前記発泡粒子は、前記特定のポリエチレン系樹脂(A)を含む発泡体からなる芯層と、前記特定のポリエチレン系樹脂(B)と前記特定の高分子型帯電防止剤(C)とを含み、前記芯層を覆う被覆層と、を有する。以下、前記発泡粒子のような芯層が被覆層によって覆われた発泡粒子の構造を鞘芯構造ということがある。
前記発泡粒子の芯層は、ポリエチレン系樹脂(A)を含む発泡体から構成されている。ポリエチレン系樹脂(A)は、少なくとも、直鎖状低密度ポリエチレンを含む。ポリエチレン系樹脂(A)は、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂(A)中の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレンとは、直鎖状を呈する、エチレンとα−オレフィンとの共重合体をいう。具体的には、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等が好ましく例示される。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、910〜950kg/m3であることが好ましく、915〜940kg/m3であることがより好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレンの密度はJIS K7112:1999に記載のピクノメーター法により測定することができる。
ポリエチレン系樹脂(A)には、直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレン単独重合体及びエチレンを含む共重合体から選択される1種または2種以上の重合体が含まれていてもよい。ポリエチレン系樹脂(A)中の上記直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレンの単独重合体及びエチレンを含む共重合体の含有量は、5〜30質量%が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレン単独重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン等が例示される。エチレンを含む共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等が例示される。
ポリエチレン系樹脂(A)には、直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレン単独重合体として、高密度ポリエチレンが含まれていることが好ましい。この場合には、発泡粒子の気泡膜硬度を高めることができ、発泡直後の発泡粒子や成形直後の発泡粒子成形体の収縮をより抑制することができる。また、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度や曲げ強度等の機械的強度をより高くすることができる。これらの作用効果を十分に得る観点から、ポリエチレン系樹脂(A)中の高密度ポリエチレンの含有量は5〜30質量%であることが好ましく、6〜20質量%であることがより好ましく、7〜15質量%であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)に、直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレン単独重合体として高密度ポリエチレンが含まれている場合、高密度ポリエチレンの密度は935〜965kg/m3であることが好ましく、940〜960kg/m3であることがより好ましい。この場合には、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度や曲げ強度等の機械的強度をより高くすることができる。なお、高密度ポリエチレンの密度は、前述した直鎖状低密度ポリエチレンの密度と同様の方法により測定される。
ポリエチレン系樹脂(A)の密度は、910〜950kg/m3であることが好ましく、915〜940kg/m3であることがより好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)は、90〜140℃であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)を上記範囲内とすることにより、発泡工程において、ブロッキングと呼ばれる樹脂粒子同士が相互に融着する現象をより効果的に抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)を上記範囲内とすることにより、融着性、回復性等の発泡粒子の成形性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)は100〜135℃であることがより好ましく、110〜130℃であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)は、JIS K7121:2012に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により測定することができる。まず、「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、加熱温度及び冷却温度を10℃/分として試験片の状態調節を行う。その後、加熱温度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。得られたDSC曲線に基づき、融点Tm(A)の値を決定することができる。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークが現れている場合には、高温側のベースラインを基準として、頂点の高さが最も高い吸熱ピークの頂点を融点とする。
ポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量は、80〜140J/gであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量を上記範囲内とすることにより、発泡粒子の独立気泡率の低下をより抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量を上記範囲内とすることにより、発泡直後の発泡粒子や成形直後の発泡粒子成形体の収縮をより抑制することができる。これらの作用効果をより高める観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量は、90〜130J/gであることがより好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量は、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。まず、「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」に従い、加熱温度及び冷却温度を10℃/分として試験片の状態調節を行う。その後、加熱温度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。得られたDSC曲線に基づき、融解熱量の値を決定することができる。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とする。
ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(MFR(A))は、0.5〜5.0g/10minであることが好ましい。MFR(A)の値を上記範囲内とすることにより、高い独立気泡率を維持しつつ、発泡粒子の見掛け密度をより低くすることができる。かかる作用効果をより高める観点から、MFR(A)の値は0.5〜4.0g/10minであることがより好ましく、1.0〜3.0g/10minであることが更に好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイトは、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
芯層には、ポリエチレン系樹脂(A)の他に、気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤等の添加剤が含まれていてもよい。芯層中の添加剤の含有量は、例えば、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
また、芯層には、ポリエチレン系樹脂(A)の他に、本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲で他の樹脂やエラストマー等のポリエチレン系樹脂(A)以外の材料が含まれていてもよい。ポリエチレン系樹脂(A)以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。また、ポリエチレン系樹脂(A)以外のエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が例示される。芯層中に含まれるポリエチレン系樹脂(A)以外の樹脂やエラストマー等の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%、つまり、ポリエチレン系樹脂(A)以外の樹脂やエラストマー等を含有しないことがさらに好ましい。
