JP2015101591A - ポリオレフィン系樹脂発泡粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子型帯電防止剤が本来持っている性能を十分に発揮させることができ、優れた帯電防止性能を有する発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。【解決手段】密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡させた発泡粒子であって、該発泡粒子はポリオレフィン系樹脂発泡層と該発泡層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる多層発泡粒子であり、該被覆層に高分子型帯電防止剤およびイオン液体が配合されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子。【選択図】 なし

Description

本発明は、帯電防止性能に優れ、かつ帯電防止性能の経時変化が少なく湿度依存性も小さい発泡成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形した発泡成形体は、OA機器等の電気・電子機器や部品、あるいは精密機器やその部品等の梱包や緩衝包装材として広く利用されている。
通常、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体は電気絶縁性材料であるので静電気を帯電しやすく、これらの用途に使用される場合には、帯電した静電気による電気・電子機器等の損傷を防ぐため、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子には帯電防止性能を付与した発泡粒子が用いられている。
従来、熱可塑性樹脂発泡成形体の原料樹脂粒子に、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性無機物を混練して高い導電性を付与した熱可塑性樹脂発泡成形体とすることが知られている。しかし、これは静電気の減衰速度が非常に速いために、電気・電子機器等に急激な電流が流れることにより、場合によってはこれらの破損を生じることがある。
また上記の導電性カーボンブラックを添加したポリオレフィン系樹脂発泡粒子の成形体は黒色以外の着色が不可能となる。また導電性無機物が離脱して被梱包物を汚染する場合がある。
その他、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の電気特性を改良する方法として、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体表面に界面活性剤等の低分子量帯電防止剤を塗布する方法、界面活性剤等の低分子量帯電防止剤を発泡粒子の基材樹脂に混練して発泡した発泡粒子を成形する方法等がある。しかし、これらの方法において帯電防止性能は、経時的な性能低下のほかに、環境の雰囲気の温度、湿度などに依存しその効果が変化することがあった。また被包装物へ界面活性剤が移行、付着することがあった。
上記のような界面活性剤等の低分子量帯電防止剤を使用した場合の界面活性剤の被包装物への付着に伴う汚染、また成形体表面に塗布した場合の剥落を解消する方法として、界面活性剤と親水性重合体とを含有したポリオレフィン系樹脂粒子を発泡させた発泡粒子および該発泡粒子を使用した発泡成形体が開示された(特許文献1)。
また、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の基材樹脂に高分子型帯電防止剤を添加する方法がある。親水性重合体を含む高分子型帯電防止剤を添加して、発泡粒子に所望の高い帯電防止性能を得ようとして該高分子型帯電防止剤の添加量を増やした場合には、発泡性を阻害するのみならず、発泡粒子同士の熱融着性が低下し、発泡成形体の表面状態が悪化し良好な発泡成形体が得られない。発泡粒子同士の熱融着性を高めるために加熱温度を高くすると発泡粒子が加熱に耐えられなくなり気泡が破泡して収縮するか、発泡粒子内部まで溶融し発泡成形体のセル構造に大きなダメージを与える。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に高分子型帯電防止剤を添加したときに見られる発泡粒子の収縮が抑制され、発泡粒子同士の融着性に優れ型内成形性が良好であり、かつ帯電防止性を有する発泡成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子として、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡芯層と該芯層樹脂の融点より低いポリオレフィン系樹脂からなる被覆層とからなる多層発泡粒子の被覆層に高分子型帯電防止剤が配合されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、本出願人は開発した(特許文献2)。この技術により、帯電防止性能に優れると共に、帯電防止性能の経時変化・湿度依存性がなく、被包装物の汚染が抑制され、かつ、機械的物性に優れる発泡粒子成形体を得ることが可能となった。
特開2000−290421号公報 特開2009−173021号公報
近年、性能の向上が著しい集積回路、ハードディスクなどの電子部品の包装材には、電子部品が静電気により破壊されることを防ぐために、より優れた帯電防止性能、すなわち低い表面抵抗率が要求されている。
特許文献2の技術により、さらに低い表面抵抗率を示す発泡粒子成形体を得ようとして、被覆層に帯電防止剤を多量に配合しても、ポリオレフィン系多層樹脂粒子を、密閉容器内で水性媒体中に分散させて発泡剤を含浸させたのち、大気中に放出して発泡させると、この方法で得られた発泡粒子では、高分子型帯電防止剤の配合量に見合う、高分子型帯電防止剤の本来発揮し得る帯電防止性能を有する発泡粒子成形体が得られなかった。
本発明は、高分子型帯電防止剤が本来持っている性能を十分に発揮させることができ、優れた帯電防止性能を有する発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の技術課題を解決すべく検討を行なった結果、ポリオレフィン系樹脂により構成される芯層と、該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂により構成される被覆層とからなる多層樹脂粒子の被覆層に高分子型帯電防止剤と助剤としてイオン液体とを配合することにより上記課題を解決し本発明の目的を達成することができることを見出した。
本発明は、下記〔1〕〜〔4〕のポリオレフィン系樹脂発泡粒子、下記〔5〕の発泡粒子形成体、および下記〔6〕および〔7〕のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
〔1〕密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡させた発泡粒子であって、該発泡粒子がポリオレフィン系樹脂発泡層と該発泡層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる多層発泡粒子であり、該被覆層が高分子型帯電防止剤およびイオン液体を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔2〕前記高分子型帯電防止剤が、ポリオレフィンとポリエーテルとのブロック共重合体である上記〔1〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔3〕前記イオン液体が、第4級窒素カチオンと、フルオロアルキル基を含むアニオンとからなる、上記〔1〕または〔2〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔4〕前記被覆層中のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との重量比が95:5〜50:50であり、前記イオン液体の配合量が高分子型帯電防止剤100重量部に対して5〜150重量部である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる、表面抵抗率1×1010Ω未満の発泡成形体。
