JP2015073576A - 光音響装置、光音響装置の作動方法、およびプログラム - Google Patents

光音響装置、光音響装置の作動方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】光音響波の反射波に対応する成分による光学特性情報の定量性の低下を抑制することができる光音響装置を提供する。
【解決手段】光を出射する光源と、特定の領域に音響波を送信する音響波送信部と、光源から出射された光が被検体に照射されることにより被検体から発生する光音響波を受信して時系列の光音響信号を出力する光音響波受信部と、音響波送信部から送信された音響波が被検体の内部で反射することにより発生したエコーを受信して時系列のエコー信号を出力するエコー受信部と、時系列の光音響信号および時系列のエコー信号に基づいて、特定の領域で発生した光音響波の反射波に対応する成分が低減された被検体の光学特性情報を取得する処理部とを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は光音響波を用いて被検体の光学特性情報を取得する光音響装置、光音響装置の作動方法、およびプログラムに関する。
レーザなどの光源から生体などの被検体に光を照射し、入射した光に基づいて得られる被検体内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photoacoustic Imaging(PAI:光音響イメージング)がある。光音響イメージングでは、光源から発生したパルス光が被検体に照射され、被検体内で伝搬・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した被検体組織から発生した音響波(典型的には超音波)が受信される。その受信信号に基づき被検体の情報がイメージング(画像化)される。
すなわち、腫瘍などの対象部位とそれ以外の組織との光エネルギーの吸収率の差を利用し、被検部位が照射された光エネルギーを吸収して瞬間的に膨張する際に発生する弾性波(光音響波)を探触子で受信する。この受信信号を数学的に解析処理することにより、被検体内の光学特性情報、特に、初期音圧分布、光エネルギー吸収密度分布あるいは吸収係数分布などを得ることができる。
これらの情報は、被検体内の特定物質、例えば、血液中の酸素飽和度などの定量的計測にも利用できる。近年、この光音響イメージングを用いて、小動物の血管像をイメージングする前臨床研究や、この原理を乳がんなどの診断に応用する臨床研究が積極的に進められている(非特許文献1)。光音響イメージングでは、通常、被検体内部にある光吸収体の光学特性分布を画像化することを目的とする。
"Photoacoustic Tomography: In Vivo Imaging From Organelles to Organs", Lihong V.Wang Song Hu,Science 335,1458(2012) "Acoustic radiation force impulse imaging of myocardial radio−frequency ablation: initial in vivo results",Fahey et al., IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control, Volume 52, Issue 4, April 2005 Page(s): 631−641
しかしながら、光吸収体から発生する光音響波は光吸収体の形状を起点に、等方的に送信され伝搬される。そして、探触子は、探触子に光吸収体から直接伝搬した光音響波のほかに、光吸収体で発生した光音響波が反射することにより発生した反射波も受信する。反射波は光が照射されたときに発生した光音響波ではないため、この反射波に対応する成分を含む受信信号から得られる光学特性情報の定量性の低下の原因となる。
そこで、本発明は、光音響波の反射波に対応する成分による光学特性情報の定量性の低下を抑制することができる光音響装置を提供することを目的とする。
光を出射する光源と、特定の領域に音響波を送信する音響波送信部と、光源から出射された光が被検体に照射されることにより被検体から発生する光音響波を受信して時系列の光音響信号を出力する光音響波受信部と、音響波送信部から送信された音響波が被検体の内部で反射することにより発生したエコーを受信して時系列のエコー信号を出力するエコー受信部と、時系列の光音響信号および時系列のエコー信号に基づいて、特定の領域で発生した光音響波の反射波に対応する成分が低減された被検体の光学特性情報を取得する処理部とを有する。
本明細書が開示する光音響装置によれば、光音響波の反射波に対応する成分による光学特性情報の定量性の低下を抑制することができる。
第1の実施形態に係る光音響装置の模式図 第1の実施形態に係る光音響装置の作動フローを示す図 第1の実施形態で得られる各種信号を示す図 第2の実施形態に係る光音響装置の作動フローを示す図 第2の実施形態で得られる各種分布を示す図
本明細書が開示する光音響装置は、特定の領域に送信された音響波のエコーの受信信号を利用して、特定の領域で発生した光音響波の反射波に対応する成分が低減された光学特性情報を取得する。特に光が直接照射された部分(例えば被検体表面の皮膚、探触子表面などに配置される音響レンズなど)から発生する光音響波は強度が大きいため、その反射波の強度も大きくなる。そのため、このような反射波によって得られる光学特性情報の定量性も大きく低下してしまう。各実施形態では、エコーの受信信号に基づいて、被検体の表面で発生した光音響波の反射波に対応する成分を低減する場合を説明する。すなわち、各実施形態では光が照射された被検体の表面を反射波源として説明する。以下、各実施形態における作用効果を説明する。
被検体表面で発生した光音響波が被検体内の反射体で反射することにより発生した反射波の波形と、送信された音響波が同じ反射体で反射することにより発生したエコーの波形とは同じような形となる。そのため、この光音響波の反射波の受信信号およびこのエコーの受信信号についても同じような信号となる。
そこで、第1の実施形態に係る光音響装置は、光音響波の受信信号とエコーの受信信号との差分信号を取得することにより光音響波の反射波に対応する成分を低減することができる。
ところで、光音響波の受信信号から、光音響波が発生したときの初期音圧の分布を取得することができる。一方、初期音圧分布と同様に、エコーの受信信号から、エコーが発生したときのエコーの音圧分布を取得することができる。そして、同じ反射体による光音響波の反射波およびエコーに対応する成分は、初期音圧分布にもエコー音圧分布にも同じ位置に現れる。
