JP2015067810A - インクセット、捺染方法、及び布帛 - Google Patents

インクセット、捺染方法、及び布帛 Download PDF

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Abstract

【課題】ナイロン等のポリアミド繊維を主体とする布帛の染色において、インク組成物間の染着性のバランスに優れたインクセット、並びに、色味のバランス優れた捺染が行え得る捺染方法及び優色味のバランスれた染色画像を有する布帛の提供。【解決手段】フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料、テトラアルキルアンモニウムイオン或いはアルキルピリジニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオン、及び水を含む第1のインク組成物と、フタロシアニン骨格以外の染料と、水を含む第2のインク組成物とを含み、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられるインクセット、これを用いた捺染方法及び布帛。【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット、捺染方法、及び布帛に関する。
例えば、絹、羊毛、ナイロン等のポリアミド繊維を主体とする布帛に画像を形成する場合、酸性染料を用いる方法が古くから知られており、酸性染料としてフタロシアニン系酸性染料を用いる方法も多く採用されている。
具体的には、例えば、特許文献1では、インクジェット捺染用インクとして、フタロシアニン系酸性染料を含む酸性染料、水、エチレングリコールを含有するものが開示されている。
一方、フタロシアニン系染料を用いたインク組成物としては、例えば、特許文献では、スルフォン酸、カルボン酸、フェノール基の酸性基を有する染料と、該染料の酸性基の対イオンとして4級アンモニウムイオンと、を含むインクジェット記録用水性インク組成物が開示されている。
特開2004−292522号公報 特公平2−3827号公報
従来から提案されているフタロシアニン染料は、ナイロン等のポリアミド繊維を主体とする布帛を染める場合において、フタロシアニン骨格を有しない他の染料と比べ、染色スピードが遅いことから、所望の染色濃度を得るために染色時間が多くかかってしまう、又は、染色時間が短くなると染色濃度が低くなってしまう。
そのため、上記のフタロシアニン染料を用いたインク組成物と、フタロシアニン骨格を有しない他の染料を用いた他のインク組成物と、を含むインクセットの場合、両者のインク組成物間で所望の染色濃度を得るための時間にばらつきが生じてしまい、染色時間を一定にした際、色味のバランスが悪くなってしまうと、いった課題を有している。一方で、かかるインクセットの場合、所望の染色濃度が得るために染色時間を長くすると、製造コストが増大するといった懸念もある。
以上のことから、インク組成物間での染着性のバランスに優れたインクセットが求められているのが現状である。
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、下記の目的を達成することを課題とする。すなわち、
本発明の目的は、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられ、インク組成物間の染着性のバランスに優れたインクセットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、色味のバランスに優れた捺染が行え得る捺染方法、及び色味のバランスに優れた染色画像を有する布帛を提供することにある。
本発明は、フタロシアニン染料と特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンとを共存させたインク組成物とすることで、かかるインク組成物の染着性が特異的に向上し、フタロシアニン骨格を有しない他の染料を用いた他のインク組成物との間で、染着性のバランスの悪さが改善されるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
上記の課題を達成するための具体的な手段は、以下に示す通りである。
<1>
フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料、下記一般式(1)〜(4)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1種のイオン、及び水を含む第1のインク組成物と、
フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料、及び水を含む第2のインク組成物と、
を少なくとも含み、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられるインクセット。
〔一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R11〜R14のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R21〜R25のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。R26は、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。
一般式(3)中、R31〜R33は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R31〜R33のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR34−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR35−、−CONR36−、−SiR37 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R34〜R37は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。
一般式(4)中、R41〜R45は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R41〜R45のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR46−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR47−、−CONR48−、−SiR49 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R46〜R49は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。〕
<2>
第1のインク組成物中のフタロシアニン系染料が、下記一般式(P1)又は(P2)で表される化合物である<1>に記載のインクセット。
〔一般式(P1)中、X〜Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。P〜Pは各々独立に芳香環を表し、該芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、及びカルボニルアミノ基から選択される置換基を有していてもよい。n〜nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。但し、一般式(P1)の構造中には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれる。
一般式(P2)中、Y101〜Y112は各々独立に−CH−又は窒素原子を表す。但し、Y101〜Y104、Y105〜Y108、及びY109〜Y112のそれぞれの群中の窒素原子の数は0〜2の整数である。R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。また、R101、R102、及びR103は、そのうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR201−、−CONR201−、−SiR201 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。L101の一方の結合手は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合し、また、他方の結合手は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO102は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合している、又は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。している。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子又は1価の対カチオンを表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の整数を表す。〕
<3>
第2のインク組成物中のフタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料が、アリール若しくはヘテリルアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料、キノン系染料、キノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料、カルボニウム染料、ポリメチン染料、及びインジゴ・チオインジゴ染料からなる群より選択される少なくとも1種の染料である<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4>
第2のインク組成物中のフタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料が、下記一般式(D1)〜(D6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の染料である<1>〜<3>のいずれか1に記載のインクセット。
〔一般式(D1)及び(D2)中、A、B、及びCは各々独立に、芳香族基、又は複素環基を表す。また、nは1以上の整数である。但し、A、B、及びCで表される芳香族基、又は複素環基には少なくとも1つの−(SOM)が導入される。Mは、水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH を表す。
一般式(D3)中、R301〜R304は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R305〜R317は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R305〜R317のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R301〜R317のうち少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m1は1〜13の整数を表す。
一般式(D4)中、R401〜R404は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R405〜R415は各々独立にベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R405〜R415のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R405〜R415の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m2は1〜11の整数を表す。
一般式(D5)中、R501〜R506は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、X及びXは各々独立に、−NR507508、−OR509、又はヒドロキシ基を表す。R501〜R506、X、及びXのうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R501〜R506の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m3は1〜6の整数を表す。また、R507、R508、及びR509は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
一般式(D6)中、R601及びR602は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R603〜R609は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R603〜R606のうちいずれか2つ、また、R607〜R609のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R601〜R609の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m4は1〜7の整数を表す。〕
<5>
<1>〜<4>のいずれか1に記載のインクセットを用いて、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛を染色する捺染方法。
<6>
<1>〜<4>のいずれか1に記載のインクセットにより捺染された布帛。
本発明によれば、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられ、インク組成物間の染着性のバランスに優れたインクセットが提供される。
また、本発明によれば、色味のバランスに優れた捺染が行え得る捺染方法、及び色味のバランスに優れた染色画像を有する布帛が提供される。
以下、本発明のインクセット、これを用いた本発明の捺染方法、及び布帛について詳細に説明する。
<インクセット>
本発明のインクセットは、フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料、後述する一般式(1)〜(4)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1種のイオン、及び水を含む第1のインク組成物と、
フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料、及び水を含む第2のインク組成物と、
を少なくとも含み、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられることを特徴とする。
本発明では、第1のインク組成物中で、フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料と、一般式(1)〜(4)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1種のイオンと、を共存させることを特徴としている。
このような第1のインク組成物を、フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料を含む第2のインク組成物と組み合わせてインクセットとすることで、染着性のバランスに優れたインクセットが構成される。
このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のようなことが考えられる。
従来から提案されているフタロシアニン染料は、分子量が大きいこと、会合し易い構造であり、会合することで見かけの分子量が更に大きくなること、等から、布帛の繊維中へ入り込み難く、染色スピードが遅い。
一方、フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料は、フタロシアニン系染料に比べ、比較的分子量が小さいこと等により、フタロシアニン染料と比べ染色スピードは早い傾向がある。
このような染色スピードが異なる染料をそれぞれ含有するインク組成物を組み合わせたインクセットの場合、両者のインク組成物間で所望の染色濃度を得るための時間にばらつきが生じてしまい、染色時間を一定にした際、色味のバランスが悪くなってしまう。また、所望の染色濃度が得るために染色時間を長くすると、製造コストが増大するといった懸念もある。
このような課題に対し、本発明者等は、フタロシアニン系染料を含む第1のインク組成物に、特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンを含ませることで、第1のインク組成物の染着性が特異的に向上するといった知見を得た。
この染着性の向上の理由については、明らかではないが、以下のような現象がとらえられている。
即ち、フタロシアニン系染料と特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンとを共存させたインク組成物を布帛に適用すると、布帛の表面付近に染料が局在化し、固定化されているといった現象がとらえられている。このように表面に多くの染料が存在することで、その後のスチーム工程でより多くの染料が繊維内部に染着されることになり、優れた染着性を示すことになっているものと推測される。
本発明で用いる、特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンは、ナトリウムイオン等の金属イオンに比べ、疎水的なため、被染色物であるポリアミド系繊維を含む布帛の疎水的な部分に吸着し易い。そして、吸着した特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンと染料(アニオン染料)とが静電的に引き合うことで、被染色物表面に染料が接近及び吸着し易くなり、吸着効率を高められ、このような染料の局在化や固定化に寄与しているものと考えられる。
上述のように、第1のインク組成物の染着性が高まることで、フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料を含む第2のインク組成物との間で、所望の染色濃度を得るための時間のばらつきを低減させることができ、結果として、染着性のバランスに優れたインクセットとなると考えられる。
