向方向)をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さを表し、nx−nyは配向複屈折を表す。なお、溶融押出フィルムの場合は、MD方向がX軸、さらに延伸フィルムの場合は延伸方向がX軸となる。
本発明の光学フィルムは、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることがなおさら好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、十分に耐熱性が優れた光学フィルムを得ることができる。また、真空成形等の2次成形時、高温での使用時等の熱による収縮も小さい。
本発明の光学フィルムの厚みは特に限定されないが、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。また、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、たとえば当該フィルムをディスプレイ用途の光学フィルムに使用される場合において、光学特性が均一で、透明性が良好なフィルムを製造することができる。一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、成形後のフィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、フィルムの取扱が困難になることがある。
本発明の光学フィルムは未延伸状態のフィルムとしても上記効果を奏するものであるが、さらに延伸することも可能であり、これにより、強度の向上、膜厚精度の向上を図ることができる。また、適切な延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じさせることなく、かつ、ヘイズの増大を実質的に伴うことなく、厚みムラの小さなフィルムを容易に製造することができる。
本発明に係る光学フィルムが延伸フィルムである場合、本発明に係る光学用樹脂材料を一旦、未延伸状態のフィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルム(一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)を製造することができる。例えば、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの未延伸状態のフィルムを取得する。その後、該フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
本明細書では、説明の便宜上、本発明の光学用樹脂材料をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原料フィルム」と称する。
原料フィルムを延伸する場合、原料フィルムを成形後、直ちに、該原料フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原料フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原料フィルムの延伸を行ってもよい。
なお、原料フィルムに成形後、直ちに該原料フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原料フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間)にて延伸してもよく、一旦原料フィルムを製造したのち、時間を空けて延伸してもよい。
本発明の光学フィルムを延伸フィルムとする場合は、上記原料フィルムは延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。
原料フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
原料フィルムを延伸するとき、原料フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
上記範囲内で予熱することにより、原料フィルムの厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
一方、原料フィルムの予熱温度が高すぎると、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原料フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原料フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
なお、本発明の光学用樹脂材料は、原料フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
原料フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。
一般的には、DSC法によって求めた原料フィルムのガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムのヘイズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
上記原料フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロであり、さらに、ヘイズが2.0%以下である延伸フィルムを製造することもできる。
本発明に係る光学フィルムは、必要に応じて、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させたりして用いることができる。
本発明の光学フィルムは、必要に応じて、公知の方法によりフィルム表面の光沢を低減させてもよい。例えば、光学用樹脂材料に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムをエンボス加工により、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
本発明の光学フィルムは、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れているため、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途(光学フィルム)に特に好適に用いることができる。
本発明の光学フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明の光学フィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
本発明の光学フィルムは、必要に応じて、表面処理が施されたものであってもよい。例えば、本発明の光学フィルムの表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、本発明の光学フィルムの表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明の光学フィルムに表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理を施すことにより、本発明の光学フィルムと、コーティング材またはラミネートされる別のフィルムとの間の密着性を向上させることができる。
なお、本発明の光学フィルムに対する表面処理の目的は上記に限定されない。本発明の光学フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は特に限定されないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、アルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理が好ましい。
