JP2015077013A - ワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法 - Google Patents

ワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】センタータイプとオフセットタイプの使い分けを容易且つ確実に行うことができる、新規な構造のワイヤハーネス用固定具と、かかるワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの好適な製造方法を提供すること。
【解決手段】クリップ部12が突設された基部14と、基部14の両端部の一方16aから延出してワイヤハーネス18へ巻き付けられる巻付バンド20と、巻付バンド20の表面22に複数の係止部24とを備えており、基部14には、クリップ部12の突設方向に直交する方向で基部14の両端部に貫通し、且つ巻付バンド20の係止部24に係止する第1の係止突部44を有する第1のバンド挿通孔54が設けられている一方、クリップ部12および基部14には、クリップ部12の突出方向に貫通し、且つ巻付バンド20の係止部24に係止する第2の係止突部76を有する第2のバンド挿通孔80が設けられているようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、ワイヤハーネスの外周に取り付けて、突設したクリップ部を車体パネルや車載機器等の取付部に固定するのに使用されるワイヤハーネス用固定具と、かかるワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法に関するものである。
従来から、車両内に配索されたワイヤハーネスを車体パネルや車載機器等の取付部に固定するために、ワイヤハーネス用固定具が利用されている。このワイヤハーネス用固定具は、例えば特開平8−275346号公報(特許文献1)に記載されているように、ワイヤハーネスに巻き付ける巻付バンドの一方の端部に基部が一体形成されている一方、その基部には、車体パネル等に設けた嵌合孔等の取付部に嵌め入れられて係止固定されるクリップ部が突設されている。そして、巻付バンドを他方の端部から基部に貫設されたバンド挿通孔に挿通させて、巻付バンドの係止溝にバンド挿通孔内に突設された係止片を係止させることにより、ワイヤハーネスを弛緩不能に締め付けることができるようになっている。
ところで、このようなワイヤハーネス用固定具は、クリップ部の中心軸がワイヤハーネスの略中心を通る所謂センタータイプと呼ばれるもので、一般的に広く使用されている。
ところが、ワイヤハーネス用固定具の取付部の近くに障害物があったり、ワイヤハーネスが太過ぎるような場合には、センタータイプのワイヤハーネス用固定具では取付が困難な事態が生じることがある。このような場合には、クリップ部の中心軸がワイヤハーネスの略中心を外れた所謂オフセットタイプと呼ばれるワイヤハーネス用固定具を用いることにより、障害物等が回避されるようになっている。しかしながら、このようなやり方では、ワイヤハーネス用固定具をワイヤハーネスの組み付け位置が異なるセンタータイプとオフセットタイプの2種類用意しておかなければならず、部品点数が増大するのみならず、コスト高となるおそれがあったのである。
そこで、例えば特開平9−166245号公報(特許文献2)に記載されているように、巻付バンドの先端部をセンタータイプ用バンド挿通孔に挿入することによりセンタータイプのワイヤハーネス用固定具が構成される一方、巻付バンドの先端部をオフセットタイプ用バンド挿通孔に挿入することによりオフセットタイプのワイヤハーネス用固定具が構成される構造のワイヤハーネス用固定具が提案されている。
しかしながら、かかる構造のワイヤハーネス用固定具では、センタータイプとオフセットタイプで巻付バンドの先端部を挿入するバンド挿通孔の入口は異なっているものの、巻付バンドの先端部が突出するバンド挿通孔の出口は共通とされる等、センタータイプとオフセットタイプでバンド挿通孔が共用化されている。それ故、センタータイプとオフセットタイプの組み付け間違いを防止することが極めて困難であった。
