以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。先ずは、表面自由エネルギーについて説明する。
(表面自由エネルギー)
本発明の表面自由エネルギーは下記の方法により算出した値を用いる。先ず、光学フィルムの機能性層面の接触角(θ)を、次の3成分(純水、エチレングリコール、ジエチレングリコール)により、23℃、55%条件下で12時間放置後、23℃、55%条件下で、協和界面科学株式会社製、商品名Drop Master DM100を用いて測定する。尚、各成分の接触角は、それぞれ5回測定し、その値を平均する。次いで、下記のヤング・フォークズ式を用いて表面自由エネルギーを求める。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)/2
γSd=固体の表面自由エネルギーの分散力成分
γLd=液体の表面自由エネルギーの分散力成分
γSp=固体の表面自由エネルギーの極性力成分
γLp=液体の表面自由エネルギーの極性力成分
γSh=固体の表面自由エネルギーの水素結合成分
γLh=固体の表面自由エネルギーの水素結合成分
3成分(純水、エチレングリコール、ジエチレグリコール)の表面自由エネルギーの分散力成分、極性力成分、水素結合力成分は日本接着協会誌vol.15,No.3,p96に記載の数値を用いる。
本発明者の鋭意検討の結果、機能性層の表面自由エネルギーが40mN/m以上において、空隙充填剤である硬化性樹脂と機能性層との表面自由エネルギーの差が抑制される事で、空隙充填剤の優れた濡れ性が確保され、更に空隙充填剤の塗膜均一性に優れるばかりか、空隙充填剤と機能性層との層間密着性が高まり、耐久試験後も良好な密着性能が得られることがわかった。
機能性層の表面エネルギーの好ましい範囲としては、40mN/m以上80mN/m以下である。
また、本発明の効果を良好に発揮するため、機能性層はアルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)を10°以上とする事が好ましい。次にアルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)について説明する。
<アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)>
本発明の光学フィルムは、機能性層のアルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)が10°以上が本発明の目的効果から好ましい。 さらに好ましくは、10°以上55°以下である。
ここで、アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)は、光学フィルムのアルカリ処理前の機能性層の水接触角(θ)から、少なくとも下記に示す条件で、アルカリ処理された後の機能性層の水接触角(θa)を引いて、アルカリ処理前後の水接触角の差(θΔ)とした値である。
アルカリ処理条件としては、50℃の2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、光学フィルムを120秒間浸漬処理した条件で有る。
尚、水接触角は23℃、55%RHの条件下で、12時間放置後、前記接触角計を用いて、5回測定を行い、その測定値を平均した値である。
機能性層がアルカリ処理後に親水性を示す表面特性(濡れ性)となることで、空隙充填剤である硬化性樹脂層と機能性層との界面での密着性が高まり、耐久試験後の層間密着性が良好に得られる。また、アルカリ処理後に水接触角が低下する事が本発明においては好ましい様態である。
本発明のアルカリ処理は、少なくとも光学フィルムをアルカリ溶液に浸潰した後(以下、鹸化工程とも言う)、水洗して乾燥する工程を含み、アルカリ処理の条件が前記した条件である。更に、アルカリ処理後、酸性水工程で中和してから、水洗、及び乾燥を行ってもよい。
後述する化合物などの添加剤の種類や量、機能性層形成方法の硬化条件(酸素濃度調整など)を調整することで、アルカリ処理前後の水接触角の差(θΔ)が前記を満たすように調整できる。
<光学フィルム>
(機能性層)
本発明に係る機能性層は、樹脂を主成分して構成される層である。具体的には、活性線硬化樹脂を含有することが、機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層である。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が特に機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体、多塩基酸性アクリレート等が好ましく挙げられる。
本発明の目的効果から、本発明に係る機能性層は、多塩基酸性アクリレートを含有することが好ましい。多塩基性アクリレートの市販品としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸変成物、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変成物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変成物、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸変成物、多塩基酸変性アクリルオリゴマー等を挙げる事が出来る。市販品としてはアロニックスM−510,アロニックスM−520(東亞合成社製)、DPE6A−MS、PE3A−MP、DPE6A−MP、PE3A−MP(共栄社化学社製)等を挙げる事が出来る。また、含有量としては、機能性層膜を形成する樹脂成分を100とすると質量比で30%以上、含有する事が好ましく、より好ましくは50%以上含有することが好ましい。
また、他の樹脂の市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。
上記活性線硬化樹脂を単独又は2種以上混合しても良い。
また、単官能アクリレートを用いても良い。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜98:2で含有することが好ましい。
(光重合開始剤)
機能性層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤量としては質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及び、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
(ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子)
機能性層がポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子(ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子ともいう)を含有する事で、特に耐久性試験後の密着性に対して、良好な性能発揮する点から好ましい。含有量としては、ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子:活性線硬化樹脂=0.1:100〜10:100で含有することが、より過酷な耐久試験後も優れた密着性能を発揮する点で好ましい。
ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子としては、機能性層に使用されるものであれば特に制限されないが、微粒子としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン等が挙げられ、好ましくはシリカである。シリカ微粒子は、内部に空洞を有する中空粒子でも良い。また、ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の市販品としては、たとえばELCOM V−8804(日揮触媒化成(株)製)を使用することができる。
(ポリマーシランカップリング剤)
ポリマーシランカップリング剤とは、重合性モノマーとシランカップリング剤(シラン化合物)との反応物をいう。このようなポリマーシランカップリング剤は、例えば、特開平11−116240号公報に開示された重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物の製法に準じて得ることができる。
重合性モノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジバーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルシチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、アクリル樹脂モノマー類;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
これら重合性モノマーの重合物(オリゴマー、プレポリマー)を用いることも可能である。これらの重合性モノマーは、単独で用いても良いし、複数を用いても良い。(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
反応性シラン化合物としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
X-R-Si(OR)3 (1)
(式中、Rは、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基を表す。Xは(メタ)アクロイル基、エポキシ基(グリシド基)、ウレタン基、アミノ基、フルオロ基から選ばれる1種または2種以上の官能基。)式(1)で表される有機ケイ素化合物として具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
重合性モノマーと反応性シラン化合物と反応させてポリマーシランカップリング剤が調製される。
具体的には、重合性モノマー100重量部に対し反応性シラン化合物を0.5〜20重量部、さらには1〜10重量部の範囲で混合した有機溶媒溶液を調製し、これに重合開始剤を添加し、加熱することによって得ることができる。
有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは混合して用いることもできる。この時の重合性モノマーと反応性シラン化合物との合計の濃度は、固形分として1〜40重量、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。重合開始剤は、アゾイソブチルニトリル、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサイノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物重合開始剤、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。反応温度は30〜100℃、さらには50〜95℃の範囲にあることが望ましい。反応温度が低いと、反応が遅く、分子量の大きいポリマーシランカップリング剤を調製するには時間がかかりすぎることがあり、反応温度が高すぎるとかえって、反応速度が速すぎてしまい、所望の分子量に制御できない場合がある。ポリマーシランカップリング剤の分子量はポリスチレン換算で2,500〜150,000、さらには2,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。
ポリマーシランカップリング剤の被覆層の厚みは1〜10nm、さらには1〜5nmの範囲が好ましい。被覆層が薄いと微粒子のマトリックス成分への分散性が不充分となる事がある。また、被覆層が厚すぎると、生産性は低下する問題となる。
また、ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子中の被覆層の含有量は、固形分として0.5〜20重量%、さらには1〜15重量%の範囲にあることが望ましい。
(ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の調製方法)
ポリマーシランカップリング被覆微粒子の調製方法について、具体的には微粒子の有機溶媒分散液にポリマーシランカップリング剤を加え、アルカリ存在下にポリマーシランカップリング剤で微粒子を被覆することによって調製できる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
