JP2015079240A - 画像形成用トナー、現像剤及び画像形成装置 - Google Patents

画像形成用トナー、現像剤及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた低温定着性を有すると共に定着幅が広く、かつ耐熱保存性を両立し、優れた耐擦性を有するトナーを提供する。【解決手段】少なくとも結晶性の高分子鎖からなる結晶性セグメント(a)と非晶性の高分子鎖からなる非晶性セグメント(b)とから構成されるブロック共重合樹脂と、組成分として含まれるアルコール成分中に炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有すると共に架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含んで構成される架橋ポリエステル樹脂と、からなる結着樹脂を含有し、示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下になるように調整されたトナーを画像形成に用いる。例えば、前記トナーを画像形成装置100Cの各画像形成手段18の現像剤として用い画像を形成する。【選択図】図3

Description

本発明は、電子写真法、静電記録等により形成される静電荷像を現像する際に使用される画像形成用トナー及び現像剤に関する。
近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化、及び耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、並びに製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐えうる耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、低温定着性の向上は非常に重要である。
これらの問題を解決できる技術として、トナーの結着樹脂に結晶性樹脂を用いることが知られている。前記結晶性樹脂は、結晶化状態から融点で急激に軟化する特性を持つことから、融点以下における耐熱保存性を担保しながら、トナーの定着温度を大きく下げることが可能である。即ち、低温定着性と耐熱保存性を高品質で両立することができる。しかしながら、低温定着性が発現する融点を有する前記結晶性樹脂は、靱性に優れる一方で軟質であり、塑性変形しやすい。このため、単純に結晶性樹脂を結着樹脂として用いるだけでは、トナーの機械的耐久性が非常に乏しく、画像形成装置内でのトナーの変形や凝集、固着、装置内部材のトナー汚染など、様々な問題が発生する。
このため、結着樹脂に結晶性樹脂を用いたトナーとして、結晶性樹脂と非晶性樹脂を併用したトナーが従来から数多く提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。これらは、従来の非晶性樹脂のみからなるトナーに較べて、低温定着性と耐熱保存性の両立性に優れたものであった。しかし、結晶性樹脂がトナー表面に露出すると、現像器内での撹拌ストレスにより、トナー粒子の凝集体が発生して転写抜けの原因となる問題があった。このため、結晶性樹脂の添加量が制限され、結晶性樹脂の利点を十分に活かせる技術ではなかった。
また、結晶性を有する分子鎖(セグメント)と、非晶性を有する分子鎖(セグメント)とを化学的に結合させた樹脂を使用したトナーが数多く提案されている。例えば、セグメントとして、結晶性ポリエステルと、ポリウレタンとを結合させた樹脂を結着樹脂に用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献6及び7参照)。また、セグメントとして、結晶性ポリエステルと無定形ビニル重合体とを結合させた樹脂を用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献8参照)。また、セグメントとして、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルとを結合させた樹脂を結着樹脂に用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献9〜11参照)。
更に、結晶性樹脂を主成分とする結着樹脂に無機微粒子粉末を添加した技術(例えば、特許文献12参照)や、スルホン酸基を含む不飽和結合による架橋構造を有する結晶性樹脂を用いたトナー(例えば、特許文献13参照)などの技術が提案されている。
また、高いレベルの低温定着性を得る目的で、結晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂、及び離型剤を含有し、樹脂とワックスが互いに非相溶で海島状の相分離構造を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献14参照)。また、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤及びグラフト重合体を含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献15参照)。
これらの提案の技術は、結晶性ポリエステル樹脂が非晶質ポリエステル樹脂に比べて急速に溶融するため低温定着化を成し得る。しかし、海島状の相分離構造における島にあたる結晶性ポリエステル樹脂が融解しても、大部分の海にあたる非晶質ポリエステル樹脂は未だ融解しない。そうすると、結晶性ポリエステル樹脂、及び非晶質ポリエステル樹脂の双方がある程度融解しないと定着しないため、これらの提案の技術は、近年更に高まっている高いレベルの低温定着性を満足するものでない。
前述の提案技術のように、結晶性を有する分子鎖(結晶性セグメント)と非晶性を有する分子鎖(非晶性セグメント)を化学的に結合させることで課題解決を図る試みがなされ、低温定着性と耐熱保存性との両立に効果を発揮するものであったが、結晶性を有する結晶性セグメントに由来する軟質性が根本的に改善されたものではなく、トナーの機械的耐久性に関わる課題が解決できるものではなかった。また、結晶性セグメントと非晶性セグメントを化学的に結合させた分子構造の樹脂のみでは定着下限の向上は見られるが定着幅を持たせることは困難であり、機械的強度も不十分であり、さらに高いレベルで低温定着性と定着幅とを両立でき、優れた耐擦性を有するトナーの提供が求められているのが現状である。
また、結晶性樹脂を使用したトナーの大きな課題として、画像の耐擦性の問題があり、熱定着時に定着媒体上でトナーが溶融すると、トナー中の結晶性樹脂が再び結晶化するまでに時間を要するため、画像表面の硬度が速やかに回復できない。このため、定着後の排紙工程における排紙ローラ、搬送部材などとの接触、及び摺擦によって、画像表面に傷跡が生じたり、光沢度の変化が発生する問題があった。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、優れた低温定着性を有すると共に定着幅が広く、かつ耐熱保存性を両立し、優れた耐擦性を有するトナーを提供することを目的とする。
ここで、定着幅とはホットオフセットが発生しない上限温度と定着下限温度との差を指す。
本発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも、結晶性の高分子鎖からなる結晶性セグメントと非晶性の高分子鎖からなる非晶性セグメントととから構成される特定のブロック共重合樹脂と、分岐構造を有する非線状の特定の架橋ポリエステル樹脂とを結着樹脂として用いることにより上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
即ち、上記課題は、架橋ポリエステル樹脂と、ブロック共重合樹脂と、を含むトナーであって、
前記架橋ポリエステル樹脂は、構成成分としてジオール成分を含み、該ジオール成分が炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有し、さらに架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含み、
前記ブロック共重合樹脂は、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成され、
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下であることを特徴とする画像形成用トナーにより解決される。
本発明の画像形成用トナーは、優れた低温定着性を有すると共に定着幅が広く、かつ耐熱保存性を両立し、優れた耐擦性を有する。
本発明で用いられる画像形成装置の一例を示す概略説明図である。 本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す概略説明図である。 本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す概略説明図である。 図3に示す画像形成装置の一部を示す要部拡大図である。
前述のように本発明における画像形成用トナーは、架橋ポリエステル樹脂と、ブロック共重合樹脂と、を含むトナーであって、前記架橋ポリエステル樹脂は、構成成分としてジオール成分を含み、該ジオール成分が炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有し、さらに架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含み、前記ブロック共重合樹脂は、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成され、
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下であることを特徴とするものである。
以下、「画像形成用トナー」を「トナー」と略称することがある。
[結着樹脂]
本発明におけるトナーは、トナー構成成分として少なくとも結着樹脂を含み、該結着樹脂として、ブロック共重合樹脂Bと、構成成分としてジオール成分を含み、該ジオール成分が炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%含有し、さらに架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含むポリエステル樹脂Cを含有する。
前記ブロック共重合樹脂Bは、結晶性を有する高分子鎖からなる結晶性セグメント(a)と非晶性を有する高分子鎖からなる非晶性セグメント(b)とをブロック共重合させて得られる。
前記架橋ポリエステル樹脂はさらに結晶質ポリエステル樹脂を含有することができる。そして、前記架橋ポリエステル樹脂が複数のポリエステル樹脂からなり、該複数のポリエステル樹脂のうち少なくとも1つが、活性水素基含有化合物および該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との反応により得られるポリエステル樹脂とすることができる。例えば、複数のポリエステル樹脂のうち少なくとも1つが、3価以上の官能基により付与された分岐構造を有する非線状の反応性前駆体(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)と架橋剤(活性水素基含有化合物)との反応により得られるポリエステル樹脂であってもよい。
ここで、結晶性を有する高分子鎖からなる結晶性セグメント(a)とは、結晶性高分子構造単位(結晶部)を指し、非晶性を有する高分子鎖からなる非晶性セグメント(b)とは、非晶性高分子構造単位(非晶部)を指す。
なお、「非晶性」とは「非結晶性」を指す。
以降、「結晶性を有する高分子鎖からなる結晶性セグメント(a)」を、「結晶性セグメント(a)」と略称し、「非晶性を有する高分子鎖からなる非晶性セグメント(b)」を、「非晶性セグメント(b)」と略称することがある。
本発明を満たすためには、トナーの構成成分として用いる結着樹脂の主要樹脂(メインバインダー)として、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成されたブロック共重合樹脂を含むことが必須である。
ブロック共重合樹脂とは、異種の高分子構造単位(異種高分子鎖)を共有結合で結合させたものである。一般に、結晶性高分子構造[結晶性セグメント(a)]と非晶性高分子構造[非晶性セグメント(b)]などの異種高分子鎖は、お互いに非相溶である系が多く、水と油のように、混ざり合うことはない。一般的に、異なる構造単位の高分子を単純に混合するだけ(単純混合系)では、異なる高分子鎖はそれぞれ独立に動けるので、マクロ相分離する。
一方、前記ブロック共重合体の場合、異なる高分子鎖同士が共有結合で連結されているため、マクロ相分離することができない。しかし、異なる高分子鎖の両者が連結しているとはいえ、同種の高分子鎖同士間では凝集し、異なる高分子鎖間では可能な限り離れようとするため、高分子鎖の大きさの程度で交互に、結晶性セグメント(a)が多い部分と、非晶性セグメント(b)が多い部分という様に分かれるしかない。
このため、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)の相混合度、組成、及び長さ(分子量とその分布)、さらに両者の配合比率などを変えると、相分離する形(構造)が変化する。これにより、例えば、A.K.Khandpur, S.Forster, and F.S.Bates, Macromolecules, 28 (1995) 8796-8806.などで例示されている様に、Sphere構造、Cylinder構造、Gyroid構造、Lamellar構造などの周期的秩序メソ構造を制御しうる。
ミクロ相分離構造下から結晶化させた場合、上記の周期的秩序メソ構造を制御できれば、融体のミクロ相分離構造をテンプレートとすることにより、結晶相を数十〜数百nmスケールで規則的配置を図ることができ得る。
本発明においては、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成されるブロック共重合樹脂を主要樹脂成分として含むことにより、ミクロ相分離構造に代表される特有の高次構造が形成される。このような構造の活用により、本願における課題解決が好適に達成される。
すなわち、前記高次構造を活用し、定着等、流動性が必要な場面には結晶性高分子構造単位(結晶部)の固−液相転移現象に基づく十分な流動、変形性を持たせ、一方、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面には結晶部を構造内に封じ込めることによって運動性を拘束できる。その結果、本願の目的を達成することができる。
なお、前記共重合体の分子構造、結晶性やミクロ相分離構造などの高次構造については、従来公知の手法により容易に解析できる。具体的には、高分解能NMR測定(H、13C等)、示差走査熱量計(DSC)測定、広角X線回折測定、(熱分解)GC/MS測定、LC/MS測定、赤外線吸収(IR)スペクトル測定、原子間力顕微鏡観察、TEM観察などにより確認することができる。
[ブロック共重合樹脂]
前述のように、ブロック共重合樹脂は、結晶性セグメント(a)をなす結晶性を有する高分子鎖[結晶性高分子構造単位(結晶部)]と、非晶性セグメント(b)をなす非晶性を有する高分子鎖[非晶性高分子構造単位(非晶部)]とから構成される。
以下、ブロック共重合樹脂を構成する非晶性セグメント(b)、及び結晶性セグメント(a)についてそれぞれ具体的に説明する。
<非晶性セグメント(b)[非晶部]>
前記非晶性セグメント(b)[非晶性高分子構造(非晶部)]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、主たる記録媒体である紙との親和性に優れ、かつトナーの耐熱保存性に優れる点から、特に非晶性のポリエステル高分子鎖(「非晶性ポリエステル(b)」と呼称する。)であることが好ましい。
前記非晶性セグメント(b)の具体例として、非晶性ポリエステル(b)を例に挙げて以下説明する。
