JP2015101491A - 光学素子の成形装置及び成形方法並びに光学素子用の成形型 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、プレートの温度分布の影響を受けにくくして、光学素子を歩留まり良く製造できる光学素子の成形装置及び成形方法を提供する。【解決手段】上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型50を、加熱、プレス及び冷却の各ステージ3,4,5へ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置であって、加熱、プレス及び冷却の各ステージにおいて成形型を搭載し、搭載された成形型に対して、それぞれ加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート3b、プレスプレート4b及び冷却プレート5bの複数組のプレートを有し、冷却プレート5bの成形型50の搭載面において、搭載される成形型の被搭載面に対応する円形状の搭載領域を中心領域と周辺領域とに分けたとき、中心領域と周辺領域における成形型の被搭載面との接触割合が所定の関係を有する光学素子の成形装置1。【選択図】図1
Description
本発明は、光学素子を連続的に製造可能な成形装置、成形方法及び成形型に係り、特に、光学素材を冷却する冷却プレートから光学素材へ伝達する熱の偏りを抑制し、光学素子の形状不良の発生を抑制できる光学素子の成形装置及び成形方法並びに光学素子用の成形型に関する。
近年、光学素子用の成形型内に光学素材を収容し、加熱軟化させてプレス成形するという、光学素子を高精度に成形する方法が一般化してきた。そのような状況の中、製造コストを低減するために、成形型を各処理ステージに搬送し、複数の光学素子を連続的に製造する光学素子の成形装置が提案されている。
これら光学素子の成形装置において、光学素材の加熱軟化時には、光学素材を加工するのに十分な高温条件まで加熱し、プレス時にはその加熱状態を維持しながらプレスし、プレス後は、光学素材を冷却して固化させ光学素子を得る。そのため、成形装置における各処理ステージでは、個々のステージが所定の温度に管理されている。
各処理ステージは、一般に、内部にカートリッジヒータを設けた上下一対のプレートで構成されており、これら上下一対のプレートは、通常、プレート内部に複数本の棒状のカートリッジヒータを水平方向に所定の間隔に配置して構成されている。ところが、このように配置したときのプレート温度は、プレート周辺部では温度が低下しやすく、プレート中央部はヒータに囲まれて温度が上昇しやすい。したがって、プレートにおける加熱状態が場所により異なる温度分布が生じてしまう。このようにプレート内で温度分布が生じると、そのプレート上にある成形型、ひいては光学素材を成形する成形面の温度にまで影響を与えてしまう。
そこで、プレート上の温度分布を改善するために、超硬合金の表面を所定の合金薄膜で被覆した特定の大きさからなる均熱板をプレート上に設けたり(特許文献1参照)、プレート表面の成形に対応する周辺部分と内側部分との温度差を所定範囲に保持するために内側と外側のカートリッジヒータの出力を制御する温度制御手段を設けたり(特許文献2参照)、プレートの成形型との接触面積を低減させて、冷却速度が遅くなるようにして、転写精度を向上させようとしたり(特許文献3参照)、する技術が提案されている。
しかしながら、上記の成形型を搬送移動させながら順次処理を行っていく成形装置においては、まず、成形型が装置内に取入れられ、初めの加熱ステージでは徐々に光学素材を昇温させていき、加熱の最終段階で最高温度に到達させる。次に、この最高温度を維持しながらプレス成形を行って光学素材に光学素子形状を付与する。そして、最後に、冷却ステージで光学素材の温度を徐々に下げて光学素材を冷却、固化させる。
このような成形操作を行うにあたっては、装置全体の温度勾配は、成形型の取入れ口側から徐々に高くなり、プレス成形処理を行うプレスステージを頂点として、成形型の取出し口側に向かって徐々に低くなっている。
したがって、各ステージは隣接するステージの温度に影響されて、所定の温度よりも高温あるいは低温になってしまい、同一プレート内で温度差が生じてしまう。このような場合には、特許文献1及び2のようにプレート単独で考えただけでは足りず、隣接するプレートの影響等も考慮に入れなければ、温度分布を効果的に抑制できない。
例えば、冷却ステージにおいて、隣接するステージがプレスステージであった場合、その冷却ステージのプレスステージ側の温度が高く、その逆側の温度が低くなってしまうため、冷却プレート上にある成形型内部に温度分布が発生し光学素材の冷却を一様に行えず、場所によって冷却速度が変わってしまう。そのため、所望の形状を得られなくなり歩留まりを低下させるという問題があった。このような問題は特に、製造する光学素子の直径が大きくなり、隣接するプレートとの距離が短くなると顕在化してくる。
また、特許文献3のように冷却プレートと成形型との接触面積を低減させると冷却速度の制御が良好となり、転写精度を向上できるが、光学素子の中心部と周辺部での温度差が小さくなるように均一化し、より安定的に光学素子を製造できる光学素子の成形装置及び成形方法が求められている。
そこで、本発明は、光学素子の製造にあたって、プレートの温度分布の影響を受けにくくして、光学素子を歩留まり良く製造できる光学素子の成形装置及び成形方法並びに光学素子用の成形型の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、光学素子に直接影響を与える成形型の均熱化を図るため、成形型と光学素子の成形装置の冷却プレートの熱伝達機構に着目し、冷却プレートの成形型搭載領域において、冷却プレートと成形型の底面との接触面積の割合をその中心領域と周辺領域とで所定の関係を満たすようにすることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の光学素子の成形装置は、上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置であって、前記加熱、プレス及び冷却の各ステージにおいて前記成形型を搭載し、搭載された前記成形型に対して、それぞれ加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートの複数組のプレートと、前記各組における一対のプレートを接近又は離間させて前記加熱、プレス及び冷却のプロセスを行わせる駆動手段と、前記各プロセス及び前記成形型の搬送を制御する制御手段と、を備えるとともに、前記冷却プレートの前記成形型の搭載面において、搭載される前記成形型の被搭載面に対応する円形状の搭載領域を、該搭載領域の1/2の半径である同心円を境界として、その内側の中心領域と外側の周辺領域とに分けたとき、前記中心領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RAと、前記周辺領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。
