JP2015071248A - 蒸着フィルム、その製造方法、包装材及び真空断熱体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも片面に積層される蒸着層とを備える蒸着フィルムであって、上記基材フィルムがビニルアルコール系重合体(A)及び飽和ケトン(B)を含み、上記基材フィルムにおける上記飽和ケトン(B)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である。上記飽和ケトン(B)の炭素数としては3から8が好ましい。飽和ケトン(B)としては、アセトン、メチルエチルケトン及び2−ヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記蒸着層が上記基材フィルムの両面に積層されているとよい。上記蒸着層の平均厚みとしては15nm以上150nm以下が好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明の蒸着フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも片面に積層される蒸着層とを備える。この蒸着フィルムは、蒸着層に積層される樹脂コート層、その他の層を備えていてもよい。これらの層については、後に詳述する。
基材フィルムは、ビニルアルコール系重合体(A)及び飽和ケトン(B)を含む。この基材フィルムは、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、ビニルアルコール系重合体(A)、飽和ケトン(B)及びその他の任意成分について詳述する。
ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルエステルに由来する構造単位を有する重合体をケン化したものである。このビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルエステルの単独重合体をケン化した重合体、及びビニルエステルと他の単量体単位との共重合体をケン化した重合体を含む。
飽和ケトン(B)は、蒸着層における蒸着欠陥やクラックの発生、蒸着層の剥離を抑制するものである。ここで、飽和ケトン(B)とは分子内のカルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まないケトンをいう。飽和ケトン(B)は、カルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まない限りは、直鎖状のケトンであっても、分枝状のケトンであっても、分子内に環構造を有するケトンであってもよい。飽和ケトン(B)の分子内のカルボニル基の数は、1であっても2以上であってもよい。
基材フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えばホウ素化合物、共役ポリエン化合物、カルボン酸及びそのイオン、金属イオン、リン化合物、アルカリ金属又はその塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、他の樹脂、高級脂肪族カルボン酸の金属塩等が挙げられる。基材フィルムは、これらの任意成分を2種以上含有してもよく、任意成分の合計含有量としては、基材フィルム中の1質量%以下が好ましい。
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などのホウ酸類;
ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどのホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂などのホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらのうち、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、単に「ホウ酸」と称することもある)がより好ましい。
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。基材フィルムが飽和ケトン(B)と共に共役ポリエン化合物を含有することで、基材フィルムの成形時のフィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色が抑制されるため、当該蒸着フィルムを備える包装材等の外観を向上させることができる。
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。上記共役ポリエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カルボン酸及びそのイオンは、当該樹脂組成物の溶融成形時の耐着色性を向上させるものである。
金属イオンは、包装材料等を成形した場合に層間の接着性を向上させるものである。当該樹脂組成物は、金属イオンを含有することで、包装材料等を成形した場合に層間の接着性を向上させることができ、その結果包装材料等の耐久性を向上させることができる。かかる金属イオンが層間接着性を向上させる理由は必ずしも明らかではないが、隣接する層の一方が、EVOH(A)のヒドロキシル基と反応し得る官能基を分子内に有する場合等に、このヒドロキシル基と官能基との間の結合生成反応が金属イオンの存在によって加速されること等が考えられる。
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制する共に、ロングラン性を向上させるものである。このリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等のリン酸塩などが挙げられる。
アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、上記アルカリ金属の塩としては、例えば1価の金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属錯体等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。基材フィルムにおけるアルカリ金属の含有量としては、20ppm以上1,000ppm以下が好ましく、50ppm以上500ppm以下がより好ましい。
酸化防止剤としては、例えば2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばエチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えばペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(商品名:カーボワックス)等が挙げられる。
滑剤としては、例えばエチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
