JP2015107587A - 枠体付窓ガラス、枠体付窓ガラスの成形型、枠体付窓ガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】枠体付窓ガラス1は、ガラス板10を補強部材20に載置した状態で、ガラス板10及び補強部材20の周囲に枠体30を形成する樹脂を射出成形して製造されるものであって、補強部材20は、ガラス板10の斜辺10aに沿うように配置され、成形型50の凸部72に挿入される保持溝22と、厚さ方向Zにおいて、ガラス板10の斜辺10a部分に重なるように載置される重なり部26と、ガラス板10の斜辺10の端面に対向するガラス対向面27とを備え、保持溝22は、斜辺方向Wに直線状又はほぼ直線状である。
【選択図】図3
Description
枠体付窓ガラスは、補強部材を、金型に形成された凸部に保持した状態で、枠体を形成する樹脂を射出成形することによって製造される。
しかし、従来の枠体付窓ガラスは、射出成形時に、補強部材が枠体の樹脂の流動(樹脂自体の流動、射出時の加圧等)によって延びてしまい、不良となることがあった。
また、補強部材は、保管時の気温や状態による延びや変形により、金型に嵌め込むことができなくなってしまうことがあった。
・第2の発明は、第1の発明の枠体付窓ガラスにおいて、前記補強部材(20)は、前記樹脂の流し方向下流側(W1)の端面に、前記成形型(50)に当接する補強部材当接面(25)を備えること、を特徴とする枠体付窓ガラスである。
・第3の発明は、第2の発明の枠体付窓ガラスにおいて、前記補強部材当接面(25)は、前記樹脂の流し方向(W)に対して直角な面であること、を特徴とする枠体付窓ガラスである。
・第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の枠体付窓ガラスにおいて、前記補強部材(20)は、前記枠体(30)よりも剛性が大きいこと、を特徴とする枠体付窓ガラスである。
・第6の発明は、第5の発明の枠体付窓ガラスの成形型において、前記樹脂の流し方向下流側(W1)の端面に、前記補強部材(20)に当接する成形型当接面(75)を備えること、を特徴とする枠体付窓ガラスの成形型である。
・第7の発明は、第6の発明の枠体付窓ガラスの成形型において、前記成形型当接面(75)は、前記樹脂の流し方向(W)に対して直角な面であること、を特徴とする枠体付窓ガラスの成形型である。
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[枠体付窓ガラス1]
図1、図2は、実施形態の枠体付窓ガラス1、補強部材20を示す図である。
図1(A)は、枠体付窓ガラス1の上側Z2から見た図である。
図1(B)は、枠体付窓ガラス1を縦方向上側Y2から見た図である。
図1(C)は、補強部材20の単体を上側Z2から見た図である。
図2(A)は、枠体付窓ガラス1を下側Z1から見た図である。
図2(B)は、枠体付窓ガラス1を縦方向下側Y1から見た図である。
図2(C)は、枠体付窓ガラス1の2C−2C部断面図である。
図2(D)は、枠体付窓ガラス1の2D−2D部断面図である。
図2(E)は、補強部材20の単体を下側Z1から見た図である。
図1(A)、図2(A)は、ガラス板10の外形を一点鎖線で示す。
図2(A)、図2(C)は、補強部材20の外形を太線で示す。
図3(A)は、図2(D)の矢印3A部の拡大図である。
図3(B)は、枠体付窓ガラス1の突起26aを通らない断面図(図1、図2の矢印3B部)である。
なお、実施形態の説明及び図面には、理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系は、図1(A)を基準にして、枠体付窓ガラス1の左右方向X、縦方向Y(縦方向下側Y1、縦方向上側Y2)、上下方向Z(下側Z1、上側Z2)を表す。上下方向Zは、枠体付窓ガラス1の厚さ方向である。また、枠体付窓ガラス1の斜辺1aに沿った方向を斜辺方向W(斜辺方向下側W1、斜辺方向上側W2)という。
枠体付窓ガラス1は、自動車の枠体付窓ガラス1の一部を構成する。枠体付窓ガラス1は、例えば、ボディのフロントピラー(Aピラー)付近に、接着剤等を用いて装着される。枠体付窓ガラス1は、枠体30に補強部材20を入れて、強度を向上している。このため、フロントガラスとフロントピラーとの間の配置される枠体30の斜辺1aの部分は、細く形成できる。これにより、運転時の視認性が向上する。
