JP2005305461A - 疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手 - Google Patents

疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板の重ね合わせ面をレーザ溶接して得られた重ね継手の疲労強度を従来に比べて十分に向上することが可能なレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手を提供する。
【解決手段】板厚t1が0.8mm〜4mmの鋼板1と、板厚t2が0.8mm以上の鋼板2との重ね合わせ部をレーザ溶接することにより溶接金属を形成した後、前記鋼板1の溶接金属の止端近傍を圧下ロール6により、鋼板1の表面から板厚方向に最大深さで50〜300μmの圧痕を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や自動二輪の車体および部品などの組み立てなどで広く用いられている鋼板の重ね合わせ面を接合するための重ね溶接方法およびその重ね継手に関し、特に溶接部疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手に関する。
近年、CO削減など環境問題を背景とした鋼構造体の軽量化を目的とし、構造合理化や使用鋼材の高強度薄肉化が進む中、溶接部の疲労強度を再現良く、かつ効果的に高める技術の開発が強く望まれている。
一般に、自動車や自動二輪の部品のような薄鋼板を用いた溶接構造体を組み立てる際の溶接継手形状として、2枚の鋼板、あるいは3枚の鋼板を重ね合わせた後、その重ね合わせ面を溶接した重ね継手が多く用いられている。その溶接方法として従来はアーク溶接や抵抗スポット溶接、マッシュシーム溶接が多用されてきたが、近年、以下の利点を活かしたレーザ溶接の適用も増加している。
つまり、レーザ溶接は、電子ビーム溶接と同様、溶接接合に用いられる熱源の中でも特に高エネルギ密度の熱源を用いる溶接法であり、深溶け込み溶接を可能とし、この特長から他の溶接法より溶接部品質を維持しつつ高い溶接速度を実現できる。さらに、レーザ溶接は、鋼板を電極で挟んで溶接接合する抵抗スポット溶接とは異なり、片側からの溶接やフランジの極小化が可能であるといった特徴を持っている。その結果、レーザ溶接は自動車を製造する場合の構造自由度を拡張でき、また連続溶接も可能なことから、車体の軽量化と衝突安全性向上の両立を狙ってその適用が拡大している。
一方、自動車や自動二輪の部品などで繰り返し応力が付与される部位に適用させる溶接継手の基本特性として良好な疲労強度を得ることは極めて重要である。特に溶接継手においては、溶接金属(鋼材や溶接材料の溶融・凝固部)と鋼材熱影響部の境界である止端部近傍に引張残留応力が導入されやすい。また、これに加えて止端部は切り欠形状や形状急変部となりやすく、継手使用時に繰り返し応力が加わる際の応力集中部となりやすい。このような点からこれまで様々な継手疲労強度の改善技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、2枚の薄鋼板を用いた重ね隅肉溶接継手において、TIGアークなどの熱源を用い、溶接線から一定の距離を置いた鋼板表面上を、溶接線と平行に、鋼板が溶融しない程度の温度で加熱することで継手の疲労強度を向上させる方法が開示されている。この方法は、加熱冷却により鋼板の一部を膨張収縮させることによって、溶接継手において疲労き裂発生点となりやすい溶接止端部近傍の残留応力を引張側から圧縮側に変化させる方法である。しかし、本手法は隅肉溶接方法により作製する重ね隅肉継手の疲労強度を向上する方法としては有効となるが、重ね合わせ面を溶接する重ね継手には適用できなかった。