本発明の成形型は、上型、下型及び胴型を有し、加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートの複数組のプレート上に順次搬送して搭載され、各処理を施されて光学素子を成形する光学素子用の成形型であって、前記成形型の被搭載面において、前記冷却プレート上の前記被搭載面に対応する円形状の搭載領域を、該搭載領域の1/2の半径である同心円を境界として、その内側の中心領域と外側の周辺領域とに分けたとき、前記中心領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RAと、前記周辺領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。
また、本発明の光学素子の成形方法は、上記本発明の光学素子の成形装置を使用し、前記成形型に光学素材を収容した後、前記成形型を加熱して成形型内の光学素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素材を、プレス手段を用いて前記成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素材を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明の他の光学素子の成形方法は、上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置を使用する光学素子の成形方法であって、上記本発明の成形型に光学素材を収容した後、前記成形型を加熱して成形型内の光学素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素材を、プレス手段を用いて前記成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素材を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする。
本発明の光学素子の成形装置及び成形方法並びに光学素子用の成形型によれば、光学素子を製造する冷却工程において、成形型と冷却プレート間の接触による熱伝達量を調節し、成形型から光学素材に伝達する熱の温度分布を小さくできる。この温度分布の改善により、光学素子の形状不良の発生を抑制し、光学素子を安定して歩留まり良く製造できる。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である光学素子の成形装置の概略構成図である(チャンバー2のみ断面で示している)。
本発明の光学素子の成形装置1は、光学素子を成形するための成形室となるチャンバー2と、該チャンバー2の内部に設けた光学素材を収容した成形型を加熱して光学素材を軟化させる加熱ステージ3と、加熱軟化した光学素材をプレスするプレスステージ4と、プレスにより光学素子形状が付与された光学素材を冷却する冷却ステージ5と、を有する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である光学素子の成形装置の概略構成図である(チャンバー2のみ断面で示している)。
本発明の光学素子の成形装置1は、光学素子を成形するための成形室となるチャンバー2と、該チャンバー2の内部に設けた光学素材を収容した成形型を加熱して光学素材を軟化させる加熱ステージ3と、加熱軟化した光学素材をプレスするプレスステージ4と、プレスにより光学素子形状が付与された光学素材を冷却する冷却ステージ5と、を有する。
ここで、成形室であるチャンバー2は、その内部において、光学素子の成形操作を行う場を提供する。このチャンバー2には、光学素子の成形型50を内部に取り入れる取入れ口と、光学素子の成形が終了した後、成形型50を取り出す取出し口が設けられ、この取入れ口及び取出し口には、それぞれ取入れシャッター6及び取出しシャッター7が設けられている。必要に応じて、これらシャッターを開閉して、成形型50をチャンバー2から出し入れすることで、チャンバー2内の雰囲気が維持される。また、この取入れ口及び取出し口には、そのチャンバー2外部にそれぞれ成形型50を載置できる成形型載置台8及び9が設けられている。
このチャンバー2の内部には、光学素子を成形するための加熱ステージ3、プレスステージ4及び冷却ステージ5が設けられており、これらの各ステージにより成形操作を行う。実際には、光学素材を収容した成形型50が、取入れ口からチャンバー2内に取り入れられ、上記の各ステージを順番に移動しながら所定の処理が施され、一連の処理が終了したところで成形型50は、取出し口からチャンバー2の外部に取出される。
このチャンバー2の内部において、光学素材のプレス成形時には成形型50は高温に加熱されるため、この成形型50が酸化されないように、チャンバー内雰囲気は窒素等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気とするには、チャンバー2を密閉構造として内部雰囲気を置換して達成できるが、半密閉構造とし、不活性ガスを常時チャンバー2内に供給しチャンバー内を陽圧にすることで外部の空気が流入しないようにして、不活性ガス雰囲気を維持してもよい。上記した取入れシャッター6及び取出しシャッター7は、チャンバー2内部を簡便な構成で半密閉状態とするのに効果的である。なお、これらチャンバー2及びシャッター6,7は、ステンレス、合金鋼等の高温下におけるガス、不純物が析出しない素材とするのが好ましい。
次に、本発明の成形操作を行う各ステージについて説明する。なお、各ステージの説明にあたって用いる成形型50は、一般に、光学素子の上側の光学面を形成する上型と、下側の光学面を形成する下型とで構成される一組の成形型であり、さらに上型及び下型の位置合わせを行う胴型を有する。胴型は、プレス時に、上型及び下型の光軸を同軸上に規制する中空円筒形状の内胴と、内胴の外周に設けられ上型及び下型間の距離を規制する中空円筒形状の外胴と、で構成したものが好ましい。
また、この成形型50は、超硬合金やセラミックス等の素材からなり、上型及び下型は、成形する光学素子の面形状を転写するための成形面をそれぞれ有しているが、ここで形成される光学素子形状は、両凸、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス、凹メニスカス形状のいずれのレンズ形状を成形する成形型であってもよい。なお、外胴を用いる場合には、高温での耐久性、耐食性、高い機械的強度を持つ材質が好ましく、さらには高い熱膨張係数を持つ材質が好ましく、具体的にはSUS等のステンレスが好ましい。
