JP2015096456A - 放熱部材およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材として好適に用いられ、特にプリント配線板の絶縁層、熱インターフェース材及び自動車用両面放熱パワーモジュールに用いられる、熱伝導率及び強度に優れた放熱部材を提供することにある。
【解決手段】 窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30〜90体積%と樹脂70〜10体積%からなり、窒化ホウ素焼結体の気孔率が10〜70%、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上、粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI)が4.0以下であり、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子のI.O.P.による配向度が0.01〜0.05又は20〜100である樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05〜0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を用いた放熱部材に関するものである。
ハイブリット自動車等に使用されているパワーコントロールユニットでは、小型化と高出力化が要求されており、それらを実現するための方法として両面放熱パワーモジュールが提案されている。
両面放熱パワーモジュールでは、パワー素子から発生した熱を放熱板、セラミックス絶縁板を経由し、水冷された冷却板に伝えることで放熱が行われる。ここで、セラミックス絶縁板としては、窒化アルミニウム焼結体や窒化珪素焼結体が使われているが、これらセラミックス焼結体は、熱伝導率は高いが表面が硬質であるため、冷却板との間にミクロ的な空間が存在し界面熱抵抗が高くなる。熱抵抗を低減するため、放熱グリース等の軟質なスペーサーを介して冷却板と密着させる必要があった。しかし、放熱グリースは熱伝導率が低いため、実装時における熱伝導率の低下を招き、また、グリースを均質に塗布する必要性やべたつく為にハンドリング性が悪いなどの問題があった。
以上のような背景により、(1)高熱伝導率、(2)高絶縁性等、電気絶縁材料として優れた性質を有している六方晶窒化ホウ素(hexagonal Boron Nitride)粉末が注目されている。しかし、窒化ホウ素は、面内方向(a軸方向)の熱伝導率が100W/(m・K)であるのに対して、厚み方向(c軸方向)の熱伝導率が2W/(m・K)であり、結晶構造と鱗片形状に由来する熱伝導率の異方性が大きい。そのため、例えば、熱インターフェース材の製造時に、窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)と熱インターフェース材の厚み方向が垂直になり、窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)の高熱伝導率を十分に活かすことができなかった。一方、窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)と熱インターフェース材の厚み方向と平行にすることで、窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)の高熱伝導率を達成できるが、厚み方向に対する応力に弱いという欠点が挙げられる。
特許文献1ではセラミックスや金属などの高剛性粒子が体積割合において4〜9割であり、且つ3次元的に互いに接触した樹脂複合材およびその製造方法が開示されている。そして、ワイヤーソーローラーに代表される摺動部材や歯車などの機械部品において好適に用いることができることが記載されている。
また、特許文献2では少なくともフォルステライト及び窒化ホウ素を主成分として含み、窒化ホウ素が一方向に配向している焼結体であるセラミックス部材、セラミックス部材を用いて形成されるプローブホルダ、及びセラミックス部材の製造方法が開示されている。そして、半導体検査や液晶検査に用いられるマイクロコンタクタにおいて、検査対象の回路構造と検査用の信号を送出する回路構造とを電気的に接続するプローブを挿入するプローブホルダの材料として好適に用いることができることが記載されている。
特許文献3では、形状または熱伝導率の異方性の大きい充填材を、熱硬化性樹脂材料に混合して分散させ、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、硬化した熱硬化性樹脂を粉砕し、充填材の分散した熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂と混合して成形体用樹脂組成物とし、該樹脂組成物を加熱して軟化させ所望の形状に成形する方法が開示されている。
特許文献4、5では、窒化アルミ−窒化硼素複合体(AlN−BN)、アルミナ−窒化硼素複合体(Al−BN)、酸化ジルコン−窒化硼素複合体(ZrO−BN)、窒化珪素−窒化硼素複合体(Si−BN)、六方晶窒化硼素(h−BN)、β−ウォラストナイト(β−CaSiO)、雲母およびシラスからなる群から選択されたもの無機連続気孔体に熱硬化性樹脂(II)を含浸し、硬化させた板状体とすることを特徴とするプリント配線用基板の製造法が開示されている。そして、高周波用や半導体チップの直接搭載用などとして好適に用いることができることが記載されている。
特許文献6では、多孔質ポリイミドシートを出発原料として合成された三次元骨格構造を持ち、グラファイト構造を持つB−C−N系の多孔体と、その気孔部に樹脂を含浸して複合材料とした放熱材料について開示されている。通常の炭素多孔体に樹脂を含浸させたものよりも熱抵抗が小さく、多孔体をh−BNに転化させることで絶縁性の複合材料となり、熱抵抗が小さく絶縁性が必要とされる電子部品の冷却用材料として有望であることが記載されている。