そこで、第2の実施形態に係る光音響装置は、光音響波の受信信号から得られる初期音圧分布と、エコーの受信信号から得られるエコー音圧分布との差分分布を取得することにより光音響波の反射波に対応する成分を低減することができる。
以上、本明細書が開示する光音響装置によれば、光音響波の反射波に対応する成分を低減することができる。そのため、本明細書が開示する光音響装置によれば、光音響波の反射波に対応する成分による光学特性情報の定量性の低下を抑制することができる。
なお、光学特性情報としては、光音響波の初期音圧分布、光エネルギー吸収密度分布、吸収係数分布、および被検体を構成する物質の濃度分布などが挙げられる。ここで、物質の濃度とは、酸素飽和度、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、および総ヘモグロビン濃度などである。
また、本明細書における反射波は散乱により発生した音響波を含む。
以下、添付図面に従って本発明に係る光音響装置の実施の形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1を用いて本実施形態に係る光音響装置を説明する。図1は、本実施形態に係る光音響装置を模式的に図示したものである。本実施形態に係る光音響装置は、光音響波の受信信号と送信された音響波のエコーの受信信号との差分信号を取得することにより光音響波の反射波に対応する成分を低減する。
以下、光音響波の受信信号を「光音響信号」、送信された音響波のエコーの受信信号を「エコー信号」とも称する。
本実施形態に係る光音響装置は、光源110、光学系120、トランスデューサアレイ130、処理部としてのコンピュータ150、表示部160、入力部170を有する。なお、トランスデューサアレイ130は、被検体100に音響波を送信する音響波送信部としての機能を備える。また、トランスデューサアレイ130は、光音響波を受信する光音響波受信部およびエコーを受信するエコー受信部としての機能を備える。
次に、図2を用いて本実施形態に係る光音響装置の作動を説明する。なお、コンピュータ150が光音響装置を構成する各構成の作動を制御している。
(S100:光音響波を受信して時系列の光音響信号を取得する工程)
まず光源110はパルス光121を発生し、パルス光121が光学系120を介して被検体100に照射される。そして、パルス光121が被検体100の内部に位置する光吸収体101に吸収される。パルス光121を吸収した光吸収体101が瞬間的に膨張することにより、光音響波103が発生する。一方、被検体100の表面105でもパルス光121は吸収され光音響波が発生する。被検体100の表面105で発生する光音響波は、トランスデューサアレイ130の方向に発生する光音響波104aと、トランスデューサアレイ130とは逆の方向に発生する光音響波104bとに大別される。光音響波104bは被検体100内を伝搬し、光吸収体101で反射し、反射波104cが発生する。本実施形態においては、被検体100の表面105で発生した光音響波104aおよび104bが、パルス光121が直接照射された部分で発生した光音響波となっている。
トランスデューサアレイ130は、光音響波104aおよび反射波104cを含む光音響波を受信し、時系列の光音響信号S1(t)に変換する。コンピュータ150は、トランスデューサアレイ130から出力された時系列の光音響信号S1(t)に増幅、A/D変換の処理を施し、コンピュータ150内の記憶部151に格納する。tは時間を表し、t=0は光源100がパルス光121を発生したタイミングとする。すなわち、コンピュータ150は、光源100がパルス光121を発生したタイミングに光音響信号の取得を開始するように制御する。例えば、コンピュータ150は、トランスデューサアレイ130の駆動やトランスデューサアレイ130から出力された光音響信号のメモリへの格納などを制御することにより、光音響信号の取得を制御することができる。
ここで、時系列の光音響信号S1(t)について説明する。図3(a)は、特定のトランスデューサにより取得された時系列の光音響信号S1(t)を示す。
時系列の光音響信号S1(t)中の界面信号301は、被検体100の表面105で発生した光音響波104aの受信信号である。また、吸収体信号302は、光吸収体101で発生した光音響波103の受信信号である。また、反射信号303は、被検体100の表面105で発生した光音響波104bが光吸収体101で反射することにより発生した反射波104bの受信信号である。すなわち、反射信号303は、時系列の光音響信号S1(t)中の反射波に対応する成分である。
(S200:送信された音響波のエコーを受信して時系列のエコー信号を取得する工程)
本工程において、まずトランスデューサアレイ130は、被検体100に向けて音響波102aを送信する。音響波102aは音響整合材140内を伝搬して被検体100の表面105に到達する。音響波102aは被検体100の表面105で一部反射してエコー102dの成分となり、一部は透過して音響波102bの成分になる。音響波102bは反射体としての光吸収体101で反射し、エコー102cが発生する。
トランスデューサアレイ130は、エコー102cおよび102dを受信して時系列のエコー信号S2(t)に変換する。そして、コンピュータ150がトランスデューサアレイ130から出力された時系列のエコー信号S2(t)に対して増幅、A/D変換の処理を行い、コンピュータ150の内部の記憶部151に格納する。時系列のエコー信号S2(t)において、t=0はトランスデューサアレイ130が音響波102aを送信したタイミングとする。
ここで、時系列のエコー信号S2(t)について説明する。図3(b)は、特定のトランスデューサにより取得された時系列のエコー信号S2(t)を示す。時系列のエコー信号S2(t)中の反射信号304は、被検体100の表面105で反射したエコー102dの受信信号である。反射信号305は、被検体100の表面105を透過した音響波102bが光吸収体101で反射することにより発生したエコー102cの受信信号である。
<送信波形>
エコー102cが光音響波104bの反射波104cを再現するために、音響波102bの波形と光音響波104bの波形とが類似するようにトランスデューサ130の送信波形を制御することが好ましい。以下、送信波形を決定する方法の例を説明する。なお、音響波102bの波形と光音響波104bとの波形とが類似するような送信波形を決定できる限り、以下の方法に限らない。
まずコンピュータ150は、被検体100の表面105(反射波源)のサイズや形状に基づいて光音響波104bの波形を推定する。光音響波においては、物体の形状に依存して周波数特性が異なる波形が生成される。この一般解としては光吸収体の形状がスラブ形状の場合は上に凸の波形となり、球形状の場合はN型の波形になることが知られている。そのため、反射波源の形状から反射波源で発生する光音響波の波形を推定することができる。
