JP2015093318A - 溶接継手及び溶接部の疲労強度向上方法 - Google Patents

溶接継手及び溶接部の疲労強度向上方法 Download PDF

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Shigenobu Kainuma
重信 貝沼
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伸曉 八木
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Daisuke Uchida
大介 内田
陵介 木村
Ryosuke Kimura
陵介 木村
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Abstract

【課題】簡単、且つ、低コストで溶接部の溶接止端部における応力集中を低減して溶接部の疲労強度を高める方法を提供するとともに、疲労強度に対する信頼性の高い溶接部を備えた溶接継手を提供する。
【解決手段】第1部材に第2部材を溶接して形成した溶接継手であって、前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に、底部が切削加工によって形成された凹曲面である切削溝を有し、該切削溝は、当該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減するように形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、船舶や橋梁などの溶接構造物に用いられる溶接継手、及び、該溶接継手等の溶接部における疲労強度向上方法に関するものである。
船舶や橋梁などの大型溶接構造物は、ほとんどが厚板部材を溶接により接合することによって組み立てられている。しかしながら、溶接継手の形状や作用応力によっては疲労強度が問題となる場合がある。前記溶接継手の中でも、面外ガセット溶接継手は疲労強度が低く、疲労損傷が生じ易い。
ここで、前記溶接継手の溶接部には応力集中と引張残留応力が存在し、これらが疲労き裂発生の原因となる。特に、溶接止端部は形状的に応力が集中し易く、降伏点に近い引張残留応力が発生しているため、疲労き裂の起点となり易い。また、前記溶接止端部が応力集中部となると、繰り返し応力に溶接残留応力の影響が重畳して疲労き裂が発生する。
このような溶接止端部の応力集中を低減させ、疲労強度を向上させる方法が、種々の観点から提案されている。例えば、特許文献1においては、溶接止端部をグラインダーやロータリーカッタ等の研削工具で滑らかに研削加工することにより、止端部への応力集中を軽減し、疲労強度を向上させることが開示されている。また、特許文献2および特許文献3には、溶接止端部の溶接金属に、ハンマーや超音波等を用いて振動端子を打ち付けて、該溶接金属を塑性変形させるピーニング処理を施すことによって、該溶接止端部における溶接残留応力を緩和し、以って、当該溶接止端部の疲労強度を向上させることが開示されている。
ここで、特許文献1および特許文献2、特許文献3において、前記研削加工およびピーニング処理は、溶接止端部、すなわち、母材と溶接金属とが交わる部分に対して行われる。溶接部の前記溶接止端部の形状は、通常、不規則に少し波打つような形状であり、また、同じ形の溶接継手の同じ部分の溶接止端部であっても、溶接する度にその形状は異なる。そのため、当該溶接止端部に対して研削加工およびピーニング処理を行うことは煩雑であり、手間がかかる。すなわち、時間とコストがかかってしまう。
一方、特許文献4には、ハンマーを用いたピーニング処理を行うにあたり、溶接部の溶接止端部から離れた母材表面に対して垂直に加圧し、溶接部に新たな応力集中部となる変形を与えずに、前記溶接止端部に圧縮残留応力を導入することにより、溶接部の疲労強度を向上させることが開示されている。
この方法では、前記溶接部の溶接止端部から離れた母材表面に対してハンマーピーニングを行うので、該溶接止端部自体に対し、当該溶接止端部の形状に沿って正確にピーニング処理を行う必要はなくなる。
特開平5−69128号公報 特開2013−71140号公報 特開2006−175512号公報 特開2011−131260号公報
しかしながら、前記特許文献4に記載の方法によって溶接部の溶接止端部に導入された圧縮残留応力は、該溶接部に非常に大きな負荷がかかると抜けてしまう現象が起こることが知られている。前記導入された圧縮残留応力が抜けると、その溶接部の疲労強度は、母材を溶接しただけの初期の状態程度にまで低下する。そして、前記溶接部に負荷をかけない状態に戻しても、抜けた圧縮残留応力は回復しない。
