JP2015088741A - アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタ - Google Patents

アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】金属塩及び溶媒が新たな状態で存在する電解液を具備するキャパシタを提供すること
【解決手段】アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタであって、前記電解液の振動分光スペクトルにおける前記有機溶媒由来のピーク強度につき、前記有機溶媒本来のピークの強度をIoとし、前記ピークがシフトしたピークの強度をIsとした場合、Is>Ioであることを特徴とするキャパシタ。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタに関する。
一般に、キャパシタは静電容量により電荷を蓄え又は電荷を放出する蓄電器を意味する。キャパシタにおける、電気の充放電の作用機序は、電極への電荷の吸脱着による。この作用機序は電気化学反応を伴わないため、キャパシタの安定性は高く、また、キャパシタにおける電荷移動は早い。
キャパシタの中には、電解液を具備するものがあり、そのようなものとして、電気二重層キャパシタが知られている。電気二重層キャパシタにおいては、電極間に電位差が生じると、正極であれば正極と電解液との界面に電解液のアニオンが層状に整列し、負極であれば負極と電解液との界面に電解液のカチオンが層状に整列する。これらの層状態は静電容量を有しており、当該状態が電気二重層キャパシタの充電状態である。
また、電解液を具備するキャパシタとして、電気二重層キャパシタのほかに作動電圧を向上させたリチウムイオンキャパシタが知られている。リチウムイオンキャパシタは、正極が上記電気二重層キャパシタと同様の電極であり、負極がリチウムイオン二次電池の負極と同様の材料でできた電極であり、電解液が一般のリチウムイオン電池用電解液であるキャパシタのことを意味する。リチウムイオンキャパシタの負極は、あらかじめリチウムイオンがドープされるプレドープにより、負極の電位が低下するため、リチウムイオンキャパシタは高い電気容量を示す。
なお、リチウムイオンキャパシタの充放電時は、負極にプレドープされたリチウムイオンの一部が可逆的に負極に対しドープ及び脱ドープ、すなわち挿入及び脱離する。つまり、リチウムイオンキャパシタの負極と電解液の間にはリチウムイオン二次電池のそれと等しい電気化学反応(電池反応)が起こっているともいえる。一方、正極と電解液の間はキャパシタ特有の電荷の吸脱着が起こっている。
キャパシタにて使用し得る電気容量(J)は、(電極の容量)×(電圧)×(電圧)/2で決定される。上記電気容量を増大させる目的で、電極に比表面積の大きい材料を用いる手段、電解液として有機溶媒含有電解液を用いる手段などが検討されている。
上記手段の具体例として、電極に用いる炭素材料の比表面積を増加させ、電荷の吸着サイトを増加させることにより、電極の容量を増加させようとする試みがさかんに行われている。
また、電解液に着目した具体的な手段として、イオン液体を電解液として用いたキャパシタが特許文献1〜5に開示されている。なお、特許文献6、7に開示されているように、従来のキャパシタおよびリチウムイオンキャパシタの電解液としては、プロピレンカーボネート等の溶媒に1mol/L程度の濃度でLiPFや(CNBFを溶解させた溶液が用いられるのが一般的であった。
特開2004−111294号公報 特開2008−10613号公報 国際公開第2004/019356号 国際公開第2004/027789号 国際公開第2005/076299号 特開平11−31637号公報 特開平10−27733号公報
イオン液体とは、イオン半径の大きなカチオンとイオン半径の大きなアニオンからなり、常温で液体状態のものである。イオン液体からなる電解液は、その構成がイオンのみとなるため、同容量の電解液と比較した場合、イオン液体からなる電解液のイオン濃度は高い。そのため、イオン液体からなる電解液を具備したキャパシタの電気容量は、イオン液体のイオン半径が大きいにも関わらず、電解液のイオン濃度が高いため、従来の電解液を具備したキャパシタの電気容量と比較して、遜色がない。
しかしながら、イオン液体からなる電解液を具備したキャパシタの電気容量にも限界があった。そこで、キャパシタの電気容量を向上させ得る新しい手段について模索されていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、金属塩及び溶媒が新たな状態で存在する電解液を具備するキャパシタを提供することを目的とする。
本発明者は数多くの試行錯誤を重ねながら鋭意検討を行った。そして、本発明者は、電解質としてのリチウム塩を通常以上添加した電解液が技術常識に反して溶液状態を維持することを発見した。そして、本発明者は、そのような電解液がキャパシタの電解液として好適に作用することを知見した。さらに、本発明者が上記電解液の分析を行ったところ、IRスペクトル又はラマンスペクトルで観察されるピークにおいて特定の関係を示す電解液が、キャパシタの電解液として特に有利であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のキャパシタは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタであって、前記電解液の振動分光スペクトルにおける前記有機溶媒由来のピーク強度につき、前記有機溶媒本来のピークの強度をIoとし、前記ピークがシフトしたピークの強度をIsとした場合、Is>Ioであることを特徴とする。
本発明の新規なキャパシタは、好適な電気容量を示す。
実施例3の電解液のIRスペクトルである。 実施例4の電解液のIRスペクトルである。 実施例7の電解液のIRスペクトルである。 実施例8の電解液のIRスペクトルである。 実施例10の電解液のIRスペクトルである。 比較例2の電解液のIRスペクトルである。 比較例4の電解液のIRスペクトルである。 アセトニトリルのIRスペクトルである。 (CFSONLiのIRスペクトルである。 (FSONLiのIRスペクトルである(2100〜2400cm−1)。 実施例11の電解液のIRスペクトルである。 実施例12の電解液のIRスペクトルである。 実施例13の電解液のIRスペクトルである。 実施例14の電解液のIRスペクトルである。 実施例15の電解液のIRスペクトルである。 比較例6の電解液のIRスペクトルである。 ジメチルカーボネートのIRスペクトルである。 実施例16の電解液のIRスペクトルである。 実施例17の電解液のIRスペクトルである。 実施例18の電解液のIRスペクトルである。 比較例7の電解液のIRスペクトルである。 エチルメチルカーボネートのIRスペクトルである。 実施例19の電解液のIRスペクトルである。 実施例20の電解液のIRスペクトルである。 実施例21の電解液のIRスペクトルである。 比較例8の電解液のIRスペクトルである。 ジエチルカーボネートのIRスペクトルである。 (FSONLiのIRスペクトルである(1900〜1600cm−1)。 実施例22の電解液のIRスペクトルである。 実施例23の電解液のIRスペクトルである。 実施例8の電解液のラマンスペクトルである。 実施例9の電解液のラマンスペクトルである。 比較例4の電解液のラマンスペクトルである。 実施例11の電解液のラマンスペクトルである。 実施例13の電解液のラマンスペクトルである。 実施例15の電解液のラマンスペクトルである。 比較例6の電解液のラマンスペクトルである。 実施例24のハーフセルに対する電位(3.1〜4.6V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例24のハーフセルに対する電位(3.1〜5.1V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例25のハーフセルに対する電位(3.1〜4.6V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例25のハーフセルに対する電位(3.1〜5.1V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例27のハーフセルに対する電位(3.1〜4.6V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例27のハーフセルに対する電位(3.1〜5.1V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例28のハーフセルに対する電位(3.1〜4.6V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例28のハーフセルに対する電位(3.1〜5.1V)と応答電流との関係を示すグラフである。 比較例9のハーフセルに対する電位(3.1〜4.6V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例25のハーフセルに対する電位(3.0〜4.5V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例25のハーフセルに対する電位(3.0〜5.0V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例26のハーフセルに対する電位(3.0〜4.5V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例26のハーフセルに対する電位(3.0〜5.0V)と応答電流との関係を示すグラフである。 比較例10のハーフセルに対する電位(3.0〜4.5V)と応答電流との関係を示すグラフである。 比較例10のハーフセルに対する電位(3.0〜5.0V)と応答電流との関係を示すグラフである。 実施例29及び比較例11のキャパシタの充放電曲線である。 実施例30及び比較例12のキャパシタの充放電曲線である。 Cut-off電圧0〜2Vでの実施例30のキャパシタの充放電曲線である。 Cut-off電圧0〜2.5Vでの実施例30のキャパシタの充放電曲線である。 Cut-off電圧0〜3Vでの実施例30のキャパシタの充放電曲線である。 各Cut-off電圧での実施例30のキャパシタの放電曲線である。 実施例31のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。 評価例14の急速充放電の繰り返しに対する応答性の結果である。 実施例34のハーフセルの充放電曲線である。 実施例35のハーフセルの充放電曲線である。 実施例36のハーフセルの充放電曲線である。 実施例37のハーフセルの充放電曲線である。 比較例14のハーフセルの充放電曲線である。 各電流レートにおける、実施例38のリチウムイオン二次電池の電圧カーブを示すグラフである。 各電流レートにおける、比較例15のリチウムイオン二次電池の電圧カーブを示すグラフである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明のキャパシタは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩(以下、「金属塩」又は単に「塩」ということがある。)と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタであって、前記電解液の振動分光スペクトルにおける前記有機溶媒由来のピーク強度につき、前記有機溶媒本来のピーク波数におけるピークの強度をIoとし、前記ピークが波数シフトしたピークの強度をIsとした場合、Is>Ioであることを特徴とする。
以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液であって、前記電解液の振動分光スペクトルにおける前記有機溶媒由来のピーク強度につき、前記有機溶媒本来のピークの強度をIoとし、前記ピークがシフトしたピークの強度をIsとした場合、Is>Ioである電解液のことを、「本発明の電解液」ということがある。
なお、従来の一般的な電解液は、IsとIoとの関係がIs<Ioである。
金属塩は、通常、キャパシタの電解液に含まれるLiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiAlClなどの電解質として用いられる化合物であれば良い。金属塩のカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、及びアルミニウムを挙げることができる。
塩のアニオンの化学構造は、ハロゲン、ホウ素、窒素、酸素、硫黄又は炭素から選択される少なくとも1つの元素を含むと良い。ハロゲン又はホウ素を含むアニオンの化学構造を具体的に例示すると、ClO、PF、AsF、SbF、TaF、BF、SiF、B(C、B(oxalate)、Cl、Br、Iを挙げることができる。
窒素、酸素、硫黄又は炭素を含むアニオンの化学構造について、以下、具体的に説明する。
塩のアニオンの化学構造は、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化学構造が好ましい。
(R)(R)N 一般式(1)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、R、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
Y 一般式(2)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、Rと結合して環を形成しても良い。
Yは、O、Sから選択される。)
(R)(R)(R)C 一般式(3)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、R、Rのうち、いずれか2つ又は3つが結合して環を形成しても良い。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、R、R、R、R、Rは、R、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
上記一般式(1)〜(3)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言について説明する。例えば「置換基で置換されていても良いアルキル基」であれば、アルキル基の水素の一つ若しくは複数が置換基で置換されているアルキル基、又は、特段の置換基を有さないアルキル基を意味する。
「置換基で置換されていても良い」との文言における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン、OH、SH、CN、SCN、OCN、ニトロ基、アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また置換基が2つ以上ある場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。
塩のアニオンの化学構造は、下記一般式(4)、一般式(5)又は一般式(6)で表される化学構造がより好ましい。
(R)(R)N 一般式(4)
(R、Rは、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、R、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
Y 一般式(5)
(Rは、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、Rと結合して環を形成しても良い。
Yは、O、Sから選択される。)
(R1010)(R1111)(R1212)C 一般式(6)
(R10、R11、R12は、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
