従来のロボット制御システムにおいては、ロボットを制御するためのロボット制御装置と、ロボットに作業を教示するための可搬式操作装置とが、接続ケーブルを介して電気的に接続されている。この接続ケーブルを介して、ロボットに作業を教示するための教示データや設定データ等が可搬式操作装置からロボット制御装置に送信される。また、この接続ケーブルを介して、表示用データがロボット制御装置から可搬式操作装置に送信されて、可搬式操作装置の表示ディスプレイに表示される。
ところで、上記の接続ケーブルは、可搬式操作装置を持った操作者が教示作業を行う際に引き回される。このため、接続ケーブルは、教示作業する作業者にとって、邪魔になることが多い。そこで、例えば、特許文献1に開示されるように、操作性の向上のため、可搬式操作装置とロボット制御装置との間の通信を無線化することが提案されている。
図3に示すように、ロボット制御システム50は、ロボットR、可搬式操作装置TP、及びロボットRの動作を制御するロボット制御装置RCを備えている。ロボットRは、アーク溶接やスポット溶接等を行う。可搬式操作装置TPは、作業者53が教示作業を行う際に用いられる。可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間では無線通信が行われる。
可搬式操作装置TPは、教示データを表示する表示部41、教示データが入力されるキーボード42、及びロボットRを非常停止させるための非常停止スイッチ43を備えている。また、可搬式操作装置TPは、駆動源としての二次電池を備えている。キーボード42から入力された教示データは、無線通信を介してロボット制御装置RCに送信されると共に、ロボット制御装置RCに記憶される。ロボットRは手首部を備え、手首部の先端にはアーク溶接トーチ、スポット溶接ガン等の作業ツールが取り付けられている。一般には、ロボットRは、安全柵52の内側に設置されている。ロボット制御装置RCは、入力された教示データに基づいてロボットRの自動運転を行う。接続ケーブル54は、ロボットRの自動運転時にロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとを電気的に接続する。接続ケーブル54は、可搬式操作装置TPに対してコネクタ(図示せず)を介して着脱可能である。可搬式操作装置TPが接続ケーブル54に電気的に接続されると、可搬式操作装置TP内の二次電池に充電される。
図4に示すように、可搬式操作装置TPは、作業者から入力された教示データを含む送信データを生成する。可搬式操作装置TPは、その送信データを、送信部72を介してロボット制御装置RCに送信する。ロボット制御装置RCは、可搬式操作装置TPからのデータを、受信部62により受信データとして受信する。ロボット制御装置RCは、表示用データ等の送信データを、送信部61を介して可搬式操作装置TPに送信する。可搬式操作装置TPは、ロボット制御装置RCからのデータを、受信部71により受信データとして受信する。
可搬式操作装置TPの非常停止スイッチ43が押されると、可搬式操作装置TPは、非常停止スイッチ43が押下された旨のデータを、送信部72を介してロボット制御装置RCに送信する。そして、ロボット制御装置RCは、可搬式操作装置TPから送信されたデータに基づいてロボットRを非常停止する。これとは別に、ロボット制御装置RCは、無線通信中にノイズや電波強度不足等が原因で一時的に通信が遮断された場合にもロボットRを非常停止する。
特許文献1に開示のロボット制御システムは、更に、検出手段(図示せず)を備えている。この検出手段は、接続ケーブル54による可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立されていないことを検出する。このロボット制御システムによれば、ロボットRの自動運転中に上記の電気的接続が確立されていないことを検出手段が検出したとき、警告が発せられる。これにより、二次電池の充電不足のため可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の通信が途絶えてロボットRが非常停止し生産ラインが停止することを防止できる。更に、このロボット制御システムによれば、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立されていないときは、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の通信が無線により行われる。
[第1実施形態]
以下、本発明のロボット制御システムを具体化した一実施形態について図1を参照して説明する。