枠体付窓ガラス1の上面(上側Z2の面)は、車外(ボディ表面)側の意匠面であり、自動車の外観の一部を構成する。下面(下側Z1の面)は、車内側である。枠体付窓ガラス1の上面には、ガラス板10、枠体30のみが露出する(図1(A)参照)。
補強部材20、枠体30は、ともに同じ樹脂(例えばPVC樹脂等)によって形成される。補強部材20は、枠体30よりも剛性が大きい。例えば、補強部材20の硬度は、96度であり、一方、枠体30の硬度は、70度である。
なお、実施形態では、補強部材20は、樹脂によって形成される例を説明するが、これに限らず、金属等によって形成されていてもよい。
図1に示すように、ガラス板10は、板状の部材である。ガラス板10の外形は、枠体付窓ガラス1よりも一回り小さい。ガラス板10の斜辺10aは、枠体付窓ガラス1の斜辺1a沿うように形成されている。
ガラス板10は、枠体30を形成する樹脂との熱溶着性を向上するために、プライマが塗布されている。
図示は説明するが、ガラス板10の内縁には、黒色系のベタ印刷が設けられている。このベタ印刷は、補強部材20と枠体30の下つば部32(後述する)とを目隠し、また、枠体付窓ガラス1をボディに貼付する接着剤を紫外線から保護する。
補強部材20は、枠体30を成形する前に、予め製造しておいて、常温で保管されている。
図1、図2に示すように、補強部材20は、枠体付窓ガラス1の斜辺1aの内側に配置されており、枠体付窓ガラス1の上端及び下端間に延在する。補強部材20の外形は、斜辺1aに沿って細長く、補強部材20は、ガラス板10の斜辺10aに沿って平行に配置される。このため、枠体付窓ガラス1は、補強部材20が配置されている近傍の剛性を向上できる。
補強部材20の長手方向と、斜辺方向Wとは沿った方向に配置されているので、両者とも同じ方向又はほぼ同様な方向である。そのため、以下の説明では、便宜上、補強部材20の長手方向についても、斜辺方向Wという。
図3に示すように、本体部21は、補強部材20の主要部を構成する部分である。本体部21は、ガラス板10の斜辺10aに沿って配置される。
本体部21の断面形状は、下側Z1に開口するコの字状である。つまり、本体部21は、下側Z1に突出する2つのリブ21a,21bが、斜辺方向Wに沿った方向に配置されたような形状である。
保持溝22は、係合部23(補強部材係合部)を備える。
係合部23は、保持溝22を形成するリブ21bの内側面に、部分的に設けられた突起である。
図2に示すように、係合部23は、複数設けられている。係合部23の外形は、ガラス板10の端部に沿った方向に細長い。また、複数の係合部23のうち係合部23Aは、斜辺方向下側W1の端部に配置されている。
突起26a及びガラス板10は、当接している(図3(A)参照)。このため、重なり部26の上面及びガラス板10の間には、隙間S1が設けられる(図3(B)参照)。
ガラス板10を上側Z2から見た状態で、重なり部26は、枠体付窓ガラス1の端部と重なっている。つまり、上下方向Z(厚さ方向)において、重なり部26と、枠体付窓ガラス1の端部とは、重なっている。このため、補強部材20は、枠体付窓ガラス1の端部を、有効に補強できる。
つまり、実施形態とは異なり、ガラス板10を上側Z2から見た状態で、重なり部26及びガラス板10が重ならない形態であると、重なり部26の端部及びガラス板10の端部間の範囲のみに、枠体30の樹脂が存在する構造になる。この形態では、この範囲の枠体30が上側Z2等から押圧された場合に、補強部材20が力を支えられないため、補強部材20は、枠体30の強度を十分に補強できない。
ガラス対向面27は、本体部21の表面の一部であって、ガラス板10の斜辺10aの端面に対向する部分である。ガラス対向面27及びガラス板10の端部の間には、隙間S2を有する。
適切な隙間S1,S2の大きさは、枠体30を形成する樹脂の種類、製品の大きさ、射出成形の条件等によって異なる。実施形態の形状では、0.5mm以上であれば、樹脂が流動することを試作によって確認した。
図1、図2に示すように、枠体30は、ガラス板10の周囲を囲うように設けられている。
斜辺方向Wにおいて、枠体30は、補強部材20よりも若干大きい。
