以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像用のカプセルトナーである。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子という)から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置で用いることができる。
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電荷像を現像する。これにより、感光体上に形成された静電潜像に、帯電したトナーが付着する。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して記録媒体に定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを用いてそれぞれのトナー像を重ね合わせれば、フルカラー画像を得ることができる。
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナー(特にトナー粒子)の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子10を示す図である。
図1に示すように、トナー粒子10は、コア11と、コア11の表面に形成されたシェル層12(カプセル層)と、外添剤13とから構成される。
コア11は、結着樹脂11aと、内添剤11b(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)とから構成される。コア11は、シェル層12によって被覆されている。シェル層12の表面には外添剤13が付着している。
ただし、トナー粒子の構成は上記に限られない。例えば、必要がなければ内添剤11b又は外添剤13を割愛してもよい。また、トナー粒子は、コア11の表面に複数のシェル層12を有していてもよい。
以下、コア11(結着樹脂11a及び内添剤11b)、シェル層12、及び外添剤13について、順に説明する。
[コア]
コア11は、結着樹脂11a及び内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含む。ただし、トナーの用途等に応じて必要のない成分(着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉等)を割愛してもよい。
[結着樹脂(コア)]
以下、結着樹脂11aについて説明する。
結着樹脂11aとしては、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、又はスチレン−ブタジエン系樹脂が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び被記録媒体に対する定着性に優れる。
(スチレンアクリル系樹脂)
以下、結着樹脂11aとしてのスチレンアクリル系樹脂について説明する。
スチレンアクリル系樹脂は、例えばスチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。
スチレン系単量体の好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル系単量体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタアクリル酸メチル、(メタ)メタアクリル酸エチル、(メタ)メタアクリル酸n−ブチル、又は(メタ)メタアクリル酸iso−ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが好ましい。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。例えば、水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整することができる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。例えば、(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
コア11の強度又は定着性を向上させるためには、結着樹脂11aとしてのスチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上40以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(ポリエステル樹脂)
以下、結着樹脂11aとしてのポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、例えば2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られる。
ポリエステル樹脂の2価又は3価以上のアルコール成分の好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが好ましい。
3価以上のアルコール類としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましい。
ポリエステル樹脂の2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、例えばエステル形成性の誘導体(酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)を用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
2価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、又はアルキルもしくはアルケニルコハク酸が好ましい。さらに、アルケニルコハク酸としては、例えばn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が好ましい。
ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とをそれぞれ適宜変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
コア11の強度又は定着性を向上させるためには、結着樹脂11aとしてのポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上20以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
以下、図2を参照して、吸熱曲線から結着樹脂11aのTgを読み取る方法について説明する。図2は吸熱曲線の一例を示すグラフである。
Tgの測定に際しては、示差走査熱量計を用いて吸熱曲線を測定する。例えば図2に示すような吸熱曲線が得られる。結着樹脂11aのTgは、結着樹脂11aの吸熱曲線における比熱の変化点から求めることができる。
次に、図3を参照して、S字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取る方法について説明する。図3はS字カーブの一例を示すグラフである。