10、R11、R12のうちいずれか2つが結合して環を形成しても良く、その場合、環を形成する基は2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。また、R10、R11、R12の3つが結合して環を形成しても良く、その場合、3つのうち2つの基が2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たし、1つの基が2n−1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
10は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
11は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
12は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、R、R、R、R、Rは、R10、R11又はR12と結合して環を形成しても良い。)
上記一般式(4)〜(6)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言の意味は、上記一般式(1)〜(3)で説明したのと同義である。
上記一般式(4)〜(6)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(4)〜(6)で表される化学構造の、RとRが結合、又は、R10、R11、R12が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
塩のアニオンの化学構造は、下記一般式(7)、一般式(8)又は一般式(9)で表されるものがさらに好ましい。
(R13SO)(R14SO)N 一般式(7)
(R13、R14は、それぞれ独立に、CClBrである。
n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
また、R13とR14は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+eを満たす。)
15SO 一般式(8)
(R15は、CClBrである。
n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。)
(R16SO)(R17SO)(R18SO)C 一般式(9)
(R16、R17、R18は、それぞれ独立に、CClBrである。
n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
16、R17、R18のうちいずれか2つが結合して環を形成しても良く、その場合、環を形成する基は2n=a+b+c+d+eを満たす。また、R16、R17、R18の3つが結合して環を形成しても良く、その場合、3つのうち2つの基が2n=a+b+c+d+eを満たし、1つの基が2n−1=a+b+c+d+eを満たす。)
上記一般式(7)〜(9)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(7)〜(9)で表される化学構造の、R13とR14が結合、又は、R16、R17、R18が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
また、上記一般式(7)〜(9)で表される化学構造において、a、c、d、eが0のものが好ましい。
金属塩は、(CFSONLi(以下、「LiTFSA」ということがある。)、(FSONLi(以下、「LiFSA」ということがある。)、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、(SOCFCFCFSO)NLi、FSO(CHSO)NLi、FSO(CSO)NLi、又はFSO(CSO)NLiが特に好ましい。
金属塩は、以上で説明したカチオンとアニオンをそれぞれ適切な数で組み合わせたものを採用すれば良い。本発明の電解液における金属塩は1種類を採用しても良いし、複数種を併用しても良い。
ヘテロ元素を有する有機溶媒としては、ヘテロ元素が窒素、酸素、硫黄、ハロゲンから選択される少なくとも1つである有機溶媒が好ましく、ヘテロ元素が窒素又は酸素から選択される少なくとも1つである有機溶媒がより好ましい。また、ヘテロ元素を有する有機溶媒としては、NH基、NH基、OH基、SH基などのプロトン供与基を有さない、非プロトン性溶媒が好ましい。
ヘテロ元素を有する有機溶媒(以下、単に「有機溶媒」ということがある。)を具体的に例示すると、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート等のイソシアネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のエステル類、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン等のエポキシ類、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジメチルスルホン、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等のニトロ類、フラン、フルフラール等のフラン類、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン等の環状エステル類、チオフェン、ピリジン等の芳香族複素環類、テトラヒドロ−4−ピロン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等の複素環類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類を挙げることができる。
有機溶媒として、下記一般式(10)で示される鎖状カーボネートを挙げることができる。
19OCOOR20 一般式(10)
(R19、R20は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるCClBr、又は、環状アルキルを化学構造に含むCClBrのいずれかから選択される。n、a、b、c、d、e、m、f、g、h、i、jはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e、2m=f+g+h+i+jを満たす。)
上記一般式(10)で表される鎖状カーボネートにおいて、nは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。mは3〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、5〜6の整数が特に好ましい。また、上記一般式(10)で表される鎖状カーボネートのうち、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」ということがある。)、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」ということがある。)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」ということがある。)が特に好ましい。
有機溶媒としては、比誘電率が20以上又はドナー性のエーテル酸素を有する溶媒が好ましく、そのような有機溶媒として、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、スルホランを挙げることができ、特に、アセトニトリル(以下、「AN」ということがある。)、1,2−ジメトキシエタン(以下、「DME」ということがある。)が好ましい。
これらの有機溶媒は単独で電解液に用いても良いし、複数を併用しても良い。
本発明の電解液は、その振動分光スペクトルにおいて、電解液に含まれる有機溶媒由来のピーク強度につき、有機溶媒本来のピークの強度をIoとし、有機溶媒本来のピークがシフトしたピーク(以下、「シフトピーク」ということがある。)の強度をIsとした場合、Is>Ioであることを特徴とする。すなわち、本発明の電解液を振動分光測定に供し得られる振動分光スペクトルチャートにおいて、上記2つのピーク強度の関係はIs>Ioとなる。
ここで、「有機溶媒本来のピーク」とは、有機溶媒のみを振動分光測定した場合のピーク位置(波数)に、観察されるピークを意味する。有機溶媒本来のピークの強度Ioの値と、シフトピークの強度Isの値は、振動分光スペクトルにおける各ピークのベースラインからの高さ又は面積である。
本発明の電解液の振動分光スペクトルにおいて、有機溶媒本来のピークがシフトしたピークが複数存在する場合には、最もIsとIoの関係を判断しやすいピークに基づいて当該関係を判断すればよい。また、本発明の電解液にヘテロ元素を有する有機溶媒を複数種用いた場合には、最もIsとIoの関係を判断しやすい(最もIsとIoの差が顕著な)有機溶媒を選択し、そのピーク強度に基づいてIsとIoの関係を判断すればよい。また、ピークのシフト量が小さく、シフト前後のピークが重なってなだらかな山のように見える場合は、既知の手段を用いてピーク分離を行い、IsとIoの関係を判断してもよい。
なお、ヘテロ元素を有する有機溶媒を複数種用いた電解液の振動分光スペクトルにおいては、カチオンと最も配位し易い有機溶媒(以下、「優先配位溶媒」ということがある。)のピークが他に優先してシフトする。ヘテロ元素を有する有機溶媒を複数種用いた電解液において、ヘテロ元素を有する有機溶媒全体に対する優先配位溶媒の質量%は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。また、ヘテロ元素を有する有機溶媒を複数種用いた電解液において、ヘテロ元素を有する有機溶媒全体に対する優先配位溶媒の体積%は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。
本発明の電解液の振動分光スペクトルにおける上記2つのピーク強度の関係は、Is>2×Ioの条件を満たすことが好ましく、Is>3×Ioの条件を満たすことがより好ましく、Is>5×Ioの条件を満たすことがさらに好ましく、Is>7×Ioの条件を満たすことが特に好ましい。最も好ましいのは、本発明の電解液の振動分光スペクトルにおいて、有機溶媒本来のピークの強度Ioが観察されず、シフトピークの強度Isが観察される電解液である。当該電解液においては、電解液に含まれる有機溶媒の分子すべてが金属塩と完全に溶媒和していることを意味する。本発明の電解液は、電解液に含まれる有機溶媒の分子すべてが金属塩と完全に溶媒和している状態(Io=0の状態)が最も好ましい。
本発明の電解液においては、金属塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)が、相互作用を及ぼしていると推定される。具体的には、金属塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)のヘテロ元素とが、配位結合を形成し、金属塩とヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)からなる安定なクラスターを形成していると推定される。このクラスターは、後述する実施例の結果からみて、概ね、金属塩1分子に対し、ヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)2分子が配位することにより形成されていると推定される。また、キャパシタの電解液は、理論上、塩濃度が高いほうが高容量となる。これらの点を考慮すると、本発明の電解液における、金属塩1モルに対するヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)のモル範囲は、3.5モル未満が好ましく、3.1モル以下がより好ましく、3モル以下がさらに好ましい。 キャパシタの電解液は塩濃度が高いほうが好ましいことは上述したとおりだが、本発明の電解液における、金属塩1モルに対するヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)のモル範囲の下限を敢えて述べると、例えば1.1モル以上、1.4モル以上、1.5モル以上、1.6モル以上を挙げることができる。
本発明の電解液における密度d(g/cm)は、好ましくはd≧1.2又はd≦2.2であり、1.2≦d≦2.2の範囲内がより好ましく、1.24≦d≦2.0の範囲内がより好ましく、1.26≦d≦1.8の範囲内がさらに好ましく、1.27≦d≦1.6の範囲内が特に好ましい。なお、本発明の電解液における密度d(g/cm)は、20℃での密度を意味する。本発明の電解液においては、概ね、金属塩1分子に対し、ヘテロ元素を有する有機溶媒(又は優先配位溶媒)2分子が配位することによりクラスター形成されていると推定されるため、本発明の電解液の濃度(mol/L)は、金属塩及び有機溶媒それぞれの分子量と、溶液にした場合の密度に依存する。そのため、本発明の電解液の濃度を一概に規定することは適当でない。
本発明の電解液の濃度(mol/L)を表1に個別に例示する。
クラスターを形成している有機溶媒と、クラスターの形成に関与していない有機溶媒とは、それぞれの存在環境が異なる。そのため、振動分光測定において、クラスターを形成している有機溶媒由来のピークは、クラスターの形成に関与していない有機溶媒由来のピーク(有機溶媒本来のピーク)の観察される波数から、高波数側又は低波数側にシフトして観察される。すなわち、シフトピークは、クラスターを形成している有機溶媒のピークに相当する。
振動分光スペクトルとしては、IRスペクトル又はラマンスペクトルを挙げることができる。IR測定の測定方法としては、ヌジョール法、液膜法などの透過測定方法、ATR法などの反射測定方法を挙げることができる。IRスペクトル又はラマンスペクトルのいずれを選択するかについては、本発明の電解液の振動分光スペクトルにおいて、IsとIoの関係を判断しやすいスペクトルの方を選択すれば良い。なお、振動分光測定は、大気中の水分の影響を軽減又は無視できる条件で行うのがよい。例えば、ドライルーム、グローブボックスなどの低湿度又は無湿度条件下でIR測定を行うこと、又は、電解液を密閉容器に入れたままの状態でラマン測定を行うのがよい。
ここで、金属塩としてLiTFSA、有機溶媒としてアセトニトリルを含む本発明の電解液におけるピークにつき、具体的に説明する。
アセトニトリルのみをIR測定した場合、C及びN間の三重結合の伸縮振動に由来するピークが通常2100〜2400cm−1付近に観察される。
ここで、従来の技術常識に従い、アセトニトリル溶媒に対しLiTFSAを1mol/Lの濃度で溶解して電解液とした場合を想定する。アセトニトリル1Lは約19molに該当するので、従来の電解液1Lには、1molのLiTFSAと19molのアセトニトリルが存在する。そうすると、従来の電解液においては、LiTFSAと溶媒和している(Liに配位している)アセトニトリルと同時に、LiTFSAと溶媒和していない(Liに配位していない)アセトニトリルが多数存在する。さて、LiTFSAと溶媒和しているアセトニトリル分子と、LiTFSAと溶媒和していないアセトニトリル分子とは、アセトニトリル分子の置かれている環境が異なるので、IRスペクトルにおいては、両者のアセトニトリルピークが区別して観察される。より具体的には、LiTFSAと溶媒和していないアセトニトリルのピークは、アセトニトリルのみをIR測定した場合と同様の位置(波数)に観察されるが、他方、LiTFSAと溶媒和しているアセトニトリルのピークは、ピーク位置(波数)が高波数側にシフトして観察される。
そして、従来の電解液の濃度においては、LiTFSAと溶媒和していないアセトニトリルが多数存在するのであるから、従来の電解液の振動分光スペクトルにおいて、アセトニトリル本来のピークの強度Ioと、アセトニトリル本来のピークがシフトしたピークの強度Isとの関係は、Is<Ioとなる。
他方、本発明の電解液は従来の電解液と比較してLiTFSAの濃度が高く、かつ、電解液においてLiTFSAと溶媒和している(クラスターを形成している)アセトニトリル分子の数が、LiTFSAと溶媒和していないアセトニトリル分子の数よりも多い。そうすると、本発明の電解液の振動分光スペクトルにおける、アセトニトリル本来のピークの強度Ioと、アセトニトリル本来のピークがシフトしたピークの強度Isとの関係は、Is>Ioとなる。
表2に、本発明の電解液の振動分光スペクトルにおいて、Io及びIsの算出に有用と考えられる有機溶媒の波数と、その帰属を例示する。なお、振動分光スペクトルの測定装置、測定環境、測定条件に因って、観察されるピークの波数が以下の波数と異なる場合があることを付け加えておく。