また、特許文献2には、溶接部に超音波振動を与えることによって、疲労強度を向上させる従来技術として、溶接アークによって熱せられた溶接シーム部に沿って超音波振動を付与する方法が開示されている。これは、振動の付与により溶接部の引張残留応力を緩和することによって疲労強度を向上させることを狙いとしている。しかし、この従来技術は、溶接直後の高温の材料に超音波振動を与えることを前提としているうえ、本発明が提案している圧下範囲のような、打撃する具体的な範囲の開示が無く、場合によっては全く効果が得られないことも考えられる。
他にも、古くから、溶接止端部近傍にショットピーニング処理を行うことで圧縮残留応力を付与する方法が知られている。ショットピーニングは、疲労き裂発生の起点となる溶接金属の止端部に、1mm弱の鋼球を多数打ち付け圧縮残留応力を付与する手法である。しかし、この方法は、隅肉溶接のようにき裂発生部である止端部が外表面に存在するような継手に対しては有効であるが、重ね合わせ面を溶接する重ね継手のようにき裂発生部が外表面に現れないような継手では、鋼球による直接的な打撃ができなかった。
その上、ショットピーニングによる圧縮応力導入効果は小さく、圧縮残留応力を付与できる深さは最大で数百μm程度と言われ、板厚が0.5mm以上の金属板では十分な疲労強度向上は得られなかった。また、この手法では疲労強度の向上にばらつきが大きく、安定した結果が得られないという問題があった。
上記の方法以外に、従来から、溶接金属を加熱再溶融することにより溶接止端部形状を改善あるいは引張残留応力を軽減する方法が知られている。しかし、この方法もショットピーニングと同じように隅肉溶接継手のように応力集中部の溶接金属止端部が溶接部材の表面に現れる場合にのみ適用可能であって、重ね合わせ面を溶接する重ね継手には採用できなかった。
以上のように、従来の疲労強度の向上技術を適用することにより、レーザ溶接法の利点を利用して得られたレーザ溶接重ね継手の疲労強度を十分かつ安定して向上させることは困難であった。
特開平10−193164号公報 USP6171415公報
前述のような従来技術の現状に鑑みて、本発明は、鋼板の重ね合わせ面をレーザ溶接して得られた重ね継手の疲労強度を従来に比べて十分に向上することが可能なレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)板厚t1が0.8mm〜4mmの鋼板1と、板厚t2が0.8mm以上の鋼板2との重ね合わせ部をレーザ溶接することにより溶接金属を形成した後、前記鋼板1の溶接金属の止端近傍を圧下ロールにより、鋼板1の表面から板厚方向に最大深さで50〜300μmの圧痕を形成することを特徴とする疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法。
(2)前記鋼板1面上における各止端を中心として、溶接線と垂直な方向で、下記(1)式を満足する範囲内を前記圧下ロールにより圧下し、前記圧痕を形成することを特徴とする上記(1)項に記載の疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法。
−t1≦x≦t1 ・・・(1)
なお、t1は鋼板1の板厚(mm)、xは圧下ロール幅の中心位置(mm)をそれぞれ表す。
(3)板厚t1が0.8mm〜4mmの鋼板1と、板厚t2が0.8mm以上の鋼板2とを重ね合わせてなり、かつ、鋼板1に形成された溶接金属の止端近傍に、鋼板1の表面から板厚方向に最大深さで50〜300μmの圧痕を有することを特徴とする疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手。
(4)前記鋼板1面上の各止端を中心として、溶接線と垂直な方向で、下記(1)式を満足する範囲内に前記圧痕を有することを特徴とする上記(3)項に記載の疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手。
−t1≦x≦t1 ・・・(1)
なお、t1は鋼板1の板厚(mm)、xは圧痕位置(mm)をそれぞれ示す。