高架式フローテスターを用いて、結着樹脂11aのTmを測定することができる。具体的には、測定試料を高架式フローテスターにセットし、所定の条件で試料を溶融流出させる。これにより、S字カーブ(温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)が得られる。得られたS字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取ることができる。図3において、S1はストロークの最大値を示し、S2は低温側のベースラインのストローク値を示す。S字カーブ中のストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を測定試料のTmとする。
結着樹脂11aの軟化点(Tm)は100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。結着樹脂11aのTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、高速定着時においても十分な定着性を得ることが可能になる。なお、異なるTmを有する複数の結着樹脂を組み合わせることで、結着樹脂11aのTmを調整することができる。
[着色剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる着色剤について説明する。
着色剤としては、例えばトナー粒子10の色に合わせて公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
(黒色着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用できる。
(カラー着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリルアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤としては、例えばC.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが好ましい。
マゼンタ着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が好ましい。
シアン着色剤は、例えば銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが好ましい。
[離型剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる離型剤について説明する。
離型剤は、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
一例では、離型剤が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、オゾケライト、セレシン、又はベトロラクタムのような鉱物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したワックスから構成されることが好ましい。
[電荷制御剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる電荷制御剤について説明する。
電荷制御剤は、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性又は安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電できるか否かの指標になる。
[磁性粉(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる磁性粉について説明する。
トナーを1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉は、例えば鉄(フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金、又は二酸化クロムから構成されることが好ましい。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。こうした範囲に磁性粉の粒子径がある場合には、結着樹脂11a中に磁性粉を均一に分散させ易くなる。
[シェル層]
シェル層12を構成する樹脂の好適な例としては、アクリル樹脂又はスチレンアクリル樹脂が挙げられる。
シェル層12の形成方法としては、コア11の表面に樹脂微粒子を付着させた後、樹脂微粒子を合一化させる方法が好ましい。
樹脂微粒子の粒子径を均一にするためには、不飽和結合を有するモノマーの付加重合により得られる樹脂を用いて、樹脂微粒子を形成することが好ましい。
不飽和結合を有するモノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、又はジビニルベンゼンのようなビニル芳香族化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、γ−ヒドロキシアクリル酸プロピル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート、又はジエチレングリコールジメタクリレートのような(メタ)アクリル酸誘導体;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、又はビニルシクロヘキシルエーテルのようなビニルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレンブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ブタジエン、イソプレン、又はクロロプレンのようなオレフィンが挙げられる。
不飽和結合を有するモノマーの付加重合方法の例としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合、又は懸濁重合のような方法が挙げられる。樹脂微粒子の粒子径を均一にするためには乳化重合法が特に好ましい。
不飽和結合を有するモノマーの付加重合に使用できる重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、又は2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。これらの重合開始剤の使用量は、モノマーの総量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。
乳化重合法により樹脂微粒子を製造する場合には、界面活性剤を用いて反応液を乳化させてもよい。乳化重合では、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、又はヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが挙げられる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムのような脂肪酸石けんや、ドデシル硫酸ナトリウム、又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸塩類が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、又はモノデカノイルショ糖が挙げられる。