続いて、コンピュータ150は、音響波102bの波形と光音響波104bの波形とを類似させるように、トランスデューサアレイ130から送信すべき波形を光音響の波動方程式により計算することができる。なお、コンピュータ150は、再現したい波形に応じて、光音響波の波動方程式により送信すべき波形を適宜計算することができる。
また、コンピュータ150は、S100で取得した時系列の光音響信号S1(t)に基づいて、トランスデューサアレイ130の送信波形を決定してもよい。
コンピュータ150は、時系列の光音響信号S1(t)から光音響波104aの受信信号を抽出し、光音響波104aの受信信号から発生時の光音響波104bの波形を再現する送信波形を計算することができる。光音響波は等方的に発生するため、光音響波104aと光音響波104bとは同様の波形となる。そのため、光音響波104aの受信信号から発生時の光音響波104bを再現する再現する送信波形を計算することができる。このとき、コンピュータ150は、トランスデューサの周波数特性、音響波が伝搬する間の周波数減衰、トランスデューサ応答などを考慮して送信波形を計算することが好ましい。
また、コンピュータ150は、光音響波104aの受信信号の振幅やパルス幅などに基づいて、コンピュータ150内の記憶部151に記憶されている複数の送信波形から発生時の光音響波104bの波形を再現する送信波形を選択してもよい。
なお、以下に記すような方法で、S100で取得した時系列の光音響信号S1(t)から光音響波104aの受信信号を抽出することができる。ただし、対象の光音響波の受信信号を抽出できる限り、以下の方法に限らない。
被検体100の表面105は直接光が照射された部分であるため、光音響波104aの振幅は比較的大きくなる。そのため、コンピュータ150は、時系列の光音響信号S1(t)のうち振幅が最大となる波形を、光音響波104aの受信信号として抽出することができる。
また、被検体100の表面105は、トランスデューサアレイ130との距離が近いため、光音響波104aは他の光音響波と比べて先にトランスデューサアレイ130に到達する。そこで、コンピュータ150は、時系列の光音響信号S1(t)から始めに出力された閾値以上の振幅の波形を光音響波104aの受信信号として抽出することができる。
また、時系列の光音響信号S1(t)を表示部160に表示し、ユーザーが任意の波形を入力部170により選択し、光音響波104aの受信信号としてもよい。
また、後述する方法で時系列の光音響信号S1(t)から取得された初期音圧分布P1(r)を表示部160に表示し、ユーザーが初期音圧分布P1(r)の任意の位置を入力部170により指定してもよい。これにより、光音響波104aの受信信号が抽出されることができる。例えば、指定された位置の初期音圧を再構成するために用いられた複数の光音響信号を加算平均して、光音響波104aの受信信号とすることができる。また、指定された位置の初期音圧を再構成するために用いられた複数の光音響信号のうちから任意の光音響信号の波形を、光音響波104aの受信信号とすることができる。なお、指向性が高い方向に指定した位置を見込むトランスデューサから出力された光音響信号を、光音響波104aの受信信号とすることが好ましい。
また、本実施形態のように、反射波源(被検体100の表面105)が平面形状であるような場合、反射波源では平面波形の光音響波が発生するので、トランスデューサアレイ130は面内方向で位相がそろったフラットな平面波を送信することが好ましい。
また、トランスデューサ130は、非特許文献2に記載されたようなARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)など既知の手法を用いて反射波源の形状に沿って仮想点音源を多数形成して音響波102bを形成してもよい。このとき、コンピュータ150は、形状取得部により取得された形状情報に基づいて、仮想点音源を形成する位置を決定することができる。コンピュータ150は、決定された位置に仮想点音源を形成するようにトランスデューサアレイ130の送信波形を制御することができる。
<伝播経路>
なお、便宜上図1において音響波102bおよびエコー102cと、光音響波104bおよび反射波104cとは異なる伝搬経路で示している。ただし、反射波104cの波形とエコー102cの波形とが類似するように、それぞれの音響波は同様の伝搬経路とすることが好ましい。そのため、パルス光121を照射する位置と音響波102aを送信する位置とが同様となるように、コンピュータが光学系120およびトランスデューサアレイ130の配置、ならびに音響波102aの送信方向を制御することが好ましい。
また、S100において光音響波を受信するトランスデューサアレイ130の位置と、S200においてエコーを受信するトランスデューサアレイ130の位置とのずれが小さいことが好ましい。このようなトランスデューサアレイ130の位置とすることで、反射波104cとエコー102cとが同じような受信信号で出力される。
(S300:時系列の光音響信号と時系列のエコー信号との差分信号を取得する工程)
この工程では、S100で取得された時系列の光音響信号S1(t)と、S200で取得された時系列のエコー信号S2(t)との差分信号S3(t)を取得する。例えば、時系列の光音響信号S1(t)から時系列のエコー信号S2(t)を減算することにより、図3(c)に示す差分信号S3(t)を取得する。
図3(c)によれば、時系列の光音響信号S1(t)から時系列のエコー信号S2(t)が減算された結果、時系列の光音響信号S1(t)中の反射信号303が低減されることが理解される。一方、光吸収体101で発生した光音響波103に起因する吸収信号302は差分信号S3(t)でも再現されている。したがって、時系列の光音響信号S1(t)と時系列のエコー信号S2(t)との差分信号S3(t)を取得することにより、反射信号303(光音響波の反射波に対応する成分)を選択的に低減することができる。
なお、差分処理を行う方法として時間軸データの信号同士の減算を行ったが、所定の受信時間の信号成分の差分を取得できる限り、いかなる方法であってもよい。例えば、フーリエ空間を利用して、減算したい波形の位置(時間)を中心とした時間区間の窓関数にS1(t)およびS2(t)をかけたものをフーリエ変換し、同一の周波数スペクトル成分を減算して逆フーリエ変換して差分信号を取得してもよい。基底空間としてウェーブレット空間を利用する場合、S1(t)およびS2(t)をウェーブレット変換した信号のうち同一の時間区間に存在する信号係数を減算して逆変換して差分信号を取得することができる。
