JP2015081280A - 樹脂組成物 - Google Patents

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淳一郎 大村
Junichiro Omura
淳一郎 大村
高柳 健二郎
Kenjiro Takayanagi
健二郎 高柳
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Abstract

【課題】ポリブチレンサクシネートの流動性を顕著に高めた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)及び成分(B)を含む樹脂組成物。ハイドロタルサイトの配合でPBS系樹脂の流動性を効果的に高めて成形性を改善することができる。このため、高分子量で機械的特性に優れたポリブチレンサクシネートを用いて、繊維、成形品、フィルムやシート等の各種の成形品を良好な成形性のもとに成形することが可能となる。
成分(A):全ジオール単位に対し1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上有し、かつ全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対しコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上有するポリエステル
成分(B):ハイドロタルサイト
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、流動性を向上させた樹脂組成物に関するものである。
1,4−ブタンジオールとコハク酸及び/又はその誘導体を原料として得られるポリブチレンサクシネート(PBS)は、その原料である1,4−ブタンジオール及びコハク酸としてバイオマス資源から誘導されたものを用いることができ、また、それ自体生分解性を有し、環境負荷の小さいものであることから、近年の環境問題に対する意識の高まりの中で、繊維、成形品、フィルムやシート等、幅広い分野への適用が検討されている。
ポリブチレンサクシネートをこれらの各種用途に適用する場合、その流動性を高めることは、成形性の向上の面で極めて重要な条件である。ポリブチレンサクシネートの流動性は、ポリブチレンサクシネートの分子量を下げることにより高めることはできるが、低分子量ポリブチレンサクシネートでは、高分子量ポリブチレンサクシネートに比べて機械的特性等の物性が劣る。このため、分子量を著しく低下させることなくポリブチレンサクシネートの流動性を高めるための技術開発が望まれる。
特許文献1には、回収ポリエチレンテレフタレート(PET)等の回収ポリエステル樹脂、有機過酸化物により酸変性したエチレン−プロピレン共重合体ゴム、ポリオレフィン樹脂のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性改良剤として、リン酸エステル(ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)(AX−71))等のリン酸系添加剤を用いることが記載されている。また、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂の流動性改良剤として、ポリブチレンテレフタレートオリゴマー(サイクリクスコーポレーション社製(CBT−100))等の環状エステルオリゴマーを用いることが記載されている。
特開2003−26907号公報 特開2012−92171号公報
本発明者らの検討によれば、上記特許文献1、2で提案されているリン酸エステルや環状エステルオリゴマー等の流動性改良剤は、ポリブチレンサクシネートに対しては流動性の改良効果が十分ではなく、後掲の比較例2、3に示されるように、流動性はわずかしか向上しないことがわかった。また、特許文献1に記載されているリン酸系添加剤は酸性成分であることにより、ポリブチレンサクシネートを加水分解させる問題があることが見出された。本発明は、このような従来技術の問題点を解決することを目的とするものであり、ポリブチレンサクシネートの流動性を顕著に高めた樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリブチレンサクシネートの流動性改良剤としてハイドロタルサイトが有効であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記成分(A)及び成分(B)を含む樹脂組成物。
成分(A):全ジオール単位に対し1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上有し、かつ全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対しコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上有するポリエステル(以下「PBS系樹脂」又は「本発明のPBS系樹脂」と称す場合がある。)
成分(B):ハイドロタルサイト
[2] 前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)を0.5〜15重量部含む、[1]に記載の樹脂組成物。
本発明によれば、ハイドロタルサイトの配合でPBS系樹脂の流動性を効果的に高めて成形性を改善することができる。このため、高分子量で機械的特性に優れたPBS系樹脂を用いて、繊維、成形品、フィルムやシート等の各種の成形品を良好な成形性のもとに成形することが可能となる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本発明において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含む。
成分(A):全ジオール単位に対し1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上有し、かつ全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対しコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上有するポリエステル
成分(B):ハイドロタルサイト
本発明の樹脂組成物は、従来のポリブチレンサクシネートと比較し、顕著に流動性を向上させることができるという効果を奏する。これは、成分(B)のハイドロタルサイトが、成分(A)のポリエステル(以下、「PBS系樹脂」と称することがある。)に対して、結晶水の脱離による適度な加水分解作用を及ぼすためと考えられる。ハイドロタルサイトは通常、200℃付近から結晶水を脱離するため、この温度付近で混練することにより適度に結晶水が脱離するものと考えられる。PBS系樹脂は融点が通常、115℃程度であり、200℃という混練温度は融点より十分高く、流動性を向上させるのに適している。その他のポリエステル系樹脂は融点が高いため、200℃という混練温度では流動性を向上させるのに不十分であり、200℃を超える高温で混練した場合、ハイドロタルサイトの結晶水が脱離し悪影響を及ぼすものと考えられる。