分散液中の微粒子とポリマーシランカップリング剤の合計の濃度は、固形分として1〜30重量%、さらには2〜25重量%の範囲が好ましい。
分散液にアルカリを添加して微粒子にポリマーシランカップリング剤を吸着させる。アルカリ添加により微粒子の表面が活性化(OH基の生成)し、ポリマーシランカップリング剤と微粒子との親和性が高くなり結合する。或いはポリマーシランカップリング剤のOH基と微粒子のOH基との脱水反応が促進して結合を促進するなどが考えられる。
アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の他、アンモニア、アミン類等の塩基性窒素化合物が用いられる。なかでも、塩基性窒素化合物が微粒子へのポリマーシランカップリング剤の吸着および結合が促進され、未吸着のポリマーシランカップリング剤が少ない点から好ましい。
アルカリの使用量は金属酸化物粒子の種類、平均粒子径等によっても異なるが、微粒子の0.001〜0.2質量部、さらには0.005〜0.1質量部の範囲にあることが好ましい。
ついで、ポリマーシランカップリング剤を吸着した微粒子を分離し、乾燥することによってポリマーシランカップリング剤被覆微粒子を得ることができる。
得られるポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の平均粒子径は5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲が、光学フィルムに用いた際の光学特性から好ましい。
機能性層中のポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の含有量は、固形分として0.5〜80質量部、さらには1〜60質量部が機能性層の膜強度から好ましい。
(導電剤)
機能性層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
(添加剤)
機能性層には塗布性から、フッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物やHLB値が3〜18の化合物を含有しても良い。これら添加剤の種類や添加量を調整することで、新水性を制御しやすい。
HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、親水性−親油性−バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。或いはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、これに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。
花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、KF−6004(5)。フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。このようなフッ素−シロキサングラフト化合物は、後述の実施例に記載されているような方法で調製することができる。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またフッ素系化合物としては、DIC株式会社製のメガファックシリーズ(F−477,F−487、F−569等)、ダイキン工業株式会社社製のオプツールDSX、オプツールDACなどを挙げることができる。これら成分は、機能性層組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上、5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
機能性層は、後述するセルロースエステルフィルムで説明する紫外線吸収剤をさらに含有しても良い。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成としては、2層以上で構成される場合には、かつセルロースエステルフィルムと接する機能性層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:機能性層構成樹脂=0.01:100〜10:100で含有することが好ましい。2層以上設ける場合、セルロースエステルフィルムと接する機能性層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上の機能性層をwet on wetで塗布して、機能性層を形成することである。第1機能性層の上に乾燥工程を経ずに、第2機能性層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
(溶剤)
機能性層は、上記した機能性層を形成する成分を、セルロースエステルフィルムを膨潤又は一部溶解をする溶剤で希釈して機能性層組成物として、以下の方法でセルロースフィルム上に塗布、乾燥、硬化してハードコート層を設けることが好ましい。
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。ハードコート層の塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmの範囲が適当で、好ましくは0.5〜30μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜20μmの範囲、好ましくは0.5〜10μmの範囲である。より好ましくは、0.5〜5μmの範囲である。
機能性層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることが出来る。
(機能性層形成方法)
機能性層組成物塗布後、乾燥し、硬化(活性線を照射(UV硬化処理とも言う))し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理しても良い。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れた機能性層を得ることができる。
乾燥は、減率乾燥区間の温度を30℃以上で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は50℃以上である。
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは50〜300mJ/cm2の範囲である。また、UV硬化処理では酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。これにより、前述した添加剤の機能性層面での存在状態をコントロールでき、その結果、θΔを前記範囲に制御しやすい。活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラ上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
光学フィルムは、機能性層を表面改質しても良い。表面改質の方法は、プラズマ照射処理、コロナ照射処理、溶媒処理等があげられる。これらの表面改質の方法は、一種類を単独で行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。
<光学フィルム特性>
(表面形状)
機能性層の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)は、2〜100nmの範囲内が好ましく、特に好ましくは2〜20nmの範囲内である。前記範囲の算術平均粗さRaとすることで、視認性やクリア性に優れる。算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に準じて光学干渉式表面粗さ計(ZYGO社製、NewView)で測定した値である。
(ヘイズ)
光学フィルムのヘイズは、画像表示装置に用いた場合の視認性から0.1〜10%の範囲内であることが好ましい。ヘイズは、JIS−K7105及びJIS K7136に準じて測定できる。
(硬度)
本発明の光学フィルムは、硬度の指標で有る鉛筆硬度がHB以上が好ましい。HB以上であれば、偏光板化工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、機能性層をJIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
<フィルム基材>
次いで、本発明に係るフィルム基材について説明する。フィルム基材としては製造が容易であること、機能性層との接着性が良好である、光学的に等方性であること、透明であること等が好ましい。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム、ポリ乳酸フィルムまたはガラス板等を挙げることが出来る。中でも、セルロースエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましい。
セルロースエステルフィルム(以下、セルロースアセテートフィルムとも言う。)は、例えばトリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等が挙げられる。またセルロースエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー等を併用してもよい。セルロースエステルフィルムの市販品としては、例えばコニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC8UY、KC4UY、KC6UA、KC4UA、KC2UA、KC4UE及びKC4UZ(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が挙げられる。セルロースエステルフィルムの屈折率は1.45〜1.55であることが好ましい。屈折率は、JIS K7142−2008に準じて測定することが出来る。
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステル、セルロース系樹脂ともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%が好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルローストリアセテートとしては、数平均分子量(Mn)が125000以上、155000未満、重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であり、数平均分子量(Mn)が155000以上、180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。
セルロースアセテートプロピオネートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
上記アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(熱可塑性アクリル樹脂)
セルロースエステルフィルムは、熱可塑性アクリル樹脂を併用しても良い。併用する場合には、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50が好ましい。
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を併用してよい。
これらの中でも共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは110000〜500000の範囲内である。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の市販品としては、例えばデルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
(λ/4フィルム)
フィルム基材にはλ/4フィルムを用いても良い。フィルム基材にλ/4フィルムを用いる事で、画像表示装置に本発明の光学フィルムを組み入れた場合、視認性に優れるばかりかクロストークにも優れる点から好ましい。
λ/4フィルムとは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となるフィルムをいう。λ/4フィルムは、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4フィルムであることが好ましい。