有機溶媒の波数とその帰属につき、公知のデータを参考としてもよい。参考文献として、日本分光学会測定法シリーズ17 ラマン分光法、濱口宏夫、平川暁子、学会出版センター、231〜249頁を挙げる。また、コンピュータを用いた計算でも、Io及びIsの算出に有用と考えられる有機溶媒の波数と、有機溶媒と金属塩が配位した場合の波数シフトを予測することができる。例えば、Gaussian09(登録商標、ガウシアン社)を用い、密度汎関数をB3LYP、基底関数を6−311G++(d,p)として計算すればよい。当業者は、表2の記載、公知のデータ、コンピュータでの計算結果を参考にして、有機溶媒のピークを選定し、Io及びIsを算出することができる。
本発明の電解液においては、ヘテロ元素を有する有機溶媒の大半が金属塩とクラスターを形成していることから、電解液に含まれる有機溶媒の蒸気圧が低くなる。その結果として、本発明の電解液からの有機溶媒の揮発が低減できる。
キャパシタは体積エネルギー密度が小さい。一般的に、キャパシタの電気容量を増加するには、キャパシタの電極の吸着部位を増やし、イオンの絶対量を増加することが行われる。しかし、電極の吸着部位及び電解液を増加させると、電池の体積が増加し、電池自身が大きくなってしまう。
本発明の電解液は、従来の電解液と比較して金属塩濃度が高い。よって、本発明の電解液を具備する本発明のキャパシタは、従来の電解液を具備するキャパシタと比較して、電極と電解液との界面に整列できるイオンの絶対量が多い。そうすると、本発明のキャパシタの電気容量は、従来の電解液を具備したキャパシタの電気容量と比較して向上する。
また、本発明の電解液の粘度は、従来の電解液の粘度と比較して高い。このため、本発明の電解液を用いたキャパシタであれば、仮にキャパシタが破損したとしても、電解液漏れが抑制される。
本発明の電解液の粘度η(mPa・s)について述べると、10<η<500の範囲が好ましく、12<η<400の範囲がより好ましく、15<η<300の範囲がさらに好ましく、18<η<150の範囲が特に好ましく、20<η<140の範囲が最も好ましい。
本発明の電解液のイオン伝導度σ(mS/cm)について述べると、1≦σであるのが好ましい。本発明の電解液のイオン伝導度σ(mS/cm)につき、あえて、上限を含めた好適な範囲を示すと、2<σ<200の範囲が好ましく、3<σ<100の範囲がより好ましく、4<σ<50の範囲がさらに好ましく、5<σ<35の範囲が特に好ましい。
本発明の電解液においては、金属塩と有機溶媒の存在環境が特異的なクラスターが形成されている。ここで、一般的なイオン液体を構成するイオン半径の大きなカチオン及びアニオンと比較して、本発明の電解液のクラスターの半径は小さいと推定される。そうすると、電極と電解液との界面に整列できるイオンの絶対量が増加するため、本発明のキャパシタの電気容量は、従来の電解液、又は、イオン液体からなる電解液を具備したキャパシタの電気容量と比較して向上する。
また、本発明の電解液は陽イオンが金属イオンであるので、本発明のキャパシタの負極に金属イオンを挿入脱離して酸化還元反応を行うことができる炭素などの材料を使用する事で、負極はイオンを挿入した状態の電位となりえるので、キャパシタの電圧を向上させることが出来る。たとえば、陽イオンとしてリチウムを用いた塩からなる電解液を用いると、電極構成を変更する事で電気二重層キャパシタにもなり、リチウムイオンキャパシタにもなる。特に、リチウムイオンキャパシタは電圧的なメリットを有しており、キャパシタの高エネルギー化を担う一方向となっている。一般に、リチウムイオンキャパシタはリチウムを含む電解液を備える事が必要であるが、通常の電気二重層キャパシタに用いられる電解液はリチウムを含んでいないため使用できない。そのため、リチウムイオンキャパシタの電解液として、リチウムイオン二次電池用電解液を使用している。しかし、カチオンがリチウムである本発明の電解液は、リチウムを含んでいる為、電気二重層キャパシタだけでなくリチウムイオンキャパシタにも適用が出来る。なお、リチウムイオンキャパシタとする場合には、より性能を発揮する為に、あらかじめリチウムイオンを電極にドープする行程を必要とする。ドープ工程としては、電極に金属リチウムを貼り付け、金属リチウムを電解液に浸漬し溶解することでドープしても良いし、特許第4732072号に開示されるように、開口した集電体を用いた捲回型リチウムイオンキャパシタの外周部と中心部に金属リチウムを配置して、充電作業を行うことによりドープしても良い。またJ. Electrochem. Soc. 2012, Volume 159, Issue 8, Pages A1329-A1334.に開示されるように、過剰リチウムを含む遷移金属酸化物を正極中にあらかじめ添加し、充電を行う事でリチウムのドープを行っても良い。過剰リチウムを含む遷移金属酸化物は構造内にリチウムの占める割合が大きいため、当該遷移金属酸化物がリチウムをほぼ放出し終わると、遷移金属酸化物の粒子形状は微粉化される。当該微粉化された粒子形状の遷移金属酸化物は、活性炭に比べてリチウム吸着量は低いものの、リチウム吸着容量を示す。そのため、リチウムイオンキャパシタの正極に添加した過剰リチウムを含む遷移金属酸化物に導電処理を行うことで、リチウム放出後の遷移金属酸化物を正極の吸着サイトとする事が出来る。リチウム過剰の遷移金属酸化物は、一般の電極に用いられる炭素に比べて表面積は小さいが密度は高い為、体積エネルギー的に有利に働く可能性がある。
本発明の電解液の製造方法を説明する。本発明の電解液は従来の電解液と比較して金属塩の含有量が多いため、固体(粉体)の金属塩に有機溶媒を加える製造方法では凝集体が得られてしまい、溶液状態の電解液を製造するのが困難である。よって、本発明の電解液の製造方法においては、有機溶媒に対し金属塩を徐々に加え、かつ、電解液の溶液状態を維持しながら製造することが好ましい。
金属塩と有機溶媒の種類に因り、本発明の電解液は、従来考えられてきた飽和溶解度を超えて金属塩が有機溶媒に溶解している液体を包含する。そのような本発明の電解液の製造方法は、ヘテロ元素を有する有機溶媒と金属塩とを混合し、金属塩を溶解して、第1電解液を調製する第1溶解工程と、撹拌及び/又は加温条件下、前記第1電解液に前記金属塩を加え、前記金属塩を溶解し、過飽和状態の第2電解液を調製する第2溶解工程と、撹拌及び/又は加温条件下、前記第2電解液に前記金属塩を加え、前記金属塩を溶解し、第3電解液を調製する第3溶解工程を含む。
ここで、上記「過飽和状態」とは、撹拌及び/又は加温条件を解除した場合、又は、振動等の結晶核生成エネルギーを与えた場合に、電解液から金属塩結晶が析出する状態のことを意味する。第2電解液は「過飽和状態」であり、第1電解液及び第3電解液は「過飽和状態」でない。
換言すると、本発明の電解液の上記製造方法は、熱力学的に安定な液体状態であり従来の金属塩濃度を包含する第1電解液を経て、熱力学的に不安定な液体状態の第2電解液を経由し、そして、熱力学的に安定な新たな液体状態の第3電解液、すなわち本発明の電解液となる。
安定な液体状態の第3電解液は通常の条件で液体状態を保つことから、第3電解液においては、例えば、リチウム塩1分子に対し有機溶媒2分子で構成されこれらの分子間の強い配位結合によって安定化されたクラスターがリチウム塩の結晶化を阻害していると推定される。
第1溶解工程は、ヘテロ原子を有する有機溶媒と金属塩とを混合し、金属塩を溶解して、第1電解液を調製する工程である。
ヘテロ原子を有する有機溶媒と金属塩とを混合するためには、ヘテロ原子を有する有機溶媒に対し金属塩を加えても良いし、金属塩に対しヘテロ原子を有する有機溶媒を加えても良い。
第1溶解工程は、撹拌及び/又は加温条件下で行われるのが好ましい。撹拌速度については適宜設定すればよい。加温条件については、ウォーターバス又はオイルバスなどの恒温槽で適宜制御するのが好ましい。金属塩の溶解時には溶解熱が発生するので、熱に不安定な金属塩を用いる場合には、温度条件を厳密に制御することが好ましい。また、あらかじめ、有機溶媒を冷却しておいても良いし、第1溶解工程を冷却条件下で行ってもよい。
第1溶解工程と第2溶解工程は連続して実施しても良いし、第1溶解工程で得た第1電解液を一旦保管(静置)しておき、一定時間経過した後に、第2溶解工程を実施しても良い。
第2溶解工程は、撹拌及び/又は加温条件下、第1電解液に金属塩を加え、金属塩を溶解し、過飽和状態の第2電解液を調製する工程である。
第2溶解工程は、熱力学的に不安定な過飽和状態の第2電解液を調製するため、撹拌及び/又は加温条件下で行うことが必須である。ミキサー等の撹拌器を伴った撹拌装置で第2溶解工程を行うことにより、撹拌条件下としても良いし、撹拌子と撹拌子を動作させる装置(スターラー)を用いて第2溶解工程を行うことにより、撹拌条件下としても良い。加温条件については、ウォーターバス又はオイルバスなどの恒温槽で適宜制御するのが好ましい。もちろん、撹拌機能と加温機能を併せ持つ装置又はシステムを用いて第2溶解工程を行うことが特に好ましい。なお、本発明の電解液の製造方法でいう加温とは、対象物を常温(25℃)以上の温度に温めることを指す。加温温度は30℃以上であるのがより好ましく、35℃以上であるのがさらに好ましい。また、加温温度は、有機溶媒の沸点よりも低い温度であるのが良い。
第2溶解工程において、加えた金属塩が十分に溶解しない場合には、撹拌速度の増加及び/又はさらなる加温を実施する。この場合には、第2溶解工程の電解液にヘテロ原子を有する有機溶媒を少量加えてもよい。
第2溶解工程で得た第2電解液を一旦静置すると金属塩の結晶が析出してしまうので、第2溶解工程と第3溶解工程は連続して実施するのが好ましい。
第3溶解工程は、撹拌及び/又は加温条件下、第2電解液に金属塩を加え、金属塩を溶解し、第3電解液を調製する工程である。第3溶解工程では、過飽和状態の第2電解液に金属塩を加え、溶解する必要があるので、第2溶解工程と同様に撹拌及び/又は加温条件下で行うことが必須である。具体的な撹拌及び/又は加温条件は、第2溶解工程の条件と同様である。
第1溶解工程、第2溶解工程及び第3溶解工程を通じて加えた有機溶媒と金属塩とのモル比が概ね2:1程度となれば、第3電解液(本発明の電解液)の製造が終了する。撹拌及び/又は加温条件を解除しても、本発明の電解液から金属塩結晶は析出しない。これらの事情からみて、本発明の電解液は、例えば、リチウム塩1分子に対し有機溶媒2分子からなり、これらの分子間の強い配位結合によって安定化されたクラスターを形成していると推定される。
なお、本発明の電解液を製造するにあたり、金属塩と有機溶媒の種類に因り、各溶解工程での処理温度において、上記過飽和状態を経由しない場合であっても、上記第1〜3溶解工程で述べた具体的な溶解手段を用いて本発明の電解液を適宜製造することができる。
また、本発明の電解液の製造方法においては、製造途中の電解液を振動分光測定する振動分光測定工程を有するのが好ましい。具体的な振動分光測定工程としては、例えば、製造途中の各電解液を一部サンプリングして振動分光測定に供する方法でも良いし、各電解液をin situ(その場)で振動分光測定する方法でも良い。電解液をin situで振動分光測定する方法としては、透明なフローセルに製造途中の電解液を導入して振動分光測定する方法、又は、透明な製造容器を用いて該容器外からラマン測定する方法を挙げることができる。
本発明の電解液の製造方法に振動分光測定工程を含めることにより、電解液におけるIsとIoとの関係を製造途中で確認できるため、製造途中の電解液が本発明の電解液に達したのか否かを判断することができるし、また、製造途中の電解液が本発明の電解液に達していない場合にどの程度の量の金属塩を追加すれば本発明の電解液に達するのかを把握することができる。
本発明の電解液には、上記ヘテロ元素を有する有機溶媒以外に、低極性(低誘電率)または低ドナー数であって、金属塩と特段の相互作用を示さない溶媒、すなわち、本発明の電解液における上記クラスターの形成および維持に影響を与えない溶媒を加えることができる。このような溶媒を本発明の電解液に加えることにより、本発明の電解液の上記クラスターの形成を保持したままで、電解液の粘度を低くする効果が期待できる。
金属塩と特段の相互作用を示さない溶媒としては、具体的にベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1−メチルナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンを例示することができる。
また、本発明の電解液には、上記ヘテロ元素を有する有機溶媒以外に、難燃性の溶媒を加えることができる。難燃性の溶媒を本発明の電解液に加えることにより、本発明の電解液の安全度をさらに高めることができる。難燃性の溶媒としては、四塩化炭素、テトラクロロエタン、ハイドロフルオロエーテルなどのハロゲン系溶媒、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのリン酸誘導体を例示することができる。
さらに、本発明の電解液をポリマーや無機フィラーと混合し混合物とすると、当該混合物が電解液を封じ込め、擬似固体電解質となる。擬似固体電解質を電解液として用いることで、キャパシタにおける電解液の液漏れを抑制することができる。
上記ポリマーとしては、リチウムイオン二次電池などの電池に使用されるポリマーや一般的な化学架橋したポリマーを採用することができる。特に、ポリフッ化ビニリデンやポリヘキサフルオロプロピレンなど電解液を吸収しゲル化し得るポリマーや、ポリエチレンオキシドなどのポリマーにイオン導電性基を導入したものが好適である。
具体的なポリマーとしては、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリグリシドール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリクロトン酸、ポリアンゲリカ酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリカルボン酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、無水マレイン酸とグリコール類を共重合した不飽和ポリエステル、置換基を有するポリエチレンオキシド誘導体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を例示できる。また、上記ポリマーとして、上記具体的なポリマーを構成する二種類以上のモノマーを共重合させた共重合体を選択しても良い。
上記ポリマーとして、多糖類も好適である。具体的な多糖類として、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、アミロペクチン、キシログルカン、アミロースを例示できる。また、これら多糖類を含む材料を上記ポリマーとして採用してもよく、当該材料として、アガロースなどの多糖類を含む寒天を例示することができる。
上記無機フィラーとしては、酸化物や窒化物などの無機セラミックスが好ましい。
無機セラミックスはその表面に親水性及び疎水性の官能基を有している。そのため、当該官能基が電解液を引き付けることにより、無機セラミックス内に導電性通路が形成され得る。さらに、電解液で分散した無機セラミックスは前記官能基により無機セラミックス同士のネットワークを形成し、電解液を封じ込める役割を果たし得る。無機セラミックスのこのような機能により、キャパシタにおける電解液の液漏れをさらに好適に抑制することができる。無機セラミックスの上記機能を好適に発揮するために、無機セラミックスは粒子形状のものが好ましく、特にその粒子径がナノ水準のものが好ましい。
無機セラミックスの種類としては、一般的なアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、リチウムリン酸塩などを挙げることができる。また、無機セラミックス自体にリチウム伝導性があるものでも良く、具体的には、LiN、LiI、LiI−LiN−LiOH、LiI−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiO−B、LiO−V−SiO、LiO−B−P、LiO−B−ZnO、LiO−Al−TiO−SiO−P、LiTi(PO、Li−βAl、LiTaOを例示することができる。