〔6〕密閉容器内において、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤およびイオン液体を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体中に分散させる工程、水性分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡粒子とする工程を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔7〕密閉容器内において、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体中に分散させる工程、水性分散媒体中にイオン液体を添加する工程、水性分散媒体中のポリオレフィン系樹脂粒子にイオン液体を含浸させる工程、水性分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡粒子とする工程を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
本発明によるポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂により構成される発泡芯層と、該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂により構成される被覆層とからなり、該被覆層に高分子型帯電防止剤とイオン液体が配合されていることにより、高分子型帯電防止剤の配合量に見合う所期の帯電防止性能を発現することができ、かつ帯電防止剤の帯電防止性能の経時変化および湿度依存性が殆どないポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
本発明の発泡粒子を成形して得られる成形体は、優れた帯電防止性能を有することから、OA機器等の電気・電子機器や部品、精密機器やその部品等の梱包材料や緩衝包装材、また自動車分野、建材分野或いは雑貨の包装・梱包材料として、また断熱材料等として広く利用できる。
なお、本明細書においてポリオレフィン系樹脂発泡粒子を単に発泡粒子ともいうことがある。また多層ポリオレフィン系樹脂粒子を単に多層樹脂粒子ともいうことがある。
発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定における第1回目測定のDSC曲線の一例を示す。 発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定における第2回目測定のDSC曲線の一例を示す。
ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる多層ポリオレフィン系樹脂粒子を、密閉容器内の水性分散媒中に分散させ、該樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から該容器内圧よりも低圧機器に放出して発泡させることにより得られた優れた帯電防止性能を有する発泡粒子に関する。
上記特許文献2の方法により製造される発泡粒子は、被覆層中に配合された高分子型帯電防止剤の配合量に見合う所期の帯電防止性能が十分に発現されないという製造上の新たな課題が見出された。この技術課題についてその要因を種々検討したところ、被覆層に高分子型帯電防止剤を配合した多層樹脂粒子を水性分散媒中に分散させて、加熱、加圧下に発泡剤を含浸させる過程で、高分子型帯電防止剤中に助剤として含まれる金属塩中のLi+やNa+などの金属カチオンが水性媒体中に溶出し、その結果、高分子型帯電防止剤が本来発現すべき性能が十分発揮されていないことが分かった。
上記の技術課題について、検討を重ねた結果、本発明の発泡粒子の被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂に、高分子型帯電防止剤および後述するイオン液体を含有させることにより、上記の技術課題を克服し、高分子型帯電防止剤の本来発揮し得る所期の帯電防止性能を発現することができ、帯電防止剤の配合量に見合う優れた帯電防止特性を有する発泡粒子を得ることができた。
すなわち、本発明は、密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡させた発泡粒子であって、該発泡粒子はポリオレフィン系樹脂発泡層と該発泡層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる多層発泡粒子であり、該被覆層に高分子型帯電防止剤およびイオン液体が配合されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
上記本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、被覆層に高分子型帯電防止剤とイオン液体とを含む発泡性多層樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から放出して発泡させる方法により得ることができる。なお、イオン液体は、(1)水性分散媒体中に分散させる前に多層樹脂粒子の被覆層に配合しておいてもよく、(2)水性媒体中で多層樹脂粒子に含浸させてもよく、(1)及び(2)の方法を併用してもよい。
また、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、被覆層に高分子型帯電防止剤を含む発泡性多層樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から該容器内圧よりも低圧域に放出して発泡させて発泡粒子を得た後、イオン液体を該発泡粒子に含浸させて得ることもできるが、製造効率の観点から、前記方法が好ましい。
すなわち、上記(1)は、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤およびイオン液体を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を、密閉容器内において、水性分散媒体中に分散させる工程、分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡粒子とする工程を含む、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法である。
上記(2)は、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を、密閉容器内において、水性分散媒体中に分散させる工程、水性分散媒体中にイオン液体を添加する工程、水性媒体中のポリオレフィン系樹脂粒子にイオン液体を含浸させる工程、水性分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域に放出して発泡粒子とする工程を含む、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法である。なお、水性分散媒体中へイオン液体を添加するタイミングは、水性媒体中に多層樹脂粒子を分散させる前であっても、後であっても、多層樹脂粒子を分散させるのと同時であってもよい。また、多層樹脂粒子を分散させた後にイオン液体を添加する場合には、発泡剤を添加する前であっても、後であっても、発泡剤の添加と同時であってもよい。
イオン液体はポリオレフィン系樹脂を可塑化することから、多層樹脂粒子の製造時にイオン液体を添加する場合、被覆層へのイオン液体の添加量が多くなると多層樹脂粒子の製造が不安定となることがある。多層樹脂粒子を安定して製造するという観点からは、上記(2)のように、水性媒体中で多層樹脂粒子にイオン液体を含浸させることが好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、上記のように、ポリオレフィン系樹脂の芯層と、該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂の被覆層からなる多層樹脂粒子を発泡させた発泡粒子である。ここで、以下の記述で、多層樹脂粒子の芯層を「芯層(R)」といい、被覆層を「被覆層(R)」ということがある。また、該多層樹脂粒子を発泡させた発泡粒子の芯層を「芯層(E)」といい、発泡粒子の被覆層を「被覆層(E)」ということがある。したがって、発泡粒子の「芯層(E)」の樹脂と多層樹脂粒子の「芯層(R)」の樹脂とは同一であり、「被覆層(E)」の樹脂と多層樹脂粒子の「被覆層(R)」の樹脂とは同一である。