図1(A)に示すように、すなわち、斜辺方向Wにおいて、補強部材20の斜辺方向Wの上端の位置20aは、枠体30の斜辺方向Wの下端の位置30aよりも内側である。このため、枠体付窓ガラス1の端面のうち縦方向上側Y2には、補強部材20が露出していない(図1(B)参照)。一方、補強部材20の斜辺方向Wの下端の位置20bと、枠体30の斜辺方向Wの下端の位置30bとは、同じある。このため、枠体付窓ガラス1の端面のうち縦方向下側Y1には、補強部材20が露出している(図2(B)参照)。
上つば部31、下つば部32は、ガラス板10の縁部を、上下方向Zから挟み込む。
連結部33は、ガラス板10の端部及び補強部材20のガラス対向面27間の隙間S2に充填されたリブ状の部分である。連結部33は、上つば部31及び下つば部32の間を連結する。
図4から図7は、実施形態の枠体付窓ガラス1を製造する成形型50を示す図である。
図4は、実施形態の下型70を上側Z2から見た図である。
図4には、載置されたガラス板10の外形を二点鎖線で示す。
図5は、実施形態の凸部72を説明する断面図(図4の5−5部断面図)である。
図6は、実施形態の下型70に補強部材20を配置した状態を上側Z2から見た図、断面図(図6(A)の6B−6B部断面図)である。
図7は、実施形態の成形型50の断面図(図4(A)の7−7部断面に相当する図)である。
図7(A)、図7(B)は、成形型50を開いた状態である。図7(A)は、ガラス板10、補強部材20を下型70に載置していない状態であり、図7(B)は、ガラス板10、補強部材20を下型70に載置した状態である。
図7(C)は、成形型50を閉じた状態、かつ、ガラス板10、補強部材20を下型70に載置した状態である。
図8は、成形型50を閉じた状態、かつ、ガラス板10、補強部材20を下型70に載置した状態の断面の拡大図である。
図8(A)は、図7(C)の矢印8A部の拡大図である。
図8(B)は、係合部73を通らない断面図である。
図7に示すように、成形型50は、上型60、下型70を備える。
上型60は、枠体30の上面を形成し、また、成形時にはガラス板10を押さえるように形成されている(図7(C)等参照)。
図4に示すように、下型70は、凸部72、全周溝74、当接面75(成形型当接面)、ガラス載置テーブル76、吸引部77、駆動ピン78、ゲート79を備える。
凸部72は、補強部材20の保持溝22が挿入されることにより、成形時に補強部材20を保持するための部分である。
図8に示すように、断面形状において、凸部72の外形と、補強部材20の保持溝22の形状とは、ほとんど同じである。
凸部72は、係合部73(成形型係合部)を備える。
係合部73は、補強部材20の係合部23に係合する凹部である。
図5に示すように、係合部73は、凸部72の外側側面に、部分的に設けられている。
係合部23は、複数設けられている。係合部73は、係合部23に対応した形状の凹形状であり、また、係合部23に対応した位置に設けられている。
このため、係合部73の形状は、ガラス板10の斜辺10a(端部)に沿った方向に細長く形成される。また、複数の係合部73のうち係合部73Aは、斜辺方向下側W1の端部に配置されている。
図6に示すように、全周溝74のうち補強部材20の端部リブ24に対応する領域74bには、補強部材20の端部リブ24が挿入される。
当接面75は、全周溝74の斜辺方向下側W1の端面の一部であり、領域74bに対応した面である。当接面75には、補強部材20の端部リブ24の当接面25が当接する。
図8に示すように、補強部材20を凸部72に挿入した状態で、上下方向Zにおいて、補強部材20の突起26aの高さは、ガラス載置テーブル76の高さよりも、長さL26aに対応した分だけ低い。このため、ガラス板10は、ガラス載置テーブル76に支えられて、ガラス載置テーブル76上に載置されることになる。
図4に示すように、吸引部77は、ガラス載置テーブル76に載置されたガラス板10を、吸引して保持する装置である。吸引部77の数は、実施形態では2つであるが、ガラス板10の大きさに応じて、適宜変更できる。
駆動ピン78A,78Bは、ガラス載置テーブル76の左側X1に配置されており、駆動ピン78Cは、ガラス載置テーブル76の縦方向下側Y1に配置されている。
図7に示すように、駆動ピン78は、エア駆動式の駆動装置等によって回転軸78a回りに回転移動する。駆動ピン78は、規制位置P1及び退避位置P2の間で、回転駆動される。