発泡粒子成形体の機械的強度の観点から、芯層は帯電防止剤を実質的に含有しないことが好ましく、帯電防止剤を含有しないことがより好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、芯層中の帯電防止剤の含有量が、3質量%以下(0質量%を含む)であり、好ましくは1質量%以下(0質量%を含む)を意味する。
芯層のメルトフローレイト(I)は、0.5〜5.0g/10minであることが好ましく、0.7〜4.5g/10minであることがより好ましく、1.0〜4.0g/10minであることがさらに好ましい。メルトフローレイト(I)の値を上記範囲内とすることにより、高い独立気泡率を維持しつつ、発泡粒子の見掛け密度をより低くすることができる。芯層のメルトフローレイト(I)は、前述したポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイトと同様の方法により測定される。なお、前記芯層のメルトフローレイト(I)は、芯層を構成する材料、つまり、ポリエチレン系樹脂(A)及び上記添加剤等を含む混合物のメルトフローレイトを意味する。
芯層の表面は、ポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)を含む被覆層によって覆われている。ポリエチレン系樹脂(B)は、少なくとも、直鎖状低密度ポリエチレンを含む。ポリエチレン系樹脂(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を主成分とすることが好ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂(B)中の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンのみからなることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂(B)には、直鎖状低密度ポリエチレン以外のエチレンの単独重合体及びエチレンを含む共重合体から選択される1種または2種以上の重合体が含まれていてもよい。ポリエチレン系樹脂(B)に含むことができる単独重合体及びエチレンを含む共重合体としては、ポリエチレン系樹脂(A)と同様のものが例示される。また、その含有量は、概ね20質量%以下が好ましい。
ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)は、80〜130℃であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)を上記範囲内とすることにより、発泡工程において、ブロッキングをより効果的に抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)を上記範囲内とすることにより、融着性、回復性等の発泡粒子の成形性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点から、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)は100〜128℃であることがより好ましく、105〜125℃であることがさらに好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)は前述したポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)と同様の方法により測定される。
ポリエチレン系樹脂(B)の融解熱量は、50〜150J/gであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(B)の融解熱量が上記範囲内である発泡粒子は、成形圧が低い条件であっても良好な発泡粒子成形体を形成することができる。また、ポリエチレン系樹脂(B)の融解熱量を上記範囲内とすることにより、成型後における発泡粒子成形体の収縮をより抑制することができる。これらの作用効果をより高める観点から、ポリエチレン系樹脂(B)の融解熱量は、70〜130J/gであることがより好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂(B)の融解熱量は、前述したポリエチレン系樹脂(A)の融解熱量と同様の方法により測定される。
ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイト(MFR(B))は、鞘芯構造の発泡粒子の製造安定性の観点から、0.5〜5.0g/10minであることが好ましく、0.7〜4.5g/10minであることがより好ましく、1.0〜4.0g/10minであることがさらに好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイトは、前記ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイトと同様の方法により測定される。
前記発泡粒子における被覆層は、高分子型帯電防止剤(C)を含む。前記被覆層中の高分子型帯電防止剤(C)の含有量は20〜50質量%である。高分子型帯電防止剤(C)の含有量が20質量%未満の場合には、所望の帯電防止性能を得ることができないおそれがある。高分子型帯電防止剤(C)の含有量が50質量%を超える場合には、それ以上高分子型帯電防止剤(C)の含有量を増やしても帯電防止性能の向上効果が不十分となり、配合量に見合う帯電防止性能を得ることが難しくなるおそれがある。また、この場合には、発泡粒子の融着性の悪化や発泡粒子成形体のひけの発生、発泡粒子成形体の表面性状の悪化等の、成形性の悪化を招くおそれがある。これらの問題をより確実に回避しつつ帯電防止性能を高める観点から、被覆層中の高分子型帯電防止剤(C)の含有量は23〜40質量%であることがより好ましく、25〜35質量%であることがさらに好ましい。
前記高分子型帯電防止剤(C)には、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が含まれている。高分子型帯電防止剤(C)は、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体からなることが好ましい。高分子型帯電防止剤(C)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を用いることにより、発泡粒子の帯電防止性能を高めるとともに、発泡粒子成形体から被包装物への帯電防止剤に由来する成分の移行を抑制することができる。また、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、これ以外の高分子型帯電防止剤とは異なり、発泡粒子の性能を損なうことなく被覆層中に添加することができる。この理由は、明らかではないが、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、被覆層に含まれるポリエチレン系樹脂(B)との相溶性に優れるためであると考えられる。
ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体としては、例えば、ポリエチレンオキサイドブロックとポリオレフィンブロックとが交互に結合してなる共重合体が例示される。高分子型帯電防止剤(C)としては、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体から選択される1種の共重合体を単独で使用してもよいし、2種以上の共重合体を併用してもよい。なお、市販されているポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体としては、例えば、三洋化成工業株式会社製の商品名「ペレスタット(登録商標)230」、「ペレクトロン(登録商標)UC」等が挙げられる。
高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)は、90〜180℃であることが好ましい。高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)を上記範囲内とすることにより、発泡粒子の帯電防止性能をより高めるとともに、発泡粒子成形体から被包装物への帯電防止剤に由来する成分の移行をより抑制することができる。また、高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)を上記範囲内とすることにより、発泡粒子の融着性をより高めることができる。これらの作用効果をより高める観点から、高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)は、115〜178℃であることがより好ましく、130〜175℃であることがさらに好ましく、140〜170℃であることが特に好ましい。