(I)[ポリオレフィン系樹脂]
本発明における、芯層および被覆層のポリオレフィン系樹脂は、次の(a)〜(e)のいずれかに該当する樹脂である。
(a)エチレン、又はプロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン(以下これらを総称してオレフィンという)の単独重合体;(b)2種以上のオレフィンの共重合体;(c)上記のオレフィンとスチレンなどの他の重合性モノマーとの共重合体で共重合体中のオレフィン成分単位が30重量%以上の共重合体であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
さらに、(d)上記の(a)、(b)および(c)から選ばれる2種以上の混合物;(e)上記の(a)、(b)、(c)および(d)から選ばれる1種又は2種以上と、上記の(a)、(b)、(c)および(d)とは異なる他の熱可塑性樹脂および/またはエラストマーとの混合物からなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物中のオレフィン成分単位が30重量%以上の樹脂組成物であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、次の(f)〜(i)のいずれかに該当するポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
(f)プロピレン単独重合体;(g)プロピレンと他の重合性モノマーとの共重合体であって、共重合体中のプロピレン成分単位が30重量%以上の共重合体であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である;(h)上記(f)および(g)から選ばれる2種以上の混合物;(i)上記(f)、(g)および(h)から選ばれる1又は2種以上と、上記(f)、(g)または(h)とは異なる他の熱可塑性樹脂および/またはエラストマーとの混合物からなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物中のプロピレン成分単位が30重量%以上の樹脂組成物であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
前記の(a)は具体的には、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂等であり、(b)は具体的には、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等であり、これらの共重合体はブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。
上記の(e)または(i)の他の熱可塑性樹脂として、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が例示され、エラストマーとして、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー、スチレン−イソプレン共重合エラストマー、それらの水添物、エチレン−オクテン共重合エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、等が例示される。
芯層のポリオレフィン系樹脂は、結晶性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。本発明における結晶性ポリオレフィン系樹脂とは、JIS K7122(1987年)に記載の「一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置(以下、DSC装置という。)を使用し、加熱速度10℃/分でDSC曲線を採り、DSC曲線のポリオレフィン系樹脂の融解に伴う吸熱ピークを示すポリオレフィン系樹脂を意味する。なお、明確な吸熱ピーク熱量の下限は2J/gである。一方、明確な吸熱ピーク熱量を示さない、すなわち吸熱ピーク熱量が2J/g未満であるポリオレフィン系樹脂を非晶性ポリオレフィン系樹脂とする。
本発明の芯層のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。耐熱性と機械的物性のバランスに優れるという点からプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が好ましく、これらの共重合体は、ブロック共重合体またはランダム共重合体いずれでもよい。
なお、発明のポリプロピレン系樹脂の重合に使用される重合触媒は特に制限されず、重合触媒としての性能を有する有機金属錯体を用いることができる。一般的には、チーグラー・ナッタ系触媒といわれる、チタン、アルミニウム、マグネシウムなどを核元素とし、一部又は全部をアルキル基で修飾した有機金属錯体、およびメタロセン系触媒又は均一系触媒といわれる、ジリコニウム、チタン、トリウム、ルテニウム、ランタン、鉄などの遷移金属又はホウ素を核元素としシクロペンタン環などで修飾した有機金属錯体単体、あるいは該有機金属錯体とメチルアルモキサンとの併用系等が使用される。
上記ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン系重合触媒により重合されたポリプロピレン系樹脂(以下、mPPという。)が特に好ましい。このmPPは一般的な重合触媒であるチーグラー・ナッタ系重合触媒により重合されたポリプロピレン系樹脂(以下、zPPという。)と比べると、同一融点のプロピレン系樹脂同士を比較したときに機械的強度が高く、得られる発泡粒子が機械的強度に優れたものとなる。
前記の芯層の結晶性ポリオレフィン系樹脂は、型内成形の熱加工性と耐熱性を両立させるという観点から、融点が100℃〜250℃のものが好ましく、110℃〜170℃のものがより好ましく、さらに120℃〜160℃のものが特に好ましい。
融点は、JIS K7121(1987年)に記載の「一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、DSC装置により加熱速度10℃/分で昇温してDSC曲線を描いた際に、DSC曲線上の樹脂の融解に伴う吸熱ピークの頂点温度として求められる値である。なお、DSC曲線上に複数の吸熱ピークが存在する場合は、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。測定装置は、ティーエイ・インスツルメント社製DSCQ1000などを使用することができる。
上記の被覆層のポリオレフィン系樹脂において、融点を示す結晶性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、上記のポリプロピレン系樹脂のうち結晶性のものや、高密度ポリエチレン樹脂、分岐状の低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、その他酢酸ビニル、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、ビニルアルコール等のモノマーとエチレンとの共重合体などのポリエチレン系樹脂等が挙げられる。非晶性のポリオレフィン系樹脂は、例えば、非結晶性のアタクチックポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン骨格などを有する環状オレフィンとエチレンとの共重合体等が挙げられる。
被覆層のポリオレフィン系樹脂は、結晶性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂、分岐状の低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。その中でも芯層のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合には、被覆層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂がさらに好ましく、メタロセン系重合触媒を使用して重合されたポリプロピレン系樹脂(mPP)が特に好ましい。