λ/4フィルムは、波長550nmで測定した面内リタデーション値Ro(550)が、60nm以上220nm以下の範囲にあることが好ましく、80nm以上200nm以下の範囲であることがより好ましく、90nm以上190nm以下の範囲であることがさらに好ましい。なお、面内リタデーション値Roは、以下の式で表される。
Ro=(nx−ny)×d
ただし、式中、nx、nyは、23℃RH、波長550nmにおける屈折率のうち、フィルムの面内で最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)、およびフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。
Roは、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定により算出することができる。
さらに、λ/4フィルムとして有効に機能するためには、同時に、Ro(590)−Ro(450)≧2nmの関係を満足することが好ましく、Ro(590)−Ro(450)≧5nmであることがより好ましく、Ro(590)−Ro(450)≧10nmであることがさらに好ましい。
λ/4フィルムの遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。実質的に45°とは、30°〜60°の範囲、より望ましくは40°〜50°の範囲であることを意味する。λ/4フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41°〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43°〜47°であることがより一層好ましく、44〜46°であることがさらに好ましい。
λ/4フィルムとしては、光学的に透明な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、前述したセルロース系樹脂などを用いることができる。中でも、耐薬品性の観点から、λ/4フィルムは、セルロース系樹脂またはポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。また、耐熱性の観点から、λ/4フィルムは、セルロース系樹脂であることが好ましい。
λ/4のリタデーション調整としては、前述した樹脂フィルムに以下のリタデーション調整剤を添加しても良い。
(リタデーション調整剤)
リタデーション調整剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することができる。
また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
λ/4フィルムとしては、ポリカーボネート系樹脂も用いる事が出来る。
(ポリカーボネート系樹脂)
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定なく種々のものが使用でき、化学的性質および物性の点から芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。その中でも、ビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、および脂肪族炭化水素基等を導入したビスフェノールA誘導体を用いたものがより好ましい。さらに、ビスフェノールAの中央の炭素に対して、非対称に上記官能基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネート樹脂が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールAの中央の炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカンまたはこれらのハロゲン置換体からホスゲン法またはエステル交換法によって得られるものであり、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等が挙げられる。また、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報、特開2009−126128号公報、特開2012−31369号公報、特開2012−67300号公報、国際公開第00/26705号等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、ポリスチレン系樹脂、メチルメタクリレート系樹脂、およびセルロースアセテート系樹脂等の透明性樹脂と混合して使用してもよい。また、セルロースアセテート系樹脂を用いて形成した樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート系樹脂を含有する樹脂層を積層してもよい。
ポリカーボネート系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものであることが好ましい。また、Tgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものがより好ましい。
ポリカーボネート系樹脂フィルムは公知の方法で製膜することができ、その中でも溶液流延法や溶融流延法が好ましい。
λ/4フィルムとしては、脂環式オレフィンポリマー系樹脂を用いることもできる。
(脂環式オレフィンポリマー系樹脂)
脂環式オレフィンポリマー系樹脂としては、特開平05−310845号公報に記載されている環状オレフィンランダム多元共重合体、特開平05−97978号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体およびその水素添加物等を採用することができる。
脂環式オレフィンポリマー系樹脂は、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造や不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造のごとき脂環式構造を有するポリマーである。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性および長尺フィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式オレフィンポリマー中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式ポリオレフィン樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、本実施形態の長尺斜め延伸フィルムより得られる位相差フィルム等の光学材料の透明性および耐熱性が向上するので好ましい。
脂環構造を有するオレフィンポリマー系樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂およびこれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体またはそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体またはそれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
上記のようなノルボルネン系樹脂を用いた長尺フィルムを成形する方法としては、溶液製膜法や溶融押出法の製造方法が好まれる。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法等が挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
Tダイを用いた押出成形法としては、特開2004−233604号公報に記載されているような、冷却ドラムに密着させる時の溶融状態の熱可塑性樹脂を安定な状態に保つ方法により、リタデーションや配向角といった光学特性のばらつきが小さい長尺フィルムを製造することができる。
具体的には、1)溶融押出法で長尺フィルムを製造する際に、ダイスから押し出されたシート状の熱可塑性樹脂を50kPa以下の圧力下で冷却ドラムに密着させて引き取る方法;2)溶融押出法で長尺フィルムを製造する際に、ダイス開口部から最初に密着する冷却ドラムまでを囲い部材で覆い、囲い部材からダイス開口部または最初に密着する冷却ドラムまでの距離を100mm以下とする方法;3)溶融押出法で長尺フィルムを製造する際に、ダイス開口部から押し出されたシート状の熱可塑性樹脂より10mm以内の雰囲気の温度を特定の温度に加温する方法;4)関係を満たすようにダイスから押し出されたシート状の熱可塑性樹脂を50kPa以下の圧力下で冷却ドラムに密着させて引き取る方法;5)溶融押出法で長尺フィルムを製造する際に、ダイス開口部から押し出されたシート状の熱可塑性樹脂に、最初に密着する冷却ドラムの引取速度との速度差が0.2m/s以下の風を吹き付ける方法;が挙げられる。
この長尺フィルムは、単層若しくは2層以上の積層フィルムであってもよい。積層フィルムは共押出成形法、共流延成形法、フィルムラミネイション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法、共流延成形法が好ましい。
(微粒子)
本発明に係るフィルム基材には、取扱性を向上させる為、例えばアクリル粒子、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。またアクリル粒子は、特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。これらの中でも二酸化ケイ素がセルロースエステルフィルムのヘイズを小さくできる点で好ましい。微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
本発明に係るフィルム基材は、環境変化での寸法安定性から、下記一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステルを含有することが好ましい。先ずは、一般式(X)で表されるエステル化合物について説明する。
一般式(X)B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
一般式(X)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。以下に、一般式(X)で表される化合物の具体例(化合物X−1〜化合物X−17)を示すが、これに限定されない。
次に糖エステル化合物について説明する。糖エステル化合物としては、セルロースエステル以外のエステルであって、下記単糖、二糖、三糖又はオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物である。糖としては例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース及びケストースを挙げることができる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。これらの化合物の中で、特にフラノース構造及び/又はピラノース構造を有する化合物が好ましい。これらの中でも、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。また、オリゴ糖として、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖も好ましく使用することができる。
糖をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸は、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。使用するカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチルーヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−、m、p−アニス酸、クレオソート酸、o−、m、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。エステル化したエステル化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化合物が好ましい。以下に本発明に用いられ得る糖エステル化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