樹脂微粒子の平均粒子径は、50nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上150nm以下であることがより好ましい。平均粒子径50nm以上300nm以下の樹脂微粒子を用いる場合には、コア11の表面に所望の構造を有するシェル層12を形成しやすい。樹脂微粒子の平均粒子径は、重合条件を変えることによって調整できる。また、樹脂微粒子の平均粒子径は、粉砕又は分級によっても調整できる。樹脂微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて体積平均径として測定できる。
樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点は、56℃以上であることが好ましく、58℃以上62℃以下であることがより好ましい。
樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)は5000以上20000以下であることが好ましい。樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
[外添剤]
以下、外添剤13について説明する。以下、外添剤13により処理される前の粒子を「トナー母粒子」と記載する。
外添剤13は、トナー粒子10の流動性又は取扱性を向上させるために使用され、シェル層12の表面に付着する。流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤13の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
外添剤13は、例えばシリカ又は金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、もしくはチタン酸バリウム)から構成されることが好ましい。
流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤13の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
[2成分現像剤]
本実施形態のトナーをキャリアと混合して2成分現像剤を作製してもよい。
2成分現像剤を作製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いることが好ましい。好適なキャリアの例としては、キャリア芯材が樹脂で被覆されたキャリアが挙げられる。キャリア芯材の例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、もしくはコバルトのような金属の粒子、又はこれらの材料とマンガン、亜鉛、もしくはアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金又は鉄−コバルト合金のような鉄合金の粒子;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子;リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子;上記磁性粒子を樹脂中に分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、又はポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定される粒子径で、20μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることがより好ましい。また、キャリアの見掛け密度は2400kg/m3以上3000kg/m3以下であることが好ましい。
トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。トナーの含有量が2成分現像剤の質量に対して1質量%以上20質量%以下であれば、トナーを用いて高い画像濃度の画像を形成し易くなる。また、トナーの帯電不良が生じにくくなる。その結果、画像形成装置内部の汚染を抑制できる。
本実施形態に係るトナーでは、シェル層12が、コア11の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する低抵抗成分を、シェル層を構成する樹脂成分に対して、1.5質量%以上10.0質量%以下の割合で含有する。このため、帯電性(特に、帯電安定性)に優れたトナーが得られる。
なお、低抵抗成分の電気抵抗率はコア11の電気抵抗よりも低いものであればよいが、50Ωcmであることが好ましく、20Ω・cm以下であることがより好ましく、1Ω・cm以下であることがさらに好ましい。低抵抗成分の具体例としては、カーボンブラック又は酸化チタンが挙げられる。
定着性と保存性との両方を向上させるためには、シェル層12の平均厚さは30nm以上300nm以下であることが好ましい。
離型剤の染み出し又はトナー粒子同士の凝集を抑制するためには、トナーに含まれる複数のトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12が、コア11の表面に対して略直交する方向のクラックを有しないことが好ましい。
離型剤の染み出し又はトナー粒子同士の凝集を抑制するためには、トナーに含まれる複数のトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12の表面には粒子状の低抵抗成分が存在しないことが好ましい。例えば、低抵抗成分の添加量が多い場合には、低抵抗成分の粒子同士の合一化が不完全になり、シェル層12の表面に粒子状の低抵抗成分が露出する傾向がある。
離型剤の染み出し又はトナー粒子同士の凝集を抑制するためには、トナーに含まれる複数のトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10は、コア11とシェル層12との間に境界面を有することが好ましい。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、コア11を形成するステップと、コア11の表面にシェル層12を形成するステップとを含む。シェル層12を形成するステップでは、コア11が分散された流速30m/秒以上の気流中に水性エマルジョンを噴霧する。また、噴霧される水性エマルジョンは、コア11の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する低抵抗成分を含有する樹脂粒子を含む。
以下、コア11を形成するステップと、シェル層12を形成するステップとについて、順に説明する。
[コアを形成するステップ]
コアを形成する方法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び磁性粉を混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕し、分級する。
[シェル層を形成するステップ]
以下、主に図4〜図6を参照して、シェル層を形成するステップについて説明する。
(表面改質装置)
以下、シェル層12を形成するステップにおいて用いられる表面改質装置について説明する。表面改質装置の例としては、株式会社奈良機械製作所製の「ハイブリダイゼーションシステム(NHS)」が挙げられる。
図4は、表面改質装置の一例(表面改質装置100)を示す図である。図5は、図4中のV−V断面図である。図6は、図4に示される表面改質装置の側面図である。
表面改質装置100は、シェル層12を形成するステップにおいて用いられる。表面改質装置100は、図4〜図6に示すように、粉体流路101と、攪拌室102と、噴霧部103と、粉体投入部104と、粉体回収部105とを有する。