本発明の加熱ステージ3は、成形型50に収容された光学素材を軟化させ、その内部にカートリッジヒータ3aが埋め込まれた上下一対の加熱プレート3bから構成される。この加熱プレート3bは、上下一対の加熱プレート3bを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させ、上型及び下型を加熱する手段であり、熱伝導によりさらに成形型内部に収容されている光学素材をも加熱できるものである。
また、加熱ステージ3において、下側の加熱プレート3bはチャンバー2の底板に、断熱板3c、加熱プレート3bがこの順番に積層して固定されており、下側の加熱プレート3bの熱をチャンバー2に伝達しないようにする。
上側の加熱プレート3bは上下移動が可能となっており、こちらも上側の加熱プレート3b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板3cを介してシャフト3dと接続される。このシャフト3dは図示しないシリンダーによって加熱プレート3bを上下移動可能としている。このように、加熱プレート3bを上下移動可能とすれば、上側の加熱プレート3bの成形型50の上型への接触・非接触を制御でき、所望のタイミングで成形型50と光学素材を加熱できる。
本発明のプレスステージ4は、上下のプレスプレート4b間の距離を狭めて成形型50の上型と下型との距離も狭め、成形型50内に収容された光学素材を軟化状態のまま押圧して変形させ、上型及び下型の成形面形状を光学素材に付与して光学素子を所望の形状に成形する。その内部にカートリッジヒータ4aが埋め込まれた上下一対のプレスプレート4bから構成される。このプレスプレート4bを用いたプレスは前段階の加熱温度を維持して行われる。
また、このプレスステージ4において、下側のプレスプレート4bはチャンバー2の底板に、断熱板4c、プレスプレート4bがこの順番に積層して固定されており、下側のプレスプレート4bの熱をチャンバー2に伝達しないようにする。
上側のプレスプレート4bは上下移動が可能となっており、こちらも上側のプレスプレート4b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板4cを介してシャフト4dと接続される。このシャフト4dは図示しないシリンダーによってプレスプレート4bを上下移動可能としている。このように、プレスプレート4bを上下移動可能とすれば、この上側のプレスプレート4bを下降させ、下側のプレスプレート4bに載置された成形型50を用いたプレス成形ができる。このときプレスプレート4bはプレスを所定の圧力で行えるよう動作し、光学素材に高精度に光学素子形状を付与できる。
本発明の冷却ステージ5は、成形型50を冷却して光学素子形状が付与された光学素材を冷却し、固化させるため、その内部に、カートリッジヒータ5aが埋め込まれた上下一対の冷却プレート5bから構成される。この冷却プレート5bは、上下一対の冷却プレート5bを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させて、上型及び下型を冷却でき、さらに成形型内部に収容されている光学素材をも冷却できるものである。
より具体的には、この冷却ステージ5において、下側の冷却プレート5bはチャンバー2の底板に、断熱板5c、冷却プレート5bがこの順番に積層されて固定されており、下側の冷却プレート5bの熱をチャンバー2に伝達しないように構成されている。
上側の冷却プレート5bは上下移動が可能となっており、こちらも上側の冷却プレート5b自体の熱をそのまま伝えないように断熱板5cを介してシャフト5dと接続される。このシャフト5dは図示しないシリンダーによって冷却プレート5bを上下移動可能としている。このように、冷却プレート5bを上下移動可能とすれば、この上側の冷却プレート5bの成形型50の上型への接触・非接触を制御でき、所望のタイミングで成形型50と光学素材を冷却できる。
なお、冷却プレート5bでの光学素材の固化は、その素材のガラス転移点以下、より好ましくは歪点以下に冷却すればよく、十分に冷却されると光学素材の光学素子形状は安定し、変形が抑制される。ここでの冷却は、光学素子形状を安定して付与するように光学素材が固化する温度まで下げる意味であり、その温度は、プレスプレートよりも50〜150℃程度低いだけで、依然として高温であるため、この冷却プレート5bにもその内部にヒータ5aが埋め込まれている。
上記説明したとおり、各ステージの上側の加熱プレート3b、プレスプレート4b及び冷却プレート5bは断熱板を介してシャフトに固定されており、このシャフトがシリンダーに接続されている。ここでシリンダーは、各プレートの上下動を可能とできればよく、例えば、エアシリンダー、電動サーボシリンダー、油圧シリンダー、電動油圧シリンダー等のシリンダーが挙げられる。
上記した、加熱プレート3b、プレスプレート4b、冷却プレート5bは、その成形型の搭載面が水平面となっており、特に、プレスプレート4bにおいては、プレスプレート4bの成形型の搭載面が傾いていた場合、成形型50の上型及び下型の中心軸が一致しなくなり、このとき製造される光学素子が、その光軸が一致せず不良品となってしまう場合がある。したがって、これら各ステージにおけるプレートの平行度や平面度の管理は厳密に行われる。なお、各ステージにおけるプレートの成形型搭載面とは、成形型と対向する表面のことをいう。
これらの各ステージにおけるプレートは、ステンレス、超硬合金、合金鋼等の素材の内部にカートリッジヒータを挿入し、固定し、カートリッジヒータの加熱によりプレートの温度を上昇させ、所望の温度に維持するものである。
なお、各ステージのプレートは、プレート温度をなるべく均質化させるために、成形型の搭載面表面には、均熱板が設けられた構造を有してもよい。均熱板は、超硬合金、ステンレス等の公知の耐熱性があり、硬度が高く熱伝導が良い材料で構成できる。さらに、均熱板表面に酸化防止膜のコーティングを施すことが好ましく、このコーティングとしては、具体的にはCrN、TiN、TiAlNなどのコーティング処理膜が挙げられる。なお、均熱板を有する冷却プレート5bにおいても、後述するように、搭載面には所定の凹凸構造を有することが好ましい。この場合、冷却プレート5bの搭載面は均熱板の表面に相当する。
また、各ステージの断熱板3c,4c,5cは、セラミックス、ステンレス、ダイス鋼、ハイス鋼等の公知の断熱板を用いればよく、硬度が高くプレス成形時の圧力等によっても変形しにくく、ずれを生じるおそれが少ないセラミックスが好ましい。
さらに、本発明においては、冷却プレート5bの成形型50の搭載面が、搭載される成形型50との接触割合を場所によって異なるように凹凸形状を設けて、成形型50と冷却プレート5bと、の間の接触による熱移動量を調整した点に特徴を有する。