特開2002−212309号公報 特開2010−275149号公報 特開2008−248048号公報 特開平5−291706号公報 特開平6−152086号公報 特開2010−153538号公報
しかしながら、特許文献1の方法ではセラミックスや金属などが3次元的に互いに接触させた成形物に対して、樹脂を含浸させることで耐摩耗性や電気絶縁性の向上を図っているが、熱伝導率の向上に関しては、十分ではなかった。
特許文献2では、少なくともフォルステライト及び窒化ホウ素を主成分として含み、窒化ホウ素が一方向に配向している焼結体であるセラミックス部材、セラミックス部材を用いて形成されるプローブホルダ、及びセラミックス部材の製造方法が提案され、快削性と共に、シリコンに近い熱膨張係数を有し、高い強度を備えたセラミックス部材が提案されているが、熱伝導率の向上に関しては、十分ではなかった。
特許文献3の方法では、熱伝導率は最高5.8W/(m・K)と低いことに加え、一旦作成した熱硬化性樹脂を粉砕し、再度混合・軟化させる過程を経るため、不純物の混入や樹脂の軟化状態の均一性に起因する信頼性の観点で課題があった。
特許文献4、5では、焼結体窒化ホウ素単体への樹脂含浸の記載はなく、熱伝導率は最高45W/(m・K)でありながら曲げ強度が28MPaと低く、高熱伝導率と高強度の実現が困難である。
特許文献6では、シートの厚みが100μm以下であり、樹脂の軟化状態の均一性や耐湿状態における窒化ホウ素に起因する信頼性の観点で課題があった。
従来技術の放熱部材は、窒化ホウ素等のセラミックス粉末と樹脂の混合工程、押し出し成形工程やコーティング工程、加熱プレス工程等を経て製造されているため、3次元的に窒化ホウ素を接触させた構造を有することが困難であるため、熱伝導率の向上には限界があった。また、球状粒子である酸化アルミニウム粉末や酸化ケイ素粉末等を用いた場合においても、これらセラミックス粉末は熱伝導率が20〜30W/mK程度と窒化ホウ素に比べて低いことに加え、粒子が硬質であるため装置や金型を摩耗させる問題があった。また、従来技術で製造される放熱部材では、熱伝導率を高めるために窒化ホウ素等のセラミックス粉末の充填量を60質量%程度まで増加させる必要があるが、本手法はコストの増大を招くため、放熱部材のコストと性能と両立することが困難であった。また、結晶粒子が三次元網目構造に結合しており、開気孔を有するセラミックスに樹脂を含浸した加工性、強度に優れる回路基板の製造方法は公知である。しかし、熱伝導率を寄与する場合には窒化ホウ素等を添加するとの記載はあるものの、高熱伝導と曲げ強さを実現することは困難であった。さらに、窒化アルミニウム焼結体や窒化珪素焼結体によるセラミックス焼結体は、熱伝導率は高いが表面が硬質であるため、冷却板との間にミクロ的な空間が存在し界面熱抵抗が高くなる。熱抵抗を低減するため、放熱グリース等の軟質なスペーサーを介して冷却板と密着させる必要があった。しかし、放熱グリースは熱伝導率が低いため、実装時における熱伝導率の低下を招き、また、グリースを均質に塗布する必要性やべたつく為にハンドリング性が悪いなどの問題があった。
これらの課題に対し、本発明では放熱性を重視したものであり、複合化により熱伝導率と強度を改善している。具体的には窒化ホウ素焼結体内部の空隙に樹脂を含浸し、板状に切り出して放熱部材を製造することで、配向を任意の方向に制御することが可能となり、熱伝導率に優れた任意の厚みの放熱部材を作製する事が容易となり、湿度や熱サイクルに対する高い信頼性が得られる放熱部材の作成が可能である。また、窒化ホウ素の充填量が比較的低い場合においても、3次元的に窒化ホウ素を接触させた構造を有する為に熱伝導率に優れた放熱部材を作成することが可能である。また、本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、モース硬度2と柔らかいセラミックスである窒化ホウ素と、樹脂から構成されているため、モース硬度9の窒化珪素等の硬いセラミックスに比べ界面熱抵抗を低減することが可能である。加えて、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体表面に、接着性を有する熱可塑性樹脂層を付与することにより結果的に熱抵抗を低減することができるため自動車用両面放熱パワーモジュールに好適である。また、グリースの代わりに放熱部材に熱可塑性樹脂層を付与することにより、常温時は軟化しないため付着物等を回避できるなどハンドリング性が向上し、割れやカケに対して優位に働き且つ、実装時においては上記熱可塑性樹脂層が軟化することにより界面抵抗が低減し低熱抵抗を実現することができる。また、グリースと比較してポンプアウトしないというメリットもある。しかし、このような観点に立った技術の提案は今まで見られない。
本発明は、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材として好適に用いられ、特にプリント配線板の絶縁層、熱インターフェース材及び自動車用両面放熱パワーモジュールに用いられる、熱抵抗及び強度に優れた放熱部材を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明においては、以下の手段を採用する。
(1)窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30〜90体積%と樹脂70〜10体積%からなり、窒化ホウ素焼結体の気孔率が10〜70%、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上、粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI、Graphitization Index)が4.0以下であり、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の下式のI.O.P.(The Index of Orientation Performance)による配向度が0.01〜0.05又は20〜100である樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05〜0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材。