粉体流路101は、C字状に曲げられた管から構成される(図5参照)。管の断面は、例えば円形である。
粉体流路101の一端(端部101a)と粉体流路101の他端(端部101b)とは攪拌室102を介して互いに連通されている。粉体流路101と攪拌室102とが連通されることで、環状の流路が形成されている(図5参照)。攪拌室102には、攪拌装置110が設けられている(図5参照)。攪拌装置110は、羽根110aを有する。攪拌装置110の動力源としてモーターを用いることで、攪拌装置110の羽根110aを回転させることができる。攪拌装置110の羽根110aが回転すると、流路内の気体が攪拌される。攪拌装置110は、粉体流路101の端部101aに向かって気体を押し出す。これにより、粉体流路101の一端(端部101a)から粉体流路101内を通って粉体流路101の他端(端部101b)に向かう気流が形成される(図5中の矢印F参照)。
粉体流路101及び攪拌室102には、温度調整用ジャケット(図示せず)が設けられている。ジャケットの内部空間に冷却媒又は加温媒を流すことで、粉体流路101及び攪拌室102を加熱又は冷却することが可能になる。温度調整用ジャケットは、粉体流路101及び攪拌室102の全体に設けられることが好ましい。
噴霧部103は、粉体流路101内に液体(本実施形態では水性エマルジョン)を噴霧する。噴霧部103は、噴霧液供給部と、キャリアガス供給部と、二流体ノズルとを有する。噴霧液供給部は、水性エマルジョンを二流体ノズルに供給する。キャリアガス供給部は、キャリアガス(例えば、圧縮エア)を二流体ノズルに供給する。二流体ノズルは、水性エマルジョンとキャリアガスとの混合物を粉体流路101内に噴霧する。
粉体投入部104は、投入口104aと、電磁弁104bとを有する。図示しないホッパーから投入口104aにコア11が供給される。そして、電磁弁104bを開くことで、粉体流路101内にそのコア11を供給することができる。また、電磁弁104bを閉じることで、コア11の供給を止めることができる。
粉体回収部105は、回収タンク105aと、電磁弁105bとを有する。電磁弁105bを開くことで、流路内のトナー(トナー母粒子)を回収タンク105aへ回収することができる。また、電磁弁105bを閉じることで、トナーの回収を止めることができる。
(水性エマルジョン)
噴霧部103により噴霧される水性エマルジョンは樹脂粒子を含む。この樹脂粒子は、樹脂成分の質量に対して1.5質量%以上10.0質量%以下の低抵抗成分(コア11の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する成分)を含有する。噴霧された水性エマルジョンに含まれる樹脂粒子は、環状流路(粉体流路101及び攪拌室102)内において、コア11と共に流動しながら分散する。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、水性エマルジョン中の樹脂粒子に含まれる低抵抗成分の電気抵抗率は、50Ω・cm以下であることが好ましく、20Ω・cm以下であることがより好ましく、1Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
水性エマルジョンは界面活性剤を含む。これにより、コア11の表面に樹脂粒子層(シェル層12)が均一に形成され易くなると考えられる。
水性エマルジョン中の樹脂粒子の平均粒子径は、50nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上150nm以下であることがより好ましい。
水性エマルジョンにおける樹脂粒子の固形分濃度は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。こうした水性エマルジョンを用いてシェル層12を形成する場合には、コア11の表面を樹脂粒子層(シェル層12)で均一に被覆し易くなる。その結果、所望の形状を有するシェル層12を形成し易くなる。
水性エマルジョンに含まれる水性媒体の例としては、水が挙げられる。水性エマルジョンは、水以外に水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒の含有量は、水性媒体の質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
以下、樹脂粒子の水性エマルジョンを調製する方法の一例について説明する。
樹脂成分に対して、1.5質量%以上10.0質量%以下の低抵抗成分(コア11の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する成分)を含有する樹脂組成物の粗粉砕品を水性媒体に添加する。これにより、樹脂粒子の分散液が調製される。また、樹脂粒子を分散させるため、樹脂粒子の分散液に分散剤(界面活性剤)を加える。
続けて、樹脂(樹脂粒子)の軟化点よりも10℃以上高い温度に樹脂粒子の分散液を加熱する。樹脂の軟化点は、例えばフローテスターを用いて測定することができる。
続けて、温度調整器を備えた高速攪拌装置(例えば、吉田機械興業株式会社製「NV200」)を用いて、加熱された樹脂粒子の分散液に強い剪断力を与える。これにより、樹脂粒子の水性エマルジョンが調製される。
(コアの分散)
シェル層12を形成するステップでは、攪拌装置110を用いて、環状流路(粉体流路101及び攪拌室102)内に流速30m/秒以上の気流を生じさせる。そして、その気流中にコア11を分散させる。これにより、コア11が気流中で流動する。環状流路(粉体流路101及び攪拌室102)内においてコア11が流れる方向は概ね一定になる。また、気流が環状の流路を循環するため、コア11が流路の内壁に衝突し易い。コア11が流路の内壁に衝突すると、シェル層12の形成が促進される。
(水性エマルジョンの噴霧)
流速30m/秒以上の気流中にコア11を分散させた後、噴霧部103を用いてその気流中に水性エマルジョンを噴霧する。この際、コア11は気流中で流動しているため、水性エマルジョンに含まれる樹脂粒子は凝集することなくコア11の表面に付着し易い。その結果、コア11の全表面が樹脂粒子で均一に被覆され易くなる。
水性エマルジョンを噴霧する際、粉体流路101内の温度は15℃以上であることが好ましい。また、粉体流路101内の温度をコア11のガラス転移温度(Tg)以下にすることで、コア11の凝集を抑制することができる。粉体流路101内をコア11が流れることにより、粉体流路101内の温度は概ね均一になる。
水性エマルジョンを噴霧する際、水性エマルジョンの温度は、30℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。水性エマルジョンの温度が30℃以上100℃以下であれば、シェル層12の形成が促進される。
水性エマルジョンがコア11に噴霧されると、コア11に樹脂粒子が付着する。この際、水性エマルジョンに含まれる液体は樹脂粒子間の微小な空隙を通じてトナー外部に移動する(いわゆる毛細管現象)。このとき、樹脂粒子間に凝集力が生じる。また、コア11は、気流中を高速で移動しているため、粉体流路101の内壁に衝突して大きな外力を受ける。上記凝集力及び上記外力により、樹脂粒子の合一化が促進される。樹脂粒子の合一化に際して、コア11の表面に付着した樹脂粒子が変形し、樹脂粒子間の界面が消失する。そして、合一化した樹脂粒子がシェル層12を構成する。