<受信時刻のずれ補正>
本実施形態では、時系列の光音響信号S1(t)においてはパルス光121が照射されたタイミングをt=0(基準)とし、時系列のエコー信号S2(t)においては音響波102aが送信されたタイミングをt=0(基準)としている。ただし、実際には音響波102aが送信されたタイミングから被検体100の表面105に音響波102aが到達するタイミングまでの時間はゼロとはならない。この場合、時系列の光音響信号S1(t)中の反射信号303(反射波104cの受信信号)の受信時刻と、時系列のエコー信号S2(t)中の反射信号305(エコー102cの受信信号)の受信時刻とは一致しない。そのため、各反射信号の受信時刻の差が小さくなるように、時系列の光音響信号S1(t)または時系列のエコー信号S2(t)の受信時刻の基準をずらす補正を行ってもよい。すなわち、エコーの受信時刻の差が小さくなるように、時系列の光音響信号S1(t)または時系列のエコー信号S2(t)を補正した後に差分信号を取得してよい。さらに、各反射信号の受信時刻が一致するように補正することがより好ましい。
このとき、コンピュータ150は、トランスデューサアレイ130および被検体100の配置から音響波のtime of flightを計算し、基準のずれ時間を計算することができる。
また、コンピュータ150は、反射信号303と類似する信号を時系列のエコー信号S2(t)から決定し、これらの信号の受信時刻の差が小さくなるように基準をずらしてもよい。あるいは、コンピュータ150は、反射信号305と類似する信号を時系列の光音響信号S1(t)から決定し、これらの信号の受信時刻の差が小さくなるように基準をずらしてもよい。このとき、コンピュータ150はテンプレートマッチングなどの相互相関を用いる手段により、類似する信号を決定することができる。
なお、時系列の光音響信号S1(t)から反射信号303を決定する方法としては、界面信号301の逆位相の波形と類似する信号を抽出すればよい。また、界面信号301の逆位相の波形と類似する信号を時系列のエコー信号S2(t)から選択することにより、反射信号305を抽出することもできる。
なお、時系列の光音響信号の反射波に対応する成分を低減する上で、基準のずれ時間が無視できる程度である場合には基準をずらさなくてもよい。
また、音響波102aが被検体100の表面105に到達するタイミングを時系列のエコー信号S2(t)におけるt=0としてもよい。すなわち、コンピュータ150は、音響波102aが被検体100の表面105に到達するタイミングからエコー信号の取得を開始するように制御してもよい。例えば、コンピュータ150は、トランスデューサアレイ130の駆動やトランスデューサアレイ130から出力されたエコー信号のメモリへの格納などを制御することにより、エコー信号の取得を制御することができる。
また、コンピュータ150は、時系列のエコー信号S2(t)のうち、音響波102aが被検体100の表面105に到達するまでの時間に取得したエコー信号を削除してもよい。
以上の方法により、それぞれの反射波の受信時刻をそろえることができる。
<重みづけ>
ところで、被検体100の表面105から発生する光音響波104aと、トランスデューサアレイ130から送信される音響波103aとは強度が異なることがある。このような場合、時系列の光音響信号S1(t)または時系列のエコー信号S2(t)を重み付けした後に、時系列の光音響信号と時系列のエコー信号との差を算出し、差分信号S3(t)を取得することが好ましい。このような重み付け処理を行うことにより、時系列の光音響信号S1(t)中の反射波に対応する成分をより大きく低減することができる。
次の式は、以上の重み付け処理の一例を表す式である。
S3(t)=S1(t)−a×S2(t) ・・・(式1)
ここで、aは重み付け係数である。重み付け係数aは、光音響波が反射体で反射することにより発生した反射波に対応する光音響信号の振幅値と、送信された音響波が同じ反射波源で反射して発生したエコーに対応するエコー信号の振幅値との差を小さくする値である。重みづけ係数aは、ユーザーやコンピュータによって適宜設定されることができる。
時系列の光音響信号S1(t)と時系列のエコー信号S2(t)との相関が高い信号同士は、特定の反射体で反射した反射波の受信信号である可能性が高い。そこで、コンピュータ150は、時系列の光音響信号S1(t)と時系列のエコー信号S2(t)との相関が高い信号同士の振幅の差が小さくなる重みづけ係数aを設定することが好ましい。また、コンピュータ150は、相関の高い信号同士の振幅が一致するような重みづけ係数aを設定することがより好ましい。
式1に示した重み付けの例では、時系列のエコー信号S2(t)に重み付け係数を掛けて重み付けを行った。なお、本実施形態においては、時系列の光音響信号S1(t)に重み付け係数を掛けて重み付けを行うことや、時系列の光音響信号S1(t)と時系列のエコー信号S2(t)の両方に重み付け係数を掛けて重み付けを行うことをしてもよい。ただし、時系列の光音響信号S1(t)から得られる光学特性情報の定量性を維持するために時系列のエコー信号S2(t)のみに重み付け係数を掛けることが好ましい。
また、重み付け処理は、それぞれの信号の振幅の比較を行いやすくするために前述した基準の補正を行った後に行うことが好ましい。
また、時系列の光音響信号S1(t)から選択的に反射波に対応する低減するために、包絡線検波が施された時系列のエコー信号を時系列の光音響信号S1(t)のマスクとして用いてもよい。すなわち、コンピュータ150は、包絡線検波が施された時系列のエコー信号でマスクされた時系列の光音響信号S1(t)と、時系列のエコー信号S2(t)との差分信号を取得してもよい。また、包絡線検波が施されたエコー信号の振幅値が所定の閾値以上である場合を1とし、それ以外を0とした二値化信号を時系列の光音響信号S1(t)のマスクとして用いてもよい。
ところで、本実施形態では、界面信号301は、反射信号304との差分信号を取得することにより低減された。なお、コンピュータ150は、低減された界面信号を記憶部151に記憶された界面信号301に置き換えることにより、界面信号301を復元することができる。また、コンピュータ150は、低減された界面信号に反射信号304の逆位相信号を足すことにより界面信号301を復元させることができる。
(S400:差分信号S3(t)から光学特性情報を取得する工程)
コンピュータ150は、S300で得られた差分信号S3(t)に基づいて光学特性情報を取得する。前述したように差分信号S3(t)は、光音響波の反射波に対応する成分が低減された信号であるので、差分信号S3(t)に基づいて取得された光学特性情報についても光音響波の反射波に対応する成分は低減されている。