I.O.P.は、窒化ホウ素焼結体の高さ方向に平行方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比、および上記焼結体の高さ方向に垂直方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比から下式で算出される。

I.O.P.=(I100/I002)par./(I100/I002)perp.

(2)樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の高さ方向から測定したショア硬度が25HS以下である前記(1)に記載の放熱部材。
(3)窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の100面(a軸)が配向し、その時の窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが3〜15MPa、熱伝導率が40〜110W/(m・K)である前記(1)又は(2)に記載の放熱部材。
(4)窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の002面(c軸)が配向し、その時の窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが10〜40MPa、熱伝導率が10〜40W/(m・K)以下である前記(1)又は(2)に記載の放熱部材。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の放熱部材を用いた放熱板。
(6)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の放熱部材を用いたパワーモジュール。
本発明により、熱抵抗及び強度に優れた放熱部材が得られるという効果を奏する。
本発明では、窒化ホウ素焼結体と樹脂からなる複合体を「樹脂含浸窒化ホウ素焼結体」、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の樹脂を灰化させて得た成形体を「窒化ホウ素成型体」と定義する。窒化ホウ素成形体は、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を大気中650〜1000℃で1hr焼成し、樹脂成分を灰化させることで得ることができる。また、一次粒子同士が焼結により結合した状態で2個以上集合した状態を「窒化ホウ素焼結体」と定義する。焼結による結合は、走査型電子顕微鏡(例えば「JSM−6010LA」(日本電子社製))を用いて、窒化ホウ素粒子の断面の一次粒子同士の結合部分を観察することにより評価することができる。観察の前処理として、窒化ホウ素粒子を樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。観察倍率は1500倍である。
本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を用いた放熱部材は、特定のI.O.P.(The Index of Orientation Performance)で表される配向度を有し、窒化ホウ素粒子の平均長径を制御した窒化ホウ素焼結体に、特定量の樹脂を含浸することにより、従来の技術では達成できなかった、熱抵抗及び強度に優れた放熱部材を得ることができるものである。
本発明の窒化ホウ素焼結体は、I.O.P.(The Index of Orientation Performance)で表される配向度が0.01〜0.05又は20〜100、粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI、Graphitization Index)が4.0以下、気孔率が10〜70%であり、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上の3次元に結合した組織を有する窒化ホウ素からなる。このように設計された窒化ホウ素焼結体はこれまで存在せず、高い熱伝導率と高強度を確保するために非常に重要な因子である。
さらに、本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体のショア硬度を25HS以下に制御することにより、靭性に優れ、荷重環境下においてもグリースを用いることなく、熱抵抗の低減を図ることができる。
従来技術との大きな違いとして、本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素粒子が焼結により3次元に結合した窒化ホウ素焼結体からなることである。3次元の結合はSEM等で観察されるような単なる接触ではなく、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の樹脂成分を灰化させて得た窒化ホウ素成型体の3点曲げ強さ及び熱伝導率を測定することにより評価することができる。窒化ホウ素粉末と樹脂とを混合して製造される従来の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素同士の3次元な結合力が弱いため樹脂成分の灰化後に残存した窒化ホウ素は、粉体化して形状を保つことができず、または形状を保った場合においても
3点曲げ強さ及び熱伝導率が要求特性を満たさない。
<平均長径>
