JP2015102216A - 歯車装置 - Google Patents

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康人 石原
Yasuto Ishihara
康人 石原
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Abstract

【課題】衝撃が加わった際に各構成部品が損傷することを抑制できる歯車装置を提供する。【解決手段】減速機4は、複数の内歯52aを有する内歯車52と、内歯車52に対して偏心して配置されたカム部材56と、カム部材56の外周に相対回転可能に取り付けられて内歯52aの一部と噛合する複数の外歯54aを有する外歯車54と、外歯車54に設けられたピン通孔66に挿入され、該ピン通孔66の内周面の一部に接触するピン部材67を有するキャリヤとを備える。外歯車54は、該外歯車54の中心O2が内歯車52の中心O1と一致することにより、内歯52aと外歯54aとの噛合が解除される。そして、カム部材56には、内歯車52と同軸上に配置されるシャフト51が一体回転可能に嵌合する嵌合孔81、及び嵌合孔81に連続するとともに該嵌合孔81から外歯車54の内歯車52に対する偏心方向側に延びた逃げ孔82が形成される。【選択図】図2

Description

本発明は、歯車装置に関する。
従来、減速機等に用いられる歯車装置として、偏心揺動型(ハイポサイクロイド型)の遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1)。
詳しくは、図6に示すように、この種の歯車装置101は、複数の内歯102aを有する内歯車102と、複数の外歯103aを有する外歯車103とを備えている。外歯車103は、その中心O7が内歯車102の中心O6に対して偏心して配置されており、各内歯102aの一部と各外歯103aの一部とが噛合している。また、歯車装置101は、外歯車103の内周に軸受104を介して該外歯車103と同軸上に配置されたカム部材105と、外歯車103に設けられた複数のピン通孔106にそれぞれ挿入された複数のピン部材107を有するキャリヤ(図示略)とを備えている。そして、カム部材105には、内歯車102と同軸上に配置されたシャフト108が一体回転可能に嵌合する嵌合孔109が形成されている。つまり、嵌合孔109は、外歯車103の中心O7から偏心した位置に形成されている。なお、ピン部材107は、円柱状のピン本体110と、ピン本体110の外周に設けられたニードル軸受111とからなり、ニードル軸受111の外周がピン通孔106の内周面の一部と接触することで、外歯車103との間でトルクを伝達可能となっている。
特開2012−223081号公報
ところで、上記のような歯車装置101において、例えばキャリヤに連結される部材(図示略)に衝撃が加わった場合には、キャリヤのピン部材107を介して衝撃トルクが外歯車103に入力される。その結果、同図において白抜き矢印で示すように、内歯車102と外歯車103との噛み合い部分において、該外歯車103を内歯車102の中心O7側へ押圧する大きな押圧力が発生し、外歯車103や軸受104等の各構成部品が損傷する虞があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、衝撃が加わった際に各構成部品が損傷することを抑制できる歯車装置を提供することにある。
上記課題を解決する歯車装置は、複数の内歯を有する内歯車と、前記内歯車に対して偏心して配置されたカム部材と、前記カム部材に相対回転可能に取り付けられることにより、前記内歯車の内周に該内歯車に対して偏心して配置され、前記各内歯の一部と噛合する複数の外歯を有する外歯車と、前記外歯車に設けられたピン通孔に挿入され、該外歯車との間でトルクを伝達可能なピン部材を有するキャリヤとを備え、前記カム部材には、前記内歯車と同軸上に配置されるシャフトが該カム部材と一体回転するように嵌合可能な嵌合孔が形成されたものであって、前記外歯車は、該外歯車の中心が前記内歯車の中心に近接する方向へ移動することにより、該内歯車の内周において前記内歯と前記外歯との噛合が解除されるように形成され、前記カム部材には、前記嵌合孔に連続するとともに該嵌合孔から前記外歯車の前記内歯車に対する偏心方向側に延び、前記シャフトが挿入可能な逃げ孔が形成されたことを要旨とする。