[成分(A)]
本発明の成分(A)である、全ジオール単位に対し1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上有し、かつ全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対しコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上有するPBS系樹脂を含む。以下、このPBS系樹脂について、その製造方法に従って説明する。
本発明のPBS系樹脂の製造方法としては、公知のポリエステル樹脂の製造方法を適用することができ、特に制限はないが、例えば、1,4−ブタンジオールを含むジオール成分とコハク酸及び/又はその誘導体を含むジカルボン酸及び/又はその誘導体成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。経済性及び製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合でPBS系樹脂を製造する方法が好ましい。
<ジオール単位>
成分(A)のジオール単位(ジオールに由来する単位)は、1,4−ブタンジオール単位(1,4−ブタンジオールに由来する単位)を必須とするものであり、1,4−ブタンジオール単位と共に、他のジオール化合物単位を含むものであってもよい。他のジオール化合物単位としては、得られるPBS系樹脂の生分解性の面で脂肪族ジオール単位が好ましい。
脂肪族ジオール単位に用いる脂肪族ジオールとしては、2個のヒドロキシ基を有する脂肪族化合物であれば特に制限はされないが、炭素数が2以上であり、通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いPBS系樹脂が得られる理由から炭素数が偶数の脂肪族ジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコ−ル、及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコールが好ましい。
また、両末端ヒドロキシポリエーテルを上記の脂肪族ジオールと混合して使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数が通常4以上、好ましくは10以上であり、通常1000以下、好ましくは200以下、更に好ましくは100以下であるものが挙げられる。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。
本発明において、1,4−ブタンジオール等のジオール単位は、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換してもよい。
例えば発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
本発明のPBS系樹脂に含まれる全ジオール単位に対する1,4−ブタンジオール単位の割合は50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、その上限は通常、100モル%である。全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合が50モル%以上であることが、ハイドロタルサイトによる十分な流動性向上効果が得る上で必要であり、1,4−ブタンジオール単位の割合が上記下限値以上であると、流動性向上効果をより良好なものとする観点から好ましい。
<ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位>
ジカルボン酸単位(ジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位)はコハク酸及び/又はその誘導体単位(コハク酸及び/又はその誘導体に由来する単位)を必須とするものであり、コハク酸単位及び/又はその誘導体と共に他のジカルボン酸及び/又はその誘導体単位を含むものであってもよい。コハク酸の誘導体としては、コハク酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の炭素数1〜4のアルキルエステルや無水コハク酸を使用することができる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの内、コハク酸のメチルエステルが好ましい。
他のジカルボン酸単位に用いる他のジカルボン酸及び/又はその誘導体としては、得られるPBS系樹脂の生分解性の面で脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、2個のカルボキシル基を有する脂肪族化合物及び/又はその誘導体であれば特に制限はされないが、炭素数が2以上であり、通常12以下、好ましくは6以下の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の鎖状又は脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の炭素数1〜4のアルキルエステルや、環状酸無水物を使用することができる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの内、炭素数2以上6以下の鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸のメチルエステルが好ましい。
本発明において、コハク酸及び/又はその誘導体等の脂肪族ジカルボン酸は、石油資源誘導品を出発原料として製造することができるが、再生可能な植物資源から誘導される炭素源を出発原料としても製造することができる。植物資源から誘導される炭素源としては、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、グリセロールが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物由来原料としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。また、上記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液、糖蜜なども使用される。これらの発酵性糖質は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの脂肪族ジカルボン酸の製造方法としては、植物資源から誘導される炭素源を微生物変換する方法を採ることもできる。その際、用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属(USP5143833)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(USP5504004)、Escherichia属(USP5770435)等の通性嫌気性細菌、Corynebacterium属(特開平11−113588)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593)、Bacteroides ruminicola、Bacteroides amylophilus等の嫌気性ルーメン細菌、E.coli(J.Bacteriol.,57:147-158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333、USP6159738)を用いることができる。