窒化ホウ素焼結体中の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上である。10μmより小さいと窒化ホウ素焼結体の気孔径が小さくなり樹脂含浸が不完全状態となるために、窒化ホウ素焼結体自身の強度は向上するものの、樹脂による強度増加の効果が小さくなり、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体としての強度は低下する。また、鱗片状窒化ホウ素粒子同士の接触点数が増加し、結果として樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が低下する。平均長径の上限については特に制限はないが、鱗片状窒化ホウ素粒子の平均長径を50μm以上にすることは難しく、上限としては、50μm程度が実際的である。
<平均長径の定義・評価方法>
平均長径は、観察の前処理として、窒化ホウ素焼結体を樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。その後、走査型電子顕微鏡、例えば「JSM−6010LA」(日本電子社製)にてSEM像を撮影し、得られた断面の粒子像を画像解析ソフトウェア、例えば「A像くん」(旭化成エンジニアリング社製)に取り込み、測定することができる。この際の画像の倍率は100倍、画像解析の画素数は1510万画素であった。マニュアル測定で、得られた任意の粒子100個の長径を求めその平均値を平均長径とした。窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。
<気孔率及びその評価方法>
本発明の窒化ホウ素焼結体において、窒化ホウ素粒子が30〜90体積%からなる3次元に結合した組織を有することが樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の電気絶縁性及び熱伝導率の観点から望ましい。気孔率は10〜70%の範囲内であることが樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率を高める為に好ましい。窒化ホウ素焼結体の気孔率の測定は、窒化ホウ素焼結体の寸法と質量から求めたかさ密度(D)と窒化ホウ素の理論密度(2.28g/cm)から、下式により求めることができる。窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。

かさ密度(D)=質量/体積
窒化ホウ素焼結体の気孔率=1−(D/2.28)
<配向度>
本発明の窒化ホウ素焼結体において、I.O.P.(The Index of Orientation Performance)で表される配向度が0.01〜0.05又は20〜100である。I.O.P.が0.01〜0.05又は20〜100の範囲以外では、窒化ホウ素焼結体中の窒化ホウ素結晶が無配向状態にあり、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率の異方性が小さくなり、任意の方向に対して優位な熱伝導率を得ることが困難である。配向度は、原料であるアモルファス窒化ホウ素粉末及び六方晶窒化ホウ素粉末粒子の配合量によって制御することができる。
<配向度の定義及び評価方法>
窒化ホウ素結晶のI.O.P.は、窒化ホウ素焼結体の高さ方向に平行方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比、および上記窒化ホウ素焼結体の高さ方向に垂直方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比から、下式で算出される。

I.O.P.=(I100/I002)par./(I100/I002)perp.

I.O.P.=1の場合は、試料中の窒化ホウ素結晶の方向がランダムであることを意味する。I.O.P.が1より小さいということは、窒化ホウ素焼結体中の窒化ホウ素結晶の(100)面、すなわち窒化ホウ素結晶のa軸が、高さ方向と垂直に配向していることを意味し、I.O.P.が1を超えると、窒化ホウ素焼結体中の窒化ホウ素結晶の(100)面、すなわち窒化ホウ素結晶のa軸が、高さ方向と並行に配向していることを意味する。
I.O.P.の測定は、例えば、「D8ADVANCE Super Speed」(ブルカー・エイエックスエス社製)を用いて測定できる。測定は、X線源はCuKα線を用い、管電圧は45kV、管電流は360mAである。
窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。
<黒鉛化指数(GI)>
黒鉛化指数(GI:Graphitization Index)はX線回折図の(100)面、(101)面及び(102)面のピークの積分強度比、すなわち面積比で下式によって求めることができる{J.Thomas,et.al,J.Am.Chem.So
c.84,4619(1962)}。

GI=〔面積{(100)+(101)}〕/〔面積(102)〕

完全に結晶化したものでは、GIは1.60になるとされているが、高結晶性でかつ粒子が十分に成長した鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の場合、粒子が配向しやすいためGIはさらに小さくなる。すなわち、GIは鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の結晶性の指標であり、この値が小さいほど結晶性が高い。本発明の窒化ホウ素成形体においては、GIは4.0以下が好ましい。GIが4.0より大きいということは、窒化ホウ素一次粒子の結晶性が低いことを意味し、窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が低下する。GIは原料である六方晶窒化ホウ素粉末粒子の配合量及び焼成温度によって制御することができる。
<黒鉛化指数(GI)の評価方法>
GIの測定は、例えば、「D8ADVANCE Super Speed」(ブルカー・エイエックスエス社製)を用いて測定できる。測定の前処理として、窒化ホウ素焼結体をメノウ乳鉢により粉砕し、得られた窒化ホウ素粉末をプレス成型した。X線は、成型体の面内方向の平面の法線に対して、互いに対称となるように照射した。測定時は、X線源はCuKα線を用い、管電圧は45kV、管電流は360mAである。窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。
