JP2019081179A - 重ね隅肉溶接継手の加工方法および重ね隅肉溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような溶接継手に、例えば、図示したような方向の曲げモーメントが繰り返し負荷されると、溶接止端部5の近傍は切欠き形状であるために応力が集中し、当該溶接止端部5の近傍に疲労き裂7が生じる。
このような技術として、以下のような方法が種々提案されている。
「溶接止端部を回転する圧子により塑性変形するまで加圧したのち、加熱するという処理を繰返し行って同止端部に発生する亀裂を防止することを特徴とした溶接止端部の処理方法。」
が開示されている。
「被溶接部材上を溶接後、溶接金属と被溶接部材の境界付近をその断面が半円形の凹部となるよう加圧し、同上境界付近に圧縮残留応力を生ぜしめることを特徴とする溶接部の機械的性質改善方法。」
が開示されている。
「回転体ホルダ先端に保持した回転体を、ワークの溶接止端部に当接させた状態で前記ホルダを介して押圧し、該ホルダまたはワークを溶接部分に沿って移動して溶接止端部を加圧することを特徴とする溶接止端部の加圧方法。」
が開示されている。
「溶接継手の製造方法であって、a)第1部材と第2部材とを溶接して溶接部を形成する工程と、b)前記溶接部の溶接止端部における所定の対象領域に対する表面溶融処理または研削処理により、前記対象領域の表面を平滑化する工程と、c)前記溶接止端部の前記対象領域に対して圧縮残留応力を付与する工程と、を備えることを特徴とする溶接継手の製造方法。」
が開示されている。
「複数の部材を互いに当接させ、これら各部材間に溶接ビードを形成してなる溶接継手の溶接ビード整形方法であって、前記各部材よりも硬質な非消耗式の整形ツールを用い、該整形ツールを前記溶接ビード及び溶接ビード止端部の周辺に押付けつつ相対移動することにより摩擦熱を発生させる摩擦熱発生工程と、この摩擦熱により前記溶接ビード及び溶接ビード止端部の周辺を塑性流動化しつつ前記整形ツールを移動することにより、前記溶接ビード表面及び溶接ビード止端部の形状を滑らかに整形する整形工程とからなる溶接継手の溶接ビード整形方法。」
が開示されている。
加えて、特許文献1の技術では、加圧と加熱を繰り返す必要があるため、生産性の点に問題がある。
加えて、特許文献5の技術を隅肉溶接継手等に適用する場合に、継手形状に応じて整形ツールを部材表面の垂直な方向から傾けると、特許文献1〜3の技術と同様、部材表面に大きな荷重を負荷する必要が生じる。よって、かような技術を、自動車部品等の薄鋼板を母材とする重ね隅肉溶接継手に適用すると、やはり母材に反りなどの変形を生じさせるおそれがある。
また、本発明は、上記の溶接継手の加工方法を用いた溶接継手の製造方法を提供することを目的とする。
まず、発明者らは、図2に示す回転工具8を用いて溶接継手の溶接止端部5に種々の条件で加工を施して、溶接止端部5近傍の表面に塑性変形を生じさせ、その形態を調査した。
・溶接ビード6の長手方向に沿った塑性変形は、疲労強度に影響する溶接ビード6の断面方向の圧縮残留応力の付与には殆ど寄与しておらず、
・よって、溶接ビード6の長手方向に直角な断面方向に対して優先的に塑性変形を生じさせれば、部材表面に付与する荷重、すなわち回転工具8の押し付け荷重を従来よりも低減しても、溶接止端部5の形状を滑らかにしつつ、溶接ビード6の長手方向に直角な方向の圧縮残留応力を十分に付与できる、
との考えに至った。
・図2、特に図2(b)に示すように、回転工具8の回転軸と溶接ビード6の長手方向とを、部材表面に垂直な方向から見て、略平行となるようにして、溶接ビード6の溶接止端部5に、回転工具8の先端部を押し付けながら、回転工具8の先端部を溶接ビード6の長手方向に移動させることにより、溶接ビード6の長手方向に直角な断面方向に、優先的かつ効率的に塑性変形を生じさせることが可能となり、