より詳細には、図2に示すように、冷却プレート5bの成形型の搭載面において、搭載される成形型の被搭載面に対応する円形状の領域を搭載領域Pとし、これを、中心領域Aと周辺領域Bに分ける。このとき、中心領域Aと周辺領域Bとは、搭載領域Pの半径をrとしたとき、その1/2の半径(r/2)を有する同心円を境界とし、その内側を中心領域A、その外側を周辺領域Bとする。なお、搭載領域Pは、実際に搭載される成形型の被搭載面と同一の大きさ、形状を有する円形状の領域である。これらの領域は、上側の冷却プレートと下側の冷却プレートで、それぞれ決定される。すなわち、上側の冷却プレートは上型の被搭載面である上面により搭載領域Pが、下側の冷却プレートは下型の被搭載面である底面により搭載領域Pが個々に決定される。
そして、中心領域Aにおける成形型との接触割合RAと、周辺領域Bにおける成形型との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。このRA/(RA+RB)は、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。上記式(1)の関係は、2つある搭載領域Pの内少なくとも1つを満たせばよく、下側の冷却プレートを含むことが好ましく、上下の冷却プレート両方共満たすことがより好ましい。
RA/(RA+RB)が0.8未満、0.7以上では本発明の成形面における温度のバラツキを抑制し、光学素子の形状対称性が向上するという効果を確認できる。0.8以上であれば本発明の効果が明確に得られる。著しい効果を得るには0.9以上とするのがより好ましい。
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする。このRA/(RA+RB)は、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。上記式(1)の関係は、2つある搭載領域Pの内少なくとも1つを満たせばよく、下側の冷却プレートを含むことが好ましく、上下の冷却プレート両方共満たすことがより好ましい。
RA/(RA+RB)が0.8未満、0.7以上では本発明の成形面における温度のバラツキを抑制し、光学素子の形状対称性が向上するという効果を確認できる。0.8以上であれば本発明の効果が明確に得られる。著しい効果を得るには0.9以上とするのがより好ましい。
ここで、接触割合RAは、中心領域Aの面積に対して、成形型を冷却プレート上に搭載したときの冷却プレートと成形型とが、中心領域Aにおいて実際に接触している接触面積SAの割合を示したものであり、接触割合RBは、周辺領域Bの面積に対して、成形型を冷却プレート上に載置したときの冷却プレートと成形型とが、周辺領域Bにおいて実際に接触している接触面積SBの割合を示したものである。
接触割合RBは、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。40%を超えると周辺部の温度分布の影響が大きくなり、成形品の非対称性(アス)が光学素子としての規格を超えるためである。接触割合RBを何%にするかは、成形する光学素子の規格に応じて決定することができる。
また、上記(1)式に加え、中心領域Aにおける成形型との接触面積SA、周辺領域Bにおける成形型との接触面積SB及び搭載領域Pの面積SPが、次の式(2)
0.5 ≧ (SA+SB)/SP …(2)
を満たすことが好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。0.5以下であれば、本発明の成形面における温度のバラツキを抑制し、光学素子の形状対称性が向上するという効果を確認できる。0.3以下であれば本発明の効果が明確に得られる。著しい効果を得るには0.2以下とするのがより好ましい。
0.5 ≧ (SA+SB)/SP …(2)
を満たすことが好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。0.5以下であれば、本発明の成形面における温度のバラツキを抑制し、光学素子の形状対称性が向上するという効果を確認できる。0.3以下であれば本発明の効果が明確に得られる。著しい効果を得るには0.2以下とするのがより好ましい。
冷却プレート5bを、上記の関係を満たすような表面形状とし、熱移動量を調整することで他のプレートからの熱的影響を受け難くして、プレートから成形型、ひいては光学素子まで移動する熱量の差による温度分布を改善できる。このようにすると、プレス後の冷却時に、光学素子の表面の温度分布を改善して、表面形状の不良の発生を抑制できる。また、温度の伝達も緩やかになり、成形型及び光学素材の急激な温度変化を抑制し、この点でも光学素子の形状安定性を向上できる。
冷却プレート5bの表面において、接触割合を調整するには、プレート表面に機械加工やエッチング加工等により凹凸形状を設け、成形型50との接触面積を搭載領域Pの場所によって調整すればよい。
このような凹凸形状は、上記関係式を満たせばよく、特に限定されるものではない。この凹凸形状としては、例えば、図3A〜3Cに示した形状が挙げられる。図3Aは、成形型の搭載領域Pの内部に円形状に研削加工部分を複数個形成し、かつ、搭載領域Pの境界上に円形状の研削加工部分を複数個形成した冷却プレートの一例を示した平面図である。ここで、研削加工部分はプレート内部に凹状に加工され、冷却プレート5b表面に段差が設けられることとなる。したがって、この研削加工部分は、冷却プレート5b上に成形型を載置した際、成形型と接触せず、熱移動量が制限される。なお、凹凸の深さは任意で決められるが、10μm以上の深さであればよく、100μm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。
また、図3Bは、図3Aにさらに、成形型の底面の搭載領域Pと同一の中心を有する円環状の研削加工部分を追加して加工したもので、中心領域Aにおいて円形状に未加工部分が残されている。図3Cは、図3Bにさらに、中心領域Aの円形状の未加工部分の大きさが、より小さい円形となるように研削加工されている。
図3A〜3Cのいずれの加工形状においても、周辺領域Bを加工して成形型の底面との接触面積を低減しているが、成形型が実際に搭載される際、プレート上に安定して保持できるように、その搭載領域Pの輪郭部分には、成形型を載置した際に、成形型を保持する未加工部分が残るようにしている。
上記のように、研削加工等により凹凸形状を形成すれば、成形型との接触面積を任意に調整できるが、このとき、凹凸形状は冷却プレート5bの平面図において搭載領域Pの中心を対称点とした点対称が好ましい。このように、加工形状が点対称であると、成形型の底面からの熱移動量の場所による偏りを小さくできる。さらに、成形型を載置したときの安定性が確保され好ましい。
なお、冷却プレート5bとして、その成形型の搭載面に温度分布を抑制するための均熱板を設けることがよくあるが、このときには、均熱板の表面に上記のような凹凸形状を設け、成形型との接触面積を調整すればよい。