芯層のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、被覆層のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であれば、芯層と被覆層との接着性に優れるので、生産性に優れると共に、発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体が強度に優れたものとなる。さらに、mPPは、zPPに比べて低分子量成分の含有量が少ないためか、他のポリオレフィン系樹脂との融着性により優れているので、mPPを被覆層のポリオレフィン系樹脂に使用した場合、発泡粒子同士の融着性がさらに優れたものとなり、また芯層と被覆層との接着性もさらに良好なものとなるので、該発泡粒子から得られる成形体は機械的強度に優れたものとなる。
型内成形時の発泡粒子の融着性を高めるという観点から、被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の融点は、前記の芯層と同様の転移熱(融解熱量)測定法により、明確な吸熱ピークを示す結晶性の樹脂の場合には、前記芯層を構成する結晶性の熱可塑性樹脂の融点よりも低いこと、前記の融点測定法において、明確な吸熱ピークを示さない非結晶性樹脂の場合には、前記の芯層を構成する樹脂の融点よりも軟化点が低いことが好ましい。
しかし、被覆層を構成する樹脂の融点または軟化点が、芯層を構成するポリオレフィン系樹脂の融点よりも低く過ぎると発泡時に発泡粒子のブロッキングが生じやすくなり、また、発泡粒子を型内成形して得られた成形体の耐熱性が低下する傾向にある。このような観点から、被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂が結晶性ポリオレフィン系樹脂の場合には、芯層を構成する結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点(A)と被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の融点(B)との差[(A)−(B)]が0℃を超え80℃以下であるものを用いることが好ましく、上記の差が1〜80℃であることがより好ましく、5〜60℃であることがさらに好ましく、10〜50℃であることが特に好ましく、15〜45℃であることが最も好ましい。
一方、被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂が非晶性ポリオレフィン系樹脂の場合には、芯層を構成する結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点(A)と被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の軟化点(C)との差[(A)−(C)]が0℃を超え100℃以下であるものを用いることが好ましく、上記の差が1〜100℃であることがより好ましく、5〜60℃であることがさらに好ましく、10〜50℃であることが特に好ましく、15〜45℃であることが最も好ましい。
本発明において軟化点とは、JIS K7206(1999年)に基づく、A50法で測定されたビカット軟化温度を意味する。測定試験片としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂を230℃で5MPaに加圧することにより気泡が混入しないようにして縦20mm×横20mm×厚み3mmの試験片を作製し、該試験片をアニーリング処理せずに測定に用いる。測定装置としては、株式会社上島製作所製「HDT/VSPT試験装置 MODEL TM−4123」などを使用することができる。
被覆層には、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で滑剤、触媒中和剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。前記添加剤はその種類にもよるがポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは1重量部以下である。
(II)[高分子型帯電防止剤]
本発明において、高分子型帯電防止剤が被覆層に配合されている。被覆層への高分子型帯電防止剤の配合量は、所望の帯電防止性能に応じて適宜決定されるものであるが、被覆層のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して5重量部以上となるように高分子型帯電防止剤を配合することが好ましい。
一方、配合量を多くしても帯電防止性能は頭打ちとなり配合量に見合う効果は得られず、さらに、配合量が多すぎると、発泡粒子の融着性が悪くなる傾向や、発泡成形体の表面状態が悪くなる傾向があることから、被覆層への高分子型帯電防止剤の配合量は、被覆層のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して50重量部以下とすることが好ましい。すなわち、被覆層のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との重量比を95:5〜50:50とすることが好ましい。
このような点から、被覆層への高分子型帯電防止剤の配合量の下限は12重量部がより好ましく、15重量部がさらに好ましく、20重量部が特に好ましく、25重量部が最も好ましい。一方、上限は40重量部がより好ましく、30重量部がさらに好ましい。
本発明においては、高分子型帯電防止剤は、前記のように被覆層に配合されるが、発泡に支障を与えない範囲で、かつ発泡粒子に大きな収縮が生じない範囲で、芯層に高分子型帯電防止剤を配合することにより、得られる発泡成形体は、さらに優れた帯電防止性能を発現することができる。また発泡粒子に小口(粒子の断面に被覆層が存在しない部分)が存在する場合、又は成形体を切断した切断表面を有する場合においても、芯層に高分子型帯電防止剤が存在するので成形体表面全体が高分子型帯電防止剤を含んだ相となり、優れた帯電防止効果が得られる。また、芯層に少量の高分子型帯電防止剤を添加すると、帯電防止性能を低下させることなく被覆層に添加される高分子型帯電防止剤の添加量を減らすこともできるので、発泡粒子同士の熱融着性がより優れたものとなる。この場合、芯層への高分子型帯電防止剤の配合量は発泡に支障を与えない範囲とすることが必要であり、芯層への高分子型帯電防止剤の配合量の上限は、芯層のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して15重量部以下であり、好ましくは12重量部以下、より好ましくは8重量部以下であることが望ましい。一方、より高い帯電防止性能を得るという観点からは、高分子型帯電防止剤の配合量の下限は5重量部以上が好ましく、7重量部以上であることがより好ましい。また、芯層へ高分子型帯電防止剤を配合する場合には、得られる発泡粒子成形体の帯電防止性能と機械的強度とのバランスという点からは、芯層への高分子型帯電防止剤の配合割合を被覆層(R)の高分子型帯電防止剤の配合割合よりも少なくして帯電防止性能を調整することが好ましい。
芯層に高分子型帯電防止剤を配合する場合には、発泡粒子の機械的強度が低下しやすいので、芯層を構成するポリオレフィン系樹脂として、mPPを用いることが好ましく、メタロセン系触媒の中でもシリレン架橋型のアズレニル型配位子を有する錯体からなるものが特に好ましい。
また、一般に高分子型帯電防止剤を発泡粒子に配合することにより、高分子型帯電防止剤自体の機械的強度が低いことや異種原料の混合による基材樹脂自体の機械的強度の低下が生じやすくなる。かかる観点から、成形体の機械的強度の観点からは、芯層(E)は高分子型帯電防止剤を実質的に含有しないことが好ましく、高分子型帯電防止剤を含有しないことがより好ましい。