前記非晶性ポリエステル(b)の水酸基価としては、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜40mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価から分子量が換算されるが、非晶性ポリエステル(b)の分子量が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合がある。分子量が高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。
同様の指標として、重量平均分子量が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000〜30,000が好ましく、5,000〜25,000がより好ましい。
なお、前記非晶性ポリエステル(b)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
前記非晶性ポリエステル(b)のガラス転移温度は、40℃〜75℃が好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃未満であると、耐熱保存性の低下、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性の低下などにつながることがあり、75℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。なお、前記非晶性ポリエステル(b)のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量分析法(DSC法)により測定することができる。
前記非晶性ポリエステル(b)に用いられるアルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール及び1,6−ヘキサンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコールなど);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)及びブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
また、前記の2価のジオールに加えて3価以上(3〜8価またはそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、及びジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラックなど:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
前記非晶性ポリエステル(b)に用いられるカルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、及びセバシン酸など)及びアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4〜36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの誘導体、及びナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸、及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
なお、ポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物または低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
このほか、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールの如き開環重合系も好適に使用し得る。
前記樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
<結晶性セグメント(a)[結晶部]>
前記結晶性セグメント(a)[結晶性高分子構造(結晶部)]としては、目的に応じて適宜選択することができるが、定着時にシャープメルトし、低分子量化しても充分な可とう性、及び耐久性を有する点から、特に結晶性のポリエステル高分子鎖(「結晶性ポリエステル(a)」と呼称する。)であることが好ましい。
前記ポリエステル樹脂の中でも、優れたシャープメルト性、高い結晶性を有する点から、脂肪族系構造単位からなるポリエステル高分子鎖(「脂肪族ポリエステル樹脂(a)」と呼称する。)が特に好ましい。
前記結晶性セグメント(a)の具体例として、結晶性ポリエステル(a)を例に挙げ以下説明する。
前記結晶性ポリエステル(a)は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸および/またはその誘導体とを重縮合させて得られる。また、ポリカプロラクトンの如き開環重合系も好適に使用し得る。
前記結晶性ポリエステル(a)の融点としては、50℃〜80℃が好ましい。前記融点が、50℃未満であると、前記結晶性ポリエステル(a)が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下することがある。80℃を超えると、定着時の加熱による前記結晶性ポリエステル(a)の溶融が不十分で、トナーの低温定着性が低下することがある。
前記結晶性ポリエステル(a)の水酸基価としては、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜40mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価から分子量が換算されるが、その分子量が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量が高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。
同様の指標として、重量平均分子量が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000〜30,000が好ましく、5,000〜25,000がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステル(a)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
−多価アルコール−
前記結晶性ポリエステル(a)の合成に用いられる多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオール、などが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル(a)の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、材料の入手が困難となることがあるので、前記炭素数は12以下であることがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオール、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル(a)の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが特に好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−多価カルボン酸−
前記結晶性ポリエステル(a)の合成に用いられる多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸、又はこれらの無水物、或いはこれらの低級(炭素数1〜3)アルキルエステル、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、又はこれらの無水物、あるいはこれらの低級(炭素数1〜3)アルキルエステル、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記多価カルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸、前記芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、2重結合を持つジカルボン酸、などを含有していてもよい。
前記結晶性ポリエステル(a)は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとを縮重合させて得られるものが好ましい。即ち、前記結晶性ポリエステルは、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。その結果、得られる結晶性の脂肪族ポリエステル(a)は、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れたトナーの低温定着性を発揮できる。
前記結晶性ポリエステル(a)の結晶性、分子構造等については、NMR測定、示差走査熱量計(DSC)測定、X線回折測定、GC/MS測定、LC/MS測定、赤外線吸収(IR)スペクトル測定、などにより確認することができる。
<ブロック共重合樹脂>
前述のように、ブロック共重合樹脂は、結晶性セグメント(a)[結晶性高分子構造(結晶部)]と非晶性セグメント(b)[非晶性高分子構造(非晶部)]との共重合により構成される。特に、結晶性のポリエステル高分子鎖(「結晶性ポリエステル(a)」)と、非晶性のポリエステル高分子鎖(「非晶性ポリエステル(b)」)との共重合により構成されるものが好ましい。
前記共重合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の(1)から(3)に記載の方法などが挙げられるが、分子設計の自由度の観点から(1)および(3)が好ましく、(1)がより好ましい。
(1)予め重合反応により調製した非晶性ポリエステル(b)と、予め重合反応により調製した結晶性ポリエステル(a)とを適当な溶媒に溶解乃至分散させ、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基等のポリマー鎖末端の水酸基、又はカルボン酸と反応する官能基を2つ以上有する伸長剤とを反応させることにより共重合する方法。
(2)予め重合反応により調製した非晶性ポリエステル(b)と、予め重合反応により調製した結晶性ポリエステル(a)とを溶融混練し、減圧下でエステル交換反応により調製する方法。
(3)予め重合反応により調製した結晶性ポリエステル(a)の水酸基を重合開始成分として使用し、前記結晶性ポリエステル(a)のポリマー鎖末端から非晶性ポリエステル(b)を開環重合して共重合する方法。
前記ブロック共重合樹脂の共重合において、非晶部[非晶性ポリエステル(b)]と結晶部[結晶性ポリエステル(a)]との比率(単位は各重量%)は、[非晶性ポリエステル(b)]/[結晶性ポリエステル(a)]として1.5〜4.0の範囲がより好ましい。非晶性ポリエステル(b)と結晶性ポリエステル(a)との比率が1.5を下回る場合、結晶部[結晶性ポリエステル(a)]の影響が強くなりすぎてしまい、ブロック共重合樹脂に特有のミクロ相分離構造を破壊し、全面ラメラ構造となる場合が多い。このため、定着等、流動性が必要なケースでは有効に寄与するが、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面では、その運動性を拘束できず、本願の目的を満足することができない。
他方、非晶性ポリエステル(b)と結晶性ポリエステル(a)との比率が4.0を超える場合、非晶部[非晶性ポリエステル(b)]の影響が強くなりすぎてしまう。このため、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面では有効に寄与するが、定着等、流動性が必要なケースでは十分な流動、変形性を担保できず、やはり本願の目的を満足することができない。
前記ブロック共重合樹脂の共重合方法として前記(1)に記載の方法を用いる場合、伸長材としては、従来公知の何れをも使用することができ、目的に応じて一種、及び多種を併用してもよいが、コスト及び反応性の観点からイソシアネート化合物が好ましい。特に好ましいものはTDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、水添MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、及びIPDI(イソホロンジイソシアネート)である。
前記ブロック共重合樹脂を共重合させる際に用いる伸長材の使用量としては、予め重合反応により調製した非晶性ポリエステル(b)と、予め重合反応により調製した結晶性ポリエステル(a)とのポリエステルポリオール総モル数/イソシアネート総モル数(OH/NCO)として、0.35〜0.7の範囲が好適である。OH/NCOが0.35を下回る場合、非晶性ポリエステル(b)と結晶性ポリエステル(a)の接合(共重合)が不十分となり、それぞれ独立して存在する各成分[非晶性ポリエステル(b)と結晶性ポリエステル(a)]が多くなり、品質の安定性を担保することができないため好ましくない。一方、OH/NCOが0.7を超える場合、ブロック共重合樹脂の分子量、及びウレタン基間の相互作用の影響が強くなりすぎてしまい、定着等、流動性が必要な場面で十分な流動、変形性を担保できず、本願の目的を満足することができない。
前記ブロック共重合樹脂の結晶性セグメント(a)が、二価の脂肪族アルコールと二価の脂肪族カルボン酸を縮合してなる結晶性ポリエステルであり、非晶性セグメント(b)が、二価の脂肪族アルコールと芳香族を主体とした二価のカルボン酸を縮合してなる非晶性ポリエステルである。前記結晶性セグメント(a)と前記非晶性セグメント(b)のモル比率(a/b)が10/90〜40/60であることが好ましい。
結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)のモル比率(a/b)が10/90未満であれば、低温定着が見込めず、40/60を超えると、耐熱保存性が懸念される。
ブロック共重合樹脂の分子量としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる重量平均分子量として20,000〜70,000の範囲が好ましい。20,000を下回る場合、結着樹脂系としての分子量が低く、十分な粘弾性を獲得できないため、定着時の流動性には優れるが粘度が低すぎてオフセットに繋がるケースが多く、保存性や耐擦性にも劣るため好ましくない。70,000を超える場合、流動特性が非常に悪く定温定着性を担保できず、好ましくない。
なお、前記ブロック共重合樹脂の分子構造、結晶性やミクロ相分離構造などの高次構造については、従来公知の手法により容易に解析できる。具体的には、高分解能NMR測定(H、13C等)、示差走査熱量計(DSC)測定、広角X線回折測定、(熱分解)GC/MS測定、LC/MS測定、赤外線吸収(IR)スペクトル測定、原子間力顕微鏡観察、TEM観察などにより確認することができる。
例えば、トナー中に本願で規定する共重合体が含まれているか否かは、下記のようにして判断することができる。
まず、トナーを酢酸エチル、THFなどの溶媒を用いて溶解する(ソックスレー抽出でも可)。ついで、冷却機能付き高速遠心分離装置を用いて、例えば、20℃、10,000rpm×10分の遠心操作に供し、可溶分と不溶分に分離する。可溶分については、再沈殿を複数回行って精製を行う。この処理により、高度に架橋された樹脂成分、顔料、ワックスなどを分離することができる。
ついで、得られた樹脂成分に対してGPC測定を行い、分子量及び分布、クロマトグラムを獲得する。このとき、得られたクロマトグラムが多峰性の場合は、フラクションコレクターなどを活用して分画/分取を行い、得られた各フラクションについて上記同様に製膜する。この操作によって、各種樹脂成分を分離精製し、夫々を各種分析操作に供する。
得られた精製膜については、まず、DSC測定を行ってTg、融点、結晶化挙動などを把握する。冷却降温時に結晶化ピークが観られた場合、その温度域で24時間以上アニーリングして結晶成分を成長させる。結晶化は観られないが、融解ピークが観られた場合、融点−10℃程度の温度でアニーリングを行う。これにより、各種転移点及び結晶性骨格の存在を把握することができる。