規制位置P1は、駆動ピン78A,78Bが、ガラス板10の左側X1の端面に接し、また、駆動ピン78Cが、ガラス板10の縦方向下側Y1の端面に接する位置である。
これにより、ガラス板10は、左側X1及び縦方向下側Y1に移動しないように規制される。
退避位置P2は、駆動ピン78A〜78Cが下型70のキャビティ71内から退避した位置である。
図8に示すように、成形型50のキャビティのうち補強部材20が配置される領域には、前述したように、上型60のキャビティ61と、下型70のキャビティ71が連通する。
枠体付窓ガラス1の製造方法について説明する。
枠体付窓ガラス1は、作業者、製造装置等が、以下の工程に従って製造できる。
(1)図7(B)に示すように、成形型50が開いた状態で、補強部材20を下型70の凸部72に設置する。
この場合、最初に、補強部材20の端部リブ24から全周溝74に挿入すると、補強部材20及び下型70間を容易に位置合わせできるので、作業性が良好である。
補強部材20の保持溝22が凸部72に挿入されると、保持溝22の係合部23及び下型70の凸部72の係合部73が係合する。これにより、補強部材20が下型70に対して確実に保持される。
このような場合でも、補強部材20は、斜辺方向Wに直線状であるので、湾曲による変形量が小さければ矯正しながら、凸部72に挿入できる。
また、図6(B)に示すように、斜辺方向上側W2(縦方向上側Y2)には、下型70の外周部及び補強部材20の上端部には隙間S3を有するので、補強部材20は、延びが発生してしまっても、下型70に配置することができる。
(3)図8(A)に示すように、ガラス板10を、下型70のガラス載置テーブル76の上に載置する。
図4に示すように、この場合、ガラス板10の左側X1の端面を駆動ピン78の先端に押し当てて、左右方向Xにおいてガラス板10の位置合わせをする(矢印X3参照)。次に、ガラス板10が駆動ピン78に押し当てた状態で、ガラス板10の縦方向下側Y1の端面を駆動ピン78の先端に押し当てて、縦方向Yにおいてガラス板10の位置合わせをする(矢印Y3参照)。これにより、XY平面において、ガラス板10は、適正位置に配置される。
また、ガラス板10及び補強部材20の突起26a間の隙間(長さL26a)は、ガラス板10の寸法公差、突起26aの寸法公差分を吸収できる。つまり、両者が大きく製造されても、両者は、大きな力が加わらないで当接する程度である。
(4)吸引部77を駆動して、ガラス板10を適正位置に保持する。
(5)図7(B)に示すように、駆動ピン78を駆動して、退避位置P2に配置する。
(6)上型60を駆動して、成形型50を閉じる。
(8)枠体30を形成する樹脂の射出が終了したら、成形型50を開いて、エジェクタピン(図示せず)を駆動して、枠体付窓ガラス1を離型する。
以上の工程により、枠体付窓ガラス1を製造することができる。
成形時の状態について説明する。
(補強部材20の斜辺方向Wにおける移動)
補強部材20が配置されている右側X2の領域では、樹脂の流し方向は、斜辺方向Wに沿った方向である。このため、樹脂は、斜辺方向Wに沿って斜辺方向下側W1に向かうように流動する。この樹脂の流動により、補強部材20は、斜辺方向下側W1に移動するように力がかかる。これに対して、補強部材20は、以下の作用によりこの移動を抑制できる。
・補強部材20の端部リブ24の当接面25は、下型70の全周溝74の当接面75に当接している。図6(B)に示すように、端部リブ24の当接面25は、斜辺方向下側W1の面であり、全周溝74の当接面75は、斜辺方向上側W2の面である。このため、補強部材20を、斜辺方向下側W1に、移動しないように規制できる。
・さらに、図6(B)に示すように、断面形状において、端部リブ24の当接面25及び全周溝74の当接面75は、斜辺方向W(つまり樹脂の流し方向)に対して直角な面である。このため、補強部材20は、斜辺方向下側W1に確実に押さえられる。
実施形態とは異なりこれらの当接面が傾斜している形態では、補強部材20が下型70に乗り上げてしまう可能性がある。
枠体30の成形時には、補強部材20は、樹脂に接するため高温になり、また、前述した樹脂の流動により、斜辺方向Wに延びようとする。補強部材20が延びてしまうと、補強部材20が凸部72からの浮き上がる可能性がある。これに対して、以下の作用により、補強部材20の浮き上がりを抑制できる。