高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)は、JIS K7121:2012に記載の方法に準拠して測定することができる。具体的には、「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、加熱温度及び冷却温度を10℃/分として試験片の状態調節を行う。その後、加熱温度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。そして、DSC曲線に現れる融解ピークの頂点の温度を融点Tm(C)とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側に位置する融解ピークの頂点の温度を融点Tm(C)とする。
高分子型帯電防止剤(C)のメルトフローレイト(MFR(C))は8〜20g/10minであることが好ましい。MFR(C)が上記範囲内であることにより、発泡粒子の帯電防止性能をより高めることができると共に、発泡粒子成形体から被包装物への低分子量成分の移行をより抑制することができる。また、MFR(C)が上記範囲内であることにより、発泡粒子の融着性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点から、MFR(C)は10〜15g/10minであることがより好ましく、11〜14g/10minであることがさらに好ましい。
また、高分子型帯電防止剤(C)のメルトフローレイトは、ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイトよりも高いことが好ましい。この場合、ポリエチレン系樹脂(B)中により均一に帯電防止剤を分散させることができるため、帯電防止性能をより向上させることができると共に、帯電防止性能のバラつきをより抑制することができる。これらの作用効果をより高める観点から、高分子型帯電防止剤(C)のメルトフローレイトは、ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイトよりも3g/10min以上高いことが好ましく、5g/10min以上高いことがより好ましく、8g/10min以上高いことがさらに好ましい。高分子型帯電防止剤(C)のメルトフローレイトとポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイトとの差の上限は概ね20g/10min程度である。
高分子型帯電防止剤(C)のメルトフローレイトは、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
被覆層には、ポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)の他に、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤等の添加剤が含まれていてもよい。被覆層中の添加剤の含有量は、例えば、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
また、被覆層には、ポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)の他に、本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲でポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)以外の樹脂やエラストマー等が含まれていてもよい。これらの樹脂やエラストマー等としては、前述した芯層と同様のものが例示される。被覆層中のポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)以外の樹脂やエラストマー等の含有量は、10質量%未満であることが好ましく、0質量%、つまり、ポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤(C)以外の樹脂やエラストマー等を含有しないことがより好ましい。
被覆層のメルトフローレイト(II)は、0.5〜20g/10minであることが好ましく、0.7〜15g/10minであることがより好ましく、1.0〜10g/10minであることがさらに好ましい。MFR(II)の値を上記範囲内とすることにより、芯層を被覆層でより均一に被覆することができる。これにより、発泡粒子の帯電防止性能をより向上させることができる。被覆層のメルトフローレイト(II)は、前述したポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイトと同様の方法により測定される。なお、前記被覆層のメルトフローレイト(II)は、被覆層を構成する材料、つまり、ポリエチレン系樹脂(B)、高分子型帯電防止剤(C)及び前記添加剤等を含む混合物のメルトフローレイトを意味する。
前記発泡粒子において、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]とは、
0≦Tm(A)−Tm(B)≦30 ・・・(1)
の関係を満足している。
Tm(A)−Tm(B)の値が0未満の場合、発泡粒子の融着性が低くなり、発泡粒子成形体の引張強度の低下や曲げ強度の低下等の機械的強度の低下を招くおそれがある。Tm(A)−Tm(B)の値が30よりも大きい場合、発泡時にブロッキング、つまり、樹脂粒子同士の互着が発生しやすくなるおそれがある。
機械的強度の悪化及びブロッキングをより確実に回避する観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]とは、
0.5≦Tm(A)−Tm(B)≦25 ・・・(1−2)
の関係を満足していることが好ましく、
1≦Tm(A)−Tm(B)≦20 ・・・(1−3)
の関係を満足していることがより好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]及びポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]はいずれも100℃よりも高いことが好ましい。この場合には、発泡工程においてブロッキングをより効果的に抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]及びポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]がいずれも100℃よりも高い場合には、発泡粒子の融着性をより高めることができる。更に、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]及びポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]がいずれも100℃よりも高い場合には、発泡粒子成形体の機械的強度をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点から、Tm(A)[℃]及びTm(B)は共に105℃よりも高いことがより好ましい。
さらに、前記発泡粒子におけるポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、高分子型帯電防止剤(C)の融点の融点Tm(C)[℃]とは、
25≦Tm(C)−Tm(A)≦75 ・・・(2)
の関係を満足している。
Tm(C)−Tm(A)の値が25未満の場合、発泡粒子同士の融着性が低下するおそれがある。特に、被覆層に含まれる高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)が比較的低く、芯層に含まれるポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)との差が小さすぎる場合には、発泡粒子同士の融着性が低下しやすい。Tm(C)−Tm(A)の値が75よりも大きい場合、発泡粒子成形体の帯電防止性能の低下や、発泡粒子の発泡性の低下を招くおそれがある。
これらの問題をより確実に回避する観点からは、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)[℃]とは、
30≦Tm(C)−Tm(A)≦70 ・・・(2−1)
の関係を満足していることが好ましく、
32≦Tm(C)−Tm(A)≦60 ・・・(2−2)
の関係を満足していることがより好ましく、
35≦Tm(C)−Tm(A)≦50 ・・・(2−3)
の関係を満足していることがさらに好ましい。