船舶に用いる溶接継手の場合、嵐等により荒れた海では非常に強い力が溶接部にかかる場合があるため、溶接部への大きな負荷によって圧縮残留応力が抜ける現象が生じることは問題である。
上記問題に鑑み、本発明の目的は、簡単、且つ、低コストで溶接部の溶接止端部における応力集中を低減し、溶接部の疲労強度の高い溶接継手を提供することにある。また、溶接部に大きな負荷がかかる場合においても、疲労強度に対する信頼性の高い溶接継手を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る溶接継手は、第1部材に第2部材を溶接して形成した溶接継手であって、前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に、底部が切削加工によって形成された凹曲面である切削溝を有し、該切削溝は、当該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減するように形成されていることを特徴とするものである。
ここで、本発明において「溶接」とは、金属材料である第1部材と第2部材とを接合するにあたり、母材(第1部材および第2部材)自体を加熱して溶融させる、または、溶接棒等の溶加材を溶融させて前記母材と融合させることによって溶融金属とし、これを凝固させて溶接金属を形成して接合するものである。
溶接方法は、公知の方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、TIG、MIG、MAG等のアーク溶接や、レーザー溶接、レーザーアークハイブリッド溶接、レーザーホットワイヤすみ肉溶接などの方法を用いることができる。
本発明において、前記切削溝の底部の「凹曲面」は、当該切削溝の縦断面における底部の形状が、正円または楕円の一部を成すものに限るものではなく、曲率半径により近似される滑らかな曲線によって形成される場合を含む意味で用いている。
また、該切削溝の「底部」とは、当該切削溝の深さの1/2より深い部分を意味するものとする。
また、前記溶接部の溶接止端部と前記切削溝との「距離」は、前記溶接止端部と、切削溝における溶接止端部に近い側の長辺との間の距離を指すものとする[図3(A)、図3(B)および図4(B)におけるXを参照]。
前記従来技術(特許文献1、特許文献2、特許文献3)において、溶接部の溶接止端部の応力集中を低減させるために行われる研削加工およびピーニング処理は、母材と溶接金属とが交わる溶接止端部に対して行われる。しかし、前記溶接止端部は、通常、不規則に少し波打つような形状であるので、当該溶接止端部に対してピーニング処理を行うことは煩雑であり、手間がかかる。
本態様においては、第1部材に第2部材を溶接して形成した溶接継手の、前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に切削溝を形成する。本態様によれば、前記溶接止端部から離れた所定の範囲内に切削溝を設けるので、従来のように定められた位置(溶接止端部)に対して正確にピーニング処理を行う場合に比して、前記切削溝の形成は容易である。また、止端に沿わず一定形状で加工するため品質管理も容易である。
そして、前記溶接止端部から離れた所定の範囲内に前記切削溝を設けることによって、後述する実施例に示すように、当該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることができる。以って、前記溶接止端部における応力集中を低減することができる。
また、第1部材に対して第2部材を溶接した溶接継手の場合、前記第1部材における溶接部の周りには、該溶接による熱の影響を受けて金属組成が変化した溶接熱影響部が存在する。前記溶接熱影響は、溶接止端部の近傍が最も大きく、該溶接止端部から離れるほど少なくなる。
本態様によれば、溶接熱影響が最も大きい溶接止端部から離れた位置に切削溝を設けるので、前記溶接止端部よりも溶接熱影響が少ない部分を新たな応力集中部することができる。
加えて、本態様においては、特許文献4のように溶接部の溶接止端部に圧縮残留応力を導入して疲労強度を高めた場合に生じる、「溶接部に大きな負荷がかかることによって圧縮残留応力が抜けてしまう現象」に基づく疲労強度の低下の虞がないので、船舶に用いる溶接継手のように、溶接部に大きな負荷、例えば、嵐等により荒れた海において非常に強い力がかかることがある場合において、疲労強度に対する信頼性の高い溶接継手とすることができる。
本発明の第2の態様に係る溶接継手は、第1の態様において、前記切削溝は、前記溶接部の溶接止端部から0.5mm〜2mmの距離に形成されていることを特徴とするものである。
前述のように、前記切削溝は、当該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減するように形成されている。