本工程で、コンピュータ150は、差分信号S3(t)を用いて再構成処理を行い、光学特性情報としての初期音圧分布を形成することができる。再構成アルゴリズムとしては、例えば、トモグラフィー技術で通常に用いられるタイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影、D&S(Delay & Sum)などが用いられる。また、再構成の時間に多くを有することが可能な場合は、繰り返し処理による逆問題解析法などの画像再構成手法を用いることもできる。なお、S100においてフォーカスしたトランスデューサアレイを順次スキャンして時系列の光音響信号S1(t)を取得した場合、再構成なしに高次元の初期音圧分布を形成することができる。この場合、コンピュータ150は再構成処理を行う必要はない。
なお、コンピュータ150は、S100において被検体100に照射された光の被検体100内での光量分布を取得し、初期音圧分布を光量分布で補正することにより、光学特性情報としての吸収係数分布を取得することができる。さらに、コンピュータ150は、複数の波長の光を用いてそれぞれの波長に対応する吸収係数分布を取得し、それらの吸収係数分布を用いて光学特性情報としての被検体100を構成する物質の濃度を取得することができる。
続いて、コンピュータ150は、取得した光学特性情報に基づいて表示部160に表示させるための画像データを取得する。続いて、コンピュータ150は画像データを表示部160に表示させる。ユーザーは表示部160に表示された光学特性情報の画像データを診断などに用いることができる。
なお、本実施形態では光学特性情報から画像データを形成し、表示部160に表示させたが、表示部160に表示させる情報はこれに限らない。例えば、特定の位置の光学特性情報の値を表示部160に表示させてもよい。この場合、ユーザーが位置を入力部170を用いて入力し、入力された位置の光学特性情報の値が表示部160に表示させるように構成されてもよい。
以上、本実施形態に係る光音響装置によれば、時系列の光音響信号から光音響波の反射波に対応する成分を低減することができるため、光音響波の反射波に対応する成分による定量性の低下が抑制された光学特性情報を取得することができる。
なお、被検体100の表面105に限らず、音響レンズなどの部材に直接光が照射されることにより発生した大きい音圧の光音響波の反射波に対応する成分を低減する場合にも本実施形態を適用することができる。
以下、本実施形態に係る光音響装置の各構成について説明する。
(被検体100及び光吸収体101)
これらは本発明の光音響装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の光音響装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを主な目的とする。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房や頸部、腹部などの診断の対象部位が想定される。
また、被検体内部にある光吸収体としては、被検体内部で相対的に吸収係数が高いものとする。例えば、人体が測定対象であればオキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビン、メトヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が光吸収体の対象となる。その他、頸動脈壁のプラークなどもその対象となる。
(光源110)
光源としては、数ナノから数マイクロ秒オーダーのパルス光を発生可能なパルス光源が好ましい。具体的には効率的に光音響波を発生させるため、10ナノ秒程度のパルス幅が使われる。光源としてはレーザのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。レーザとしては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なレーザを使用することができる。使用する光源の波長は、被検体内部まで光が伝搬する波長を使うことが望ましい。具体的には、被検体が生体の場合、500nm以上1200nm以下である。
(光学系120)
光学系120は、光源から出射された光を所望の光分布形状に加工しながら被検体100に導く部材である。光学系120は、レンズやミラーなどの光学部品や光ファイバなどの光導波路などにより構成される。例えば光学部品としては、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を拡散させる拡散板などである。このような光学系120は、光源から発せられた光が被検体に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。なお、光はレンズで集光させるより、ある程度の面積に広げる方が生体への安全性ならびに診断領域を広げられるという観点で好ましい。また、光が照射された領域に音響波を送信しやすくなるため、光学系120はトランスデューサアレイ130の直下に照明できるように構成されていることが好ましい。
(トランスデューサアレイ130)
トランスデューサアレイに130に用いられるトランスデューサは、圧電現象、光の共振、静電容量の変化等を用いたものなど、音響波を送受信できるものであれば、どのようなトランスデューサを用いてもよい。
なお、トランスデューサアレイ130は、本実施形態のように音響波の送受信機能を兼ねることにより、同一領域での音響波の受信や省スペース化などを行いやすくなる。ただし、音響波送信部、光音響波受信部、およびエコー受信部の機能をそれぞれ異なるトランスデューサアレイによって構成してもよい。
(音響整合材140)
音響整合材140は本発明の光音響装置の一部を構成するものではないが説明する。音響整合材140は、被検体100とトランスデューサアレイ130との間に設けられることにより、被検体100とトランスデューサアレイ130との音響整合を図る部材である。音響整合材140としては、水、オイル、アルコールなどから構成されるジェルなどが用いられる。
(コンピュータ150)
コンピュータ150には典型的にはワークステーションなどが用いられ、補正処理や画像再構成処理などがあらかじめプログラミングされたソフトウェアにより行われる。なお、本実施形態においてコンピュータ150が実行するそれぞれの処理を、それぞれ別の装置としてもよい。
また、ワークステーションで行うようなソフトウェア処理ではなく、ハードウェア処理により被検体の音響インピーダンスなどの特性や、光学特性情報を取得することもできる。
コンピュータ150内の演算部152は、トランスデューサアレイ130から出力された電気信号に対して所定の処理を施すことができる。
