JP2015067500A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、上記水平ダイレクトプレス法では、溶融ガラスが一対のプレス成形型に接触してから離れるまでのプレス成形型それぞれの温度を、溶融ガラスのガラス転移点温度未満の温度に制御される。このため、一方のプレス成形型にのみ長く溶融ガラスが接触することがなく、しかもプレス成形型は温度制御されるので、表面粗さが極めて低い内周面としたプレス成形型を用いたとしても、溶融ガラスがプレス成形型のプレス面に融着することを防止できる。このため、プレス面には、離型材を付着させる必要がない。
このため、上記水平ダイレクトプレス法では、板厚偏差が小さく平面度の低下が抑制され、かつ、表面粗さが低下したガラスブランクを得ることができる。このガラスブランクから円盤形状のガラス基板を作製するとき、形状加工として、ガラスブランクに切り筋線を形成し、この切り筋線に沿って切断する形状加工処理が行われる。具体的には、ガラスブランクから切り筋線の外側部分を割断、除去するには、ガラスブランクは部分的に加熱される。このとき、ガラスブランクの熱膨張の差異により切り筋線からクラックが進展し、最終的に円形状の切り筋線の外側部分が内側部分から割断、除去される。
以上の知見により、本願発明者は、以下に記載の態様の発明を想到するに至った。
前記形状加工処理は、プレス法によって形成された磁気ディスク用ガラスブランクの応力の高い主表面の領域と応力の低い主表面の領域とを通るように円形状の切り筋線を定めて前記切り筋線を前記ガラスブランクの主表面に形成する処理と、前記ガラスブランクの前記切り筋線の内周側の部分を外周側の部分から分離して円盤形状のガラス基板を得る処理と、を含む。
例えば、前記形状加工処理は、磁気ディスク用ガラスブランクの主表面の平面視の応力分布を用いて、応力の高い領域と応力の低い領域の2つに区分けする境界線を横切るよう
に円形状の切り筋線を定めて前記切り筋線を前記ガラスブランクの主表面に形成する。
以下、本実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板について説明する。図1(a)は、本実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板の一例の斜視図である。
図1 (a)に示す磁気ディスク用ガラス基板(以下、ガラス基板という)1は、円環状の薄板のガラス基板である。磁気ディスク用ガラス基板のサイズは問わないが、磁気ディスク用ガラス基板は、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板のサイズである。公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の場合、例えば、外径が65mm、中心穴の径が20mm、板厚が0.6〜1.0mmである。このガラス基板1の主表面上に磁性層が形成されて磁気ディスクが作られる。
図2は、ガラスブランク10のリタデーション値の分布の一例を示す図である。図2は、ガラスブランク10の楕円形状の長軸A1と短軸A2の交点を中心とする略楕円形状のリタデーション値の等値線を表した応力コンター図でもある。具体的には、リタデーション値Rdが6nmである等値線は、長軸A1と短軸A2の交点Oを中心とする略楕円形状であり、同様に、リタデーション値が4nm、2nmである等値線も、長軸A1と短軸A2の交点を中心とする略楕円形状である。ガラスブランク10において、リタデーション値Rdが2nm以下となる領域は、長軸A1と短軸A2の交点Oを含む広い領域であり、リタデーション値Rdが2mmを超えると、急激にリタデーション値Rdが増大する分布を示す。
なお、図2に示すリタデーションの分布は、長軸A1及び短軸A2上のリタデーション値の分布を取得し、長軸A1上、及び短軸A2上の同じリタデーション値の位置を通り、長軸A1及び短軸A2の方向をそれぞれ長軸及び短軸の方向とする楕円形状を形成することにより、図2に示す分布を得ることができる。勿論、ガラスブランク10のあらゆる位置のリタデーション値を計測することにより分布を形成することもできる。
図3は、本実施形態で形成される切り筋線の一例を説明する図である。