ここで「実質的に含有しない」とは、高分子型帯電防止剤の配合量が、高分子型帯電防止剤を含まない発泡粒子と同等の発泡性、機械的物性を有する発泡粒子が得られ、帯電防止性能が発現しない配合量であることを意味し、通常は芯層のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して5重量%未満(0を含む)である。さらに、上記観点から、好ましくは3重量部以下(0を含む)であり、より好ましくは1重量%以下(0を含む)である。
本発明に使用される高分子型帯電防止剤は、具体的には、金属イオンとしてカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれたアルカリ金属を含むアイオノマー樹脂、あるいはポリエーテルエステルアミドやポリエーテル等の体積抵抗率が1×10〜1×1011Ω・cmの親水性樹脂を主成分とするものが好ましい。また高分子型帯電防止剤は、発泡粒子を構成するポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、優れた帯電防止効果を付与すると共に、帯電防止剤を添加することによる物性低下を抑制する効果を得るために、親水性樹脂にポリオレフィン系樹脂をブロック共重合させた樹脂を用いることがより好ましく、ポリオレフィンとポリエーテルとのブロック共重合体を用いることが更に好ましい。親水性樹脂のブロックとポリオレフィン系樹脂のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合していることが好ましい。なお、本発明においては、発泡粒子の被覆層にイオン液体が配合されることから、被覆層に添加するポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体などの高分子型帯電防止剤には、Li+やNa+等の金属イオンが含まれていても、含まれていなくてもよい。また、高分子型帯電防止剤自体の表面抵抗率は、1×1012Ω未満であることが好ましく、1×1010Ω未満であることがより好ましく、1×10Ω未満であることがさらに好ましい。
本発明において使用される高分子型帯電防止剤の数平均分子量としては、2000以上が好ましく、より好ましくは2000〜100000、更に好ましくは5000〜60000、特に好ましくは8000〜40000である。尚、該高分子型帯電防止剤の数平均分子量の上限は概ね500000である。
上記の数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求められる。例えば、高分子型帯電防止剤がポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とするものの場合にはオルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定される値である。なお、上記溶媒の種類、カラム温度は、高分子型帯電防止剤の種類に応じて適宜変更する。
高分子型帯電防止剤の融点は、好ましくは70〜270℃、より好ましくは80〜230℃、さらに好ましくは80〜200℃、特に好ましくは90〜180℃であることが、帯電防止機能の発現性の観点から望ましい。また、被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の融点と高分子型帯電防止剤の融点との差、または被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂が融点を持たない場合には被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の軟化点と高分子型帯電防止剤の融点との差は、好ましくは150℃以内であり、特に好ましくは100℃以内であることが、混練時におけるポリオレフィン系樹脂への分散性や成形時の融着性の観点から望ましい。
高分子型帯電防止剤の融点は、JIS K7121(1987年)に記載の方法に準拠して測定することができる。即ちJIS K7121(1987年)における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合は、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。
上記高分子帯電防止剤はそれぞれ単独で使用することができるが、組み合わせて使用してもよい。尚、上記のような高分子型帯電防止剤は、例えば三井・デュポンポリケミカル株式会社製「SD100」、三洋化成工業株式会社製「ペレスタット300」、「ペレスタット230」、「ペレスタット3170」等の商品名で市販されているので容易に入手することができる。
(III)[イオン液体]
本発明においては前記被覆層(E)にイオン液体が配合されている。イオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、アニオンとカチオンとから構成される、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。イオン液体は、それ自体が導電性を有しイオン液体の組成の調整により親油性/親水性のコントロールが可能なものである。
該イオン液体のカチオン成分として第3級硫黄カチオン、第4級リンカチオン、第4級窒素カチオンなどが例示できる。これらの中でも、入手が容易で、構造が多様で、安全性が高く、安価な点から第4級窒素カチオンを含むものが特に好ましい。第4級窒素カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウム、ピラゾリウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルカノールアンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、カチオン成分として、アルカノールアンモニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、又はピペリジニウムカチオンを含有するイオン液体であることがより好ましい。
該イオン液体のアニオン成分としては、Cl-、Br-、I-、AlCl4 -、Al2Cl7 -、NO2 -、NO3 -、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、NbH6 -、TaF6-、WF7 -、CH3CO2 -、CF3F7CO2 -、CF3SO3 -
C4F9SO3 -、(CF3CO)(CF3SO2)N-、(FSO2)2N-、(FSO2)(CF3SO2)N-、(CF3SO2)2N-
(CF3SO2)(C2F5SO2)N-、(C2F5SO2)N-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(CN)2N-、(CN)3C-
(CN)4B-、CF3BF3 -、C2F5BF3 -、C3F7BF3 -、C4F9BF3 -、N(CN)2 -、およびR-PO4 -、R-PO3 -
R-SO3 -(Rは炭素数1以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカノール基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基である。)などが挙げられる。これらの中でも、被覆層中への含浸性に優れ、かつ高分子型帯電防止剤との相溶性に優れることから、フルオロアルキル構造を含むアニオンが好ましく、トリフルオロメチル(CF3)構造を含むアニオンがより好ましい。
上記のイオン液体としては、具体的には、下記のものを例示することができる。
例えば、カチオンがピリジニウムカチオン系で、アニオンが(CF3SO2)2N-である日本カーリット(株)製、グレード名「CIL−312」、カチオンがピリジニウムカチオン系で、アニオンがCF3SO3 -である日本カーリット(株)製、グレード名「CIL−313」;カチオンがアルキルアンモニウム系で、アニオンがCF3SO3 -である化研産業(株)製、グレード名「PR−IL−1」;カチオンがアルカノールアンモニウム系で、アニオンがアルキルベンゼンスルホナートである日本乳化剤(株)製、グレード名「JNA−10911」;カチオンがアルカノールアンモニウム系で、アニオンがグリコールエーテル硫酸エステルアニオンである日本乳化剤(株)製、グレード名「JNA−08803」、「JNA−08007」などが挙げられる。