図1に示すように、ロボット制御システム1は、ロボットRの動作を制御するロボット制御装置RC、安全柵52の内側に設置されたロボットR、ロボットRを操作するための可搬式操作装置TP、及び可搬式操作装置TPを充電するための充電装置CUを備えている。可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間では、無線通信が可能である。ロボットRは、無線通信中にノイズや電波強度不足等が原因で一時的に通信が遮断された場合に非常停止される。
ロボット制御装置RCは、中央演算処理装置であるCPU13、一時的な計算領域であるRAM14、システムタイマ2、制御中枢となる主制御部3、ハードディスク5、動作制御部7、駆動指令部8、接続監視部12、無線通信部9、及び送受信機器10を備えている。システムタイマ2は、現在のシステム時刻を計時する。ハードディスク5は、教示データ等を記憶する。動作制御部7は、ロボットRの軌跡演算等を行い、その演算結果を駆動信号として駆動指令部8に出力する。駆動指令部8は、ロボットRの各サーボモータを回転制御するためのサーボ制御信号を出力する。接続監視部12は、充電装置CUを介して可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとが電気的に接続されているか否かを監視する。無線通信部9及び送受信機器10は、ロボット制御装置RC及び可搬式操作装置TP間で無線通信を行うためのものである。CPU13、RAM14、システムタイマ2、主制御部3、ハードディスク5、動作制御部7、駆動指令部8、接続監視部12、無線通信部9、及び送受信機器10は、図示しないバスを介して互いに接続されている。さらに、主制御部3は、表示処理部4、解釈実行部6、及び自動運転継続部11を備えている。表示処理部4は、所謂ソフトウェアプログラムとして、可搬式操作装置TPの表示部41に表示する表示用データを生成する。解釈実行部6は、ハードディスク5に記憶された教示データに基づき動作制御部7に指令信号を出力する。接続監視部12が可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとが電気的に接続されていないことを検出したとき、自動運転継続部11は、可搬式操作装置TPをロボット制御装置RCから切り離した状態でロボットRの自動運転を継続する。なお、自動運転継続部11及び接続監視部12の詳細については、後述する。
可搬式操作装置TPは、中央演算処理装置であるCPU31、一時的な計算領域であるRAM32、表示部41、キーボード42、非常停止スイッチ43、非常停止監視部33、表示制御部37、キー入力監視部36、無線通信部39、及び送受信機器20を備えている。表示部41は、各種情報を表示する。キーボード42は、教示データ等の各種データを入力するためのものである。非常停止監視部33は、非常停止スイッチ43の入力を監視する。表示制御部37は、表示部41に表示用データを表示する。キー入力監視部36は、キーボード42からのキー入力を監視する。無線通信部39及び送受信機器20は、ロボット制御装置RC及び可搬式操作装置TP間で無線通信を行うためのものである。キーボード42によって入力された各種データ、非常停止スイッチ43が押されたか否かの監視結果は、無線通信部39を介して、可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCに送信される。また、可搬式操作装置TPは、充電回路34、二次電池35、主制御部15、及び充電量計測器38を備えている。充電回路34は、充電装置CUに電気的に接続される。これにより、二次電池35が充電されて、可搬式操作装置TPが動作可能となる。主制御部15は、可搬式操作装置TPの各制御部を総括的に制御する。また、主制御部15は、所定のタイミングで可搬式操作装置TPの電源を自動的に遮断する機能も備えている。充電量計測器38は、所定の周期で二次電池35の充電量を計測する。計測された充電量は、デジタル変換されてRAM32に記憶される。
充電装置CUは、可搬式操作装置TPを充電するためのものである。充電装置CUは、ロボット制御装置RCから電源を可搬式操作装置TPに供給する。本実施形態において、可搬式操作装置TPを充電装置CUの所定位置に設置することによって、充電回路34が充電装置CUに電気的に接続されて、可搬式操作装置TP内の二次電池35が充電される。
次に、接続監視部12及び自動運転継続部11について説明する。
接続監視部12は、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立しているか否かを常に監視している。接続監視部12は、ロボットRの自動運転時に可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立していない状態を検出したとき、その旨の信号を自動運転継続部11に送信する。可搬式操作装置TPが充電装置CUに接続されていない場合、可搬式操作装置TPの二次電池35の充電量は時間の経過と共に少なくなる。このため、最終的には、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の無線通信が途絶えてしまう。その結果、ロボットRに非常停止信号が入力されて、生産ラインが停止してしまう。その点、本実施形態では、このような問題を未然に防ぐために、自動運転継続部11が次の処理を行う。