無機フィラーとしてガラスセラミックスを採用してもよい。ガラスセラミックスはイオン液体を封じ込めることができるので、本発明の電解液に対しても同様の効果を期待できる。ガラスセラミックスとしては、xLiS−(1−x)Pで表される化合物、並びに、当該化合物のSの一部を他の元素で置換したもの、及び、当該化合物のPの一部をゲルマニウムに置換したものを例示できる。
以上説明した本発明の電解液は、優れたイオン伝導度を示すので、キャパシタの電解液として好適に使用される。キャパシタとしては、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタが好ましい。
以下、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオンキャパシタについて説明する。
本発明の電気二重層キャパシタ及びリチウムイオンキャパシタは、本発明の電解液と、一対の電極と、セパレータを具備する。
電極は、集電体と、集電体上に形成され、炭素材料を含む炭素含有層とで構成される。
集電体は、電気の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、通常の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタに用いられるものであればよく、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護膜で被覆されていても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
炭素含有層は、炭素材料、並びに、必要に応じて結着剤(分散剤)及び導電助剤を含む。
炭素材料としては、通常の電気二重層キャパシタに用いられるものであればよく、種々の原料から製造した活性炭を挙げることができる。活性炭は、比表面積の大きなものが好ましい。また、ポリアセンなどの導電性高分子や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N -オキシル(TEMPO)のようにアニオンの吸脱着により容量が大きくなるようなレドックスキャパシタに使われる材料であっても良い。
ただし、リチウムイオンキャパシタの負極の炭素含有層の炭素材料は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料である必要があるため、天然黒鉛又は人造黒鉛などの黒鉛含有材料となる。
結着剤は炭素材料及び導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。
結着剤としては、通常の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタに用いられるものであればよく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。炭素含有層中の結着剤の配合割合は、質量比で、炭素材料:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては、通常の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタに用いられるものであればよく、炭素質微粒子であるカーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて炭素含有層に添加することができる。炭素含有層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、炭素材料:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。
また、リチウムイオンキャパシタの正極の炭素含有層は、リチウム酸化物、リチウム酸化物と活性炭の混合物又はカーボン被覆リチウム酸化物を含んでいてもよい。リチウム酸化物としては、LiaMO(5≦a≦6、Mは1種以上の遷移金属である。)を挙げることができ、具体的には、LiFeO、LiMnO、LiCoO等の逆蛍石型構造のリチウム酸化物を挙げることができる。これらのリチウム酸化物は、上で説明した「過剰リチウムを含む遷移金属酸化物」に該当する。過剰リチウムを含む遷移金属酸化物は、正極の炭素含有層に均一に分散されているのが好ましい。
集電体の表面に炭素含有層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に炭素材料などを塗布すればよい。具体的には、炭素材料、及び、必要に応じて結着剤、導電助剤、リチウム酸化物と活性炭の固溶体、カーボン被覆リチウム酸化物を含む炭素含有層形成用組成物を調製し、この組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。過剰リチウムを含む遷移金属酸化物を含む炭素含有層を具備する正極の好適な製造方法としては、活性炭等の炭素材料及び過剰リチウムを含む遷移金属酸化物を混合した混合物に、適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、正極集電体の表面に塗布後、乾燥する方法を挙げることができる。
セパレータは、一対の電極を互いに隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止するためのものである。セパレータとしては、通常の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタに用いられるものであればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、ガラス繊維、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。本発明の電解液は粘度がやや高く極性が高いため、水などの極性溶媒が浸み込みやすい膜が好ましい。具体的には、存在する空隙の90%以上に水などの極性溶媒が浸み込む膜がさらに好ましい。セパレータの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましく、20〜60μmが特に好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタは、通常の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタの製造方法に準じて製造すればよい。なお、本発明のリチウムイオンキャパシタの負極にリチウムイオンをプレドープするためには、一般的なリチウムイオンキャパシタのプレドープと同様に金属リチウムを用いて行えばよい。ここで、本発明のリチウムイオンキャパシタの正極の炭素含有層に、リチウム酸化物又はカーボン被覆リチウム酸化物が含まれていれば、これらのリチウム酸化物を利用して、リチウムイオンのプレドープを行うことができる。そして、リチウム酸化物又はカーボン被覆リチウム酸化物からリチウムイオンが脱着したものは、正極の活物質として機能することができる。
本発明のキャパシタの形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のキャパシタは、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にキャパシタによる電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。キャパシタを搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、蓄電装置で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のキャパシタは、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明のキャパシタの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(実施例1)
本発明の電解液を以下のとおり製造した。
有機溶媒である1,2−ジメトキシエタン約5mLを、撹拌子及び温度計を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中の1,2−ジメトキシエタンに対し、リチウム塩である(CFSONLiを溶液温度が40℃以下を保つように徐々に加え、溶解させた。約13gの(CFSONLiを加えた時点で(CFSONLiの溶解が一時停滞したので、上記フラスコを恒温槽に投入し、フラスコ内の溶液温度が50℃となるよう加温し、(CFSONLiを溶解させた。約15gの(CFSONLiを加えた時点で(CFSONLiの溶解が再び停滞したので、1,2−ジメトキシエタンをピペットで1滴加えたところ、(CFSONLiは溶解した。さらに(CFSONLiを徐々に加え、所定の(CFSONLiを全量加えた。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまで1,2−ジメトキシエタンを加えた。これを実施例1の電解液とした。得られた電解液は容積20mLであり、この電解液に含まれる(CFSONLiは18.38gであった。実施例1の電解液における(CFSONLiの濃度は3.2mol/Lであった。実施例1の電解液においては、(CFSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.6分子が含まれている。
なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
(実施例2)
16.08gの(CFSONLiを用い、実施例1と同様の方法で、(CFSONLiの濃度が2.8mol/Lである実施例2の電解液を製造した。実施例2の電解液においては、(CFSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン2.1分子が含まれている。
(実施例3)
有機溶媒であるアセトニトリル約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のアセトニトリルに対し、リチウム塩である(CFSONLiを徐々に加え、溶解させた。(CFSONLiを全量で19.52g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでアセトニトリルを加えた。これを実施例3の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
実施例3の電解液における(CFSONLiの濃度は3.4mol/Lであった。実施例3の電解液においては、(CFSONLi1分子に対しアセトニトリル3分子が含まれている。
(実施例4)
24.11gの(CFSONLiを用い、実施例3と同様の方法で、(CFSONLiの濃度が4.2mol/Lである実施例4の電解液を製造した。実施例4の電解液においては、(CFSONLi1分子に対しアセトニトリル1.9分子が含まれている。
(実施例5)
リチウム塩として13.47gの(FSONLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、(FSONLiの濃度が3.6mol/Lである実施例5の電解液を製造した。実施例5の電解液においては、(FSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.9分子が含まれている。
(実施例6)
14.97gの(FSONLiを用い、実施例5と同様の方法で、(FSONLiの濃度が4.0mol/Lである実施例6の電解液を製造した。実施例6の電解液においては、(FSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.5分子が含まれている。
(実施例7)
リチウム塩として15.72gの(FSONLiを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、(FSONLiの濃度が4.2mol/Lである実施例7の電解液を製造した。実施例7の電解液においては、(FSONLi1分子に対しアセトニトリル3分子が含まれている。
(実施例8)
16.83gの(FSONLiを用い、実施例7と同様の方法で、(FSONLiの濃度が4.5mol/Lである実施例8の電解液を製造した。実施例8の電解液においては、(FSONLi1分子に対しアセトニトリル2.4分子が含まれている。
(実施例9)
18.71gの(FSONLiを用い、実施例7と同様の方法で、(FSONLiの濃度が5.0mol/Lである実施例9の電解液を製造した。実施例9の電解液においては、(FSONLi1分子に対しアセトニトリル2.1分子が含まれている。
(実施例10)
20.21gの(FSONLiを用い、実施例7と同様の方法で、(FSONLiの濃度が5.4mol/Lである実施例10の電解液を製造した。実施例10の電解液においては、(FSONLi1分子に対しアセトニトリル2分子が含まれている。
(実施例11)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で14.64g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを実施例11の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
実施例11の電解液における(FSONLiの濃度は3.9mol/Lであった。実施例11の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート2分子が含まれている。
(実施例12)
実施例11の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が3.4mol/Lの実施例12の電解液とした。実施例12の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート2.5分子が含まれている。
(実施例13)
実施例11の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.9mol/Lの実施例13の電解液とした。実施例13の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート3分子が含まれている。
(実施例14)
実施例11の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.6mol/Lの実施例14の電解液とした。実施例14の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート3.5分子が含まれている。
(実施例15)
実施例11の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.0mol/Lの実施例15の電解液とした。実施例15の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート5分子が含まれている。
(実施例16)
有機溶媒であるエチルメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のエチルメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で12.81g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでエチルメチルカーボネートを加えた。これを実施例16の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
実施例16の電解液における(FSONLiの濃度は3.4mol/Lであった。実施例16の電解液においては、(FSONLi1分子に対しエチルメチルカーボネート2分子が含まれている。
(実施例17)
実施例16の電解液にエチルメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.9mol/Lの実施例17の電解液とした。実施例17の電解液においては、(FSONLi1分子に対しエチルメチルカーボネート2.5分子が含まれている。