本発明の光学フィルムは、光学フィルムとしての光学用途に最適であるものの、その耐熱性、透明性、柔軟性等の性質を利用して、各種用途に使用してもよい。具体的には、自動車内外装、パソコン内外装、携帯内外装、太陽電池内外装、太陽電池バックシート;カメラ、VTR、プロジェクター用の撮影レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、MDプレイヤーなどにおける光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CD、DVD、MDなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光子保護フィルム、偏光フィルム透明樹脂シート,位相差フィルム,光拡散フィルム,プリズムシートなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライト、テールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡、コンタクトレンズ、内視鏡用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路標識、浴室設備、床材、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具などに使用することができる。また、転写箔シートを使用した成形品の代替用途としても使用できる。
本発明における光学樹脂材料のフィルム以外の成形品の使用用途としては、例えば、一般カメラ用レンズ,ビデオカメラ用レンズ,レーザーピックアップ用の対物レンズ,回折格子,ホログラム,及びコリメータレンズ,レーザープリンター用のfθレンズ,シリンドリカルレンズ,液晶プロジェクター用のコンデンサーレンズや投射レンズ,フレネルレンズ,眼鏡用レンズ等のレンズ、コンパクトディスク(CD,CD−ROM等)、ミニディスク(MD)、DVD用のディスク基板、液晶用導光板、液晶用フィルム、LCD用基板,液晶素子結合用接着剤等の液晶素子用部材、プロジェクター用スクリーン、光学フィルター、光ファイバー、光導波路、プリズム、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品目などが挙げられる。
本発明の光学フィルムは、金属、プラスチックなどに積層して用いることができる。フィルムの積層方法としては、積層成形や、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネ−トや、ドライラミネ−ト、エキストル−ジョンラミネ−ト、ホットメルトラミネ−トなどがあげられる。
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
本発明の光学フィルムの積層品は、光学部材に最適であるが、その他用途に適用してもよい。たとえば、自動車内装材,自動車外装材などの塗装代替用途、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリ、ノートパソコン、コピー機などのOA機器のハウジング、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの端末の液晶画面の前面板や、電気または電子装置の部品などに使用することができる。
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下で「部」および「%」は、特記ない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
(グラフト共重合体の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径)
グラフト共重合体の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径(アクリル系ゴム粒子の体積平均粒子径)は、アクリル系ゴム粒子ラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA150を用いて体積平均粒子径(μm)を測定した。
グラフト共重合体の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径(アクリル系ゴム粒子の体積平均粒子径)は、アクリル系ゴム粒子ラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA150を用いて体積平均粒子径(μm)を測定した。
(重合転化率)
まず、得られたスラリーの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をスラリー中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の計算式により重合転化率を算出した。なお、この計算式において、連鎖移動剤は仕込み単量体として取り扱った。
まず、得られたスラリーの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をスラリー中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の計算式により重合転化率を算出した。なお、この計算式において、連鎖移動剤は仕込み単量体として取り扱った。
重合転化率(%)
=〔(仕込み原料総重量×固形成分比率−水・単量体以外の原料総重量)/仕込み単量体重量〕×100
(グラフト率の測定)
得られたグラフト共重合体(C)2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間遠心分離を行い、不溶分と可溶分とを分離した(遠心分離作業を合計3セット)。得られた不溶分を用いて、次式によりグラフト率を算出した。
=〔(仕込み原料総重量×固形成分比率−水・単量体以外の原料総重量)/仕込み単量体重量〕×100
(グラフト率の測定)
得られたグラフト共重合体(C)2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間遠心分離を行い、不溶分と可溶分とを分離した(遠心分離作業を合計3セット)。得られた不溶分を用いて、次式によりグラフト率を算出した。
グラフト率(%)={(メチルエチルケトン不溶分の重量−架橋重合体層(A)の重量)/架橋重合体層(A)の重量}×100
なお、架橋重合体層の重量は、架橋重合体層を構成する単官能性単量体の仕込み重量である。
なお、架橋重合体層の重量は、架橋重合体層を構成する単官能性単量体の仕込み重量である。
(ガラス転移温度)
セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度を求めた。
セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度を求めた。
(全光線透過率・ヘイズ値)
フィルムの全光線透過率、ヘイズ値は、(株)日本電色工業 NDH−300Aを用い、JIS K7105に記載の方法にて測定した。
フィルムの全光線透過率、ヘイズ値は、(株)日本電色工業 NDH−300Aを用い、JIS K7105に記載の方法にて測定した。
(膜厚)
フィルムの膜厚は、デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
フィルムの膜厚は、デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
(一軸延伸フィルムの作製、および配向複屈折の測定)
未延伸の膜厚125μmの原反フィルムから、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて複屈折(配向複屈折)を測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