本発明のPBS系樹脂はジカルボン酸及び/又はその誘導体単位として芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位(芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位)を含んでいてもよく、PBS系樹脂に芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体単位を導入することで、得られるPBS系樹脂の固有粘度を上げ、また末端カルボキシル基量を低減することができる。
芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に用いる芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体としては、カルボキシル基を2個有する芳香族化合物であれば特に限定されない。芳香族化合物とは、芳香族性を有している化合物であればよく、1個または複数個のベンゼン環が縮合または連結された芳香族環を構造中に有するベンゼン系芳香族化合物、ベンゼン環をもたないが芳香族性を示す非ベンゼノイド芳香族化合物が挙げられる。これらの中でもベンゼン系芳香族ジカルボン酸が、反応性の点から好ましく用いられ、ベンゼン環が縮合または連結されている芳香族環の数は、通常5個以下、好ましくは3個以下、特に好ましくはベンゼン環を1個又は2個有するジカルボン酸化合物である。芳香族環の数が多いと反応性の低下から十分な分子鎖延長作用を有さない場合がある。
具体的には、ベンゼン環を1個有する芳香族ジカルボン酸化合物としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸;芳香族環を複数有する芳香族ジカルボン酸化合物として、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸;非ベンゼノイド芳香族ジカルボン酸としてピリジンジカルボン酸、フランジカルボン酸、チオフェンジカルボン酸等の複素環化合物類が挙げられる。尚、ジカルボン酸の置換基位置は特に限定されない。また、これら芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4のアルキルエステル誘導体であってもよい。
これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらの炭素数1〜4のアルキルエステル誘導体が好ましく、特にテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はこれらの炭素数1〜2のアルキルエステル誘導体が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
PBS系樹脂に含まれる全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対するコハク酸及び/又はその誘導体単位の割合は50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、その上限は通常、100モル%である。全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位中のコハク酸及び/又はその誘導体単位の割合が50モル%以上であることがハイドロタルサイトによる十分な流動性向上効果を得る上で必要であり、また、この効果をより良好なものとする観点から、上記上限値以上とすることが好ましい。
また、ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位が芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位を含む場合、その割合は、ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位100モル%に対して通常、0.025モル%以上5モル%以下である。好ましくは0.05モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは0.3モル%以上であり、一方上限は、好ましくは4モル%以下、より好ましくは3モル%以下、特に好ましくは2モル%以下である。芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位の割合が上記上限値以下であると得られるPBS系樹脂に対するはハイドロタルサイトによる流動性改良効果の観点で好ましく、また、上記下限値以上であると固有粘度及び末端カルボキシル基量の観点から好ましい。
PBS系樹脂に芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位が含有されることで、固有粘度が上昇し末端カルボキシル基量が減少する詳細な作用は不明であるが、一定の分子鎖長を持つポリエステルオリゴマー同士の鎖延長剤として芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位が作用することで、分子鎖長の成長を促進させ上記効果が得られるものと考えられる。より詳細には、芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位を規定量含有することで、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体と芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体の反応性の差異によって、初期には脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体の縮合によるオリゴマー成長が先行し、その後芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体がオリゴマー同士の鎖延長を行うものと考える。
<その他の共重合単位>