次に、SPM(AFM)観察、場合によってはTEM観察も併用して相分離構造の有無を確認し、所謂ミクロ相分離構造が確認できた場合には、共重合体、あるいは高い分子内/間相互作用を有する系であるということになる。
さらに、精製膜について、FT-IR測定、NMR測定(H、13C)、GC/MS測定、場合によっては、分子構造をより詳細に分析できるNMR測定(2D)を行うことで、その組成、構造および各種特性を把握できる。例えば、ポリエステル骨格やウレタン結合の存在、それらの組成、組成比を確認することができる。
以上の測定、分析結果を総合的に判断することにより、トナー中に本願で規定する第一の樹脂(共重合体)が含まれているか否かを判断することができる。
以下では、上記で紹介した各種測定法の手順や条件の一例を示す[SPM(AFM)観察のみ後述]。
<GPC測定の一例>
ゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)測定装置(例えば、HLC−8220GPC(東ソー社製))を用いて測定することができ、フラクションコレクター付きのものが好ましい。
カラムとしては、TSKgel SuperHZM―H 15cm 3連(東ソー社製)などを好適に使用できる。測定する樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)(安定剤含有、和光純薬製)にて0.15質量%溶液にし、0.2μmフィルターで濾過した後、その濾液を試料として用いた。前記THF試料溶液を測定装置に100μl注入し、温度40℃の環境下にて、流速0.35ml/分間で測定した。
分子量は単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線を用いて計算を行った。前記標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDシリーズおよびトルエンを用いた。以下の3種類の単分散ポリスチレン標準試料のTHF溶液を作成し上記の条件で測定を行い、ピークトップの保持時間を単分散ポリスチレン標準試料の光散乱分子量として検量線を作成した。
溶液A:S-7450 2.5mg, S-678 2.5mg, S-46.5 2.5mg, S-2.90 2.5mg, THF 50ml
溶液B:S-3730 2.5mg, S-257 2.5mg, S-19.8 2.5mg, S-0.580 2.5mg, THF 50ml
溶液C:S-1470 2.5mg, S-112 2.5mg, S-6.93 2.5mg, トルエン2.5mg, THF 50ml
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いることができるが、フラクション分画などを行う際にはより感度の高いUV検出器を使用することができる。
<DSC測定の一例>
サンプル5mgをTAインスツルメンツ社製T−Zero簡易密閉パンに封入し、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて測定した。
昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st):測定は、窒素気流下、1st.ヒーティングとして、40℃から150℃まで5℃/分で昇温し、5分間保持した後、−70℃まで5℃/min.で冷却し、5分間保持した。
昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd):次いで、2nd.ヒーティングとして、昇温速度5℃/分で昇温して熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」のグラフを描き、定法に従ってTg、冷結晶化、融点、結晶化温度などを求めた。
なお、Tgは1st.ヒーティングのDSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。また、昇温時に±0.3℃のモジュレーションを掛けることでエンタルピー緩和成分を分離することも可能である。
<SPM観察の一例>
原子間力顕微鏡(AFM)によるタッピングモードによる位相像によって確認される。本発明における共重合体は低い軟質、すなわち位相差が大きい像として観察される部位と、硬質であり位相差が小さい像として観察される部位が微分散していることが特徴である。このとき、硬質である低位相差の部位からなる第二の位相差像が外相であり、軟質な高位相差の部位からなる第一の位相差像が内相で微分散された構造であることが本発明においては重要である。
前記位相像を得るためのサンプルとしては、例えばライカ製ウルトラミクロトームULTRACUT UCTを用いて以下の条件で樹脂のブロックを切断して切片を出したものを用いることで観察できる。
・切削厚み:60nm
・切削速度:0.4mm/sec
・ダイヤモンドナイフ(Ultra Sonic 35°)使用
前記AFM位相像を得るための代表的な装置としては、例えばアサイラムテクノロジー社製のMFP-3Dにて、カンチレバーとしてOMCL-AC240TS-C3を用いて以下の測定条件にて観察することができる。
・target amplitude:0.5V
・target percent:-5%
・amplitude setpoint:315mV
・scan rate:1Hz
・scan points:256×256
・scan angle:0°
<TEM観察の一例>
〔手順〕
(1)試料をRuO4水溶液の雰囲気に曝して、2時間染色を施した。
(2)試料をガラスナイフでトリミング後、ウルトラミクロトームを使用して下記条件で切片を作製した。
(切削条件)
切削厚み:75nm
切削速度:0.05〜0.2 mm/sec
ダイヤモンドナイフ(Ultra Sonic35°)使用
(3)メッシュ上に切片を固定し、RuO4水溶液の雰囲気に曝して5分間切片染色を施した。
〔観察条件〕
使用装置:日本電子製 透過型電子顕微鏡 JEM-2100F
加速電圧:200kV
形態観察:明視野法
設定条件:spot size : 3, CLAP : 1, OLAP : 3, Alpha : 3
<FT−IR測定の一例>
FT−IRスペクトル測定は、FT−IRスペクトロメータ(パーキンエルマー社製、商品名「Spectrum One」)を用いて(16スキャン、分解能:2cm−1)、中赤外領域(400−4000cm−1)で行った。
<NMR測定の一例>
サンプルを重クロロホルム中に可能な限り高濃度で溶解させた後、5mmΦのNMRサンプルチューブに入れ、各種NMR測定に供した。測定装置はJEOL Resonance社製のJNM-ECX-300を使用した。
測定温度は何れも30℃とし、H-NMR測定は、積算回数256回、繰り返し時間5.0sで行った。13C測定は、積算回数10,000回、繰り返し時間1,5sとした。得られるケミカルシフトから成分を帰属し、該当するピークの積分値をプロトン乃至カーボン数で除した数値から配合比を算出することが可能である。
更に詳細な構造解析を行う場合は、二量子フィルターH-Hシフト相関二次元NMR測定(DQF-COSY)測定などを行うことも可能である。この場合は、積算回数1,000回、繰り返し時間2.45sまたは2.80sで行い、得られたスペクトルからそのカップリング状態、即ち反応サイトを特定することもできるが、通常のHおよび13C測定で十分に判別可能である。
<GC/MS測定の一例>
本分析は反応試薬を用いた反応熱分解ガスクロマトグラフー質量分析(GC/MS)法を実施した。尚、反応熱分解GC/MS法で使用する反応試薬は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の10%メタノール溶液(東京化成工業)を用いた。GC-MS装置は島津製作所製QP2010、データ解析ソフトは島津製作所製GCMSsolution、加熱装置はフロンティア・ラボ製Py2020Dを使用した。
〔分析条件〕
反応熱分解温度:300℃
カラム:Ultra ALLOY-5L=30m ID=0.25mm Film=0.25μm
カラム昇温: 50℃(保持1分)〜10℃/min〜330℃(保持11分)
キャリアガス圧力:53.6kPa一定
カラム流量:1.0ml/min
イオン化法:EI法 (70eV)
質量範囲:m/z 29〜700
注入モード:Split (1:100)
本発明のトナーは、架橋ポリエステル樹脂と、ブロック共重合樹脂[結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成される]とを含有し、前記架橋ポリエステル樹脂は、組成分として酸成分とアルコール成分を含有し、該アルコール成分としてジオール成分を含み、該アルコール成分中、炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有し、且つ前記架橋ポリエステル樹脂の架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含んで構成される。特に、架橋ポリエステル樹脂の架橋成分として3価または4価の脂肪族アルコールまたは酸が好ましく用いられる。
低温定着性を向上させるためは、例えば、架橋ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂と共に溶融してガラス転移温度を低くする方法、または分子量を小さくする方法が考えられる。しかし、単純に非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度を低くするか、または分子量を小さくすることにより溶融粘性を低下させた場合、トナーの耐熱保存性、及び定着時の高温オフセット性が悪化することは容易に想像される。
それに対して、本発明のトナーにおいて、前記架橋ポリエステル樹脂は構成成分としてジオール成分を含み、ジオール成分が炭素数3〜10の脂肪族ジオールであり、且つ、構成成分(アルコール成分)中50mol%以上含有する組成によりガラス転移温度や溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保すると共に、3価以上の酸またはアルコール(脂肪族アルコール等)を架橋成分として含むことで分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。そのため、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性の保持が可能となる。
架橋ポリエステル樹脂を得る際に、3価以上の酸(カルボン酸)やアルコール(エポキシ化合物等も含む)を架橋剤として使用することも可能だが、カルボン酸の場合には芳香族化合物であることが多いことや架橋部分のエステル結合密度が高くなることにより、トナーを加熱定着させて作成した定着画像の光沢が十分に発現できないことがある。エポキシ等の架橋剤を使用する場合にはポリエステルの重合後に架橋反応を実施しなければならず、架橋点間距離の制御が困難であり、狙い通りの粘弾性を得ることができないことや、ポリエステル生成時のオリゴマーと反応して架橋密度の高い部分ができやすいことから定着画像にムラが生じ光沢や画像濃度が劣ることがある。
前記架橋ポリエステル樹脂を構成する脂肪族ジオール成分の主鎖の炭素数が奇数であり、アルキル基を側鎖に有することが好ましい。
前記架橋ポリエステル樹脂が複数のポリエステル樹脂からなり、該複数のポリエステル樹脂のうち少なくとも1つが、活性水素基含有化合物(非線状の反応性前駆体と反応可能な化合物:架橋剤)および該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(非線状の反応性前駆体)との反応により得られるポリエステル樹脂であることが好ましい。
前記架橋ポリエステル樹脂は、紙などの記録媒体への接着性がより優れる点から、ウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有することが好ましい。また、前記架橋ポリエステル樹脂が、ウレタン結合及びウレア結合のいずれかを有することにより、ウレタン結合又はウレア結合が擬似架橋点のような挙動を示し、前記架橋ポリエステル樹脂のゴム的性質が強くなり、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性がより優れる。
[非線状の反応性前駆体]
非線状の反応性前駆体としては、前記非線状の反応性前駆体と反応可能な化合物(架橋剤)と反応可能な基を有するものであればよく、特にポリエステル樹脂(以下、「プレポリマー」と称することがある。)であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記プレポリマーにおける前記架橋剤と反応可能な基(非線状の反応性前駆体が有する反応性基:プレポリマーが有する反応性基)としては、例えば、架橋剤の有する活性水素基と反応可能な基などが挙げられる。前記架橋剤の有する活性水素基と反応可能な基(プレポリマーが有する反応性基)としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、前記架橋ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
前記プレポリマーは、非線状である。前述のように、非線状とは、例えば、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有することを意味する。前記プレポリマーとしては、イソシアネート基を含有するポリエステルポリエステルプレポリマーが好ましい。
〔イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマー〕
前記反応性前駆体が、イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーであり、前記架橋剤が、活性水素基含有化合物であることが好ましい。
前記イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基を有するポリエステルとポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステルプレポリマーは、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかとを重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステルに分岐構造を付与する。
〈ジオール〉
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールが好ましい。
これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〈ジカルボン酸〉
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1〜3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〈3価以上のアルコール〉
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
〈3価以上のカルボン酸〉
前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1〜3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
前記3価以上の芳香族カルボン酸としては、炭素数9〜20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。前記炭素数9〜20の3価以上の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
〈ポリイソシアネート〉
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[非線状の反応性前駆体と反応可能な架橋剤]
架橋剤としては、前記非線状の反応性前駆体と反応し、架橋ポリエステル樹脂を生成できる架橋剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物などが挙げられる。
[活性水素基含有化合物]