(実施例18)
実施例16の電解液にエチルメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.2mol/Lの実施例18の電解液とした。実施例18の電解液においては、(FSONLi1分子に対しエチルメチルカーボネート3.5分子が含まれている。
(実施例19)
有機溶媒であるジエチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジエチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で11.37g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジエチルカーボネートを加えた。これを実施例19の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
実施例19の電解液における(FSONLiの濃度は3.0mol/Lであった。実施例19の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジエチルカーボネート2分子が含まれている。
(実施例20)
実施例19の電解液にジエチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.6mol/Lの実施例20の電解液とした。実施例20の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジエチルカーボネート2.5分子が含まれている。
(実施例21)
実施例19の電解液にジエチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が2.0mol/Lの実施例21の電解液とした。実施例21の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジエチルカーボネート3.5分子が含まれている。
(実施例22)
リチウム塩として9.23gのLiBFを用いた以外は、実施例11と同様の方法で、LiBFの濃度が4.9mol/Lである実施例22の電解液を製造した。実施例22の電解液においては、LiBF1分子に対しジメチルカーボネート2分子が含まれている。
(実施例23)
リチウム塩として13.37gのLiPFを用いた以外は、実施例11と同様の方法で、LiPFの濃度が4.4mol/Lである実施例23の電解液を製造した。実施例23の電解液においては、LiPF1分子に対しジメチルカーボネート2分子が含まれている。
(比較例1)
5.74gの(CFSONLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、(CFSONLiの濃度が1.0mol/Lである比較例1の電解液を製造した。比較例1の電解液においては、(CFSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン8.3分子が含まれている。
(比較例2)
5.74gの(CFSONLiを用い、実施例3と同様の方法で、(CFSONLiの濃度が1.0mol/Lである比較例2の電解液を製造した。比較例2の電解液においては、(CFSONLi1分子に対しアセトニトリル16分子が含まれている。
(比較例3)
3.74gの(FSONLiを用い、実施例5と同様の方法で、(FSONLiの濃度が1.0mol/Lである比較例3の電解液を製造した。比較例3の電解液においては、(FSONLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン8.8分子が含まれている。
(比較例4)
3.74gの(FSONLiを用い、実施例7と同様の方法で、(FSONLiの濃度が1.0mol/Lである比較例4の電解液を製造した。比較例4の電解液においては、(FSONLi1分子に対しアセトニトリル17分子が含まれている。
(比較例5)
有機溶媒としてエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3:7、以下、「EC/DEC」ということがある。)を用い、リチウム塩として3.04gのLiPFを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、LiPFの濃度が1.0mol/Lである比較例5の電解液を製造した。
(比較例6)
実施例11の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が1.1mol/Lの比較例6の電解液とした。比較例6の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジメチルカーボネート10分子が含まれている。
(比較例7)
実施例16の電解液にエチルメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が1.1mol/Lの比較例7の電解液とした。比較例7の電解液においては、(FSONLi1分子に対しエチルメチルカーボネート8分子が含まれている。
(比較例8)
実施例19の電解液にジエチルカーボネートを加えて希釈し、(FSONLiの濃度が1.1mol/Lの比較例8の電解液とした。比較例8の電解液においては、(FSONLi1分子に対しジエチルカーボネート7分子が含まれている。
表3に実施例及び比較例の電解液の一覧を示す。
(評価例1:IR測定)
実施例3、実施例4、実施例7、実施例8、実施例10、比較例2、比較例4の電解液、並びに、アセトニトリル、(CFSONLi、(FSONLiにつき、以下の条件でIR測定を行った。2100〜2400cm−1の範囲のIRスペクトルをそれぞれ図1〜図10に示す。図の横軸は波数(cm−1)であり、縦軸は吸光度(反射吸光度)である。
実施例11〜実施例21、比較例6〜8の電解液、並びに、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートにつき、以下の条件でIR測定を行った。1900〜1600cm−1の範囲のIRスペクトルをそれぞれ図11〜図27に示す。また、(FSONLiにつき、1900〜1600cm−1の範囲のIRスペクトルを図28に示す。図の横軸は波数(cm−1)であり、縦軸は吸光度(反射吸光度)である。
さらに、実施例22〜実施例23の電解液につき、以下の条件でIR測定を行った。1900〜1600cm−1の範囲のIRスペクトルをそれぞれ図29〜図30に示す。図の横軸は波数(cm−1)であり、縦軸は吸光度(反射吸光度)である。
IR測定条件
装置:FT−IR(ブルカーオプティクス社製)
測定条件:ATR法(ダイヤモンド使用)
測定雰囲気:不活性ガス雰囲気下
図8で示されるアセトニトリルのIRスペクトルの2250cm−1付近には、アセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。なお、図9で示される(CFSONLiのIRスペクトル及び図10で示される(FSONLiのIRスペクトルの2250cm−1付近には、特段のピークが観察されなかった。
図1で示される実施例3の電解液のIRスペクトルには、2250cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.00699)観察された。さらに図1のIRスペクトルには、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.05828で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=8×Ioであった。
図2で示される実施例4の電解液のIRスペクトルには、2250cm−1付近にアセトニトリル由来のピークが観察されず、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.05234で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであった。
図3で示される実施例7の電解液のIRスペクトルには、2250cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.00997)観察された。さらに図3のIRスペクトルには、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.08288で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=8×Ioであった。図4で示される実施例8の電解液のIRスペクトルについても、図3のIRチャートと同様の強度のピークが同様の波数に観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=11×Ioであった。
図5で示される実施例10の電解液のIRスペクトルには、2250cm−1付近にアセトニトリル由来のピークが観察されず、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.07350で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであった。
図6で示される比較例2の電解液のIRスペクトルには、図8と同じく、2250cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Io=0.04441で観察された。さらに図6のIRスペクトルには、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.03018で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs<Ioであった。
図7で示される比較例4の電解液のIRスペクトルには、図8と同じく、2250cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Io=0.04975で観察された。さらに図7のIRスペクトルには、2250cm−1付近から高波数側にシフトした2280cm−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.03804で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs<Ioであった。
図17で示されるジメチルカーボネートのIRスペクトルの1750cm−1付近には、ジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。なお、図28で示される(FSONLiのIRスペクトルの1750cm−1付近には、特段のピークが観察されなかった。
図11で示される実施例11の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.16628)観察された。さらに図11のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.48032で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.89×Ioであった。
図12で示される実施例12の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.18129)観察された。さらに図12のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.52005で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.87×Ioであった。
図13で示される実施例13の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.20293)観察された。さらに図13のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.53091で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.62×Ioであった。
図14で示される実施例14の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.23891)観察された。さらに図14のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.53098で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.22×Ioであった。
図15で示される実施例15の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.30514)観察された。さらに図15のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.50223で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=1.65×Ioであった。
図16で示される比較例6の電解液のIRスペクトルには、1750cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが(Io=0.48204)観察された。さらに図16のIRスペクトルには、1750cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.39244で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs<Ioであった。
図22で示されるエチルメチルカーボネートのIRスペクトルの1745cm−1付近には、エチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
図18で示される実施例16の電解液のIRスペクトルには、1745cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.13582)観察された。さらに図18のIRスペクトルには、1745cm−1付近から低波数側にシフトした1711cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.45888で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=3.38×Ioであった。
図19で示される実施例17の電解液のIRスペクトルには、1745cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.15151)観察された。さらに図19のIRスペクトルには、1745cm−1付近から低波数側にシフトした1711cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.48779で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=3.22×Ioであった。
図20で示される実施例18の電解液のIRスペクトルには、1745cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.20191)観察された。さらに図20のIRスペクトルには、1745cm−1付近から低波数側にシフトした1711cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.48407で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.40×Ioであった。
図21で示される比較例7の電解液のIRスペクトルには、1745cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが(Io=0.41907)観察された。さらに図21のIRスペクトルには、1745cm−1付近から低波数側にシフトした1711cm−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.33929で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs<Ioであった。