・また、回転工具8の先端部の回転軸に垂直で、かつ、溶接止端部5に当接する位置における回転工具8の先端部の断面の形状を円形とし、また、その直径を溶接止端部5の曲率半径に併せて所定の範囲に調整することで、溶接止端部5の形状も十分に平滑化される、
との知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
1.回転工具の先端部を、軸心回りに回転させ、かつ、2以上の部材を接続した溶接継手の溶接止端部に当接させながら、該溶接止端部に沿って該溶接継手の溶接ビードの長手方向に移動させる、重ね隅肉溶接継手の加工方法であって、
上記回転工具の回転軸と上記溶接ビードの長手方向とが、上記回転工具が当接する溶接止端部の部材表面に垂直な方向から見て、略平行であり、
上記回転工具の先端部の回転軸に垂直で、かつ、上記溶接止端部に当接する位置における上記回転工具の先端部の断面の形状が円形であり、また、該断面での直径が上記溶接止端部の曲率半径の1.00〜5.00倍である、
ことを特徴とする重ね隅肉溶接継手の加工方法。
本発明の一実施形態に係る溶接継手の加工方法は、図2に示すとおり、
回転工具8の先端部を、軸心回りに回転させ、かつ、2以上の部材を接続した溶接継手の溶接止端部5に当接させながら、該溶接止端部5に沿って該溶接継手の溶接ビード6の長手方向に移動させる、溶接継手の加工方法であって、
上記回転工具8の回転軸と上記溶接ビード6の長手方向とが、上記回転工具8が当接する溶接止端部5の部材(鋼板4)表面に垂直な方向から見て、略平行であり、
上記回転工具8の先端部の回転軸に垂直で、かつ、上記溶接止端部5に当接する位置における上記回転工具8の先端部の断面の形状が円形であり、また、該断面での直径が上記溶接止端部5の曲率半径の1.00〜5.00倍である、
ことを特徴とするものである。
ここで、回転工具8の回転軸12と溶接ビード6の長手方向とが略平行になるとは、回転工具8が当接する溶接止端部5の部材(鋼板4)表面に垂直な方向から見て、回転工具8の回転軸12と溶接ビード6の長手方向とがなす角が、3°以内となることを意味する。
これにより、溶接止端部5は平滑化されて、溶接止端部5での応力集中が低減され、疲労き裂7の発生や進展に対する抵抗が高まる。
このような観点から、回転工具8の先端部の回転軸に垂直で、かつ、溶接止端部5に当接する位置における回転工具8の先端部の断面の形状を円形とし、また、該断面での直径を溶接止端部5の曲率半径の1.00〜5.00倍とする必要がある。好ましくは1.70倍以上である。また、好ましくは3.40倍以下である。
この塑性加工により生じたメタルフロー10により、溶接止端部5の表面近傍の体積が大きくなる、すなわち、溶接止端部5の表面近傍の金属(溶接金属1および鋼板4)が、内部の金属よりも膨張しようとする。その結果、この溶接止端部5の表面近傍の金属の体積膨張を、内側の金属が拘束して縮めようとする力が働き、溶接止端部5近傍の表面付近には、図3の矢印に示すような圧縮残留応力が発生する。
特に、圧縮残留応力は、疲労き裂7の発生を抑制するとともに、発生した微小な初期き裂の開口を妨げる働きがあるため、溶接継手の疲労特性の向上に大きく寄与する。
なお、図4は、上記した本発明の一実施形態に係る溶接継手の加工方法により加工した溶接止端部5近傍の加工部9を模式的に示した図である。同図に示すとおり、本発明の一実施形態に係る溶接継手の加工方法によれば、溶接ビード6の長手方向に直角な断面方向に塑性加工された加工部9は、溶接ビード6の長手方向に、溶接止端部5に沿って連なるように形成される。
そのため、本発明の一実施形態に係る溶接継手の加工方法は、板厚:1.8〜3.6mmで引張強さ:780MPa以上の薄鋼板を接続した重ね隅肉溶接継手に適用して、特に有利である。