ポリアミド系繊維であるナイロンの捺染においては、酸性の条件下で行われることが多く、この条件下では、特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンの添加は、一般に染料の溶解性に不利に働き、染色性能が低下することも考えられる。しかしながら、本発明では、詳細な作用は不明であるものの、特定の4級アンモニウムイオン又はピリジニウムイオンを用いているのにも関わらず、優れた染着性が得られることも特徴である。
以下、本発明のインクセットを構成する第1のインク組成物、及び第2のインク組成物について順に説明する。
〔第1のインク組成物〕
第1のインク組成物は、(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料と、(B)一般式(1)〜(4)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1種のイオンと、(C)水を含有しており、必要に応じて、更に他の成分を含有していてもよい。
[(B)一般式(1)〜(4)で表されるイオン]
本発明では、第1のインク組成物中に、(B)下記一般式(1)〜(4)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1種のイオンを含むことを特徴としている。
以下、一般式(1)〜(4)で表される各イオンを、適宜、「(B)特定イオン」と総称し、説明する。
まず、下記一般式(1)で表されるイオンについて説明する。下記一般式(1)で表されるイオンは、4級アンモニウムイオンである。
上記一般式(1)において、R11〜R14は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R11〜R14のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
11〜R14で表される炭素数1〜20の1級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の1級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の1級アルキル基がより好ましく、具体的には、エチル基、ブチル基、ヘプチル基、デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
11〜R14で表される炭素数1〜20の2級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の2級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の2級アルキル基がより好ましく、具体的には、イソプロピル基等が挙げられる。
11〜R14で表される炭素数1〜20の3級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の3級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の3級アルキル基がより好ましく、具体的には、t−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。
これらの中でも、R11〜R14は、1級アルキル基であることが好ましい。
上記一般式(1)において、R11〜R14は、全てに同じアルキル基が導入された構造が好ましい。
また、上記したアルキル基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(具体的には、Cl、Br、F等)、アリール基(具体的には、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
なお、R11〜R14で表されるアルキル基は、未置換であることが好ましい。
以下に、前記一般式(1)で表されるイオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次いで、下記一般式(2)で表されるイオンについて説明する。下記一般式(2)で表されるイオンは、ピリジニウムイオンである。
上記一般式(2)において、R21〜R25は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R21〜R25のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
21〜R25で表される炭素数1〜20の1級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の1級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の1級アルキル基がより好ましく、具体的には、エチル基、ブチル基、ヘプチル基、デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
21〜R25で表される炭素数1〜20の2級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の2級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の2級アルキル基がより好ましく、具体的には、イソプロピル基等が挙げられる。
21〜R25で表される炭素数1〜20の3級アルキル基の中でも、炭素数1〜12の3級アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の3級アルキル基がより好ましく、具体的には、t−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。
これらの中でも、R21〜R25は、各々独立に、水素原子、又は1級アルキル基(具体的には、メチル基等)であることが好ましい。
前記一般式(2)において、R26は、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。これらの1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基は、R21〜R25で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基と好ましい例が同じである。
これらの中でも、R26は、1級アルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基等)であることが好ましい。
また、上記したアルキル基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(具体的には、Cl、Br、F等)、アリール基(具体的には、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
なお、R21〜R26で表されるアルキル基は、未置換であることが好ましい。
以下に、前記一般式(2)で表されるイオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
続いて、下記一般式(3)で表されるイオンについて説明する。下記一般式(3)で表されるイオンは、4級アンモニウムイオンである。
上記一般式(3)において、R31〜R33は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R31〜R33のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
31〜R33で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基は、前記一般式(1)のR11〜R14で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基と同義であり、好ましい例も同様である。
上記一般式(3)において、Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR34−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR35−、−CONR36−、−SiR37 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R34〜R37は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R34〜R37で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基は、前記一般式(1)のR11〜R14で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基と同義であり、好ましい例も同様である。
としては、ナイロン等の布帛の疎水部との親和性の点から、アルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、かかるアルキレン基は未置換であることが好ましい。
また、上記したアルキル基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(具体的には、Cl、Br、F等)、アリール基(具体的には、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
なお、R31〜R33で表されるアルキル基は、未置換であることが好ましい。
以下に、前記一般式(3)で表されるイオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
更に続いて、下記一般式(4)で表されるイオンについて説明する。下記一般式(4)で表されるイオンは、ピリジニウムイオンである。

上記一般式(4)において、R41〜R45は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R41〜R45のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
41〜R45で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基は、前記一般式(2)のR21〜R25で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基と同義であり、好ましい例も同様である。
上記一般式(3)において、Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR46−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR47−、−CONR48−、−SiR49 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R46〜R49は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R46〜R49で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基は、前記一般式(1)のR11〜R14で表される1級アルキル基、2級アルキル基、及び3級アルキル基と同義であり、好ましい例も同様である。
としては、ナイロン等の布帛の疎水部との親和性の点から、アルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜12以下のアルキレン基がより好ましく、かかるアルキレン基は未置換であることが好ましい。
また、上記したアルキル基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(具体的には、Cl、Br、F等)、アリール基(具体的には、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
以下に、前記一般式(4)で表されるイオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(B)一般式(1)〜(4)で表されるイオン(特定イオン)は、本発明の効果を得るために、第1のインク組成物中に、(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料と共存していればよい。
この共存させるためには、後述する(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料が、対イオンとして(B)特定イオンを備える染料であれば、かかる染料を用いて第1のインク組成物を調製すればよい。
また、その他の方法として、(B)特定イオンとフタロシアニン系染料以外の対イオンとによる塩を、(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料と共に用いて第1のインク組成物を調製する方法を用いてもよい。
本発明では、上記の2つの方法のいずれの方法を採用してもよいが、前者の方法が好ましい。
対イオンとして(B)特定イオンを備える、(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料(β)は、所望の構造を有するフタロシアニン系染料を合成した後(入手した後)、対イオンの交換を行うことにより所望の(B)特定イオンを導入すればよい。
(B)特定イオンとフタロシアニン系染料以外の対イオンとの塩(α)を添加し、第1のインク組成物中に(B)特定イオンを含ませる方法の場合には、塩を形成するために用いられるフタロシアニン系染料以外の対イオンとして、以下に示されるものが挙げられる。
即ち、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、等が挙げられ、中でも、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましい。
(B)特定イオンの第1のインク組成物中の濃度(含有量)は、インク組成物に対し、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
0.1質量%以上であると、第1のインク組成物の染着性が高まり、一方、20質量%以下であると、インクジェットに使用する場合につまりなどの問題が起こり難くなる。
[(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料]
本発明では、第1のインク組成物中に、(A−1)フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料を含むことを特徴としている。
以下、フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料を、単に、適宜、「(A−1)フタロシアニン系染料」と称し、について詳細に説明する。
このフタロシアニン系染料としては、フタロシアニン骨格を有している染料であれば、如何なるものも用いられるが、フタロシアニン系酸性染料が好ましく用いられる。
本発明では、特に、(A−1)フタロシアニン系染料としては、色相が良好であり堅牢性に優れる点から、以下に示される一般式(P1)又は(P2)で表される化合物が好ましい。
まず、一般式(P1)で表される化合物について説明する。
上記一般式(P1)において、X〜Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。P〜Pは各々独立に芳香環を表し、該芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、及びカルボニルアミノ基から選択される置換基を有していてもよい。nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。但し、一般式(P1)の構造中には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれる。
一般式(P1)において、X〜Xはシアン領域の発色濃度(OD)を低下させない点において、酸素原子であることが好ましい。
一般式(P1)において、R〜Rで表されるアルキル基及びアリール基は、後述する一般式(I)中、R〜Rで表されるアルキル基及びアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(P1)において、R〜Rで表されるヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル等が挙げられる。
一般式(P1)において、P〜Pで表される芳香環は、ヘテロ原子を有していてもよい縮環可能な芳香環を表す。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピリミジン環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾチアゾール環、インドール環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、又はピラジン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
〜Pで表される4つの芳香環のうち、少なくとも3つはベンゼン環であることが好ましい。4つのうち3つがベンゼン環であると、染料の吸収が600nm付近になるため、シアン領域の発色濃度(OD)が低下しにくい。
〜Pは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、及びカルボニルアミノ基から選択される置換基を有していてもよく、後述する、フタロシアニン骨格が更に有していてもよい置換基Tと同義である。
一般式(P1)におけるMは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。一般式(P1)において、Mで表される金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物は、後述する一般式(I)におけるものと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(P1)の構造中には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれるが、かかるイオン性親水性基は、後述する一般式(I)におけるイオン性親水性基と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(P1)において、n〜nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。1つ以上導入されないと、本発明の効果である耐光性を維持することができない。好ましくは、n〜nが各々独立に0〜3の整数を表し、n〜nの総和が4未満であり、より好ましくは、n〜nが各々独立に0〜3の整数を表し、n〜nの総和が2〜3である。n〜nの総和が2〜3であると、シアンとしての色相が良好である。