例えば、図2に示すようなガラスブランク10内の応力分布の等値線を表す応力コンター図を予め取得する。このコンター図を用いて切り筋線を形成しようとするガラスブランク20の応力分布を定める。プレス成形により得られたガラスブランク20の外形形状は、例えば楕円形状であり略同じ形状をしている。このため、例えば長軸A1と短軸A2の交点Oと、ガラスブランク20の長軸B1と短軸B2の交点O’を位置合わせする。したがって、ガラスブランク20の応力分布は、応力コンター図から推定することができる。すなわち、ガラスブランク10の応力コンター図からガラスブランク20の主表面のリタデーション値の分布である応力分布を得、この応力分布から、ガラスブランク20の応力の高い領域と応力の低い領域とを把握する。このとき、ガラスブランク20の主表面に形成しようとするガラス基板1の外周を定める円形状の切り筋線22を、応力コンター図の等値線R1を横切るような位置に設定して、切り筋線22をガラスブランク10の主表面に形成する。切り筋線22は、例えば超鋼合金あるいはダイヤモンド粒子を含んだスクライバにより形成される。図中の等値線R2は、切り出し領域の最大限界線である。等値線R2の外側に切り筋線を形成すると、切り筋線22に沿ってガラスブランクが割れない可能性の高くなる。したがって、切り筋線22は、等値線R2で囲まれる領域内で形成される。
なお、上記実施形態では、応力コンター図を予め取得し、このコンター図を用いて切り筋線22を定めるが、長軸A1及び短軸A2に沿った応力分布を用いて切り筋線22を定めることもできる。すなわち、長軸A1及び短軸A2に沿った応力分布から、それ以外の部分の応力分布を楕円形状の等値線によって求めることができるので、長軸A1及び短軸A2に沿った応力分布から求めた等値線R1を横切るように切り筋線22の位置を設定して、切り筋線22をガラスブランク10の主表面に形成することができる。
このように、リタデーション値を容易に計測することができ、ガラスブランク10内の応力の値とリタデーション値の対応関係を得ることができるので、切り筋線22の形成に用いる応力分布は、リタデーション値によって作られた分布を用いることが実用上好ましい。
図中の曲線C1は、プレス成形により得られたガラスブランクのリタデーション値Rdの分布であり、曲線C2は、ダウンドロー法により形成されたシートガラスから切り出されたガラスブランクのリタデーション値Rdの分布である。シートガラスから切り出されたガラスブランクの場合、リタデーション値Rdはいずれも1nm以下でありその変動も小さい。このため、応力の値は小さく、応力の値の変動も小さい。これに対して、プレス成形により得られたガラスブランクの場合、交点O’から20mmの範囲までリタデーション値Rdは2nm以下であり、交点O’から20mm以上離れた領域では、リタデーション値Rdは増大する。したがって、応力の値の高い領域及び低い領域を利用して、ガラスブランクの不要な部分(切り筋線22の外側の部分)を割断し除去する本実施形態の方法は、プレス成形に適用することができる。
このようなガラスブランクは、以下のプレス成形により得ることができる。
ガラスブランクの成形では、水平ダイレクトプレス方式と垂直ダイレクトプレス方式がある。図6(a),(b)は、本実施形態で用いるガラスブランクの成形方法の一例を説明する図である。
水平ダイレクトプレス方式は、図6(a),(b)に示すように、溶融ガラス流を切断することにより溶融ガラスの塊Gを得て自由落下させ、この落下中の溶融ガラスの塊Gを、溶融ガラスの塊Gの落下方向に対して交差する方向に対向配置された一対の型121,122を水平方向から溶融ガラスの塊Gを挟み込むことにより溶融ガラスの塊Gをプレスしてガラスブランクを成形する方式である。溶融ガラスの塊Gからガラスブランク20を成形するとき、プレス面121a,122aから対向する型の方向(対向方向)に突出した部材121b,122b同士が接触する。これにより、プレス面121aとプレス面122aとの間に一定の隙間が形成され、この隙間がガラスブランク20の板厚を定める。このとき、溶融ガラスの塊Gを一対の型121,122のプレス面121a,122aに挟み込むことによりプレス面121a,122aに沿って拡がる溶融ガラスの塊Gの先端がプレス面121a,122aの端に到達しないように溶融ガラスの塊Gはプレスされる。
このようなプレスにより、ガラスブランク10が得られる。
垂直ダイレクトプレス方式は、図7に示すように、溶融ガラスの塊Gをプレス用の下型221で受けた後、上方から下りて来る上型222と下型221とで溶融ガラスの塊Gを上下方向から挟み込むことにより、溶融ガラスの塊Gをプレスしてガラスブランク20を成形する方式である。溶融ガラスの塊Gからガラスブランク20を成形するとき、プレス面221a,222aから対向する型の方向(対向方向)に突出した部材221b,222b同士が当接する。これにより、プレス面221aとプレス面222aとの間に一定の隙間が形成され、この隙間がガラスブランク20の板厚を定める。このとき、溶融ガラスの塊Gを一対の型221,222のプレス面221a,222aに挟み込むことによりプレス面221a,222aに沿って拡がる溶融ガラスの塊Gの先端がプレス面221a,222aの端に到達しないように溶融ガラスの塊Gはプレスされる。