<曲げ強さ>
本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を構成する窒化ホウ素焼結体の強度は、三点曲げ強さを用いた。三点曲げ強さは3〜40MPaが好ましい。三点曲げ強さが3MPaより小さいと、窒化ホウ素粒子同士の3次元の結合面積が少なく、結果として樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が低下する。また、実装時の放熱材の破壊の原因となり、結果として電気絶縁性の低下、信頼性の低下を招く。一方40MPaより大きいと、窒化ホウ素粒子同士の結合面積が大きくなることを意味し、窒化ホウ素焼結体の空隙率が減少する。そのため、樹脂を窒化ホウ素焼結体の内部まで完全に含浸させることが困難となり、結果として樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の強度及び電気絶縁性が低下する。曲げ強さは窒化ホウ素焼結体を作製する際の焼成温度及び等方圧加圧する際の圧力によって調整することができる。
窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の100面(a軸)が配向した場合には、窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが3〜15MPaであることが、さらに好ましい。窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の002面(c軸)が配向した場合には、窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが10〜40MPaであることが、さらに好ましい。
<曲げ強さの評価方法>
窒化ホウ素焼結体の曲げ強さは、JIS−R1601に従って室温(25℃)条件下で測定した。機器はSHIMAZU社製「オートグラフAG2000D」を用いた。樹脂含浸窒化ホウ素焼結体、窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。
<熱伝導率評法>
窒化ホウ素焼結体、窒化ホウ素成形体及び樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率(H;W/(m・K))は、熱拡散率(A:m/sec)と密度(B:kg/m)、比熱容量(C:J/(kg・K))から、H=A×B×Cとして、算出した。熱拡散率は、測定用試料を幅10mm×長さ10mm×厚さ1.0mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(「LFA447NanoFlash」NETZSCH社製)を用いた。密度はアルキメデス法を用いて求めた。比熱容量は、DSC(「ThermoPlus Evo DSC8230」リガク社製)を用いて求
めた。
<ショア硬度及びその評価方法>
本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体のショア硬度が25HS以下であることが好ましい。ショア硬度が25HSの値を超えると、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体が脆くなり、放熱部材として実装した際に締め付け及び挟み込みの応力による割れの原因となる。また、柔軟性に欠けるため界面抵抗が大きくなり熱抵抗の増大を招く。ショア硬度の測定は、例えば、(島津製作所社製 D型)を用いて測定できる。窒化ホウ素焼結体、窒化ホウ素成形体も同様に測定を行った。
<熱抵抗及びその評価方法>
本発明の特徴は、荷重9.8kgf/cm3における熱抵抗が、0.25℃/W以下であることである。熱抵抗が0.25℃/Wを超えると、チップ温度の冷却が不十分となるため好ましくない。自動車用両面放熱パワーモジュールの放熱部材として用いる場合、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱抵抗は小さければ小さいほど好ましい。界面熱抵抗が大きいと、レーザーフラッシュ法等により算出した熱伝導率と実装時の熱抵抗に大きな乖離が生じ、実装時の熱伝導率の値が低くなる。更に、従来まで実装時は界面熱抵抗を緩和するために基板との界面に放熱グリースを塗布するが、放熱グリースの存在により熱伝導率の低減が懸念される。本発明では、放熱性に富んだ接着性を有する熱可塑性樹脂層を付与することにより、グレースレスを実現でき且つ熱可塑性樹脂層であるため、ハンドリング性にも長ける。
樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱抵抗測定は、ASTM−D5470に準拠して測定し、本測定の熱抵抗値はバルクの熱抵抗と接触面の界面熱抵抗を含んだ値となっている。試料サイズは10mm×10mm、厚さ0.3mmを用い、荷重は9.8kgf/cmの条件下で測定を行った。熱抵抗値は(T:℃/W)は、温度差(D:℃)と電力(E:W)から、T=D/Eとして、算出した。
<窒化ホウ素純度及びその評価方法>
更に、本発明の窒化ホウ素焼結体、窒化ホウ素成形体においては、その窒化ホウ素純度が95質量%以上であることが好ましい。窒化ホウ素純度は、窒化ホウ素粉末をアルカリ分解後ケルダール法による水蒸気蒸留を行い、留出液中の全窒素を中和適定することによって測定することができる。
<窒化ホウ素粉末の平均粒径の定義・評価方法>
窒化ホウ素焼結体の出発原料となる窒化ホウ素粉末の平均粒径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、累積粒度分布の累積値50%の粒径である。粒度分布測定機としては、例えば「MT3300EX」(日機装社製)にて測定することができる。測定に際しては、溶媒には水、分散剤としてはヘキサメタリン酸を用い、前処理として、30秒間、ホモジナイザーを用いて20Wの出力をかけて分散処理させた。水の屈折率には1.33、窒化ホウ素粉末の屈折率については1.80を用いた。一回当たりの測定時間