しかしながら、前記切削溝が前記溶接部の溶接止端部から離れすぎると、該切削溝の底部が新たな応力集中部になることに基づく、前記溶接止端部における応力集中の低減効果は低くなる。
本態様によれば、前記切削溝が、前記溶接部の溶接止端部から0.5mm〜2mmの距離に形成されていることによって、該切削溝の底部が新たな応力集中部になることに基づく、前記溶接止端部における応力集中の低減効果を確実に得ることができる。
本発明の第3の態様に係る溶接継手は、第1の態様または第2の態様において、前記切削溝の深さが0.5mm〜4mmであり、該切削溝の底部の形状は、当該切削溝の縦断面が、曲率半径1mm〜4mmの曲線によって形成された凹曲面であることを特徴とするものである。
本態様によれば、前記切削溝の底部に効果的に応力を集中させるとともに、前記溶接止端部における応力集中を低減し、以って、前記溶接継手の溶接部の疲労強度を確実に高めることができる。
本発明の第4の態様に係る溶接継手は、第3態様において、前記切削溝において、前記溝の深さの値が前記曲率半径の値以上に設定されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、前記切削溝の深さの値が前記曲率半径の値以上に設定されていることにより、更に、前記溶接止端部における応力集中を効果的に低減させ、前記溶接継手の溶接部の疲労強度を高めることができる。
本発明の第5の態様に係る溶接継手は、第1の態様から第4の態様のいずれかにおいて、該溶接継手は、第1部材である主板に対して第2部材である付加板を溶接した面外ガセット溶接継手であり、前記切削溝は、少なくとも、前記付加板の短手方向の辺に対する溶接部の溶接止端部における応力集中を低減するように設けられていることを特徴とするものである。
図2(A)および図2(B)に示すように、第1部材である主板2に対して第2部材である付加板3、3’を溶接した面外ガセット溶接継手10は、その形状のため、溶接継手の中でも特に疲労強度が低く、疲労損傷が生じ易い。特に、角回し溶接部と呼ばれる、前記付加板3の短手方向(符号12の矢印方向)の辺に対する溶接部11の溶接止端部に対する応力集中が大きく、前記短手方向の辺に対する中心線8上にある溶接止端部[図2(A)の符号6の部分]の部分が疲労き裂の起点となり易い。
具体的には、符号6の部分を起点として疲労き裂が生じ、該き裂は溶接止端部5に沿って両側に進行する。そして、該き裂が前記付加板3の前記短手方向の辺の延長線4上にある溶接止端部[図2(A)の符号9の部分]の近傍にまで達すると、当該き裂は前記付加板3から離れるように主板2側に延びるように進行する場合が多い。尚、主板2側に延びるき裂7は、必ずしも前記付加板3の短手方向の辺の延長線4上に沿って生じるものではない。
本態様によれば、前記切削溝を、面外ガセット溶接継手の溶接部の疲労き裂の起点となり易い部分、すなわち、前記付加板の短手方向の辺に対する溶接部の溶接止端部における応力集中を低減するように設けるので、疲労き裂の起点となり易い溶接止端部における応力集中を効果的に低減し、以って、溶接部の疲労強度の高い面外ガセット溶接継手とすることができる。
本発明の第6の態様に係る溶接部の疲労強度向上方法は、第1部材に対して第2部材を溶接した溶接部の疲労強度向上方法であって、前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に、切削加工によって、底部が凹曲面である切削溝を形成し、該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減することを特徴とするものである。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果を奏し、簡単、且つ、低コストで溶接部の溶接止端部における応力集中を低減し、前記溶接部の疲労強度の高めることができる。
また、溶接部に大きな負荷がかかる場合においても、疲労強度に対する信頼性の高い溶接部とすることができる。
実施例1に係る面外ガセット溶接継手の一例を示す概略構成図。 主板と付加板を溶接しただけで疲労強度向上対策を行っていない面外ガセット溶接継手において生じる疲労き裂について説明する図であり、(A)は疲労き裂が生じていない状態を示す図、(B)は疲労き裂が発生した状態を示す図である。 図1に示した面外ガセット溶接継手の要部平面図であり、(A)は付加板の短手方向に対する溶接止端部の形状がほぼ直線である場合、(B)は同溶接止端部の形状が波打っている場合である。 実施例1に係る面外ガセット溶接継手において生じる疲労き裂について説明する図であり、(A)は図2(A)に示した面外ガセット溶接継手におけるY−Y断面の要部拡大図、(B)は図1に示した面外ガセット溶接継手におけるX−X断面の要部拡大図である。 