本発明において、発泡粒子への上記イオン液体の配合量は、カチオンとアニオンの組合せ、カチオンの種類、アニオンの種類等、或いは所望の帯電防止性能により適宜選択されるが、通常、より効率よく高い帯電防止性能を発現させるためには、被覆層に配合された高分子型帯電防止100重量部に対して、5〜150重量部となるように配合することが好ましく、より好ましくは10〜100重量部である。
(IV)[多層樹脂粒子]
前記の芯層(R)と被覆層(R)とからなる多層樹脂粒子は、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に記載の共押出ダイを使用して製造することができる。
一般的には、芯層用押出機と被覆層用押出機の2台の押出機を共押出ダイに連結し、芯層用押出機で所要の樹脂成分と、必要に応じて添加剤とを溶融混練し、一方の被覆層用押出機で所要の樹脂成分と高分子型帯電防止剤と、必要に応じて添加剤とを溶融混練し、それぞれの溶融混練物を前記共押出ダイ内で合流して、柱状の非発泡状態の芯層(R)と、該芯層(R)の側表面を被覆する非発泡状態の被覆層(R)とからなる鞘芯型の多層構造を形成し、押出機先端に付設された口金の小孔から該多層構造体をストランド状に押出し、ペレタイザーで粒子の重量が所定の重量となるようにストランドを切断することにより多層樹脂粒子が得られる。以下、このような多層構造を「鞘芯」構造ということがある。
(V)[発泡剤]
本発明において発泡剤は特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水を、単独、又は2種以上を混合して用いることができる。これらの発泡剤の中でも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましく、より好ましくは二酸化炭素が用いられる。なお、本発明において、無機物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中に無機物理発泡剤が50モル%以上含まれることを意味し、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。有機物理発泡剤を使用する場合には、発泡性の観点から有機系物理発泡剤はノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが好ましい。
上記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の見かけ密度等に応じて適宜調整されるものであり一概に特定することはできないが、例えば、物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合、樹脂粒子100重量部当たり0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部が使用される。
(VI)[発泡粒子]
本発明の発泡粒子は、前記芯層(R)と被覆層(R)からなる多層樹脂粒子を、加圧可能な密閉容器(例えば、オートクレーブ)中の水性媒体(通常水)に分散させ、所要量の発泡剤を圧入して密閉容器内を加圧し、所要時間加温下に撹拌して発泡剤を多層樹脂粒子に含浸させた後、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を水性媒体と一緒に内容物を容器内圧力より低圧域(通常は大気中)に放出して発泡させることにより得られる。この放出時に容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。また、特に高発泡倍率の発泡粒子を得るには、上記の方法で得られた発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生工程を経て、加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの加圧気体により加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を容器内から取り出してスチームや熱風などの加熱媒体を用いて加熱することにより、高い発泡倍率の粒子を得ることが可能である(この工程を以下、二段発泡という。)。
多層樹脂粒子を水性媒体に分散させる際には、分散剤を水性媒体中に添加することが好ましい。分散剤として、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、などの水に難溶性の無機物質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子系保護コロイド剤が挙げられる。またドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤などを使用することができる。
得られた発泡粒子は、気泡構造を有する発泡状態の芯層(E)と、その表面に被覆層(E)が形成された多層構造を有する。該発泡粒子は、見かけ密度が10〜180kg/m、かつ平均気泡径が50〜900μmであることが好ましく、更に平均気泡径は100〜300μmであることが好ましい。
前記発泡粒子の見かけ密度は下記の方法により測定することができる。即ち水を入れたメスシリンダー内に重量W(g)の発泡粒子群を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V(L)を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除す(W/V)ことにより求められる値を[kg/m]に単位換算して求める。
本発明の発泡粒子の被覆層(E)は実質的に無発泡の樹脂層からなることが好ましい。ここで、実質的に無発泡とは、該被覆層(E)に全く気泡が存在しないもののみならず、極く微小な気泡が僅かに存在するものも包含する。さらに、発泡粒子の発泡時に発泡しなかったものだけではなく、一度発泡した後に気泡構造が維持できずに破泡するなどして前記状態となったものも包含する。
本発明の発泡粒子においては、前記被覆層(R)に高分子型帯電防止剤が配合された多層樹脂粒子を発泡させた発泡粒子であり、発泡時、型内成形時に被覆層が延伸され高分子型帯電防止剤が樹脂中に適度に配向して被覆層(E)中で高分子型帯電防止剤のネットワーク構造が形成されて高い帯電防止性能を示すものとなる。さらに、前記被覆層(E)を構成する樹脂に高分子型帯電防止剤が配合されると共にイオン液体が配合されることにより、高分子型帯電防止剤の配合量に見合う帯電防止性能を発現することができる。
発泡粒子の芯層(E)と被覆層(E)との重量比(重量%)は、99.5:0.5〜80:20であることが好ましく、より好ましくは98:2〜80:20であり、さらに好ましくは97:3〜90:10である。発泡粒子の芯層(E)と被覆層(E)との重量比が上記範囲内であると、帯電防止性に優れながら融着性に優れ、かつ発泡粒子を型内成形した成形体は発泡粒子同士の融着強度が特に強く機械的強度に優れた成形体が得られる。
本発明の発泡粒子は、DSC測定装置を使用して得られるDSC曲線において、芯層(E)を構成している結晶性ポリオレフィン系樹脂固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)の頂点よりも高温側に、1つ以上の吸熱曲線ピーク(高温ピーク)の頂点が存在することが好ましい。かかる発泡粒子は、独立気泡率が高く、加熱成形に好適である。
必要とされる高温ピーク熱量は、発泡粒子を構成する樹脂の種類により大きく異なり、また、芯層(E)と被覆層(E)との比率や添加剤の量の変更でも異なるので、一概には言えないが、50J/g以下が好ましい。
発泡粒子の高温ピーク熱量は、発泡粒子1〜3mgを、DSC測定装置によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温した時に得られる図1に示す第1回目のDSC曲線に認められる発泡粒子を構成する樹脂固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)aが現れる温度よりも高温側に現れる吸熱曲線ピーク(高温ピーク)bの熱量で、この高温ピークbの面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。尚、図1は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする場合の発泡粒子の一例である。