本発明のPBS系樹脂は、ジオール単位及びジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に加えてさらにその他の共重合単位を含むことで、重合速度や各種物性が向上する場合がある。
その他の共重合単位の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物に由来する単位が挙げられる。これらの共重合単位の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸に由来する単位が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、極少量で容易に高重合度のPBS系樹脂を製造できるので最も好ましい。
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等が挙げられるが、これらはオキシカルボン酸のエステルやカプロラクトン等のラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であってもよい。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸又はグリコール酸が特に好ましい。その入手形態としては、30〜95重量%の水溶液のものが容易に入手することができる点で好ましい。
上記2官能のオキシカルボン酸は、PBS系樹脂を構成する全単量体単位100モル%に対して、上記2官能のオキシカルボン酸単位の割合が下限として通常0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上、一方、上限として通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下となるように用いられる。
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物としては、具体的には、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸ならびにその混合物が好ましい。
上記の3官能以上の多官能化合物を用いる場合、その使用量が多過ぎると、ゲル発生の原因となるおそれがあるため、得られるPBS系樹脂中の3官能以上の多官能化合物単位の量が、PBS系樹脂を構成する全単量体単位100モル%に対して、通常3モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下となるような量とすることが好ましい。一方、高重合度のPBS系樹脂を容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、PBS系樹脂を構成する全単量体単位100モル%に対して、3官能以上の多官能化合物単位の量が、通常0.0001モル%以上、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上となるような量である。
<重合触媒>
ジオール単位、ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位及び必要に応じて用いられるその他の共重合単位の原料となる各化合物の重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、重縮合反応の減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物を用いることができる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物や複合酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
更には、白水春雄著「粘土鉱物学−粘土科学の基礎」朝倉書店(1995年)等に記載される公知の層状珪酸塩を単独で或いは上記金属化合物と組み合わせた触媒を使用すると、重合速度が向上する場合があるため、このような触媒系もまた好んで使用される。ここで、層状珪酸塩としては、具体的には、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク及び緑泥石群等が挙げられる。
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重縮合時に溶融或いは溶解した状態であると重縮合速度が高くなる場合がある為、重縮合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好適に使用される。
チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)等が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド等が好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するPBS系樹脂に対する金属量として、下限値が通常、0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは250ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、残留触媒濃度の増大によりポリマーの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリマーが得られにくくなる傾向にある。
また、生分解性の機能を有し且つ環境に優しいPBS系樹脂を提供する観点からは、上記の重合触媒の中で、特に、錫含有化合物やアンチモン含有化合物は、毒性が比較的高いため、それらの化合物の使用量を制限するのが好ましい。従って、錫含有化合物やアンチモン含有化合物を重合触媒として使用する場合の使用量は、錫化合物触媒の場合、生成するPBS系樹脂に対する金属量として、通常60ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下であり、一方、アンチモン化合物触媒の場合は、生成するPBS系樹脂に対する金属量として、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
<反応条件>
本発明のPBS系樹脂を製造する際の温度、時間、圧力などの条件は、従来公知の条件を採用することができる。例えば、1,4−ブタンジオールを含むジオール化合物とコハク酸及び/又はその誘導体を含むジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。また、反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0.03×103Pa以上であり、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.6×103Pa以下、更に好ましくは0.3×103Pa以下の真空度下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常1時間以上であり、好ましくは2時間以上、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