このようなプレスにより、ガラスブランク10が得られる。
ガラスブランクから磁気ディスクに適したガラス基板を製造する方法では、まず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクの成形処理が行われる。次に、このガラスブランクの粗研削処理が行われる。この後、ガラスブランクに形状加工処理及び端面研磨処理が施される。この後、ガラスブランクから得られたガラス基板に固定砥粒を用いた精研削処理が行われる。この後、第1研磨処理、化学強化処理、及び、第2研磨処理がガラス基板に施される。なお、本実施形態では、上記流れで行うが、上記処理は必須ではなく、これらの処理は適宜行われなくてもよい。以下、各処理について、説明する。
ガラスブランクの成形では、図6(a),(b)あるいは図7に示すようなプレス成形法を用いることができる。プレス成形法により、真円形状あるいは略楕円形状のガラスブランク20を得ることができる。
粗研削では、具体的には、ガラスブランク20を、遊星歯車機構の周知の両面研削装置に装着される保持部材(キャリア)に設けられた保持穴内に保持しながらガラスブランク20の両側の主表面の研削が行われる。研削材として、例えば遊離砥粒が用いられる。粗研削では、ガラスブランク20が目標とする板厚寸法及び主表面の平坦度に略近づくように研削される。なお、粗研削は、成形されたガラスブランク20の寸法精度あるいは表面粗さに応じて行われるものであり、場合によっては行われなくてもよい。
次に、形状加工が行われる。形状加工では、ガラスブランク20の成形後、上述したガラス基板1の外周を定める切り筋線22をガラスブランク20の主表面に形成するとともに、中心に内孔を設けるためにガラス基板の1の内周を定める図示されない切り筋線を主表面に形成し、この後ガラスブランク20を部分的に加熱して熱膨張差により不要な部分を割断、除去する。これにより、ガラス基板1が得られる。その後、ガラス基板1の端面の面取りを実施する。
次にガラス基板1の端面研磨が行われる。端面研磨は、例えば研磨ブラシとガラス基板1の端面との間に遊離砥粒を含む研磨液を供給して研磨ブラシとガラス基板1とを相対的に移動させることにより研磨を行う処理である。端面研磨では、ガラス基板1の内周側端面及び外周側端面を研磨対象とし、内周側端面及び外周側端面を鏡面状態にする。
次に、ガラス基板1の主表面に精研削が施される。具体的には、固定砥粒を貼り付けた定盤を用い、遊星歯車機構の周知の両面研削装置を用いて、ガラス基板1の主表面に対して研削を行う。この場合、研磨パッドの代わりに固定砥粒を定盤に設ける。
この研削では、固定砥粒を用いた研削の代わりに、遊離砥粒を用いて研削してもよい。
次に、ガラス基板1の主表面に第1研磨が施される。第1研磨は、遊離砥粒を用いて、定盤に貼り付けられた研磨パッドを用いる。第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したクラックや歪みの除去をする。第1研磨では、主表面端部の形状が過度に落ち込んだり突出したりすることを防止しつつ、主表面の表面粗さ、例えば算術平均粗さRaを低減することができる。
ガラス基板1は適宜化学強化することができる。化学強化液として、例えば硝酸カリウム,硝酸ナトリウム、またはそれらの混合物を加熱して得られる溶融液を用いることができる。そして、ガラス基板1を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層にあるガラス組成中のリチウムイオンやナトリウムイオンが、それぞれ化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオンやカリウムイオンにそれぞれ置換されることで表層部分に圧縮応力層が形成され、ガラス基板1が強化される。
化学強化を行うタイミングは、適宜決定することができるが、化学強化の後に研磨を行うようにすると、表面の平滑化とともに化学強化によってガラス基板1の表面に固着した異物を取り除くことができるので特に好ましい。また、化学強化は、必要に応じて行われればよく、行われなくてもよい。