また、このように構成されたワイヤハーネス用固定具をオフセットタイプとして使用する際には、ワイヤハーネスが巻付バンドの先端部側にオフセットして配設されていることから、ワイヤハーネスの固定後に巻付バンドの先端部をカットするカッターがワイヤハーネスと干渉するおそれもあり、望ましい対策とは言えなかった。
特開平8−275346号公報 特開平9−166245号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、センタータイプとオフセットタイプの使い分けを容易且つ確実に行うことができる、新規な構造のワイヤハーネス用固定具を提供することにある。
さらに本発明は、かかるワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法を提供することも、目的とする。
ワイヤハーネス用固定具に関する本発明の第1の態様は、クリップ部が突設された基部と、前記クリップ部を間に挟んだ両側に位置する前記基部の両端部の一方から延出してワイヤハーネスへ巻き付けられる巻付バンドと、前記巻付バンドの表面に形成されて延出方向に並設された複数の係止部とを備えており、前記基部には、前記クリップ部の突設方向に直交する方向で前記基部の前記両端部の一方から他方に向かって貫通し、且つ前記巻付バンドの前記係止部に係止する第1の係止突部を有する第1のバンド挿通孔が設けられている一方、前記クリップ部および前記基部には、該クリップ部の突出方向に貫通し、且つ前記巻付バンドの前記係止部に係止する第2の係止突部を有する第2のバンド挿通孔が設けられていることを特徴とする。
本態様のワイヤハーネス用固定具によれば、第1のバンド挿通孔がクリップ部の突設方向に直交する方向で基部の両端部の一方から他方に向かって貫通して形成されていることから、巻付バンドを第1のバンド挿通孔に挿通することにより、クリップ部の中心軸がワイヤハーネスの略中心を通るように位置させることができ、ワイヤハーネス用固定具をセンタータイプとして用いることができる。また、第2のバンド挿通孔がクリップ部の突出方向でクリップ部および基部をそれぞれ貫通して形成されていることから、巻付バンドを第2のバンド挿通孔に挿通することにより、クリップ部の中心軸をワイヤハーネスの中心に対してオフセットさせることができ、ワイヤハーネス用固定具をオフセットタイプとして用いることができる。
要するに本態様のワイヤハーネス用固定具によれば、相互に独立した第1のバンド挿通孔と第2のバンド挿通孔を併せ備えていることから、巻付バンドを挿通する2つの挿通孔を択一的に選択することで、ワイヤハーネス用固定具をセンタータイプとオフセットタイプの2種類に確実に使い分けることができる。特に、従来構造の如き同一のバンド挿通孔をセンタータイプ用とオフセットタイプ用で共用することが回避されていることから、従来に比して確実な使い分けが可能となり、組み付け間違いを防止できるのである。
また、オフセットタイプを構成する場合に、ワイヤハーネスが巻付バンドの先端部側にオフセットして配設されることがなく、ワイヤハーネスの固定後に巻付バンドの先端部をカットするカッターがワイヤハーネスと干渉するおそれもない。
ワイヤハーネス用固定具に関する本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたワイヤハーネス用固定具において、前記第2のバンド挿通孔には、前記基部側の開口部から前記巻付バンドの先端部が挿し入れられると共に、前記クリップ側の開口部から前記巻付バンドの先端部が外部に突出されるようになっているものである。
本態様によれば、オフセットタイプとして使用された際に、巻き付けバンドの先端部がクリップ側の開口部から外部に突出される。従って、クリップ部を車体パネル等の取付部に固定した際には、巻付バンドの先端部がワイヤハーネスの配索空間側に突出することが回避でき、オフセットタイプとして使用した際に問題となり易い巻付バンドの先端部とワイヤハーネスの干渉を確実に防止できる。
ワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法に関する本発明の第1の態様は、ワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法であって、前記ワイヤハーネス用固定具として第1の態様に記載のものを用いると共に、前記ワイヤハーネス用固定具を、前記第1のバンド挿通孔又は前記第2のバンド挿通孔の一方の出口が塞がれる冶具にセットするセット工程と、前記ワイヤハーネス用固定具に前記ワイヤハーネスを載置し、前記巻付バンドを巻き付けて前記第1のバンド挿通孔又は前記第2のバンド挿通孔の他方に挿通することにより、前記ワイヤハーネスに対して前記ワイヤハーネス用固定具を結束固定する結束固定工程と、を含むことを特徴とする。