図27で示されるジエチルカーボネートのIRスペクトルの1742cm−1付近には、ジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
図23で示される実施例19の電解液のIRスペクトルには、1742cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.11202)観察された。さらに図23のIRスペクトルには、1742cm−1付近から低波数側にシフトした1706cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.42925で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=3.83×Ioであった。
図24で示される実施例20の電解液のIRスペクトルには、1742cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.15231)観察された。さらに図24のIRスペクトルには、1742cm−1付近から低波数側にシフトした1706cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.45679で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=3.00×Ioであった。
図25で示される実施例21の電解液のIRスペクトルには、1742cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.20337)観察された。さらに図25のIRスペクトルには、1742cm−1付近から低波数側にシフトした1706cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.43841で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.16×Ioであった。
図26で示される比較例8の電解液のIRスペクトルには、1742cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが(Io=0.39636)観察された。さらに図26のIRスペクトルには、1742cm−1付近から低波数側にシフトした1709cm−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.31129で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs<Ioであった。
図29で示される実施例22の電解液のIRスペクトルには、1747cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.24305)観察された。さらに図29のIRスペクトルには、1747cm−1付近から低波数側にシフトした1719cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.42654で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=1.75×Ioであった。
図30で示される実施例23の電解液のIRスペクトルには、1743cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに(Io=0.18779)観察された。さらに図30のIRスペクトルには、1743cm−1付近から低波数側にシフトした1717cm−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがピーク強度Is=0.49461で観察された。IsとIoのピーク強度の関係はIs>Ioであり、Is=2.63×Ioであった。
(評価例2:イオン伝導度)
実施例1〜2、4〜6、8〜9、11、13、16、19、22〜23の電解液のイオン伝導度を以下の条件で測定した。結果を表4に示す。
イオン伝導度測定条件
Ar雰囲気下、白金極を備えたセル定数既知のガラス製セルに、電解液を封入し、30℃、1kHzでのインピーダンスを測定した。インピーダンスの測定結果から、イオン伝導度を算出した。測定機器はSolartron 147055BEC(ソーラトロン社)を使用した。
実施例1〜2、4〜6、8〜9、11、13、16、19、22〜23の電解液は、いずれもイオン伝導性を示した。よって、本発明の電解液は、いずれも各種の電解液として機能し得ると理解できる。
(評価例3:粘度)
実施例1〜2、4〜6、8〜9、11、13、16、19、並びに比較例1〜4、6〜8の電解液の粘度を以下の条件で測定した。結果を表5に示す。
粘度測定条件
落球式粘度計(AntonPaar GmbH(アントンパール社)製 Lovis 2000M)を用い、Ar雰囲気下、試験セルに電解液を封入し、30℃の条件下で粘度を測定した。
実施例1〜2、4〜6、8〜9、11、13、16、19の電解液の粘度は、比較例1〜4、6〜8の電解液の粘度と比較して、著しく高かった。よって、本発明の電解液を用いたキャパシタであれば、仮にキャパシタが破損したとしても、電解液漏れが抑制される。
(評価例4:揮発性)
実施例2、4、8、11、13、比較例1、2、4、6の電解液の揮発性を以下の方法で測定した。
約10mgの電解液をアルミニウム製のパンに入れ、熱重量測定装置(TAインスツルメント社製、SDT600)に配置し、室温での電解液の重量変化を測定した。重量変化(質量%)を時間で微分することで揮発速度を算出した。揮発速度のうち最大のものを選択し、表6に示した。
実施例2、4、8、11、13の電解液の最大揮発速度は、比較例1、2、4、6の最大揮発速度と比較して、著しく小さかった。よって、本発明の電解液を用いたキャパシタは、仮に損傷したとしても、電解液の揮発速度が小さいため、キャパシタ外への有機溶媒の急速な揮発が抑制される。
(評価例5:燃焼性)
実施例4、比較例2の電解液の燃焼性を以下の方法で試験した。
電解液をガラスフィルターにピペットで3滴滴下し、電解液をガラスフィルターに保持させた。当該ガラスフィルターをピンセットで把持し、そして、当該ガラスフィルターに接炎させた。
実施例4の電解液は15秒間接炎させても引火しなかった。他方、比較例2の電解液は5秒余りで燃え尽きた。
本発明の電解液は燃焼しにくいことが裏付けられた。
(評価例6:Li輸率)
実施例2、8、比較例4、5の電解液のLi輸率を以下の条件で測定した。結果を表7に示す。
Li輸率測定条件
電解液を入れたNMR管をPFG−NMR装置(ECA−500、日本電子)に供し、Li、19Fを対象として、スピンエコー法を用い、磁場パルス幅を変化させながら、各電解液中のLiイオン及びアニオンの拡散係数を測定した。Li輸率は以下の式で算出した。
Li輸率=(Liイオン拡散係数)/(Liイオン拡散係数+アニオン拡散係数)
実施例2、8の電解液のLi輸率は、比較例4、5の電解液のLi輸率と比較して、著しく高かった。ここで、電解液のLiイオン伝導度は、電解液に含まれるイオン伝導度(全イオン電導度)にLi輸率を乗じて算出することができる。そうすると、本発明の電解液は、同程度のイオン伝導度を示す従来の電解液と比較して、リチウムイオン(カチオン)の輸送速度が高いといえる。
また、実施例8の電解液につき、温度を変化させた場合のLi輸率を、上記Li輸率測定条件に準じて測定した。結果を表8に示す。
表8の結果から、本発明の電解液は、温度に因らず、好適なLi輸率を保つことがわかる。本発明の電解液は、低温でも液体状態を保っているといえる。
(評価例7:低温試験)
実施例11、13、16、19の各電解液をそれぞれ容器に入れ、不活性ガスを充填して密閉した。これらを−30℃の冷凍庫に2日間保管した。保管後に各電解液を観察した。いずれの電解液も固化せず液体状態を維持しており、塩の析出も観察されなかった。
(評価例8:ラマンスペクトル測定)
実施例8、実施例9、比較例4、並びに、実施例11、実施例13、実施例15、比較例6の電解液につき、以下の条件でラマンスペクトル測定を行った。各電解液の金属塩のアニオン部分に由来するピークが観察されたラマンスペクトルをそれぞれ図31〜図37に示す。図の横軸は波数(cm−1)であり、縦軸は散乱強度である。
ラマンスペクトル測定条件
装置:レーザーラマン分光光度計(日本分光株式会社NRSシリーズ)
レーザー波長:532nm
不活性ガス雰囲気下で電解液を石英セルに密閉し、測定に供した。
図31〜33で示される実施例8、実施例9、比較例4の電解液のラマンスペクトルの700〜800cm−1には、アセトニトリルに溶解したLiFSAの(FSONに由来する特徴的なピークが観察された。ここで、図31〜33から、LiFSAの濃度の増加に伴い、上記ピークが高波数側にシフトするのがわかる。電解液が高濃度化するに従い、塩のアニオンに該当する(FSONがLiと相互作用する状態になる、換言すると、濃度が低い場合はLiとアニオンはSSIP(Solvent−separated ion pairs)状態を主に形成しており、高濃度化に伴いCIP(Contact ion pairs)状態やAGG(aggregate)状態を主に形成していると推察される。そして、かかる状態の変化がラマンスペクトルのピークシフトとして観察されたと考察できる。
図34〜37で示される実施例11、実施例13、実施例15、比較例6の電解液のラマンスペクトルの700〜800cm−1には、ジメチルカーボネートに溶解したLiFSAの(FSONに由来する特徴的なピークが観察された。ここで、図34〜37から、LiFSAの濃度の増加に伴い、上記ピークが高波数側にシフトするのがわかる。この現象は、前段落で考察したのと同様に、電解液が高濃度化するに従い、塩のアニオンに該当する(FSONがLiと相互作用する状態になり、そして、かかる状態の変化がラマンスペクトルのピークシフトとして観察されたと考察できる。
(実施例24)
実施例8の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
径13.82mm、面積1.5cm、厚み20μmのアルミニウム箔(JIS A1000番系)を作用極とし、対極は金属Liとした。セパレータは、厚み400μmのWhatmanガラスフィルター不織布:品番1825−055を用いた。
作用極、対極、セパレータおよび実施例8の電解液を電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しハーフセルを構成した。これを実施例24のハーフセルとした。
(実施例25)
実施例11の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、実施例25のハーフセルを作製した。
(実施例26)
実施例13の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、実施例26のハーフセルを作製した。
(実施例27)
実施例16の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、実施例27のハーフセルを作製した。
(実施例28)
実施例19の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、実施例28のハーフセルを作製した。
(比較例9)
比較例5の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、比較例9のハーフセルを作製した。
(比較例10)
比較例6の電解液を用いた以外は、実施例24のハーフセルと同様にして、比較例10のハーフセルを作製した。
(評価例9:作用極Alでのサイクリックボルタンメトリー評価)
実施例24〜25、27〜28および比較例9のハーフセルに対して、3.1V〜4.6V、1mV/sの条件で5サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行い、その後、3.1V〜5.1V、1mV/sの条件で5サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行った。実施例24〜25、27〜28および比較例9のハーフセルに対する電位と応答電流との関係を示すグラフを図38〜図46に示す。
また、実施例25、26及び比較例10のハーフセルに対して、3.0V〜4.5V、1mV/sの条件で、10サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行い、その後、3.0V〜5.0V、1mV/sの条件で、10サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行った。実施例25、26及び比較例10のハーフセルに対する電位と応答電流との関係を示すグラフを図47〜図52に示す。
図46から、比較例9のハーフセルでは、2サイクル以降も3.1Vから4.6Vにかけて電流が流れ、高電位になるに従い電流が増大しているのがわかる。また、図51および図52から、比較例10のハーフセルにおいても同様に、2サイクル以降も3.0Vから4.5Vにかけて電流が流れ、高電位になるに従い電流が増大している。この電流は、作用極のアルミニウムが腐食したことによるAlの酸化電流と推定される。
他方、図38〜図45から、実施例24〜25、27〜28のハーフセルでは2サイクル以降は3.1Vから4.6Vにかけてほとんど電流が流れていないことがわかる。4.3V以上では電位上昇に伴いわずかに電流の増大が観察されるものの、サイクルを繰り返すに従い、電流の量は減少し、定常状態に向かった。特に、実施例25、27〜28のハーフセルは、高電位である5.1Vまで電流の顕著な増大が観察されず、しかも、サイクルの繰り返しに伴い電流量の減少が観察された。
また、図47〜図50から、実施例25、26のハーフセルにおいても同様に、2サイクル以降は3.0Vから4.5Vにかけてほとんど電流が流れていないことがわかる。特に3サイクル目以降では4.5Vに至るまで電流の増大はほぼない。そして、実施例26のハーフセルでは高電位となる4.5V以降に電流の増大がみられるが、これは比較例10のハーフセルにおける4.5V以降の電流値に比べると遙かに小さい値である。実施例25のハーフセルについては、4.5V以降も5.0Vに至るまで電流の増大はほぼなく、サイクルの繰り返しに伴い電流量の減少が観察された。
サイクリックボルタンメトリー評価の結果から、5Vを超える高電位条件でも、実施例8、実施例11、実施例13、実施例16および実施例19の各電解液のアルミニウムに対する腐食性は低いといえる。すなわち、実施例8、実施例11、実施例13、実施例16および実施例19の各電解液は、集電体などにアルミニウムを用いたキャパシタに対し、好適な電解液といえる。
(実施例29)
本発明のキャパシタを以下のとおり製造した。
本発明のキャパシタの正極及び負極として、宝泉株式会社製のMDLC−105N2を用いた。実施例10の電解液をガラスフィルターに浸み込ませたものと、上記正極及び上記負極とで、コイン型のセルを作成した。このセルを実施例29のキャパシタとした。なお、正極及び負極はセル作製前に120℃で24時間真空乾燥させたものを使用し、セル作製は不活性ガス雰囲気下、露点が−70℃以下に調整したグローブボックス内で行った。
(比較例11)
電解液として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)アミドを用いた以外は、実施例29と同様の方法で、比較例11のキャパシタを製造した。
(評価例10)
実施例29及び比較例11のキャパシタにつき、以下の試験を行った。
各キャパシタに対し、電流密度100mA/g、Cut-off電圧0〜1Vにて、10回の充放電を行い、これをコンディショニングとした。各キャパシタにおけるコンディショニングの最後の充放電曲線を図53に示す。
図53から、実施例29のキャパシタは比較例11のキャパシタと比較して容量が大きいのがわかる。