なお、一般式(P1)で表される化合物は、混合物として合成されるため、n〜nの総和はかかる混合物の平均値となる。
一般式(P1)で表される化合物は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。

一般式(I)中、R〜Rは、各々独立に、スルホ基、アルキル基、アリール基、又は−XR10を表す。ここで、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。R10はアルキル基又はアリール基を表す。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。n〜nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。但し、一般式(I)の構造に、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれ、R〜Rの少なくとも1つは−XR10であり、且つ、R10が少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
なお、R〜R、R10、及びフタロシアニン骨格は、更に置換基を有していてもよい。
一般式(I)で表される化合物には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれる。このイオン性親水性基の数が2未満であると、化合物(染料)が水に溶解せず、インク組成物が得られない。
一般式(I)で表される化合物が有するイオン性親水性基の数は、好ましくは2〜3である。このように、イオン性親水性基の数が2〜3であると、シアン領域の発色濃度(OD)が低下しにくい。
イオン性親水性基としては、具体的には、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物が、分子内に、イオン性親水性基として、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基を有している場合は、これらの基は、必要に応じて、対カチオンを有していてもよい。対カチオンとしては、例えば、Li、Na、K等の金属イオン、前述した(B)特定イオンを含む窒素の4級塩構造を有する基、リンの4級塩構造を有する基が用いられる。
なお、一般式(I)で表される化合物は、分子構造内のどこかにイオン性親水性基を2つ以上有していればよい。具体的には、フタロシアニン骨格がイオン性親水性基を置換基として有し、フタロシアニン骨格にイオン性親水性基が直接結合していてもよいし、また、後述するR〜R、又はR10がイオン性親水性基を置換基として有していてもよい。分子構造内に2つ以上有するイオン性親水性基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
イオン性親水性基としては、スルホ基が最も好ましい。
以下、一般式(I)で表される化合物は、イオン性親水性基がスルホ基である態様を代表に説明するが、該説明は、イオン性親水性基が、カルボキシル基、リン酸基等のスルホ基以外の基である場合にも当てはまる。
なお、スルホ基、及び塩を形成したスルホ基(スルホン酸塩基)を総称して「SOZ」とも表す。SOZにおいて、Zは水素原子又は1価の対カチオンを表す。Zで表される1価の対カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH 等や、前述した(B)特定イオンが挙げられる。
一般式(I)中、R〜Rで表されるスルホ基は、既述のように塩を形成していてもよい。R〜Rが−SOZで表されるとき、−SOZはフタロシアニン骨格(Pc)に直接結合しており、このような化合物はPc−SOZで表される構造を有する。
なお、後述するように、一般式(I)で表される化合物は、−SOZがフタロシアニン骨格に直接結合していないことが好ましい。
一般式(I)中、R〜Rで表されるアルキル基としては、炭素原子数が1〜12のアルキル基が挙げられ、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。
中でも、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数は1〜8が好ましい。
一般式(I)中、R〜Rで表されるアリール基としては、炭素原子数が6〜12のアリール基が挙げられる。
具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、更に置換基を有していてもよい。
中でも、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
一般式(I)中の−XR10におけるXは、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)を表すが、シアン領域の発色濃度(OD)を低下させない点において、酸素原子であることが好ましい。
一般式(I)中の−XR10において、R10で表されるアルキル基としては、炭素原子数が1〜12のアルキル基が挙げられ、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。
中でも、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。また、炭素原子数は1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。
一般式(I)中の−XR10において、R10で表されるアリール基としては、炭素原子数が6〜12のアリール基が挙げられる。
具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、更に置換基を有していてもよい。
中でも、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
なお、一般式(I)で表される化合物は、一般式(I)におけるR〜Rの少なくとも1つが−XR10であり、且つ、R10が少なくとも1つのスルホ基を有する構造を有する。該スルホ基は塩を形成していてもよい。
以下「−XR10で表され、且つ、R10が少なくとも1つのスルホ基を有する基」を、「特定スルホ基」とも称する。
特定スルホ基は、下記構造式(s−1)で表すことができる。
−X−R11(SOZ)m (s−1)
〔構造式(s−1)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Zは水素原子又は1価の対カチオンを表し、mはSOZの数を表す。
11は、炭素原子数が1〜12であるm+1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素原子数が6〜12であるm+1価の芳香族炭化水素基である。〕
構造式(s−1)中のR11は、一般式(I)中のR10から水素原子をm個取り除いたm+1価の基に相当し、R11の炭素原子数の好ましい態様は、一般式(I)中のR10に順ずる。すなわち、R11が脂肪族炭化水素基である場合、好ましい炭素原子数は、1〜8であり、より好ましい炭素原子数は、1〜4である。
構造式(s−1)中のmは、R11に結合し得るSOZの数であり、1以上の整数を選択し得る。
一般式(I)におけるR〜Rは、1つのみが特定スルホ基であってもよいし、全てが特定スルホ基であってもよい。また、一般式(I)で表される化合物が分子内にR〜Rをそれぞれ複数有する場合は、複数のR等は、1つのみが特定スルホ基であってもよいし、全てが特定スルホ基であってもよい。
一般式(I)で表される化合物が有するSOZ(特定スルホ基を含む)の数は、化合物(染料)の水への溶解性の観点から、全部で2以上であるが、特定スルホ基〔X−R11(SOZ)m〕の数は、その中でも1つ以上あればよい。一般式(I)で表される化合物が特定スルホ基を有することで、ポリアミド系繊維であるナイロンの捺染を行なった場合に、耐光性を得ることができる。
特定スルホ基の数は、4未満であることが好ましい。特定スルホ基の数が4未満であることで、染料の吸収波長が長波長側にシフトし難く、緑色を呈し難くなるため、シアン領域の発色濃度(OD)が低下しにくい。特定スルホ基の数は、2〜3であることがより好ましい。
一般式(I)中、n〜nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。好ましくは、n〜nが各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和が1〜4であり、より好ましくは、n〜nが各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和が2〜4である。更に好ましくは、n〜nが各々独立に0〜3の整数を表し、n〜nの総和が2〜3である。
なお、R〜R、R10、及びフタロシアニン骨格が更に有していてもよい置換基としては、下記の置換基Tを挙げることができる。
置換基Tとしては、
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子);
炭素数1〜12の直鎖状、又は、分岐状鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、炭素数7〜18のアラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、炭素数2〜12のアルケニル基(例えば、フェニルビニル)、炭素数2〜12の直鎖状、又は、分岐鎖状アルキニル基(例えば、アセチニル)、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルケニル基(例えば、シクロヘキセニル);
炭素数6〜12の単環又は多環のアリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル、ナフチル);
単環又は多環のヘテロ環基(例えば、5員環の単環としては、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、6員環の単環としては、2−ピリジル、3−ピリジル、2−ピリミジニル、多環としては、2−ベンゾチアゾリル);
炭素数6〜12のアルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ);
炭素数6〜12のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル);
アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド);
炭素数6〜12のアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ);
アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ;
ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド);
スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ);
炭素数6〜12のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ);
炭素数6〜12のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ);
炭素数6〜12のアルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ);
スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカン);
カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル);
スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル);
スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル);
炭素数6〜12のアルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル);
ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ);
アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ);
アシルオキシ基(例えば、アセトキシ);
カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ);
シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ);
炭素数6〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ);
イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミ);ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ);
スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル);ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル);
炭素数6〜12のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル);
アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル);
イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、4級アンモニウム基);
その他シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、カルボニルアミノ基等が挙げられる。
一般式(I)中、Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。
Mで表される金属元素としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。
Mで表される金属酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。
また、Mで表される金属水酸化物としては、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)等が好ましく挙げられる。
更に、Mで表される金属ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。
上記の中でも、一般式(I)におけるMは、金属元素であることが好ましく、Cu、Ni、Zn、又はAlであることがより好ましく、Cuであることが最も好ましい。
一般式(I)におけるR〜R、R10、n〜n、及びMの好ましい組み合わせは、R〜R、R10、n〜n、及びMそれぞれの好ましい態様の組み合わせである。
一般式(I)におけるR〜Rとしては、上記の中でも、アルキル基、アリール基、又は上記の−XR10であることが好ましい。すなわち、スルホ基又は塩を形成したスルホ基(すなわち、−SOZ)が直接フタロシアニン骨格に結合していないことが好ましい。−SOZが直接フタロシアニン骨格に結合しないことで、ポリアミド系繊維であるナイロン捺染の際に、耐光性がより向上する。
例えば、下記化合物(A−1)及び(A−2)は、いずれもフタロシアニン骨格(構造式Pcで表される骨格において、MがCu)に、「フェノキシ2つ」と塩を形成したスルホ基「スルホン酸Na」を4つ有している。
化合物(A−1)は、フタロシアニン骨格に結合するフェノキシ基のベンゼン環にSONaが結合しており、一般式(I)で表される化合物である。
化合物(A−2)は、フェノキシ基のベンゼン環に結合したSONaが2つあるため、化合物(A−1)と同様に一般式(I)で表される化合物であるが、化合物(A−2)は、更にフタロシアニン骨格に直接結合したSONaも2つ有している。
化合物(A−1)と化合物(A−2)との対比においては、化合物(A−2)を含有する第1のインク組成物を用いた捺染よりも、化合物(A−1)を含有する第1のインク組成物を用いた捺染の方が、ポリアミド系繊維であるナイロンに捺染したときのナイロン上の染色部の耐光性が良好であった。そのため、化合物(A−1)と化合物(A−2)との対比においては、化合物(A−1)の構造の方が好ましい。
したがって、一般式(I)におけるR〜Rは、−XR10であることがより好ましい。このとき、−XR10は、R10が少なくとも1つのスルホ基を有する−XR10、すなわち、構造式(s−1)〔−X−R11(SOZ)m〕で表される特定スルホ基であることが好ましい。
具体的には、一般式(I)で表される化合物は、一般式(II)で表される染料であることが好ましい。
一般式(II)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Zは水素原子又は1価の対カチオンを表し、mはSOZの数を表す。
11は、炭素原子数が1〜12であるm+1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素原子数が6〜12であるm+1価の芳香族炭化水素基である。
Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。nは1〜16の整数を表し、mとnとの積(m×n)が2以上である。
一般式(II)における、X、Z、m、R11は、既述の構造式(s−1)におけるX、Z、m、R11と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(II)における、Mは、一般式(I)におけるMと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(II)における、nは、フタロシアニン骨格が有する4つのベンゼン環に置換し得る特定スルホ基の数であり、最大で16である。但し、一般式(I)で表される化合物(一般式(II)で表される染料)は、分子構造内に少なくとも2つのスルホ基を有するため、mとnとの積(m×n)は2以上である。
また、前記一般式(P1)で表される化合物は、下記一般式(Y)で表される化合物であることも好ましい。