本態様によれば、第1のバンド挿通孔又は第2のバンド挿通孔の一方の出口が塞がれる冶具を用いることにより、ワイヤハーネスに対してワイヤハーネス用固定具を結束固定するようになっている。従って、仮に巻付バンドを挿通すべきバンド挿通孔を間違えたとしても、治具により出口が塞がれていることから間違って結束固定を実行することができない。従って、センタータイプとオフセットタイプの取り付け間違いを確実に防止することができる。
本発明によれば、相互に独立した第1のバンド挿通孔と第2のバンド挿通孔を併せ備えていることから、巻付バンドを挿通する2つの挿通孔を択一的に選択することで、ワイヤハーネス用固定具をセンタータイプとオフセットタイプの2種類に確実に使い分けることができる。特に、従来構造の如き同一のバンド挿通孔をセンタータイプ用とオフセットタイプ用で共用することが回避されていることから、従来に比して確実な使い分けが可能となり、組み付け間違いを防止できる。しかも、オフセットタイプを構成する場合に、ワイヤハーネスが巻付バンドの先端部側にオフセットして配設されることがなく、巻付バンドの先端部をカットするカッターがワイヤハーネスと干渉するおそれもない。
本発明の一実施形態としてのワイヤハーネス用固定具を示す斜視図。 図1のII−II断面拡大図。 図1に示すワイヤハーネス用固定具を用いて、ワイヤハーネスを締め付けて固定する様子を説明するための斜視図(センタータイプとして用いた場合)。 図3の正面図。 図1に示すワイヤハーネス用固定具を用いて、ワイヤハーネスを締め付けて固定する様子を説明するための斜視図(オフセットタイプとして用いた場合)。 図5の正面図。 図1に示すワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法を説明するための斜視図(センタータイプとして用いた場合)。 図7の正面図。 図1に示すワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法を説明するための斜視図(オフセットタイプとして用いた場合)。 図9の正面図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜2に、本発明の一実施形態としてのワイヤハーネス用固定具10を示す。図1に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10は、クリップ部12が突設された基部14と、クリップ部12を間に挟んだ両側に位置する基部14の両端部の一方16aから延出してワイヤハーネス18へ巻き付けられる巻付バンド20と、を含んで構成されている。周知のとおり、ワイヤハーネス用固定具10は合成樹脂材料で一体成形されており、巻付バンド20が湾曲変形可能となっている。なお、以下の説明において、上方とは、図2中の上方、下方とは、図2中の下方、前方とは、図2中の左方、後方とは、図2中の右方を言うものとする。
巻付バンド20は、図1に示されているように、長方形断面の細長い平板形状とされている。巻付バンド20の表面22には、幅方向に略一定の矩形断面形状で直線的に延びる係止部たる溝部24が複数設けられており、巻付バンド20の延出方向で互いに所定距離を隔てて並設されている。なお、溝部24は、巻付バンド20の幅方向両端部に至らない長さ寸法で構成されている。