上記構成よれば、嵌合孔に連続する逃げ孔がカム部材に形成されているため、例えば衝撃トルクが外歯車に入力され、内歯車と外歯車との噛み合い部分で該外歯車を内歯車の中心側に押圧する大きな押圧力が発生すると、シャフトが逃げ孔に挿入されるように外歯車及びカム部材が移動する。これにより、内歯と外歯との噛合が解除されて、外歯車が内歯車の内周で回転可能となるため、外歯車等の各構成部品に加わる負荷を低減でき、各構成部品が損傷することを抑制できる。
上記歯車装置において、前記嵌合孔に嵌合した状態の前記シャフトを該嵌合孔側に拘束する拘束部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、拘束部によってシャフトが嵌合孔側に拘束されるため、各構成部品がほとんど損傷しないような小さな押圧力で、シャフトが逃げ孔に挿入されるように外歯車及びカム部材が移動することを抑制できる。
上記歯車装置において、前記カム部材と該カム部材の外周に嵌合する嵌合部材との間には、隙間が形成されることが好ましい。
上記構成によれば、カム部材の外周に隙間が形成されているため、該隙間の範囲では、カム部材の変形が外歯車等にほとんど影響しない。これにより、シャフトが逃げ孔に挿入されるように外歯車及びカム部材が移動する際に、外歯車等をほとんど変形させなくてもよく、該外歯車等に大きな荷重が作用することを抑制できる。
上記歯車装置において、前記逃げ孔は、該逃げ孔に挿入された状態の前記シャフトと前記カム部材とが相対回転可能となるように形成されることが好ましい。
上記構成によれば、シャフトが逃げ孔に挿入された状態において、例えば内歯車との噛合が解除された外歯車がシャフトの回転に伴って揺動しなくなるため、小さなトルクでシャフトを回転させることが可能になる。
本発明によれば、衝撃が加わった際に各構成部品が損傷することを抑制できる。
一実施形態のアクチュエータの断面図。 一実施形態の減速機の外歯車を通る断面図(図1のA−A断面図)。 一実施形態のカム部材近傍の拡大断面図。 一実施形態の内歯車と外歯車との噛合が解除された状態を示す断面図。 別例のカム部材の拡大断面図。 従来の歯車装置の外歯車を通る断面図。
以下、歯車装置を備えたアクチュエータの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、アクチュエータ1は、モータ3と、モータ3の回転を減速して出力する歯車装置としての減速機4と、モータ3及び減速機4を収容するハウジング5とを備えている。そして、アクチュエータ1は、例えば平行二輪車等の各種車両の駆動源として用いられ、モータ3の回転を減速して図示しない車輪のホイール等に出力する。
先ず、ハウジングの構成について詳細に説明する。
ハウジング5は、有底円筒状に形成されている。ハウジング5の底部11の中央には、その軸方向に貫通した貫通孔12が形成されている。そして、ハウジング5内には、底部11側(図1中、右側)に減速機4が収容され、開口部13側(図1中、左側)にモータ3が収容されている。なお、ハウジング5の開口部13には径方向外側に延出された取付部14が形成されており、該取付部14がボルト等により車体(ともに図示略)に締結されることで、アクチュエータ1が車両に固定されるようになっている。
次に、モータの構成について詳細に説明する。
モータ3には、ブラシレスモータが採用されている。モータ3は、モータケース21と、モータケース21の内周に固定されたステータ22と、ステータ22の内周側に回転可能に配置されたロータ23とを備えている。
詳しくは、モータケース21は、有底円筒状のケース本体31と、ケース本体31の開口端に固定される円板状のカバー32とを備えている。ケース本体31の底部の中央には、軸方向に貫通した貫通孔31aが形成され、カバー32の中央には、軸方向に貫通した貫通孔32aが形成されている。そして、モータケース21は、ハウジング5と同軸上に配置されており、該ハウジング5の開口部13の内周に固定されている。
ステータ22は、ケース本体31の内周に固定された円環状のステータコア33と、ステータコア33のティースに設けられたコイル34とを備えている。ロータ23は、丸棒状のモータ軸35と、モータ軸35の外周に固定される円柱状のロータコア36と、ロータコア36の外周に固定される複数の永久磁石37とを備えている。モータ軸35は、ケース本体31の貫通孔31aに設けられた軸受38a、及びカバー32の貫通孔32aに設けられた軸受38bを介して回転可能に支持されている。また、モータ軸35には、減速機4側の端面に開口し、軸方向に延びた連結穴39が形成されている。