一般式(Y)中、X31は、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、又はカルボニルアミノ基を表し、好ましくはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、スルホ基、又はスルホニル基を表し、より好ましくはアリールオキシ基、スルホンアミド基、スルホ基、又はスルホニル基を表す。
一般式(Y)中、X31が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、一般式(Y)中、X31で表される上記の基は、上述のフタロシアニン骨格が更に有していてもよい置換基と同義である。
一般式(Y)で表される化合物には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれる。一般式(Y)におけるイオン性親水性基は、上述の一般式(I)におけるイオン性親水性基と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(Y)中、Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。シアン領域の発色濃度(OD)を低下させない点において、酸素原子であることが好ましい。
一般式(Y)中、Mは、金属元素であるCu、Zn、Ni、又はCoを表し、Cuであることがより好ましい。
一般式(Y)中、Mは、水素原子又は1価の対カチオンを表す。Mで表される1価の対カチオンとしては、例えば、Li、K、Na、NH や、前述した(B)特定イオンが挙げられる。中でも、(B)特定イオンでない場合には、Li、K、Naが好ましい。
なお、一般式(Y)中、Mが複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(Y)中、R31は、X31と同義であり、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
一般式(Y)において、R31で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(Y)において、R31で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状、又は、分岐状鎖アルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、2−メタンスルホニルエチル基、3−フェノキシプロピル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
一般式(Y)において、R31で表されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ヘキシル基等が挙げられる。
一般式(Y)において、R31で表されるアリールオキシ基としては、例えば、炭素数6〜12のアリールオキシ基、具体的には、(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル等が挙げられる。
一般式(Y)において、R31で表されるアルキルチオ基としては、例えば、炭素数6〜12のアルキルチオ基、具体的には、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオが挙げられる。
一般式(Y)において、R31で表されるアリールチオ基としては、例えば、炭素数6〜12のアリールチオ基、具体的には、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ等が挙げられる。
一般式(Y)中、R31が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。R31は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基である。また、一般式(Y)中、R31は、化合物の合成容易性の観点から、SOのパラ位にあることが好ましい。
一般式(Y)中、l31は、0以上の整数を表し、1であることが好ましい。また、m31は、0以上の整数を表し、0であることが好ましい。更に、n31は、1〜4の整数を表し、好ましくは2〜4の整数を表し、より好ましくは3又は4を表し、最も好ましくは4を表す。n31が表す数が大きいほど、染着性がより向上する。
前記一般式(Y)で表される化合物は、下記一般式(Z)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(Z)におけるX41は、上述の一般式(Y)におけるX31と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(Z)におけるMは、上述の一般式(Y)におけるMと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(Z)におけるR41は、アルキル基を表す。アルキル基としては、上述の一般式(Y)におけるR31で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(Z)におけるm41及びn41は、それぞれ上述の一般式(Y)におけるm31及びn31と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(Y)で表される化合物を第1のインク組成物に用いれば、ポリアミド系繊維であるナイロンの捺染に用いたときに、耐光性に優れた染色部を得ることができる。また、一般式(Y)で表される化合物を含有する染色部は、染着性にも優れる。つまり、一般式(Y)で表される化合物を含有する第1のインク組成物によれば、ポリアミド系繊維であるナイロンの捺染において、耐光性及び染着性の両立が可能となる。この作用機構については明らかではないが、以下のように推測される。
フタロシアニン環に導入されたアリール基上の−SOを構成する酸素原子と、フタロシアニン環上の水素原子とが水素結合的に相互作用することで、アリール基がフタロシアニン環平面に対して垂直に立つ。この垂直に立ったアリール基によってフタロシアニン環同士の会合が阻害されることで、インク溶液中でフタロシアニン染料がモノマーとして存在し易くなる。フタロシアニン染料がモノマー化すると、繊維中への浸透速度が高まり、染着性が向上すると推測される。
なお、発明者らは、アリール基がフタロシアニン環平面に対して垂直に立つことを計算化学によって確認している。また、アリール基がフタロシアニン環平面に対して垂直に立つことで、フタロシアニン染料がインク溶液中でモノマー化し易いこともインク溶液の可視吸収スペクトルを測定することにより確認している。
以下に、一般式(I)で表される化合物である染料の具体例(1)〜具体例(35)、及び化合物001〜化合物011を示すが、本発明では、下記具体例や化合物に限定されるものではない。
なお、具体例(1)〜具体例(9)、具体例(15)、及び具体例(18)〜具体例(34)は、各具体例に示される−O−Ph−SONa等の特定スルホ基〔具体例(19)、及び具体例(20)においては、更に−SONa〕が、フタロシアニン骨格中の4つのベンゼン環が有する、水素原子が結合している炭素原子に、該水素原子に置き換わって結合していることを示す。
特定スルホ基ないし−SONaは、4つのベンゼン環のうちのいずれか1つに集中して結合していてもよいし、別々のベンゼン環に結合していてもよい。但し、例えば、具体例(15)のように、フタロシアニン骨格のベンゼン環に「−H」が示されている場合には、該「−H」で表される水素原子が結合している炭素原子には、特定スルホ基は結合しない。
また、具体例(10)〜具体例(14)、具体例(16)、及び、具体例(17)は、特定スルホ基が、フタロシアニン骨格のベンゼン環に直接結合してもよいし、フタロシアニン骨格のベンゼン環に結合するフェノキシ基、又はメトキシ基の炭素原子が有する水素原子と置き換わって、該フェノキシ基、又はメトキシ基の炭素原子と結合していてもよいことを示す。


続いて、一般式(P1)で表される化合物の合成例について説明する。
上記の具体例(10)、具体例(28)の1つである具体例(28a)、及び上記の具体例(29)の1つである具体例(29a)の合成方法を例に説明する。
具体例(10)は、フェノキシフタロニトリルを用いてフタロシアニン環化した後にスルホ化してスルホン酸を導入しているのに対し、具体例(28a)及び具体例(29a)では、スルホン酸が置換したフェノキシフタロニトリルを環化して合成している。いずれの方法を用いても特定染料を合成することができる。ただし、スルホン酸の位置を限定したい場合には、後者の合成方法の方が適切である。
〔具体例(10)の合成例〕
ジエチレングリコール70mLに、室温にて酢酸0.6mL、オルト酢酸トリエチル19gを添加した後、3−フェノキシフタロニトリル(13g)と、フタロニトリル(2.6g)とを引き続き混合し、内温100℃に加熱した。得られた反応混合物に、CuCl(2.7g)と、安息香酸アンモニウム(22g)とを添加した後、内温100℃で6時間攪拌した。
次に、得られた混合物を内温90℃まで冷却し、混合物に濃塩酸7mLを滴下した。その後、メタノールを更に100mL滴下し、晶析した。得られた結晶を乾燥し、粗結晶(10A)6gを得た。
粗結晶3.5gと、硫酸22.5mLとを混合し、60℃に加熱攪拌しているところに、発煙硫酸2.5mLを滴下し、60℃で3時間攪拌した。得られた反応液に水100mLを投入し、室温まで冷却した。析出した粗結晶をろか、水洗後、1N−NaOH水溶液をpH9.5になるまで添加し、溶解させた。50℃で60分間攪拌後、ごみ取りろ過し、ろ液にイソプロピルアルコールを500mL滴下して晶析し、化合物〔具体例(10)〕7gを得た。
得られた化合物〔具体例(10)〕1mgを超純水に溶解した際の吸収波長(λmax)は、681nmであった。
〔具体例(28a)の合成例〕
ジエチレングリコール100mLに、室温にて酢酸0.5mL、オルト酢酸トリエチル20gを添加した後、下記化合物A(16g)と、フタロニトリル(6.4g)とを引き続き混合し、内温100℃に加熱した。得られた反応混合物に、CuCl(2.5g)と、安息香酸アンモニウム(22g)とを添加した後、内温100℃で15時間攪拌した。
次に、得られた混合物を内温90℃まで冷却し、混合物に濃塩酸7mLを滴下した。その後、イソプロピルアルコールを更に350mL滴下し、晶析した。得られた結晶を乾燥し、粗結晶10gを得た。
粗結晶10gをイオン交換水100mLに溶解後、2N−NaOH水溶液をpH9.5になるまで添加した。50℃で60分間攪拌後、ごみ取りろ過した。その後、ろ液にイソプロピルアルコールを500mL滴下し晶析し、化合物〔具体例(28a)〕3gを得た。
得られた化合物〔具体例(28a)〕1mgを超純水に溶解した際の吸収波長(λmax)は、622nmであった。
〔具体例(29a)の合成例〕
具体例(28a)の合成例において、「化合物A(16g)と、フタロニトリル(6.4g)」の代わりに、「化合物A(32g)」を用いた以外は同様にして、化合物〔具体例(29a)〕を得た。
得られた化合物〔具体例(29a)〕1mgを超純水に溶解した際の吸収波長(λmax)は、686nmであった。
次いで、下記一般式(P2)で表される化合物について説明する。
この化合物は、テトラアザポルフィリン骨格に連結基L101を介してヒンダートアミン構造部分が置換されることで、染着部の色合い及びその耐光性が高められており、更に任意の位置にSOMが置換されていることで、水系に調製されるインク組成物への溶解性を保持している。
一般式(P2)において、Y101〜Y112は各々独立に−CH−又は窒素原子を表す。但し、Y101〜Y104、Y105〜Y108、及びY109〜Y112のそれぞれの群中の窒素原子の数は0〜2の整数である。R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。また、R101、R102、及びR103は、そのうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR201−、−CONR201−、−SiR201 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。L101の一方の結合手は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合し、また、他方の結合手は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO102は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合している、又は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。している。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子又は1価の対カチオンを表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の整数を表す。
一般式(P2)において、Y101〜Y104の群、Y105〜Y108の群、及びY109〜Y112の群の各群中に含まれる窒素原子の数は、0〜2の整数であるが、好ましくは0である。
101〜Y112は、後述するX101で置換されていてもよい。
一般式(P2)において、R101で表される炭素数1〜20のアルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル気、n−ヘキシル基等が挙げられる。
また、R101で表される炭素数1〜20のアルコキシ基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
上記のうち、好ましいR101は、水素原子、アルキル基である。
一般式(P2)において、R102、R103で表される炭素数1〜20の2級アルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数1〜10の2級アルキル基が好ましく、炭素数1〜8の2級アルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6の2級アルキル基である。2級アルキル基の例としては、イソプロピル基、s−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、R102、R103で表される炭素数1〜20の3級アルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数1〜10の3級アルキル基が好ましく、炭素数1〜8の3級アルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6の3級アルキル基である。3級アルキル基の例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
上記のうち、好ましいR102は3級アルキル基であり、好ましいR103は3級アルキル基であり、更に好ましくは、R102がtert−ブチル基であり、R103がtert−ブチル基である。
また、R102とR103とは、同一の基を表す場合が好ましい。
一般式(P2)における「NR101102103」は、R101が水素原子、酸素ラジカル、又はヒドロキシ基以外の基を表すときは、R101〜R103中のいずれかの水素原子が1つ外れることでL101と連結し、R101が水素原子、酸素ラジカル、又はヒドロキシ基を表すときは、R102及びR103中のいずれかの水素原子が1つ外れることでL101と連結する。
また、R101、R102、及びR103は、いずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。環を形成する場合、互いに結合するR101、R102、R103の各炭素数は、それぞれ2〜40であることが好ましく、より好ましくは2〜30であり、更に好ましくは2〜20であり、特に好ましくは2〜10である。
形成される環の例としては、アジリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環等が挙げられる。中でも、R102及びR103が3級アルキルを表し、R102及びR103が互いに結合してピペリジン環を形成している態様が好ましい。
101、R102、及びR103は、後述するX101で表される置換基で置換されていてもよい。
一般式(P2)において、L101で表されるアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、環状であってもよい。L101で表されるアルキレン基としては、炭素数は1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がより好ましくは、更に好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、2価のシクロヘキシル基などが挙げられる。
また、L101で表されるアリーレン基としては、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、特に好ましくは炭素数6のアリーレン基である。アリーレン基の例としては、以下に示す基が挙げられる。

一般式(P2)において、L101で表される2価のヘテロ環基としては、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数3〜10のヘテロ環基が好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子等を好適に含む。2価のヘテロ環基の例としては、以下に示す基が挙げられる。

101は、後述するX101で表される置換基で置換されていてもよい。
中でも、L101としては、アルキレン基、−SO−、−SONR201−、又はこれらを組み合わせた2価の基を表すことが好ましい。
201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。上述のL101内に複数のR201が存在する場合、R201は互いに異なっていてもよい。
201で表されるアルキル基は、無置換でもよいし置換されていてもよく、直鎖状、分岐鎖、又は環状のいずれでもよい。R201で表されるアルキル基は、炭素数1〜48のアルキル基が好ましく、炭素数1〜24のアルキル基がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基等が挙げられる。
201で表されるアリール基は、無置換でもよいし置換されていてもよく、炭素数6〜48のアリール基が好ましく、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