ワイヤハーネス用固定具10の基部14は、図1及び図2に示されているように、上方に開口して樋状に延びる樋状部26と、樋状部26の開口部28を覆蓋する蓋体30を含んで構成されている。樋状部26は、底壁32と底壁32の両側から立ち上がる一対の側壁34a,34bを含んで樋状に延びる構成とされている。基部14の両端部の一方16aにおいて、底壁32には略矩形状に切り欠かれた切欠部36が形成されている一方、切欠部36の中央部分には切欠部36よりもやや狭幅の略矩形形状とされ且つ略三角断面形状で後方に突出する係合片38が設けられており、係合片38は上下方向に撓み変形可能となっている。係合片38の上面40は樋状部26の底壁32の上面42と面一とされている一方、係合片38の上面40には係合片38の突出方向に直交する方向に延びる略台形断面形状の第1の係止突部44が突設されている。なお、本実施形態では、2つの第1の係止突部44が、係合片38の突出方向に向って所定距離を隔てて設けられている。なお、第1の係止突部44の前面46は、後方に行くに従って次第に上方に突出するテーパ面とされている一方、第1の係止突部44の後面47は、係合片38上に直立する垂直面とされている。
蓋体30は樋状部26の一対の側壁34a,34bの上下方向の略中央部分に設けられている一方、基部14の両端部の他方16b側が切り欠かれた構成とされている。また、蓋体30の幅方向中央部には三角断面形状で長手方向に延びるリブ48が蓋体30の長手方向全長に亘って突設されており、さらに蓋体30の前方側には、蓋体30を幅方向の全長に亘って略矩形状に切り欠いた貫通孔50が設けられている。
そして、樋状部26の一対の側壁34a,34bと蓋体30に設けられたリブ48を介して、巻付バンド20が基部14の長手方向両端部の一方16aに連結されている。巻付バンド20は基端部52において最も薄肉とされており基端部52で容易に折り曲げ可能とされている。
このように形成された基部14において、樋状部26と蓋体30により第1のバンド挿通孔54が構成されている。すなわち、第1のバンド挿通孔54は、クリップ部12の突設方向に直交する方向(図2中、左右方向)で基部14の両端部の一方16aから他方16bに向かって貫通されていると共に、第1のバンド挿通孔54内には、巻付バンド20の溝部24に係止する第1の係止突部44が設けられているのである。
一方、基部14の下面56には、図1及び図2に示されているように、ワイヤハーネス18を車体パネルや車載機器等に固定するためのクリップ部12が突設されている。クリップ部12は、突出基端部に設けられた円盤状の皿部58と突出端部に設けられた係止頭60を備えて構成されている。係止頭60は、略矩形状の係止柱62と、係止柱62の先端部に設けられ矢印状に折り返して突設された一対の係止羽64,64を備えている。ここで、皿部58は、図示しない取付部への当接用とされている一方、一対の係止羽64,64は、取付部のクリップ保持孔に挿入して抜け止めを行うために設けられている。
クリップ部12の中央部分、すなわち図2の上下方向において基部14の貫通孔50に対応する位置には、クリップ部12の突出方向に貫通する貫通孔66が設けられている。そして、貫通孔66によって隔てられたクリップ部12の突出端部である係止柱62の一方の側(図2中、左側)には、略矩形状に切り欠かれた切欠部68が形成されている一方、切欠部68の中央部分には切欠部68よりもやや狭幅の略矩形形状とされ且つ略三角断面形状で後方に突出する係合片70が設けられており、係合片70は図2の左右方向に撓み変形可能となっている。係合片70の内面72は貫通孔66の内面74と面一とされている一方、係合片70の内面72には係合片70の突出方向に直交する方向に延びる略台形断面形状の第2の係止突部76が突設されている。なお、本実施形態では、2つの第2の係止突部76が、係合片70の突出方向に向って所定距離を隔てて設けられている。なお、第2の係止突部76の上面78は、下方に行くに従って次第に後方に突出するテーパ面とされている一方、第2の係止突部76の下面79は、係合片70上に直立する垂直面とされている。
このように形成されたワイヤハーネス用固定具10のクリップ部12及び基部14には、クリップ部12の突出方向に貫通する貫通孔50及び貫通孔66が設けられている。すなわち、貫通孔50と貫通孔66により第2のバンド挿通孔80が構成されており、第2のバンド挿通孔80内には、巻付バンド20の溝部24に係止する第2の係止突部76が設けられているのである。