また、モータ3は、ロータ23の回転角を検出するレゾルバ41と、配線基板42とを備えている。配線基板42には、レゾルバ41及びステータ22のコイル34を外部の制御装置(図示略)に接続するための各種配線が形成されている。なお、レゾルバ41及び配線基板42は、カバー32を挟んでステータ22及びロータ23と反対側に設けられている。
次に、減速機の構成について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、減速機4には、偏心揺動型(ハイポサイクロイド型)の遊星歯車装置が採用されている。減速機4は、モータ軸35と同軸上に配置されて該モータ軸35と一体回転し、偏心部(後述するカム部材56)を有するカムシャフト50と、カムシャフト50の軸線L上に中心(軸心)O1が位置するようにハウジング5に固定された内歯車52と、カムシャフト50と同軸上に配置されて該カムシャフト50に入力された回転を出力するキャリヤ53とを備えている。また、減速機4は、内歯車52の中心O1に対して所定量偏心するとともに該中心O1周りに180°ずれた位置にそれぞれ中心(軸心)O2,O3を有する2つの外歯車54を備え、カムシャフト50は、外歯車54がそれぞれ軸受55を介して同軸上に取り付けられる2つのカム部材56と、このカム部材56と一体回転可能に連結されたシャフト51とを備えている。なお、2組の外歯車54、軸受55及びカム部材56は、内歯車52の中心O1(シャフト51の軸線L)周りに180°回転した位置に配置されていること以外は同一の構成であるため、一方の組の外歯車54、軸受55及びカム部材56についてのみ説明し、他方の組についてはその説明を省略する。
詳しくは、シャフト51は、金属材料からなり、丸棒状に形成されている。そして、シャフト51は、モータ3側の端部がモータ軸35の連結穴39に対してセレーション嵌合等することにより、モータ軸35と同軸上で一体回転可能に連結されている。
内歯車52は、金属材料からなり、円筒状に形成されている。内歯車52の外径は、ハウジング5の内径と略等しく設定されている。内歯車52の内周面には、径方向内側に突出する複数の内歯52aが形成されている。また、内歯車52におけるハウジング5の底部11側の端部には、径方向内側に延出されたフランジ部61が形成されている。そして、内歯車52は、底部11の外周縁部に螺着されるボルト62によってフランジ部61が底部11に締結されることで、ハウジング5の内周に固定されている。
外歯車54は、金属材料からなり、円板状に形成されている。外歯車54の中央には、軸方向に貫通した中央孔63が形成されている。また、外歯車54の外周面には、径方向外側に突出する複数の外歯54aが形成されている。なお、外歯54aの歯数は、内歯52aの歯数よりも少なく設定されている。また、本実施形態の内歯52a,外歯54aには、インボリュート歯形が採用されているが、サイクロイド歯形を採用してもよい。そして、外歯車54は、該外歯車54の中心O2が内歯車52の中心O1に対して偏心して配置されており、内歯52aの一部と外歯54aの一部とが噛合している。また、外歯車54の外径(外歯54aの歯先位置での外径)は、内歯車52の内径(内歯52aの歯先位置での内径)よりも小さく設定されている。これにより、外歯車54の中心O2が内歯車52の中心O1と一致した状態になる(外歯車54の中心O2が内歯車52の中心O1に近接する方向へ移動する)と、外歯車54は、内歯52aと外歯54aとの噛合が解除されるようになっている(図4参照)。
また、外歯車54の径方向における中央孔63と外歯54aとの間の部分には、該外歯車54の中心周りに周方向に間隔を空けて形成された複数の円孔64が形成されている。各円孔64は、丸孔状に形成されており、各円孔64の内周面には、軸受65が設けられている。軸受65には、ボールベアリングが採用されており、軸受65は、内輪65aと、外輪65bと、内輪65aと外輪65bとの間に介在される複数のボール65cとを備えている。つまり、本実施形態では、軸受65の内輪65aによってピン通孔66が形成されている。