演算部152は、典型的にはCPU、GPU、A/D変換器などの素子や、FPGA、ASICなどの回路から構成される。なお、演算部152は、1つの素子や回路から構成されるだけではなく、複数の素子や回路から構成されていてもよい。また、演算部152が行う各処理をいずれの素子や回路が実行してもよい。
また、演算部152が光音響装置を構成する各構成の作動を制御することができる。例えば、演算部152は、光源から発生するパルス光の発光タイミングの制御し、パルス光をトリガ信号として電気信号の送受信のタイミングを制御することができる。演算部152は、トランスデューサアレイ130の各トランスデューサの送信位相を制御することにより、トランスデューサアレイ130が送信する音響波の波面を任意に制御することができる。
また、コンピュータ150内の記憶部151は、典型的にはROM、RAM、およびハードディスクなどの記憶媒体から構成される。なお、記憶部151は、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。
また、コンピュータ150は、同時に複数の信号をパイプライン処理できるように構成されていることが好ましい。これにより、光学特性情報を取得するまでの時間を短縮することができる。
なお、コンピュータ150が行うそれぞれの処理を、演算部152に実行させるプログラムとして記憶部151に保存しておくことができる。ただし、プログラムが保存される記憶部151は、非一時的な記録媒体である。
(表示部160)
表示部160は、信号処理装置から出力される光学特性情報を表示する装置である。表示部160には、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、およびFEDなどあらゆる方式のディスプレイを採用することができる。なお、表示部160は、本発明の光音響装置とは別に提供されていてもよい。
(入力部170)
入力部170は、コンピュータ150に情報を入力するために、ユーザーが情報を指定できるように構成された部材である。入力部170としては、キーボード、マウス、タッチパネル、ダイヤル、およびボタンなどを用いることができる。入力部170としてタッチパネルを採用する場合、表示部160が入力部170を兼ねるタッチパネルであってもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、時系列のエコー信号からエコー音圧分布を取得し、時系列の光音響信号から初期音圧分布を取得する。さらに、取得したエコー音圧分布と初期音圧分布との差分分布を取得する。本実施形態で得られる差分分布においては、時系列の光音響信号から得られる初期音圧分布と比べて、光音響波の反射波に対応する成分が低減されている。以下、第1の実施形態に係る光音響装置と同様の装置を用いて本実施形態を説明する。
図4を用いて本実施形態に係る光音響装置の作動方法を説明する。なお、図4に示すフローにおいて図2に示した処理と同様の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
まず本実施形態ではS100およびS200の工程を行い、時系列の光音響信号S1(t)および時系列のエコー信号S2(t)を取得する。
(S500:時系列の光音響信号に基づいて初期音圧分布を取得する工程)
続いて、コンピュータ150が時系列の光音響信号S1(t)に基づいて、光学特性情報の一例である初期音圧分布P1(r)を取得する。このときコンピュータ150は、S400で説明した差分信号S3(t)から光学特性情報を取得する方法で、時系列の光音響信号S1(t)から初期音圧分布P1(r)を取得する。
図5(a)は、時系列の光音響信号S1(t)から得られる初期音圧分布P1(r)の一例である。縦軸は被検体100の深さを示し、下方向に向かうにつれて被検体100の深度が深くなっている。なお、本実施形態においては、図の上方から光を照射し、図の上方で光音響波を受信している。
図5(a)中の浅い位置に存在するコントラストの高い領域(白い領域)は、光が直接照射された被検体100の表面105を表す初期音圧分布401である。また、その深部に光吸収体101を表す初期音圧分布402が示されている。さらに深部に反射波104cの受信信号から形成された虚像を表す初期音圧分布403が示されている。
(S600:時系列のエコー信号に基づいてエコー音圧分布を取得する工程)
続いて、コンピュータ150は、時系列のエコー信号S2(t)に基づいてエコー音圧分布P2(r)を取得する。
本実施形態に係るコンピュータ150は、図5(a)における虚像を表す初期音圧分布403と、時系列のエコー信号S2(t)から取得されるエコー音圧分布P2(r)との位置が一致するようにエコー音圧分布P2(r)を取得する。すなわち、特定の最小構成単位の初期音圧を取得するために用いた光音響信号の受信時刻に対応するエコー信号を用いて特定の最小構成単位のエコー音圧を取得する。例えば、コンピュータ150は、被検体100の表面105に音響波102aが到達したときに被検体100内で同時にエコーが発生したと仮定して時系列のエコー信号S2(t)からエコー音圧分布P2(r)を取得する。すなわち、被検体100の表面105に音響波102aが到達した時刻からトランスデューサアレイ130にエコーが到達する時刻までの伝搬時間を考慮して、時系列のエコー信号から各最小構成単位のエコー音圧を取得する。これによれば、初期音圧分布P1(r)のうち反射波104bに対応する初期音圧が現れる座標と、エコー音圧分布P2(r)のうちエコー102bに対応するエコー音圧が現れる座標とを一致させることができる。
一方、通常時系列のエコー信号からBモード画像を取得するときには、各最小構成単位において、トランスデューサアレイ130と画像化する最小構成単位の位置との間を送受信するときの伝搬時間を考慮してBモード画像を取得する。ところが、この方法で取得されたBモード画像と、図5(a)における虚像を表す初期音圧分布403とは一致しないため、これらの差分を取得しても時系列の光音響信号の反射波成分を低減する効果は小さい。
図5(b)は、本実施形態に係る方法により時系列のエコー信号S2(t)から取得したエコー音圧分布P2(r)を示す。図5(b)中の浅い位置に存在するコントラストの高い領域(白い領域)は、被検体100の表面105を表すエコー音圧分布404である。また、その深部に光吸収体101を表すエコー音圧分布406が示されている。なお、本実施形態においては、図の上方から音響波を送信し、図の上方でエコーを受信している。