図3〜6に示されているように、上述の如き構造とされたワイヤハーネス用固定具10を、ワイヤハーネス18に対して締め付けて固定する。はじめに、図3及び図4に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10をセンタータイプとして用いる場合について詳述する。先ず、ワイヤハーネス18に巻付バンド20を巻き付けた後、その先端部82を、基部14の両端部の他方16bから一方16aに向かって第1のバンド挿通孔54に挿通し、巻付バンド20がワイヤハーネス18に隙間なく締結されるまで、巻付バンド20の先端部82を第1のバンド挿通孔54から突出させる。この時、巻付バンド20のいずれかの溝部24に対して第1の係止突部44が係止されている。すなわち、第1の係止突部44の前面46がテーパ面とされ且つ第1の係止突部44が上下方向に撓み変形可能な略三角断面形状の係合片38上に設けられていることから、第1のバンド挿通孔54に巻付バンド20を挿入することは容易に行うことができる。一方、第1の係止突部44の後面47が垂直面とされていることから、巻付バンド20の溝部24に対する第1の係止突部44の係止作用が、第1のバンド挿通孔54から巻付バンド20を引き抜く方向にだけ機能して、巻付バンド20を解除不能に締め付けて係止することができるようになっているのである。なお、固定後のワイヤハーネス用固定具10は巻付バンド20の先端部82を切り取られて、他部材との接触を防止できるようにされている。
このように、本実施形態のワイヤハーネス用固定具10を用いて、クリップ部12の突設方向に直交する方向で基部14の両端部の一方16aから他方16bに向かって貫通する第1のバンド挿通孔54に巻付バンド20を挿通することにより、図4に示されているように、クリップ部12の中心軸84がワイヤハーネス18の略中心86を通るように位置させることができるので、ワイヤハーネス用固定具10をセンタータイプとして用いることができるのである。
次に、図5及び図6に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10をオフセットタイプとして用いる場合について詳述する。先ず、ワイヤハーネス18に巻付バンド20を巻き付けた後、その先端部82を、基部14側の貫通孔50の開口部88から第2のバンド挿通孔80に挿通し、巻付バンド20がワイヤハーネス18に隙間なく締結されるまで、クリップ部12側の貫通孔66の開口部90から外部に突出させる。この時、巻付バンド20のいずれかの溝部24に対して第2の係止突部76が係止されるようになっている。すなわち、第2の係止突部76の上面78がテーパ面とされ且つ第2の係止突部76が左右方向に撓み変形可能な略三角断面形状の係合片70上に設けられていることから、第2のバンド挿通孔80に巻付バンド20を挿入することは容易に行うことができる。一方、第2の係止突部76の下面79が垂直面とされていることから、巻付バンド20の溝部24に対する第2の係止突部76の係止作用が、第2のバンド挿通孔80から巻付バンド20を引き抜く方向にだけ機能して、巻付バンド20を解除不能に締め付けて係止することができるようになっているのである。なお、固定後のワイヤハーネス用固定具10は巻付バンド20の先端部82を切り取られて、他部材との接触を防止できるようにされている。
このように、本実施形態のワイヤハーネス用固定具10を用いて、クリップ部12の突設方向でクリップ部12および基部14をそれぞれ貫通する第2のバンド挿通孔80に巻付バンド20を挿通することにより、図6に示されているように、クリップ部12の中心軸84をワイヤハーネス18の中心86に対して一方の側にずらしてオフセットさせることができるので、ワイヤハーネス用固定具10をオフセットタイプとして用いることができるのである。
また、巻付バンド20の先端部82がクリップ部12側の開口部90から外部に突出されていることから、クリップ部12を車体パネル等の取付部に固定した際には、巻付バンド20の先端部82がワイヤハーネス18の配索空間側に突出することが回避できるので、従来構造ではオフセットタイプとして使用した際に問題となっていた巻付バンド20の先端部82とワイヤハーネス18との干渉を確実に防止できる。
上述の如き本実施形態のワイヤハーネス用固定具10によれば、相互に独立した第1のバンド挿通孔54と第2のバンド挿通孔80を併せ備えていることから、巻付バンド20を挿通する2つのバンド挿通孔54,80を択一的に選択することにより、ワイヤハーネス用固定具10をセンタータイプとオフセットタイプの2種類に確実に使い分けることができるのである。特に、従来構造の如き同一のバンド挿通孔をセンタータイプ用とオフセットタイプ用で共用することが回避されていることから、従来に比して確実な使い分けが可能となり、組み付け間違いを防止できるようになっているのである。