以上説明した加熱ステージ3、プレスステージ4、冷却ステージ5は、それぞれ所定の処理が行われる場(ステージ)を形成し、各ステージによる処理を順次円滑に行えるように、成形型50は、搬送手段(図示せず)により所定のタイミングで各ステージに移送し搭載されるように制御手段によって制御されている。
より具体的には、加熱プレート3b、プレスプレート4b、冷却プレート5bによる処理は、成形型50を順次上記の順序で各プレート上へと搬送移動させながら所定の処理を行う。そして、成形型50が次のステージに移動すると、処理の終わったステージは空くため、さらに、そこに別の光学素材を収容した成形型50を搬送し、複数個の光学素子の成形操作を連続的に行うのが効率的である。
この処理を行うための上記搬送手段は、図示していないが、例えば、ロボットアーム等が挙げられ、これにより、成形型載置台8から加熱プレート3bへ、加熱プレート3bからプレスプレート4bへ、プレスプレート4bから冷却プレート5bへ、冷却プレート5bから成形型載置台9へ、と移動させる。
なお、この制御手段は、成形型の移動、加熱・プレス・冷却の各ステージにおける上下一対のプレートの温度や、上下移動のタイミング等も制御し、一連の成形操作を円滑に、かつ、連続的に行うように制御している。このとき、取入れシャッター及び取出しシャッターの開閉も制御する。さらに、チャンバー2内の雰囲気が不活性ガスで満たされるように窒素の供給量やタイミング等を制御するのが好ましい。
すなわち、この光学素子の成形装置1は、1以上のポジションで温度の上げ下げを行いながら所定の処理を行う、成形型の搬送による光学素子の成形装置である。
次に、この光学素子の成形装置1を用いた光学素子の成形方法について説明する。
まず、取入れ口側の成形型載置台8に成形型50を載置し、この成形型50の内部に光学素材を収容する。取入れシャッター6を開けて取入れ口を開口させ、この成形型50を搬送手段により加熱プレート3b上に搬送し、搭載する。搭載されると、成形型50の下型は下側の加熱プレート3bに接触するため加熱プレート3bと同じ温度まで昇温される。これと同時に、上型には上方向から上側の加熱プレート3bを接触させて同様に加熱する。
まず、取入れ口側の成形型載置台8に成形型50を載置し、この成形型50の内部に光学素材を収容する。取入れシャッター6を開けて取入れ口を開口させ、この成形型50を搬送手段により加熱プレート3b上に搬送し、搭載する。搭載されると、成形型50の下型は下側の加熱プレート3bに接触するため加熱プレート3bと同じ温度まで昇温される。これと同時に、上型には上方向から上側の加熱プレート3bを接触させて同様に加熱する。
このように上型及び下型が加熱されると、その内部に収容されている光学素材も加熱され、この光学素材は屈伏点以上に加熱されると変形が容易となる。一般に、加熱温度は、軟化点まで温度を上げるとレンズ表面が白濁するので屈伏点(At)から軟化点の間の温度に設定する。このとき、昇温速度は0.5〜2.5℃/sec程度が好ましい。
このようにして加熱ステージ3で十分に加熱された成形型50及び光学素材は、搬送手段により、下側のプレスプレート4b上に搬送され搭載される。
プレスプレート4bも加熱プレート3bと同程度の温度に加熱されており、光学素材を軟化状態に維持する。さらに、上側のプレスプレート4bを下降させてプレスプレート4b間の距離を狭め、上型と下型との距離をも狭めて、成形型50の内部に収容された光学素材に圧力をかけ、光学素材を変形させる。
このプレス工程では、上記したように成形型50の上下から圧力をかけて光学素材のプレス成形を行い、これにより光学素材には上型及び下型の光学形成面が転写され、光学素子形状が付与される。
また、このプレス工程におけるプレスは、加熱温度が前段の加熱ステージで加熱した温度と同程度の温度であり、プレス時の圧力はレンズ成形体の単位面積当たり2.5〜37.5N/mm2が好ましく、さらには10〜20N/mm2が特に好ましい。
そして、このようなプレス工程を経て、押切りが完了した成形型50は、搬送手段によりプレスプレート4bから冷却プレート5bに搬送され、搭載される。
次に、冷却プレート5bにより成形型50を冷却するが、これは、上記加熱工程と同様に、下型は下側の冷却プレート5bと接触させ、上型は上側の冷却プレート5bを下降させ接触させて冷却する。これにより光学素材を冷却して、固化させる。この冷却は、光学素材のガラス転移点(Tg)以下の温度にまで冷却させるのが好ましく、光学素材の歪点以下の温度にまで冷却させるのがより好ましい。このとき、降温速度は0.1〜2.5℃/secが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0℃/secである。
なお、上記した加熱工程及び冷却工程は、それぞれ段階的に温度を変化させ緩やかに昇温又は降温させるのが好ましく、この場合、加熱工程として1以上の加熱ステージを設け、段階的に光学素材の温度を上昇させて、プレスステージの直前の加熱ステージにおいて、成形温度とする。また、冷却工程においても1以上の冷却ステージを設け、段階的に光学素材の温度を下降させて、200℃以下の温度にまで冷却するのが好ましい。このように、段階的に加熱及び冷却をすると、光学素材の急激な温度変化を抑制し、歪が生じたり、面ワレ等が生じたりする等の光学素子の特性を悪化させないようにできる。ここで面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良を生じる離型異常のことをいう。
このような、加熱工程及び冷却工程を実施するために、それぞれ複数の加熱ステージ及び冷却ステージを有する光学素子の成形装置の一例を図4に示した。この図4に示した光学素子の成形装置11は、チャンバー12、第1の加熱ステージ13、第2の加熱ステージ14、第3の加熱ステージ15、プレス成形ステージ16、第1の冷却ステージ17、第2の冷却ステージ18、第3の冷却ステージ19を有する装置構成となっており、チャンバー12には光学素子の成形装置1と同様に、成形型50の取入れ口とそれを開閉可能とする取入れシャッター20、取出し口とそれを開閉可能とする取出しシャッター21、それら取入れ口及び取出し口の外側には成形型載置台22及び23が設けられている。
この光学素子の成形装置11は、加熱ステージを3つ、冷却ステージを3つ設けて、段階的に加熱及び冷却を可能とした以外は、図1の光学素子の成形装置1の構成と同様である。
例えば、第1の加熱ステージ13では、光学素材をガラス転移点よりも200〜400℃程度低い温度に一旦加熱する予備加熱を行い、第2の加熱ステージ14ではガラス転移点付近の温度にまで、第3の加熱ステージ15では屈伏点+10〜30℃の温度にまで加熱する。また、プレスステージ16では成形温度を維持しながら、成形型による成形操作により光学素子形状を付与し、第1の冷却ステージ17では光学素材のガラス転移点+20℃程度まで冷却し、第2の冷却ステージ18では、さらに歪点以下にまで冷却し、第3の冷却ステージ19では、成形型が酸化されない200℃以下の温度にまで冷却すればよい。