切削溝の深さdと該切削溝の底部の曲率半径rとの関係について説明する図であり、(A)は深さd>曲率半径rの場合であり、(B)は深さd<曲率半径rの場合である。 切削溝の形状の他の例について説明する図であり、(A)は直線状の切削溝を組み合わせて溶接止端部を囲うように形成した切削溝、(B)は円弧状の切削溝によって溶接止端部を囲うように形成した切削溝、(C)は直線状の切削溝と円弧状の切削溝を組み合わせて溶接止端部を囲うように形成した切削溝である。 本発明に係る面外ガセット溶接継手の線形応力解析における試験体の概略図であり、(A)は上面図、(B)は側面図である。 図7に示す試験体の1/8モデルの斜視図である。 図7に示す試験体に対して切削溝を設けたときの溶接止端部近傍のZ−Z断面図である。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
[実施例1]
図1は、実施例1に係る面外ガセット溶接継手の一例を示す概略構成図である。本実施例に係る面外ガセット溶接継手1は、第1部材である主板2に対して、第2部材である付加板3および付加板3’が隅肉溶接されて作られている。前記付加板3は、図1における主板2の上面側に溶接されており、前記付加板3’は、該主板2の下面側の、前記上面側において付加板3が溶接された位置と同じ位置に溶接されている。
前記主板2および付加板3、3’に使用される材料としては、一般的な鋼材を用いることができる。前記主板2の板厚は、該面外ガセット溶接継手が用いられる条件により設定される。
前記主板2への付加板3および付加板3’の溶接は、例えば、TIG、MIG、MAG等のアーク溶接や、レーザー溶接、レーザーアークハイブリッド溶接、レーザーホットワイヤすみ肉溶接などの公知の方法によって行われる。
符号11は溶接部であり、主板2と溶接部11とが交わる部分である符号5を溶接止端部と称する。
図3(A)は、図1に示した面外ガセット溶接継手の要部平面図である。
本実施例に係る面外ガセット溶接継手1は、図3(A)に示すように、主板2における前記溶接部11の溶接止端部5から所定の範囲内の距離Xで離れた位置に、底部が切削加工によって形成された凹曲面である切削溝20を有する点が特徴である。本実施例では、前記切削溝20は、前記付加板3の短手方向(図1における符号12の矢印方向)の辺(以下、付加板3の短辺と称する場合がある)の溶接止端部5に対して、ほぼ平行な直線状の溝として設けられている。尚、符号13は長手方向を示す。
尚、図3(A)は、付加板の短手方向に対する溶接止端部の形状がほぼ直線である場合を示している。このとき、溶接止端部5からの距離Xは、付加板3の短手方向の辺に対する溶接止端部5の中心(符号6の部分)と、切削溝20における溶接止端部5に近い側の長辺21との間の距離を指すものとする。
また、前記付加板3の長手方向13から短手方向12の辺に回りこむ溶接は、角回し溶接と呼ばれ、該角回し溶接の溶接止端部5の形状は、図3(B)のように波打ったように形成される場合も多い。この場合には、溶接止端部5における付加板3から一番離れた部分(符号22)と切削溝20における溶接止端部5に近い側の長辺23との間の距離をXとする。
図4(A)は図2(A)に示した面外ガセット溶接継手、すなわち、従来の面外ガセット溶接継手におけるY−Y断面の要部拡大図、図4(B)は図1に示した面外ガセット溶接継手、すなわち、本実施例に係る面外ガセット溶接継手におけるX−X断面の要部拡大図である。
前記底部が凹曲面である切削溝20は、図4(B)に示すように、前記図1におけるX−X断面が凹曲線となるような溝である。前記切削溝20を形成するための切削加工としては、グラインダー処理、ボールエンドミル切削等が挙げられる。
ここで、図1または図2に示すような面外ガセット溶接継手における疲労荷重付加方向は、付加板3の長手方向13である。そして、前記切削溝20の無い従来の面外ガセット溶接継手[図2、および図4(A)を参照]では、前記短手方向12の辺に対する中心線8上にある符号6に示す部分の溶接止端部5の近傍に応力が集中する。
一方、本実施例では、図1および図4(B)に示すように、前記溶接止端部5から離れた位置に、底部24が凹曲面である切削溝20が設けられている。当該切削溝20の底部24は新たな応力集中部となる。符号25は応力集中部によって生じるき裂である。
前記切削溝20が前記溶接止端部5から所定の範囲内の距離X[図4(B)]にあると、該切削溝20の底部24が新たな応力集中部となることによって、前記溶接止端部5における応力集中は低減する。前記底部24にき裂25が発生し易くなることにより、前記溶接止端部5におけるき裂発生の虞が少なくなる。
前記切削溝20が前記溶接止端部5から離れすぎると、当該切削溝20が応力集中部となることに基づく、前記溶接止端部5の応力集中低減への影響が少なくなる。