また、上記充放電を経た実施例29及び比較例11のキャパシタに対し、Cut-off電圧0〜2Vにて、電流密度100、500、1000、2000mA/gで充放電を行った。結果を表9に示す。
実施例29のキャパシタは比較例11のキャパシタと同等以上の容量を示した。特に、高レートの充放電においても、実施例29のキャパシタは十分な容量を示した。
(実施例30)
キャパシタの正極及び負極として、宝泉株式会社製のMDLC−105N2を準備した。実施例22の電解液、厚さ20μmのセルロース製不織布、上記正極及び上記負極とで、コイン型のセルを作成した。このセルを実施例30のキャパシタとした。なお、正極及び負極はセル作製前に120℃で24時間真空乾燥させたものを使用し、セル作製は不活性ガス雰囲気下、露点が−70℃以下に調整したグローブボックス内で行った。
(比較例12)
電解液として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミドを用いた以外は、実施例30と同様の方法で、比較例12のキャパシタを製造した。
(評価例11)
実施例30及び比較例12のキャパシタにつき、以下の試験を行った。
各キャパシタに対し、電流密度100mA/g、Cut-off電圧0〜1Vにて、10回の充放電を行った。上記充放電を経た各キャパシタに対し、Cut-off電圧0〜2.5Vにて、電流密度100mA/gで充放電を行った。結果を図54及び表10に示す。なお、充放電効率とは、充電容量に対する放電容量の割合である。上記と同様にして、実施例30のキャパシタに対し、Cut-off電圧0〜2V、0〜2.5V、0〜3V、0〜4Vにて、電流密度100mA/gで充放電を行った。Cut-off電圧0〜2V、0〜2.5V、0〜3Vの充放電曲線を図55〜57に示し、各放電曲線を図58に示し、各放電容量を表11に示す。
図54から、比較例12のキャパシタの充電カーブは充電の途中で直線からずれているのがわかる。当該充電カーブにおいては、特に電圧が2Vを超えたあたりの充電カーブの傾きが小さくなっており、電圧が上昇しにくくなっているのがわかる。この現象は、印加した電流が電解液の分解などの望まれない不可逆反応に用いられているためと推定される。さらに、表10の結果から、比較例12のキャパシタの充放電効率は劣っていることがわかる。他方、実施例30のキャパシタの充電カーブが直線である点、及び、充放電効率が100%である点から、実施例30のキャパシタにおいては印加した電流が電解液の分解などの不可逆反応に用いられずにキャパシタ容量として働いていると考察でき、実施例30のキャパシタは安定に作動しているといえる。
図55〜58に示すように、実施例30のキャパシタは各電位で好適に作動した。特に、実施例30のキャパシタが充電電位4Vにおいても好適に作動したことは特筆に値する。表11の結果から、充電電位の上昇に従い、実施例30のキャパシタの放電容量が好適に上昇していることがわかる。
(実施例31)
本発明のリチウムイオンキャパシタを以下のとおり製造した。
負極は、以下のように製造した。
天然黒鉛と、ポリフッ化ビニリデンと、N−メチル−2−ピロリドンを添加混合し、スラリー状の負極合材を調製した。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、黒鉛:ポリフッ化ビニリデン=90:10(質量比)であった。
ここで用いた天然黒鉛粉末をラマンスペクトル分析(装置:日本分光株式会社製のRMP-320:励起波長λ=532nm、グレーチング:1800gr/mm、分解能:3cm−1)すると、得られるラマンスペクトルのG-bandとD-bandのピークの強度比であるG/D比は12.3であった。
このスラリー状の負極合材を、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成させた。その後、80℃で20分間乾燥し、負極活物質層から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを120℃で6時間真空乾燥して、負極活物質層の目付量0.9mg/cm、密度0.5g/cmの負極を形成した。
負極と、実施例11の電解液と、厚さ20μmのセルロース製不織布と、上記実施例29のキャパシタの正極と同じ正極とでセルを作製し、このセルを実施例31のリチウムイオンキャパシタとした。
(評価例12)
実施例31のリチウムイオンキャパシタにつき、以下の試験を行った。
キャパシタに対し、電流密度20mA/g、Cut-off電圧0〜1Vにて、充放電曲線が安定するまで充放電を行った。上記充放電を経たキャパシタに対し、電流密度20mA/gで4.5Vまで充電を行い、電圧4.5Vで2時間保持し、次いで、電流密度20mA/gで2.5Vまで放電を行うとの充放電を、キャパシタの充放電曲線が安定するまで複数回行った。最後の充放電曲線を図59に示す。
図59の充放電曲線から、高電位において実施例31のリチウムイオンキャパシタがリチウムイオンキャパシタとして好適に作動したことがわかる。実施例31のリチウムイオンキャパシタは、負極に黒鉛を用いており、かつ、高濃度でリチウム塩が含まれている本発明の電解液を用いている。ここで、一般的に負極に黒鉛を用いたリチウムイオンキャパシタは、負極電位を下げるために、あらかじめリチウムイオンをドープした状態が必要とされる。しかし、本発明の電解液を用いた実施例31のリチウムイオンキャパシタは、負極の黒鉛にリチウムイオンのプレドープ作業を行っていないにも関わらず、高電位においてリチウムイオンキャパシタとして安定に作動した。これは、従来の電解液よりも大過剰でリチウムイオンが存在している本発明の電解液を用いた環境下、リチウムイオンキャパシタを高電位で作動させたことにより、電解液中のリチウムイオンが徐々に負極の黒鉛にドープされた結果といえる。すなわち、本発明のリチウムイオンキャパシタは、系外からのリチウムのプレドープが不要との利点を有する。なお、以下の実施例32で示すように、通常のリチウムイオンキャパシタで行われるリチウムのプレドープを実施しても、本発明のリチウムイオンキャパシタを製造することができる。
上述のとおり、負極に黒鉛を用いたリチウムイオンキャパシタに本発明の電解液を用いることで、黒鉛にあらかじめリチウムイオンをドープしなくても、充放電により本発明の電解液中のリチウムイオンが黒鉛に挿入して、キャパシタの負極電位が下がり、リチウムイオンキャパシタとなることが証明された。ここで、黒鉛が電位によって電解液に含まれるカチオンやアニオンを挿入及び脱離し得ることが広く知られている。したがって、アニオンが正極に挿入及び脱離するタイプのキャパシタ、すなわち正極に黒鉛を用いたキャパシタを提供することができる。
(実施例32)
通常のリチウムイオンキャパシタで行われるリチウムのプレドープを実施した場合の本発明のリチウムイオンキャパシタは以下のとおり製造できる。
負極は、以下のように製造する。
天然黒鉛と、ポリフッ化ビニリデンと、N−メチル−2−ピロリドンを添加混合し、スラリー状の負極合材を調製する。スラリー中の各成分(固形分)の組成比は、黒鉛:ポリフッ化ビニリデン=90:10(質量比)である。
このスラリー状の負極合材を、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成する。その後、80℃で20分間乾燥し、負極活物質層から有機溶媒を揮発させて除去する。乾燥後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させる。これを120℃で6時間真空乾燥して、負極活物質層の目付量0.9mg/cm、密度0.5g/cmの負極を形成する。負極の負極活物質層に金属リチウムを圧着し、これと、比較例5の電解液、及び公知の炭素電極とでセルを作成し、リチウムプレドープ用セルとする。リチウムプレドープ用セルを数サイクル充放電し、放電状態(負極活物質にリチウムがドープされた状態)でセルを解体し、リチウムプレドープ負極を取り出す。
リチウムプレドープ負極と、実施例11の電解液をガラスフィルターに浸み込ませたものと、上記実施例29のキャパシタの正極と同じ正極とでセルを作製し、このセルを実施例32のリチウムイオンキャパシタとする。
さて、リチウムイオンキャパシタは、既述のとおり、充放電時に負極及び電解液の間でリチウムイオン二次電池と等しい電気化学反応(電池反応)を伴うため、負極及び電解液の間で生じる電気化学反応(電池反応)には可逆性と速度が求められる。そこで、リチウムイオンキャパシタに求められる負極及び電解液の間で生じる電気化学反応(電池反応)の可逆性と速度を評価するため、以下のハーフセルでの電池評価を実施した。
(実施例33)
実施例8の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
活物質である平均粒径10μmの黒鉛90質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、活物質層が形成された銅箔を得た。これを作用極とした。
対極は金属Liとした。
作用極、対極、両者の間に挟装したセパレータとしての厚さ400μmのWhatmanガラス繊維ろ紙及び実施例8の電解液を電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しハーフセルを構成した。これを実施例33のハーフセルとした。
(比較例13)
電解液として比較例5の電解液を用いた以外は、実施例33と同様の方法で、比較例13のハーフセルを製造した。
(評価例13:レート特性)
実施例33、比較例13のハーフセルのレート特性を以下の方法で試験した。
ハーフセルに対し、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cレート(1Cとは一定電流において1時間で電池を完全充電または放電させるために要する電流値を意味する。)で充電を行った後に放電を行い、それぞれの速度における作用極の容量(放電容量)を測定した。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。0.1Cレートでの作用極の容量に対する他のレートにおける容量の割合(レート特性)を算出した。結果を表12に示す。
実施例33のハーフセルは、0.2C、0.5C、1C、2Cのいずれのレートにおいても、比較例13のハーフセルと比較して、容量の低下が抑制されており、優れたレート特性を示した。本発明の電解液の存在下で、黒鉛含有電極が優れたレート特性を示すことが裏付けられたといえる。
(評価例14:急速充放電の繰り返しに対する応答性)
実施例33、比較例13のハーフセルに対し、1Cレートで充放電を3回繰り返した際の、容量と電圧の変化を観察した。結果を図60に示す。
比較例13のハーフセルは充放電を繰り返すに伴い、1Cレートで電流を流した場合の分極が大きくなる傾向があり、2Vから0.01Vに到達するまでに得られる容量が急速に低下した。他方、実施例33のハーフセルは充放電を繰り返しても、図60において3本の曲線が重なっている様からも確認できるように分極の増減がほとんどなく、好適に容量を維持した。比較例13において分極が増加した理由として、急速に充放電を繰り返した際の電解液中に生じたLi濃度ムラに因り、電極との反応界面に十分な量のLiを電解液が供給できなくなったこと、つまり、電解液のLi濃度の偏在が考えられる。実施例33では、Li濃度が高い本発明の電解液を用いたことで、電解液のLi濃度の偏在を抑制できたものと考えられる。本発明の電解液の存在下での急速充放電に対し、黒鉛含有電極が優れた応答性を示すことが裏付けられたといえる。
(実施例34)
実施例8の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
活物質である平均粒径10μmの黒鉛90質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、活物質層が形成された銅箔を得た。これを作用極とした。なお、銅箔1cmあたりの活物質の質量は1.48mgであった。また、プレス前の黒鉛及びポリフッ化ビニリデンの密度は0.68g/cmであり、プレス後の活物質層の密度は1.025g/cmであった。
対極は金属Liとした。
作用極、対極、両者の間に挟装したセパレータとしての厚さ400μmの Whatmanガラス繊維ろ紙及び実施例8の電解液を、径13.82mmの電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しハーフセルを構成した。これを実施例34のハーフセルとした。
(実施例35)
電解液として実施例11の電解液を用いた以外は、実施例34と同様の方法で、実施例35のハーフセルを製造した。
(実施例36)
電解液として実施例16の電解液を用いた以外は、実施例34と同様の方法で、実施例36のハーフセルを製造した。
(実施例37)
電解液として実施例19の電解液を用いた以外は、実施例34と同様の方法で、実施例37のハーフセルを製造した。
(比較例14)
電解液として比較例5の電解液を用いた以外は、実施例34と同様の方法で、比較例14のハーフセルを製造した。
(評価例15:レート特性)
実施例34〜37、比較例14のハーフセルのレート特性を以下の方法で試験した。ハーフセルに対し、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cレート(1Cとは一定電流において1時間で電池を完全充電または放電させるために要する電流値を意味する。)で充電を行った後に放電を行い、それぞれの速度における作用極の容量(放電容量)を測定した。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。0.1Cレートでの作用極の容量に対する他のレートにおける容量の割合(レート特性)を算出した。結果を表13に示す。
実施例34、35、36、37のハーフセルは0.2C、0.5C、1Cのレートにおいて、さらに、実施例34、35は2Cのレートにおいても比較例14のハーフセルと比較して、容量低下が抑制されており、優れたレート特性を示すことが裏付けられた。また、本発明の電解液の存在下で、黒鉛含有電極が優れたレート特性を示すことが裏付けられたともいえる。
(評価例16:容量維持率)
実施例34〜37、比較例14のハーフセルの容量維持率を以下の方法で試験した。
各ハーフセルに対し、25℃、電圧2.0VまでCC充電(定電流充電)し、電圧0.01VまでCC放電(定電流放電)を行う2.0V−0.01Vの充放電サイクルを、充放電レート0.1Cで3サイクル行い、その後、0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10Cの順で各充放電レートにつき3サイクルずつ充放電を行い、最後に0.1Cで3サイクル充放電を行った。各ハーフセルの容量維持率(%)は以下の式で求めた。
容量維持率(%)=B/A×100
A:最初の0.1C充放電サイクルにおける2回目の作用極の放電容量
B:最後の0.1Cの充放電サイクルにおける2回目の作用極の放電容量
結果を表14に示す。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。
いずれのハーフセルも、良好に充放電反応を行い、好適な容量維持率を示した。特に、実施例35、36、37のハーフセルの容量維持率は著しく優れていた。また、本発明の電解液の存在下で、黒鉛含有電極が優れた容量維持率を示すことが裏付けられたともいえる。
(評価例17:充放電の可逆性)
実施例34〜37、比較例14のハーフセルに対し、25℃、電圧2.0VまでCC充電(定電流充電)し、電圧0.01VまでCC放電(定電流放電)を行う2.0V−0.01Vの充放電サイクルを、充放電レート0.1Cで3サイクル行った。各ハーフセルの充放電曲線を図61〜65に示す。
図61〜65に示されるように、実施例34〜37のハーフセルは、一般的な電解液を用いた比較例14のハーフセルと同様に、可逆的に充放電反応することがわかる。また、本発明の電解液の存在下で、黒鉛含有電極が可逆的に充放電反応することが裏付けられたともいえる。
(実施例38)
電解液として実施例9の電解液を用いた以外は、実施例33と同様の方法で、実施例38のハーフセルを得た。
(比較例15)
電解液として比較例5の電解液を用いた以外は、実施例33と同様の方法で、比較例15のハーフセルを得た。
(評価例18:低温でのレート特性)