キャリヤ53は、ピン通孔66に挿入される複数のピン部材67と、ピン部材67の一端部(図1中、左側)に連結された第1プレート68と、ピン部材67の他端部(図1中、右側)に連結された第2プレート69とを備えている。本実施形態のピン部材67は、金属材料からなり、円柱状に形成されたピン本体のみから構成されている。ピン部材67の外径は、ピン通孔66の内径よりも小さく設定されている。そして、各ピン部材67は、ピン通孔66内に挿入された状態で、内歯車52の中心O1(シャフト51の軸線L)を中心とした同心円上に配置されており、内輪65aの内周面の一部と接触している。これにより、キャリヤ53は、ピン部材67を介して外歯車54との間でトルクを伝達可能となっており、モータ3の駆動により内歯車52の内周で揺動(公転)しつつ自転する外歯車54の自転成分のみがピン部材67を介してキャリヤ53から取り出されるようになっている。なお、ピン部材67のピン通孔66の内周面に対する接触位置と該ピン通孔66の中心との関係は、外歯車54の内歯車52に対する噛み合い位置と内歯車52の中心O1との関係と略180°ずれた逆位相の関係となっている。
図1に示すように、第1プレート68は、金属材料からなり、円板状に形成されている。第1プレート68の中央には、貫通孔68aが形成されている。そして、第1プレート68は、その外周とハウジング5の内周との間に設けられた軸受71a、及び貫通孔68aとシャフト51の外周との間に設けられた軸受71bによりハウジング5及びシャフト51に対して相対回転可能に支持されている。第2プレート69は、金属材料からなり、円板状に形成されている。第2プレート69における第1プレート68側の内側面には、その中央に丸孔状の凹部73が形成され、第1プレート68と反対側の外側面には、その中央に円柱状の凸部74が形成されている。そして、第2プレート69は、その外周とハウジング5の底部11との間に設けられた軸受75a、及びシャフト51の外周と凹部73との間に設けられた軸受75bによりハウジング5及びシャフト51に対して相対回転可能に支持されている。第1及び第2プレート68,69は、それぞれボルト77,78によってピン部材67と一体回転可能に連結されている。なお、凸部74とハウジング5の貫通孔12との間には、シール部材79が設けられている。また、凸部74には、図示しない車輪のホイールが連結されるようになっている。
図2及び図3に示すように、カム部材56は、金属材料からなり、小さな円板状に形成されている。そして、カム部材56は、外歯車54の中央孔63内に上記軸受55を介して該外歯車54と同軸上に配置されている。カム部材56には、内歯車52と同軸上に丸孔状の嵌合孔81が形成されている。つまり、嵌合孔81は、その中心が外歯車54の中心O2から偏心した位置に形成されている。嵌合孔81の内径は、シャフト51の外径と略等しく設定されている。そして、カム部材56は、上記シャフト51が嵌合孔81に嵌合することで、該シャフト51と一体回転する。なお、カム部材56の外周面は、内歯車52の中心O1から偏心した位置(外歯車54の中心O2)に中心を有する円筒面状に形成されている。
また、カム部材56には、嵌合孔81に連続するとともに該嵌合孔81から外歯車54の内歯車52に対する偏心方向側(外歯車54の中心O2側、図2中上側)に設けられた丸孔状の逃げ孔82が形成されている。より詳しくは、逃げ孔82は、該逃げ孔82の中心が外歯車54の中心O2と同一位置に形成されており、嵌合孔81と逃げ孔82とは、互いに半分程度が重なって形成されている。つまり、本実施形態のカム部材56には、所謂だるま孔状の孔が形成されている。逃げ孔82の内径は、シャフト51の外径よりも僅かに大きく設定されている。そして、嵌合孔81と逃げ孔82との境界部分には、偏心方向と略直交する方向(図3中、左右方向)に突出する一対の拘束部83が形成されている。各拘束部83は、シャフト51が嵌合孔81に嵌合している状態で、逃げ孔82側からシャフト51の外周面に係止している。
嵌合孔81の内周面における逃げ孔82(外歯車54の中心O2)と反対側には、キー溝84が形成されている。一方、シャフト51の外周面における外歯車54の中心O2側には、キー溝85が形成されている。キー溝84,85は、それぞれ軸方向に延び、四角形状の断面を有している。そして、シャフト51とカム部材56との間には、キー溝84,85に嵌合する四角柱状のキー部材86が挿入されている。これにより、シャフト51が嵌合孔81に嵌合した状態で、シャフト51とカム部材56との相対回転が規制される。つまり、本実施形態では、キー溝84,85及びキー部材86により、シャフト51とカム部材56との相対回転を規制する規制部が構成されている。