本発明によれば、他の溶接法に比べて溶接部品質を維持しつつ高速溶接が可能なレーザ溶接を利用して得られたレーザ溶接重ね継手の疲労強度を従来に比べて十分かつ安定して向上できる。本発明のレーザ溶接重ね継手の製造方法およびそのレーザ溶接重ね継手の適用によって、自動車部品などの溶接構造体の品質と信頼性を一層向上させ、また、溶接効率向上により生産性も改善することが可能となるため、自動車分野など産業上の貢献は大きい。
以下に本発明の詳細について説明する。
本発明は、継手形状として、自動車部品などを組み立てる際に用いられる、鋼板の重ね合わせ面をレーザ溶接するレーザ重ね継手を対象とし、この継手の疲労強度を向上するものである。
通常、鋼板の重ね合わせ面を溶接する方法として、抵抗スポット溶接、マッシュシーム溶接、場合によってはアーク溶接も用いられることもある。
一方、レーザ溶接は、アーク溶接などに比べて高エネルギ密度のレーザを熱源とするため、溶接において鋼板の貫通能力に優れ、高い溶接速度を実現できる。またレーザ溶接は、スポット溶接、マッシュシーム溶接などのように電極で鋼板を両側から挟む方法とは異なり、片側からの連続溶接や溶接用フランジ幅の極小化が可能であり、溶け込み深さを維持しつつ小入熱で溶接変形が小さい溶接が可能である、などの利点も併せ持つ。
こうしたレーザ溶接法のメリットを活かし、自動車などの製造時に車体構造として軽量化と衝突安全性向上を両立することを可能とし、また、高速溶接による生産性改善も期待できる。本発明では、これらのレーザ溶接の利点を活かすために、鋼板の重ね合わせ面をレーザ溶接して得られるレーザ溶接重ね継手を前提し、この継手の疲労強度を向上させるものである。
本発明の実施形態を図1、図2及び図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的や作用効果を達成する限りにおいて、以下の実施形態の条件だけに限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態を示す溶接方向の前方から見た断面図である。
図2は、圧下ロールにより形成した圧痕を示す溶接方向の前方から見た溶接部の断面図である。
図5は、本発明の実施形態を示す溶接方向の斜め前方から見た斜視図である。
レーザ溶接重ね継手は、図1及び図5に示すように、当て板9に固定した状態で板厚t1の鋼板1と板厚t2の鋼板2の少なくとも一部を重ね合わせ、少なくともこの重ね合わせた面を貫通するように、鋼板面と概ね垂直な方向にレーザビーム(図示せず)を照射し、重ね合わせた面を含む厚み領域を溶融し、凝固させることにより溶接金属3を形成し、接合する。溶接金属3は、レーザビーム(図示せず)の集光光学系(図示せず)を所定速度で鋼板表面上の狙い位置に沿って走査することで連続的に形成される(図5、参照)。
本発明ではこのようにして得られたレーザ溶接重ね継手において、図1及び図5に示すように、鋼板1の溶接金属の止端4、5近傍を圧下ロール6で加圧し、図2に示すような所定深さで圧痕7を形成することによって、鋼板1と鋼板2との重ね合わせ面のボンド8に圧縮残留応力を導入させる。本発明において、溶接金属の止端5とは、溶接金属(鋼板の融点以上の温度に達し溶融し凝固した部分)の表面と熱影響を受けた母材(Ac1点以上融点以下に加熱される部分)の表面とが交わる点との境界(融合線)を表す。溶接金属の止端5は、図1に示すように、鋼板1面上に第1止端4と第2止端5の2箇所存在するが、圧下ロール6による加圧は、この実施形態に限定する必要はなく、第1止端4または第2止端5の何れか近傍、或いは、両方の近傍を圧下してもよい。また、この実施形態では、鋼板1と鋼板2を当て板9に固定した状態で鋼板1面上の溶接金属の止端4、5近傍を圧下ロール6で加圧する例を示したが、これに限定する必要はなく、例えば、2台の圧下ロール6を用いて鋼板1の上面及び鋼板2の下面にそれぞれ配置し、上下から2台の圧下ロール6により加圧しても良い。この場合は、図2に示すように、鋼板1面上の溶接金属の2箇所の止端(図1の第1止端4と第2止端5)と、鋼板2面上の溶接金属の2箇所の止端に圧痕7を形成する。この方法は、板厚が厚くなり、圧下位置から重ね合わせ面のボンド8までの厚み方向の距離が大きくなる場合に、ボンド8での残留圧縮応力を生じさせ、疲労強度を向上させるために有効である。