シェル層12を形成するステップは、表面改質装置100の流路内に乾燥した気体(例えば、乾燥空気又は乾燥窒素)を導入した状態で行ってもよい。こうした状態でシェル層12を形成する場合には、後述するトナー母粒子の乾燥工程を省略又は簡素化し易くなる。
[乾燥]
コア11を形成する前述のステップと、シェル層12を形成する前述のステップとを経て、トナー母粒子が製造される。その後、必要に応じて、トナー母粒子に付着した水性媒体を蒸発させる。詳しくは、乾燥機を用いてトナー母粒子を乾燥する。乾燥機の例としては、流動床乾燥機、キルン乾燥機、又はタンブラー乾燥機が挙げられる。減圧条件下でトナー母粒子を乾燥すると、水性媒体の蒸発が促進され易い。乾燥温度は、30℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るトナーの製造方法では、シェル層12を形成する過程において、水性エマルジョン中の水性媒体が概ねトナー母粒子から除去されることが多い。このため、トナー母粒子の乾燥工程を省略又は簡素化できることが多い。
[外添]
トナー母粒子の表面に外添剤13を付着させる(外添する)ことで、トナー粒子10が製造される。以下、本実施形態に係る外添方法について説明する。
外添方法の好適な例としては、トナー母粒子に外添剤13が埋め込まれないような条件で、ヘンシェルミキサー又はナウターミキサーのような混合機を用いてトナー母粒子と外添剤13とを混合する方法が挙げられる。
[2成分現像剤の作製方法]
2成分現像剤の作製方法の好適な例としては、ボールミルのような混合装置を用いてトナーとキャリアとを混合する方法が挙げられる。
以上説明した本実施形態に係るトナーの製造方法では、シェル層12を形成するステップにおいて、樹脂粒子を含む水性エマルジョンを噴霧する。また、水性エマルジョンに含まれる樹脂粒子は、その樹脂成分に対して、1.5質量%以上10.0質量%以下の低抵抗成分を含有する。水性エマルジョンの樹脂粒子が適量の低抵抗成分を含有することにより、帯電性(特に帯電安定性)に優れるトナーを製造することが可能になる。
また、本実施形態に係るトナーの製造方法では、シェル層12を形成する際に、コア11が分散された流速30m/秒以上の気流中に水性エマルジョンを噴霧する。このため、コア11の表面に均一にシェル層12が形成され易くなる。また、コア11の表面がシェル層12で完全に覆われ易くなる。コア11がシェル層12で完全に覆われることで、離型剤の染み出し又はトナー粒子同士の凝集を抑制することが可能になる。その結果、定着性と保存性との両方に優れたトナーを製造することが可能になる。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、所定の条件で調製されたトナーA0〜A7及びB0〜B7(後述の表1及び表2参照)を評価した。以下、トナーA0〜A7及びB0〜B7の調製方法について説明する。
[トナーA1の調製方法]
以下、トナーA1の調製方法について説明する。
<コアを形成するステップ>
全原料の合計質量に対してポリエステル樹脂(結着樹脂11a)87質量%と着色剤6質量%と離型剤5質量%と電荷制御剤2質量%とをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM20B」)に投入し、回転数2500rpmで3分間混合した。
結着樹脂11aとしては、花王株式会社製のポリエステル樹脂を用いた。このポリエステル樹脂は、58℃のガラス転移点(Tg)と、110℃の融点と、45000の質量平均分子量(Mw)とを有していた。
着色剤としては、ピグメントブルー(山陽色素株式会社製「P.B15−3」)を用いた。離型剤としては、エステルワックス(日本油脂株式会社製「WEP−3」)を用いた。電荷制御剤としては、オリヱント化学工業株式会社製の「ボントロンP−51」を用いた。
続けて、上記混合物を2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、回転数300rpm、シリンダ温度110℃、投入量6kg/時の条件で、溶融混練した。続けて、日本コークス工業株式会社製のドラムフレーカーを用いて、板厚が約2mmになるように溶融混練物を展延した後、冷却固化した。
続けて、スクリーン目開き2mmの粉砕機(アルピネ社製「ロートプレックス」)を用いて、混練物の板を粗粉砕した。続けて、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて、粗粉砕物を微粉砕した。
続けて、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製「EJ−L−3」)を用いて、微粉砕物を分級した。これにより、中位径(体積分布基準)7.0μmのコア11が得られた。コア11の粒子径(中位径)の測定には、粒度分布測定装置(ベックマンコールター株式会社製「マルチサイザー3」)を用いた。
<シェル層を形成するステップ>
シェル層12の形成には、概ね図4〜図6に示されるような構造を有する株式会社奈良機械製作所製の「ハイブリダイゼーションシステム(NHS−1型)」を用いた。以下、主に図1及び図4〜図6を参照して、シェル層12を形成するステップについて説明する。
(水性エマルジョンの調製)
スチレンアクリル樹脂と樹脂の質量に対して1.5質量%のカーボンブラックをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM20B」)に投入し、回転数2500rpmで3分間混合し、混合物を2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、回転数300rpm、シリンダ温度100℃、投入量6kg/時の条件で、溶融混練した。続けて、日本コークス工業株式会社製のドラムフレーカーを用いて、板厚が約2mmになるように溶融混練物を展延した後、冷却固化によりカーボンブラックを含有する樹脂組成物が得られた。
樹脂としては、スチレンアクリル樹脂を用いた。このスチレンアクリル樹脂は、62℃のガラス転移点(Tg)と、118℃の融点と、16000の質量平均分子量(Mw)とを有していた。
カーボンブラック(低抵抗成分)としては、三菱化学株式会社製の「MA−100」を用いた。カーボンブラックの電気抵抗率は0.14Ω・cm以上0.25Ω・cm以下であった。カーボンブラックの電気抵抗は、コア11の電気抵抗よりも低かった。
続けて、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて、中位径(体積分布基準)が約400μmになるまで樹脂組成物を粗粉砕した。
続けて、粗粉砕した樹脂組成物150gと、ラウリル硫酸ナトリウム15gと、イオン交換水835gとを、温度調整器を備えた高速攪拌装置(吉田機械興業株式会社製「NV200」)に投入し、温度170℃、処理圧力150MPaの条件で3回処理した。これにより、樹脂粒子の水性エマルジョンが得られた。その後、水性エマルジョンの固形分濃度を15質量%に調整した。水性エマルジョンに含まれる樹脂粒子の中位径(体積分布基準)は100nmであった。
(コアの分散)
表面改質装置100(株式会社奈良機械製作所製「ハイブリダイゼーションシステム(NHS−1型)」)において、環状流路(粉体流路101及び攪拌室102)に設けられたジャケットを用いて、流路内の温度を20℃に調整した。そして、攪拌装置110を用いて流路内に流速30m/秒以上の気流を生じさせた。続けて、前述の手順で形成された200gのコア11を気流中に分散させた。攪拌装置110を用いて8000rpmの条件で攪拌しながら、流路内にコア11を10分間滞留させた。