(プレス成形シートの配向複屈折の測定)
実施例および比較例で作製されたプレス成形シート(膜厚500μM)の中央部から、25mm×90mmの試験片を切り出し、上記一軸延伸フィルムの配向複屈折の測定と同様にして複屈折を測定した。
未延伸の膜厚125μmの原反フィルムから、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて複屈折(配向複屈折)を測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
(プレス成形シートの配向複屈折の測定)
実施例および比較例で作製されたプレス成形シート(膜厚500μM)の中央部から、25mm×90mmの試験片を切り出し、上記一軸延伸フィルムの配向複屈折の測定と同様にして複屈折を測定した。
(未延伸の原反フィルムおよびプレス成形シートの配向複屈折)
未延伸の原反フィルム(膜厚125μm)、およびプレス成形シート(膜厚500μm)から40mm×40mmの試験片を切り出し、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
(面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth)
膜厚125μmのフィルム、および膜厚500μmのプレス成形シートから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片の面内位相差Reを、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で測定した。
未延伸の原反フィルム(膜厚125μm)、およびプレス成形シート(膜厚500μm)から40mm×40mmの試験片を切り出し、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
(面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth)
膜厚125μmのフィルム、および膜厚500μmのプレス成形シートから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片の面内位相差Reを、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で測定した。
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nmでの面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、厚み方向位相差 Rth=((nx+ny)/2−nz)×d を計算した。なお、測定値に、100(μm)/フィルム厚さ(μm)を掛けて、100μm厚換算値とした。
(光弾性定数)
膜厚125μmのフィルムからTD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断した(TD方向に長辺がくるように切り出す)。自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。測定は、フィルムの長辺の一方を固定し、他方は無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出した。
膜厚125μmのフィルムからTD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断した(TD方向に長辺がくるように切り出す)。自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。測定は、フィルムの長辺の一方を固定し、他方は無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出した。
プレス成形シートの光弾性定数の測定に関しては、実施例および比較例で作製されたプレス成形シートの中央部から、15mm×90mmの試験片を切り出し、上記測定条件と同様にして光弾性複屈折を測定した。
(機械的強度の評価)
機械的強度は、トリミング性評価と、耐割れ性の指標である引張破断点伸度(引張伸び:%)で評価した。
トリミング性評価:膜厚125μmのフィルムおよび膜厚500μmのプレス成形シートを、カッターナイフを用いて切断し、次の評価をした。
○:切断面にクラック発生が認められない。
△:切断面にクラック発生が認められる。
×:切断面にクラック発生が著しく認められる。
引張破断点伸度:膜厚125μmのフィルムを用いた。引張試験はISO527−3(JIS K 7127)に準拠し、試験片はMD方向にて試験片タイプ5、試験速度は200mm/min、温度23±2℃、湿度50±5%で測定した。
機械的強度は、トリミング性評価と、耐割れ性の指標である引張破断点伸度(引張伸び:%)で評価した。
トリミング性評価:膜厚125μmのフィルムおよび膜厚500μmのプレス成形シートを、カッターナイフを用いて切断し、次の評価をした。
○:切断面にクラック発生が認められない。
△:切断面にクラック発生が認められる。
×:切断面にクラック発生が著しく認められる。
引張破断点伸度:膜厚125μmのフィルムを用いた。引張試験はISO527−3(JIS K 7127)に準拠し、試験片はMD方向にて試験片タイプ5、試験速度は200mm/min、温度23±2℃、湿度50±5%で測定した。
(製造例1)
<グラフト共重合体(C1)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.12部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
硫酸第一鉄 0.0015部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物30.949部を150分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から25分目、75分目、125分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)を各0.1部、0.05部、0.05部を重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は96.7%であった。
<グラフト共重合体(C1)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.12部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
硫酸第一鉄 0.0015部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物30.949部を150分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から25分目、75分目、125分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)を各0.1部、0.05部、0.05部を重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は96.7%であった。
その後、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.13部を仕込んだ後、表1に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物70.446部を270分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(C1)を得た。