図5(a)と図5(b)とを比較すると、図5(a)における虚像を表す初期音圧分布403と図5(b)における光吸収体101を表すエコー音圧分布406との位置が一致していることがわかる。一方、図5(a)において光吸収体101を表す初期音圧分布402が現れていた領域405には強いエコー音圧分布が見られない。すなわち、領域405には光吸収体101を表す初期音圧分布402と一致するエコー音圧分布は存在しない。
一方、比較例として通常のBモード画像の取得方法により時系列のエコー信号S2(t)から得られたBモード画像を図5(c)に示す。図5(c)中の浅い位置に存在するコントラストの高い領域(白い領域)は、被検体100の表面105を表すBモード画像407である。また、その深部に光吸収体101を表すBモード画像408が示されている。
図5(a)と図5(c)とを比較すると、図5(a)において虚像を表す初期音圧分布403が現れていた領域409にはBモード画像が見られない。すなわち、領域409には虚像を表す初期音圧分布403と一致するBモード画像は存在しない。
(S700:初期音圧分布とエコー音圧分布との差分音圧分布を取得する工程)
続いて、コンピュータ150は、S500で取得した初期音圧分布P1(r)とS600で取得したエコー音圧分布P2(r)との差分分布P3(r)を取得する。
<重みづけ>
ところで、被検体100の表面105から発生する光音響波104bと、トランスデューサアレイ130から送信される音響波102aとは強度が異なることがある。このような場合、初期音圧分布P1(r)またはエコー音圧分布P2(r)を重み付けした後に、初期音圧分布とエコー音圧分布との差を算出し、差分分布P3(r)を取得することが好ましい。このような重み付け処理を行うことにより、初期音圧分布P1(r)中の反射波に対応する成分をより大きく低減することができる。
次の式は、以上の重み付け処理の一例を表す式である。
P3(r)=P1(r)−A×P2(r) ・・・(式2)
ここで、Aは重み付け係数である。重み付け係数Aは、光音響波が反射体で反射することにより発生した反射波に対応する初期音圧値と、これと同じ位置におけるエコー音圧値との差を小さくするように、ユーザーやコンピュータによって適宜設定されることができる。
例えば、ユーザーが表示部160に表示された初期音圧分布P1(r)またはエコー音圧分布P2(r)に対して入力部170により任意の領域を指定する。続いて、コンピュータ150は、ユーザーにより指定された領域内の初期音圧とエコー音圧との差が小さくなる値を重み付け係数Aとすることができる。また、コンピュータ150は、指定された領域内の平均初期音圧値と、指定された領域内の平均エコー音圧値との差が小さくなる値を重みづけ係数Aとすることなどもできる。
また、ユーザーが表示部160に表示された差分分布を確認しながら、入力部170により重みづけ係数を設定できるように構成されていてもよい。そのため、表示部160が重みづけ係数を入力できる入力部170を有していることが好ましい。例えば、表示部160が入力部170を兼ねたタッチパネルであることが考えられる。
なお、式2に示した重み付けの例では、エコー音圧分布P2(r)に重み付け係数を掛けて重み付けを行った。なお、本実施形態においては、初期音圧分布P1(r)に重み付け係数を掛けて重み付けを行うことや、初期音圧分布P1(r)とエコー音圧分布P2(r)の両方に重み付け係数を掛けて重み付けを行うことをしてもよい。ただし、初期音圧分布P1(r)から得られる光学特性情報の定量性を維持するためにエコー音圧分布P2(r)のみに重み付け係数を掛けることが好ましい。
本実施形態においては、エコー音圧分布P2(r)に重み付け係数a=0.4に掛け、差分分布P3(r)を取得した。このような処理の結果、取得された差分分布の一例を図5(d)に示す。図5(d)においては、被検体100の表面105を表す差分分布410、光吸収体101を表す差分分布411、および図5(a)において虚像が現れた領域412が示されている。図5(d)からわかるように、領域412に虚像を表す初期音圧分布413は低減され、確認することができなかった。一方、光吸収体101については大きく低減されることなく差分分布411として確認することができる。すなわち、本実施形態によれば、光音響波の反射波成分による虚像を表す初期音圧分布を選択的に低減することができた。
<受信時刻のずれ補正>
ところで、被検体の位置ずれ等により完全に同じ時刻に各信号が現れない場合、第1の実施形態に説明した方法では光音響波の反射波に対応する成分を低減する効果が低下してしまう可能性がある。そこで、第2の実施形態では、受信サンプリング時間と被検体内での音速との積よりも大きい最小構成単位で初期音圧分布およびエコー音圧分布を取得してもよい。すなわち、ある最小構成単位の初期音圧およびエコー音圧を複数のサンプリングデータから取得してもよい。これによれば、ある最小構成単位の初期音圧およびエコー音圧において同じ反射体で発生した光音響波およびエコーに対応する成分が含まれやすくなる。そのため、完全に同じ時刻に光音響波の反射波およびエコーが現れない場合であっても、初期音圧分布とエコー音圧分布との差分分布を取得することにより光音響波の反射波に対応する成分を低減することができる。なお、光音響信号とエコー信号とで受信サンプリング時間が異なる場合、長い方の受信サンプリング時間と被検体内での音速との積で初期音圧分布とエコー音圧分布を取得することが好ましい。
なお、コンピュータ150は、S100において被検体100に照射された光の被検体100内での光量分布を取得し、差分分布を光量分布で補正することにより、光学特性情報としての吸収係数分布を取得することができる。さらに、コンピュータ150は、複数の波長の光を用いてそれぞれの波長に対応する吸収係数分布を取得し、それらの吸収係数分布を用いて光学特性情報としての被検体100を構成する物質の濃度を取得することができる。
以上、本実施形態で得られる差分分布においては、時系列の光音響信号から得られる初期音圧分布と比べて、光音響波の反射波に対応する成分が低減されている。すなわち、本実施形態に係る光音響装置によれば、光音響波の反射波に対応する成分による定量性の低下が抑制された光学特性情報を取得することができる。
100 被検体
110 光源
130 トランスデューサアレイ
150 コンピュータ

Claims (18)

  1. 光を出射する光源と、
    特定の領域に音響波を送信する音響波送信部と、
    前記光源から出射された前記光が前記特定の領域を含む領域に照射されることにより発生した光音響波を受信して時系列の光音響信号を出力する光音響波受信部と、
    前記音響波送信部から送信された音響波が反射することにより発生したエコーを受信して時系列のエコー信号を出力するエコー受信部と、