続けて、前述の手順で調製された樹脂粒子の水性エマルジョンを噴霧部103にセットし、1.5g/分の供給速度で45分間かけて噴霧部103の二流体ノズルから粉体流路101内に水性エマルジョンを噴霧した。樹脂粒子の水性エマルジョンの総供給量は70gであり、そのうち固形分の総供給量は10.5gであった。
噴霧終了後10分間は流速30m/秒以上の気流を維持した。これにより、コア11の表面にシェル層12が形成された。その結果、トナー母粒子が形成された。その後、粉体回収部105からトナー母粒子を回収した。
得られたトナー母粒子のシェル層12の平均厚さは200nm以上250nm以下であった。シェル層12の平均厚さは、次のような方法で測定した。
トナー母粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を四酸化オスミウムにて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたミクロトーム(ライカ社製「EM UC6」)を用いて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700 F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層12の厚さを計測した。具体的には、トナー母粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上の、シェル層12と交差する4箇所の長さを測定した。そして、測定された4箇所の長さの平均値を測定対象である1個のトナー母粒子のシェル層12の厚さとした。トナーに含まれる10個以上のトナー母粒子についてシェル層12の厚さを測定し、得られた10個以上の測定値の平均を評価値とした。
<外添>
トナー母粒子11の粉体100質量部と外添剤(日本アエロジル株式会社製「シリカRA200」)の粉体1質量部とをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製「10C」)に投入し、回転数3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、混合装置の内容物を2分間攪拌した。これにより、トナー粒子10を多数有するトナーが得られた。
[トナーA2の調製方法]
トナーA2の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から1.5質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA3の調製方法]
トナーA3の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から3.0質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA4の調製方法]
トナーA4の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から5.0質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA5の調製方法]
トナーA5の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から7.0質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA6の調製方法]
トナーA6の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から10.0質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA7の調製方法]
トナーA7の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から12.0質量%に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーA0の調製方法]
トナーA0の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対するカーボンブラック(CB)の含有量を1.0質量%から0質量%(シェル層12はカーボンブラックを含まない)に変更した以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB1の調製方法]
トナーB1の調製方法は、カーボンブラックに代えて導電性酸化チタン(TiO2)を用いた以外は、トナーA1の調製方法と概ね同じである。
導電性酸化チタン(低抵抗成分)としては、チタン工業株式会社製の「EC−100」を用いた。導電性酸化チタンの電気抵抗率は10Ω・cm以上20Ω・cm以下であった。導電性酸化チタンの電気抵抗は、コア11の電気抵抗よりも低かった。
[トナーB2の調製方法]
トナーB2の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から1.5質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB3の調製方法]
トナーB3の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から3.0質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB4の調製方法]
トナーB4の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から5.0質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB5の調製方法]
トナーB5の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から7.0質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB6の調製方法]
トナーB6の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から10.0質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB7の調製方法]
トナーB7の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から12.0質量%に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[トナーB0の調製方法]
トナーB0の調製方法は、シェル層12における樹脂成分に対する導電性酸化チタン(TiO2)の含有量を1.0質量%から0質量%(シェル層12は導電性酸化チタンを含まない)に変更した以外は、トナーB1の調製方法と概ね同じである。
[評価方法]
評価の方法は、以下の通りである。
各試料(トナーA0〜A7及びB0〜B7)の評価方法は、以下の通りである。
(シェル層の導電率)
各試料(トナーA0〜A7及びB0〜B7)のシェル層12の導電率を測定した。導電率の測定にはアジレントテクノロジー株式会社製のLCRメーターを用いた。図7に、評価に用いた導電率測定装置の概要を示す。以下、図7を参照して、シェル層12の導電率の測定方法について説明する。