ここで、第3の冷却ステージは、用いるプレートを、他のステージにおけるヒータの代わりに冷却水を循環させる配管19aを設けた水冷プレートとすると、効率的に冷却できる。
この光学素子の成形装置11において、そのプレート間の温度差が大きくなると、隣接するプレートから受ける影響が大きくなり、光学素子の一部の冷却が遅くなってしまう場合がある。このように冷却が不均一になると、その冷却速度の差から光学素子内部に歪が生じたり、離型がうまくできなくなったりして、得られる光学素子の特性に悪影響を及ぼす。特に、第2の冷却プレート18bでは、隣接する第3の冷却プレート19bが水冷の場合は影響が大きい。また、第1の冷却プレート17bも、プレスプレート16bが高温であるため光学素子の形状精度に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、本発明においては、冷却ステージを複数設けた場合には、そのうち少なくとも1つの冷却ステージにおいて、冷却プレートの成形型搭載面を上記説明した凹凸形状を設けていればよいが、特に、隣接するステージとの温度差が大きい冷却ステージに設けることが好ましく、全ての冷却ステージに設けることがより好ましい。
上記のように冷却して得られた光学素子は、その後、光学素子形状とするために、余肉部を芯取り加工して光学素子形状としたり、アニール工程に付して歪みを除去したりする等の後処理を施して最終的な製品とされる。
なお、上記のように得られる光学素子(芯取り前の成形品)の大きさは、最終製品(芯取り後の成形品)の径に対して2mm〜5mm大きい径(余肉部が2mm〜5mm)とし、被搭載面の径よりは4mm〜15mm小さい径とするのが好ましい。この好ましい範囲を外れる場合には、成形する光学素子の大きさを考慮して適宜条件を変更できる。
このように、成形型搭載面として特定の表面状態である冷却プレートを設けることで、隣接するプレート温度や周囲の環境に影響されて生じる温度差を小さく均一化でき、プレート内での温度分布を改善できる。本実施形態では、中央領域と周辺領域における熱伝達量をそれぞれ調節しているため、特に、最終製品の光学素子の径が30mm以上となるような大径の場合にも安定した形状の光学素子を製造できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
この実施形態は、第1の実施形態において、冷却プレートの成形型搭載面に凹凸形状を設けていない、従来広く使用されているタイプの光学素子の成形装置を使用し、成形型としては以下に説明する形状の成形型とする点に特徴を有する。
次に、第2の実施形態について説明する。
この実施形態は、第1の実施形態において、冷却プレートの成形型搭載面に凹凸形状を設けていない、従来広く使用されているタイプの光学素子の成形装置を使用し、成形型としては以下に説明する形状の成形型とする点に特徴を有する。
すなわち、光学素子の成形装置としては、上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置を使用する。その基本構成は、図1や図4に示した光学素子の成形装置と同様であり、冷却プレート5b(17b〜19b)の成形型搭載面に凹凸形状が設けられておらず、平坦で滑らかな平面である点のみ異なる従来公知の装置である。
そして、この第2の実施形態で使用する成形型は、基本的には従来使用される成形型と基本構造は同じである。すなわち、上型、下型及び胴型を有してなり、唯一特徴的な形状として、成形型の冷却プレートへの被搭載面において、前記冷却プレートとの接触面積を低減するための凹凸形状を設けて、成形型と冷却プレート間の接触面積を所定の条件で低減させた成形型である。
すなわち、第1の実施形態は、従来の光学素子の成形において、成形装置の冷却プレートを加工したものであるが、本実施形態は、従来の光学素子の成形において、成形型を加工したものである。いずれも、成形型と冷却プレートの接触状態を調整して、冷却プレート上の成形型の被搭載面に対応する円形状の搭載領域を、該搭載領域の1/2の半径である同心円を境界として、その内側の中心領域と外側の周辺領域とに分けたとき、中心領域における成形型の被搭載面との接触割合RAと、周辺領域における成形型の被搭載面との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすものであり、同一の技術思想に基づいてなされている。第1の実施形態と同様に、このRA/(RA+RB)は、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。上記式(1)の関係は、2つある搭載領域Pの内少なくとも1つを満たせばよく、下型を含むことが好ましく、上下型両方共満たすことがより好ましい。その他、第1の実施形態で説明した関係は、全てこの第2の実施形態においても適用される。
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすものであり、同一の技術思想に基づいてなされている。第1の実施形態と同様に、このRA/(RA+RB)は、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。上記式(1)の関係は、2つある搭載領域Pの内少なくとも1つを満たせばよく、下型を含むことが好ましく、上下型両方共満たすことがより好ましい。その他、第1の実施形態で説明した関係は、全てこの第2の実施形態においても適用される。
なお、成形型の被搭載面、冷却プレートの成形型搭載面の両面に加工を施して、接触割合を上記の所定の範囲とする態様も可能である。
以下、本発明を実施例(例1〜3)及び比較例(例4)によりさらに詳細に説明する。
(例1〜3)
図4の光学素子の成形装置11と同じ構造の成形装置を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子の成形装置は、加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートとして、ステンレス製の100mm×78mm×18mmの直方体で内部に500Wのカートリッジヒータを3本有するプレートを用い、断熱板として、SUS304製の100mm×78mm×9mmの板状体とジルコニア製の100mm×78mm×9mmの板状体を重ね合わせたものを用い、各プレートの成形型の搭載面表面には(不図示の)均熱板としてタングステンカーバイドからなる超硬合金製の109mm×102mm×10mmの板を設けた。
また、上側のプレートを上下移動させるシリンダーは、エアシリンダーを用い、シャフト径40mmのシャフトが上側のプレートと接続、固定されている。チャンバーはSS400製の484mm×770mm×270mmの箱状で、このチャンバーの下板としては484mm×770mm×40mmのものを用いた。
(例1〜3)