なお、円錐状および円錐台状の場合、溶接止端部5に当接する位置の断面直径は、その形状、特に中心角と、図2(d)に示す回転工具8の仰角θとの関係によって変化するため、この関係を考慮して、回転工具8の断面直径と溶接止端部5の曲率半径を本願の範囲とする条件で加工を行うことが必要である。
ここで、回転工具8の回転方向は特に限定されるものではないが、圧縮残留応力をより有利に付与する観点から、図2(c)に示すように、溶接止端部5の表面近傍を、鋼板4側から溶接金属1側に擦るような回転方向とすることが好ましい。
また、図2(d)に示す回転工具8の仰角θ(溶接ビード6の長手方向に直角な方向から見たときの、鋼板4の表面(水平方向)と回転工具8の回転軸とがなす角)は、疲労特性の向上効果および作業性等の観点から、5〜60°とすることが好ましい。より好ましくは10〜40°である。
ここでは、溶接止端部を変化させて、2種類の条件で溶接した。すなわち、一方は、シールドガスを80%Ar+20%O2とし、20l/minの流量で、電流:230A、電圧:20V、および、溶接速度:80cm/minとした。他方は、シールドガスを95%Ar+5%O2とし、他の条件は前者の条件と同じとした。
また、重ね隅肉溶接継手の溶接止端部5の曲率半径は、前者の溶接条件の場合では0.2mm、後者の溶接条件では0.9mmであった。なお、溶接止端部5の曲率半径は、非特許文献1に従い、1溶接継手あたり5か所を測定し、その平均値として求めたものである。
この際、No.1〜11では、回転工具8の回転軸と溶接ビード6の長手方向とが、下側の鋼板4の表面に垂直な方向から見て、略平行となるようにした。
また、回転工具8の押し付け荷重Fが150N以下であれば、部材表面に作用する荷重が従来に比べ十分に小さいため、母材に反りなどの変形が生じることはなかった。
さらに、No.12では、回転工具8の仰角θを90°、すなわち、回転工具8の回転軸を下側の鋼板4の表面に垂直となるようにした。
加えて、No.13〜18では、回転工具8の回転軸と溶接ビード6の長手方向とが、下側の鋼板4の表面に垂直な方向から見て、略平行とならないように、具体的には、回転工具8の回転軸と溶接ビード6の長手方向がなす角を30°〜90°とした。
なお、No.19およびNo.20は、加工を施さなかった溶接ままのものである。
また、回転工具8の回転数および溶接ビード6の長手方向への移動速度はいずれも、30000rpmおよび3mm/sとした。
そして、以下の基準により、疲労特性を評価した。
合格(特に優れる):疲労強度が480MPa以上
合格(優れる):疲労強度が340MPa以上、480MPa未満
不合格:疲労強度が340MPa未満
評価結果を表1に併記する。
一方、比較例では、十分な疲労特性が得られなかった。
3:鋼板(上側の被加工材)
4:鋼板(下側の被加工材)
5:溶接止端部
6:溶接ビード
7:疲労き裂
8:回転工具
9:加工部
10:メタルフロー
Claims (3)
- 回転工具の先端部を、軸心回りに回転させ、かつ、2以上の部材を接続した溶接継手の溶接止端部に当接させながら、該溶接止端部に沿って該溶接継手の溶接ビードの長手方向に移動させる、重ね隅肉溶接継手の加工方法であって、
上記回転工具の回転軸と上記溶接ビードの長手方向とが、上記回転工具が当接する溶接止端部の部材表面に垂直な方向から見て、略平行であり、
上記回転工具の先端部の回転軸に垂直で、かつ、上記溶接止端部に当接する位置における上記回転工具の先端部の断面の形状が円形であり、また、該断面での直径が上記溶接止端部の曲率半径の1.00〜5.00倍である、
ことを特徴とする重ね隅肉溶接継手の加工方法。 - 前記断面での直径が、前記溶接止端部の曲率半径の1.70〜3.40倍であることを特徴とする請求項1に記載の重ね隅肉溶接継手の加工方法。
- 請求項1または2に記載の重ね隅肉溶接継手の加工方法を用いたことを特徴とする重ね隅肉溶接継手の製造方法。
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