芳香族ジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体を用いる場合、芳香族ジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体を添加する時期は、特に限定されない。例えば、原料のモノマーと一括に反応槽に入れて反応することもできるし、ジオール化合物とジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させた後の任意の時点で芳香族ジカルボン酸化合物を添加し、更に重縮合反応させてもよく、重縮合反応終了後にポリエステル芳香族ジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体を添加し、更に加熱減圧を加えて反応させる等の方法を採用することもできる。
本発明のPBS系樹脂を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
本発明のPBS系樹脂の製造において、上記のジオール化合物とジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法を用いてもよい。後者の場合、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物環状体の除去は、通常、上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物環状体になりやすいため、酸無水物環状体の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、脂肪族ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸化合物とジオール化合物の環状単量体を共に留去させる方法は、重縮合速度が向上するため、好ましい態様である。
本発明に用いる成分(A)のPBS系樹脂の製造において、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去する方法により高重合度のPBS系樹脂を製造する方法を用いる場合には、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管の反応容器側排気口の温度を、脂肪族ジカルボン酸無水物環状体の融点、或いは重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物環状体の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持すると、生成する酸無水物環状体が効率よく反応系から除去でき、目的の高重合度のPBS系樹脂が短時間で製造できるため好ましい。更には、反応容器側排気口から凝縮器までの配管温度を酸無水物環状体の融点、或いは重縮合反応時の真空度での沸点のいずれか低い方の温度以上に保持するとより好ましい。
本発明に用いる成分(A)のPBS系樹脂の製造において、目的とする重合度のPBS系樹脂を得るためのジオール化合物とジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、ジカルボン酸化合物及び/又はその誘導体1モルに対するジオール化合物の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上、特に好ましくは0.95モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下、さらに好ましくは1.1モル以下、最も好ましくは1.05モル以下である。
<PBS系樹脂の物性>
上記のようにして製造される成分(A)であるPBS系樹脂は、ジオール単位として1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上で、100モル%以下含み、ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位としてコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上で、100モル%以下含むものである。
成分(A)のPBS系樹脂と成分(B)のハイドロタルサイトとを混練した際に適度な加水分解作用を得るためには、成分(A)のPBS系樹脂の融点が、190℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。また、成分(A)のPBS系樹脂において、その融点の下限値には特に制限はないが、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。成分(A)のPBS系樹脂の融点は、DSC法により結晶融解熱ピークとして測定することができる。
本発明に用いる成分(A)のPBS系樹脂の固有粘度(IV)値は通常1.0dL/g以上であり、好ましくは1.2dL/g以上で、通常2.0dL/g以下、好ましくは1.8dL/g以下である。上記固有粘度(IV)値は、重合度の尺度であり、製造したポリエステルが実用上十分な力学特性が得られる理由から、成形に不都合が起きない範囲であれば、一般に高いほどよいと言われている。この因子は、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度にも影響を与える因子であるが、ポリマーの粘度が上昇することにより疎水性が増して耐加水分解性が向上する場合がある。
なお、固有粘度(IV)の測定方法は以下の通りである。
(固有粘度(IV) dL/g)
ウベローデ型粘度計を使用し、次の要領で求める。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(3)より求める。
IV=((1+4KHηSP)0.5−1)/(2KHC) ・・・(3)
(ただし、ηSP=η/η−1であり、ηは試料溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用する。)
本発明に用いる成分(A)のPBS系樹脂の末端カルボキシル基量(AV)は、通常90μeq/g、好ましくは80μeq/g以下、より好ましくは70μeq/g以下、更に好ましくは60μeq/g以下である。このようなPBS系樹脂は、熱安定性に優れ、成形時の品質の低下が少ない、即ち、溶融成形時に末端基の切断や、主鎖の切断等の副反応が少ないという特徴を有する。