は30秒である。
<窒化ホウ素焼結体の焼結条件>
本発明の窒化ホウ素焼結体は、1600℃以上で1時間以上焼結させて製造することが好ましい。焼結を行わないと、気孔径が小さく、樹脂の含浸が困難となる。焼結温度が1600℃より低いと、窒化ホウ素の結晶性が十分向上せず、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が低下する恐れがある。焼結温度の上限については、特に制限はないが、経済性を考慮すると上限としては、2200℃程度が実際的である。また、焼結時間が1時間より小さいと、窒化ホウ素の結晶性が十分向上せず、窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が低下する恐れがある。焼結時間の上限については、特に制限はないが、経済性を考慮すると上限としては、30時間程度が実際的である。また、焼結は、窒化ホウ素焼結体の酸化を防止する目的で、窒素又はヘリウム又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
<窒化ホウ素焼結体製造時の昇温速度>
本発明の窒化ホウ素焼結体の焼結工程おいては、300〜600℃までの昇温速度を40℃/分以下とすることが好ましい。昇温速度が40℃/分より大きいと、有機バインダーの急激な分解により窒化ホウ素粒子の焼結性に分布が生じ、特性にバラつきが大きくなり信頼性が低下する恐れがある。昇温速度の上限については、特に制限はないが、経済性を考慮すると下限としては、5℃/分程度が実際的である。
<樹脂含浸窒化ホウ素焼結体>
本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体について説明する。本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素焼結体に樹脂を含浸し、硬化させ、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を得た後、マルチワイヤーソー等の装置を用い、任意の厚さに切り出した板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を用いることにより、好適に製造することができる。マルチワイヤーソー等の加工装置を用いることにより、任意の厚さに対して大量に切り出す事が可能となり、切削後の面粗度も良好な値を示す。また、切り出しの際、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の向きを変えることで任意の方向に対して優位な熱伝導率を有した板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を得ることも容易である。
<樹脂との複合>
次に、窒化ホウ素焼結体と樹脂との複合方法について説明する。本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素焼結体に樹脂を含浸し、硬化させることで好適に製造することができる。樹脂の含浸は、真空含浸、3〜300MPaでの加圧含浸、室温〜150℃までの加熱含浸又はそれらの組合せの含浸で行うことができる。真空含浸時の圧力は、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下が更に好ましい。加圧含浸では、圧力1MPa以下では窒化ホウ素焼結体の内部まで樹脂が十分含浸できず、300MPa以上では設備が大規模になるためコスト的に不利である。樹脂の粘度を低下させることで、窒化ホウ素焼結体の内部まで樹脂を含浸させることができるので、加圧時に30〜300℃に加熱して、樹脂の粘度を低下させることが更に好ましい。
<含浸用樹脂>
樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロ
ピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリフタルアミド、ポリアセタール等を用いることができる。特にエポキシ樹脂は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。また、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。これら樹脂、特に熱硬化性樹脂には適宜、硬化剤、無機フィラー、シランカップリング剤、さらには濡れ性やレベリング性の向上及び粘度低下を促進して加熱加圧成形時の欠陥の発生を低減する添加剤を含有することができる。この添加剤としては、例えば、消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤等がある。また、樹脂が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムの群から選ばれた1種又は2種以上のセラミックス粉末を含むと一層好ましい。窒化ホウ素粒子間に、セラミックス粒子を充填することができるので、結果として窒化ホウ素樹脂成形体の熱伝導率を向上させることができる。樹脂及びセラミックス粉末含有樹脂は、必要に応じて溶剤で希釈して使用しても良い。溶剤としては、例えば、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類、2−メトキシエタノール、1−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール及び2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びジイソブチルケトンケトン等のケトン類、トルエン及びキシレン等の炭化水素類が挙げられる。なお、これらの希釈剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