また、本実施形態のキー部材86は、カム部材56のキー溝84内に固定され、シャフト51のキー溝85内には挿入されたのみで固定されていない状態となっている。そして、キー溝84の深さは、シャフト51が逃げ孔82側に挿入された状態で、キー部材86がシャフト51と干渉しないように突出する深さに設定されている。ここで、上記のように逃げ孔82の内径はシャフト51の外径よりも僅かに大きく形成されていることから、シャフト51が逃げ孔82に挿入された状態では、シャフト51とカム部材56との相対回転が許容される。
軸受55には、ボールベアリングが採用されており、軸受55は、内輪55aと、外輪55bと、内輪55aと外輪55bとの間に介在される複数のボール55cとを備えている。外輪55bは、中央孔63の内周に外歯車54と一体回転可能に嵌合されている。なお、外輪55bの外周面の断面形状は、円(真円)形状に形成されており、外輪55bの外径は、外歯車54の中央孔63の内径と略等しく設定されている。一方、軸受55の内輪55aは、カム部材56の外周に一体回転可能に嵌合されている。つまり、本実施形態では、内輪55aが嵌合部材に相当する。内輪55aの内周面の断面形状は、楕円状に形成されている。内輪55aの断面のなす楕円の短軸はカム部材56の直径と略等しく設定され、該楕円の長軸はカム部材56の直径よりも僅かに大きく設定されている。そして、内輪55aは、偏心方向と短軸とが略平行になるようにカム部材56の外周に嵌合されている。これにより、カム部材56の外周(カム部材56と内輪55aとの間)には、偏心方向と直交する方向の両側に微小な円弧状の隙間Sが形成されている。
次に、本実施形態のアクチュエータの動作(作用)について説明する。
アクチュエータ1では、制御装置から駆動電力がモータ3(コイル34)に供給されることによりロータ23(モータ軸35)が回転し、減速機4のシャフト51に回転が入力される。そして、シャフト51と一体でカム部材56が回転すると、外歯車54は、内歯車52との噛み合い位置を周方向にずらすことにより外歯54aの軌跡がハイポサイクロイド曲線を描く態様で揺動しつつ、内歯52aと外歯54aの歯数差に応じて自転(外歯車54の中心O2周りに回転)する。このとき、ピン通孔66の内周面とピン部材67との接触位置は、外歯車54の揺動に合わせて内歯車52と外歯車54との噛み合い位置に対して上記逆位相となる関係を保ちつつ周方向にずれていき、ピン通孔66の内周面が外歯車54の自転分だけピン部材67を周方向に押圧する。これにより、シャフト51に入力された回転が減速されてキャリヤ53から出力され、図示しない車輪が回転する。
ここで、例えば車輪に衝撃が加わった場合には、キャリヤ53のピン部材67を介して衝撃トルクが外歯車54に入力されることで、外歯車54を内歯車52の中心O1側に押す大きな押圧力が発生する(図6参照)。すると、本実施形態の減速機4では、カム部材56に逃げ孔82が形成されているため、図4に示すように、シャフト51が逃げ孔82に挿入されるように外歯車54、軸受55及びカム部材56が移動する。そして、シャフト51が逃げ孔82内に挿入され、外歯車54の中心O2が内歯車52の中心O1と略一致することで、内歯52aと外歯54aとの噛合が解除され、外歯車54が内歯車52の内周で回転可能となる。これにより、外歯車54や軸受55等の減速機4の各構成部品に負荷がほとんど加わらない状態となり、該各構成部品の損傷が抑制される。
また、内歯車52と外歯車54との噛み合い部分に砂等の異物が噛み込んだ場合に、モータ駆動によりシャフト51に回転が入力されると、外歯車54を内歯車52の中心O1側に押す大きな押圧力が発生する。このとき、同様にシャフト51が逃げ孔82に挿入されるように外歯車54、軸受55及びカム部材56が移動することで、内歯52aと外歯54aとの噛合が解除され、外歯車54が内歯車52の内周で回転可能となる。これにより、シャフト51及びキャリヤ53が回転できなくなるロック状態となることが抑制される。なお、本実施形態の減速機4には、2組の外歯車54が設けられているため、一方の外歯車54と内歯車52との噛合が解除されても、もう一方の外歯車54からキャリヤ53に回転が伝達される。
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)カム部材56に逃げ孔82を形成することで、外歯車54に該外歯車54を内歯車52の中心O1側に押圧する大きな押圧力が作用したときに内歯車52と外歯車54と噛合が解除されるようにした。そのため、例えばキャリヤ53に連結される車輪に衝撃が加わった場合に減速機4を構成する各構成部品が損傷することや、内歯車52と外歯車54との噛み合い部分に砂等の異物が噛み込んだ場合に減速機4がロック状態となることを抑制できる。