・枠体30の成形時における補強部材20の延びは、流し方向下流側である斜辺方向下側W1に蓄積されていく。このため、補強部材20の斜辺方向下側W1の部分は、凸部72から浮き上がる傾向が大きい。一方で、複数の係合部23,73のうち係合部23A,73Aは、樹脂の斜辺方向下側W1の範囲に配置されている。このため、補強部材20の斜辺方向下側W1の部分は、浮き上がり抑制効果を向上できる。
・前述したように、端部リブ24の当接面25と、下型70の当接面75とが当接するので、成形時の補強部材20の延びを強制的に抑えて、補強部材20の斜辺方向下側W1における浮き上がり抑制効果を向上できる。
・補強部材20の上端及び下型70の間には、隙間S3を有しており(図6参照)、両者は、当接していない。このため、延びが発生した場合でも、補強部材20は、斜辺方向上側W2に延びればよい。
実施形態とは異なり補強部材20の両端部がともに延びないように規制されてしまっている形態では、延びにともない補強部材20の中央付近が盛り上がってしまう可能性があるが、実施形態では、この盛り上がりを抑制できる。
これにより、補強部材20に加わる回転モーメントMが小さくなり、補強部材20は、この回転モーメントMに起因する凸部72からの浮き上がりも抑制できる。
一方、係合部23,73は、補強部材20の右側X2の範囲で係合しているので、補強部材20を、左回りM2にも回転移動しないように規制できる。
さらに、枠体付窓ガラス1は、隙間S1,S2の両方を備えることにより、ガラス板10は、その端部においても、枠体30を形成する溶融樹脂と熱溶着する。これにより、枠体付窓ガラス1は、実施形態とは異なり隙間S1,S2をいずれも備えない形態、又はいずれか一方のみ備える形態に比べると、ガラス板10及び枠体30間を強固に接着できる。
枠体付窓ガラス1が、外観品質を向上できることについて説明する。
(ウェルドライン)
枠体付窓ガラス1は、枠体30の成形時に、樹脂をキャビティ61,71に同時にかつ均等に充填できるので、ゲート79を1つのみにすることができる。枠状の成形品は、ゲート79が1つであれば、通常は、1つのウェルドラインしか生成されない。その結果として、枠体付窓ガラス1は、ウェルドラインの数を減らすことができるので、良好な外観品質を得ることができる。
実施形態とは異なり、樹脂がキャビティ61,71間を移動できない形態では、良好な成形条件を得るためには、複数のゲートを設けたりする必要がある。例えばゲートを2つ設ける形態であると、通常は、2つのウェルドラインが生成されてしまい、外観品質が低下してしまう。
図3に示すように、連結部33の厚さ(つまり隙間S2の大きさ)は、樹脂が流動可能な大きさではあるが、上つば部31の厚さよりも十分に小さい。このため、連結部33に起因するヒケが発生しにくい。
また、連結部33は、上つば部31の内側(ガラス板10側)の端部近傍であって、連結部33に起因するヒケの視認が困難な領域A33(ヒケ難視認領域)に設けられている。すなわち、この枠体付窓ガラス1を上下方向Zから見たときに、上つば部31の内側(ガラス板10側)端部の斜面33aと、連結部33とが、隙間S2に重なるように配置されている。
領域A33の斜面33aのように、面積が十分に小さい部分であって、かつ、断面形状が変化している部分には、ヒケが生成されても、デザイン上、目立たないため、ヒケの視認を困難にできる。
さらに、領域A33は、斜面33a及び天面を結ぶコーナ部33bを有する。コーナ部33bは、連結部33の上側Z2に位置し、かつ、円弧面で連結されている。円弧面は、フラットな部分に比べると、ヒケに起因する表面の凹形状が視認しにくい。このため、領域A33は、ヒケの視認を困難にする効果を向上できる。
枠体30のコーナ部分の造形について説明する。
(枠体付窓ガラス1の上面の凹凸)
図3に示すように、補強部材20の重なり部26は、上下方向Zにおいて、本体部21の側面の途中からガラス板10側に突出するように設けられている。このため、本体部21のうち重なり部26よりも上側Z2の部分の高さL21が小さくても、保持溝22は、下型70の凸部72に保持されるための必要な深さを確保できる。
この部分の高さL21を小さくできることにより、上つば部31は、ガラス板10の上面からの突出高さL31を小さくできる。
これにより、枠体付窓ガラス1の上面は、より平らに形成でき、デザイン性を向上できるし、また、走行時の風切り音の低減の効果を期待できる。
(比較例のヒケ)