着色剤としては、例えばカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
充填剤としては、例えばグラスファイバー、ウォラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
熱安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
他の樹脂としては、例えばポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。
高級脂肪族カルボン酸の金属塩としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
基材フィルムは、例えば樹脂組成物を用いて公知のフィルム形成方法を適用して製造することができる。
樹脂組成物は、ビニルアルコール系重合体(A)及び飽和ケトン(B)を含有する。この樹脂組成物は、任意成分として、ホウ素化合物、共役ポリエン化合物、酢酸類、リン化合物等をさらに含有していてもよい。上記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。なお、ビニルアルコール系重合体(A)、飽和ケトン(B)、ホウ素化合物、共役ポリエン化合物、酢酸類、リン化合物及びその他の任意成分の具体例、含有量等については、基材フィルムの場合と同様である。
フィルム形成方法としては、特に限定されず、例えば溶融法、溶液法、カレンダー法等が挙げられ、溶融法が好ましい。溶融法としては、Tダイ法(キャスト法)、インフレーション法が挙げられ、キャスト法が好ましい。
蒸着層は、当該蒸着フィルムにおいて主としてガスバリア性を確保するものである。この蒸着層は、基材フィルム上に積層されている。蒸着層は、基材フィルムの両面に積層されていても、基材フィルム片面のみに積層されていてもよいが、基材フィルムの両面に積層されていることが好ましい。蒸着層を基材フィルムの両面に積層することで、ガスバリア性をより向上させ、ガスバリアの安定性が得られる。すなわち、一方の蒸着層に物理的衝撃等により欠陥が生じても、他方の蒸着層がバリア性を維持することにより、蒸着フィルムとしてのガスバリア性が好適に維持される。
(2)蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を1.1質量%以下にする
(3)蒸着前の基材フィルムの表面をプラズマ処理し改質する
樹脂コート層は、蒸着フィルム製造後の工程、例えばラミネーション等のフィルム加工における屈曲等による蒸着層の損傷を抑制するものである。このような樹脂コート層を備える蒸着フィルムはガスバリア性の低下を抑制できる。樹脂コート層は、ビニルアルコール系重合体を含み、必要に応じて、膨潤性無機層状ケイ酸塩を含んでいてもよい。
その他の層としては、例えば熱可塑性樹脂を主体とする層(以下、「熱可塑性樹脂層」という)、紙層、飽和ケトンの含有量が0.01ppm未満又は100ppm超の蒸着層等が挙げられる。ここで、主体とは、複数の成分を含む場合に最も含有量が多いことを意味し、例えば熱可塑性樹脂を50質量%以上含むことを意味する。
当該蒸着フィルムは、ビニルアルコール系重合体(A)を含む基材フィルム上に蒸着層を積層したものであるため、蒸着時の蒸着抜けの発生、ラミネーション等の蒸着フィルム加工時のクラックの発生を抑え、蒸着層の密着強度に優れる。このため、当該蒸着フィルムは、様々な用途に適用できる。当該蒸着フィルムの用途としては、例えば包装材、真空断熱体等が挙げられる。
当該包装材は、当該蒸着フィルムを備えるものであり、例えば蒸着フィルム又はこの蒸着フィルムを備える積層フィルム等を二次加工することで形成される。当該包装材は、当該蒸着フィルムを備えることで、ガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持される。
縦製袋充填シール袋は、例えば液体、粘稠体、粉体、固形バラ物、これらを組み合わせた形態の食品、飲料物等を包装するために使用される。
真空包装袋は、真空状態で包装することが望まれる用途、例えば食品、飲料物等の保存に使用される。
スパウト付パウチは、液状物質、例えば清涼飲料等の液体飲料、ゼリー飲料、ヨーグルト、フルーツソース、調味料、機能性水、流動食などを包装するために使用される。
ラミネートチューブ容器は、例えば化粧品、薬品、医薬品、食品、歯磨等を包装するために使用される。
容器用蓋材は、畜肉加工品、野菜加工品、水産加工品、フルーツ等の食品などが充填される容器の蓋材である。
真空断熱体は、保冷や保温が必要な用途に使用されるものである。この真空断熱体としては、例えば外包材内にポリウレタンフォーム等の芯材が真空状態で封入されるものが挙げられる。外包材は、例えば少なくとも1層の蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成される一対の積層フィルムを、ヒートシールすることで形成される。
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
核磁気共鳴装置(日本電子社の「超伝導核磁気共鳴装置 Lambda500」)を用い、DMSO−d6を測定溶媒として、1H−NMRにより求めた。
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過したEVOH粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。この希釈溶液を、横河電機社のイオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、カルボン酸及びカルボン酸イオンの量を算出した。なお、定量に際してはモノカルボン酸又は多価カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
カラム :DIONEX社の「IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、電気伝導度検出器)」
溶離液 :1.0mmol/L オクタンスルホン酸水溶液
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量:50μL
乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック製のテフロン(登録商標)製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業社の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社のマイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、乾燥EVOHペレットを分解させた。乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを添加し、DNPH調整溶液を作製する。その後、試料(乾燥樹脂組成物ペレット、基材フィルム又は蒸着フィルム)1gをDNPH調整溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させる。この溶液にアセトニトリルを添加してビニルアルコール系重合体(A)を沈降させ、溶液を濾過・濃縮し、抽出サンプルを得る。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、飽和ケトン(B)の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの飽和ケトン(B)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(東ソー社)
移動相:水/アセトニトリル=52:48(体積比)
検出器:PDA(360nm)、TOF−MS
ロールの全幅80cmにおける中央部から、揮発分測定用の小片を切り出し、熱風乾燥機を用いて105℃で3時間乾燥し、乾燥前後の質量から下記式により揮発分の含有量を求めた。
蒸着フィルムをミクロトームでカットし、断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(エス・アイ・アイナノテクノロジー社の「ZEISS ULTRA 55」)により観察すると共に反射電子検出器を用いて蒸着層の厚みを測定した。
樹脂組成物の試料ペレット20gを100mLガラス製サンプル管に入れ、アルミホイルで口部に蓋をした後、熱風乾燥機内において220℃で30分間加熱した。乾燥機から取り出し、室温で30分間放冷した後、サンプル管を2〜3回振り混ぜた後、アルミホイルの蓋を取り臭気を確認した。試料ペレットの臭気の強さは、以下の基準で評価した。
B: 弱い臭気を感じる
C: 明らかに臭気を感じる
蒸着フィルムのロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m、長さ2mの領域について異なる10箇所で蒸着欠点数を数え、その平均値を1m2あたりの蒸着欠点数とした。蒸着欠点は、以下の基準で評価した。
B:21〜40個/m2
C:41〜60個/m2
D:61〜80個/m2
E:81〜100個/m2
F:101個以上/m2
蒸着フィルムの蒸着層側の表面に、ドライラミネート用接着剤(三井化学社の「タケラックA−385」と「タケラックA−50」とを6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を、第一理化社のバーコーターNo.12を用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、80℃に加熱したニップロールにて、PETフィルム(東洋紡社の「E5000」:厚みが12μm)とラミネートを行った。このとき、フィルムの半分の領域は、アルミホイルを挟むことでフィルム同士が貼りあわされない部分を設定した。その後、40℃で72時間養生し、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムをアルミ蒸着の境目を中心として100mm×15mmの短冊に裁断し、引っ張り試験機により引っ張り速度10mm/分にてT型剥離試験を5回行った。得られた測定値の平均値を密着強度とした。密着強度は以下の基準で評価した。
B:450以上500g/15mm未満
C:400以上450g/15mm未満
D:350以上400g/15mm未満
E:350g/15mm未満
酸素透過度は、蒸着フィルムの一部を切り取った試料を用いて、JIS K7126(等圧法):2006に準拠し、酸素透過率測定装置(モダンコントロール社の「MOCON OX−TRAN2/20」:検出限界値0.01mL/m2・day・atm)を用いて測定した。測定条件は、温度が40℃、酸素供給側の湿度が90%RH、キャリアガス側の湿度が0%RH、酸素圧が1気圧、キャリアガス圧力が1気圧とした。蒸着フィルムの酸素透過率測定装置への設置方法は、基材フィルムの片面に蒸着層が形成された蒸着フィルムでは蒸着層の表面側を酸素供給側、基材フィルムの露出面側をキャリアガス側とした。蒸着フィルムの両面が蒸着層の場合は、酸素供給側とキャリアガス側とを選んで設置していない。
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン−酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル 91.2kg
メタノール 31.9kg
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル濃度 2.0g/L(メタノール溶媒)
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル供給量 828mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.59MPa
重合時間 5.0時間
重合時にアセトン濃度が添加する酢酸ビニルに対して0.5ppmとなるようにアセトンを供給した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。
[調製例1]
合成例1で得たペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。この溶液にアセトン61mg及びソルビン酸105mgを添加し、さらに1時間攪拌してアセトン及びソルビン酸を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。この多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、乾燥樹脂組成物ペレットを得た。この乾燥樹脂組成物ペレットにおける飽和ケトン(B)の含有量は、上述の定量方法に従い測定した。なお、飽和ケトン(B)の添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。樹脂組成物中のエチレン含有量及びけん化度を上記に従い分析したところ、エチレン含有量は32.0mol%、けん化度は99.98mol%以上であった。また上記に従い分析した結果、酢酸及び酢酸イオンを350ppm、ナトリウムイオンを100ppm、カリウムイオンを40ppm、マグネシウムイオンを50ppm、リン酸化合物をリン酸根換算で100ppm、ホウ素化合物をホウ素元素換算で200ppm含んでいた。
合成例2で得たペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。この溶液にソルビン酸105mgを添加し、さらに1時間攪拌してソルビン酸を完全に溶解させて樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。この多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、乾燥樹脂組成物ペレットを得た。なお、この樹脂組成物中のアセトンの含有量は、検出限界以下であった。