圧下ロール6の材質は、特に限定する必要はないが、本発明の溶接金属止端に圧痕を形成し、ボンド8での残留圧縮応力を発生する目的を達成するために、圧下時に塑性変形しないだけの強度(降伏強度や硬さ)、つまり、少なくとも鋼板1及び鋼板2、さらには溶接金属の強度よりも高いものが望ましい。例えば、炭素やマンガン、バナジウム、クロムなどの強化成分を含み、焼鈍ののち焼き入れたビッカ―ス硬さで450以上の硬質の鋼材であることが望ましい。
また、本発明において、レーザ溶接重ね継手の鋼板1面上の溶接金属の止端4、5近傍の圧下ロール6による加圧は、レーザ溶接によりレーザ溶接重ね継手に溶接金属を形成した後、冷却され、溶接金属の温度が少なくとも200℃以下になってから行うことが望ましい。これは、200℃を超える温度で溶接金属の止端4、5近傍を圧下して、重ね合わせ面のボンド8に残留圧縮応力を生じさせても、室温までの冷却過程で溶接金属が熱収縮し、残留応力が引張側に変化し、疲労強度の改善効果が低下するためである。
上記本発明の実施形態により、レーザ溶接重ね継手において、引張残留応力が導入されやすく、かつ、応力集中部となる、重ね合わせ面のボンド8に圧縮残留応力を導入させることができる。その結果、従来のレーザ溶接重ね継手に変動荷重が加わる際に、疲労き裂が応力集中部となる重ね合わせ部のボンド8から発生(図2、参照)し、板厚方向に進展することに起因する継手疲労強度の低下を抑制することができる。
このような本発明の作用によりレーザ溶接重ね継手の疲労強度を充分かつ安定して向上させるためには、以下の条件を規定する必要がある。以下に本発明で規定する条件の限定理由について説明する。
(鋼板1の板厚t1)
本発明者らは、実験等による検討の結果、レーザ溶接重ね継手の疲労強度を十分に向上させるためには、鋼板1の板厚を0.8〜4mmの範囲にする必要があることを確認した。
図4は、レーザ溶接重ね継手における鋼板1の板厚t1と疲労強度比の関係を表す図である。なお、レーザ溶接重ね継手の疲労強度比とは、溶接ままのレーザ溶接重ね継手の疲労強度に対する圧痕形成後のレーザ溶接重ね継手の疲労強度の比率を意味する。
また、この結果は、圧痕を鋼板1の一方の溶接金属止端位置(x1=0mm)に最大深さで200μmの圧痕を形成し、鋼板2の板厚t2は1.2mm(一定)の条件で行ったものである。
図4に示されるようにレーザ溶接重ね継手における鋼板1の板厚t1が、0.8〜4mmの範囲で疲労強度比が著しく向上している。鋼板1の板厚t1が0.8mm未満の場合には、レーザ溶接重ね継手の溶接金属止端近傍を圧下ロールにより加圧すると、圧下部周囲が圧下ロール側に塑性変形するため、図2に示すような、所定最大深さの圧痕7を局所的に形成し、重ね合わせ面のボンド8に十分な圧縮残留応力を導入できず、疲労強度は改善されない。また、溶接構造体としての外観を損なってしまう。一方、鋼板1の板厚t1が4mmを超える場合には、レーザ溶接重ね継手の溶接金属止端近傍の圧下ロール圧下部から重ね合わせ面のボンド8までの厚み方向の距離が大きくなるため、重ね合わせ面のボンド8に十分な圧縮残留応力を導入することが困難となり、十分な疲労強度の改善効果が得られなくなる。なお、圧縮残留応力を導入の観点からは、鋼板1の板厚t1が4mmを超える場合でも、圧痕の最大深さが所定範囲になるように圧下ロールによる加圧力を増加させれば、継手疲労強度の改善が期待されるが、加圧力を増加に伴う装置の大型化と設備導入コスト増大を招き、工業的に好ましくない。
以上の理由から、本発明のレーザ溶接重ね継手において、鋼板1の板厚t1を0.8〜4mmに規定する。
なお、自動車のような溶接構造体が十分な強度剛性を有するためにも、鋼板1の板厚t1の下限を0.8mmとする必要がある。