201で表されるヘテロ環基は、無置換でもよいし置換されていてもよく、炭素数1〜32のヘテロ環基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基である。ヘテロ環基の例としては、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基等が挙げられる。
一般式(P2)において、L101の一方の結合手は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合している。また、L101の他方の結合手は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
一般式(P2)における「SO102」は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所にてNR101102103と結合している、又は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
一般式(P2)におけるM101は、色相及び堅牢性の点で、好ましくは銅原子又は亜鉛原子であり、より好ましくは銅原子である。
一般式(P2)におけるM102で表される1価の対カチオンとしては、例えば、Li、K、Na等のアルカリ金属イオン、NH の他、前述した(B)特定イオンが挙げられる。中でも、(B)特定イオンでない場合には、水溶性の点で、アルカリ金属イオンのLi、K、Naが好ましく、特に好ましくはLi、Naである。
101は、1以上の整数を表し、染色性及び水溶性の点で、1〜4の整数が好ましく、1〜3の正数がより好ましく、特に好ましくは1〜2の整数である。
103は、1以上の整数を表し、水溶性の点で、1〜8の整数が好ましく、2〜7の整数がより好ましく、特に好ましくは3〜6の整数である。
一般式(I)中の、テトラアザポルフィリン骨格、−L101−、及び−(NR101102103)の構造部分は、下記に示すように、更にn102個の置換基X101で置換された構造であってもよい。
101の置換数を表すn102は、0以上の整数を表し、好ましくは0〜4の整数、より好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0〜1の整数である。
下記一般式(P2a)では、置換基X101は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所にてNR101102103と結合する、又は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所にてテトラアザポルフィリン骨格と結合する構造を示している。
ここで、置換基X101について説明する。
置換基X101としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、好ましくは塩素、臭素、より好ましくは塩素)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基))、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基))、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、Nーエチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニルv)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル基)、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)を表す。
上記のうち、好ましい基は、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基であり、特に好ましくは、スルファモイル基である。
また、上記の基が更に置換可能な基である場合には、上記で説明した基若しくはスルホ基(SOM)で置換されていてもよい。
前記一般式(P2)で表される化合物は、下記一般式(P2b)で表される化合物が好ましい。
一般式(P2b)において、R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。R101で表される、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数1〜20のアルコキシ基は、一般式(P2)中のR101で表される、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数1〜20のアルコキシ基と同義であり、好ましい態様も同様である。
なお、一般式(P2b)では、n101個のL101の一方の結合手は、各々、(a)で表されるフタロシアニン骨格(特に4つのベンゼン環)上のn101個の水素原子が外れることで結合する。
また、n101個のL101の他方の結合手は、各々、(b)で表される構造中の水素原子(すなわち、R101中の水素原子、4つのCHの水素原子、及び6員環を形成している無置換の3つのCHの水素原子)の1つが外れた箇所にて、(b)で表される構造と結合する。なお、L101は、(b)で表される構造中の6員環を形成している無置換の3つのCHのいずれかの水素原子が外れることで結合している場合が好ましい。
一般式(P2b)におけるL101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR201−、−CONR201−、−SiR201 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
一般式(P2b)中のL101、R201は、一般式(P2)中のL101、R201とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
一般式(P2b)におけるM101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子(例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子)を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。
一般式(P2b)中のM101、M102、n101、及びn103は、一般式(1)中のM101、M102、n101、及びn103とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
なお、一般式(P2b)では、n103個の「SO102」は、(a)で表されるフタロシアニン骨格(特に4つのベンゼン環)、及び、(b)で表される構造より選ばれるn103個の水素原子が外れたことで結合する。
一般式(P2b)中の、(a)で表されるフタロシアニン骨格、−L101−、及び(b)で表される構造は、一般式(I)における場合と同様、一般式(P2a)に示されるようにn102個の置換基X101で更に置換されていてもよい。
101の置換数を表すn102は、0以上の整数を表し、好ましくは0〜4の整数、より好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0、1である。
一般式(P2b)において、好ましい構造は、R101が水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、L101がスルファモイル基、アルキレン基、スルホニル基、又はこれらの少なくとも2つを組み合わせた連結基であり、M101が銅原子であり、M102がアルカリ金属原子(特にリチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子)であり、n101が1〜2であり、n103が3〜4である化合物である。
以下、一般式(P2)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明においては、これら具体例に制限されるものではない。
続いて、一般式(P2)で表される化合物の合成方法を説明する。
一般式(P2)で表される化合物の合成方法としては、大別して、フタル酸誘導体から合成する合成法、及びフタロシアニンから合成する合成法などが考えられる。
−フタル酸誘導体からの合成−
一般式(P2)で表される化合物の合成方法の一例として、フタル酸誘導体から合成する方法があり、例えば、「フタロシアニン−化学と機能−」(白井−小林共著、p.1〜p.62、(株)アイピーシー発行)、”Phthalocyanines - Properties andApplications”(C. C.Leznoff-A. B. P. Lever共著、p.1〜54、VCH発行)等の記載を参照して行なうことができる。具体的には、(1)フタロニトリルと金属塩との反応(フタロニトリル法)、(2)無水フタル酸若しくはフタル酸若しくはフタルイミドと尿素との反応(ワイラー法)が挙げられ、置換基導入のしやすさの観点から(1)フタロニトリル法が好ましい。
フタロニトリル法によって種々の置換基が置換したフタロシアニン化合物を得る方法として、下記のように、種々の置換基が置換したフタロニトリルを所望の比率で混合したものをフタロシアニン環化する方法が挙げられる。ここで、アザフタロシアニン誘導体については、原料を対応するアザフタロニトリルとフタロニトリルとを混合しフタロシアニン環化することで得ることができる。
環化反応の具体的条件としては、特開2009−19209号公報に記載されるように、溶媒中(ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒、ベンゾニトリル等のトリルニトリル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリグリコール系溶媒など)、フタロニトリル、金属塩(塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等)、及び場合により塩基(例えばDBU等)を加熱することで、目的とする化合物が得られる。
−フタロシアニンからの合成−
スルファモイル基若しくはスルホ基を導入する際に限った方法であるが、例えば、下記スキームのように、フタロシアニンをクロロスルホニル化若しくはスルホ化し、アミド化若しくは加水分解することで側鎖を導入することができる。具体的な方法については、例えば、国際出願第00/17275号パンフレット、国際出願第00/08103号パンフレット、国際出願第00/08101号パンフレット、国際出願第98/41853号パンフレット、特開平10−36471号公報、特表2002−522561号公報、米国特許第6332918号明細書などの記載を参照することができる。
一般式(P2)で表される化合物化合物(テトラアザポルフィリン系化合物)が合成されたことの確認は、マススペクトル(MS)測定により行なうことができる。また、染料化合物が磁性を持たない場合には、NMR測定も併せて用いることができる。
一般式(P2)で表される化合物は、青色〜シアン色を呈する化合物である。
また、一般式(P2)で表される化合物において、n101個の「−L101−(NR101102103)」は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位、β位のいずれに置換されてもよいが、布帛への染色性の観点から、α位に置換することが好ましい。
本発明では、第1のインク組成物中に、前述した(A−1)フタロシアニン系染料を用いるが、かかるフタロシアニン系染料は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、第1のインク組成物中には、(A−1)フタロシアニン系染料以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、第1のインク組成物の所望の色相に合わせた他の着色剤(染料や顔料等)を更に含んでもよい。
他の着色剤を含む場合、(A−1)フタロシアニン系染料の含有量は、着色剤の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、更には100質量%、すなわち(A−1)フタロシアニン系染料のみを含有することが好ましい。
なお、着色剤((A−1)フタロシアニン系染料、及び他の着色剤を含む)の第1のインク組成物中の含有量としては、良好な発色濃度が得られ、組成物の保存安定性を考慮すると、第1のインク組成物の全質量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
[(C)水]
本発明では、第1のインク組成物中に、(C)水を含有する。
(C)水は、特に制限されず、イオン交換水でも水道水でもよい。
(C)水の含有量は、前記(B)特定イオンが、(A)フタロシアニン染料の対イオンである場合には、第1のインク組成物の全質量から、(A)フタロシアニン染料と後述する(D)他の成分(任意成分)との含有量を差し引いた残部となる。
また、前記(B)特定イオンが、フタロシアニン系染料以外の対イオンとによる塩により、第1のインク組成物に添加される場合には、(C)水の含有量は、第1のインク組成物の全質量から、(A)フタロシアニン染料、(B)特定イオンとフタロシアニン系染料以外の対イオンとによる塩、及び後述する(D)他の成分(任意成分)の含有量を差し引いた残部となる。
[(D)その他の成分]
第1のインク組成物は、既述の(A)〜(C)成分の他、必要に応じて、(D)その他の成分として、有機溶媒、界面活性剤、各種添加剤等の成分を含有していてもよい。
(有機溶媒)
第1のインク組成物が含有し得る有機溶媒は、水性有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒の例としては、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等)、一価アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、2,2’−チオジエタノール、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等)、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等)、アセトニトリル等が挙げられる。
また、上記の有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
第1のインク組成物中の有機溶媒の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%〜60質量%であることが好ましく、2質量%〜50質量%であることがより好ましい。
(界面活性剤)
第1のインク組成物は、保存安定性、吐出安定性、吐出精度等を高める観点から、各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤も用いることができる
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型も好適な例として挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール等が挙げられる。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好適な例として挙げられる。
その他、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)において界面活性剤として挙げられているものも用いることができる。
これらの各界面活性剤を使用する場合、界面活性剤を1種単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
第1のインク組成物中の界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.001質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、かかる範囲でインク組成物の表面張力を任意に調整することが好ましい。
(各種添加剤)
第1のインク組成物は、その他に従来公知の添加剤を含有していてもよい。例えば、酸塩基や緩衝液等のpH調整剤、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、増粘剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、比抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料、還元防止剤、防腐剤、防黴剤等である。
−紫外線吸収剤−
紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。紫外線吸収剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
−退色防止剤−
退色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の退色防止剤を使用することができる。有機の退色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等があり、金属錯体としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等がある。より具体的にはリサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁、及びUS5,356,443に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。退色防止剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
−防腐剤、防黴剤−
第1のインク組成物は、長期保存安定性を保つため、防腐剤、及び防黴剤の少なくとも一方を含有していてもよい。防腐剤や防黴剤を含有することで、長期での保存安定性を高めることができる。防腐剤及び防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK;ランクセス社製)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL、PROXEL XL2;アーチケミカルズ社製)等が挙げられる。
本発明において、第1のインク組成物は、かかる組成物にて染色された布帛がシアンの色相を有していることが好ましく、色相角として200°〜260°であることが好ましい。また、シアン〜ブルーの色相も含めると200°〜300°であることが好ましく、210°〜300°が更に好ましい。この範囲の色相を示すと、シアン領域の発色濃度(OD)が低下しにくくなる。