[実施例1]
(基材フィルムの調製)
上記調製例1で得た樹脂組成物100質量部に対して、アセトンを2.9ppm、合成シリカ(富士シリシア化学社の「サイリシア310P」;レーザー法で測定された平均粒子径2.7μm)を0.03質量部になるようにタンブラーを用いてドライブレンドを行い、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹付け、厚さ170μmの未延伸フィルムを得た。このフィルムを80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸設備により90℃にて縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、全幅3.6mの二軸延伸熱フィルム(基材フィルム)を得た。この基材フィルムを巻き返しながら、フィルム全幅における中央位置を中心にして幅80cmをスリットし、長さ4000mのロールを得た。さらに、連続して基材フィルムを製膜し、長さ4000mのロールを合計100本採取した。得られた基材フィルムの揮発分は0.15質量%であった。また、基材フィルムの調製時の臭気は無かった。この基材フィルムは、吸湿を防止するためにアルミニウム箔ラミネートフィルムで梱包した。
基材フィルムに対して、バッチ式蒸着設備(日本真空技術社の「EWA−105」)を用い、二軸延伸フィルムの表面温度38℃、二軸延伸フィルムの走行速度200m/分として二軸延伸フィルムの片面にアルミニウムを蒸着させることで蒸着フィルムを得た。蒸着層のアルミニウムの厚さは70nmであった。
表1に示すようにアセトンの含有量、蒸着時の基材フィルム表面温度、蒸着層の厚みを変更する以外は実施例1と同様に蒸着フィルムを作製した。なお、実施例2〜5の基材フィルム形成時の臭気がないか弱い臭気を感じる程度であった。一方、比較例3,4の基材フィルム形成時に明らかに臭気を感じた。
飽和ケトンとして、アセトンに代えてメチルエチルケトンを用いて二軸延伸フィルム(基材フィルム)を作製した以外は実施例1と同様とし、蒸着フィルムを調製した。なお、基材フィルム形成時の臭気は無かった。得られた蒸着フィルムについて、蒸着フィルムからの揮発分の含有量を測定すると共に、蒸着欠点及び蒸着層の密着強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。実施例6では、評価項目においても良好な結果が得られた。
飽和ケトンとしてアセトンに代えて2−ヘキサノンを用いて二軸延伸フィルム(基材フィルム)を作製した以外は実施例1と同様とし、蒸着フィルムを調製した。なお、基材フィルム形成時の臭気は無かった。得られた蒸着フィルムについて、蒸着フィルムからの揮発分の含有量を測定すると共に、蒸着欠点及び蒸着層の密着強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。実施例7では、評価項目においても良好な結果が得られた。
実施例1と同様にして得られた二軸延伸フィルムについて、もう片面に蒸着層を形成することで蒸着フィルムを得た。蒸着層の形成条件は、実施例1と同様とした。なお、基材フィルム形成時の臭気は無かった。得られた蒸着フィルムについて、蒸着フィルムからの揮発分の含有量を測定すると共に、蒸着欠点及び蒸着層の密着強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。実施例15では、評価項目においても良好な結果が得られた。
上記調製例2で得られた樹脂組成物を用い、飽和ケトン(B)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして蒸着フィルムを作製した。なお、基材フィルム形成時の臭気がやや強かった。得られた蒸着フィルムについて、蒸着フィルムからの揮発分を測定すると共に、蒸着欠点及び蒸着層の密着強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。比較例1では、いずれの評価項目においても良好な結果が得られなかった。
基材フィルムの揮発分が0.15質量%である以外は比較例1と同様にして蒸着フィルムを作製した。なお、基材フィルム形成時の臭気がやや強かった。得られた蒸着フィルムについて、蒸着欠点数、蒸着層の密着強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。比較例2では、いずれの評価項目においても良好な結果が得られなかった。
実施例1の蒸着フィルムの片面にPETフィルム(東洋紡社の「E5000」:厚み12μm)を積層すると共に蒸着フィルムのもう片面に無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)(三井化学東セロ社の「RXC−21」:厚み50μm)を積層して積層フィルムを得た。この積層フィルムについて、酸素透過度を測定した。その結果を表2に示す。
層構成を表2に示す通りとした以外は実施例16と同様にして積層フィルムを調製し、酸素透過度を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2に示す蒸着PETフィルムとしては東レフィルム加工社の「VM−PET 1510」(厚み12μm)を使用した。
Claims (8)
- 基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも片面に積層される蒸着層とを備える蒸着フィルムであって、
上記基材フィルムがビニルアルコール系重合体(A)及び飽和ケトン(B)を含み、
上記基材フィルムにおける上記飽和ケトン(B)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である蒸着フィルム。 - 上記飽和ケトン(B)の炭素数が3から8である請求項1に記載の蒸着フィルム。
- 上記飽和ケトン(B)が、アセトン、メチルエチルケトン及び2−ヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の蒸着フィルム。
- 上記蒸着層が上記基材フィルムの両面に積層される請求項1、請求項2又は請求項3に記載の蒸着フィルム。
- 上記蒸着層の平均厚みが15nm以上150nm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蒸着フィルムの製造方法であって、
上記基材フィルムに上記蒸着層を形成する工程を備え、
この工程における基材フィルムの表面温度が、60℃以下である蒸着フィルムの製造方法。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える包装材。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える真空断熱体。
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