前述したように、従来のポリエチレン系樹脂発泡粒子は、所望の帯電防止性能を発現させるために必要な量の高分子型帯電防止剤を配合した場合には、発泡粒子の融着性が低下し、良好な発泡粒子成形体を得ることが難しいという問題があった。また、ポリエチレン系樹脂発泡粒子において、芯層が被覆層によって覆われた鞘芯構造とし、被覆層に高分子型帯電防止剤を配合した場合であっても、発泡粒子同士の融着性と、帯電防止性能とを両立させることは難しかった。
本発明の発泡粒子は、芯層を構成するポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、高分子型帯電防止剤(C)の融点の融点Tm(C)[℃]とが、上記特定の関係を満足することにより、低湿度の環境下にあっても帯電防止性能に優れ、被包装物に対する帯電防止剤に由来する成分の移行を抑制できると共に、良好な成形性を有している。
前記発泡粒子の芯層は、熱流束DSCにより得られるDSC曲線において、芯層に含まれるポリエチレン系樹脂(A)固有の吸熱ピーク(以下、「固有ピーク」という。)の頂点よりも高温側に、1つ以上の吸熱ピーク(以下、「高温ピーク」という。)が現れる結晶構造を有することが好ましい。この場合には、発泡粒子の独立気泡率をより高めることができるとともに、発泡粒子成形体を成形する際の成形条件を広い範囲から選択することができる。かかる観点からは、高温ピークにおける吸熱量(以下、「高温ピーク熱量」という。)は、5〜50J/gであることが好ましく、10〜45J/gであることがより好ましい。
発泡粒子の高温ピーク熱量は、例えば以下の方法により算出することができる。まず、被覆層を除いた1〜3mgの発泡粒子を用いて熱流束DSCを行い、DSC曲線を取得する。このときの測定開始温度は10〜40℃、測定終了温度は220℃、昇温速度は10℃/分とする。発泡粒子が高温ピークを有する場合、DSC曲線には、図1に示すように、固有ピークΔH1と、固有ピークΔH1の頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔH2とが現れる。
次に、DSC曲線上における80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当する点βとを結ぶ直線L1を引く。なお、融解終了温度Tは、高温ピークΔH2における高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークΔH2と、高温ピークΔH2よりも高温側のベースラインとの交点である。
直線L1を引いた後、固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸に平行な直線L2を引く。この直線L2により固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とが分割される。高温ピークΔH2の吸熱量は、DSC曲線における高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれた部分の面積に基づいて算出することができる。
なお、前述の方法によってDSC曲線を取得した後、発泡粒子を一旦冷却し、再度DSC曲線を取得した場合、DSC曲線には固有ピークΔH1のみが現れ、高温ピークΔH2はDSC曲線から消失する。
前記発泡粒子において、前述した芯層のメルトフローレイトの値(I)は0.5〜5g/10minであり、かつ、被覆層のメルトフローレイトの値(II)との比(II)/(I)の値は1〜5であることが好ましい。この場合には、被覆層によって芯層をより均一に被覆することができる。その結果、前記発泡粒子の帯電防止性能をより高めることができる。発泡粒子の帯電防止性能をより高める観点から、上記メルトフローレイトの比(II)/(I)の値は1.5〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。
前記発泡粒子における芯層と被覆層との質量比(質量%)は、芯層:被覆層=99.5:0.5〜80:20であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の融着性をより高めると共に、発泡粒子成形体の帯電防止性能をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点から、芯層と被覆層との質量比(質量%)は、芯層:被覆層=98:2〜80:20であることがより好ましく、96:4〜90:10であることがさらに好ましい。
次に、前記発泡粒子の製造方法について説明する。
前記ポリエチレン系樹脂発泡粒子は、例えば、
ポリエチレン系樹脂(A)を含む芯層と、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤(C)とを含み前記芯層を覆う被覆層と、を有し、前記ポリエチレン系樹脂(A)には直鎖状低密度ポリエチレンが含まれており、前記ポリエチレン系樹脂(B)には直鎖状低密度ポリエチレンが含まれており、前記高分子型帯電防止剤(C)にはポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が含まれており、前記被覆層中の前記高分子型帯電防止剤(C)の含有量は20〜50質量%であり、前記ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]と、前記ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)[℃]と、前記高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)[℃]とが、下記式(1)〜(2)の関係を満足するポリエチレン系樹脂粒子を作製し、
密閉容器内で水性媒体に分散させた前記ポリエチレン系樹脂粒子に加熱下で発泡剤を含浸させ、
前記発泡剤を含む前記ポリエチレン系樹脂粒子を水性媒体と共に密閉容器から放出して発泡させる方法により製造される。
0≦Tm(A)−Tm(B)≦30 ・・・(1)
25≦Tm(C)−Tm(A)≦75 ・・・(2)
前記ポリエチレン系樹脂粒子は、例えば、以下のような押出・切断工程により作製される。まず、押出成形によって芯層の周囲が被覆層によって覆われたストランドを作製する。その後、ペレタイザー等によりストランドを所望の寸法に切断することにより、未発泡状態の芯層と被覆層とを備えた樹脂粒子を得ることができる。
発泡工程においては、樹脂粒子を密閉容器内に入れ、水などの水性の分散媒中に分散させる。この際、必要に応じて、密閉容器内の分散媒に樹脂粒子を分散させるための分散剤が添加される。
分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子や、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を使用することができる。分散剤としては、これらの無機微粒子及び界面活性剤から選択された1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
密閉容器を密封した後、容器内に発泡剤を加え、攪拌しながら加圧と加温とを行うことにより、発泡剤を樹脂粒子の芯層に含浸させる。発泡剤が十分に樹脂粒子に含浸した後に発泡温度にて密閉容器の内容物を大気圧下に放出することにより、発泡状態の芯層と、芯層を覆う被覆層とを備えた鞘芯構造の発泡粒子を得ることができる。
本発明においては、発泡温度Tex[℃]と、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]とが、
−5≦Tm(A)−Tex≦10 ・・・(3)
の関係を満足することが好ましい。この場合には、発泡工程において、ブロッキングをより効果的に抑制することができる。ブロッキングの抑制効果を更に高める観点からは、発泡工程における発泡温度Tex[℃]と、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)[℃]とが、
−3≦Tm(A)−Tex≦8 ・・・(3−1)
の関係を満足していることがより好ましく、
0≦Tm(A)−Tex≦5 ・・・(3−2)
の関係を満足していることがさらに好ましい。
発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水などを使用することができる。発泡剤としては、これらの物質を単独で使用してもよいし、2種以上の物質を併用してもよい。
発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガスを含む無機物理発泡剤を使用することが好ましく、二酸化炭素を含む無機物理発泡剤を使用することがより好ましい。無機物理発泡剤中の無機ガスの含有量は、モル比において、50mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることがさらに好ましい。
発泡剤として炭化水素やハロゲン化炭化水素などの有機物理発泡剤を使用する場合、オレフィン系樹脂との相溶性及び発泡性に優れているn−ブタン、2−メチルプロパン、n−ペンタン、2−メチルブタンを発泡剤として使用することが好ましい。