〔第2のインク組成物〕
次いで、本発明のインクセットを構成する第2のインク組成物について説明する。
第2のインク組成物は、(A−2)フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料、及び(C)水を含有しており、必要に応じて、更に他の成分を含有していてもよい。
[(A−2)フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料]
第2のインク組成物中の(A−2)フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料(以下、(A−2)非フタロシアニン染料と称する。)は、如何なるものであってもよいが、ポリアミド系繊維を含む布帛への染着性、堅牢性の点から、具体的には、アリール若しくはヘテリルアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料、キノン系染料、キノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料、カルボニウム染料、ポリメチン染料、及びインジゴ・チオインジゴ染料からなる群より選択される少なくとも1種の酸性染料であることが好ましい。
特に、本発明では、第2のインク組成物中のフタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料が、一般式(D1)〜(D6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の酸性染料であることが好ましい。
まず、下記一般式(D1)又は(D2)で表される化合物について説明する。
一般式(D1)及び(D2)において、A、B、及びCは各々独立に、芳香族基、又は複素環基を表す。但し、A、B、及びCで表される芳香族基、又は複素環基には少なくとも1つの−(SOM)が導入される。ここで、Mは、水素原子、Li、K、Na等のアルカリ金属イオン、又はNH を表す。また、nは1以上の整数である。
一般式(D1)及び(D2)において、A、B及びCは、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい複素環基を表す(なお、A及びCは一価の基であり、Bは二価の基である)。
一般式(D2)において、nは1以上の整数である。中でも、nが1又は2である化合物が好ましく、そのとき、A、B、及びCのうち少なくとも2つ以上は置換されていてもよい不飽和複素環基であることが好ましい。その中でも特に好ましいのは,n=1であり、少なくともB、Cが不飽和複素環基の場合である。
A、B、及びCで表される芳香族基としては、1価の基の場合、アリール基及び置換アリール基を意味し、かかるアリール基は、炭素数6〜20であることが好ましく、炭素数6〜16であることがより好ましい。1価の芳香族基として具体的には、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
1価の芳香族基の例には、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基などが挙げられる。
2価の芳香族基は、これらの1価の芳香族基から水素原子を1つ除き2価にしたものであり、その例にはとしては、フェニレン基、p−トリレン基、p−メトキシフェニレン基、o−クロロフェニレン基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
また、A、B、及びCで表される複素環基としては、1価の基の場合、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環から水素原子を1つ除き1価の基としてものが挙げられ、ピリジン環、イソチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましく、最も好ましくはピリジン環、ベンゾチアゾール環である。
1価の複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−フリル基などが挙げられる。
2価の複素環基は、これらの1価の複素環基から水素原子を1つ除き2価にしたものであればよい。
上記した芳香族基、複素環基は、いずれも置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、−(SOM)の他、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基などが含まれる。
一般式(D1)又は(D2)で表される化合物の有する−(SOM)は、一分子内に1個〜5個存在することが好ましく、水溶性の点から、2個〜4個存在することがより好ましい。
前記一般式(D1)で表される化合物は、下記一般式(D1−L)で表される化合物であってもよい。つまり、一般式(D1−L)で表される化合物は、一般式(D1)におけるBの部分で連結鎖Lによって連結された2量体であってもよい。
一般式(D1−L)において、Lは2価の連結基を表し、Lが表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、複素環残基、−CO−、−SO−(pは、0、1、又は2)、−NR−(Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す)、−O−、及びこれらの基を組み合わせた2価の基からなる群より選択される。
Lは、A及びBに置換される置換基で挙げた置換基若しくはイオン性親水性基を有していてもよい。mは2である。
一般式(D1)又は(D2)で表される化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
その他、一般式(D1)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドイエロー78、C.I.アシッドレッド131等が挙げられる。
一般式(D2)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドレッド154、C.I.アシッドレッド114等が挙げられる。
次に、下記一般式(D3)で表される化合物について説明する。
一般式(D3)において、R301〜R304は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R305〜R317は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R305〜R317のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R301〜R317のうち少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m1は1〜13の整数を表す。
301〜R317で表される各基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、エステル基、ケトン基等の置換基を有していてもよい。
一般式(D3)におけるMとしては、好ましくはアルカリ金属イオンであり、Liイオン、Naイオン、Kイオンであることが好ましい。
また、m1は好ましくは1〜6の範囲であることが好ましい。
一般式(D3)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブルー7等が挙げられる。
続いて、下記一般式(D4)で表される化合物について説明する。
一般式(D4)において、R401〜R404は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R405〜R415は各々独立にベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R405〜R415のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R405〜R415の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m2は1〜11の整数を表す。
401〜R415で表される各基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、エステル基、ケトン基等の置換基を有していてもよい。
一般式(D4)におけるMとしては、好ましくはアルカリ金属イオンであり、Liイオン、Naイオン、Kイオンであることが好ましい。
また、m2は好ましくは1〜6の範囲であることが好ましい。
一般式(D4)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド289等が挙げられる。
続いて、下記一般式(D5)で表される化合物について説明する。
一般式(D5)中、R501〜R506は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、X及びXは各々独立に、−NR507508、−OR509、又はヒドロキシ基を表す。R501〜R506、X、及びXのうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R501〜R506の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m3は1〜6の整数を表す。また、R507、R508、及びR509は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
501〜R509で表される各基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、エステル基、ケトン基等の置換基を有していてもよい。
一般式(D5)におけるMとしては、好ましくはアルカリ金属イオンであり、Liイオン、Naイオン、Kイオンであることが好ましい。
また、m3は好ましくは2〜4の範囲であることが好ましい。
一般式(D5)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドバイオレット43等が挙げられる。
更に続いて、下記一般式(D6)で表される化合物について説明する。
一般式(D6)中、R601及びR602は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R603〜R609は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R603〜R606のうちいずれか2つ、また、R607〜R609のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R601〜R609の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m4は1〜7の整数を表す。
601〜R608で表される各基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、エステル基、ケトン基等の置換基を有していてもよい。
一般式(D6)におけるMとしては、好ましくはアルカリ金属イオンであり、Liイオン、Naイオン、Kイオンであることが好ましい。
また、m4は好ましくは1〜6の範囲であることが好ましい。
一般式(D6)で表される化合物としては、上記のものの他、C.I.アシッドレッド143等が挙げられる。
本発明では、第2のインク組成物中に、前述した各種の(A−2)非フタロシアニン系染料を用いるが、かかる各種の染料は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、第2のインク組成物中には、前述した各種の(A−2)非フタロシアニン系染料以外にも、第2のインク組成物の所望の色相に合わせた他の着色剤(染料や顔料等)を更に含んでもよい。
なお、第2のインク組成物中の全着色剤の含有量としては、良好な発色濃度が得られ、組成物の保存安定性を考慮すると、インク組成物の全質量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
[(C)水及び(D)その他の成分]
第2のインク組成物では、(C)水と、必要に応じて、(D)その他の成分と、を含有するが、かかる(C)水及び(D)その他の成分は、前述した第1のインク組成物と同様であり、好ましい例や好ましい量も同様である。
〔インクセットの製造方法〕
本発明のインクセットは、(A−1)フタロシアニン系染料、(B)特定イオン、及び(C)水を含む第1のインク組成物を調製する第1の工程と、(A−2)非フタロシアニン系染料、及び(C)水を含む第2のインク組成物を調製する第2の工程と、を少なくとも含み、前記第1の工程では、(B)特定イオンと(A−1)フタロシアニン系染料以外の対イオンとによる塩(α)、及び、対イオンとして(B)特定イオンを含む(A−1)フタロシアニン系染料(β)の少なくとも一方を用いて第1のインク組成物を調製する、ことで得られる。
つまり、本発明における第1のインク組成物は、(B)特定イオンと(A−1)フタロシアニン系染料以外の対イオンとによる塩(α)、及び、対イオンとして(B)特定イオンを含む(A−1)フタロシアニン系染料(β)の少なくとも一方を用いること調製される。
上記塩(α)を用いる場合、塩(α)、(A−1)フタロシアニン系染料、及び(C)水を共に混合することで、第1のインク組成物を調製してもよいし、予め、(A−1)フタロシアニン系染料、及び(C)水を混合した混合液中に塩(α)を添加してもよい。
塩(α)を用いる態様の場合、第1のインク組成物中、(A−1)フタロシアニン系染料に対する(B)特定イオンを含む塩の物質量比(モル比)は、0.5%〜5%であることが好ましく、1%〜4%であることがより好ましい。
また、フタロシアニン系染料(β)を用いる態様の場合、第1のインク組成物中、(A−1)フタロシアニン系染料に対する(B)特定イオンの物質量比(モル比)は、1%〜4%であることが好ましく、2%〜4%であることがより好ましい。
なお、塩(α)を用いる態様、及びフタロシアニン系染料(β)を用いる態様を併用してもよい。
〔インクセットの具体的な形態〕
本発明のインクセットの具体的な形態としては、2色の染料インクを備えたインクセットの形態として、
第1のインク組成物であるシアンインクと、第2のインク組成物である前記アゾ染料を含むイエローインクと、を備えた形態、
第1のインク組成物であるシアンインクと、第2のインク組成物である前記キサンテン染料を含むマゼンタインクと、を備えた形態、
第1のインク組成物であるシアンインクと、第2のインク組成物である前記アントラキノン染料を含むシアンインクと、を備えた形態、等が挙げられる。
更には、3色以上の染料インクを備えたインクセットの形態として、
第1のインク組成物であるシアンインクと、第2のインク組成物である前記アゾ染料を含むイエローインクと、を備えた形態、第2のインク組成物である前記キサンテン染料を含むマゼンタインクと、を備えた形態、や、
第1のインク組成物であるシアンインクと、第2のインク組成物である前記アゾ染料を含むイエローインクと、を備えた形態、第2のインク組成物である前記アントラピリドン染料を含むマゼンタインクと、を備えた形態、とすることもできる。
本発明のインクセットは、必要に応じその他の染料を含むインク組成物を用い、4色以上の染料インクを備えたインクセットであってもよい。
〔インクジェット用インク〕
本発明のインクセットは、インクジェットに適用されるインクセットであってもよい。
本発明のインクセットが、インクジェット用である場合、第1のインク組成物及び第2のインク組成物には、必要に応じて、以下に示すような添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲において含有されてもよい。
インクジェット用インクセットに適用される添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、退色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加することができる。
(乾燥防止剤)
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。インクジェット用インクに乾燥防止剤が含有されることで、インクを吐出する吐出ヘッドのノズルのインク噴射口において、上記のインクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止することができる。
乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又は、ブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうち、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。
また、乾燥防止剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
乾燥防止剤の含有量は、インク組成物の全質量の全質量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
(防黴剤)
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及びその塩が挙げられる。
防黴剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
防黴剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.02質量%〜1.00質量%が好ましい。
(pH調整剤)
pH調整剤としては、有機塩基、無機アルカリ等の中和剤を用いることができる。インクジェット用インクにpH調整剤が含有されることで、インクジェット用インクの保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、インクジェット用インクのpHが6〜10になるように添加することが好ましく、7〜10になるように添加することがより好ましい。
(表面張力調整剤、消泡剤)
表面張力調整剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例は、既述の界面活性剤の欄にて例示したものと同じである。
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物が好ましい。