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(δ−β)と、線分(γ−δ)とによって囲まれる部分(図1において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
高温ピークbの熱量と固有ピークaの熱量の総和(発泡粒子全体の融解熱量)は、前記直線(α−β)とDSC曲線とで囲まれる部分の面積に相当する。
尚、この高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第1回目のDSC曲線を得た後、220℃から10℃/分で一旦40℃付近(40〜50℃)まで降温し、再び10℃/分で220℃まで昇温した時に得られる第2回のDSC曲線には認められず、図2に示されるような発泡粒子を構成する樹脂の固有ピークaのみが認められる。
第1回目のDSC曲線で吸熱ピークが3以上表れる場合、例えば、発泡粒子の基材樹脂が2以上のポリオレフィン系樹脂の混合物、具体例として、被覆層がポリエチレン系樹脂、芯層がポリプロピレン系樹脂の多層構造の樹脂粒子を発泡させた発泡粒子の場合が挙げられる。この場合も、第2回目のDSC曲線には高温ピークが認められない。このことを利用して第1回目のDSC曲線と第2回目のDSC曲線と見比べて高温ピークがどのピークか見分けることができる。
測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製DSCQ1000などを使用することができる。
(VII)[発泡成形体]
本発明の発泡粒子を使用した発泡成形体の製造方法はそれ自体公知の型内成形方法により製造することができる。
また、発泡粒子を型内成形する分割可能な一対の成形型を用い、大気圧下又は減圧下に発泡粒子を成形型キャビティー内に充填し、型閉めし成形型キャビティー体積を5〜70%減少するように圧縮し、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる減圧成形法による方法(例えば、特公昭46−38359号公報)。また、発泡粒子を加圧気体により、予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子の二次発泡性を高め、二次発泡性を維持しつつ大気圧下又は減圧下に発泡粒子を成形型キャビティー内に充填し型閉めし、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51−22951号公報)などにより成形することができる。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティー内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティー内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成型法(特公平4−46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下の一対の成形型のキャビティー内に充填した後、次いでスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成型法(特公平6−49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6−22919号公報)などによっても成形することができる。
本発明の発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体の発泡粒子融着率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。融着率が高い発泡成形体は機械的強度、特に曲げ強度に優れたものとなる。
なお、本発明において融着率とは、発泡成形体を破断した際の破断面発泡粒子の個数に基づく材料破壊率を意味し、融着していない部分は材料破壊せず、発泡粒子の界面で剥離する。
本発明の発泡成形体の見かけ密度は、10〜180kg/mであることが好ましい。見かけ密度が上記範囲内であると、軽量性と機械的物性とのバランスに優れた発泡成形体となる。上記見かけ密度は、発泡成形体の重量を発泡成形体の体積により除し、さらに[kg/m]に単位換算することにより求める。発泡成形体の体積は、その外形寸法から、又は水没法により求めることができる。
本発明の型内成形方法により得られる発泡成形体は、優れた帯電防止性能を示す。発泡成形体の表面抵抗率は1×1010Ω未満であることが好ましい。
発泡成形体の表面抵抗率は、JIS C2170(2004年)に基づき測定される値である。測定装置は三菱化学社製「ハイレスタMCP−HT450」などを用いることができる。
実施例
実施例、比較例で使用したポリオレフィン系樹脂の種類、その物性を表1に、高分子型帯電防止剤の種類、その物性を表2に、またイオン液体の種類を表3に、またその他の添加剤(イオン液体以外の帯電防止助剤)の種類を表4に、それぞれ示した。
Figure 2015101591
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実施例1、2では、多層樹脂粒子を調製する際に、イオン液体を高分子型帯電防止剤と共に、被覆層用押出機に供給してポリオレフィン系樹脂と混練することにより、高分子型帯電防止剤とイオン液体とを被覆層(R)に配合した多層樹脂粒子を発泡させることにより、被覆層に高分子型帯電防止剤とイオン液体とを含有する発泡粒子を得た。
実施例3〜9では、高分子型帯電防止剤を被覆層(R)に配合した多層樹脂粒子を発泡する工程において、水性媒体中に添加されたイオン液体を多層樹脂粒子に含浸させ、該多層樹脂粒子を発泡させることにより、被覆層に高分子型帯電防止剤とイオン液体とを含有する発泡粒子を得た。
[帯電防止剤マスターバッチの調製]
表5の配合量となるように、ポリオレフィン系樹脂と、高分子型帯電防止剤と、イオン液体又はその他の帯電防止助剤とを内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して帯電防止剤マスターバッチ(MB1〜MB4)を得た。
Figure 2015101591
[多層樹脂粒子の製造]
内径65mmの芯層用押出機および内径30mmの被覆層用押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイを付設した押出機を用い、ポリオレフィン系樹脂、高分子型帯電防止剤、イオン液体、その他の添加剤(帯電防止助剤)を表6、7に示した種類、配合となるように、内径30mmの被覆層用押出機と内径65mmの芯層用押出機にそれぞれ供給した。設定温度200〜220℃に加熱し、溶融、混練した後、多層ストランド形成用ダイから押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで2mg、L/D=2.4になるように切断して多層樹脂粒子を得た。
なお、芯層には気泡調整剤としてホウ酸亜鉛の含有量が1000重量ppmとなるように添加した。
また、被覆層形成用樹脂組成物として、実施例1にはMB1を、実施例2にはMB2を、比較例2にはMB3を、比較例3にはMB4を、それぞれ用いた。実施例3〜9、比較例1においては、被覆層形成用のポリプロピレン系樹脂及び高分子型帯電防止剤をドライブレンドして被覆層用押出機に供給した。
[発泡粒子の製造]
実施例1、2、比較例1〜3においては、多層樹脂粒子1kgを、5Lのオートクレーブ(密閉容器)中の3Lの分散媒体の水中に投入し、分散媒体中に、分散剤としてカオリン3g、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04g、および硫酸アルミニウム0.1gをそれぞれ添加し、オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、表6、7に示した容器内圧力となるように圧入し、攪拌下に発泡温度まで昇温して、その温度で15分間保持して高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気中に放出して発泡粒子を得た。