次に、本実施形態のワイヤハーネス用固定具10が取り付けられた固定具付ワイヤハーネス92の製造方法について、図7〜10を用いて、説明する。はじめに、図7及び図8に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10をセンタータイプとして用いる場合について詳述する。先ず、センタータイプ用冶具94を、作業用固定具96にセットする。作業用固定具96には貫通孔98が貫設されており、図示しないボルトが挿通されることにより、作業用固定具96にセンタータイプ用冶具94が固定されるようになっている。作業用固定具96は、固定されたセンタータイプ用冶具94を例えば縦方向や横方向に回転させたり上下方向に移動させたりすることが可能とされており、センタータイプ用冶具94を所望の向きや位置に調整・固定することができるようになっている。センタータイプ用冶具94は略ブロック形状とされており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。センタータイプ用冶具94の上部には、長手方向に一定の略凸字形断面形状で延び且つ両方向及び上方に開口する切欠部100と、切欠部100の下方に連接して設けられ且つ長手方向に一定の略矩形断面形状で延びて後方に開口する切欠部102が形成されている。そして、ワイヤハーネス用固定具10が、基部14の両端部の一方16a側から切欠部100,102の後方開口部104に挿し入れられ、切欠部102の前端部に設けられた壁部106(図8参照)にワイヤハーネス用固定具10のクリップ部12が当接することにより、所定の位置にセットされるようになっている。この結果、図8に示されているように、第1のバンド挿通孔54の出口である基部14の両端部の一方16a側が開口されている一方、第2のバンド挿通孔80の出口であるクリップ部12側の開口部90が、センタータイプ用冶具94の略ブロック形状の下部108によって塞がれているようにできるのである。このように、ワイヤハーネス用固定具10を、第2のバンド挿通孔80の出口が塞がれているようになっている冶具にセットすることによりセット工程が完了する。
続いて、ワイヤハーネス用固定具10の基部14上にワイヤハーネス18を載置し、ワイヤハーネス18に巻付バンド20を巻き付けた後、巻付バンド20の先端部82を第1のバンド挿通孔54に挿通することにより、ワイヤハーネス18に対してワイヤハーネス用固定具10が結束固定され、これにより結束固定工程が完了する。この際、仮に巻付バンド20を挿通すべき第1のバンド挿通孔54を第2のバンド挿通孔80と間違えたとしても、センタータイプ用冶具94により第2のバンド挿通孔80の出口であるクリップ部12側の開口部90が塞がれていることから間違って結束固定を実行することができないようになっている。それ故、センタータイプとオフセットタイプの取り付け間違いを確実に防止することができるのである。
次に、図9及び図10に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10をオフセットタイプとして用いる場合について詳述する。先ず、オフセットタイプ用冶具110を、作業用固定具96にセットする。オフセットタイプ用冶具110は略ブロック形状とされており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。オフセットタイプ用冶具110の上部には、長手方向に一定の略矩形断面形状で延び且つ両方向及び上方に開口する切欠部112と、切欠部112の下方に連接して設けられ且つ長手方向に一定の略逆凸字形断面形状で延びて後方に開口する切欠部114が設けられている。そして、ワイヤハーネス用固定具10が、基部14の両端部の一方16a側から切欠部112,114の後方開口部116に挿し入れられ、切欠部114の前端部に設けられた壁部118(図10参照)にワイヤハーネス用固定具10の基部14及びクリップ部12が当接することにより、所定の位置にセットされるようになっている。しかも、オフセットタイプ用冶具110において、クリップ部12側の開口部90が配設される箇所には、下方に開口する貫通孔120が貫設されている。この結果、図10に示されているように、第2のバンド挿通孔80の出口であるクリップ部12側の開口部90が開口されている一方、第1のバンド挿通孔54の出口である基部14の両端部の一方16a側が、オフセットタイプ用冶具110の壁部118によって塞がれているようになっている。このように、ワイヤハーネス用固定具10を、第1のバンド挿通孔54の出口が塞がれているようになっている冶具にセットすることでセット工程が完了する。