実施例38と比較例15のハーフセルを用い、−20℃でのレート特性を以下のとおり評価した。結果を図66及び図67に示す。
(1) 負極(評価極)へのリチウム吸蔵が進行する向きに電流を流す。
(2) 電圧範囲:2V→0.01V(v.s.Li/Li+
(3) レート:0.02C、0.05C、0.1C、0.2C、0.5C (0.01V到達後に電流を停止)
なお、1Cは、一定電流において1時間で電池を完全充電、又は放電させるために要する電流値を示す。
図66及び図67から、各電流レートにおける実施例38のハーフセルの電圧カーブは、比較例15のハーフセルの電圧カーブと比較して、高い電圧を示しているのがわかる。本発明の電解液の存在下で、黒鉛含有電極が低温環境においても優れたレート特性を示すことが裏付けられたといえる。
本発明の電解液として、以下の電解液を具体的に挙げる。なお、以下の電解液には、既述のものも含まれている。
(電解液A)
本発明の電解液を以下のとおり製造した。
有機溶媒である1,2−ジメトキシエタン約5mLを、撹拌子及び温度計を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中の1,2−ジメトキシエタンに対し、リチウム塩である(CFSONLiを溶液温度が40℃以下を保つように徐々に加え、溶解させた。約13gの(CFSONLiを加えた時点で(CFSONLiの溶解が一時停滞したので、上記フラスコを恒温槽に投入し、フラスコ内の溶液温度が50℃となるよう加温し、(CFSONLiを溶解させた。約15gの(CFSONLiを加えた時点で(CFSONLiの溶解が再び停滞したので、1,2−ジメトキシエタンをピペットで1滴加えたところ、(CFSONLiは溶解した。さらに(CFSONLiを徐々に加え、所定の(CFSONLiを全量加えた。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまで1,2−ジメトキシエタンを加えた。得られた電解液は容積20mLであり、この電解液に含まれる(CFSONLiは18.38gであった。これを電解液Aとした。電解液Aにおける(CFSONLiの濃度は3.2mol/Lであり、密度は1.39g/cmであった。密度は20℃で測定した。
なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
(電解液B)
電解液Aと同様の方法で、(CFSONLiの濃度が2.8mol/Lであり、密度が1.36g/cmである、電解液Bを製造した。
(電解液C)
有機溶媒であるアセトニトリル約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のアセトニトリルに対し、リチウム塩である(CFSONLiを徐々に加え、溶解させた。所定の(CFSONLiを加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでアセトニトリルを加えた。これを電解液Cとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液Cは、(CFSONLiの濃度が4.2mol/Lであり、密度が1.52g/cmであった。
(電解液D)
電解液Cと同様の方法で、(CFSONLiの濃度が3.0mol/Lであり、密度が1.31g/cmである、電解液Dを製造した。
(電解液E)
有機溶媒としてスルホランを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(CFSONLiの濃度が3.0mol/Lであり、密度が1.57g/cmである、電解液Eを製造した。
(電解液F)
有機溶媒としてジメチルスルホキシドを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(CFSONLiの濃度が3.2mol/Lであり、密度が1.49g/cmである、電解液Fを製造した。
(電解液G)
リチウム塩として(FSONLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(FSONLiの濃度が4.0mol/Lであり、密度が1.33g/cmである、電解液Gを製造した。
(電解液H)
電解液Gと同様の方法で、(FSONLiの濃度が3.6mol/Lであり、密度が1.29g/cmである、電解液Hを製造した。
(電解液I)
電解液Gと同様の方法で、(FSONLiの濃度が2.4mol/Lであり、密度が1.18g/cmである、電解液Iを製造した。
(電解液J)
有機溶媒としてアセトニトリルを用いた以外は、電解液Gと同様の方法で、(FSONLiの濃度が5.0mol/Lであり、密度が1.40g/cmである、電解液Jを製造した。
(電解液K)
電解液Jと同様の方法で、(FSONLiの濃度が4.5mol/Lであり、密度が1.34g/cmである、電解液Kを製造した。
(電解液L)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で14.64g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを電解液Lとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液Lにおける(FSONLiの濃度は3.9mol/Lであり、電解液Lの密度は1.44g/cmであった。
(電解液M)
電解液Lと同様の方法で、(FSONLiの濃度が2.9mol/Lであり、密度が1.36g/cmである、電解液Mを製造した。
(電解液N)
有機溶媒であるエチルメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のエチルメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で12.81g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでエチルメチルカーボネートを加えた。これを電解液Nとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液Nにおける(FSONLiの濃度は3.4mol/Lであり、電解液Nの密度は1.35g/cmであった。
(電解液O)
有機溶媒であるジエチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジエチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSONLiを徐々に加え、溶解させた。(FSONLiを全量で11.37g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジエチルカーボネートを加えた。これを電解液Oとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液Oにおける(FSONLiの濃度は3.0mol/Lであり、電解液Oの密度は1.29g/cmであった。
(電解液P)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩であるLiBFを徐々に加え、溶解させた。LiBFを全量で9.23g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを電解液Pとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液PにおけるLiBFの濃度は4.9mol/Lであり、電解液Pの密度は1.30g/cmであった。
(電解液Q)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩であるLiPFを徐々に加え、溶解させた。LiPFを全量で13.37g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを電解液Qとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
電解液QにおけるLiPFの濃度は4.4mol/Lであり、電解液Qの密度は1.46g/cmであった。
表15に上記電解液の一覧を示す。

Claims (14)

  1. アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルミニウムをカチオンとする塩と、ヘテロ元素を有する有機溶媒とを含む電解液を具備するキャパシタであって、
    前記電解液の振動分光スペクトルにおける前記有機溶媒由来のピーク強度につき、前記有機溶媒本来のピークの強度をIoとし、前記ピークがシフトしたピークの強度をIsとした場合、Is>Ioであることを特徴とするキャパシタ。
  2. 前記塩のカチオンがリチウムである請求項1に記載のキャパシタ。
  3. 前記塩のアニオンの化学構造が、ハロゲン、ホウ素、窒素、酸素、硫黄又は炭素から選択される少なくとも1つの元素を含む請求項1又は2に記載のキャパシタ。
  4. 前記塩のアニオンの化学構造が下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される請求項1〜3のいずれかに記載のキャパシタ。
    (R)(R)N 一般式(1)
    (Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、R、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
    Y 一般式(2)
    (Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、Rは、Rと結合して環を形成しても良い。
    Yは、O、Sから選択される。)
    (R)(R)(R)C 一般式(3)
    (Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、R、Rのうち、いずれか2つ又は3つが結合して環を形成しても良い。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、R、R、R、R、Rは、R、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
  5. 前記塩のアニオンの化学構造が下記一般式(4)、一般式(5)又は一般式(6)で表される請求項1〜4のいずれかに記載のキャパシタ。
    (R)(R)N 一般式(4)
    (R、Rは、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
    n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
    また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、R、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
    Y 一般式(5)
    (Rは、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
    n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、Rは、Rと結合して環を形成しても良い。
    Yは、O、Sから選択される。)
    (R1010)(R1111)(R1212)C 一般式(6)
    (R10、R11、R12は、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
    n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
    10、R11、R12のうちいずれか2つが結合して環を形成しても良く、その場合、環を形成する基は2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。また、R10、R11、R12の3つが結合して環を形成しても良く、その場合、3つのうち2つの基が2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たし、1つの基が2n−1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
    10は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    11は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    12は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、R、R、R、R、Rは、R10、R11又はR12と結合して環を形成しても良い。)
  6. 前記塩のアニオンの化学構造が下記一般式(7)、一般式(8)又は一般式(9)で表される請求項1〜5のいずれかに記載のキャパシタ。
    (R13SO)(R14SO)N 一般式(7)
    (R13、R14は、それぞれ独立に、CClBrである。
    n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
    また、R13とR14は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+eを満たす。)
    15SO 一般式(8)
    (R15は、CClBrである。
    n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。)
    (R16SO)(R17SO)(R18SO)C 一般式(9)
    (R16、R17、R18は、それぞれ独立に、CClBrである。
    n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
    16、R17、R18のうちいずれか2つが結合して環を形成しても良く、その場合、環を形成する基は2n=a+b+c+d+eを満たす。また、R16、R17、R18の3つが結合して環を形成しても良く、その場合、3つのうち2つの基が2n=a+b+c+d+eを満たし、1つの基が2n−1=a+b+c+d+eを満たす。)
  7. 前記塩が(CFSONLi、(FSONLi、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、又は(SOCFCFCFSO)NLiである請求項1〜6のいずれかに記載のキャパシタ。
  8. 前記有機溶媒のヘテロ元素が窒素、酸素、硫黄、ハロゲンから選択される少なくとも1つである請求項1〜7のいずれかに記載のキャパシタ。
  9. 前記有機溶媒が非プロトン性溶媒である請求項1〜8のいずれかに記載のキャパシタ。
  10. 前記有機溶媒がアセトニトリル又は1,2−ジメトキシエタンから選択される請求項1〜9のいずれかに記載のキャパシタ。
  11. 前記有機溶媒が下記一般式(10)で示される鎖状カーボネートから選択される請求項1〜9のいずれかに記載のキャパシタ。
    19OCOOR20 一般式(10)
    (R19、R20は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるCClBr、又は、環状アルキルを化学構造に含むCClBrのいずれかから選択される。n、a、b、c、d、e、m、f、g、h、i、jはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e、2m=f+g+h+i+jを満たす。)
  12. 前記有機溶媒がジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートから選択される請求項1〜9、11のいずれかに記載のキャパシタ。
  13. 前記キャパシタが電気二重層キャパシタである請求項1〜12のいずれかに記載のキャパシタ。
  14. 前記キャパシタがリチウムイオンキャパシタである請求項1〜12のいずれかに記載のキャパシタ。
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