本発明のインクセットをインクジェット用とする場合、インク組成物の表面張力を、20mN/m〜70mN/mに調整することが好ましく、25mN/m〜60mN/mに調整することがより好ましい。また、インク組成物の粘度を、40mPa・s以下に調整することが好ましく、30mPa・s以下に調整することがより好ましく、20mPa・s以下に調整することが特に好ましい。
表面張力及び粘度は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤、界面活性剤等を添加することによって、調整することができる。
(キレート剤)
キレート剤は、インク組成物中における沈殿物等の析出物の発生を防止する目的、また、保存安定性や目詰まり回復性を改良する目的で好適に使用される。
インク組成物中に染料が含まれると、インク組成物中に含まれる金属(Ca、Mg、Si、Fe等)が析出物の発生や目詰まり回復性の低下の原因となり得るため、金属イオンを一定量以下に管理する必要があること、また、銅錯体染料を用いた場合には、金属イオンの量を管理しても、遊離の銅イオンの量も管理しなければ、析出物の発生や目詰まり回復性の低下が認められることが知られている(特開2000-355665号、特開2005−126725号公報等参照)。
本発明における(A−1)フタロシアニン系染料は、中心金属に銅を含む銅錯体染料であることが好ましく、第1のインク組成物中の遊離の銅イオンは、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0ppm〜5ppmである。
キレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸、ヒドロオキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ウラミルジ酢酸、及びそれらの金属塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。
なお、金属イオンや遊離の銅イオン濃度を制御する方法としては、キレート剤を使用する方法以外に、染料の精製度を上げる方法も挙げられる。
<捺染方法>
本発明の捺染方法は、前述した本発明のインクセットを用いて、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛を染色する捺染方法である。
本発明のインクセットによれば、従来の汎用フタロシアニン染料を用いたインク組成物を備えたインクセットによる捺染に比べ、染着性のバランスに優れることから、色味のバランス優れた捺染を行うことができる。
まず、捺染対象の布帛について説明する。
〔布帛〕
本発明に用いられる布帛は、ポリアミド繊維を含む布帛であって、具体的には、ナイロン、絹、羊毛がより好ましい。
特に、本発明のインクセットは、ナイロンの捺染に特に好適である。
なお、ナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12等種々のナイロンが挙げられ、いずれのナイロンを用いてもよい。
ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布等いずれの形態であってもよい。
ポリアミド繊維を含む布帛は、ポリアミド繊維100%のものが好適であるが、ポリアミド繊維以外の素材を含んでいてもよい。布帛がポリアミド繊維以外の繊維を含む場合、ポリアミド繊維の混紡率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。ポリアミド繊維以外の素材としては、例えば、レーヨン、綿、アセテ−ト、ポリウレタン、アクリル繊維等との混紡織布又は混紡不織布等であっても、本発明における捺染用布帛として使用することができる。
布帛を構成するポリアミド繊維及びポリアミド繊維から構成される糸の物理特性には好適な範囲があり、例えば、ナイロンの場合、ナイロン繊維の平均太さが、好ましくは1d〜10d(デニール)、更に好ましくは2d〜6dに制御され、該ナイロン繊維から構成されるナイロン糸の平均太さが、好ましくは20d〜100d、より好ましくは25d〜80d、更に好ましくは30d〜70dに制御され、公知の方法により布帛としたものが用いられる。また、絹の場合は、繊維自体の特性として、絹繊維の平均太さが、好ましくは2.5d〜3.5d、更に好ましくは2.7d〜3.3dに制御され、該絹繊維から構成される絹糸の平均太さが、好ましくは14d〜147d、更に好ましくは14d〜105dに制御され、公知の方法により布帛としたものが好ましく用いられる。
本発明の捺染方法は、前述したように、本発明のインクセットを、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛に付与することにより、布帛を染着するものである。
以下、本発明の捺染方法の各工程について詳細に説明する。
〔インク付与工程〕
本発明のインクセットの布帛への付与は、インクジェット法により行なわれる(以下、適宜、「インク付与工程」と称する)。インクジェット法とは、インクジェット記録ヘッドからインクを吐出して布帛にインクを付与し、画像を印字する方法である。以下に、インクジェット法によりインクを付与する捺染方法について説明する。
また、本発明の捺染方法では、インク付与工程においてインクセットを布帛に付与するにあたって、着色剤の布帛への固定化がより高まるように、前処理を施してもよい。
〔前処理工程〕
本発明の捺染方法は、前処理剤を布帛に付与する前処理工程を有して構成されていてもよい。
前処理工程は、インクセット中の着色剤((A−1)フタロシアニン系染料、(A−2)非フタロシアニン系染料等)の布帛への固定化が高まるように、捺染の前に、予め布帛に対して、ヒドロトロピー剤、水性(水溶性)金属塩、pH調整剤、pH緩衝剤、高分子成分等を含有する前処理剤を付与する工程である。
前処理工程においては、絞り率5%〜150%、好ましくは10%〜130%の範囲で前処理剤をパッティングすることが好ましい。前処理剤は、更に、撥水剤、界面活性剤等を付与してもよい。
(前処理剤)
−ヒドロトロピー剤−
本発明において、ヒドロトロピー剤は、一般に、インクセットが付与された布帛が蒸気下で加熱される際に、画像の発色濃度を高める役割を果たす。ヒドロトロピー剤としては、例えば、通常、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
−水性金属塩−
水性(水溶性)金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオン結晶を形成するものであって、pH4〜10である化合物が挙げられる。
かかる化合物の代表的な例としては、アルカリ金属では、NaCl、NaSO、KCl、CHCOONa等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、CaCl、MgCl等が挙げられる。中でも、Na、K、Caの塩類が好ましい。
−pH調整剤−
pH調整剤としては、アルカリ(塩基)、酸、又は、アルカリと酸との組み合わせが挙げられる。pH調整剤とは、布帛に付与されるインクセット(第1及び第2のインク組成物)の液性(pH)を調整する化合物乃至組成物をいい、インクセットの液性を変化させる成分をいう。pH調整剤を含有することで、着色剤の布帛への固定化反応を高めることができる。
前処理剤の全質量に対するpH調整剤の含有量は1質量%未満であるが、0質量%であることが好ましい。
−pH緩衝剤−
pH緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等に代表される酸アンモニウム塩が挙げられる。pH緩衝剤とは、インクセット(第1及び第2のインク組成物)の液性変化を抑制する成分をいう。pH緩衝剤は、pH調整剤と同様に、着色剤の布帛への固定化反応を高めることができる。
−高分子成分−
高分子成分は、天然高分子であってもよいし、合成高分子であってもよい。また、水性(水溶性)高分子であっても、非水性高分子であってもよいが、本発明の捺染方法に用いるインクセットが、水系組成物であることから、水性高分子であることが好ましい。高分子成分を含有することで、着色剤を布帛に粘着させる糊剤としての役割を付与できる。
水性高分子としては、例えば、トウモロコシ、小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、タマリンド種子等の多糖類、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然水性高分子が挙げられる。
また、合成水性高分子としては、例えば、公知のポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水性高分子、無水マレイン酸系水性高分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系高分子やセルロース系高分子が好ましい。
−撥水剤−
撥水剤としては、例えば、パラフィン系、フッ素系化合物、ピリジニウム塩類、N−メチロールアルキルアミド、アルキルエチレン尿素、オキザリン誘導体、シリコーン系化合物、トリアジン系化合物、ジルコニウム系化合物、或いはこれらの混合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの撥水剤の中でも、パラフィン系及びフッ素系撥水剤は、滲み防止、濃度の点において特に好ましい。
撥水剤の布帛に対する付与量は、特に制限されないが、布帛の全質量に対して0.05質量%〜40質量%の範囲で付与することが好ましい。これは、0.05質量%未満ではインクの過度の浸透を防止する効果が少なく、40質量%を超えて含有させても性能的に大きな変化がないからである。
撥水剤の布帛の全質量に対する使用量は、0.5質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
−界面活性剤−
前処理剤として使用できる界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、両性界面活性剤等が挙げられる。特に、HLB12.5以上の非イオン系界面活性剤を用いることが好ましく、14以上の非イオン系界面活性剤を用いることがより好ましい。
両性界面活性剤としては、ベタイン型等を使用することができる。
界面活性剤の布帛に対する付与量は、特に制限されないが、布帛の全質量に対して0.01質量%〜30質量%付与することが好ましい。
−他の成分−
前処理剤は、更に、使用する染料の特性等に応じて還元防止剤、酸化防止剤、均染剤、濃染剤、キャリヤー、還元剤、酸化剤等の添加剤を含有していてもよい。
前処理剤は、既述のヒドロトロピー剤、撥水剤、界面活性剤等の各種成分を混合した混合物として布帛に付与してもよいし、各種成分を混合せずに、例えば、ヒドロトロピー剤のみを含有する第1の前処理剤、撥水剤のみを含有する第2の前処理剤等をそれぞれ用意し、それぞれの前処理剤を布帛に順次付与するものであってもよい。
前処理剤が、既述の各種成分の混合物である場合、混合物である前処理剤の全質量に対する各種成分の含有量は、前処理剤を布帛に付与したときに、布帛の全質量に対する各種成分の付与量が、既述の範囲となるように、目的に応じて適宜調整すればよい。
前処理において、上記の各前処理剤を布帛に含有させる方法は、特に制限されないが、通常行なわれる浸漬法、パッド法、コーティング法、スプレー法、インクジェット法等を挙げることができる。
〔乾燥工程〕
本発明の捺染方法においては、布帛にインクセット(第1及び第2のインク組成物)を付与して印字した後、印字された布帛を巻き取り、布帛を加熱して発色させ、布帛を洗浄し、乾燥することが望ましい。
インクジェット法による捺染において、上記の手順を踏むことで、インク付与工程後、そのまま放置しておく場合に比べ、(A−1)フタロシアニン系染料、及び(A−2)非フタロシアニン系染料の染着が充分に行なわれ、発色濃度が高く、また耐水性に優れる。特に、長尺の布帛をローラー等で搬送しながら長時間印字し続ける場合などは、印字された布帛が延々と搬送されて出てくるため、床等に印字した布帛が重なっていってしまうことがあり、場所をとるばかりか、安全性を損ない、また予期せず汚れてしまう場合がある。そのため、印字後、印字された布帛を巻き取る操作を行なうことが好ましい。この巻き取り操作時に、布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもよい。但し、印字された布帛を途中で切断する場合や、印字された布帛が短い場合は必ずしも巻き取る必要はない。
更に、インク付与工程後、捺染された布帛は、好ましくは後処理工程に付されることによって、(A−1)フタロシアニン系染料、及び(A−2)非フタロシアニン系染料の繊維への定着が促進される。その後は、定着されなかった着色剤、その他の成分、及び前処理剤を充分に除去することが好ましい。
〔後処理工程〕
後処理工程はいくつかの工程に分かれる。
後処理は、例えば、予備乾燥工程、スチーム工程、洗浄工程、及び乾燥工程を、この順に行なうことによって構成することができる。
−予備乾燥工程−
まず、インク付与工程の後、インクセットを構成する各インク組成物が付与された布帛を、常温(例えば25℃)〜150℃に0.5分〜30分間放置し、インクを予備乾燥することが好ましい。この予備乾燥により印捺濃度を向上させ、且つ滲みを有効に防止できる。なお、この予備乾燥とは、インクが布帛中に浸透することも含む。
本発明の捺染方法によれば、予備乾燥を連続工程で加熱乾燥することも可能である。布帛をロール状にしてインクジェット印捺機に供給して印捺(印字して捺染)した後、印捺後の布帛を巻き取る以前に、乾燥機を用いて乾燥する。乾燥機は、印捺機に直結したものでも分離したものであってもよい。乾燥機における布帛の乾燥は、常温(例えば25℃)〜150℃で0.5分〜30分間行なわれることが好ましい。また、好ましい乾燥方法としては、空気対流方式、加熱ロール直付け方式、照射方式等が挙げられる。
−スチーム工程−
スチーム工程は、インクが付与された布帛を、飽和蒸気中に曝すことで、(A−1)フタロシアニン系染料、及び(A−2)非フタロシアニン系染料の布帛への固定化を促進する工程である。
本発明の捺染方法によれば、後処理のうちスチーム工程は、布帛の種類によってその条件、特に、その時間を変化させることが好ましい。
例えば、布帛が羊毛である場合、スチーム工程の時間は1分〜120分が好ましく、より好ましくは3分〜90分程度である。また、布帛が絹である場合、時間は1分〜40分が好ましく、より好ましくは3分〜30分程度である。更に、布帛がナイロンである場合、1分〜90分程度が好ましく、より好ましくは3分〜60分程度である。
−洗浄工程−
このようにして、布帛にインクジェット法により付与されたインク組成物のうち、大部分は布帛に固定化されるが、インク組成物の一部の着色剤は繊維に染着しないものがある。この染着しない着色剤は、洗い流しておくことが好ましい。染着しない着色剤の除去には、従来公知の洗浄方法を採用することができる。例えば、常温(例えば25℃)から100℃の範囲の水若しくは温水を使用したり、アニオン、ノニオン系のソーピング剤を使用したりすることが好ましい。染着していない着色剤が完全に除去されていないと、種々の耐水性、例えば、洗濯堅牢性、耐汗堅牢性等において良好な結果が得られない場合がある。
−乾燥工程(洗浄後の乾燥)−
布帛を洗浄した後は、乾燥させる工程を施すことが好ましい。乾燥は、洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したり、或いは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる等の方法で行なうことができる。
<布帛>
本発明のインクセットにより捺染された布帛(本発明の布帛)は、従来の汎用フタロシアニン染料を用いたインク組成物を備えたインクセットによる捺染に比べ、染着性のバランスに優れることから、色味のバランス優れた染色画像を備えるものとなる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
〔合成例:染料−2の合成〕
米国公開特許2012−238752に記載の手法にて、中間体001Cを合成した。中間体001Cと1当量の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを、反応基質合計に対して10重量倍量のアセトニトリル中で攪拌し、析出した結晶を濾取することで中間体001Aを得た。
文献(Negrimovsky,V.等、Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements,1995,vol.104,p.161- 168)記載の手法にて、中間体001Bのプロトン化体(SOH体)を得た。得られたプロトン化体を、プロトン化体に対して20重量倍量のイソプロピルアルコール中、1.1当量の酢酸カリウムを添加し加熱攪拌した後に室温まで冷却し、析出した結晶を濾取することで、中間体001Bを得た。
中間体001Bを19.6g、中間体001Aを12.0g、ジエチレングリコールを142mL、安息香酸アンモニウムを29.5g、無水塩化銅(II)を3.56gを混合し、100℃で12時間過熱攪拌した。ここへ濃塩酸12mLを滴下して、更に30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール2.9Lを添加し、更に30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した。得られた結晶を750mLの水に溶解させ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが12になるまで添加した。得られた溶液を陽イオン交換樹脂(Naフォーム)を充填したカラムを通過させ、エバポレーターで濃縮することで、染料−2の結晶を20.5g得た。
〔合成例:染料−6の合成〕
3−ニトロフタロニトリル(8.7g)と、3−tert−ブチルフェノール(7.5g)と、炭酸カリウム(13.8g)と、DMF(50mL)とをフラスコに入れ、60℃で2時間攪拌した。得られた反応液を、水(250mL)に添加し、析出した結晶を濾取した。この結晶を50℃で送風乾燥することで、中間体001−1を13.4g得た。
1H NMR: δ=1.35(s,9H), 7.00-7.08(m,2H), 7.10(dd,1H), 7.42-7.48(m,2H), 7.53(d,1H), 7.56(d,1H) 300 MHz in CDCl3