図7に示すように、導電率測定装置は、主電極201と、対電極202と、シールド203と、ガード電極204とを備えていた。ガード電極204は、シールド203に電気的に接続されていた。
評価に際しては、約0.3gの試料S0(トナー)を対電極202上に均一に載せて主電極201と対電極202との間に試料S0を挟み込んだ。さらに、プレス機を用いて、20kg/cm2の圧力で測定電極(主電極201及び対電極202)と試料S0とを密着させた。主電極201及び対電極202はそれぞれ試料S0のシェル層12に接触した。試料S0の周囲にはガード電極204を設けた。測定電極(主電極201及び対電極202)をLCRメーターに接続し、印加電圧1.0V、周波数100kHzの条件で、試料S0(シェル層12)の導電率を測定した。
(凝集度)
試料(トナー)3gを20ccのポリボトルに入れて、温度58℃、湿度50%RHの環境下で12時間静置した。続けて、ホソカワミクロン株式会社製のパウダーテスターを用いて、マニュアルに従い、レオスタッド目盛り3.5、時間30秒の条件でトナーを篩別した。篩別には、140メッシュ(目開き105μm)の篩を用いた。そして、次の式に基づき、凝集度を算出した。
凝集度(質量%)=100×篩別後に篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量
凝集度が15質量%以下であれば○(良い)と評価し、凝集度が15質量%よりも大きければ×(良くない)と評価した。
(帯電量)
試料(トナー)0.8gと、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のFS−C5200DN用キャリア10gとを、20ccのポリボトルに入れて、回転速度を最大に設定したターブラミキサーを用いて30分間攪拌して2成分現像剤を調製した。
帯電量の測定には、QMメーター(TREK社製「MODEL 210HS」)を用いた。詳しくは、QMメーターの吸引部を用いて現像剤0.10g(±0.01g)中のトナーを吸引し、吸引されたトナーの量とQMメーターの表示とに基づいてトナーの帯電量を算出した。
帯電量が10μC/g以上30μC/g未満であれば○(良い)と評価した。帯電量が30μC/g以上である場合には、チャージアップによる画像濃度の不良が発生し易くなるため、△(やや劣る)と評価した。帯電量が10μC/g未満である場合には、画像にかぶりが発生し易いため、×(良くない)と評価した。
(耐オフセット性)
プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「LS−4020DN」)に試料(トナー)をセットして、記録用紙の端部に30mm×30mmのソリッド画像を形成し、最低定着可能温度(コールドオフセット未発生温度)及び最高定着可能温度(ホットオフセット未発生温度)を測定した。オフセットの発生の有無は目視で確認した。
最低定着可能温度が165℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着可能温度が165℃超であれば×(良くない)と評価した。
最高定着可能温度が190℃以上であれば○(良い)と評価し、最高定着可能温度が190℃未満であれば×(良くない)と評価した。
(画像濃度、かぶり)
プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「LS−4020DN」)に試料(トナー)をセットして、記録用紙の端部に30mm×30mmのソリッド画像を形成し、画像部の画像濃度(ID)と非画像部のかぶり(FD)とを測定した。画像濃度(ID)及びかぶり(FD)の測定には、分光光度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「スペクトロアイ」)を用いた。
画像濃度(ID)が1.25以上であれば○(良い)と評価し、画像濃度(ID)が1.25未満であれば×(良くない)と評価した。
かぶり(FD)が0.008以下であれば○(良い)と評価し、かぶり(FD)が0.008超であれば×(良くない)と評価した。
(チャージアップ)
プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「LS−4300DN」の改造機)の現像器に試料(トナー)200gをセットして、低温低湿(温度10℃、湿度20%RH)環境下で30分間エージングした。その後、現像器を取り出し、現像スリーブ上のトナー層(薄い層)の乱れレベルを目視で確認した。
エージング後のトナー層が均一であれば○(良い)と評価し、エージング後のトナー層の端部に乱れが発生していれば△(やや劣る)と評価し、エージング後のトナー層の全面に乱れが発生していれば×(良くない)と評価した。
(クラック)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700 F」)を用いて、倍率10000倍で各試料(トナー)の表面を観察して、クラックの有無を評価した。詳しくは、撮影したトナーのSEM写真に基づいてクラックの有無を評価した。
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700 F」)を用いて、倍率50000倍で各試料(トナーA0〜A7、B0〜B7)の断面を観察して、クラックの有無を評価した。詳しくは、撮影したトナーのTEM写真に基づいてクラックの有無を評価した。この観察及び撮影に際しては、前述したシェル層12の厚さの測定方法と同様にして薄片試料を作製し、その試料の断面をTEMを用いて撮影した。
[評価結果]
表1に、トナーA0〜A7の評価結果をまとめて示す。以下、主に表1を参照して、トナーA0〜A7の評価結果について説明する。
トナーA2〜A6ではそれぞれ、帯電量が10μC/g以上30μC/g未満であった。トナーA7では、帯電量が10μC/g未満であった。A1では帯電量が30μC/g以上であった。トナーA0では、特に帯電量が35μC/g以上であった。
トナーA0〜A6ではそれぞれ、凝集度が15質量%以下であった。トナーA7では、凝集度が15質量%よりも大きかった。
トナーA0〜A7のいずれにおいても、最高定着可能温度が190℃以上であった。
トナーA0〜A6ではそれぞれ、最低定着可能温度が165℃以下であった。トナーA7では、最低定着可能温度が165℃よりも高かった。
トナーA0〜A7のいずれにおいても、画像濃度(ID)が1.25以上であった。
トナーA0〜A6ではそれぞれ、かぶり(FD)が0.008以下であった。トナーA7では、かぶり(FD)が0.008よりも大きかった。
トナーA2〜A7ではそれぞれ、エージング後のトナー層が均一であった。トナーA0では、エージング後のトナー層の全面に乱れが発生していた。トナーA1では、エージング後のトナー層の端部に乱れが発生していた。
表2に、トナーB0〜B7の評価結果をまとめて示す。以下、主に表2を参照して、トナーB0〜B7の評価結果について説明する。
トナーB2〜B6ではそれぞれ、帯電量が10μC/g以上30μC/g未満であった。トナーB7では、帯電量が10μC/g未満であった。B1ではそれぞれ、帯電量が30μC/g以上であった。トナーB0では、特に帯電量が40μC/g以上であった。
トナーB0〜B6ではそれぞれ、凝集度が15質量%以下であった。トナーB7では、凝集度が15質量%よりも大きかった。
トナーB0〜B6ではそれぞれ、最高定着可能温度が190℃以上であった。トナーB7では、最高定着可能温度が190℃未満であった。