前記非線状の反応性前駆体と反応可能な架橋剤(例えば、活性水素基含有化合物)における活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア結合を形成可能な点で、アミン類が好ましい。
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
前記架橋ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記架橋ポリエステル樹脂を構成するポリエステルプレポリマーが、アルコール成分として炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを50mol%以上含有することが好ましい。脂肪族ジオールの含有量が50mol%未満であると、低温で変形しにくくなる。
また、前記架橋ポリエステル樹脂のTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記架橋ポリエステル樹脂は、全アルコール成分中に炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有することが好ましい。
また、前記架橋ポリエステル樹脂のTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記架橋ポリエステル樹脂を構成するポリエステルプレポリマーが、カルボン酸成分として炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を50mol%以上含有することが好ましい。ジカルボン酸の含有量が50mol%未満であると、低温で変形しにくくなる。
前記トナーは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)が、20℃以上50℃以下であることが好ましい。
従来のトナーであると、Tgが50℃以下程度になると、夏場や熱帯地方を想定したトナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生しやすくなる。その結果、トナーボトル中での固化、及び現像機内でのトナーの固着が発生する。また、トナーボトル内でのトナー詰りによる補給不良、及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生しやすくなる。
本発明の前記トナーは、従来のトナーよりTgが低い。しかし、トナー中の低Tg成分である前記架橋ポリエステル樹脂が非線状の分子構造を有するため、本発明の前記トナーは、耐熱保存性を保持することができる。特に、前記架橋ポリエステル樹脂が凝集力の高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、耐熱保存性を保持する効果がより顕著になる。
本発明のトナーは、示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下であり、該示差走査熱量測定(DSC)による昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)が0℃以上30℃以下であって、Tg1st>Tg2ndを満たすことが好ましい。
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)と昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)との差(Tg1st−Tg2nd)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃以上であることが好ましい。前記差の上限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以下が好ましい。
本発明の前記トナーは、ブロック共重合樹脂[結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成される]を含有することから加熱前(昇温1回目の前)には非相溶状態で存在していた結晶性ポリエステル樹脂と、架橋ポリエステル樹脂が加熱後(昇温1回目の後)には相溶状態になることを意味する。
前記Tg1stが、20℃未満であると、耐熱保存性の低下、現像機内でのブロッキング、及び感光体へのフィルミングが発生し、50℃を超えると、トナーの低温定着性が低下する。前記Tg2ndが0℃未満の場合には定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下し、30℃以上の場合には十分な低温定着性や光沢度が得られないことがある。
前記架橋ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、20,000以上1,000,000以下が好ましい。前記架橋ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、前記非線状の反応性前駆体と前記架橋剤を反応させた反応生成物の分子量である。前記重量平均分子量が、20,000未満であると、トナーが低温で流動しやすくなり、耐熱保存性に劣る場合があるほか、溶融時の粘性が低くなり、高温オフセット性が低下する場合がある。
前記架橋ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1及び990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを架橋ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
前記架橋ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、5質量部〜25質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましい。前記含有量が、5質量部未満であると、低温定着性、及び耐高温オフセット性が悪化することがあり、25質量部を超えると、耐熱保存性の悪化、及び定着後に得られる画像の光沢度が低下することがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性の全てに優れる点で有利である。
本発明のトナーの構成成分として用いられる結着樹脂としては、前記ブロック共重合樹脂と前記架橋ポリエステル樹脂が必須であるが、ブロック共重合樹脂及び架橋ポリエステル樹脂と共に結晶質ポリエステル樹脂を添加して併用することができる。
<結晶質ポリエステル樹脂>
結晶質ポリエステル樹脂は、いわゆる結晶性が高いことから定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶質ポリエステル樹脂を、ブロック共重合樹脂及び架橋ポリエステル樹脂と共に用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶質ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こす。それに伴いブロック共重合樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着幅)[定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差(ホットオフセットが発生しない上限温度と、定着下限温度との差)]についても、良好な結果を示す。
なお、本発明において結晶質ポリエステル樹脂とは、前述のごとく、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指す。
例えば、前記プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂(ポリエステル樹脂を変性したもの)は、前記結晶質ポリエステル樹脂には属さない。
〈多価アルコール〉
結晶質ポリエステル樹脂の生成に用いられる前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶質ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、前記結晶質ポリエステル樹脂Dの結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〈多価カルボン酸〉
結晶質ポリエステル樹脂の生成に用いられる前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1〜3)アルキルエステルも挙げられる。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1〜3)アルキルエステルなどが挙げられる。
また、前記多価カルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結晶質ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、前記結晶質ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
前記結晶質ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。前記融点が、60℃未満であると、結晶質ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、80℃を超えると、定着時の加熱による結晶質ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下することがある。
前記結晶質ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するという観点から、前記結晶質ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)3,000〜30,000、数平均分子量(Mn)1,000〜10,000、Mw/Mn1.0〜10であることが好ましい。さらには、重量平均分子量(Mw)5,000〜15,000、数平均分子量(Mn)2,000〜10,000、Mw/Mn1.0〜5.0であることが好ましい。
前記結晶質ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
前記結晶質ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g〜50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。
前記結晶質ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1又は990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
前記結晶質ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、3質量部〜20質量部が好ましく、5質量部〜15質量部がより好ましい。前記含有量が、3質量部未満であると、結晶質ポリエステル樹脂Dによるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣ることがあり、20質量部を超えると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶりが生じやすくなることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
本発明者らは、結着樹脂について、応力緩和に有効に作用し強靭性を向上しうる位相差の大きい部位からなる前記第一の位相差像を、位相差の小さい部位からなる前記第二の位相差像の相中に微細な構造を持って分散させる構成とすることで、樹脂の靭性向上と緩和性とのトレードオフの関係を解消できることを知見した。
即ち、原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードにより、前記架橋ポリエステル樹脂を測定したときの探針の位相(度)をTc、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)を測定したときの探針の位相(度)をTb、及び前記ブロック共重合樹脂の結晶性セグメント(a)を測定したときの探針の位相(度)をTaとした時に、下記式(2)及び式(3)の関係を満たすことが好ましい。
Ta≧Tc>Tb ・・・式(2)
Tc−Tb≧5 ・・・式(3)
[タッピングモードの条件] カンチレバー:Siプローブ、Siプローブの共振周波数:300kHz、Siプローブのばね定数:42N/m
前述のように、前記架橋ポリエステル樹脂、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)、及び前記ブロック共重合樹脂の結晶性セグメント(a)は、室温下において、トナー中で互いが非相溶であることで、トナー中の海状の前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)中に島状の前記架橋ポリエステル樹脂が存在する海島構造を形成する。
その際に、AFMのタッピングモード(共振周波数300kHz、ばね定数42N/m条件)により、探針を一定条件で振動させると、前記架橋ポリエステル樹脂を測定したときの探針の位相Tcは、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)を測定したときの探針の位相Tbと比べ大きい(Tc>Tb)ことが好ましい。
これは、前記架橋ポリエステル樹脂が、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)よりも柔らかい状態であることを意味する。そうすることで、一定圧力が加わらない条件下では、島状の前記架橋ポリエステル樹脂は、海状の前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)に保護されているため流動しない。
しかし、定着時に圧力、及び熱が加わった際には、前記架橋ポリエステル樹脂と前記非晶性セグメント(b)が相溶したように振舞う。そのため、より低温で定着することが可能となる。また、位相差がTc−Tb≧5を満たすことで、より明確な分離の海島構造をとりやすくなり、耐熱保存性が向上する点からより好ましい。
したがって、溶融粘性が高く流動しにくい前記架橋ポリエステル樹脂を前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)とミクロ相分離状に複合化することで、トナーのガラス転移温度を低く設定しても耐熱保存性、及び耐高温オフセット性を保持することが可能となり、また低温定着性と両立することが可能となる。
<<AFMのタッピングモードによる探針の位相>>
前記原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードによる樹脂の観察方法、言い換えれば、前記AFMのタッピングモードにより樹脂を測定したときの探針の位相について説明する。
前記原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードによる樹脂の観察は、トナーの割断面から観察試料を作製し、該割断面を観察することにより行うことができる。観察試料を作製する方法は、以下のとおりである。
・試料作製方法
(1)Ruブロック染色後に、トナーをエポキシ樹脂中に包埋する。
(2)ウルトラソニックを用いたミクロトームにより100nmの厚みに薄片化する。
(3)シリコンウェハー上にマウントする。
なお、薄片化する際には、断面積が略最大となるように薄片化する。
前記位相像を得るためのサンプルは、ライカ製ウルトラミクロトームULTRACUT UCTを用いて、以下の条件でトナー又はトナー用樹脂のブロックを切断して切片を出し作製した。これを用いて観察した。
・切削厚み:60nm
・切削速度:0.4mm/sec
・ダイヤモンドナイフ(Ultra Sonic 35°)使用
続いて、以下の方法により観察する。
・観察方法
分析装置: アサイラム・テクノロジー社製 分子間力プロープ顕微鏡システム
カンチレバー: OMCL−AC160TS−C2
(Siプローブ、共振周波数300kHz(Typ.)、ばね定数42N/m(Typ.))