一方、カルボキシル基末端が実質存在しないようなPBS系樹脂の製造は、従来の製造法では、重縮合速度が極めて遅く、極めて高額の超高真空設備投資を要する。それに対し、生成するPBS系樹脂中にカルボキシル基末端が存在すると重縮合速度が早く、容易に高重合度のPBS系樹脂が得られる理由から、本発明におけるPBS系樹脂には、通常30μeq/g以上、好ましくは40μeq/g以上、特に50μeq/g以上濃度の末端カルボキシル基量が存在することが好ましい。
PBS系樹脂の末端カルボキシル基量は、製造時のジカルボン酸及び/又はその誘導体成分とジオール成分の仕込みバランスを調整することにより制御することができる。また、これらの末端カルボキシル基量制御の別法として、前記した少なくとも1種の3官能以上の化合物単位を適量重合系へ含有させて制御する方法も用いられる。
この末端カルボキシル基量が低い重合系は、ポリエステルの重縮合製造時間が長くなり、それに伴うポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされるので、実用上充分な特性を示すポリエステルを製造する為には、超高真空設備の使用など極めて高額な設備投資を必要とする。一方、末端カルボキシル基量が高い重合系は、耐加水分解性が低いポリエステルが製造されるか、あるいは、ポリエステルの粘度が高すぎて、重合反応後の抜き出しや成形性等に弊害が生じるおそれがある。
なお、末端カルボキシル基量(AV)は以下の方法で測定される。
(ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV) μeq/g)
ペレット状ポリエステルを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させる。次いで、クロロホルム5cmを徐々に加えて室温まで冷却する。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とする。また、ブランクとして、ポリエステル試料を加えずに同様の操作を実施し、以下の式(4)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出する。
[末端カルボキシル基量(μeq/g)]=(a−b)×0.1×f/w ・・・(4)
ここで、aは、滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
尚、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は以下の方法で求める。試験管にメタノール5cmを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.lmol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4cmで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1mol/Lの塩酸水溶液を標準液として0.2cm採取して加え、再度、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定する(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行う。)。そして、以下の式(5)によって力価(f)を算出する。
[力価(f)]=[0.1mol/Lの塩酸水溶液の力価]×[0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)]/[0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)] ・・・(5)
本発明のPBS系樹脂中に含まれる触媒の金属量は、使用する触媒の金属種にもよるが、その使用量が少ない程、PBS系樹脂の加水分解性や熱分解性が低減できるばかりでなく、末端カルボキシル基量が低いポリマーが得られる場合が多い。例えば、触媒としてチタン含有触媒を用いた場合に生成するPBS系樹脂中に含有するチタン量を10ppm以下とすると、理由は未だ明らかになっていないが、上記の末端カルボキシル基量が60μeq/g以下の優れた耐加水分解性を示すPBS系樹脂を容易に製造することができる。
[成分(B)]
ハイドロタルサイトとは、化学式MgAl(OH)16CO・4HOで表される天然鉱物の呼称であるが、最近では、上記天然鉱物と基本的に近似した構造を有する下記式(1)で表される複水酸化物の総称としても、一般に使用されている。
〔M2+ 1−x3+ (OH)〕(Ax/n・mHO) ・・・(1)
式(1)中、M2+は、Mg、Fe、Zn、Ca、Cu、Co等の2価の金属イオンを表し、好ましくはMg、Zn又はCaであり、より好ましくはMgである。また、M3+は、Al、Ce、Fe、Mn、In、Cr等の3価の金属イオンを表し、好ましくはAl、Ceであり、より好ましくはAlである。xは0.2〜0.33の数であり、またmは0より大きい実数で、脱水の程度により変わるが、一般に0〜2の整数である。Aは炭酸イオン(CO 2−)、HPO 2−、飽和脂肪族モノカルボン酸であり、好ましくは炭酸イオンである。なお、nはAの価数である。
なお、本発明において流動性を改良するために用いるハイドロタルサイトは従来、中和剤、補強剤、加水分解抑制剤、触媒の失活剤、赤外線吸収材、制酸剤等として、ポリ乳酸やポリエチレンテレフタレート等のPBS系樹脂以外のポリエステル樹脂に配合されている(例えば、特開2003−231743号公報、特開平9−278998号公報)が、流動性を改良する効果があることは報告されておらず、特にポリブチレンサクシネートに対して流動性の向上に有効であることは知られていなかったものである。
特に好ましいハイドロタルサイトは、下記式(2)で表されるものである。
Mg1−xAl(OH)(CO)x/2・mHO ・・・(2)
式(2)中、x、mの定義は式(1)における定義と同様である。
本発明において、ハイドロタルサイトは一般に市販されているものを用いることができる。市販品としては協和工業社製DHT−4A、堺化学社製HT−1等が挙げられる。
本発明のPBS系樹脂組成物中の成分(B)のハイドロタルサイトの含有量は、所望とする流動性によって適宜調整されるが、成分(A)であるPBS系樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部であることが好ましく、特に2〜10重量部であることが好ましい。ハイドロタルサイトの含有量が上記下限値以上であるとハイドロタルサイトを配合したことによる流動性の改良効果の観点から好ましく、上記上限値以下であると機械的特性の維持の観点から好ましい。
[その他の成分]