糖エステル化合物は、一般式(Y)で示される化合物が好ましい。以下に、一般式(Y)で示される化合物について説明する。
(式中、R
1〜R
8は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R
1〜R
8は、同じであっても、異なっていてもよい。)
以下に一般式(Y)で示される化合物をより具体的(化合物Y−1〜化合物Y−23)に示すが、これらに限定はされない。なお、下表において平均置換度が8.0未満の場合、R1〜R8のうちのいずれかは水素原子を表す。
置換度分布は、エステル化反応時間の調節、又は置換度違いの化合物を混合することにより目的の置換度に調整できる。
一般式(X)で表わされるエステル化合物又は糖エステル化合物は、セルロースアセテートフィルムに、1〜30質量%含有させることが好ましく、5〜25質量%含有させることがより好ましく、5〜20質量%含有させることが特に好ましい。
(その他の添加剤)
〔可塑剤〕
本発明に係るフィルム基材は、必要に応じて可塑剤を含有しても良い。可塑剤としては、特に限定されないが、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、及び多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。これらの中では、後述するリターデーション値にセルロースエステルフィルムを制御しやすい点から、アクリル系可塑剤が好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。以下に、多価アルコールエステル系可塑剤の具体的例を示すがこれらに限定されるものではない。
グリコレート系可塑剤としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる化合物である。具体例としては、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
アクリル系可塑剤としてはアクリル系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーはアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。アクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。アクリル系ポリマーは上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、またメタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
なお、本発明に係るフィルム基材に、上述した可塑剤を含有させる場合、その使用量はセルロースアセテートに対し、1〜50質量%含有させることが好ましく、5〜35質量%含有させることがより好ましく、5〜25質量%含有させることが特に好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明に係るフィルム基材は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することため、耐久性を向上させるができる。紫外線吸収剤は、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類を好ましく使用できる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などである。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、TINUVIN 928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)などを用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、TINUVIN 460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、TINUVIN 405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス―(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物)などを用いることができる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから、フィルム基材となる樹脂溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアセテートフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
本発明に係るフィルム基材は、さらに酸化防止剤(劣化防止剤)を含有していてもよい。酸化防止剤は、セルロースアセテートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアセテートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。これら化合物の添加量は、セルロースアセテートフィルムに対して、質量割合で1ppm〜10000ppmが好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(欠点)
フィルム基材は、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ローラ傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認できる。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、機能性層を形成したときに、塗膜が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。また、フィルム基材は、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
(光学特性)
フィルム基材は、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。ヘイズ値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。全光線透過率、ヘイズ値はJIS K7361及びJIS K7136に準じて測定することが出来る。
また、フィルム基材の面内リターデーション値Roは0〜5nm、厚さ方向のリターデーション値Rthが−10〜10nmの範囲が好ましい。更にRthは−5〜5nmの範囲が好ましくい。或いはレターデーションRoが30〜200nmの範囲であることが好ましく、30〜90nmの範囲であることが更に好ましい。厚み方向のレターデーションRthは70〜300nmの範囲であることが好ましい。
面内リターデーションRo値は下記式(I)に定義され、厚さ方向のリターデーション値Rthは下記式(II)により定義される。
式(I) Ro=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはセルロースエステルフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム基材面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはセルロースエステルフィルムの厚さ方向の屈折率、dはセルロースエステルフィルムの厚さ(nm)をそれぞれ表す。)
上記リターデーションは、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RH(相対湿度)の環境下で、波長が590nmで求めることができる。
(セルロースエステルフィルムの製膜)
次に、フィルム基材であるセルロースエステルフィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。セルロースエステルフィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
(有機溶媒)
セルロースエステルフィルムを溶液流延製膜法で製造する場合の樹脂溶液(ドープ組成物)を形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。前記溶媒はセルロースエステル樹脂、その他添加剤を計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
〔溶液流延製膜法〕
溶液流延製膜法では、樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったセルロースエステルフィルムを巻き取る工程により行われる。
金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を得るためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量が10〜150質量%であることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
またセルロースエステルフィルムの乾燥工程は、ウェブを金属支持体より剥離し、乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にローラ乾燥方式(上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次又は同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD方向及びTD方向を同時に広げて両方向に延伸する方法等が挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター等の製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120〜200N/mが好ましく、140〜200N/mが更に好ましい。140〜160N/mが最も好ましい。
延伸する際の温度は、セルロースエステルフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、更に好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
セルロースエステルフィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。セルロースエステルフィルムの乾燥時のTgは、110℃以上が好ましく、更に120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。セルロースエステルフィルムのTgはJIS K7121に記載の方法等によって求めることができる。延伸する際の温度は、150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れる為、好ましい。セルロースエステルフィルム表面を粗らすことにより、滑り性が向上するとともに、表面加工性が向上するため好ましい。
〔溶融流延製膜法〕
セルロースエステルフィルムは、溶融流延製膜法によって製膜しても良い。溶融流延製膜法は、セルロースエステル樹脂、可塑剤等のその他の添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
溶融流延製膜法では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化できる程度になるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラでフィルムをニップし、冷却ローラ上で固化させることにより、セルロースエステルフィルムを製膜する。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に調整することが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子等の添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラでセルロースエステルフィルムをニップする際のタッチローラ側のセルロースエステルフィルム温度はフィルムのTg以上(Tg+110℃)以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するローラは、公知のローラが使用できる。