図4の光学素子の成形装置11と同じ構造の成形装置を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子の成形装置は、加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートとして、ステンレス製の100mm×78mm×18mmの直方体で内部に500Wのカートリッジヒータを3本有するプレートを用い、断熱板として、SUS304製の100mm×78mm×9mmの板状体とジルコニア製の100mm×78mm×9mmの板状体を重ね合わせたものを用い、各プレートの成形型の搭載面表面には(不図示の)均熱板としてタングステンカーバイドからなる超硬合金製の109mm×102mm×10mmの板を設けた。
また、上側のプレートを上下移動させるシリンダーは、エアシリンダーを用い、シャフト径40mmのシャフトが上側のプレートと接続、固定されている。チャンバーはSS400製の484mm×770mm×270mmの箱状で、このチャンバーの下板としては484mm×770mm×40mmのものを用いた。
第1〜第3の冷却プレートには、成形型の搭載面として、例1においては全て図3Aの形状に研削加工した均熱板、例2においては全て図3Bの形状に研削加工した均熱板、例3においては全て図3Cの形状に研削加工した均熱板、を、上側の冷却プレートおよび下側の冷却プレート、それぞれに用いた。なお、研削加工における溝(凹部)の深さは約5mmとした。
また、成形型50は、上型、下型並びに内胴及び外胴を有する胴型で構成され、上型、下型及び内胴はタングステンカーバイドからなる超硬合金製で、外胴はSUSからなり、プレス成形により、直径φ45mm、中心厚さ6.2mm、周辺厚さ3.3mm、非球面の近似曲率半径が上型で成形される面が凹の100mm、下型で成形される面が凸の31mmの凸メニスカス形状の成形品が得られ、後加工の芯取り加工をして直径40mmの光学素子が得られるものを用いた。ここで、成形型の被搭載面は、上型の上面及び下型の底面は、それぞれ直径53mmの円形であった。
また、成形型50は、上型、下型並びに内胴及び外胴を有する胴型で構成され、上型、下型及び内胴はタングステンカーバイドからなる超硬合金製で、外胴はSUSからなり、プレス成形により、直径φ45mm、中心厚さ6.2mm、周辺厚さ3.3mm、非球面の近似曲率半径が上型で成形される面が凹の100mm、下型で成形される面が凸の31mmの凸メニスカス形状の成形品が得られ、後加工の芯取り加工をして直径40mmの光学素子が得られるものを用いた。ここで、成形型の被搭載面は、上型の上面及び下型の底面は、それぞれ直径53mmの円形であった。
まず、上記した成形型50の下型の成形面にホウケイ酸ガラスからなる研削研磨により作製した直径φ40mm、中心厚み10mm、曲率半径が上型で成形される面が凸の200mm、下型で成形される面が凸の側28mmの両凸球面レンズの光学素材を載置した。なお、この光学素材の歪点は467℃、ガラス転移点(Tg)は506℃、屈伏点(At)は538℃である。
光学素材を収容した成形型を、搬送手段により第1の加熱プレート上に搬送し載置すると同時に上側の第1の加熱プレートを下降させて上型に接触させ、成形型及び光学素材を240秒間加熱し、次いで、第2の加熱プレート上に搬送し載置すると同時に上側の第2の加熱プレートを下降させて上型に接触させ、成形型及び光学素材を240秒間加熱し、さらに、第3の加熱プレート上に搬送し載置すると同時に上側の第3の加熱プレートを下降させて上型に接触させ、成形型及び光学素材を240秒間加熱した。十分に加熱したところで、成形型をプレスプレート上に搬送し載置すると同時に上型のプレスプレートを下降させて上型に接触させ、成形型及び光学素材を加熱して光学素材を軟化状態としつつプレス成形した。この成形時のプレス圧力は10N/mm2、プレス時間は240秒とした。なお、第1の加熱プレートは400℃、第2の加熱プレートは540℃、第3の加熱プレートは580℃、プレスプレートは580℃に設定した。
プレス後、成形型を第1の冷却プレート上に搬送し載置すると同時に上側の冷却プレートを下降させて上型に接触させ、240秒間冷却し、次いで、成形型を第2の冷却プレート上に搬送し裁置すると同時に上側の第2の冷却プレートを下降させて上型に接触させ、240秒間冷却し、さらに、成形型を第3の冷却プレート上に搬送し載置すると同時に上側の第3の冷却プレートを下降させて上型に接触させ、240秒間冷却した。このとき、第1の冷却プレートは530℃、第2の冷却プレートは500℃、第3の冷却プレートは20℃(冷却水温度)に設定した。
光学素材を室温になるまで冷却し、十分に冷却したところで、成形型から取り出し、光学素子を得た。
(例4)
第1〜第3の冷却プレートにおいて、成形型搭載面を研削加工していない光学素子の成形装置を用いた以外は例1〜3と同一の操作により光学素子を得た。
第1〜第3の冷却プレートにおいて、成形型搭載面を研削加工していない光学素子の成形装置を用いた以外は例1〜3と同一の操作により光学素子を得た。
なお、例1〜4の各冷却プレートの搭載面において、搭載領域Pの面積SP、中心領域Aの面積、周辺領域Bの面積、中心領域Aにおける冷却プレートと成形型との接触面積SA、周辺領域Bにおける冷却プレートと成形型との接触面積SB、中心領域Aにおける接触割合RA、周辺領域Bにおける接触割合RB、の各数値を表1に示した。なお、面積の単位はmm2とした。
(試験例)
図5及び図6に例1〜例4の成形型温度の実測データを示した。なお、図5は搬送方向における下型の成形面近傍の温度データであり、図6は搬送方向と垂直方向における下型の成形面近傍の温度データである。図5及び図6は、横軸を光学素子の光軸を原点とし、光軸からの水平距離(mm)、縦軸を温度(℃)として表したものである。
図5及び図6に例1〜例4の成形型温度の実測データを示した。なお、図5は搬送方向における下型の成形面近傍の温度データであり、図6は搬送方向と垂直方向における下型の成形面近傍の温度データである。図5及び図6は、横軸を光学素子の光軸を原点とし、光軸からの水平距離(mm)、縦軸を温度(℃)として表したものである。
図5及び図6から、接触面積がより低減したタイプの例が成形型温度の温度分布が改善され、方向による偏りも低下するのに対して、従来のフラットタイプでは、温度分布が顕著に生じ、偏りも大きいことがわかる。
なお、上記実測データは、下型の底面から成形面の中心(光軸)及び成形面において光軸を中心にφ20mmの円周上付近に穴をあけ、熱電対を差し込んで成形面の近傍に配置し、測定した。熱電対の線はチャンバーの外に引出しておき、成形型セットの移動の妨げにならないようにした。
本発明を用いていない、例4では、温度分布が悪いため、成形レンズの非対称性(アス)がニュートン5本から10本あり、カメラやプロジェクターには使用できないレベルだった。