測定モード: タッピングモード
測定条件:
Target amplitude:0.5V
Target percent:−5%
Amplitude Setpoint:193〜241mV
Scan Rate:0.5Hz
Scan Points:256×256
試料1粒子全体がスキャン範囲に含まれるようにスキャン範囲を設定して測定する。本明細書における実施例では、10μm×10μmでの位相像を観察した。
位相像において、相対的に位相値が大きい部分は、柔らかい部分である。
<AFMにより求められる特性について>
前記トナー用樹脂は、タッピングモードAFMによって観察される位相像を、前記位相像における位相差の最大値と最小値の中間値で二値化処理した二値化像が、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像と、位相差の小さい部位からなる第二の位相差像とを有し、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとることが好ましい。また、前記位相差の大きい部位からなる前記第一の位相差像の、分散相における最大フェレ径の平均(分散径)は、100nm以下が好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
前記トナーの前記分散径は、100nm以下が好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
なお、本発明において、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとるとは、前記二値化像において、ドメイン間の境界が規定でき、前記第一の位相差像の分散相におけるフェレ径が規定できることをいう。前記二値化像における前記第一の位相差像が、画像ノイズか位相差像かの判別が難しい微小粒径となる場合や、明確なフェレ径を規定できない場合は「分散された構造ではない」と判断する。前記第一の位相差像は画像ノイズに埋もれて、ドメイン間の境界が規定できない場合、フェレ径が規定できなくなる。
なお、ドメイン形状が縞状であり、最大フェレ径が300nm以上の場合にのみ、最大フェレ径でなく、最小フェレ径をドメイン径とする。
結着樹脂の強靭性を向上させるには、樹脂の内部に外部からの変形や圧力を緩和させる構造を導入させる必要がある。このための手段として、より柔らかい構造を導入することが挙げられる。しかし、この場合には、保管中にトナー粒子が融着するブロッキング、又はその柔らかさに由来する画像の損傷及び付着が起こりやすい。強靭性と緩和性とを両立させるためには、この双方のトレードオフの関係を解決する必要がある。
前記トナーのパルスNMRにより測定されるスピン−スピン緩和時間が下記条件を満たすことが好ましい。
50℃におけるトナーのパルスNMRのソリッドエコー法によるスピンースピン緩和時間(t50):1.0 ms以下
50℃から130℃まで昇温したときの130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130):10ms以上
130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t’70):3.0ms以下
<パルスNMRにより求められる特性について>
即ち、本発明の骨子として、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)を化学的に結合させ、各セグメントの構造を制御することで結晶性セグメント(a)の分子運動を拘束する技術手段を活用するものである。このような分子運動性の尺度化には、パルスNMR(以下、「パルス法NMR」と称することがある。)が有効である。
前記パルス法NMRは、高分解能NMRとは異なり化学シフト情報(局所化学構造など)を与えない。その代わりに、前記パルス法NMRは、分子運動性と密接な関係のあるH核の緩和時間(スピン−格子緩和時間(T1)、及びスピン−スピン緩和時間(T2))を迅速に測定できる手法であり、近年その使用が急速に広がっている。前記パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法、ソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)、90゜パルス法などが挙げられ、何れも好適に用いることができる。
本発明における結着樹脂(ブロック共重合樹脂、架橋ポリエステル樹脂、等)及び構成成分、いわゆるトナー用樹脂及びトナーは、中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法及び90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
本発明においては、保存安定性に関する分子運動性の尺度として、50℃におけるスピン−スピン緩和時間(t50)を規定している。定着時に関する分子運動性の尺度として、130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)を規定している。画像搬送時の耐擦性に関する分子運動性の尺度として、130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t’70)を規定している。
これらの規定において、特定の範囲を満たすことは、定着等の流動性が必要な際には十分な運動性を有し、保存や機内搬送など、流動性が不要な際には十分に運動性が拘束されていることを示している。
前記トナーの前記t50、前記t130、及び前記t’70について説明する。
保存安定性に関する分子運動性の尺度である前記t50は、1.0ms以下である。前記t50が、1.0msを超えると、前記トナー用樹脂を用いた50℃におけるトナーの運動性が高いため、外力による変形や凝集が発生し易くなり、夏場や船便での海外輸送及び保管に難を生じるため好ましくない。
定着特性に関する分子運動性の尺度である前記t130は、10ms以上である。前記t130が、10ms未満であると、加熱時における分子運動性が不十分であるため、前記トナー用樹脂を用いたトナーの流動、及び変形性が低下する。これにより、画像延展性の低下、及び印字対象物との接合低下などが起こり、結果、光沢低下や画像剥離などの画質低下につながるため、好ましくない。
更に、画像搬送時の耐擦性に関する分子運動性の尺度である前記t’70は、3.0ms以下である。前記t’70が、3.0msを超えると、前記トナー用樹脂を用いたトナーの分子運動性が十分に拘束される前に、定着後の排紙工程におけるローラや搬送部材等との接触、摺擦が起こり、画像表面に傷跡や光沢度の変化などが発生するため、好ましくない。
前記トナー用樹脂(結着樹脂:ブロック共重合樹脂、架橋ポリエステル樹脂、等)における前記t50、前記t130、及び前記t’70について説明する。
保存安定性に関する分子運動性の尺度である前記t50は、2.0ms以下である。前記t50が、2.0msを超えると、前記トナー用樹脂を用いたトナーの50℃における運動性が高いため、外力による変形や凝集が発生し易くなり、夏場や船便での海外輸送及び保管に難を生じるため好ましくない。
定着特性に関する分子運動性の尺度である前記t130は、8.0ms以上である。前記t130が、8.0ms未満であると、加熱時における分子運動性が不十分であるため、前記トナー用樹脂を用いたトナーの流動、及び変形性が低下する。これにより、画像延展性の低下、及び印字対象物との接合低下などが起こり、結果、光沢低下や画像剥離などの画質低下につながるため、好ましくない。
更に、画像搬送時の耐擦性に関する分子運動性の尺度である前記t’70は、3.0ms以下である。前記t’70が、3.0msを超えると、前記トナー用樹脂を用いたトナーの分子運動性が十分に拘束される前に、定着後の排紙工程におけるローラや搬送部材等との接触、摺擦が起こり、画像表面に傷跡や光沢度の変化などが発生するため、好ましくない。
さらに、前記トナー用樹脂の前記t50としては、1.0ms以下が好ましい。
さらに、前記トナー用樹脂の前記t130としては、10.0ms〜17.0msが好ましい。
さらに、前記トナー用樹脂の前記t’70としては、1.0ms以下が好ましい。
<<パルス法NMRを用いた測定方法>>
パルス法NMRを用いた測定は、例えば、ブルカー・オプティクス社製「Minispec−MQ20」を用いて行うことができる。本発明の実施形態である後述する実施例では、前記装置を用いて以下の方法により測定した。
測定は、観測核がH、共鳴周波数が19.65MHz、測定間隔5sの条件で行い、t50についてはソリッドエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)、t’70、t130に関してはハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて減衰曲線を測定する。なお、Piは0.01ms〜100ms、データポイント数は100点、積算回数は32回として測定温度を50℃→130℃→70℃の順に温度変えて行う。
サンプルは、トナー粉体0.2g、またはトナー用樹脂粉0.2gを専用のサンプル管中に入れ、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定する。この測定によって、各サンプルについて、50℃におけるスピン−スピン緩和時間(t50)、130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)、及び130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t’70)を、それぞれ求める。
<その他の成分>
トナーの構成成分として、前記結着樹脂以外に、離型剤、着色剤、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料など必要に応じてその他の成分を用いることができる。
[離型剤]
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
ロウ類及びワックス類の離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。
また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。
更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。前記融点が、60℃未満であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣る場合がある。前記融点が、80℃を超えると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じる場合がある。
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部〜10質量部が好ましく、3質量部〜8質量部がより好ましい。前記含有量が、2質量部未満であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣ることがあり、10質量部を超えると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶりなどが生じやすくなることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、高画質化、及び定着安定性を向上させる点で有利である。
[着色剤]
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部〜15質量部が好ましく、3質量部〜10質量部がより好ましい。
前記着色剤は、樹脂と複合化された着色剤マスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又は着色剤マスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、前記架橋ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤マスターバッチは着色剤マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して着色剤マスターバッチを得ることができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
[帯電制御剤]
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後固定化させてもよい。
[外添剤]
前記外添剤としては酸化物微粒子の他に、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1nm〜100nmが好ましく、5nm〜70nmの無機微粒子がより好ましい。
また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m/g〜500m/gであることが好ましい。
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど)、金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなど)、フルオロポリマーなどが挙げられる。
好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子が挙げられる。シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)などが挙げられる。また、チタニア微粒子としては、例えば、P−25(日本アエロジル社製)、STT−30、STT−65C−S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF−140(富士チタン工業株式会社製)、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T−805(日本アエロジル株式会社製)、STT−30A、STT−65S−S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF−500T、TAF−1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT−100S、MT−100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT−S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。またシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部が好ましく、0.3質量部〜3質量部がより好ましい。
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、3nm以上70nm以下がより好ましい。この範囲より小さいと、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくい。またこの範囲より大きいと、感光体表面を不均一に傷つけ好ましくない。
[流動性向上剤]
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
[クリーニング性向上剤]
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
[磁性材料]
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
<トナー及びトナー構成成分の各種特性の算出方法及び分析方法>
前記架橋ポリエステル樹脂、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)、結晶性セグメント(a)及び離型剤のSP値、Tg、酸価、水酸基価、分子量、及び融点は、それぞれ各単体ごとにそれ自体について測定してもよい。また、実際のトナー中に含有された状態からゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により分離を行い、その分離した各成分について後述の分析手法を採ることで、SP値、Tg、酸価、水酸基価、分子量、融点、及び構成成分の質量比等を算出してもよい。
GPCによる各成分の分離は、例えば、以下の方法により行うことができる。
THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクターなどにより分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。
このまとめた溶出液をエバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロロホルム又は重THFなどの重溶媒に溶解させ、H−NMR測定を行い、各元素の積分比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出する。
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出する。
なお、前記トナーの製造方法が、前記非線状の反応性前駆体と前記架橋剤との伸長反応及び/又は架橋反応により架橋ポリエステル樹脂を生成しながら、トナー母体粒子を形成する場合には、実際のトナー中に含有された状態からGPC等により分離を行い、前記架橋ポリエステル樹脂のTgなどを求めてもよい。また、別途、前記非線状の反応性前駆体と前記架橋剤との伸長反応及び/又は架橋反応により架橋ポリエステル樹脂を合成し、その合成した単体の架橋ポリエステル樹脂からTgなどを測定してもよい。
<<トナー構成成分の分離手段>>
前記トナーを分析する際の各成分の分離手段の一例を詳細に示す。
まず、トナー1gを100mLのTHF中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。
これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにてろ過し、トナー中のTHF可溶分を得る。
次いで、これをTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いるGPCに注入する。
一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。
次いで、各溶出分について、1mLの重クロロホルムに30mgのサンプルを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。
溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM−AL400)を用い、23℃〜25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。
トナーに含まれる前記架橋ポリエステル樹脂、前記ブロック共重合樹脂などのモノマー組成、及び構成比率は得られたスペクトルのピーク積分比率から求めることができる。
例えば、以下のようにピークの帰属を行い、それぞれの積分比から構成モノマーの成分比率を求める。
各ピークの帰属は、例えば、以下のように判定することができる。
8.25ppm付近:トリメリット酸のベンゼン環由来(水素1個分)
8.07ppm〜8.10ppm付近:テレフタル酸のベンゼン環由来(水素4個分)
7.1ppm〜7.25ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)
6.8ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)及びフマル酸の二重結合由来(水素2個分)
5.2ppm〜5.4ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチン由来(水素1個分)
3.7ppm〜4.7ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素2個分)及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素4個分)
1.6ppm付近:ビスフェノールAのメチル基由来(水素6個分)
前記した分離・同定過程(段落[0128]〜[0129])の結果から、例えば、前記架橋ポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記架橋ポリエステル樹脂として扱うことができる。同様に前記ブロック共重合樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記ブロック共重合樹脂として扱うことができる。
<<水酸基価、酸価の測定方法>>
水酸基価は、JIS K0070−1966に準拠した方法を用いて測定することができる。
具体的には、まず、試料0.5gを100mLのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mLを加える。次に、100±5℃の温浴中で1時間〜2時間加熱した後、フラスコを温浴から取り出して放冷する。更に、水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。次に、無水酢酸を完全に分解させるために、再びフラスコを温浴中で10分間以上加熱して放冷した後、有機溶剤でフラスコの壁を十分に洗う。更に、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で水酸基価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、以下の通りである。
〔測定条件〕
Stir
Speed[%] 25
Time[s] 15
EQP titration
Titrant/Sensor
Titrant CH3ONa
Concentration[mol/L] 0.1
Sensor DG115
Unit of measurement mV
Predispensing to volume
Volume[mL] 1.0
Wait time[s] 0
Titrant addition Dynamic
dE(set)[mV] 8.0
dV(min)[mL] 0.03
dV(max)[mL] 0.5
Measure mode Equilibrium controlled
dE[mV] 0.5
dt[s] 1.0
t(min)[s] 2.0
t(max)[s] 20.0
Recognition
Threshold 100.0
Steepest jump only No
Range No
Tendency None
Termination
at maximum volume[mL] 10.0
at potential No
at slope No
after number EQPs Yes
n=1
comb.termination conditions No
Evaluation
Procedure Standard
Potential1 No
Potential2 No
Stop for reevaluation No
酸価は、JIS K0070−1992に準拠した方法を用いて測定することができる。
具体的には、まず、試料0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解させる。次に、エタノール30mLを添加して試料溶液とする。なお、試料が溶解しない場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる。
さらに、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。
なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、上記した水酸基価の場合と同様である。