弾性タッチローラは挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからセルロースエステルフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたセルロースエステルフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のローラ延伸機やテンター等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凹凸のパターンを側面に有する金属リングを用いて加熱や加圧をすることにより加工することができる。フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、セルロースエステルフィルムが変形しており製品として使用できないので切除され、再利用される。
<斜め延伸フィルムの製造方法>
前述のλ/4フィルムは、下記斜め延伸により製造する事が出来る。斜め延伸フィルムの製造方法としては、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する延伸フィルムを製造する事で作製できる。尚、斜め延伸前の未延伸フィルムは、前述した公知のフィルムを用いる。
ここで、フィルムの延長方向に対する角度とは、フィルム面内における角度である。遅相軸は、通常延伸方向又は延伸方向に直角な方向に発現するので、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度で延伸を行うことにより、かかる遅相軸を有する延伸フィルムを製造できる。
フィルムの延長方向と遅相軸とがなす角度(配向角θ)は、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができるが、より好ましくは10°〜80°、更に好ましくは40°〜50°である。
(斜め延伸)
斜め延伸装置(斜め延伸テンター)を用いて、斜め延伸フィルムを作製する事ができる。斜め延伸テンターは、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅手方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚みやレターデーションを制御できる装置を好ましく用いる事が出来る。次いで、具体的な斜め延伸フィルムの製造方法を図を用いて説明する。
図2が斜め延伸フィルムの製造方法に用いられる斜め延伸可能なテンターの模式図である。但し、これは一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
テンター入り口側のガイドロール8−1によって方向を制御された未延伸フィルム1は、右側のフィルム保持開始点2−1、左側のフィルム保持開始点2−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、テンター4にて右側のフィルム保持手段の軌跡3−1、左側のフィルム保持手段の軌跡3−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、右側のフィルム保持終了点5−1、左側のフィルム保持終了点5−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドロール8−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム6が形成される。図中、未延伸フィルムは、フィルムの送り方向7−1に対して、フィルムの延伸方向9の角度(配向角θ)で斜め延伸される。
斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドロール8−1の主軸位置と斜め延伸テンターの入り口部の把持具との距離X1、X2は、20〜100cmであることが好ましく、該距離を保つことによってフィルムをつかむ際にフィルムの平面を保ち、長手方向の配向角θやリターデーションといった光学特性を安定させることができる。好ましくは20〜60cm、さらに好ましくは20〜40cmである。ここで、X1は、ガイドロール8−1の主軸位置と右側のフィルム保持開始点2−1にある把持具(クリップつかみ部)の距離であり、X2は、ガイドロール8−1の主軸位置と左側のフィルム保持開始点2−2にある把持具(クリップつかみ部)の距離である。
X1,X2はX1=X2でも、X1≠X2でもどちらでもよいが、好ましくはX1=X2である。本発明では、X1、X2は共に上記20〜100cmの範囲内にあることが好ましい。
斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドロール8−1の主軸位置と斜め延伸テンターの入り口部の把持具との距離が100cm以内であると、斜め延伸フィルムのマルテンス硬さの均一性が向上する。
斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドロール8−1の主軸位置と斜め延伸テンターの把持具との距離を上記範囲とするためには、ガイドロール及びクリップつかみ部を位置調整が可能な機構とすること、把持具の搬送方向の長さを1〜5インチ(1インチは2.54cm)とすること、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドロール8−1の直径を1〜20cmとすること、斜め延伸テンターの入口部近傍に更にロールを設置可能な機構とすること、等が挙げられる。
本発明の斜め延伸フィルムの製造は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行うことが好ましいが、このテンターは、長尺フィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、テンターのレール形状は、製造すべき延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10°〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、10〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
また、斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましく、したがって、任意の入り口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸倍率にすることができる(下記、図3の○部は連結部の一例である。)。
本発明に用いられる斜め延伸テンターにおいて、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
図3は、テンターのレールの軌道(レールパターン)を示している。未延伸フィルムのテンター入口での進行方向DR1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向DR2と異なっており、これにより、比較的大きな配向角θをもつ延伸フィルムにおいても広幅で均一な光学特性を得ることが可能となっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向D1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向DR2とのなす角度である。本発明においては、上述のように好ましくは10°〜80°の配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅手方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる)。
長尺フィルムは、テンター入口(符号aの位置)において、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(DR1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具CL,CRは、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、冷却ゾーンを有するオーブンを通過する。ここで、略垂直とは、前述の向かい合う把持具CL,CR同士を結んだ直線とフィルム繰出し方向DR1とがなす角度が、90±1°以内にあることを示す。
斜め延伸フィルムの延伸後のフィルムにおいて、延伸ゾーンにおける斜め延伸時のフィルム温度が幅手方向に勾配を持つように調整する方法や、予熱ゾーンにおける予熱温度または延伸ゾーンにおける保持温度が幅手方向に勾配を持つように調整する方法をとることがフィルムの弾性率を制御しやすい点で、好ましい。
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、再び一定となるまでの区間をさす。また、冷却ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以下に設定される区間をさす。
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、冷却ゾーンの温度はTg−30℃〜Tgに設定することが好ましい。
なお、フィルム温度が幅手方向に勾配を持つようにするには、予熱ゾーン、または延伸ゾーンにおいて温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅手方向で差を付けるように調整する方法や、ヒーターを幅手方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。
延伸ゾーンにおける斜め延伸時のフィルム温度の幅手方向への勾配は、好ましくは0.5℃〜10.0℃、より好ましくは1.0℃〜5.0℃、最も好ましくは1.5℃〜3.0である。0.5℃より小さい場合は、温度勾配の効果が小さく、フィルム幅手方向のマルテンス硬さを均一にする効果が得られず、10.0℃より大きい場合はフィルム幅手方向に均一なRoが得られない。
予熱ゾーンにおける予熱温度または延伸ゾーンにおける保持温度の幅手方向への勾配は、好ましくは0.5℃〜10.0℃、より好ましくは1.0℃〜5.0℃、最も好ましくは1.5℃〜3.0である。
上記斜め延伸の製造パターンについて、図4、図5に示した。
図中、フィルム繰り出し装置10、搬送方向変更装置11、巻き取り装置12、製膜装置13を各々示した。
フィルム繰り出し装置10、は、斜め延伸テンター入口に対して所定角度で前記フィルムを送り出せるように、スライドおよび旋回可能となっているか、フィルム繰り出し装置10はスライド可能となっており、搬送方向変更装置11により斜め延伸テンター入口に前記フィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。前記フィルム繰り出し装置、搬送方向変更装置をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置および角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さく、かつフィルムの弾性率の均一性に優れた斜め延伸フィルムを得ることが可能となる。また、前記フィルム繰り出し装置、搬送方向変更装置を移動可能とすることにより、前記左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻き取り装置12は、斜め延伸テンター出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように形成することにより、フィルムの引き取り位置および角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さく、かつフィルムの弾性率の均一性に優れた斜め延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの間で調整する必要がある。
前記引取張力が100N/m以下ではフィルムのたるみや皺が発生しやすく、リターデーション、配向軸の幅手方向のプロファイルが劣化する。逆に引取張力が300N/m以上となると幅手方向の配向角のバラツキが悪化し、幅収率(幅方向の取り効率)を悪化させてしまう。