自動運転継続部11は、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの無線通信を終了すると共に、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離した状態でロボット制御装置RC単独でのロボットRの自動運転を継続する。より具体的には、自動運転継続部11は、無線通信部9を介して無線通信終了要求信号を可搬式操作装置TPに送信する。そして、自動運転継続部11は、可搬式操作装置TPからのアンサーを受信すると、無線通信処理を終了するように無線通信部9に要求する。こうして、自動運転継続部11は、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の無線通信を終了させる。更に、自動運転継続部11は、表示用データの生成及び可搬式操作装置TPへの送信処理を中止させるための信号を表示処理部4に送信する。このとき、表示処理部4は、表示用データの生成を中止せずに、表示用データの送信先を可搬式操作装置TPからハードディスク5に変更してもよい。
ロボットRの自動運転時は、ロボット制御装置RCがハードディスク5に記憶された教示データに基づいて、ロボットRの動作を制御すればよい。このため、ロボットRの自動運転時は、教示データの実行状態や変数等の推移を可搬式操作装置TPに表示するためにロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとの間で通信を行う必要はない。即ち、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとの間の無線通信を切り離したとしても、ロボットRの動作の制御に不都合は生じない。ロボット制御システム1から切り離された可搬式操作装置TPは、ロボット制御装置RCからの無線通信終了要求信号を受け付けたときに、可搬式操作装置TP自身の電源を自動的に遮断することが好ましい。
上述したように、ロボットRの自動運転時に可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立していない状態を検出したとき、無線通信を終了すると共に、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離した状態で、ロボットRを非常停止させることなくロボット制御装置RC単独でのロボットRの自動運転が継続される。これにより、可搬式操作装置TPが充電装置CUに接続されているか否かを意識することなくロボットRの自動運転が継続されるため、作業効率が向上する。また、無線通信を行うことなくロボット制御装置R単独でロボットRの自動運転が継続されるため、通信ノイズ等の影響によりロボットRが非常停止することもない。また、ロボット制御システム1から切り離した可搬式操作装置TPを、別のロボット制御システムでの教示作業等に用いることもできる。
また、ロボットRの自動運転時に可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立していない状態を検出したとき、可搬式操作装置TPの電源を自動的に遮断することによって、可搬式操作装置TPの充電量が不足することを未然に防止することもできる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図2を参照して説明する。なお、第2実施形態における第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。第2実施形態は、警告報知手段としての警告ランプ23、ロボットRの近傍に取り付けた電波強度計測器25、接続ケーブル26、充電装置CUに備えた表示部51、ロボット制御装置RCに備えた電波強度監視部21、警告報知部22、日時取得部27、充電量取得部28、及び切離し検出部29以外は、第1実施形態と同じである。
図2に示すように、電波強度計測器25は、ロボットRの近傍、ロボットRの内部、又は安全柵52の内側に取り付けられている。電波強度計測器25は、接続ケーブル26を介して電波強度監視部21に接続されている。第2実施形態において、電波強度監視部21、電波強度計測器25、及び接続ケーブル26が、可搬式操作装置TPの電波強度を監視する電波強度監視手段として構成されている。