酸価は、以上のようにして測定することができるが、具体的には、予め標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料[g](ただし、Nは、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)により酸価を算出する。
<<融点、及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>>
本発明における融点、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q−200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、−80℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minにて−80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q−200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られるDSC曲線から、Q−200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
また、得られるDSC曲線から、Q−200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
本明細書では、対象試料としてトナーを用いた際の、1回目昇温時におけるガラス転移温度をTg1st、2回目昇温時におけるガラス転移温度をTg2ndとする。
また、本明細書では、前記架橋ポリエステル樹脂、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)更には前記離型剤等のその他構成成分のガラス転移温度、融点については、特に断りが無い場合、2回目昇温時における吸熱ピークトップ温度、Tgを各対象試料の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)とする。
<<トナーの粒度分布の測定方法>>
前記トナーの体積平均粒径(D)と個数平均粒径(Dn)、その比(D/Dn)は、例えば、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)等を用いて測定することができる。本発明ではコールターマルチサイザーIIを使用した。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100mL〜150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL〜5mL加える。ここで、電解水溶液とは1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。
次いで、更に測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
<<分子量の測定>>
トナーの各構成成分の分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperHZM―H 15cm 3連(東ソー社製)
温度:40℃
溶媒:THF
流速:0.35mL/min
試料:0.15質量%の試料を0.4mL注入
試料の前処理:トナーをテトラヒドロフランTHF(安定剤含有 和光純薬製)に0.15質量%で溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
前記THF試料溶液を100μL注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDのStd.No S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580を用いる。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
<トナーの製造方法>
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナーは、結着樹脂として少なくとも前記架橋ポリエステル樹脂、前記ブロック共重合樹脂を含み、更に必要に応じて、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
また、前記トナーは、前記非線状の反応性前駆体及び前記架橋剤、前記ブロック共重合樹脂を含み、更に必要に応じて、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
非線状の反応性前駆体及び前記架橋剤の反応により架橋ポリエステル樹脂が生成される。ここで、前記非線状の反応性前駆体は3価以上の官能基により付与された分岐構造を有し、架橋剤は前記非線状の反応性前駆体と反応可能な化合物を指す。特に、前記反応性前駆体が、イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーであり、前記架橋剤が、活性水素基含有化合物であることが好ましい。
このようなトナーの製造方法の一例としては、公知の溶解懸濁法が挙げられる。
前記トナーの製造方法の一例として、前記非線状の反応性前駆体と前記架橋剤との伸長反応及び/又は架橋反応により架橋ポリエステル樹脂を生成しながら、トナー母体粒子を形成する方法を以下に示す。このような方法においては、水系媒体の調製、トナー材料(結着樹脂、離型剤、着色剤等)を含有する油相の調製、トナー材料の乳化乃至分散、有機溶媒の除去を行う。
−水系媒体(水相)の調製−
水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。前記樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水系媒体100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましい。
水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
−油相の調製−
前記トナー材料を含有する油相の調製は、前記非線状の反応性前駆体及び前記架橋剤と、前記ブロック共重合樹脂とを少なくとも含み、更に必要に応じて前記離型剤、前記着色剤などを含むトナー材料を、有機溶媒中に溶解乃至分散させることにより行うことができる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
−乳化乃至分散−
前記トナー材料の乳化乃至分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナー材料を乳化乃至分散させる際に、前記架橋剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記架橋ポリエステル樹脂が生成する。
前記架橋ポリエステル樹脂は、例えば、以下の(1)〜(3)の方法により生成させることができる。
(1)前記非線状の反応性前駆体と前記架橋剤とを含む油相を、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記架橋剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記架橋ポリエステル樹脂を生成させる方法。
(2)前記非線状の反応性前駆体を含む油相を、予め前記架橋剤を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記架橋剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記架橋ポリエステル樹脂を生成させる方法。
(3)前記非線状の反応性前駆体を含む油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、水系媒体中に前記架橋剤を添加し、水系媒体中で粒子界面から前記架橋剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記架橋ポリエステル樹脂を生成させる方法。
なお、粒子界面から前記架橋剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的に前記架橋ポリエステル樹脂が形成され、トナー中に前記架橋ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
前記架橋ポリエステル樹脂を生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、前記架橋剤と、前記非線状の反応性前駆体との組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
前記反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
前記反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。
前記水系媒体中において、前記非線状の反応性前駆体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
前記分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。
これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm〜20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm〜30,000rpmが好ましく、5,000rpm〜20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間〜5分間が好ましい。
前記分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
前記トナー材料を乳化乃至分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1,000質量部がより好ましい。
前記水系媒体の使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
前記トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
前記架橋ポリエステル樹脂を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。
触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどが挙げられる。
−有機溶媒の除去−
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。
有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
得られたトナー母体粒子は、前記外添剤、前記帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
前記機械的衝撃力を印加する方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
本発明の画像形成用トナーは、溶融成型体の50℃におけるマルテンス硬度が20N/mm以上であることが好ましい。より好ましくは、20N/mm以上120N/mm以下である。
50℃におけるマルテンス硬度が20N/mmよりも小さい時は、トナー表面硬度が低いことを示し、トナーが劣化し易くなる。その結果、トナー担持体での帯電ムラへとつながり、画像内濃度ムラやジョブ濃度変動が悪化する。また長期耐久により、濃度低下も生じる。
一方、120N/mmを超えると、トナー粒子表面硬度が非常に固いために、感光体表面に衝突した際、トナー粒子と感光体との間に存在する外添剤が、衝撃を分散しにくくなる。そのため、外添剤は、トナー粒子から外れて遊離粒子となる傾向が強まる。その結果、遊離外添剤が画像上に白ポチとなって表れる画像欠陥を引き起こす場合がある。
前記マルテンス硬度は、ISOに規定された押込み試験の手順に従って、被検体であるトナーに特定の荷重を負荷した圧子を押込んだときに測定される硬さ(硬度)である。本発明においては、微小圧縮試験機(「フィッシャースコープ H100」(ヘルムートフィッシャー社製))を用いて行った。
前記トナー粒子溶融成型体および樹脂溶融成型体は、所定の形状、寸法の成型用の型を用い、精密ホットプレス等により加熱加圧成型することで平滑な平面を有する平板として得られる。たとえば、トナー約5gを直径40mmの円形の型に仕込み、精密ホットプレスを用いて荷重0.5kN下120℃にて加熱加圧溶融成型した後、荷重を保持したまま20℃まで冷却することにより平滑かつ上下面が平行な平面を有する円板状のトナー溶融成型体を得ることができる。
前記マルテンス硬度はトナー粒子または樹脂を加熱加圧成型して得た前記溶融成型体を測定用試料とし、微小硬度計により測定することができる。まず、前記トナー溶融成型体または樹脂溶融成型体をホットプレート上にて融解しうるが変形せず形状を保持しうる温度、たとえば100℃で融解させた。次に、100℃から50℃に降温し、50℃到達後15分後に、ホットプレート上にて加熱しながらフィッシャースコープH100微小硬度試験器(フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて以下の条件にて測定した。測定は4回行い、平均値を算出した。
圧子 : 正四角円錐圧子
試験荷重 : 250mN
試験力負荷所要時間 : 30s
試験力保持時間 : 5s
このようにトナーの表面を最適な硬度に保つためには、トナー表面の材料分散性が大きく寄与する。特に低粘度成分の偏析を防ぐことが、この表面性を得る上で重要となる。
特に溶融混練時に、材料分散性を上げるために、粘度の異なる複数の樹脂を混合すること、さらには、弾性を有する溶剤不溶成分を含有すること、さらには、溶融混練時の練りゾーンを最適化することで、本発明を達成しやすくする。
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも前記トナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
−芯材−
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム系材料、50emu/g〜90emu/gのマンガン−マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g〜120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g〜80emu/gの銅−亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記芯材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜150μmが好ましく、40μm〜100μmがより好ましい。
前記体積平均粒子径が10μm未満であると、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることがある。
前記トナーを二成分系現像剤に用いる場合には、前記キャリアと混合して用いればよい。前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部〜98質量部が好ましく、93質量部〜97質量部がより好ましい。
(画像形成装置、及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある。)と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができる。前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃〜400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適である。
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。前記円筒状の前記静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm〜100mmが好ましく5mm〜50mmがより好ましく、10mm〜30mmが特に好ましい。
<静電潜像形成手段、及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
前記静電潜像形成工程としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段を用いて行うことができる。
<<帯電部材、及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。前記帯電部材として前記磁気ブラシを用いる場合、該磁気ブラシとしては、例えば、Zn−Cuフェライト等の各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。
前記帯電部材として前記ファーブラシを用いる場合、該ファーブラシの材質としては、例えば、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用いることができる。これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電部材とすることができる。
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
<<露光部材、及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
<現像手段、及び現像工程>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する、トナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像工程としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよい。
前記現像手段としては、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
前記現像手段内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
<その他の手段、及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
<<転写手段、及び転写工程>>
前記転写手段としては、可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
前記転写工程としては、可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
<<定着手段、及び定着工程>>
前記定着手段としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部材が好ましい。前記加熱加圧部材としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
前記定着工程としては、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。前記定着工程は、前記定着手段により行うことができる。前記加熱加圧部材における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm〜80N/cmであることが好ましい。
<<クリーニング手段、及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
前記クリーニング工程としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記クリーニング手段により行うことができる。
<<除電手段、及び除電工程>>
前記除電手段としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電工程としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により行うことができる。
<<リサイクル手段、及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により行うことができる。
<<制御手段、及び制御工程>>
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
前記制御工程としては、前記各工程の動きを制御できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記制御手段により行うことができる。
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、図1を参照しながら説明する。図1は本発明で用いられる画像形成装置の一例を示す。
図1に示す画像形成装置100Aは、静電潜像担持体(感光体ドラム)10と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電装置(コロナ帯電器)58が、該中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
現像器40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
図1に示す画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が静電潜像担持体10を一様に帯電させる。露光装置30が静電潜像担持体10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。静電潜像担持体10上に形成された静電潜像を、現像装置(現像器)40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、静電潜像担持体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、静電潜像担持体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
図2に、本発明で用いられる画像形成装置の他の一例を示す。画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けずに、静電潜像担持体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている以外は、図1に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
図3に、本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す。画像形成装置100Cは、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図3中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。
タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙95と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙95の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図4に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電部材である帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図1、図2中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写装置本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を指し、「%」は「質量%」を指す。
下記実施例における各測定値(Tm、AFMのタッピングモードによる探針の位相、パルスNMR緩和時間、50℃におけるマルテンス高度、昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)、昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)等)は、本明細書中に記載の測定方法により測定した。
なお、ブロック共重合樹脂のTmやNMR緩和時間は製造例で得られた各樹脂を用いて測定したものであり、トナーから各成分を分離して測定したものではない。
樹脂の融点(Tm)、及びトナーの最大融点ピーク温度は、DSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」、株式会社島津製作所製)を用い、下記条件で測定した。
<樹脂の融点、及びトナーの最大融点ピーク温度の測定>
具体的には、対象試料の吸熱ピーク温度のうち、樹脂の場合は、最大の吸熱ピーク温度を樹脂の融点とし、トナーの場合には、樹脂の融点に相当する最大吸熱ピークの温度を下記手順により求めた。
得られるDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラム「吸熱ピーク温度」を用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温二回目における上記吸熱ピークを求めた。
〔測定条件〕
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50mL/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:−20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
ブロック共重合樹脂用非晶性セグメント(b)を以下の(製造例1−1)〜(製造例1−3)により製造した。
(製造例1−1)
<非晶性セグメントb1の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコールと、ジカルボン酸としてテレフタル酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルとを、テレフタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルとのモル比(テレフタル酸ジメチル/アジピン酸ジメチル)が90/10であり、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.2になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、メタノールを流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、20mmHg〜30mmHgの減圧下にて4時間反応させ、非晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の非晶性ポリエステル)、からなる[非晶性セグメントb1]を得た。
得られた非晶性ポリエステル[非晶性セグメントb1]は、酸価(AV)1.08mgKOH/g、水酸基価(OHV)23.3mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)59.2℃であった。
(製造例1−2)
<非晶性セグメントb2の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコールと、ジカルボン酸としてテレフタル酸ジメチル及びフマル酸ジメチルとを、テレフタル酸ジメチルとフマル酸ジメチルとのモル比(テレフタル酸ジメチル/フマル酸ジメチル)が83/17であり、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.3になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、メタノールを流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、20mmHg〜30mmHgの減圧下にて4時間反応させ、非晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の非晶性ポリエステル)、からなる[非晶性セグメントb2]を得た。
得られた非晶性ポリエステル[非晶性セグメントb2]は、酸価(AV)0.58mgKOH/g、水酸基価(OHV)24.5mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)48.7℃であった。
(製造例1−3)
<非晶性セグメントb3の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコールと、ジカルボン酸としてテレフタル酸ジメチルとを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.2になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共にメタノールを流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、20mmHg〜30mmHgの減圧下にて4時間反応させ、非晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の非晶性ポリエステル)からなる[非晶性セグメントb3]を得た。
得られた非晶性ポリエステル[非晶性セグメントb3]は、酸価(AV)0.37mgKOH/g、水酸基価(OHV)25.3mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)72.0℃であった。
ブロック共重合樹脂用結晶性セグメント(a)を以下の(製造例2−1)〜(製造例2−3)により製造した。
(製造例2−1)
<結晶性セグメントa1の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,6−ヘキサンジオールと、ジカルボン酸としてアジピン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、水を流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下にて5時間反応させ、結晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の結晶性ポリエステル)からなる[結晶性セグメントa1]を得た。
得られた結晶性ポリエステル[結晶性セグメントa1]は、酸価(AV)0.45mgKOH/g、水酸基価(OHV)29.1mgKOH/g、融点(Tm)56.7℃であった。
(製造例2−2)
<結晶性セグメントa2の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,6−ヘキサンジオールと、ジカルボン酸としてセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.15になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に水を流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下にて4時間反応させ、結晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の結晶性ポリエステル)からなる[結晶性セグメントa2]を得た。
得られた結晶性ポリエステル[結晶性セグメントa2]は、酸価(AV)0.52mgKOH/g、水酸基価(OHV)35.8mgKOH/g、融点(Tm)67.2℃であった。
(製造例2−3)
<結晶性セグメントa3の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,4−ブタンジオールと、ジカルボン酸としてセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1になるように仕込み、仕込んだ原料の質量に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、水を流出させながら反応させた。最終的に230℃に昇温して樹脂酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下にて6時間反応させ、結晶性で分岐構造を持たない高分子鎖(線状の結晶性ポリエステル)からなる[結晶性セグメントa3]を得た。
得られた結晶性ポリエステル[結晶性セグメントa3]は、酸価(AV)0.38mgKOH/g、水酸基価(OHV)22.6mgKOH/g、融点(Tm)63.8℃であった。
ブロック共重合樹脂を以下の(製造例3−1)〜(製造例3−7)により製造した。
(製造例3−1)
<ブロック共重合樹脂B1の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb1]1,300gと、[結晶性セグメントa1]700gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート136gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B1]を得た。得られたブロック共重合樹脂B1の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−2)
<ブロック共重合樹脂B2の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb1]1,480gと、[結晶性セグメントa1]520gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート133gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B2]を得た。得られたブロック共重合樹脂B2の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−3)
<ブロック共重合樹脂B3の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb2]1,550gと、[結晶性セグメントa2]450gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート145gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B3]を得た。得られたブロック共重合樹脂B3の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−4)
<ブロック共重合樹脂B4の製造>)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb1]1,560gと、[結晶性セグメントa2]440gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート140gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B4]を得た。 得られたブロック共重合樹脂B4の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−5)
<ブロック共重合樹脂B5の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb1]1,650gと、[結晶性セグメントa2]350gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート137gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B5]を得た。得られたブロック共重合樹脂B5の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−6)
<ブロック共重合樹脂B6の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb3]1,450gと、[結晶性セグメントa3]550gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート132gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで、減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B6]を得た。 得られたブロック共重合樹脂B6の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
(製造例3−7)
<ブロック共重合樹脂B7の製造>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、[非晶性セグメントb1]900gと、[結晶性セグメントa1]1,100gとを仕込み、60℃で2時間、10mmHgで減圧乾燥を行った。窒素解圧後、モレキュラーシーブス4Aにて脱水処理を行った酢酸エチル2,000gを投入し、窒素気流下、均一になるまで溶解させた。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート142gを系に投入し、目視下にて均一になるまで撹拌した。その後、触媒として2−エチルヘキサン酸スズを樹脂固形分の質量に対して100ppm投入し、80℃まで昇温させ、リフラックス下で5時間反応させた。次いで減圧下にて酢酸エチルを留去し、[ブロック共重合樹脂B7]を得た。 得られたブロック共重合樹脂B7の融点(Tm)、及びパルスNMRのスピンースピン緩和時間[(t50)、(t130)、(t’70)]を表1に示す。
Figure 2015079240
次に、架橋ポリエステル樹脂を下記(製造例4−1)及び(製造例5−1)〜(製造例5−9)により製造した。
(製造例4−1)
<架橋剤の製造>
〈ケチミンの合成〉
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部、及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、反応性前駆体と反応可能な化合物(架橋剤)として[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
(製造例5−1)
<架橋ポリエステル樹脂C−1の合成>
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.8質量部、アジピン酸27.8質量部、3−メチルー1,5ペンタンジオール44.9質量部、トリメチロールプロパン1.5質量部、ジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、非晶性ポリエステル樹脂C−1の中間体を得た。
下記表2に架橋ポリエステル樹脂C−1の中間体を合成するために用いたモノマー仕込み量を示す。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、架橋ポリエステル樹脂C−1の中間体90質量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)10質量部を投入し、酢酸エチル100質量部で希釈後、80℃で5時間反応させ、プレポリマーである架橋ポリエステル樹脂C−1の酢酸エチル溶液を得た。
(製造例C−2〜C−13)
<架橋ポリエステル樹脂C−2〜C−13の合成>
各モノマーの添加量を変更した以外は、製造例5-1と同様にしてプレポリマーである架橋ポリエステル樹脂C−2〜C−13の酢酸エチル溶液を得た。
下記表2に架橋ポリエステル樹脂C−2〜C−13の中間体を合成するために用いたモノマー仕込み量を示す。
Figure 2015079240
<結晶質ポリエステル樹脂E1の製造>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、セバシン酸202部(1.00mol)、アジピン酸15部(0.10mol)、1,6−ヘキサンジオール177部(1.50mol)、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、窒素気流下にて180℃で、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下にて生成する水及び1,6−ヘキサンジオールを留去しながら8時間反応させ、更に5mmHg〜20mmHgの減圧下にて、重量平均分子量(Mw)がおよそ20,000に達するまで反応を行い、[結晶質ポリエステル樹脂E1]を得た。得られた[結晶質ポリエステル樹脂E1]は、Mwが22,000であった。
前記ブロック共重合樹脂B1〜B7、架橋ポリエステル樹脂C−1〜C−13、および必要により結晶質ポリエステル樹脂E1を用いて実施例(1)〜(16)、および比較例(1)〜(5)の各トナーを製造した。以下、具体的に説明する。
[実施例1]
<着色剤マスターバッチPの作製>
[ブロック共重合樹脂B1]100部、シアン顔料(C.I.Pigment blue 15:3)100部、及びイオン交換水30部をよく混合して、オープンロール型混練機(ニーデックス、日本コークス工業株式会社製)を用いて混練を行った。混練温度は90℃から混練を始め、その後、50℃まで徐々に冷却し、樹脂と顔料の比率(質量比)が1:1である[着色剤マスターバッチP1]を作製した。
なお、後述の実施例2〜6、及び実施例9では、実施例1で用いた[ブロック共重合樹脂B1]を、それぞれ[ブロック共重合樹脂B2]〜[ブロック共重合樹脂B7]に変更すること以外は、[着色剤マスターバッチP1]と同様にして、各[着色剤着色剤マスターバッチP2]〜[着色剤着色剤マスターバッチP7]を作製して用いた。
<WAX分散液の作製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に離型剤1としてパラフィンワックス50部(日本精鑞社製、HNP−9、炭化水素系ワックス、融点75℃)、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行ない[WAX分散液1]を得た。
<結晶質ポリエステル樹脂分散液1の作製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に結晶性樹脂である結晶質ポリエステル樹脂D−1を50部と、酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行ない[結晶質ポリエステル樹脂分散液1]を得た。
なお、結晶質ポリエステル樹脂D−1の融点は65℃、酸価は28KOH/g、重量平均分子量(Mw)は15,000、数平均分子量(Mn)は3,000、Mw/Mnは4.8である。
<油相の調製>
[WAX分散液1]500部、(製造例5−1)で合成した非線状の反応性前駆体である[プレポリマーC−1]300部、(製造例4−1)で合成した[ケチミン化合物1]2部、[結晶質ポリエステル樹脂分散液1]500部、(製造例3−1)で製造した[ブロック共重合樹脂B1]700部、及び[着色剤着色剤マスターバッチP1]100部を容器に入れ、50℃にてTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。なお、[油相1]の温度は容器内にて50℃に保つようにした。
<有機微粒子エマルション(微粒子分散液1)の合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。
[微粒子分散液1]をLA−920(HORIBA社製)で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。なお、[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
<水相の調製>
水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業社製)37部、及び酢酸エチル90部を40℃で混合撹拌させ、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
<乳化・脱溶剤>
50℃に保った[油相1]が入った容器に、[水相1]1,200部を加え、45℃〜48℃にてTKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で回転数12,000rpmで1分間混合して、[乳化スラリー1]を得た。撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
<洗浄・乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、という前記(1)〜(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い[トナー母体粒子1]を得た。
次に、得られた[トナー母体粒子1]100部に疎水性シリカ(HDK−2000、ワッカー・ケミー社製)1.0部、及び酸化チタン(MT−150AI、テイカ株式会社製)0.3部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、[トナー1]を作製した。
得られたトナー1について、AFMのタッピングモードによる探針の位相、パルスNMR緩和時間(t50、t’70、t130)、及び50℃におけるマルテンス硬度および昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)、昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)を測定した結果を下記表3に示す。
なお、パルスNMR緩和時間、及びAFMのタッピングモードによる探針の位相は、本明細書中(下記段落番号に記載)に記載の測定方法により測定した。
AFMのタッピングモードによる探針の位相:本明細書段落番号[0091]〜[0093]
パルスNMR緩和時間:本明細書段落番号[0103]
マルテンス硬度:本明細書段落番号[0159]
昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)、昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd):
本明細書段落番号[0045]
[実施例2]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B2]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー2]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B2]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP2]を作製して用いた。