上記引取張力Tの変動を±5%未満、好ましくは±3%未満の精度で制御する必要がある。上記引取張力Tの変動が±5%以上であると、幅手方向及び流れ方向の光学特性のバラツキ、フィルムの弾性率の不均一性が大きくなる。上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、テンター出口部の最初のロールにかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値を一定とするように、一般的なPID制御方式により引取ロールの回転速度を制御する方法が挙げられる。前記荷重を測定する方法としては、ロールの軸受部にロードセルを取り付け、ロールに加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
延伸後のフィルムは、把持具による把持が開放され、テンター出口から排出され、フィルムの両端(両側)がトリミングされた後に、順次巻芯(巻取りロール)に巻き取られて、延伸フィルムの巻回体にすることができる。
また、必要に応じて、巻取ロールに巻き取る前に、テンターの把持具で把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどがあげられる。
斜め延伸フィルムは、配向角θが巻取り方向に対して、例えば10°〜80°の範囲に傾斜しており、少なくとも1300mmの幅において、幅手方向の、面内リターデーションRoのバラツキが4nm以下、配向角θのバラツキが1.0°以下であることが好ましい。
斜め延伸フィルムの面内リターデーションRoのバラツキは、幅手方向の少なくとも1300mmにおいて、4nm以下、好ましくは3nm以下である。面内リターデーションRoのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
斜め延伸フィルムの配向角θのバラツキは、幅手方向の少なくとも1300mmにおいて、1.0°以下、好ましくは0.80°以下である。配向角θのバラツキが1.0°を超える延伸フィルムを偏光板と貼り合せて円偏光板を得、これを液晶表示装置に据え付けると、光漏れが生じ、コントラストを低下させることがある。
斜め延伸フィルムの面内リターデーションRoは、用いられる表示装置の設計によって最適値が選択される。なお、前記Roは、面内遅相軸方向の屈折率nxと面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nyとの差にフィルムの平均厚みdを乗算した値(Ro=(nx−ny)×d)である。
斜め延伸フィルムの平均厚みは、機械的強度などの観点から、好ましくは20〜80μmである。また、幅手方向の厚みムラは、フィルム弾性率の均一性や巻取りの可否に影響を与えるため、3μm以下が好ましい。
(フィルム基材の物性)
フィルム基材の膜厚は、5〜200μmが好ましく、より好ましくは5〜80μmである。また、フィルム基材の長さは、500〜10000mが好ましく、より好ましくは1000〜8000mである。前記長さの範囲とすることで、機能性層等の塗布における加工適正やフィルム基材自体のハンドリング性に優れる。
また、フィルム基材の算術平均粗さRaは、好ましくは2〜10nm、より好ましくは2〜5nmである。算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準じて測定できる。
<その他の層>
本発明の光学フィルムには、反射防止層や導電性層等、その他の層を設けることができる。
〈反射防止層〉
本発明に係る光学フィルムは、機能性層上に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜0.3μmの範囲内であることが更に好ましく、30nm〜0.2μmの範囲内であることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。またフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる熱硬化性及び/又は光硬化性を有する化合物を含有しても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。その他、溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。金属酸化また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができる。
(導電性層)
光学フィルムには、機能性層上に導電性層を形成しても良い。設けられる導電性層としては、一般的に広く知られた導電性材料を用いることができる。例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウム等の金属酸化物を用いることができる。これらは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液塗布法等により、ハードコートフィルム上に薄膜として形成することができる。また、前記したπ共役系導電性ポリマーである有機導電性材料を用いて、導電性層を形成することも可能である。
特に、透明性、導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした導電性材料を好適に使用することができる。導電性層の厚さは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚さであって、経済性をも考慮すると、10nm以上、好ましくは20nm以上、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては導電性層の厚さムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。
<偏光板>
本発明の光学フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。
例えば、本発明の光学フィルムをアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面は、該光学フィルムを用いても、前記したセルロースエステルフィルムなどのフィルム基材を用いてもよい。もう一方の面に用いるフィルム基材の膜厚は、平滑性やカールバランスを整え、巻きズレ防止効果をより高める観点から、5〜80μmの範囲が好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるが、これのみに限定されるものではない。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmである。
偏光膜の面上に、本発明に係る光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、偏光板としては、円偏光板を用いることもできる。
(円偏光板)
円偏光板としては、偏光板保護フィルム、偏光子、λ/4フィルムをこの順で積層して円偏光板を構成することができる。この場合、λ/4フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(または透過軸)とのなす角度は45°である。長尺状偏光板保護フィルム、長尺状偏光子、長尺状λ/4フィルム(長尺斜め延伸フィルム)がこの順で積層して形成されることが好ましい。
円偏光板は、偏光子として、ヨウ素または二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、λ/4フィルム/偏光子の構成で貼合して製造することができる。偏光子の膜厚は、5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理したλ/4フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わされることが好ましい。
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるためにフィルム片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化させることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
<画像表示装置>
本発明の光学フィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性に優れた性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、タッチパネル表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙がられる。これら画像表示装置の中でも液晶表示装置が、高い視認性に優れる点で好ましい。
λ/4板機能を有する光学フィルムから構成される偏光板は立体画像表示装置において、視認性を良好に発揮し、更に画像観賞時に首を傾けた際のクロストークに優れる点から好ましい。立体画像表示装置としては、例えば液晶表示装置と液晶シャッタメガネとからなる立体画像表示装置であって、当該液晶シャッタメガネが、(1)偏光板(λ/4板)、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられている(図6)、又は(2)偏光板(λ/4板)、偏光子、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられる(図7)。
次いで、空隙充填剤(光硬化型樹脂)と光学フィルムを貼り合わせた本発明に係る画像表示装置の構成の一例を示す。
図8に、画像表示装置の構成の一例を示す。図8は、本発明の画像表示装置の構成の一例の概略断面図である。図8に示すように、画像表示装置200は、表示パネル210と、表示パネル210の一部に構成される本発明の光学フィルムを含む偏光板100と、前面板220とを備える。画像表示装置本体210の視認側表面には、光学フィルム100を含む偏光板100が配置されている。光学フィルムを含む偏光板100の光学フィルムの機能性層面と前面板220とが、空隙充填剤(光硬化型樹脂)230を介して貼り合わされている。前面板は、特に制限されず、アクリル板やガラス板等の従来公知のものが使用できる。前面板の材質、厚み等は、画像表示装置の用途に応じて、適宜選択できる。空隙充填剤としては、無溶剤空隙充填剤が好ましく、市販品としては例えばSVR1120,SVR1150,SVR1320(以上,デクセリアルズ株式会社製)、或いはHRJ−60,HRJ−302,HRJ−53(以上、協立化学産業株式会社製)等を挙げる事が出来る。空隙充填剤は一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
光学フィルムと前面板との貼り合せは例えば、以下のようにして行える。
まず、空隙充填剤を準備する。光学フィルムの機能性層表面に空隙充填剤を塗工し、空隙充填剤の塗膜上に前面板を重ね合わせる。この状態で、空隙充填剤を光硬化などにより、光学フィルムと前面板とを貼り合せる。機能性層面に空隙充填剤を塗工する際に、機能性層面の表面自由エネルギーを40mN/m以上とする事で、空隙充填剤がはじかれることなく、空隙充填剤が均一に広がった状態を維持し、視認性に優れた画像表示装置を得る事が出来る。更に、長期使用を想定した耐久試験後も優れた密着性を維持できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
(セルロースエステルフィルム1の作製)
二酸化珪素分散液の調製
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
〈ドープ組成物1の調製〉
(セルロースエステル樹脂)
セルローストリアセテートA(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
(添加剤)
一般式(X)で表されるエステル(例示化合物X−1) 5質量部
一般式(X)で表されるエステル(例示化合物X−12) 4質量部
(紫外線吸収剤)
TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
(微粒子)
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
(溶媒)
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ(ドープ組成物1)を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.15倍に延伸しながら、140℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、セルロースエステルフィルム1を得た。セルロースエステルフィルム1の膜厚は25μm、巻長は5000mであった。