    前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号に基づいて、前記特定の領域で発生した光音響波の反射波に対応する成分が低減された光学特性情報を取得する処理部とを有することを特徴とする光音響装置。
  2. 前記処理部は、前記時系列の光音響信号と前記時系列のエコー信号との時系列の差分信号を取得し、該時系列の差分信号を用いて前記被検体の前記光学特性情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
  3. 前記処理部は、前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号の少なくとも一方に重みづけ係数で重み付けした後に前記時系列の差分信号を取得することを特徴とする請求項2に記載の光音響装置。
  4. 前記処理部は、前記時系列の光音響信号と前記時系列のエコー信号と相関を取得し、前記相関が高い光音響信号およびエコー信号の振幅の差が小さくなる前記重み付け係数を設定することを特徴とする請求項3に記載の光音響装置。
  5. 前記処理部は、前記時系列のエコー信号にのみ前記重み付け係数で重み付けした後に前記時系列の差分信号を取得することを特徴とする請求項3または4に記載の光音響装置。
  6. 前記処理部は、前記光音響波が特定の反射体で反射して発生した反射波に対応する光音響信号の受信時刻と、前記送信された音響波が前記特定の反射体で反射して発生したエコーに対応するエコー信号の受信時刻との差が小さくなるように、前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号の少なくとも一方を補正した後に前記差分信号を取得することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光音響装置。
  7. 前記処理部は、前記時系列の光音響信号と前記時系列のエコー信号と相関を取得し、前記相関が高い光音響信号およびエコー信号の受信時刻の差が小さくなるように、前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号の少なくとも一方を補正した後に前記差分信号を取得することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光音響装置。
  8. 前記処理部は、前記時系列のエコー信号から、前記音響波が前記音響波送信部から前記特定の領域まで伝搬する時間に取得したエコー信号を削除することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光音響装置。
  9. 前記処理部は、前記音響波が前記音響波送信部から前記特定の領域まで伝搬するタイミングにエコー信号の取得を開始することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光音響装置。
  10. 前記処理部は、前記時系列の光音響信号に基づいて初期音圧分布を取得し、前記時系列のエコー信号に基づいてエコー音圧分布を取得し、前記初期音圧分布と前記エコー音圧分布との差分分布を取得することを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
  11. 前記処理部は、前記初期音圧分布および前記エコー音圧分布の少なくとも一方に重みづけ係数で重みづけした後に前記差分分布を取得することを特徴とする請求項10に記載の光音響装置。
  12. 前記処理部は、任意の領域の初期音圧値とエコー音圧値との差が小さくなる前記重みづけ係数を設定することを特徴とする請求項11に記載の光音響装置。
  13. ユーザーが表示部に表示された前記初期音圧分布または前記エコー音圧分布から前記任意の領域を指定できるように構成された入力部を更に有することを特徴とする請求項12に記載の光音響装置。
  14. 前記処理部は、前記エコー音圧分布にのみ前記重みづけ係数で重みづけした後に前記差分分布を取得することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の光音響装置。
  15. 前記光音響波受信部および前記エコー受信部は、前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号を同じ受信サンプリング時間で取得し、
    前記処理部は、前記受信サンプリング時間と音速との積よりも大きい最小構成単位で前記初期音圧分布および前記エコー音圧分布を取得することを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の光音響装置。
  16. 前記光音響波受信部および前記エコー受信部は、前記時系列の光音響信号および前記時系列のエコー信号を異なる受信サンプリング時間で取得し、
    前記処理部は、前記異なる受信サンプリング時間のうち、受信サンプリング時間が長い方と音速との積よりも大きい最小構成単位で前記初期音圧分布および前記エコー音圧分布を取得することを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の光音響装置。
  17. 光を出射する光源と、
    音響波を送信する音響波送信部と、
    前記光源から出射された前記光が被検体に照射されることにより発生した光音響波を受信して時系列の光音響信号を出力する光音響波受信部と、
    前記音響波送信部から送信された音響波が反射することにより発生したエコーを受信して時系列のエコー信号を出力するエコー受信部と、
    前記時系列の光音響信号と前記時系列のエコー信号との時系列の差分信号を取得し、該時系列の差分信号を用いて前記被検体の前記光学特性情報を取得する処理部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
  18. 光を出射する光源と、
    音響波を送信する音響波送信部と、
    前記光源から出射された前記光が被検体に照射されることにより発生した光音響波を受信して時系列の光音響信号を出力する光音響波受信部と、
    前記音響波送信部から送信された音響波が反射することにより発生したエコーを受信して時系列のエコー信号を出力するエコー受信部と、
    前記時系列の光音響信号に基づいて初期音圧分布を取得し、前記時系列のエコー信号に基づいてエコー音圧分布を取得し、前記初期音圧分布と前記エコー音圧分布との差分分布を取得する処理部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
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