本発明のPBS系樹脂には、特性が損なわれない範囲において成分(B)のハイドロタルサイト以外に、各種の熱可塑性樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PA6、PA1010、PA1012、PA11、PA12等のポリアミド系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等)や添加剤、例えば熱安定剤・酸化防止剤(各種ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスフェート化合物等のリン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤等)、結晶核剤(タルク、各種アルカリ金属塩等)、難燃剤(ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物等)、帯電防止剤(脂肪酸塩類、脂肪族アミン塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等)、離型剤(ポリオレフィン系ワックス、飽和脂肪酸エステル類、不飽和脂肪酸エステル類、パラフィンワックス等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、HALS等)、鎖長延長剤・末端封止剤(エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等)等を混合してもよい。
また、成形時に上に示した各種の熱可塑性樹脂、添加剤の他に、ガラス繊維、炭素繊維、チタンウィスカー、マイカ、タルク、CaCO3、TiO2、シリカ等の強化剤及び増量剤を添加して成形することもできる。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のPBS系樹脂組成物は、公知のポリエステル系樹脂組成物の製造方法と同様、単軸もしくは二軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を用いて混練することにより得ることができる。例えば、二軸押出機により混練する場合、その温度条件は通常、160〜220℃、好ましくは180〜200℃である。
[用途]
成分(A)として上記のPBS系樹脂と、成分(B)のハイドロタルサイトを含む本発明のPBS系樹脂組成物は流動性に優れることから、各種のフィルム用途や射出成形品の用途に適している。本発明のPBS系樹脂組成物の成形方法は特に限定されず、圧縮成形、積層成形、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形等の公知の方法を用いることができる。
上記成形方法を用いて作られる成形体としては、フィルム、シート、発泡体、板、繊維、容器等が挙げられる。より具体的には、ラミネートフィルム、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、スプリットヤーン、複合繊維等が挙げられる。
これら成形体の用途は限定されず、具体的には食品用フィルム、生鮮食品のトレーやファーストフードの容器、野外レジャー製品、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート、コーティング資材、農業量マルチフィルム、肥料用コーティング材、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材及び合成紙などに利用可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限
り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔原料〕
以下の実施例及び比較例で使用した原料の詳細は以下の通りである。
[成分(A)]
A−1:PBS系樹脂(ジオール単位:1,4−ブタンジオール単位100モル%、ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位:コハク酸単位99.7モル%、リンゴ酸単位:0.3モル%、固有粘度:1.46dL/g、末端カルボキシ基量(AV):53μeq/g)
[成分(B)]
B−1:ハイドロタルサイト(協和化学社製(DHT−4A))
[その他の成分]
PET:ポリエチレンテレフタレート(三菱化学社製RT543C(ポリエチレンテレフタレートのホモポリマー、融点:255℃))
X−1:リン酸エステル(ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)(AX−71))
X−2:環状ブチレンテレフタレートオリゴマー(サイクリクスコーポレーション社製(CBT−100))
〔評価方法〕
以下の実施例及び比較例で製造されたPBS系樹脂組成物の流動性は以下の方法でMFRを測定することにより評価した。
[MFR(メルトフローレート)]
JIS K7210に準拠し、測定温度190℃、荷重21.2Nでメルトフローレート(MFR)を測定した。
〔樹脂組成物の製造・評価〕
[実施例1]
ポリエステル(A−1)100重量部にハイドロタルサイト(B−1)を2重量部配合し、15mmφの二軸混練押出機にて200℃、200rpmで混練してPBS系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用い、MFRを測定した。結果を表−1に示す。
[実施例2〜3、比較例1〜3]
樹脂組成物の原料・配合を表−1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして各々PBS系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用い、MFRを測定した。結果を表−1に示す。
[比較例4]
実施例1において、ポリエステル(A−1)の代わりに、PETを用い、15mmφの二軸混練押出機にて融点以上である280℃で混練しようとしたが、発泡がひどく、混練することができなかった。
Figure 2015081280
表−1より、ハイドロタルサイトを配合することによりPBS系樹脂の流動性を高めることができることが分かる。特に、実施例1〜3と比較例2、3との対比から、この流動性の改良効果は、従来、PBS系樹脂以外の他の樹脂の流動性改良剤として用いられているリン酸エステルやポリエステルオリゴマーを用いた場合よりも格段に大きいものであることがわかる。

Claims (2)

  1. 下記成分(A)及び成分(B)を含む樹脂組成物。
    成分(A):全ジオール単位に対し1,4−ブタンジオール単位を50モル%以上有し、かつ全ジカルボン酸及び/又はその誘導体単位に対しコハク酸及び/又はその誘導体単位を50モル%以上有するポリエステル
    成分(B):ハイドロタルサイト
  2. 前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)を0.5〜15重量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023190413A1 (ja) * 2022-03-28 2023-10-05 三菱ケミカル株式会社 変性ポリエステル系樹脂、接着性樹脂組成物及び積層体

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