電波強度監視部21は、可搬式操作装置TPの電波強度が予め定めたレベルよりも大きいか否かを判定する。予め定めたレベルとは、安全柵52の内側をほぼカバーする領域において可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の無線通信が可能な最低限の電波強度を指す。即ち、電波強度が予め定めたレベルよりも低い場合、可搬式操作装置TPが安全柵52の外側に位置していると判断される。逆に、電波強度が予め定めたレベル以上である場合、可搬式操作装置TPが安全柵52の内側に位置していると判断される。
警告報知部22は、電波強度監視部21の判定結果に基づいて警告ランプ23を作動させる。日時取得部27は、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離すときの日時をシステムタイマ2から取得して、ハードディスク5に記憶する。充電量取得部28は、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離したときの二次電池35の充電量を可搬式操作装置TPに問い合わせると共に、可搬式操作装置TPからの受信した結果をハードディスク5に記憶する。切離し検出部29は、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離してロボットRの自動運転が継続されたことを検出する。
充電装置CUの表示部51は、可搬式操作装置TPがロボット制御システム1から切り離された旨の報知メッセージに加え、可搬式操作装置TPがロボット制御システム1から切り離された日時及び二次電池の充電量の少なくともいずれか一方を表示する。
以下、第2実施形態の作用について説明する。第1実施形態で説明した自動運転継続部11の処理によって、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの無線通信を終了して可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離すための前処理として、以下の処理を行う。
接続監視部12がロボットRの自動運転時に可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの電気的接続が確立していない状態を検出したとき、電波強度監視部21は、測定された電波強度が予め定めたレベルよりも大きいか否かを判定する。電波強度が予め定めたレベルよりも低いと判定したとき、電波強度監視部21は、その旨を自動運転継続部11に通知する。そして、自動運転継続部11は、安全柵52の内側に可搬式操作装置TPが存在しないものとみなし、第1実施形態と同様の処理でロボットRの自動運転を継続する。
逆に、測定された電波強度が予め定めたレベル以上であるとき、電波強度監視部21は、その旨を警告報知部22に通知する。そして、警告報知部22は、警告ランプ23を作動させる。この場合、警告報知部22は、警告ランプ23を点滅又は点灯させる。警告ランプに代えて、音声又は光で警告してもよい。このように、可搬式操作装置TPが安全柵の内側にある場合、最初に警告を報知することによって、例えば、可搬式操作装置TPが安全柵の内側にあることを作業者に知らせることができる。更には、無線通信を終了してロボットRの自動運転を継続する前後に、次の処理を行うことが好ましい。
日時取得部27は、無線通信を終了したときの日時をシステムタイマ2から取得して、ハードディスク5に記憶する。また、充電量取得部28は、無線通信を終了させる直前の二次電池35の充電量を可搬式操作装置TPに問い合わせると共に、可搬式操作装置TPから受信した結果をハードディスク5に記憶する。そして、切離し検出部29は、可搬式操作装置TPがロボット制御システム1から切り離されてロボットRの自動運転が継続されたことを検出したとき、上記取得した日時又は充電量を表示させるための信号を表示処理部4に出力する。表示処理部4は、切り離した旨の報知メッセージに加え、上記取得した日時又は充電量を充電装置CUの表示部51に表示させる。
このように、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離したときの日時及び充電量の少なくともいずれか一つを表示することによって、作業者は、可搬式操作装置TPがロボット制御システム1から切り離されてロボットRの自動運転が継続されたこと、並びに、そのときの日時や充電量等の具体的な状況を把握することができる。
また、例えば、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離した後に可搬式操作装置TPの電源を遮断しても、作業者は、充電装置CUの表示部によって、可搬式操作装置TPをロボット制御システム1から切り離したときの上記各種情報を把握することができる。
以上、本発明の第2実施形態について説明したが、電波強度計測器25に代えて、送受信機器10を、ロボットRの近傍又はロボットRの内部に取り付けてもよい。この場合、送受信機器10とロボット制御装置RCとを有線で接続し、送受信機器10を用いて電波強度を計測するようにしてもよい。