(2)嵌合孔81側にシャフト51を拘束する拘束部83をカム部材56に形成したため、例えば各構成部品がほとんど損傷しないような小さな押圧力で、シャフト51が逃げ孔82に挿入されるように外歯車54、軸受55及びカム部材56が移動することを抑制できる。
(3)シャフト51及びカム部材56にキー溝84,85を形成するとともに、シャフト51が嵌合孔81に嵌合した状態でキー溝84,85に係合するキー部材86を設けたため、シャフト51が嵌合孔81に嵌合する状態でシャフト51とカム部材56との相対回転が規制され、シャフト51とカム部材56との間で効率的に回転を伝達できる。
(4)カム部材56の外周における偏心方向と直交する方向の両側に隙間Sを形成したため、該隙間Sの範囲では、カム部材56の変形が外歯車54及び軸受55にほとんど影響しない。これにより、シャフト51が逃げ孔82に挿入されるように外歯車54、軸受55及びカム部材56が移動する際に、外歯車54等をほとんど変形させなくてもよく、該外歯車54や軸受55等に大きな荷重が作用することを抑制できる。特に本実施形態では、カム部材56に拘束部83が形成されており、外歯車54及びカム部材56が移動する際に該カム部材56が比較的大きく変形する必要があるため、隙間Sを形成する効果は大である。
(5)逃げ孔82を、逃げ孔82に挿入された状態のシャフト51とカム部材56とが相対回転可能となるように形成したため、シャフト51が逃げ孔82に挿入された状態において、内歯車52との噛合が解除された外歯車54がシャフト51の回転に伴って揺動しなくなる。これにより、小さなトルクでシャフト51を回転させることが可能になる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態において、ピン部材67が円柱状のピン本体と該ピン本体の外周に嵌合するニードルベアリング等の軸受とを備える構成とし、外歯車54の円孔64に軸受65を設けなくてもよい。なお、この場合には、円孔64がピン通孔に相当する。
・上記実施形態において、カム部材56を樹脂材料等により構成してもよい。
・上記実施形態では、減速機4がシャフト51を備える構成としたが、これに限らず、例えばモータ3のモータ軸35をモータケース21から大きく突出する形状とし、モータ軸35がカム部材56の嵌合孔81に嵌合する構成としてもよい。なお、この場合には、モータ軸35がシャフトに相当する。
・上記実施形態では、逃げ孔82に挿入された状態のシャフト51とカム部材56とが相対回転可能となるように逃げ孔82を形成したが、これに限らず、例えば逃げ孔82の内径をシャフト51の外径と略等しく設定することで、逃げ孔82に挿入された状態のシャフト51とカム部材56とが一体回転するようにしてもよい。
・上記実施形態では、カム部材56の外周に偏心方向と直交する方向の両側に微小な隙間Sが形成されるように内輪55aの断面形状を楕円状に形成した。しかし、これに限らず、内輪55aの断面形状を真円状に形成し、その内径をカム部材56の外径よりも僅かに大きく設定することにより内輪55aの外周に隙間Sを形成してもよい。つまり、内輪55aをカム部材56の外周に隙間嵌めしてもよい。このように構成しても、上記実施形態の(4)と同様の効果を奏する。なお、内輪55aの断面形状を真円状に形成し、その内径をカム部材56の外径と略等しく設定することで、カム部材56と内輪55aとの間に隙間が形成されないようにしてもよい。
・上記実施形態において、軸受55の内輪55aとカム部材56との間に筒状のスリーブ等を介在させてもよい。なお、この場合には、スリーブが嵌合部材に相当する。
・上記実施形態では、シャフト51及びカム部材56に形成したキー溝84,85にキー部材86を嵌合させることで、嵌合孔81に嵌合する状態のシャフト51とカム部材56との相対回転を規制するようにした。しかし、これに限らず、例えば図5に示すように、シャフト51の外周面の一部及び嵌合孔81の内周面の一部にセレーション歯91,92を形成することで、シャフト51とカム部材56との相対回転を規制してもよい。なお、この場合において、同図に示すように、偏心方向と直交する方向の両側に設けられたセレーション歯92がセレーション歯91を挟み込むように傾斜させることで、該セレーション歯91,92によってシャフト51を嵌合孔81側に拘束できる。この場合には、セレーション歯91,92が規制部のみでなく、拘束部としても機能するため、拘束部83を同図に示すように廃止できる。