(鋼板2の板厚t2)
鋼板2の板厚t2は、継手疲労強度の向上のためには必ずしも規定する必要はないが、自動車のような溶接構造体が十分な強度剛性を有するために、0.8mmを下限とする必要がある。
また、鋼板2の板厚t2が0.8mm未満で、当て板からの反力が得られない場合には、レーザ溶接重ね継手の鋼板1の溶接金属止端近傍を圧下ロールにより加圧しても安定して疲労強度が改善されない場合がある。この理由は明らかでないが、板厚t2が薄く応力集中度が高いため、継手に低荷重を負荷しても、鋼板2が容易に塑性変形する、即ち導入した圧縮残留応力がすぐに消滅することに起因すると考えている。
以上の理由から、本発明のレーザ溶接重ね継手において、鋼板2の板厚t2を0.8mm以上に規定する。
(圧痕の最大深さ)
本発明者らは、実験等による検討の結果、レーザ溶接重ね継手の疲労強度を十分に向上させるためには、鋼板1の溶接金属の止端近傍に形成する圧痕の最大深さを50〜300μmとする必要があることを確認した。なお、最大深さは、鋼板1の表面から板厚方向の距離(深さ)の最大値を意味する。
図3は、レーザ溶接重ね継手における圧痕の最大深さと疲労強度(荷重範囲)の関係を表す図である(板厚1.2mm同士、2枚の鋼板の両止端とも圧力)。
この結果は、レーザ溶接重ね継手の鋼板1の板厚t1及び鋼板2の板厚t2が何れも1.2mmであり、圧痕の形成位置は鋼板1の一方の溶接金属止端位置(x=0mm)である。
図3に示されるようにレーザ溶接重ね継手における鋼板1の溶接金属の止端近傍に形成する圧痕の最大深さが50〜300μmの範囲で疲労限強度(kN)が著しく向上している。
上記圧痕の最大深さが50μm未満の場合には、重ね合わせ面のボンド8に十分な圧縮残留応力を発生させることができず、継手疲労強度の改善効果が得られない。一方、上記圧痕の最大深さを300μm超とすると、継手使用時に繰り返し応力が加わる際にボンド近傍の応力集中度が高まるため、圧縮残留応力は荷重負荷初期に消滅するため、継手疲労強度が改善しない。加えて、圧痕の最大深さの増大に伴ってその部位の板厚減少が過大となると、過重負荷時の応力レベル(応力集中)が上昇し、静的な引張強度も劣化することになるので好ましくない。
以上の理由から、本発明のレーザ溶接重ね継手において、鋼板1の溶接金属の止端近傍に形成する圧痕の最大深さを50〜300μmに規定する。
本範囲の板厚であれば、上記範囲の圧痕を形成することで疲労強度が効果的に改善される。実際は、板厚に応じた圧痕の適正範囲が存在と考えられるが、
(圧痕の位置)
以上の説明の通り、レーザ溶接重ね継手における上記鋼板1の板厚t1、鋼板2の板厚t2、及び、圧痕の最大深さを上記適正範囲にそれぞれ規定することにより、レーザ溶接重ね継手の疲労強度を十分に向上させることができる。
さらに、本発明者らは、実験等による検討の結果、上記レーザ溶接重ね継手の疲労強度の向上効果を安定して得るためには、上記条件に加えて、さらに、上記圧痕を形成する位置を、鋼板1面上における溶接金属の各止端を中心として、溶接線と垂直な方向で、下記(1)式を満足する範囲内とするのが好ましいことを確認した。
−t1≦x≦t1 ・・・(1)
なお、t1は鋼板1の板厚(mm)、xは圧下ロール幅の中心位置(mm)をそれぞれ表す。
実験結果から、圧下ロールにより鋼板面に垂直な方向に加圧した圧力は加圧方向に対し±45度の範囲まで広がることを確認した。また、重ね合わせ面のボンド8に充分な圧縮残留応力を発生させるためには、この加圧力の広がりのために、図1に示すように圧下ロール6により上記圧痕を形成する位置は圧鋼板1面上の溶接金属の各止端4、5を中心として、溶接線と垂直な方向で、鋼板1の板厚t1に相当する距離だけ離れた位置(x=±t1×tan45°)が限界であることを確認した。なお、本発明において、圧下ロールの圧下位置とは、図1に示す圧下ロール6のロール幅の中止位置を意味する。