前記製造方法においては、発泡工程が完了した後の発泡粒子に必要に応じて二段発泡工程を行うことにより、発泡粒子の見掛け密度を更に低下させることができる。
二段発泡工程としては、例えば以下の方法を採用することができるが、この方法以外にも公知の方法を採用することができる。まず、発泡粒子を大気圧下において養生する。次に、発泡粒子を密閉容器に移し、密閉容器内を圧縮空気等で加圧することにより発泡粒子の内圧を高める。その後、発泡粒子を密閉容器から取り出し、水蒸気や熱風により加熱して再度発泡させることにより発泡粒子の密度を低くすることができる。
前記発泡粒子の見掛け密度は、15〜300kg/m3であることが好ましく、25〜250kg/m3であることがより好ましく、30〜220kg/m3であることがさらに好ましい。発泡粒子の見掛け密度を上記範囲内とすることにより、より軽量であり、機械的強度等により優れる発泡粒子成形体を成形することができる。
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求められる。まず、多数の発泡粒子からなる発泡粒子群を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、予め秤量した発泡粒子群を金網等の道具を使用して上記メスシリンダー内に沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量(kg)を容積(m3)で除することにより、発泡粒子の見掛け密度(kg/m3)が求められる。
本発明の発泡粒子の独立気泡率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。発泡粒子の独立気泡率が上記範囲内であると、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度や曲げ強度等の機械的強度をより高くすることができる。なお、独立気泡率は、発泡粒子中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM−D2856−70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
前記発泡粒子成形体は、前記発泡粒子を型内成形してなる。型内成形方法としては、例えば以下の方法を採用することができるが、これ以外にも公知の型内成形方法を採用することができる。まず、得ようとするポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体に応じた形状に設計された金型を準備する。この金型内に上記発泡粒子を充填した後、金型内にスチーム(水蒸気)を供給して発泡粒子を加熱する。このとき、隣り合う発泡粒子の被覆層同士が相互に融着するとともに、発泡粒子が二次発泡して発泡粒子間の間隙を埋めることにより、金型内に充填された多数の発泡粒子が一体化する。その後、金型を冷却して、金型内から内容物を取り出すことにより、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体が得られる。
型内成形を行った直後の発泡粒子成形体の内部には、成形時に金型内に導入された水蒸気由来の水が含まれている。この水を発泡粒子成形体から除去するために、必要に応じて、オーブン等を用いて発泡粒子成形体を加熱する養生工程を行ってもよい。
前記発泡粒子成形体の相対湿度50%および12%における表面抵抗率の値はいずれも1×1013Ω未満であることが好ましい。表面抵抗率が1×1013Ω未満であると、発泡粒子成形体は、帯電防止性能に優れ、埃や塵の付着の少ないものとなる。さらに、前記発泡粒子成形体は、相対湿度12%という低湿度の環境下であっても表面抵抗率の値が上記範囲内となり、帯電防止性能に優れるものとなる。上記観点から、相対湿度50%および12%における表面抵抗率の値はいずれも1×1012Ω未満であることがより好ましい。
発泡粒子成形体の表面抵抗率は、JIS K6271:2001年に準拠して測定される値である。具体的には、まず、発泡粒子成形体の中央部から3個の試験片を切り出す。試験片の寸法は、縦100mm×横100mm×厚み10mmとする。これらの試験片を23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置した後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、各試験片に印加電圧500Vで印加してから30秒後の電流値を測定する。この電流値に基づいて各試験片の表面抵抗率を算出する。そして、それぞれの試験片に対して得られた表面抵抗率の算術平均値を発泡粒子成形体の表面抵抗率とする。表面抵抗率の測定装置としては、例えば、(株)三菱ケミカルアナリテック製「ハイレスタMCP−HT450」などを用いることができる。
発泡粒子成形体の見掛け密度は、10〜185kg/m3であることが好ましく、15〜155kg/m3であることがより好ましく、20〜135kg/m3であることが更に好ましい。この場合には、発泡粒子成形体を容易に軽量化しつつ、機械的強度等の特性をより向上させることができる。なお、発泡粒子成形体の見掛け密度は、以下のように求められる。まず、発泡粒子成形体を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入った目盛り付きの容器を用意し、予め秤量した発泡粒子成形体を金網等の道具を使用して上記容器内に沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子成形体の体積を測定する。容器に入れた発泡粒子成形体の質量(kg)を体積(m3)で除することにより、発泡粒子成形体の見掛け密度(kg/m3)が求められる。
これまで説明したように、前記の態様の発泡粒子は優れた成形性を有している。また、前記の態様の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、低湿度の環境下にあっても、帯電防止性能に優れ、発泡粒子成形体から被包装物への帯電防止剤に由来する成分の移行を抑制することができる。
さらに、本発明者らは、鋭意検討の結果、前記の態様の発泡粒子は、発泡粒子の製造工程において、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加しない場合であっても、ブロッキング等を抑制することができ、成形性が良好な発泡粒子となるという効果を奏することを見出した。
上述の通り、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造工程は、以下の発泡工程を有する。すなわち、オートクレーブ等の密閉容器内に樹脂粒子を分散剤と共に水性媒体中に分散させ、次いで分散させた樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。その後、密封容器を開放し、樹脂粒子を大気圧下に放出することにより、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子が製造される。
従来のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を作製するに当たっては、発泡工程において、密封容器内でのブロッキングを抑制し、樹脂粒子の分散性を向上させるために、密封容器内の分散液には分散剤が添加されている。また、上記分散剤としては、カオリン等の無機微粒子が使用されることが多い。発泡工程において、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加せずに発泡粒子を製造しようとすると、樹脂粒子同士が相互に融着し、良好な発泡粒子を製造することができない場合がある。
また、上記分散剤の使用量が多い場合には、樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子の表面にも多くの量の無機微粒子が付着することとなる。しかしながら、発泡粒子の表面に付着した無機微粒子の量が過度に多い場合、型内成形時の発泡粒子同士の融着性が低下する場合がある。また、製造コストや環境負荷の観点から、分散剤の使用量を低減し、または添加せずに製造できる発泡粒子が望まれていた。
かかる問題に対し、前記発泡粒子は、特定のポリエチレン系樹脂(A)を含む発泡体からなる芯層と、特定のポリエチレン系樹脂(B)と特定の高分子型帯電防止剤(C)とを含み、前記芯層を覆う被覆層と、を有することにより、製造工程において、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加しない場合であっても、ブロッキング等がなく、良好な発泡粒子を製造することができる。また、発泡粒子の表面に付着した無機微粒子の付着量を低減することができるため、型内成形時の融着性が良好な発泡粒子となる。さらに、製造コストや環境負荷を低減することができる。