次いで、中間体001−1(11g)と、クロロホルム(100mL)とをフラスコに入れ、氷冷下で攪拌した。ここにクロロ硫酸(10g)を加え、5分間攪拌した後、室温で120分間攪拌した。得られた反応溶液を氷(200g)に添加した。得られた混合物をクロロホルムで抽出し、集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム/メタノール=3/1)で精製することで、中間体001−2を7.0g得た。
1H NMR: δ=1.30(s,9H), 6.96(dd,1H), 7.17(d,1H), 7.45(dd,1H), 7.53(dd,1H), 7.60(d,1H), 7.94(d,1H) 300 MHz in CDCl3
続いて、フタロニトリル(5.0g)と、酢酸ナトリウム(1.35g)と、オルト酢酸トリエチル(3.3g)と、ジエチレングリコール(17.5g)とをフラスコに加え、110℃で30分間攪拌した。温度を100℃に下げ、安息香酸アンモニウム(3.9g)と、塩化銅(II)(0.47g)とを加え、11時間攪拌した。温度を80℃に下げ、濃塩酸(1.55mL)を加え0.5時間攪拌した。ここへ水(150mL)を加え、攪拌した。この反応液を氷冷し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶を水(150mL)に溶解させ、この溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10にした。この溶液をセライトで除塵した後、アセトニトリル4Lを添加し、析出した結晶を濾取した。結晶を風乾することで、染料−6を2.6g得た。
溶液スペクトルのλmax =693 nm (MeOH)
〔染料−1〜染料−7〕
実施例及び比較例で使用する、染料−1〜染料−7の構造を以下に示す。
ここで、上記染料−5は、染料−1に対しイオン交換処理を行ったものであり、染料−4は染料−2に対しイオン交換処理を行ったものである。
かかるイオン交換処理は、以下のようにして行った。
即ち、カチオンフォームの陽イオン交換樹脂をそれぞれテトラブチルアンモニウムクロリドで処理してテトラブチルアンモニウム型のイオン交換樹脂を作製した。
続いて、染料−1(市販染料:C.I.ダイレクトブルー87)をカチオンフォームの陽イオン交換樹脂で処理し、先ほど得たテトラブチルアンモニウム型イオン交換樹脂で続いて処理することにより、テトラブチルアンモニウム塩タイプの染料−5を得た。
同様に、染料−1を染料−2へと変更した以外は同様にしてイオン交換を行い、テトラブチルアンモニウム塩タイプの染料−4を得た。
更に同様に、染料−1を染料−6と変更した以外は同様にしてイオン交換を行い、テトラブチルアンモニウム塩タイプの染料−7を作成した。
[実施例1]
(前処理剤の調製)
まず、下記組成の成分を混合し、前処理剤を得た。
−前処理剤−
・グアーガム〔日晶株式会社製、MEYPRO GUM NP〕 ・・・2%
・尿素〔和光純薬工業社製〕 ・・・5%
・硫酸アンモン〔和光純薬工業社製〕 ・・・4%
・水 ・・・89%
(捺染用布帛の作製)
続いて、上記で得られた前処理剤を用い、絞り率を90%として、絹製布帛をパッティングして、処理済み布帛を得た。
(第1のインク組成物の調製)
下記の組成に従いブロモニウム塩を除く各成分を混合し、その後、ブロモニウム塩を添加し、得られた液を孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過することにより第1のインク組成物101〜109を得た。
・下記表1に記載の染料 ・・・5%
・下記表1に記載のカチオンのブロモニウム塩 ・・・表1記載の量
・グリセリン〔和光純薬工業社製〕 ・・・10%
(水性有機溶媒)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・10%
〔和光純薬工業社製〕(水性有機溶媒)
・オルフィンE1010〔日信化学社製〕 ・・・1%
(アセチレングリコール系界面活性剤)
・Proxel XL2〔アーチケミカルズ社製〕 ・・・0.2%
(防腐剤及び防黴剤)
・EDTA−2Na(同仁化学研究所製) ・・・0.005%
(キレート剤)
・水 ・・・残量
なお、ブロモニウム塩を添加しない以外は、第1のインク組成物の調製と同様にして、比較用の第1のインク組成物C01〜C03を調製した。
上記表1中のカチオン〔(1)−1、(1)−2、(2)、(3)、及び(4)〕の構造は、以下の通りである。
(第2のインク組成物の調製)
染料を下記表2に記載のものに変え、また、ブロモニウム塩を添加しない以外は、第1のインク組成物の調製と同様にして、第2のインク組成物201〜210を得た。
[インクセットの作製]
得られた第1及び第2のインク組成物を下記表3、表4のように組み合わせ、インクセットを得た。
ここで、第1のインク組成物として101〜109を用いたインクセットは、本発明のインクセットとなり、第1のインク組成物としてC01〜C03を用いたインクセットは、比較例のインクセットとなる。
[評価]
得られたインクセットを、前処理した布帛を用いてインクジェットプリンタ(ディマティックス社製DMP−2381)にセットし、このプリンタを用い布帛に、第1のインク組成物及び第2のインク組成物のそれぞれを同じ箇所に打滴し、2色が混色した3cm四方の正方形のベタ画像を印画し、布帛を乾燥して印画物を得た。
(染着率の評価)
上記のようにして得られた印画物を使用し、以下の方法で第1のインク組成物の染着率を評価した。
まず、印画後、スチーム前の布帛を10mL、40℃の温水につけ、10分超音波をかけて染料を洗い出し、染料が洗い出された液の吸光度を分光光度計U−4100(日立ハイテク製)で測定した。
一方、印画物に対し、スチーム工程として、飽和蒸気中、100℃で30分間スチームをかけ、着色剤を布帛の繊維に固着させた。得られたスチーム後の布帛について、前記同様に10mL、40℃の温水につけ、10分超音波をかけて染料を洗い出し、染料が洗い出された液の吸光度を分光光度計U−4100(日立ハイテク製)で測定した。
得られた吸光度から、第1のインク組成物に含まれる(A−1)フタロシアニン系染量を求め、下記の式にて染着率を算出した。算出した値を下記表3に併記した。
染着率=〔スチーム後の布帛から洗い出した(A−1)フタロシアニン染料量〕/〔スチーム前の布帛から洗い出した(A−1)フタロシアニン染料量〕
(色味のバランス評価)
上記のようにして得られた印画物(印画後の布帛)に、スチーム工程として、飽和蒸気中、100℃で30分間スチームをかけ、着色剤を布帛の繊維に固着させた。
その後、布帛を冷水で10分、60℃の温水で5分洗った後、乾燥させることにより、捺染サンプルを作製した。
得られたインクセットの混色捺染サンプルを目視観察し、混色ベタ画像中に、シアンの色味を感じる場合をA、わずかにシアンの色味を感じる場合をB、シアンの色味が残っておらず、ほとんど感じない場合をCと評価した。
結果を表4に示す。
表3から明らかなように、ブロモニウム塩を含有する第1のインク組成物を用いた実施例のインクセットは、比較例に比べ染着率が高いことが分かる。
また、表4に明らかなように、ブロモニウム塩を含有する第1のインク組成物を用いた実施例のインクセットは、比較例に比べ色味のバランスがよいことが分かる。
[実施例2]
染料を下記表5に記載のものに変え、また、ブロモニウム塩を添加しない以外は、前記実施例1における第1のインク組成物の調製と同様にして、第1のインク組成物111〜113、及び、比較用の第1のインク組成物C11〜C13を得た。
また、第2のインク組成物としては、前述した実施例1における第2のインク組成物201〜210を用いた。
[インクセットの作製]
得られた第1及び第2のインク組成物を下記表6、表7のように組み合わせ、インクセットを得た。
ここで、第1のインク組成物として111〜113を用いたインクセットは、本発明のインクセットとなり、第1のインク組成物としてC11〜C13を用いたインクセットは、比較例のインクセットとなる。
[評価]
得られたインクセットを用い、実施例1と同様にして、染着性及び色味のバランスの評価を行った。
染着性の評価結果を表6に、色味のバランスの評価結果を表7に示す。
表6から明らかなように、スルホ基のテトラブチルアンモニウム塩を有する(A−1)フタロシアニン染料を含有する第1のインク組成物を用いた実施例のインクセットは、比較例に比べ染着率が高いことが分かる。
また、表7に明らかなように、スルホ基のテトラブチルアンモニウム塩を有する(A−1)フタロシアニン染料を含有する第1のインク組成物を用いた実施例のインクセットは、比較例に比べ色味のバランスがよいことが分かる。

Claims (6)

  1. フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料、下記一般式(1)〜(4)で表されるイオンの群より選択される少なくとも1種のイオン、及び水を含む第1のインク組成物と、
    フタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料、及び水を含む第2のインク組成物と、
    を少なくとも含み、ポリアミド系繊維を含む布帛の捺染に用いられるインクセット。

    〔一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R11〜R14のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
    一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R21〜R25のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。R26は、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。
    一般式(3)中、R31〜R33は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R31〜R33のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR34−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR35−、−CONR36−、−SiR37 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R34〜R37は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。
    一般式(4)中、R41〜R45は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表し、R41〜R45のうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。Lは、アルキレン基、−O−、−S−、−NR46−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR47−、−CONR48−、−SiR49 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。ここで、R46〜R49は各々独立に、炭素数1〜20の1級アルキル基、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。〕
  2. 前記第1のインク組成物中のフタロシアニン系染料が、下記一般式(P1)又は(P2)で表される化合物である請求項1に記載のインクセット。

    〔一般式(P1)中、X〜Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。P〜Pは各々独立に芳香環を表し、該芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボニルアルキル基、及びカルボニルアミノ基から選択される置換基を有していてもよい。nは各々独立に0〜4の整数を表し、n〜nの総和は少なくとも1である。但し、一般式(P1)の構造中には、イオン性親水性基が少なくとも2つ含まれる。
    一般式(P2)中、Y101〜Y112は各々独立に−CH−又は窒素原子を表す。但し、Y101〜Y104、Y105〜Y108、及びY109〜Y112のそれぞれの群中の窒素原子の数は0〜2の整数である。R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。また、R101、R102、及びR103は、そのうちいずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO−、−COO−、−SONR201−、−CONR201−、−SiR201 −、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる2価の基から選択される2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。L101の一方の結合手は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合し、また、他方の結合手は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO102は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れた箇所でNR101102103と結合している、又は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れた箇所でテトラアザポルフィリン骨格と結合している。している。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子又は1価の対カチオンを表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の整数を表す。〕
  3. 前記第2のインク組成物中のフタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料が、アリール若しくはヘテリルアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料、キノン系染料、キノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料、カルボニウム染料、ポリメチン染料、及びインジゴ・チオインジゴ染料からなる群より選択される少なくとも1種の染料である請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
  4. 前記第2のインク組成物中のフタロシアニン骨格以外の骨格を有する染料が、下記一般式(D1)〜(D6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の染料である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。

    〔一般式(D1)及び(D2)中、A、B、及びCは各々独立に、芳香族基、又は複素環基を表す。また、nは1以上の整数である。但し、A、B、及びCで表される芳香族基、又は複素環基には少なくとも1つの−(SOM)が導入される。Mは、水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH を表す。
    一般式(D3)中、R301〜R304は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R305〜R317は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R305〜R317のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R301〜R317のうち少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m1は1〜13の整数を表す。
    一般式(D4)中、R401〜R404は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R405〜R415は各々独立にベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R405〜R415のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R401〜R415の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m2は1〜11の整数を表す。
    一般式(D5)中、R501〜R506は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、X及びXは各々独立に、−NR507508、−OR509、又はヒドロキシ基を表す。R501〜R506、X、及びXのうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R501〜R506の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m3は1〜6の整数を表す。また、R507、R508、及びR509は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
    一般式(D6)中、R601及びR602は各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R603〜R609は各々独立に、ベンゼン環上の基を表し、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はフェノキシ基を表し、R603〜R606のうちいずれか2つ、また、R607〜R609のうちいずれか2つが連結し環を形成してもよい。但し、R601〜R609の少なくとも1つには−(SOM)が含まれる。ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、又はNH であり、m4は1〜7の整数を表す。〕
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセットを用いて、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛を染色する捺染方法。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセットにより捺染された布帛。
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