本発明の技術思想は、レーザ溶接重ね継手を使用する場合に、疲労き裂発生点となる重ね合わせ面のボンド8に圧縮残留応力を導入することにあるから、ボンド8の直上に位置する最短距離の鋼板1面上を圧下ロール6で加圧することが望ましい。しかし、重ね合わせ面ボンド8の位置は板表面から判別できないので、実際上の圧下ロール6による加圧中心位置を鋼板1面上の溶接金属の止端を座標の基準点とした。なお、実験結果によれば、通常のレーザ溶接では、鋼板1及び鋼板2を貫通溶接すると、鋼板1面上の溶接金属の止端4、5位置と重ね合わせ面のボンド8の位置は溶接線と垂直な方向で見て大きな違いはなく、重ね合わせ面のボンド8への圧縮残留応力の導入効果の差異は小さいことを確認している。
以下に実施例を用いて本発明の効果を説明する。
板厚t1、t2、引張強さが公称590MPaの鋼板1及び鋼板2を重ね合わせ、その重ね合わせ代の幅方向の中央部をレーザによって溶接した後、得られたレーザ溶接重ね継手における鋼板1の溶接金属の各止端を中心とする溶接線と垂直な方向のxの位置を、圧下ロールにより加圧して圧痕を形成した。なお、継手サイズは40mm(幅)×250mm(長さ)で、重ね代40mmとした。
表1に試験条件として、鋼板1の板厚t1、鋼板2のt2、鋼板1の溶接金属の各止端を中心とする溶接線と垂直な方向の距離x、および、圧痕の最大深さ(圧下ロールの幅中心位置での鋼板1の表面から板厚方向の深さの最大値)と、試験結果として、継手疲労試験の疲労強度(=疲労限:荷重負荷を200万回繰り返しても疲労き裂が発生しない最大の荷重範囲あるいは応力範囲)を示す
レーザビームはYAGレーザを用い、加工点出力を3.5kW、焦点のビーム直径を0.6mmとした。シールド法はセンターシールドで、シールドガスに窒素を用いた。ビームの焦点位置は鋼板1の表面とした。ビード幅はt1に一致するような条件を予備試験で明らかにしておき、このときの溶接速度を採用した。
圧下ロールは、幅が10mmで圧下端面が曲率を持ち、また焼鈍後焼き入れた降伏強度が1200MPaの鋼材を用いて製造されたものを用いた。
圧下ロールの圧下荷重を変化させて鋼板1面上の溶接止端における圧痕の最大深さを変えた。
継手疲労強度の評価は、圧下ロールにより圧下し圧痕を形成した後の継手と、溶接ままの継手について疲労試験を行い、同じ板厚t1とt2の組み合わせ条件の溶接ままの継手の測定値と比較し、疲労限の強度測定値が10%以上向上したものを「OK」(良好)、それ未満のものを「NG」(不良)と評価した。なお疲労試験条件は、荷重比(最小荷重/最大荷重)=0.05、繰返し速度=10Hzの片振り引張とした。
表1のNo.1〜6は本発明例を示す。
No.1〜3は同じ1.2mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍に圧下処理を行った場合である。
No.4は1.2mmと2.0mmの鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍に圧下処理した場合である。
No.5およびNo.6は同じ3.6mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍に圧下処理を行った場合である。
本発明例No.1〜6は、いずれも本発明で規定する範囲内の条件であるため、継手の疲労強度は、溶接ままのものと比較して充分に向上し、良好な継手疲労特性を得ることができた。
表1のNo.7〜17は比較例を示す。
No.7は同じ1.2mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍を圧下したが、圧痕量が本発明範囲から低く外れており、疲労強度評価はどちらも不良であった。
No.8は同じ3.6mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍を圧下したが、圧下位置が本発明範囲から外れており、疲労強度評価は不良であった。