温度分布が改善された例1ではアスがニュートン2本から3本に改善し、カメラには使用できないレベルであるが、プロジェクター用途には使用できるレベルになった。
更に温度分布が改善された例2では、アスがニュートン0.5本から1本まで改善し、通常のカメラ用途の規格を満たすレベルになった。
例3では、アスが0本から0.5本となり、一眼レフカメラ用途の規格を満たすことができた。
なお、上記実測データは、下型の底面から成形面の中心(光軸)及び成形面において光軸を中心にφ20mmの円周上付近に穴をあけ、熱電対を差し込んで成形面の近傍に配置し、測定した。熱電対の線はチャンバーの外に引出しておき、成形型セットの移動の妨げにならないようにした。
本発明を用いていない、例4では、温度分布が悪いため、成形レンズの非対称性(アス)がニュートン5本から10本あり、カメラやプロジェクターには使用できないレベルだった。
温度分布が改善された例1ではアスがニュートン2本から3本に改善し、カメラには使用できないレベルであるが、プロジェクター用途には使用できるレベルになった。
更に温度分布が改善された例2では、アスがニュートン0.5本から1本まで改善し、通常のカメラ用途の規格を満たすレベルになった。
例3では、アスが0本から0.5本となり、一眼レフカメラ用途の規格を満たすことができた。
以上に示したように、本発明の光学素子の成形装置、成形型及び成形方法により、光学素子の製造における成形型の温度分布を改善して光学素子形状を安定化し、歩留まりを向上できる。
本発明の光学素子の成形装置は、成形型を順次移動させながらプレス成形により連続的に光学素子を製造する際に用いられる。
1…光学素子の成形装置、2…チャンバー、3…加熱ステージ、4…プレスステージ、5…冷却ステージ、6…取入れシャッター、7…取出しシャッター、8,9…成形型載置台、50…成形型、3a,4a,5a…ヒータ、3b…加熱プレート、4b…プレスプレート、5b…冷却プレート、3c,4c,5c…断熱板、3d,4d,5d…シャフト、A…中心領域、B…周辺領域、P…搭載領域
Claims (10)
- 上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置であって、
前記加熱、プレス及び冷却の各ステージにおいて前記成形型を搭載し、搭載された前記成形型に対して、それぞれ加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートの複数組のプレートと、前記各組における一対のプレートを接近又は離間させて前記加熱、プレス及び冷却のプロセスを行わせる駆動手段と、前記各プロセス及び前記成形型の搬送を制御する制御手段と、を備えるとともに、
前記冷却プレートの前記成形型の搭載面において、搭載される前記成形型の被搭載面に対応する円形状の搭載領域を、該搭載領域の1/2の半径である同心円を境界として、その内側の中心領域と外側の周辺領域とに分けたとき、前記中心領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RAと、前記周辺領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする光学素子の成形装置。 - 前記RBは、40%以下である請求項1記載の光学素子の成形装置。
- 前記中心領域における前記成形型との接触面積SA、前記周辺領域における前記成形型との接触面積SB及び前記搭載領域の面積SPが、次の式(2)
0.5 ≧ (SA+SB)/SP …(2)
を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子の成形装置。 - 前記冷却プレートの搭載面には、前記接触割合RA及びRBが所定の範囲となるように凹凸形状が形成され、該凹凸形状は前記搭載領域の中心を対称点として点対称である請求項1〜3のいずれか1項記載の光学素子の成形装置。
- 上型、下型及び胴型を有し、加熱、プレス及び冷却の各プロセスを行う上下一対の加熱プレート、プレスプレート及び冷却プレートの複数組のプレート上に順次搬送して搭載され、各処理を施されて光学素子を成形する光学素子用の成形型であって、
前記成形型の被搭載面において、前記冷却プレート上の前記被搭載面に対応する円形状の搭載領域を、該搭載領域の1/2の半径である同心円を境界として、その内側の中心領域と外側の周辺領域とに分けたとき、前記中心領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RAと、前記周辺領域における前記成形型の被搭載面との接触割合RBと、が次の式(1)
1.0 > RA/(RA+RB) ≧ 0.7 …(1)
を満たすことを特徴とする光学素子用の成形型。 - 前記RBは、40%以下である請求項5記載の光学素子用の成形型。
- 前記中心領域における前記冷却プレートとの接触面積SA、前記周辺領域における前記冷却プレートとの接触面積SB及び前記被搭載面に対応する円形状の搭載領域の面積SPが、次の式(2)
0.5 ≧ (SA+SB)/SP …(2)
を満たすことを特徴とする請求項5又は6記載の光学素子用の成形型。 - 前記接触割合RA及びRBが所定の範囲となるように、前記被搭載面に凹凸形状が形成され、該凹凸形状は前記被搭載面の中心を対称点として点対称である請求項5〜7のいずれか1項記載の光学素子用の成形型。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の光学素子の成形装置を使用し、成形型に光学素材を収容した後、前記成形型を加熱して成形型内の光学素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素材を、プレス手段を用いて前記成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素材を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする光学素子の成形方法。
- 上型と下型の間に光学素材が置かれた成形型を、チャンバー内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送して光学素子を成形する光学素子の成形装置を使用する光学素子の成形方法であって、
請求項5〜8のいずれか1項記載の成形型に光学素材を収容した後、前記成形型を加熱して成形型内の光学素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素材を、プレス手段を用いて前記成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素材を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする光学素子の成形方法。
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