グラフト共重合体(C1)のゴム粒子(A−1の重合物)の平均粒子径は84nmであった。グラフト共重合体のグラフト率は161%であった。
(製造例2)
<架橋構造を含まない非複屈折性樹脂(D)の製造>
H型撹拌機を備えた8リットルガラス製反応器に脱イオン水200重量部、リン酸水素2ナトリウム0.5重量部を仕込んだ。次に300rpmで撹拌しながら、反応器に、表1の硬質重合体層(B−2)の原料混合物100.75部を加え、反応器内を窒素置換しながら70℃に昇温して重合を開始した。70℃到達後、35分目にノニオン系懸濁安定剤としてアデカプルロニックF−68(株式会社ADEKA製、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)を0.06重量部添加した。その後70℃でさらに95分反応させた後、80℃に昇温し、3時間撹拌し、重合を完結させた。得られた重合体を、樹脂量の3倍量の脱イオン水を用いた水洗を4回実施し、乾燥することでビーズ状の懸濁重合体粒子を得た。得られた重合体のMwは153000であった。
<架橋構造を含まない非複屈折性樹脂(D)の製造>
H型撹拌機を備えた8リットルガラス製反応器に脱イオン水200重量部、リン酸水素2ナトリウム0.5重量部を仕込んだ。次に300rpmで撹拌しながら、反応器に、表1の硬質重合体層(B−2)の原料混合物100.75部を加え、反応器内を窒素置換しながら70℃に昇温して重合を開始した。70℃到達後、35分目にノニオン系懸濁安定剤としてアデカプルロニックF−68(株式会社ADEKA製、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)を0.06重量部添加した。その後70℃でさらに95分反応させた後、80℃に昇温し、3時間撹拌し、重合を完結させた。得られた重合体を、樹脂量の3倍量の脱イオン水を用いた水洗を4回実施し、乾燥することでビーズ状の懸濁重合体粒子を得た。得られた重合体のMwは153000であった。
(製造例3)
<多層構造重合体(C2)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.45部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物30.177部を90分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から12分目、37分目、62分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は98.4%であった。
<多層構造重合体(C2)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.45部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物30.177部を90分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から12分目、37分目、62分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は98.4%であった。
その後、内温を60℃にし、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.11部、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.1部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物70.164部を210分間かけて連続的に添加した。(B−2)追加開始から40分目、80分目、120分目、160分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを、各0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は98.9%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状の多層構造重合体(C2)を得た。
多層構造重合体(C2)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は57nmであった。多層構造重合体(C2)のグラフト率は151%であった。
(製造例4)
<多層構造重合体(C3)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.005部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物20.118部を60分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から30分目、50分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.21部ずつ重合機に添加した。添加終了後、30分目にクメンハイドロパーオキサイド0.018部を添加し、さらに1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は98.3%であった。
<多層構造重合体(C3)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.005部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(A−1)の原料混合物20.118部を60分かけて連続的に添加した。(A−1)追加開始から30分目、50分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.21部ずつ重合機に添加した。添加終了後、30分目にクメンハイドロパーオキサイド0.018部を添加し、さらに1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((A−1)の重合物)を得た。重合転化率は98.3%であった。
その後、内温を60℃にし、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.21部、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.1部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物80.4186部を240分間かけて連続的に添加した。(B−2)追加開始から40分目、80分目、120分目、160分目、200分目にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを、各0.21部、0.21部、0.11部、0.11部、0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.2%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状の多層構造重合体(C3)を得た。
多層構造重合体(C3)のゴム粒子(A−1の重合物)の平均粒子径は102nmであった。多層構造重合体(C3)のグラフト率は143%であった。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
直径40mmのフルフライトスクリューを用いた単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を255℃、スクリュー回転数を52rpmとし、表2に示す実施例1〜8、比較例1〜2の各組成物を、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