トナーB0〜B6ではそれぞれ、最低定着可能温度が165℃以下であった。トナーB7では、最低定着可能温度が165℃よりも高かった。
トナーB0〜B7のいずれにおいても、画像濃度(ID)が1.25以上であった。
トナーB0〜B6ではそれぞれ、かぶり(FD)が0.008以下であった。トナーB7では、かぶり(FD)が0.008よりも大きかった。
トナーB2〜B7ではそれぞれ、エージング後のトナー層が均一であった。トナーB0では、エージング後のトナー層の全面に乱れが発生していた。トナーB1では、エージング後のトナー層の端部に乱れが発生していた。
図8は、トナーA2に関して、シェル層12を形成する前にコア11の表面をSEMを用いて撮影した写真(SEM写真)である。図9は、トナーA2に含まれるトナー粒子10のシェル層12の表面をSEMを用いて撮影した写真(SEM写真)である。詳しくは、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々に含まれるトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12の表面をSEMを用いて撮影した。その結果、トナーA2に関して図9(SEM写真)が撮影され、トナーA3〜A6及びB2〜B6に関しても、トナーA2のSEM写真(図9)と概ね同様のSEM写真が撮影された。
図8に示すように、シェル層12を形成する前においては、コア11の表面に粒子が付着していた。これに対し、図9に示すように、シェル層12の表面には粒子が付着していなかった。このように、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々に含まれるトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12の表面をSEMを用いて観察した場合には、シェル層12の形成に使用された樹脂粒子に由来する略球状の粒子(粒子状の低抵抗成分)がなかった。また、図9に示されるように、シェル層12はコア11の表面全体に形成されていた。また、シェル層12の表面は平滑であった。
図10は、トナーA2〜A6及びB2〜B6とは異なる方法で調製されたトナー(比較例に係るトナー)に含まれるトナー粒子10の断面をTEMを用いて撮影した写真(TEM写真)である。図11はトナーA2に含まれるトナー粒子10の断面をTEMを用いて撮影した写真である。詳しくは、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々に含まれるトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12の断面をTEMを用いて撮影した。その結果、トナーA2に関して、図11(TEM写真)が撮影され、トナーA3〜A6及びB2〜B6に関しても、トナーA2のTEM写真(図11)と概ね同様のTEM写真が撮影された。
図10に示すように、比較例に係るトナーでは、シェル層12がフィルム化されなかった。これに対し、図11に示すように、トナーA2〜A6及びB2〜B6ではそれぞれ、シェル層12がフィルム化されて、コア11とシェル層12との間に明確な境界線が観察された。このように、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々に含まれるトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10の断面をTEMを用いて観察した場合には、コア11とシェル層12との間に明確な境界面が存在していた。
また、図11に示すように、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々に含まれるトナー粒子10のうち、直径6μm以上8μm以下のトナー粒子10のシェル層12の断面を観察した場合には、コア11の表面に対して略直交する方向のクラックがなかった。
以上説明したように、トナーA2〜A6及びB2〜B6ではそれぞれ、シェル層12が、その樹脂成分に対して、1.5質量%以上10.0質量%以下の低抵抗成分(カーボンブラック又は導電性酸化チタン)を含有していた。また、トナーA2〜A6及びB2〜B6ではそれぞれ、低抵抗成分(カーボンブラック又は導電性酸化チタン)の電気抵抗率が50Ω・cm以下であった。トナーA2〜A6及びB2〜B6はそれぞれ優れた帯電性(帯電量)を有していた。また、トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々では、コア11がシェル層12で完全に覆われていた。トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々におけるシェル層12の平均厚さは200nm以上250nm以下であった。トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々はそれぞれ、定着性(最高定着可能温度及び最低定着可能温度)と保存性(凝集度)との両方に優れていた。この理由は、離型剤の染み出し及びトナー粒子同士の凝集を抑制することが可能になったためであると考えられる。
トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々の製造方法では、樹脂粒子を含む水性エマルジョンを噴霧した。水性エマルジョンに含まれる樹脂粒子は、その樹脂成分に対して、1.5質量%以上10.0質量%以下の低抵抗成分(カーボンブラック又は導電性酸化チタン)を含有していた。これにより、優れた帯電性(帯電量)を有するトナーA2〜A6及びB2〜B6を製造することができた。
トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々の製造方法では、シェル層12を形成する際に、コア11が分散された流速30m/秒以上の気流中に水性エマルジョンを噴霧した。これにより、定着性(最高定着可能温度及び最低定着可能温度)と保存性(凝集度)との両方に優れたトナーA2〜A6及びB2〜B6を製造することができた。
トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々の製造方法では、水性エマルジョンが界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を含んでいた。これにより、コア11の表面にシェル層12が均一に形成され易くなると考えられる。
トナーA2〜A6及びB2〜B6の各々の製造方法では、水性エマルジョンの固形分濃度が5質量%以上50質量%以下(詳しくは、15質量%)であった。これにより、コア11の表面を樹脂粒子(シェル層12)で均一に被覆し易くなると考えられる。
本発明は上記実施例には限定されない。
トナーのシェル層を形成する際に、コアが分散された流速30m/秒以上の気流中に水性エマルジョンを噴霧し、水性エマルジョンが、コアの電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する低抵抗成分を含有する樹脂粒子を含む場合には、帯電性に優れたトナーを製造し易くなる。
また、トナーのシェル層が、コアの電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する低抵抗成分を1.5質量%以上10.0質量%以下の割合で含有する場合には、そのトナーは優れた帯電性を有する。