無機微粒子に起因する前述の諸問題をより確実に回避する観点から、発泡粒子表面に付着している無機微粒子の付着量は、発泡粒子100g当たり200mg以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子同士の融着性をより向上させることができる。そのため、例えば、複雑な形状のキャビティを有する金型で型内成形をする際にも、発泡粒子同士をより容易に融着させることができる。その結果、複雑な形状の発泡粒子成形体をより容易に得ることができる。
発泡粒子の融着性をより向上させる観点からは、発泡粒子の表面に付着した無機微粒子の量が少ない方がより好ましい。かかる観点からは、発泡粒子100g当たりの発泡粒子の表面への無機微粒子の付着量が150mg以下であることがより好ましく、120mg以下であることがさらに好ましく、100mg以下であることが特に好ましく、発泡粒子の表面に無機微粒子が付着していないことが最も好ましい。
なお、無機微粒子の付着量は以下のようにして求めることができる。まず、発泡粒子を60℃のオーブンで24時間乾燥させ、次いでオーブンから取り出した発泡粒子を直ちに温度23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。次に、同じ条件に設定された室内において、発泡粒子約100gを小数点3桁まで正確に秤量した後小数点3桁目を四捨五入した値を無機微粒子が付着した発泡粒子の質量とする。
次に、質量を測定した後の発泡粒子全量を洗浄し、発泡粒子の表面に付着している無機微粒子を完全に洗い流す。具体的には、まず1Nの塩酸水溶液5L中に浸漬し、次いでイオン交換水5L中に浸漬して塩酸を洗い落とす。更に1Nの水酸化ナトリウム水溶液5L中に浸漬し、次いでイオン交換水5L中に浸漬して水酸化ナトリウムを洗い落とす。その後、(株)日本触媒製のアクアリック(登録商標)DL522(ポリアクリル酸30%水溶液)を5倍希釈した水溶液5L中に浸漬し、次いでイオン交換水5L中に浸漬してポリアクリル酸ナトリウムを洗い落とす。これらのプロセスからなる洗浄操作を二回繰り返した後、発泡粒子を60℃のオーブンで24時間乾燥する。
乾燥が完了した発泡粒子をオーブンから取り出した後、直ちに23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。そして、同じ条件に設定された室内で、上記と同様に発泡粒子の質量を求める。以上により得られた、洗浄前の発泡粒子の質量(E)から洗浄後の発泡粒子の質量(F)を差し引くことにより、発泡粒子の表面に付着した無機微粒子の付着量(E)−(F)を算出する。この無機微粒子の付着量(E)−(F)を洗浄前の発泡粒子の質量(E)で除した後100を乗じて発泡粒子100g当たりの質量に換算することにより、発泡粒子100g当りの無機微粒子の付着量を求めることができる。
上述した無機微粒子に起因する融着性の低下を抑制するとともに、製造コスト及び環境負荷等を低減する観点からは、分散剤の使用量を低減し、または添加せずに前記発泡粒子を製造することが好ましい。具体的には、発泡工程において、分散剤として無機微粒子を添加する場合、その添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、添加しないことが特に好ましい。
同様の観点から、分散剤として界面活性剤を添加する場合、その添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.3質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、添加しないことが特に好ましい。
前記発泡粒子が、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加しない場合であっても、ブロッキング等がなく、良好な発泡粒子となる理由は、現時点では完全に明らかになってはいないが、例えば以下のような理由が考えられる。
前記被覆層は、高分子型帯電防止剤(C)として、芯層のポリエチレン系樹脂の融点と特定の関係を満足する融点を有するポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を含有しているため、発泡工程において、樹脂粒子間に静電的な斥力が生じると考えられる。また、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、他の高分子型帯電防止剤に比べてポリエチレン系樹脂との相溶性に優れるため、被覆層中に均一に分散しやすく、静電的な斥力の大きさがより大きくなると考えられる。これらの結果、前記発泡粒子は、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加しない場合であっても、ブロッキングを抑制することができると考えられる。
本発明に係る発泡粒子及び発泡粒子成形体の実施例を説明する。本例においては、表1及び表2に示す材料を使用し、表3〜表4に示す発泡粒子(実施例1〜13)を作製した。また、比較例として、表5〜表7に示す発泡粒子(比較例1〜18)を作製した。なお、表1に示す樹脂の密度、MFR、融点及び融解熱量は前述の方法により測定した値である。また、表2に示す高分子型帯電防止剤のMFR及び融点は前述の方法により測定した値である。ただし、PA/PE2のメルトフローレイトは、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。なお、前述したように、「ペレスタット」及び「ペレクトロン」は三洋化成工業株式会社の登録商標である。
発泡粒子の作製方法は、具体的には以下の通りである。
・実施例1〜13、比較例6〜18
(押出・切断工程)
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの被覆層形成用押出機が併設され、多数本の複層ストランド状の共押出が可能なダイが出口側に付設された共押出機を使用してストランドを作製した。
芯層形成用押出機には、表3、表4、表6及び表7の「芯層」欄に示す樹脂と、同表に示す配合量の帯電防止剤と、樹脂100質量部に対して0.02質量部の気泡調整剤とを供給し、押出機内で溶融混練した。なお、表中の「LL1+HD」は、直鎖状低密度ポリエチレン(LL1)90質量%と高密度ポリエチレン(HD)10質量%(ただし、直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの合計を100質量%とする)とを押出機に供給し、押出機内で混練したことを意味する記号である。また、気泡調整剤としては、富田製薬株式会社製「ホウ酸亜鉛2335(平均粒子径6μm)」を使用した。
被覆層形成用押出機には表3、表4、表6及び表7に示す樹脂と、同表に示す配合量の帯電防止剤とを供給し、押出機内で溶融混練した。
その後、各押出機から、押出物全体の質量に対する被覆層の質量比が表3〜表7の「比率」欄に示す値となるように溶融混練物を共押出した。各押出機から押し出された溶融混練物は、ダイ内で合流し、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の外周が被覆層により覆われた複層のストランド状に押し出される。この共押出物を水冷することにより、複層のストランドを得た。
得られたストランドを、ペレタイザーを用いて質量が略3mgとなるように切断して複層の樹脂粒子を得た。なお、樹脂粒子の直径に対する長さの比(L/D)は1.0とした。
(発泡工程)
樹脂粒子1kgと、樹脂粒子100質量部に対して表3、表4、表6及び表7に示す量の分散剤とを、分散媒としての水3Lとともに密閉容器内に封入した。なお、本例においては、分散剤としてはカオリン及び/またはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)を使用した。
次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を供給して容器内を加圧した。その後、容器内を攪拌しながら加熱し、表3、表4、表6及び表7に示す発泡温度まで容器内を昇温させた。この発泡温度を15分保持した後、密閉容器を開放し、内容物を大気圧下に放出することにより樹脂粒子を発泡させた。以上により、発泡状態の芯層と、芯層を覆う被覆層とを備えた鞘芯構造の一次発泡粒子を得た。
本例では、この発泡工程における樹脂粒子同士の融着(いわゆるブロッキング)の有無に基づき、発泡粒子の分散性を評価した。具体的には、発泡工程の完了後、密閉容器から取り出した一次発泡粒子中に、樹脂粒子同士が融着してなる塊が含まれているか否かを目視により評価した。表3、表4、表6及び表7の「分散性」欄には、一次発泡粒子中に前述した塊が含まれていない場合をブロッキングが発生しなかったと判断し、記号「○」を記載した。また、一次発泡粒子中に前述した塊が含まれていた場合には、ブロッキングが発生したと判断し、同欄に記号「×」を記載した。
なお、比較例6、13、15、17及び18においては、密閉容器内における樹脂粒子の分散性が悪く、容器内において樹脂粒子同士が相互に融着した。そのため、これらの比較例については、以降の工程及び評価を行わなかった。