次に、化学強化後のガラス基板1に第2研磨が施される。第2研磨は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する遊星歯車機構の両面研磨装置が用いられる。こうすることで主表面の端部の形状が過度に落ち込んだり突出したりすることを防止しつつ、主表面の粗さを低減することができる。
第2研磨は、必ずしも必須ではないが、ガラス基板1の主表面の表面凹凸を小さくし、より円滑な面とすることができる点で実施することが好ましい。このようにして、第2研磨の施されたガラス基板1は磁気ディスク用ガラス基板となる。
具体的に、等値線R1が4nmの等値線である場合、この等値線R1を横切るように円形状の切り筋線22を定めて切り筋線22をガラスブランク20の主表面に形成したときでは、等値線R1を横切らずに切り筋線をガラスブランクの主表面に形成する場合と比較して、ガラスブランクの不要な部分を割断、除去するのに要する時間に関して約20%の短縮効果が確認された。
10,20 ガラスブランク
22,24 切り筋線
121,122 型
121a,122a,221a,222a プレス面
121b,122b,221b,222b 部材
221 下型
222 上型
Claims (8)
- 磁気ディスク用ガラスブランクから円盤形状のガラス基板を切り出す形状加工処理を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記形状加工処理は、プレス法によって形成された磁気ディスク用ガラスブランクの応力の高い主表面の領域と応力の低い主表面の領域とを通るように円形状の切り筋線を定めて前記切り筋線を前記ガラスブランクの主表面に形成する処理と、前記ガラスブランクの前記切り筋線の内周側の部分を外周側の部分から分離して円盤形状のガラス基板を得る処理と、を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 前記主表面に前記切り筋線を形成する処理では、前記磁気ディスク用ガラスブランクの主表面のリタデーション値の分布である応力分布から、前記磁気ディスク用ガラスブランクの応力の高い領域と応力の低い領域とを把握して、前記切り筋線を前記ガラスブランクの主表面に形成する、請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記切り筋線上における前記リタデーション値の最大値と最小値の差が3nm以上15nm以下である、請求項2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記主表面に前記切り筋線を形成する処理では、前記ガラスブランクにおける前記リタデーション値の分布を、前記リタデーション値の高い領域と前記リタデーション値の低い領域の2つに区分けしたとき、前記リタデーション値の高い領域と前記リタデーション値の低い領域を区分けした境界線を通るように前記切り筋線を前記ガラスブランクの主表面に形成する、請求項2または3に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記境界線は、前記リタデーション値が2〜4nmの範囲に含まれる値に対応する圧力分布の等値線である、請求項4に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記切り筋線のすべての部分は、前記リタデーション値が20nm以下の範囲に対応する応力の領域に含まれる、請求項2〜5のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 複数の磁気ディスク用ガラスブランクから複数のガラス基板を作製するとき、前記磁気ディスク用ガラスブランクを作製したプレス型の情報、前記磁気ディスク用ガラスブランクを作製したプレス日時情報、及び、前記磁気ディスク用ガラスブランクのガラス組成の情報のうち少なくとも1つの情報によって区分けされた磁気ディスク用ガラスブランクの群ごとに、前記応力分布の情報は取得される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記磁気ディスク用ガラスブランクは、落下中の溶融ガラスの塊を一対の型のプレス面に挟み込むことにより前記プレス面に沿って拡がる前記塊の先端が前記プレス面の端に到達しないように溶融ガラスをプレスすることにより得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
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