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
[光学フィルム1の作製]
上記作製したセルロースエステルフィルム1のA面(流延ベルトに接していない面)上に、下記の機能性層組成物1を押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度50℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚4μmの機能性層1を形成して、ロール状に巻き取り、光学フィルム1を作製した。
《機能性層組成物1》
〈機能性層組成物1の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
フッ素−シロキサングラフト化合物(35質量%) 2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
〈フッ素−シロキサングラフト化合物の調製〉
フッ素−シロキサングラフト化合物の調製に用いた素材の市販品名を示す。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(ヒドロキシ基価60、数平均分子量15000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5000;チッソ(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
(ラジカル重合性フッ素樹脂の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂を得た。
(フッ素−シロキサングラフト化合物の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171000である35質量%フッ素−シロキサングラフト化合物の溶液を得た。重量平均分子量はGPCにより求めた。また、フッ素−シロキサングラフト化合物の質量%は、HPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
[光学フィルム2の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物2に変更した以外は同様にして光学フィルム2を作製した。
《機能性層組成物2》
〈機能性層組成物2の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
KF−642(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製) 2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[光学フィルム3の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物3に変更した以外は同様にして光学フィルム3を作製した。
《機能性層組成物3》
〈機能性層組成物3の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
サーフィノール104E(アセチレン系ジアルコール、日信化学工業株式会社製) 2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[光学フィルム4の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物4に変更した以外は同様にして光学フィルム4を作製した。
《機能性層組成物4》
〈機能性層組成物4の組成〉
(活性線硬化樹脂)
多塩基酸性アクリレート(アロニックスM−510、東亞合成株式会社製)
100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[光学フィルム5の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物5に変更した以外は同様にして光学フィルム5を作製した。
《機能性層組成物5》
〈機能性層組成物5の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
ポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1) 3質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
〈ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の調製〉
容器にメタクリル酸メチル(共栄社化学(株)製:ライトエステルM)30ml、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−803)1mlと溶媒としてテトラヒドロフラン100ml、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(関東化学(株)製:AIBN)50mgを添加し、N2ガスで置換した後、80℃で3時間加熱してポリマーシランカップリング剤を調製した。得られたポリマーシランカップリング剤の分子量は16,000であった。なお、分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置で測定した。次にシリカゾル(日揮触媒化成工業(株)製:Si−45P、SiO2濃度30重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)をイオン交換樹脂にてイオン交換し、限外濾過膜法で水をエタノールに溶媒置換してシリカ微粒子のエタノール分散液100g(SiO2濃度30重量%)を調製した。
このシリカ微粒子エタノール分散液100gとポリマーシランカップリング剤1.5gとをアセトン20g(25ml)に分散し、これに濃度29.8重量%のアンモニア水20mgを添加し、室温で30時間攪拌してポリマーシランカップリング剤をシリカ微粒子に吸着させた。
その後、平均粒子径5μmのシリカ粒子を添加し、2時間攪拌して溶液中の未吸着のポリマーシランカップリング剤をシリカ粒子に吸着させ、ついで、遠心分離により未吸着であったポリマーシランカップリング剤を吸着した平均粒子径5μmのシリカ粒子を除去した。ポリマーシランカップリング剤を吸着したシリカ微粒子分散液にエタノール1000g加え、シリカ微粒子を沈降させ、これを分離、減圧乾燥し、ついで、25℃で8時間乾燥してポリマーシランカップリングシリカ粒子(1)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)の平均粒子径は57nmであった。
平均粒子径はレーザー粒子径測定装置により測定した。次いで前記作製したポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)と下記の化合物を撹拌混合して、機能性層組成物5を調製した。
[光学フィルム6の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物6に変更した以外は同様にして光学フィルム6を作製した。
《機能性層組成物6》
〈機能性層組成物6の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
メガファックF−569(含フッ素基・親水性基含有オリゴマー、DIC(株)製) 2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[光学フィルム7の作製]
上記作製した光学フィルム1の作製において、下記の機能性層組成物7に変更した以外は同様にして光学フィルム7を作製した。
《機能性層組成物7》
〈機能性層組成物7の組成〉
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
TSF4440(ポリエーテル変性シリコーン、モメンティブジャパン(株)製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
《評価》
上記作製した光学フィルム1〜7について以下の評価を実施した。
(アルカリ処理)
上記作製した光学フィルム1〜7を下記条件でアルカリ処理した。
(アルカリ処理条件)
鹸化工程 2mol/L−NaOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
鹸化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥する。
1.空隙充填剤の塗布性評価
上記作製したアルカリ処理後の光学フィルム1〜7の機能性層の反対面に光学用粘着テープを介して10cm*10cmのガラス上に貼り付けた。
次いで、光学フィルム1〜7の機能性層上に、空隙充填剤であるHRJ−302(協立化学産業株式会社製)を滴下し、スピンコーターを用いて、2500rpm、15secの条件で空隙充填剤の膜厚が120μmとなるように全面に塗布した。
次いで、機能性層に空隙充填剤を塗布した光学フィルムを貼り合わせたガラスの光学フィルムが貼られていない面に黒色PETフィルを貼り合わせ、裏面を黒処理したサンプルを作製した。
次いで、機能性層に空隙充填剤を塗布した面を暗室でグリーンランプで照らしながらの目視観察し、下記の基準でハジキを判定した。
◎:空隙充填剤のハジキの発生が全くない。
○:僅かに空隙充填剤のハジキの発生が見えるが、実用上問題ないレベル。
×:空隙充填剤のハジキが発生し、実用上問題となるレベル。
2.耐久密着評価
上記作製したアルカリ処理後の光学フィルム1〜7の機能性層の反対面に光学用粘着テープを介して10cm*10cmのガラス上に貼り付けた。
次いで、光学フィルム1〜7の各機能性層上に、空隙充填剤であるHRJ−302(協立化学産業株式会社製)を滴下し、スピンコーターを用いて、2500rpm、15secの条件で空隙充填剤の膜厚が120μmとなるように全面に塗布した。
次いで、空隙充填剤を塗布した面にガラスを貼り合わせ、2J/cm2で光照射を行い、空隙充填剤を介してガラスと光学フィルムを貼り合わせた。
空隙充填剤を介してガラスと光学フィルムを貼り合わせたサンプルに重り(50g)を図9のように付けて、90℃のドライサーモ機に500時間投入し、耐久性試験を実施した。耐久性試験後のサンプルについて、ズレ強度を以下の基準で評価し、耐久密着性を評価した。
ズレ強度(密着性)
◎:全くズレがないレベル。
○:ズレが1mm以内で有り、実用上問題とならないレベル。
×:ズレが1mmより大きく、実用上問題となるレベル。
3.光学フィルムの表面自由エネルギー測定
アルカリ処理後の光学フィルム1〜7の純水、エチレングリコール、ジエチレングリコールそれぞれの接触角を5回測定し、その平均から前述したヤング・フォークズ式を用いて表面自由エネルギーを求めた。得られた表面自由エネルギーの結果を表1に示す。なお、光学フィルム1の純水接触角は97°、エチレングリコールは74°、ジエチレグリコールは51°であった。
接触角は、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で試料を24時間放置後、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、1μLを滴下1分後で測定した。なお、5回測定を行い、その平均値を該試料の接触角とした。
4.アルカリ処理前後の純水接触角の差(θΔ)測定
光学フィルム1〜7のアルカリ処理前の各機能性層の純水接触角(θ)を測定し、アルカリ処理後の各機能性層の純水接触角(θa)を引いて、アルカリ処理前後の水接触角の差(θΔ)とした。
水接触角は、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で試料を24時間放置後、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLの滴下1分後で測定した。なお、5回測定を行い、測定値の平均値を、水接触角とした。表1にアルカリ処理前後の差(θΔ)を示した。
表1の結果から判るように表面自由エネルギーが、40mN/m以上である本発明の光学フィルムはハジキ(外観不良)の発生が無く、空隙充填剤の塗布性に優れ、かつ耐久試験後の密着性に優れやフィルムで有る事が判る。中でも本発明の光学フィルムの機能性層が多塩基酸性アクリレート化合物或いはポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子を含有する事で特に優れた性能を発揮する事から好ましい構成有る事が判る。