なお、減速機4に規制部を設けず、シャフト51の外周面と嵌合孔81の内周面との間に作用する摩擦力のみによって嵌合孔81に嵌合する状態のシャフト51とカム部材56とが一体回転するようにしてもよい。さらに、拘束部83を形成せず、摩擦力のみによって、シャフト51を嵌合孔81側に拘束してもよい。
・上記実施形態において、キー部材86をシャフト51のキー溝85内に固定し、カム部材56のキー溝84内には挿入するのみとしてもよい。
・上記実施形態では、逃げ孔82を、その中心が外歯車54の中心O2と一致するように形成したが、これに限らず、逃げ孔82内にシャフト51が挿入された状態で、内歯52aと外歯54aとの噛合が解除されて外歯車54が回転可能であれば、逃げ孔82の中心が外歯車54の中心O2と一致しなくてもよい。また、逃げ孔82は、シャフト51が挿入可能であれば、例えば楕円状等としてもよく、適宜変更可能である。同様に、嵌合孔81の形状は、シャフト51が一体回転可能であれば、適宜変更可能である。
・上記実施形態では、減速機4が2組の外歯車54、軸受55及びカム部材56を備える構成としたが、1組のみ又は3組以上の外歯車54、軸受55及びカム部材56を備える構成としてもよい。
・上記実施形態では、歯車装置を減速機4として用いたが、例えばキャリヤ53に回転を入力し、シャフト51から増速した回転を出力することで増速機として用いてもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記嵌合孔に嵌合された状態の前記シャフトと前記カム部材との相対回転を規制し、前記逃げ孔に挿入された状態の前記シャフトと前記カム部材との相対回転を許容する規制部を備えたことを特徴とする歯車装置。上記構成によれば、シャフトが嵌合孔に嵌合した状態で該シャフトとカム部材との相対回転が規制されるため、シャフトとカム部材との間で効率的に回転を伝達できる。
1…アクチュエータ、3…モータ、4…減速機、5…ハウジング、51…シャフト、52…内歯車、52a…内歯、53…キャリヤ、54…外歯車、54a…外歯、55…軸受、55a…内輪(嵌合部材)、55b…外輪、55c…ボール、56…カム部材、66…ピン通孔、67…ピン部材、81…嵌合孔、82…逃げ孔、83…拘束部、84,85…キー溝(規制部)、86…キー部材(規制部)、91,92…セレーション歯(拘束部及び規制部)、L…軸線、O1,O2,O3…中心、S…隙間。

Claims (4)

  1. 複数の内歯を有する内歯車と、
    前記内歯車に対して偏心して配置されたカム部材と、
    前記カム部材の外周に相対回転可能に取り付けられることにより、前記内歯車の内周に該内歯車に対して偏心して配置され、前記各内歯の一部と噛合する複数の外歯を有する外歯車と、
    前記外歯車に設けられたピン通孔に挿入され、該外歯車との間でトルクを伝達可能なピン部材を有するキャリヤとを備え、
    前記カム部材には、前記内歯車と同軸上に配置されるシャフトが該カム部材と一体回転するように嵌合可能な嵌合孔が形成された歯車装置であって、
    前記外歯車は、該外歯車の中心が前記内歯車の中心に近接する方向へ移動することにより、該内歯車の内周において前記内歯と前記外歯との噛合が解除されるように形成され、
    前記カム部材には、前記嵌合孔に連続するとともに該嵌合孔から前記外歯車の前記内歯車に対する偏心方向側に延び、前記シャフトが挿入可能な逃げ孔が形成されたことを特徴とする歯車装置。
  2. 請求項1に記載の歯車装置において、
    前記嵌合孔に嵌合した状態の前記シャフトを該嵌合孔側に拘束する拘束部を備えたことを特徴とする歯車装置。
  3. 請求項1又は2に記載の歯車装置において、
    前記カム部材と該カム部材の外周に嵌合する嵌合部材との間には、隙間が形成されたことを特徴とする歯車装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯車装置において、
    前記逃げ孔は、該逃げ孔に挿入された状態の前記シャフトと前記カム部材とが相対回転可能となるように形成されたことを特徴とする歯車装置。
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