得られたトナー2の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例3]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B3]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー3]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B3]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP3]を作製して用いた。
得られたトナー3の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例4]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B4]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー4]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B4]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP4]を作製して用いた。
得られたトナー4の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例5]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B5]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー5]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B5]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP5]を作製して用いた。
得られたトナー5の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下表3に示す。
[実施例6]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B6]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー6]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B6]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP6]を作製して用いた。
得られたトナー6の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例7]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−2]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー7]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー7の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例8]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−3]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー8]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー8の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例9]
実施例1の油相の調製において、[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B7]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー9]を得た。
なお、実施例1に記載の着色剤マスターバッチPの作製において[ブロック共重合樹脂B1]を[ブロック共重合樹脂B7]に変更すること以外は、同様にして[着色剤マスターバッチP7]を作製して用いた。
得られたトナー9の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表3に示す。
[実施例10]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−4]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー10]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー10の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例11]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−5]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー11]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー11の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例12]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−6]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー12]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー12の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例13]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−7]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー13]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー13の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例14]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−8]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー14]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー14の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例15]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−9]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー15]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー15の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[実施例16]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−10]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー16]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー16の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表4に示す。
[比較例1]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−11]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー17]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー17の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表5に示す。
[比較例2]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−12]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー18]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー18の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表5に示す。
[比較例3]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を[プレポリマーC−13]に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー19]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー19の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表5に示す。
[比較例4]
実施例1の油相の調製において、[プレポリマーC−1]を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして[トナー20]を得た。
なお、実施例1と同様に[着色剤着色剤マスターバッチP1]を用いた。
得られたトナー20の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表5に示す。
[比較例5]
実施例1の油相の調製において、実施例1で用いた[ブロック共重合樹脂B1]を、結晶質ポリエステル樹脂E1に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[トナー21]を得た。
得られたトナー21の特性について、実施例1と同様に測定した結果を下記表5に示す。
<評価>
作製したトナー1〜トナー21について下記方法により現像剤を作製し、定着性(定着下限温度、耐ホットオフセット性:定着幅)、耐熱保存性、耐擦性の評価を行った。結果を表4、表5に示す。
<現像剤>
〈キャリアの作製〉
トルエン100部に、シリコーン樹脂オルガノストレートシリコーン100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
〈現像剤の作製〉
ボールミルを用いて、トナー1〜トナー16の各トナー5部と前記キャリア95部とを混合し、それぞれ現像剤を作製した。
<<定着性(定着下限温度)>>
図3に示すタンデム型フルカラー画像形成装置100Cを用いて、転写紙(リコービジネスエキスパート株式会社製、複写印刷用紙<70>)上に、転写後のトナーの付着量が0.85±0.10mg/cmの紙全面ベタ画像(画像サイズ3cm×8cm)を作像し、定着ベルトの温度を変化させて定着を行い、得られた定着画像表面を描画試験器AD−401(株式会社上島製作所製)を用いて、ルビー針(先端半径260μmR〜320μmR、先端角60度)、荷重50gで描画し、繊維(ハニコット#440、ハニロン社製)で描画表面を強く5回擦り、画像の削れが殆ど無くなる定着ベルト温度をもって定着下限温度とした。また、ベタ画像は転写紙上において、通紙方向先端から3.0cmの位置に作成した。なお、定着装置のニップ部を通過する速度は、280mm/秒間である。定着下限温度は、低い程、低温定着性に優れる。
〔評価基準〕
◎◎:100℃以下
◎ :100℃超え105℃以下
○ :105℃超え115℃以下
△ :115℃超え130℃以下
× :130℃超え
<<定着性(耐ホットオフセット性・定着幅)>>
図3に示すタンデム型フルカラー画像形成装置100Cを用いて、転写紙(株式会社リコー製、タイプ6200)上に、転写後のトナー付着量が0.85±0.10mg/cmの紙全面ベタ画像(画像サイズ3cm×8cm)を作像し、定着ベルトの温度を変化させて定着を行い、ホットオフセット(定着上限温度)の有無を目視評価し、ホットオフセットが発生しない上限温度と、定着下限温度との差を定着幅とした。また、ベタ画像は転写紙上において、通紙方向先端から3.0cmの位置に作成した。なお、定着装置のニップ部を通過する速度は、280mm/sである。定着幅は、広い程、耐ホットオフセット性に優れ、約50℃が従来のフルカラートナーの平均的な温度幅である。
〔評価基準〕
◎: 100℃超え
○ :55 ℃超え100℃以下
△ :30 ℃超え55℃以下
× :30 ℃以下
<<耐熱保存性>>
トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定した。このとき、耐熱保存性が良好なトナー程、残存率は小さい。
なお、耐熱保存性の評価基準は以下のとおりとした。
◎◎:残存率が5%未満
◎:残存率が10%未満
○:残存率が10%以上20%未満
△:残存率が20%以上30%未満
×:残存率が30%以上
<<排紙耐擦性跡評価>>
図3に示すタンデム型フルカラー画像形成装置100Cを用いて得られた画像について、搬送部材との接触による定着画像上の光沢の低い箇所又は高い箇所の有無、並びに画像のキズ及びはがれの有無を、目視により観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎◎:定着後の部材との接触跡が観察されない。
◎ :部材接触部と周辺の非接触部との間にわずか光沢の差があり、光の当て方によっては接触跡がかろうじて目視でわかる。
○ :部材接触部と周辺の非接触部との間にわずか光沢の差があり、光の当て方によっては接触跡が目視でわかる。
△ :部材接触部と周辺の非接触部との間に明らかな光沢の差があり、接触跡が目視でわかる。又はスジ状のキズがある。
× :部材接触部と周辺の非接触部との間に明らかな光沢の差があり、接触跡が目視でわかる。又はスジ状の深いキズがあり、トナーがはがれて紙面が見える場所もある。
Figure 2015079240
Figure 2015079240
Figure 2015079240
上記評価結果から、結着樹脂として、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成されるブロック共重合樹脂Bと、炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有すると共に架橋成分として3価以上の酸またはアルコールを含んでなる架橋ポリエステル樹脂とを用い、且つ、トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下の条件を満たす実施例においては、定着性(定着下限温度、定着性(耐ホットオフセット性・定着幅)、耐熱保存性、排紙耐擦性跡評価の各評価においてバランス良く良好な結果が得られている。
なお、本文説明にも記載したように、結晶性セグメント(a)と前記非晶性セグメント(b)のモル比率(a/b)が10/90〜40/60であることが好ましい。トナー9の場合には、ブロック共重合樹脂Bにおける前記モル比率(a/b)が60/40の場合であり、耐擦性においてやや劣る結果となっている。
一方、昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下の条件を満たすが、ポリエステル樹脂Cの組成分として含まれるアルコール成分中に架橋成分として3価以上の酸またはアルコールを含有しない比較例1(トナー17)は、昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下の条件を満たすが、ポリエステル樹脂Cのアルコール成分中に含有される脂肪族ジオールの炭素数が12であり、炭素数3〜10の範囲外である比較例2(トナー18)、昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下の条件を満たすが、ポリエステル樹脂Cのアルコール成分中に含有される脂肪族ジオールの炭素数が2であり、炭素数3〜10の範囲外である比較例3(トナー19)、および昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下の条件を満たすが、ポリエステル樹脂Cを含有しない比較例4(トナー20)は、いずれも定着性(定着下限温度、定着性(耐ホットオフセット性・定着幅)、耐熱保存性のいずれかに問題があり、比較例1、2ではさらに耐擦性に問題がある。ブロック共重合樹脂B1に代えて結晶質ポリエステル樹脂E1を用いた比較例5(トナー21)は、定着幅、耐熱保存性、耐擦性に問題がある。
すなわち、本発明の画像形成用トナーは、出力画像の高品質化のための小粒径化、耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、並びに製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐えうる耐熱保存性など、近年要求されている高度の要求に応えることができる。本発明の画像形成用トナーを現像剤(一成分現像剤や二成分現像剤)に用いれば、長期に亘って高画質の画像形成が可能である。また、高速画像形成においても安定して画像形成ができる。
(図1〜4の符号)
10 静電潜像担持体(感光体ドラム)
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ベルト
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置(現像器)
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック現像ユニット
45Y イエロー現像ユニット
45M マゼンタ現像ユニット
45C シアン現像ユニット
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
58 コロナ帯電装置(コロナ帯電器)
60 クリーニング装置
61 現像装置
62 転写帯電器
63 クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100A、100B、100C 画像形成装置
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
L 露光
特許第3949553号公報 特許第4155108号公報 特開2006−071906号公報 特開2006−251564号公報 特開2007−286144号公報 特公平4−024702号公報 特公平4−024703号公報 特開昭63−027855号公報 特許第4569546号公報 特許第4218303号公報 特開2012−27212号公報 特許第3360527号公報 特許第3910338号公報 特開2004−46095号公報 特開2007−271789号公報

Claims (10)

  1. 架橋ポリエステル樹脂と、ブロック共重合樹脂と、を含むトナーであって、
    前記架橋ポリエステル樹脂は、構成成分としてジオール成分を含み、該ジオール成分が炭素数3〜10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有し、さらに架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールまたは酸を含み、
    前記ブロック共重合樹脂は、結晶性セグメント(a)と非晶性セグメント(b)とから構成され、
    前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)が20℃以上50℃以下であることを特徴とする画像形成用トナー。
  2. 前記架橋ポリエステル樹脂の架橋成分が3価または4価の脂肪族アルコールまたは酸であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成用トナー。
  3. 前記架橋ポリエステル樹脂を構成する脂肪族ジオール成分の主鎖の炭素数が奇数であり、アルキル基を側鎖に有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成用トナー。
  4. 当該画像形成用トナーがさらに結晶質ポリエステルを含有し、
    前記架橋ポリエステルが活性水素基含有化合物および該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との反応により得られる架橋ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成用トナー。
  5. 前記示差走査熱量測定(DSC)による昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)が0℃以上30℃以下であって、Tg1st>Tg2ndを満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成用トナー。
  6. 前記結晶性セグメント(a)と前記非晶性セグメント(b)のモル比率(a/b)が10/90〜40/60であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成用トナー。
  7. 前記トナーのパルスNMRにより測定されるスピン−スピン緩和時間が下記条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成用トナー。
    50℃におけるトナーのパルスNMRのソリッドエコー法によるスピンースピン緩和時間(t50):1.0 ms以下
    50℃から130℃まで昇温したときの130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130):10ms以上
    130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t’70):3.0ms以下
  8. 原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードにより、前記架橋ポリエステル樹脂を測定したときの探針の位相(度)をTc、前記ブロック共重合樹脂の非晶性セグメント(b)を測定したときの探針の位相(度)をTb、及び前記ブロック共重合樹脂の結晶性セグメント(a)を測定したときの探針の位相(度)をTaとした時に、下記式(2)及び式(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成用トナー。
    Ta≧Tc>Tb ・・・式(2)
    Tc−Tb≧5 ・・・式(3)
    [タッピングモードの条件] カンチレバー:Siプローブ、Siプローブの共振周波数:300kHz、Siプローブのばね定数:42N/m
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成用トナーを含むことを特徴とする現像剤。
  10. 静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する、トナーを備える現像手段とを有し、前記トナーが、請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成用トナー又は請求項9に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
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