[実施例2]
光学フィルム5の作製において、活性線硬化樹脂であるペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレートに対して、添加剤であるポリマーシランカップリング剤被覆シリカ微粒子の添加量を表2に記載の如く変化させた以外は同様にして光学フィルム8〜10を作製した。
次いで、耐久密着評価の耐久試験時間を1000時間に変更し、アルカリ処理前後の純水接触角の差(θΔ)を測定しなかった以外は、実施例1と同様にアルカリ処理及び評価した。得られた結果を表2に示す。
表2の結果から判るように機能性層がポリマーシランカップリング剤被覆微粒子及び活性線硬化樹脂を含有し、かつポリマーシランカップリング剤被覆微粒子と活性線硬化樹脂との含有質量比がポリマーシランカップリング剤被覆微粒子:活性線硬化樹脂=0.1:100〜10:100とすることで、特に優れた耐久試験後の密着性を有するため、好ましい構成で有ることが分かる。
[実施例3]
(偏光板101の作製)
空隙充填剤を介してガラスと光学フィルム1を貼り合わせたサンプル1と、セルロースエステルフィルム1と偏光膜を用いて、偏光板101を作製した。
(a)偏光膜の作製
鹸化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ローラー上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムは、平均厚さが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚さが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
下記工程1〜3に従って、偏光膜とセルロースエステルフィルム1と、空隙充填剤を介してガラスと光学フィルム1を貼り合わせたサンプル1を貼り合わせて偏光板101を作製した。
工程1:前述の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:セルロースエステルフィルム1を下記アルカリ処理条件で、アルカリ処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に偏光膜を浸漬した。浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜にセルロースエステルフィルムフィルム1と、空隙充填剤を介してガラスと光学フィルム1を貼り合わせたサンプル1と光学フィルム面、偏光膜、セルロースエステルフィルム1で積層配置して、貼り合わせ偏光板101を作製した。
(アルカリ処理条件)
鹸化工程 2mol/L−NaOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
鹸化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥する。
工程3:工程2で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板101を作製した。
<偏光板102〜107の作製>
偏光板101の作製において、サンプル1の光学フィルム1を光学フィルム2〜7にそれぞれ変更した以外は同様にして偏光板102〜107を作製した。
<液晶表示装置201の作製>
21.5インチの液晶表示装置(IPS226V−PN、LGエレクトロニクスジャパン(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、上記作製した偏光板101をガラス/空隙充填剤/機能性層側が視認側となるようにして、光学粘着剤で液晶セルガラスとを貼合して液晶表示装置201を作製した。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。
<液晶表示装置202〜207の作製>
液晶表示装置201の作製において、偏光板101を偏光板102〜107に、それぞれ変更した以外は同様にして、液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置202〜207を作製した。
《評価》
上記作製した液晶表示装置について視認性を黒表示で正面から観察し、以下の基準で評価した。
(視認性)
◎:ハジキ起因のムラが全く認められない。
○:僅かにハジキ起因のムラが認められる。
×:変形起因のムラが認められる。
表3の結果から判るように、表面自由エネルギーが、40mN/m以上である本発明の光学フィルムから構成される偏光板を組み込んだ画像表示装置の視認性に優れることが判る。中でも本発明の光学フィルムの機能性層が多塩基酸性アクリレート化合物或いはポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子を含有する事で特に優れた性能を発揮することが判る。
[実施例4]
<セルロースエステルフィルム2の作製>
(ポリエステルAの作製)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2−プロピレングリコール4.4g、p−トルイル酸6.8g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、更に210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステルAを得た。
酸価 :0.1
数平均分子量:490
分散度 :1.4
分子量300〜1800の成分含有率:90%
ヒドロキシル(水酸基)価:0.1
水酸基含有量:0.04%
ポリエステルAはジカルボン酸に対してモノカルボン酸が2倍モル使用されているので末端がトルイル酸エステルになっている。
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成のドープ液を調製した。溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物、ポリエステルA、TINUVIN928、微粒子添加液1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9、総置換度2.4、Mn80000)
100質量部
糖エステル化合物(Y−22) 7.0質量部
ポリエステルA 2.5質量部
TINUVIN928(BASFジャパン社製) 1.5質量部
微粒子添加液1 1.0質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力110N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースエステルフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅手方向に5%延伸した。その際、予め予熱温度をフィルム幅手方向で異なるように分布を持たせるように付与し、延伸開始時の残留溶媒量を幅手方向で異なる分布を持つようにした。延伸開始時の残留溶媒量は一方の端部は15質量%であり、もう一方の端部は10質量%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して巻き取り、膜厚75μm、幅2000mm、長さ5200mのロール状のセルロースエステルフィルム2を得た。面内リターデーションは前述の方法で測定したところ、Roは10nm、Roバラツキは1nm、Rtは120nmであった。
<斜め延伸フィルム1の作製>
セルロースエステルフィルム2を、図4(a)の装置のスライド可能な繰出装置にセットし、角度θi=47°となるようにレールパターンが設定された斜め延伸機にA−1a側が内回り側になるように供給した。そのとき、斜め延伸装置の入口部に最も近いガイドロールの主軸と斜め延伸装置の把持具(クリップつかみ部)との距離を30cmとした。クリップは搬送方向の長さが1インチ(1インチは2.54cm)のものを、上記ガイドロールは直径5cmのものを使用した。斜め延伸テンターで延伸温度175℃、延伸倍率1.5倍で斜め延伸を行い、テンター出口における引取張力200N/m、配向角θが45°となるように斜め方向に延伸を行った。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側第一ロールで測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミング後、エアーフローロールからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、スライド可能な巻取装置で巻き取り、厚み50μm、幅2000mm、長さ5200mの斜め延伸フィルム1を得た。得られた斜め延伸フィルム1の面内リターデーション(Ro)は135nm、厚み方向リターデーションRtは140nm、配向角(θ)は45°であった。
なお、加熱および延伸する際におけるフィルム移動速度は20m/分とした。また、予熱ゾーンの温度を175℃、冷却ゾーンの温度を160℃とした。フィルムを加熱および延伸する際には、いわゆる「ボーイング現象」を解消するとともに、配向角が45°になるように、最適なレールパターンを組んで延伸を行った。
(保護フィルム1の作製)
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
アセチル基置換度が2.4のセルロースアセテート(Mn80000)
100質量部
糖エステル化合物(例示化合物1−7) 10質量部
ポリエステル(芳香族末端エステル例示化合物3) 3質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928(BASFジャパン(株)製))
2質量部
微粒子添加液1 1質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
その後170℃に設定されたテンターにより幅手方向に1.4倍の延伸を行い、次いで130℃に設定された乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、両端部のトリミングを行い、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの保護フィルム1を作製し、幅2000mm、5000mで巻き取った。保護フィルム1の面内リターデーション値Ro、厚み方向リターデーションRtは、各々50nm、130nmであった。
<光学フィルム11の作製>
光学フィルム5の作製において、フィルム基材を斜め延伸フィルム1に変更した以外は同様にして光学フィルム11を作製した。光学フィルム11を実施例1と同様にしてアルカリ処理し、実施例1と同様にして表面自由エネルギーを求めた。得られた結果を表4に示した。
<偏光板の作製>
実施例1と同様に、空隙充填剤を介してガラスと光学フィルムを貼り合わせた光学フィルム11のフィルム基材面(機能性層の反対面)と偏光子と裏面側には上記保護フィルム1を実施例3と同様にして長手方向を合わせるように貼り合わせて偏光板108を作製した。
<液晶表示装置の作製>
SONY製60型ディスプレイBRAVIA LX900の予め貼合されていた前面板とパネル前側の偏光板とを剥がして、上記作製した偏光板108及び実施例3で作製した偏光板105を光学用粘着剤でそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼り合せた。次いで、実施例3と同様にして視認性(ハジキ外観評価)を評価した。更に以下の条件でクロストークについても評価した。評価結果を表4に示した。
<クロストーク評価>
(3Dメガネ)
SONY製3DメガネTDG−BR100のパネル側に上記作製した光学フィルム5及び11を貼合した。作製した液晶表示装置について3D映像視聴時の首を傾けた際のクロストークについて評価した。
(3D映像視聴時の首を傾けた際のクロストークの評価)
23℃・55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを点灯させた直後、3Dメガネをかけて、寝そべった状態でメガネが85°傾いた状態になるよう首を傾けた状態で3D映像を視聴し、クロストークを下記基準で評価した。
◎:クロストークがまったくない
○:非常に弱いクロストークが見える
△:僅かにクロストークが見える。
×:クロストークがはっきり見える。
表4結果から判るように、本発明の光学フィルムのフィルム基材に斜め延伸のλ/4フィルムを用いる事で、視認性に優れるばかりか、更にはクロストーク特性にも優れた表示装置が得られることが分かる。