続いて、図9及び図10に示されているように、ワイヤハーネス用固定具10の基部14上にワイヤハーネス18を載置し、ワイヤハーネス18に巻付バンド20を巻き付けた後、巻付バンド20の先端部82を第2のバンド挿通孔80に挿通することにより、ワイヤハーネス18に対してワイヤハーネス用固定具10が結束固定され、これにより結束固定工程が完了する。この際、仮に巻付バンド20を挿通すべき第2のバンド挿通孔80を第1のバンド挿通孔54と間違えたとしても、オフセットタイプ用冶具110により第1のバンド挿通孔54の出口である基部14の両端部の一方16a側が塞がれていることから間違って結束固定を実行することができないようになっている。それ故、センタータイプとオフセットタイプの取り付け間違いを確実に防止することができるのである。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。例えば、係合片38,70と係止突部44,76の形状は、例示の実施形態に限定されず、ワイヤハーネス18に対してワイヤハーネス用固定具10を締め付けて固定することができるものであれば、任意の形状が選択可能である。
10:ワイヤハーネス用固定具、12:クリップ部、14:基部、16a:両端部の一方、16b:両端部の他方、18:ワイヤハーネス、20:巻付バンド、22:表面、24:溝部(係止部)、44:第1の係止突部、50:貫通孔(第2のバンド挿通孔)、54:第1のバンド挿通孔、66:貫通孔(第2のバンド挿通孔)、76:第2の係止突部、80:第2のバンド挿通孔、82:先端部、88:開口部、90:開口部、92:固定具付ワイヤハーネス

Claims (3)

  1. クリップ部が突設された基部と、
    前記クリップ部を間に挟んだ両側に位置する前記基部の両端部の一方から延出してワイヤハーネスへ巻き付けられる巻付バンドと、
    前記巻付バンドの表面に形成されて延出方向に並設された複数の係止部とを備えており、
    前記基部には、前記クリップ部の突設方向に直交する方向で前記基部の前記両端部の一方から他方に向かって貫通し、且つ前記巻付バンドの前記係止部に係止する第1の係止突部を有する第1のバンド挿通孔が設けられている一方、
    前記クリップ部および前記基部には、該クリップ部の突出方向に貫通し、且つ前記巻付バンドの前記係止部に係止する第2の係止突部を有する第2のバンド挿通孔が設けられている
    ことを特徴とするワイヤハーネス用固定具。
  2. 前記第2のバンド挿通孔には、前記基部側の開口部から前記巻付バンドの先端部が挿し入れられると共に、前記クリップ側の開口部から前記巻付バンドの先端部が外部に突出されるようになっている請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
  3. ワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法であって、
    前記ワイヤハーネス用固定具として請求項1に記載のものを用いると共に、
    前記ワイヤハーネス用固定具を、前記第1のバンド挿通孔又は前記第2のバンド挿通孔の一方の出口が塞がれる冶具にセットするセット工程と、
    前記ワイヤハーネス用固定具に前記ワイヤハーネスを載置し、前記巻付バンドを巻き付けて前記第1のバンド挿通孔又は前記第2のバンド挿通孔の他方に挿通することにより、前記ワイヤハーネスに対して前記ワイヤハーネス用固定具を結束固定する結束固定工程と、
    を含むことを特徴とするワイヤハーネス用固定具が取り付けられた固定具付ワイヤハーネスの製造方法。
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