直径40mmのフルフライトスクリューを用いた単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を255℃、スクリュー回転数を52rpmとし、表2に示す実施例1〜8、比較例1〜2の各組成物を、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
実施例1〜5、比較例1では、得られたペレットを190℃でプレス成形することにより、膜厚500μmのプレス成形シートを得た。これらシートについて各種物性を評価し、表3に示す。
実施例6〜8、比較例2では、得られたペレットを、目開き5μmのリーフディスクフィルターを備え、出口にTダイを接続した単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を260℃、スクリュー回転数を20rpmとし、ペレットを10kg/hrの割合で供給し、溶融押出することにより、表3に示す膜厚のフィルムを得た。これらフィルムについても各種物性を評価した。
表3で示すように、実施例は、配向複屈折、光弾性定数ともに低く、非複屈折性に優れていることがわかる。またトリミング性も良好であり、機械的強度に優れていることがわかる。さらに、機械的強度が高くなっても、耐熱性を維持していることもわかる。
よって、本発明の光学樹脂材料を成形してなる成形品、特に光学フィルムは、延伸された場合でも光学的等方性に優れているため、液晶ディスプレイ等の光学フィルムやレンズ等の光学部材として好適に用いることができる。さらに、本発明の光学フィルムは優れた機械的強度を有しているため、フィルム搬送性、実使用時の耐割れ性、製造時のフィルムのトリミング工程における微細なクラックの発生を低減することが可能である。また、高い機械的強度のため、フィルム強度を向上させるために必要な延伸工程が不要であるため、延伸フィルムでは生産するのが困難である、たとえば80μm以上の膜厚の厚いフィルムを生産することも可能である。さらに、高い耐熱性を有しているため、フィルムコーティング工程の硬化温度、乾燥速度を高めることができ、生産性を向上させることが可能である。
Claims (26)
- 少なくとも1層の架橋構造を有するビニル系重合体(A)の存在下に、ビニル系単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体(C)を含有し、前記グラフト共重合体(C)の配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である、光学樹脂材料。
- 前記ビニル系単量体混合物(B)は、単独重合させた場合に配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である、請求項1に記載の光学樹脂材料。
- 前記架橋構造の少なくとも一層が軟質層である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記ビニル系重合体(A)が、(メタ)アクリル系架橋重合体層を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)が硬質重合体層を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)が非架橋構造の硬質重合体層を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記ビニル系重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能な単量体の総量100重量部に対して)を重合してなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)は、架橋構造の軟質の内層、および硬質の非複屈折性の外層を有し、前記内層が(メタ)アクリル系架橋重合体層を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)は、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、前記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、前記中間層が(メタ)アクリル系架橋重合体の軟質重合体層を有し、前記外層が硬質の非複屈折性の重合体層を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)が、さらに軟質の最内層を有する、請求項9に記載の光学樹脂材料。
- 前記グラフト共重合体(C)が有する少なくとも1層の架橋構造のうち、最も外側に位置する架橋構造層までの体積平均粒子径が20〜450nmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 前記ビニル系重合体(A)が有する架橋構造重合体の含有量が、光学樹脂材料100重量部において1〜60重量部である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- さらに、複屈折性を有する無機微粒子を含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- さらに、複屈折性を有する低分子化合物を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- さらに、配向複屈折が−15×10−4から15×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1である樹脂(D)を含有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学樹脂材料。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学樹脂材料を成形してなる光学部材。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学樹脂材料からなる光学フィルム。
- 溶融押出法により得られることを特徴とする、請求項17に記載の光学フィルム。
- 光学フィルムの厚みが10〜500μmである、請求項17〜18のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 配向複屈折が−2×10−4から2×10−4、光弾性定数が−10×10−12から10×10−12Pa−1であることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- ガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする、請求項17〜20のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 引張破断点伸度が10%以上であることを特徴とする、請求項17〜21のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムがアクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項17〜22のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムが未延伸フィルムである、請求項17〜23のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 請求項17〜24のいずれか一項に記載の光学フィルムを延伸してなる、光学フィルム。
- 請求項15〜25のいずれか一項に記載の光学フィルムを基材に積層してなる積層品。
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