前記切削溝20の底部24を新たな応力集中部として、前記溶接止端部5における応力集中を効果的に低減するため、該切削溝20は、前記溶接止端部5からの前記距離Xが、0.5mm〜2mmに形成されていることが望ましい。
また、前記切削溝20の底部の凹曲面は、主板2および付加板3、3’の厚さや鋼材の種類にもよるが、一般的な船舶や橋梁に用いられる溶接継手の場合、前記切削溝20の深さが0.5mm〜4mmであり、該切削溝20の底部の形状は、当該切削溝の縦断面が、曲率半径1mm〜4mmの曲線によって形成された凹曲面であることが好ましい。
また、前記切削溝20において、切削溝20の深さdの値は前記曲率半径rの値以上、すなわち、深さd≧曲率半径rとなるように設定されていることが好ましい。図5(A)は深さd>曲率半径rの場合であり、図5(B)は深さd<曲率半径rの場合である。切削溝20の深さdの値が前記曲率半径rの値以上であることにより、後述する実施例2の線形応力解析結果に示されるように、前記溶接止端部における応力集中を効果的に低減させ、前記溶接継手の溶接部の疲労強度を更に高めることができる。
図3(A)および図3(B)において前記切削溝20は、前述のように、前記付加板3の短辺の溶接部11の溶接止端部5に対して、ほぼ平行な直線状の溝として設けられている。このような直線状の切削溝20の切削加工は容易であり、特に疲労き裂の起点となり易い付加板3の短辺の中心(符号6)近傍の溶接止端部5に対する応力集中低減効果を簡単に得ることができる点で有利である。一方、前記付加板3の角部28近傍の溶接止端部5は、前記切削溝20との距離が離れてしまう。
前記付加板3の角部28近傍の溶接止端部5に対しても応力集中の低減を効果的に行うためには、図6(A)〜図6(C)に示すように、付加板3の短辺に対する溶接止端部5を囲うように形成した切削溝とすることが好ましい。図6(A)における切削溝26は、直線状の切削溝を組み合わせて溶接止端部5を囲うように形成している。
また、図6(B)に示す切削溝27のように、円弧状の切削溝によって溶接止端部5を囲うように形成することもできる。
また、図6(C)に示す切削溝29のように、前記付加板3の短辺の溶接止端部5に対して直線状の切削溝を形成し、前記付加板3の角部28近傍の溶接止端部5に対して円弧状の切削溝を形成すると、当該溶接止端部5の形状に沿って前記切削溝29を設けることが可能となり、一層効果的である。
本発明によれば、前記溶接止端部5に対してピーニング処理を行うのではなく、前記溶接止端部5から所定の範囲内の距離で離れた位置に切削溝20を形成するので、定められた位置(溶接止端部5上)に対して正確にピーニング処理を行う場合に比して、前記切削溝20の形成が容易である。前記切削溝20の形成は、機械加工によって行うことができるため低コストで溶接部に対する疲労強度を向上させることができる。
すなわち、簡単、且つ、低コストで溶接部の溶接止端部における応力集中を低減し、溶接部の疲労強度の高い溶接継手を提供することができる。
また、溶接熱影響が最も大きい部位である溶接止端部5から離れた位置に、前記切削溝20を設けるので、前記溶接止端部5よりも溶接熱影響が少ない部分を新たな応力集中部することができる。
加えて、例えば特許文献4のように、溶接部11の溶接止端部5に圧縮残留応力を導入して疲労強度を高めた場合に生じる、「溶接部11に大きな負荷がかかることによって圧縮残留応力が抜けてしまう現象」に基づく疲労強度の低下の虞がないので、該溶接部11に大きな負荷がかかることがある場合に、疲労強度に対する信頼性の高い溶接継手とすることができる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
[実施例2]
<面外ガセット溶接継手の線形応力解析試験>
面外ガセット溶接継手を対象とし、汎用応力解析コードMSC Nastran 2012を用いて、線形応力解析を行った。図7は、本発明に係る面外ガセット溶接継手の線形応力解析における試験体31の概略図であり、図7(A)は上面図、図7(B)は側面図である。
前記試験体の主板32の寸法は、500×80×30mm、付加板33および付加板33’の寸法は、50×120×15mmとした。
解析モデルは試験体31の対称性を考慮し、図8に示す1/8モデルとした。溶接止端部35における線形応力の解析対象部wは、前記試験体31においてき裂発生点となりや易い部分、すなわち、角回し溶接部である付加板33の短辺に対する溶接部34の溶接止端部35近傍(図8の符号36)であり、その要素寸法は、0.05×0.05×0.05mmとした。