実施例3〜9においては、多層樹脂粒子を分散させた水性媒体中に、さらに、表6、7に示す量のイオン液体をそれぞれ添加した後、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を、表6、7に示した容器内圧力となるように圧入し、攪拌下に発泡温度まで昇温して、その温度で15分間保持して高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気中に放出して多層樹脂粒子を発泡させた以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を得た。発泡粒子の見かけ密度、高温ピーク熱量は表6、7にそれぞれ記載した。
[発泡成形体の製造]
前記に得られた発泡粒子を、縦250mm×横200mm×厚さ50mmの平板成形型のキャビティー内に充填し、スチーム加熱による型内成形を行って板状発泡成形体を得た。加熱方法は両方の金型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱を行なった後、本加熱圧力(成形圧)よりも0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力よりも0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行なった後、表6、7に記載の成形スチーム圧力(成形圧)で加熱成形した。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧が0.04MPa(G)になるまで冷却した後、型を開放して成形体を取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生して発泡成形体を得た。得られた成形体の物性を表6、7に示した。なお、成形圧は、成形体の融着率が下記基準で「○」を示す成形圧力範囲の中で最も低い圧力とした。
発泡粒子および発泡成形体の物性の評価は下記により行なった。
[成形体の表面抵抗率]
発泡成形体を23℃、相対湿度12%の条件下で1日間養生して状態調節を行なった後に、発泡成形体の中央部付近から縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚みのままの直方体状に切り出して測定試験片を作製し、JIS C2170(2004年)に準拠して、23℃、12%RHの条件下で試験片の成形スキン面の表面抵抗率を測定した。測定装置として三菱化学社製「ハイレスタMCP−HT450」を使用した。
[帯電圧減衰の測定]
成形体の耐電圧減衰性能測定は、アクリル製グローボックス内で行い、測定方法はRCJS−5−1:2010の付属書JBに記載の方法で実施した。
発泡成形体を23℃、相対湿度12%の条件下で1日間養生して状態調節を行なった後に、発泡成形体を縦90mm×横140mm×厚み10mmの直方体に切り出したものを測定用の試料として使用した。尚、縦90mm×横140mmの面の内、一方は発泡成形体表面(成形スキン面)を残して切り出した。
測定装置として、米国Electro−Tech Systems,Inc.製のSTATIC DECAY METER 406Dを使用し、試料の中心部(90mm×140mm面の対角線の交点)が測定プロープの位置と重なるように取り付けた。尚、発泡成形体の表面側が測定プロープの方向を向くように設置した。
測定は予め校正用サンプルにより測定器の性能を校正したのちに実施し、測定モードはAUTOで1種類のサンプルにつき5回行なった。測定は印加後、+5000Vから+50Vまでの減衰時間と−5000Vから−50Vの減衰時間を測定し、5回測定の内、5回全ての測定において減衰時間が2秒以下であれば合格(○)、一回でも減衰時間が2秒よりも大きかったものは不合格(×)と評価した。
[発泡粒子の見かけ密度]
23℃、相対湿度50%の条件下に2日放置した約500cmの発泡粒子群の重量(g)を測定し、23℃の水を300cc入れた1Lのメスシリンダー内に該発泡粒子群を金網等により水没し、水位の上昇分の目盛りから発泡粒子群の体積V[cm]を求め、発泡粒子群の重量(W)を体積Vで除した値(W/V)を[kg/m]に単位換算した。
[発泡成形体の見かけ密度]
23℃、相対湿度50%の条件下に2日放置した発泡成形体の重量(W)を発泡成形体の外寸法から求めた体積(V)により除した値(W/V)を[kg/m]に単位換算した。
[融着性]
発泡粒子融着性は下記により測定し評価した。
発泡成形体を折り曲げて破断面に存在する破壊しない発泡粒子の数(C1)と、破壊した粒子の数(C2)とを求め、破断面に存在する破壊しない粒子数に対する破壊した粒子数の比率(C2/C1)を材料破壊率(%)として算出した。
異なる試験片を用いて前記測定を5回行いそれぞれの材料破壊率を求め、それらの算術平均値を融着率とした。なお、破壊率80%以上を合格とし「○」と表記し、それ以下を不合格とし「×」で表記した。
Figure 2015101591
Figure 2015101591
a 固有ピーク
b 高温ピーク
α DSC曲線上の80℃に相当する点
β 融解終了温度に相当する点
γ aとbとの谷部に相当する点
δ 線分(α−β)と交わる点
T 融解終了温度

Claims (7)

  1. 密閉容器内の水性分散媒体中に分散させた、発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域へ放出して発泡させた発泡粒子であって、該発泡粒子がポリオレフィン系樹脂発泡層と該発泡層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる多層発泡粒子であり、該被覆層が高分子型帯電防止剤およびイオン液体を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
  2. 前記高分子型帯電防止剤が、ポリオレフィンとポリエーテルとのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
  3. 前記イオン液体が、第4級窒素カチオンと、フルオロアルキル基を含むアニオンとからなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
  4. 前記被覆層中のポリオレフィン系樹脂と高分子系型帯電防止剤の重量比が95:5〜50:50であり、前記イオン液体の配合量が高分子型帯電防止剤100重量部に対して5〜150重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる、表面抵抗率1×1010Ω未満の発泡粒子成形体。
  6. 密閉容器内において、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤およびイオン液体を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体中に分散させる工程、水性分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域へ放出して発泡粒子とする工程を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  7. 密閉容器内において、ポリオレフィン系樹脂芯層と該芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記被覆層に高分子型帯電防止剤を含む多層ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体中に分散させる工程、水性分散媒体中にイオン液体を添加する工程、ポリオレフィン系樹脂粒子にイオン液体を含浸させる工程、水性分散媒体中の該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程、発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性分散媒体と共に密閉容器から該容器内の圧力よりも低圧域へ放出して発泡粒子とする工程を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
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