(二段発泡工程)
発泡工程を行った後、二段発泡工程を行い、発泡粒子の見掛け密度を調整した。二段発泡工程は、具体的には以下のようにして行った。まず、圧力容器内にて一次発泡粒子に加圧空気を含浸させて、発泡粒子の内圧を表3〜表7に示す値にした。この一次発泡粒子を小型加圧発泡機(ダイセン工業社製J−080)に充填した後、表3、表4、表6及び表7に示す圧力(ゲージ圧)のスチームにより一次発泡粒子を加熱してさらに発泡させた。これにより、表3、表4、表6及び表7に示す見掛け密度を有する発泡粒子(すなわち、二次発泡粒子)を得た。
・比較例1〜5
(押出・切断工程)
押出機に表5に示す樹脂と、同表に示す配合量の帯電防止剤と、樹脂100質量部に対して前記気泡調整剤0.02質量部とを供給し、押出機内で溶融混練した。
押出機内の溶融混練物をストランド状に押し出した後水冷することにより、単層のストランドを得た。得られたストランドを水冷し、ペレタイザーを用いて質量が略1.3mgとなるように切断して単層の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子に、複層の樹脂粒子と同様に発泡工程及び二段発泡工程を実施して発泡粒子(二次発泡粒子)を得た。また、複層の樹脂粒子と同様に発泡工程における分散性を評価した。なお、比較例1及び比較例4においては、密閉容器内における樹脂粒子の分散性が悪く、容器内において樹脂粒子同士が融着した。そのため、これらの比較例については、発泡工程以降の工程及び評価を行わなかった。
(成形工程)
次に、発泡粒子成形体の製造方法について説明する。まず、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状のキャビティを有する金型を準備し、発泡粒子をキャビティ内に充填した。次いで、キャビティ内に表3〜表7に示す成形圧(ゲージ圧)となるようスチームを導入して発泡粒子を加熱することにより、発泡粒子同士を相互に融着させて発泡粒子成形体とした。発泡粒子を十分に加熱した後に金型を冷却し、金型から発泡粒子成形体を取り出した。得られた発泡粒子成形体を80℃に調整されたオーブン内に12時間静置し、発泡粒子成形体の乾燥及び養生を行った。
実施例及び比較例の発泡粒子に用いた原料の特性について以下の評価を実施した。なお、単層の発泡粒子については、発泡粒子全体を芯層として取り扱うものとする。
・芯層のメルトフローレイト(MFR(I))
複層の樹脂粒子については前記芯層形成用押出機から押し出された芯層、単層の樹脂粒子については前記押出機から押し出されたストランドを採取した。これらを測定試料として、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件でMFR(I)を測定した。
・被覆層のメルトフローレイト(MFR(II))
前記被覆層形成用押出機から押し出された被覆層について、JIS K7210−1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件でMFR(II)を測定した。
・樹脂(A)の融点Tm(A)
前述した通り、JIS K7121:2012に準拠した方法により樹脂(A)の融点Tm(A)を測定した。具体的には、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、樹脂(A)を10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得した。このDSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度を樹脂(A)の融点Tm(A)とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れた場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点Tm(A)とした。樹脂(A)が混合樹脂である場合には、あらかじめ樹脂を溶融混練し、ペレタイズした混合樹脂粒子を測定試料とした。
・樹脂(B)の融点Tm(B)
前述した樹脂(A)の融点Tm(A)と同様の測定方法により樹脂(B)の融点Tm(B)を測定した。
・樹脂(A)の融解熱量
JIS K7122:2012に準拠した方法により樹脂(A)の融解熱量を測定した。具体的には、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、樹脂(A)を10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得した。このDSC曲線における融解ピークの面積を融解熱量とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れた場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とした。樹脂(A)が混合樹脂である場合には、あらかじめ樹脂を溶融混練し、ペレタイズした混合樹脂粒子を測定試料とした。
・樹脂(B)の融解熱量
前述した樹脂(A)の融解熱量の測定方法と同様の方法により樹脂(B)の融点を測定した。
また、実施例及び比較例の発泡粒子について以下の評価を実施した。
・高温ピーク熱量
前述した方法により発泡粒子の芯層の高温ピーク熱量を測定した。即ち、約3mgの被覆層を除いた発泡粒子を用いて熱流束DSCを行い、得られたDSC曲線における高温ピークのピーク面積を発泡粒子の芯層の高温ピーク熱量とした。熱流束DSCにおける測定開始温度は23℃、測定終了温度は200℃、昇温速度は10℃/分とした。測定装置として、熱流束示差走査熱量計((株)日立ハイテクサイエンス製、型番:DSC7020)を用いた。
・見掛け密度
多数の発泡粒子からなる発泡粒子群の質量を精秤した後、水の入ったメスシリンダーを用意し、金網を使用して発泡粒子群を水中に完全に沈めた。このときの液面の上昇量から発泡粒子群の体積を求めた。このようにして得られた発泡粒子の質量を体積で除することにより、発泡粒子の見掛け密度を算出した。発泡粒子の見掛け密度は、表3〜表7の「見掛け密度」欄に示す通りであった。なお、測定対象の発泡粒子としては、一次発泡粒子又は二次発泡粒子のいずれかを使用した。
・無機微粒子の付着量
前述した方法により無機微粒子の付着量を算出した。即ち、約100gの一次発泡粒子を用い、前述の方法により無機微粒子が付着した発泡粒子の質量(E)と、無機微粒子を洗浄した後の発泡粒子の質量(F)とを測定した。これらの値から算出した発泡粒子に付着した無機微粒子の付着量(E)−(F)を、無機微粒子が付着した発泡粒子の質量(E)で除し、更に100を乗じて発泡粒子100g当たりの質量に換算することにより、発泡粒子100g当りの無機微粒子の付着量を求めた。
次に、実施例及び比較例の発泡粒子から作製した発泡粒子成形体について以下の評価を実施した。
・発泡粒子の成形性
発泡粒子の成形性は、具体的には、融着率、表面性状、回復性に基づいて評価した。各評価項目の評価方法は、以下の通りである。
(融着率)
発泡粒子成形体を長手方向に略等分となるように折り曲げて破断させた。これにより露出した破断面を目視観察し、発泡粒子同士の界面が剥離している発泡粒子の数と、内部で破断した発泡粒子の数とを数えた。そして、破断面に露出している発泡粒子の総数、つまり、発泡粒子同士の界面が剥離している発泡粒子の数と、内部で破断した発泡粒子の数との合計に対する発泡粒子の内部で破断した発泡粒子の数の割合を算出した。この割合を百分率(%)で表した値を融着率とした。
(表面性状)
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、次いで、この矩形のいずれかの角から対角線を描いた。この対角線に重なるように形成され、一辺1mmの正方形よりも大きいボイド(つまり、発泡粒子間の間隙)の数を数えた。表3〜6の「表面性状」欄には、ボイドの数が20個未満である場合を表面性状が良好であると判断し、記号「○」を記載した。また、ボイドの数が20個以上である場合には、表面性状に劣ると判断し、同欄に記号「×」を記載した。
・回復性
発泡粒子成形体におけるひけ、つまり、成形体の中央が周囲よりもくぼんでいる状態の有無を評価した。具体的には、得られた発泡粒子成形体の中央部分と四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出した。表3〜6の「回復性」欄には、厚みの比が90%以上である場合をひけが発生していないか、またはひけが十分に小さいため回復性が良好であると判断し、記号「○」を記載した。また、厚みの比が90%未満である場合を、ひけが大きいため回復性に劣ると判断し、同欄に記号「×」を記載した。
・成形体密度
発泡粒子成形体を温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で48時間放置した後、発泡粒子成形体の質量を精秤した。水の入った容器を用意し、金網を使用して発泡粒子成形体を水中に完全に沈めた。このときの液面の上昇量から発泡粒子成形体の体積を求めた。このようにして得られた発泡粒子成形体の質量を体積で除することにより、発泡粒子の見掛け密度を算出した。