図9は、図7に示す試験体31の前記解析対象部wから所定の範囲内の距離Xで離れた位置に切削溝37を設けたときの、前記溶接止端部35近傍のZ−Z断面図である。切削溝の底部38の曲率半径をr、切削溝37の深さをd、溶接止端部35から切削溝37の中央部までの距離をx、溶接止端部35から切削溝37の端までの距離をxとした。前記切削溝37における線形応力の解析対象部gは、該切削溝37の底部38である。
前記曲率半径r、深さd、距離x、距離xを変えた前記試験体31(実施例2−1〜実施例2−13)に対して、矢印A方向(図8を参照)に100N/mmの荷重をかけたときの解析結果を表1に示す。比較例は切削溝37を設けていない試験体31である。αwは溶接止端部における解析対象部wの応力集中係数であり、αは切削溝37の底部38(解析対象部g)における応力集中係数である。
尚、応力集中係数αは、該切削溝37の底部(図9の符号38で示す点線の範囲)において、最も高い数値を示す部分の値とした。
Figure 2015093318
実施例2−1〜実施例2−13において、切削溝37を設けたことによる新たな応力集中部、すなわち、切削溝37の底部38における応力集中係数αは、2.9〜4.3 N/mmであった。これに対して、実施例2−1〜実施例2−13の溶接止端部35(符号wの部分)における応力集中係数αは、いずれも比較例(切削溝37なし)の場合(α=5.1 N/mm)よりも低減している。
通常、切削溝37の幅を大きく、また、深くすれば、該切削溝37の底部38における応力集中は大きくなる。しかしながら、切削溝37を大きくすると、当該切削溝37を設けた部分の主板32の強度は低くなるので、切削溝37の幅および深さは小さいほうが好ましい。解析の結果、曲率半径rが同じである場合(例えば、実施例2−8〜実施例2−13ではr=2)には、特に、深さd≧曲率半径r(実施例2−8〜実施例2−11)としたときに、溶接止端部35における応力集中係数αの低減効果が高かった。
このことから、前記切削溝20において、切削溝20の深さdの値は前記曲率半径rの値以上、すなわち、深さd≧曲率半径rとなるように設定することによって、溶接止端部35における応力集中を効果的に低減することができると考えられる。
1 面外ガセット溶接継手、 2 主板、 3、3’ 付加板、
5 溶接止端部、 7 き裂、
10 面外ガセット溶接継手、 11 溶接部、
20 切削溝、 21 切削溝の溶接止端部に近い側の長辺、
22 付加板から一番離れた溶接止端部、
23 切削溝の溶接止端部に近い側の長辺、
24 底部、 25 き裂、 26、 切削溝、 27 切削溝、
31 試験体、 32 主板、 33、33’ 付加板、
34 溶接部、 35 溶接止端部、 37 切削溝、 38 底部

Claims (6)

  1. 第1部材に第2部材を溶接して形成した溶接継手であって、
    前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に、底部が切削加工によって形成された凹曲面である切削溝を有し、
    該切削溝は、当該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減するように形成されていることを特徴とする、溶接継手。
  2. 請求項1に記載された溶接継手において、
    前記切削溝は、
    前記溶接部の溶接止端部から0.5mm〜2mmの距離に形成されていることを特徴とする、溶接継手。
  3. 請求項1または2に記載された溶接継手において、
    前記切削溝の深さが0.5mm〜4mmであり、
    該切削溝の底部の形状は、当該切削溝の縦断面が、曲率半径1mm〜4mmの曲線によって形成された凹曲面であることを特徴とする、溶接継手。
  4. 請求項3に記載された溶接継手において、
    前記切削溝において、前記溝の深さの値が前記曲率半径の値以上に設定されていることを特徴とする、溶接継手。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載された溶接継手において、
    該溶接継手は、第1部材である主板に対して第2部材である付加板を溶接した面外ガセット溶接継手であり、
    前記切削溝は、少なくとも、前記付加板の短手方向の辺に対する溶接部の溶接止端部における応力集中を低減するように設けられていることを特徴とする、溶接継手。
  6. 第1部材に対して第2部材を溶接した溶接部の疲労強度向上方法であって、
    前記第1部材における前記溶接部の溶接止端部から所定の範囲内の距離で離れた位置に、切削加工によって、底部が凹曲面である切削溝を形成し、
    該切削溝の底部を新たな応力集中部とすることによって、前記溶接止端部における応力集中を低減することを特徴とする、溶接部の疲労強度向上方法。
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