図9(A)に示すように、比較例の枠体付窓ガラス101Aは、実施形態とは異なり、隙間S1,S2がない。つまり、枠体付窓ガラス101Aは、連結部33を備えないため、そもそも、上つば部131Aにヒケがほとんど発生しない。
図9(B)に示す枠体付窓ガラス101Bは、枠体付窓ガラス101Aに対して、突出高さL131Aを小さくし、かつ、連結部を設けるように、単に、設計変更したものである。つまり、枠体付窓ガラス101Bは、上つば部131Bの突出高さL131Bを小さくし、かつ、連結部133Bを上つば部131Bの上面がフラットな領域A133の直下に設けた。しかし、上つば部131Bのように肉厚が薄い部材は、ヒケが生成されやすく、さらに、フラットな領域A133は、ヒケが生成されてしまうと、ヒケに起因する表面の凹形状が目立ってしまう。このため、比較例では、外観品質が低下してしまう。
これに対して、実施形態の枠体付窓ガラス1は、連結部33を領域A33に設けることにより(図3参照)、前述したように、上つば部31を薄くし、かつ、ヒケを目立たなくすることができるので、外観品質等を向上できる。
図9(A)に示すように、枠体付窓ガラス101Aは、実施形態とは異なり、補強部材120の重なり部126Aを本体部121Aの下端に設ける形態である。枠体130Aの成形時において、補強部材120Aを金型にしっかりと保持するために、保持溝122Aは、十分な深さを確保する必要がある。このため、枠体付窓ガラス101Aは、本体部121のうち重なり部126Aよりも上側Z2の部分の高さL121Aが高くなる。
この形態では、上つば部131Aは、ガラス板10の上面からの突出高さL131Aが大きくなり、枠体付窓ガラス101Aの上面は、凹凸が大きくなってしまう。
これに対して、実施形態の枠体付窓ガラス1は、前述したように、本体部21の側面の途中に重なり部26を設けることにより(図3参照)、上面の凹凸を小さくできる。
Claims (8)
- ガラス板を補強部材に載置した状態で、前記ガラス板及び前記補強部材の周囲に枠体を形成する樹脂を射出成形して製造される枠体付窓ガラスであって、
前記補強部材は、
前記ガラス板の端部に沿うように配置され、
成形型の凸部に挿入される保持溝と、
厚さ方向において、前記ガラス板の前記端部に重なるように配置される重なり部と、
前記ガラス板の前記端部の端面に対向するガラス対向面とを備え、
前記保持溝は、長手方向に直線状又はほぼ直線状であること、
を特徴とする枠体付窓ガラス。 - 請求項1に記載の枠体付窓ガラスにおいて、
前記補強部材は、前記樹脂の流し方向下流側の端面に、前記成形型に当接する補強部材当接面を備えること、
を特徴とする枠体付窓ガラス。 - 請求項2に記載の枠体付窓ガラスにおいて、
前記補強部材当接面は、前記樹脂の流し方向に対して直角な面であること、
を特徴とする枠体付窓ガラス。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の枠体付窓ガラスにおいて、
前記補強部材は、前記枠体よりも剛性が大きいこと、
を特徴とする枠体付窓ガラス。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の枠体付窓ガラスを製造し、成形時に前記補強部材の前記保持溝が挿入される前記凸部を備え、ガラス板を前記補強部材に載置した状態で、前記ガラス板及び前記補強部材の周囲に前記枠体を形成する樹脂を射出成形する成形型であって、
前記凸部は、前記補強部材の前記保持溝の長手方向に直線状又はほぼ直線状であること、
を特徴とする枠体付窓ガラスの成形型。 - 請求項5に記載の枠体付窓ガラスの成形型において、
前記樹脂の流し方向下流側の端面に、前記補強部材に当接する成形型当接面を備えること、
を特徴とする枠体付窓ガラスの成形型。 - 請求項6に記載の枠体付窓ガラスの成形型において、
前記成形型当接面は、前記樹脂の流し方向に対して直角な面であること、
を特徴とする枠体付窓ガラスの成形型。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の枠体付窓ガラスを、請求項5から請求項7のいずれかに記載の成形型を用いて、射出成形により製造することを特徴とする枠体付窓ガラスの製造方法。
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