・表面抵抗率
JIS K 6271−1:2015に準拠した方法により、発泡粒子成形体の表面抵抗率の測定を行った。具体的には、まず、発泡粒子成形体を温度23℃、50%RHの環境に1日静置して養生した後、発泡粒子成形体の中央付近から、縦100mm×横100mm×厚み10mmの直方体状の試験片を切り出した。このとき、直方体に存在する縦100mm×横100mmの2つの面の内の一方がスキン面、つまり、型内成形によって得られた発泡粒子成形体の表面となり、他方が内部面、つまり、発泡粒子成形体の内部が露出した面となるように試験片を切り出した。また、上記試験片は温度23℃、12%RHの環境においても同様の方法により作製した。
その後、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック株式会社製「ハイレスタMCP−HT450」)を用いて、試験片のスキン面から無作為に選択した5か所の測定位置において表面抵抗率を測定した。プローブとしては、三菱ケミカルアナリテック株式会社製「URS100」を使用した。測定環境の温度は23℃、相対湿度は50%RHとし、測定時の印加電圧は500V、印加時間は30秒とした。また、上記表面抵抗率は温度23℃、12%RHの環境においても同様の方法により測定した。なお、表面抵抗率が1×1013を超えた場合には、「>1013」と表示した。
・帯電防止剤の移行性
発泡粒子成形体の中央付近から、縦180mm×横180mm×厚み20mmの直方体状の試験片を切り出した。このとき、直方体に存在する縦180mm×横180mmの2つの面の内の一方がスキン面、つまり、型内成形によって得られた発泡粒子成形体の表面となり、他方が内部面、つまり、発泡粒子成形体の内部が露出した面となるように試験片を切り出した。
その後、試験に使用するスライドガラスを10枚重ねてブランク試料とし、ブランク試料のヘイズ値を測定した。ヘイズ値は日本電色工業(株)製ヘーズメーター(NDH5000)を用いて測定した。次いで、ヘイズ値を測定したスライドガラス10枚を試験片のスキン面上に並べて配置し、各スライドガラスの一方の表面とスキン面とを接触させた。次いで、スライドガラスの他方の表面上に、スキン面がスライドガラスの他方の表面と接触するようにして別の試験片を乗せた。
このようにして10枚のスライドガラスを試験片のスキン面の間に挟み込んだ後、上方に配置された試験片に錘を乗せ、スライドガラスにかかる1kg/100cm2の荷重を加えた。この状態で、試験片及びスライドガラスを60℃、相対湿度60%のオーブン内で72時間加熱した。加熱後のスライドガラスを10枚重ねて加熱後のヘイズ値を測定した後、加熱後のヘイズ値からブランク試料(つまり、加熱前のスライドガラス)のヘイズ値を差し引くことによりヘイズ値の増加量を算出した。表3〜表7の「移行性」欄には、ヘイズ値の増加量が10未満の場合には記号「○」、10以上15未満の場合には記号「△」、15以上の場合には記号「×」を記載した。
表3に示したように、実施例1〜8は、芯層に直鎖状低密度ポリエチレンを含むポリエチレン系樹脂(A)、被覆層に直鎖状低密度ポリエチレンを含むポリエチレン系樹脂(B)と、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体からなる高分子型帯電防止剤(C)とを含んでいる。そして、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)、ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)及び高分子型帯電防止剤(C)の融点Tm(C)が前述した式(1)〜式(2)を満足している。そのため、実施例の発泡粒子は、優れた発泡性及び成形性を有していた。また、実施例の発泡粒子から作製された発泡粒子成形体は、低湿度の環境下にあっても優れた帯電防止性能を有するとともに、帯電防止剤の移行を抑制することができた。
表4に示す実施例9〜13の発泡粒子は、製造工程において、分散液中に添加する分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加せずに製造した例である。実施例9〜13に示すように、前記特定の芯層及び被覆層を有する発泡粒子は、分散剤の量を低減し、または分散液中に分散剤を添加せずに製造した場合にも、ブロッキング等がなく、成形性が良好な発泡粒子を製造することが可能であった。更に、実施例9〜13の発泡粒子は、実施例1〜8と同様に、低湿度の環境下にあっても優れた帯電防止性能を有するとともに、帯電防止剤の移行を抑制することができた。
比較例1は、ポリエチレン系樹脂と、帯電防止剤としての界面活性剤とを含む単層の発泡粒子を作製しようとした例である。比較例1においては、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができなかった。
比較例2は、比較例1と同様の発泡粒子を、分散剤を使用して作製した例である。比較例2の発泡粒子からなる発泡粒子成形体は、その表面から梱包対象物への界面活性剤の移行を抑制することができず、梱包対象物の汚染等を生じるおそれがある。
比較例3は、ポリエチレン系樹脂と、高分子型帯電防止剤とを含む単層の発泡粒子の例である。単層の発泡粒子は、所望の帯電防止性能を発現するために必要な量の帯電防止性能を配合した場合、発泡粒子の融着性や、回復性が悪化する。
比較例4は、比較例3よりも帯電防止剤の含有量を少なくし、かつ、分散剤を使用しない例である。比較例4においては、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができなかった。
比較例5は、比較例4と同様の発泡粒子を、分散剤を使用して作製した例である。比較例5に示すように、単層の発泡粒子に高分子型帯電防止剤を使用する場合、複層の発泡粒子における被覆層と同程度の含有量では帯電防止性能が不十分となる。
比較例6は、被覆層に帯電防止剤としての界面活性剤を配合した複層の発泡粒子を、分散剤を使用せずに作製しようとした例である。比較例6の発泡粒子は、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができなかった。
比較例7は、比較例6と同様の発泡粒子を、分散剤を使用して作製した例である。比較例7に示すように、帯電防止剤として界面活性剤を使用した場合、複層の発泡粒子であっても発泡粒子の表面から梱包対象物への界面活性剤の移行を抑制することができず、梱包対象物の汚染等を生じるおそれがある。
比較例8は、高分子型帯電防止剤(C)の含有量が前記特定の範囲よりも少ないため、帯電防止性能が不十分となった。
比較例9及び比較例16は、芯層に含まれるポリエチレン系樹脂(A)の融点Tm(A)が被覆層に含まれるポリエチレン系樹脂(B)の融点Tm(B)よりも低かった。そのため、発泡粒子の融着率が大幅に低下した。また、発泡粒子成形体の回復性が悪化し、養生を行った後の成形体にひけが発生した。
比較例10〜12は、実施例3から高分子型帯電防止剤(C)の種類を変更した例である、これらの比較例におけるポリエチレン系樹脂(A)と高分子型帯電防止剤(C)との融点の差Tm(C)−Tm(A)が前記特定の範囲よりも小さい。そのため、発泡粒子の融着性が低下した。
比較例13及び比較例15は、実施例1から高分子型帯電防止剤(C)の種類を変更した例である。これらの比較例は、高分子型帯電防止剤(C)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を使用していないため、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができず、ブロッキングが発生した
比較例14は、実施例3から高分子型帯電防止剤(C)の種類を変更した例である。高分子型帯電防止剤(C)としてポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を使用していないため、帯電防止性能が不十分となった。
比較例17は、芯層及び被覆層がポリプロピレン系樹脂から構成されている発泡粒子の例である。ポリプロピレン系樹脂からなる発泡粒子は、分散剤を添加しない場合、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができず、ブロッキングが発生した。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、樹脂融点に対して高い発泡温度で発泡されるため、発泡工程において著しく樹脂が軟化しており、分散剤を添加しない場合、樹脂粒子同士の互着を抑制することが困難であったと考えられる。
比較例18は、比較例17と同様の発泡粒子を、分散剤を少量使用して作製した例である。比較例18のように芯層及び被覆層がポリプロピレン系樹脂から構成されている発泡粒子は、分散液中に添加する分散剤の量が少ない場合には、分散媒中に樹脂粒子を分散させることができず、ブロッキングが発生した。