<熱可塑性樹脂層>
任意の方向に対して優位な熱伝導率を有した板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体に対して、可塑性を示す樹脂又は可塑性を示す樹脂と無機充填材を各種コーターやスクリーン印刷等の一般的な製膜装置を用いて塗布し、熱処理等を行って、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に熱可塑性樹脂層を設けることができる。また、熱可塑性樹脂層をシート成形した後、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の表面にシート成型した熱可塑性樹脂層を接着することで、熱可塑性樹脂層を設けることができる。場合によっては片側に放熱グリース等の軟質スペーサーを用いても良い。
可塑性を示す樹脂は、温度30〜120℃で軟化する有機成分を含有していることが好ましい。軟化温度が30℃未満では室温状態でも軟化しやすくなって取扱に支障を来し、一方120℃を超えて軟化させるためには非常に高温にする必要があり好ましくない。このような樹脂を例示すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンーαオレフィン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、その他常温では固体であり加熱により低粘度の流体になるもの、例えばマイクロクリスタリンワックス、モンタン酸ワックス、モンタン酸エステルワックス等のワックス類、また室温で固体であるパラフィンワックス等が挙げられる。これらの一種又は二種以上、またこれらに適宜流動パラフィンを加える。マトリックスをこのような有機成分で構成することにより、加熱時の流動性を極めて高くすることができ薄化が容易となるため、熱抵抗を減少させることができる。
また熱可塑性樹脂層においては、有機成分として上記のほかに、例えば粘着性を付与するための粘着剤や無機充填材分散性向上のための分散剤、界面活性剤、カップリング剤など、各種添加剤などを適宜用いても良い。
本発明に用いた熱可塑性樹脂層は各種コーターやスクリーン印刷等の一般的な製膜装置を用いる事で、厚さ0.05mm〜0.5mmにシート成形することによって製造することができる。厚さが0.5mmを超えると、低熱抵抗化が困難になる。また0.05mm未満では、発熱性電子部品の凹凸への追従が困難になるため、接触が不十分となり、熱抵抗が増加する。
無機充填材は、窒化アルミニウム粉、アルミナ粉、酸化亜鉛粉、金属アルミニウム粉から選ばれた一種又は二種以上の粉末を用いることが好ましい。酸化亜鉛粉、窒化アルミニウム粉、窒化アルミニウム粉を併用することが更に好ましい。これにより高熱伝導と高充填性、流動性を並立させることができる。またその他に、炭化ケイ素粉、窒化ケイ素粉、窒化ホウ素粉などから選ばれた一種又は二種以上の粉末を、さらに無機系充填材に含有しても良い。
無機充填材は、高熱伝導性を有するものが好ましく、その意味では各種金属粉やセラミックス粉が好ましいが、コストと熱伝導特性、安全性などを考慮すると、耐湿信頼性が高いアルミナ粉、酸化亜鉛粉が特に好ましく、熱伝導性の高い窒化アルミニウム粉が特に好ましい。それ以外の場合、例えば金属アルミニウム粉等の金属粉も使用できるが、その場合熱伝導率は高いものの、金属微粉となることから粉の活性が非常に高くなり、爆発の危険性が高くなるなど取り扱いが難しくなる。
以下、本発明を実施例、比較例をあげて更に具体的に説明する。
<窒化ホウ素焼結体の作製>
酸素含有量1.5%、窒化ホウ素純度97.6%、平均粒径6.0μmであるアモルファス窒化ホウ素粉末、酸素含有量0.3%、窒化ホウ素純度99.0%、平均粒径18.0μm又は30.0μmである六方晶窒化ホウ素粉末を、ヘンシェルミキサーを用いて混合粉を作製した。そして、この成形用の混合粉末を用いて、5MPaでブロック状にプレス成形した。得られたブロック成形体をバッチ式高周波炉にて窒素流量10L/minで焼結させることで窒化ホウ素焼結体を得た。一部の実験条件においては、焼結前のブロック成形体に対して、冷間等方圧加圧法(CIP)により10〜100MPaの間で加圧処理を行った。これらを表1の試験No.1-1からNo.1-10に示す。なお、No.1-4及びNo.1-10は冷間等方圧加圧法(CIP)の加圧処理を行わなかった。
<エポキシ樹脂の真空含浸>
得られた窒化ホウ素焼結体へ樹脂含浸を行った。窒化ホウ素焼結体及びエポキシ樹脂(「ボンドE205」コニシ社製)と付属の硬化剤の混合物を圧力100Paの真空中で10分間脱気した後、真空下で窒化ホウ素焼結体に注ぎ込み、20分間含浸した。その後、大気圧下で、温度150℃で60分間加熱して樹脂を硬化させ、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を得た。
<板状樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の作製>
得られた樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の放熱部材としての特性を評価するため、任意の形状にマルチワイヤーソー又はマシニングセンターを用い加工を行った。この際、厚さ方向に対して窒化ホウ素粒子の100面(a軸)もしくは002面(c軸)が配向するように切り出した。また、得られた樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を、空気中1000℃で1hr焼成し、樹脂成分を灰化させて窒化ホウ素成型体を得た。窒化ホウ素焼結体と樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の評価結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂層の作製>
樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の片側又は両側に、炭化水素系のコオリゴマーからなる熱可塑性樹脂(「PSX―Pm」Henkel社製)を、テーブルコータ(中外炉工業株式会社製)を用いて各種厚さで塗布し、60℃の熱処理を行うことで、片側又は両側に熱可塑性樹脂層を有する放熱部材を作製した。試験No.2-1は片側のみに熱可塑性樹脂を0.10mm厚さで塗布して、熱可塑性樹脂層を設けた。試験No.2-3〜2-10、2-12〜2-20は、両側に熱可塑性樹脂を各種厚さで塗布して、熱可塑性樹脂層を設けた。
また、試験No.2-2は、両側に塗布を行ったが、片側には熱可塑性樹脂を0.10mm厚さで塗布し、対となる反対側にはグリースを0.01mm厚さで塗布して、放熱部材を作製した。
比較のために、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体のみ(熱可塑性樹脂は未塗布)の放熱部材(試験No.2-11)も作製した。これらを表2の試験No.2-1からNo.2-20に示す。
本発明の窒化ホウ素焼結体と窒化ホウ素成型体は、窒化ホウ素粒子の平均長径、高さ方向に対する窒化ホウ素粒子の100面(a軸)又は002面(c軸)の配向、気孔率、I.O.P.、粉末X線回折法による黒鉛化指数、ショア硬度が同じであった。また、本発明の窒化ホウ素焼結体と窒化ホウ素成型体は、高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の100面(a軸)が配向した時の高さ方向より測定した曲げ強さ及び熱伝導率と、高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の002面(c軸)が配向した時の高さ方向より測定した
曲げ強さ及び熱伝導率が同じであった。
Figure 2015096456
Figure 2015096456
実施例と比較例の対比から明らかなように、本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05〜0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材は、熱伝導率が高くと曲げ強度が高く、優れた物性を示している。また、熱抵抗においても低熱抵抗を実現している。
本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05〜0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材は、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材として好適に用いることができる。特にプリント配線板の絶縁層及び熱インターフェース材及び自動車用両面放熱パワーモジュールに用いることができる。

Claims (6)

  1. 窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30〜90体積%と樹脂70〜10体積%からなり、窒化ホウ素焼結体の気孔率が10〜70%、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上、粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI、Graphitization Index)が4.0以下であり、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の下式のI.O.P.(The Index of Orientation Performance)による配向度が0.01〜0.05又は20〜100である樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05〜0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材。
    I.O.P.は、窒化ホウ素焼結体の高さ方向に平行方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比、および上記焼結体の高さ方向に垂直方向から測定した面のX線回析の(002)回析線と(100)回析線との強度比から下式で算出される。

    I.O.P.=(I100/I002)par./(I100/I002)perp.
  2. 樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の高さ方向から測定したショア硬度が25HS以下である請求項1に記載の放熱部材。
  3. 窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の100面(a軸)が配向し、その時の窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが3〜15MPa、熱伝導率が40〜110W/(m・K)である請求項1又は2に記載の放熱部材。
  4. 窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体の高さ方向に対して窒化ホウ素粒子の002面(c軸)が配向し、その時の窒化ホウ素焼結体の高さ方向より測定した曲げ強さが10〜40MPa、熱伝導率が10〜40W/(m・K)以下である請求項1又は2に記載の放熱部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の放熱部材を用いた放熱板。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の放熱部材を用いたパワーモジュール。
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