No.9は同じ3.6mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍を圧下したが、圧下位置が本発明範囲から外れており、疲労強度評価は不良であった。
No.10は同じ1.2mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の片側止端近傍を圧下したが、圧下位置および圧痕量が本発明範囲から外れており、疲労強度評価は不良であった。
No.11〜13はそれぞれ、1.2mm同士、1.2mmと2.0mm、そして3.6mm同士の鋼板を組み合わせた継手において、圧下ロールによる圧下を施さない、即ち溶接まま疲労試験を施した場合であり、疲労強度評価の基準とした。
No.14および16は、それぞれ4.5mm厚同士、0.6mm厚と2.0mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、鋼板1の両止端部近傍を圧下したが、板厚が本発明範囲から外れており、疲労強度評価はいずれも不良であった。No.15および17は4.5mm厚同士、あるいは0.6mm厚と2.0mm厚の鋼板を組み合わせた継手において、圧下ロールによる圧下を施さない、即ち溶接まま疲労試験を施した場合であり、それぞれNo.14とNo.16における疲労強度評価の基準とした。
Figure 2005305461
本発明の実施形態を示す溶接方向の前方から見た断面図である。 圧下ロールにより形成した圧痕を示す溶接方向の前方から見た溶接部の断面図である。 レーザ溶接重ね継手における圧痕の最大深さと疲労強度の関係を表す図である。 レーザ溶接重ね継手における鋼板1の板厚t1と疲労強度比の関係を表す図である。 本発明の実施形態を示す溶接方向の斜め前方から見た斜視図である。
符号の説明
1 鋼板1
2 鋼板2
3 溶接金属
4 鋼板1の溶接金属の止端(第1止端)
5 鋼板1の溶接金属の止端(第2止端)
6 圧下ロール
7 圧痕
8 重ね合わせ面のボンド
9 当て板
t1 鋼板1の板厚(mm)
x 鋼板1面上の溶接金属の各止端から圧下ロール幅中心までの溶接線と垂直な方向の距離

Claims (4)

  1. 板厚t1が0.8mm〜4mmの鋼板1と、板厚t2が0.8mm以上の鋼板2との重ね合わせ部をレーザ溶接することにより溶接金属を形成した後、前記鋼板1の溶接金属の止端近傍を圧下ロールにより、鋼板1の表面から板厚方向に最大深さで50〜300μmの圧痕を形成することを特徴とする疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法。
  2. 前記鋼板1面上における各止端を中心として、溶接線と垂直な方向で、下記(1)式を満足する範囲内を前記圧下ロールにより圧下し、前記圧痕を形成することを特徴とする請求項1に記載の疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手の製造方法。
    −t1≦x≦t1 ・・・(1)
    なお、t1は鋼板1の板厚(mm)、xは圧下ロール幅の中心位置(mm)をそれぞれ表す。
  3. 板厚t1が0.8mm〜4mmの鋼板1と、板厚t2が0.8mm以上の鋼板2とを重ね合わせてなり、かつ、鋼板1に形成された溶接金属の止端近傍に、鋼板1の表面から板厚方向に最大深さで50〜300μmの圧痕を有することを特徴とする疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手。
  4. 鋼板1面上の各止端を中心として、溶接線と垂直な方向で、下記(1)式を満足する範囲内に前記圧痕を有することを特徴とする請求項3に記載の疲労強度に優れたレーザ溶接重ね継手。
    −t1≦x≦t1 ・・・(1)
    なお、t1は鋼板1の板厚(mm)、xは圧痕位置(mm)をそれぞれ示す。
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