上記の発明が解決しようとする課題に鑑みて、本発明は、車両の運転補助を行うための方法、及び車両の運転補助を行うための装置を提案する。さらに、この方法を実行するためのコンピュータプログラムを提案する。なお、従属請求項に記載した発明は、本発明の好ましい実施態様の一部に係わる。
本発明の一般的態様によれば、走行している車両の横加速度及び横加加速度、又は少なくとも、走行している車両の横加速度及び横加加速度を示すパラメータを求め、とりわけ定期的に求め又は継続的に監視し、求めた横加速度及び横加加速度に基づいて、走行している車両の前後加速度を制御することができる、車両の運転補助を行うための方法又は装置を提供することができる。
また、追加又は代替として、走行している車両の横加速度及び横加加速度、又は少なくとも、走行している車両の横加速度及び横加加速度を示すパラメータを、被制御車両の車両速度に基づいて、及び、被制御車両の前方の道路(例えばプレビューポイント)のカーブの曲率などの曲率情報に基づいて、事前に予測(推定)し、とりわけ定期的に予測(推定)し又は継続的に予測(推定)し、予測(推定)した横加速度及び横加加速度に基づいて、例えば被制御車両の前方の道路のカーブの曲率の時間微分値及び被制御車両の車両速度に基づいて、走行している車両の前後加速度を制御することができる、車両の運転補助を行うための方法又は装置を提供することができる。
本発明の第1の態様によれば、道路を前後方向に走行している被制御車両の運転補助を行うための方法であって、被制御車両の(求めた、及び/又は予測又は推定した)横加速度及び1つ以上の設定パラメータに基づいて前後加速度目標値を決定すること、及び計算した前後加速度目標値に基づいて被制御車両の前後加速度を制御することを含む方法が提案される。
本発明の第1の態様によれば、被制御車両の前方の道路を前後方向に走行している先行車の運転特性(運転の特徴)を推定又は求め、コーナリング時の先行車の推定又は求めた運転特性(運転の特徴)に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定することを、前記の方法にさらに含めることができる。
本発明の好ましい態様によれば、先行車の運転特性は、先行車から及び/又は先行車の情報を有しているデータセンターから受信する情報に基づき、被制御車両と先行車及び/又はデータセンターとの間の通信プロトコルを用いて、求める又は推定することができる。好ましくは、先行車の運転特性は、被制御車両のセンサで検知した情報に基づいて推定又は求めることもでき、先行車に作用する前後加速度及び/又は横加速度に基づいて推定又は求めることもでき、先行車に作用する予測前後加速度及び/又は予測横加速度に基づいて推定することもできる。
先行車の運転特性に関する情報(例えば、先行車の速度、位置、横加速度、及び/又は前後加速度)は、被制御車両と先行車間、及び/又はデータセンターと被制御車両間に設定されるデータ通信を介して入手できる。この場合、データセンサは、先行車から又は他の車両の外部センサからデータを入手する。追加又は代替として、運転特性に関する情報は、センサデータから入手することもでき、例えば被制御車両と先行車間の相対速度と相対位置を検知できる被制御車両のセンサから入手することもできる。先行車の速度、位置及び前後加速度は、被制御車両の速度及び/又は位置、及び被制御車両と先行車間の相対速度及び/又は相対位置に基づいて求めることができる。先行車の横加速度は、先行車の推定速度と推定位置に基づいて、及び先行車の位置での道路の曲率を示す曲率情報に基づいて推定することができる。
前記の第1の態様によれば、先行車の運転特性を推定/求める手順に加えて、又はこの手順を示すものとして、被制御車両の前方の道路を前後方向に走行している先行車にコーナリング時に作用している又は作用する横加速度を推定(予測)する又は求めること、及びコーナリング時に先行車に作用している又は作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定する手順を、前記の方法に含めることができる。
本発明によると、前後加速度制御の設定パラメータの設定が、先行車がいる場合は先行車の推定横加速度に応じても調整されるという点で、被制御車両のドライバの安全性及び運転の利便性が向上できるという有利な効果が得られる。
例えば、先行車に関する情報が一切ない状態で前後加速度を制御すると、コーナリング時に先行車までの距離が閾値以下にまで減少するという状況に至る可能性があり、不都合である。この場合、被制御車両のドライバは、先行車までの距離がそれ以上減少するのを避けるために、前後加速度制御運転に加えてブレーキを積極的に使う必要が生じるか、又は先行車までの距離がそれ以上減少するのを避けるために被制御車両の速度を落とすアダプティブ・クルーズ・コントロールを作動させることになるため、被制御車両のドライバの運転の利便性が低下する。
しかし、本発明によれば、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定することにより、先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度を制御することができる。
特に、被制御車両の横加速度に基づく前後加速度制御が、先行車の推定横加速度に適応するように設定パラメータを調整すれば、先行車までの距離が縮まり過ぎるのを避けることにつながり、ドライバがブレーキを使って積極的に減速する必要がなくなり、又はアダプティブ・クルーズ・コントロールを作動させる必要がなくなり、利便性が高くなる。
好ましくは、前記の方法に先行車の速度を求める手順をさらに含める。この場合、先行車に作用する横加速度は、好ましくは求められた先行車の速度及び曲率情報に基づいて推定される。これには、先行車に作用する横加速度を、例えば地図データ(例えばカーナビゲーションの地図データ)等から得られる被制御車両の前方の道路の曲率などの曲率情報に基づいて、確実かつ正確に推定できるという利点がある。好ましくは、先行車の位置を求めること、及び先行車の位置での道路の曲率を地図データに基づいて求めることを前記の方法にさらに含めることができる。この場合、先行車に作用する横加速度は、好ましくは求められた先行車の速度、及び求められた先行車の位置での道路の曲率に基づいて推定できる。
上記の本発明の態様によれば、先行車の位置は、先行車から受信した位置データに基づいて求められることが好ましく、かつ/又は被制御車両の位置を求めること、及び被制御車両から先行車までの距離を(例えばレーダー、ソナー、光反射等のセンサ手段により)求めることを前記の方法にさらに含めることができる。この場合、先行車の位置は、好ましくは被制御車両の位置及び求められた先行車までの距離に基づいて求められる。
本発明の別の好ましい態様によれば、被制御車両の横加速度及び1つ以上の設定パラメータに基づいて前後加速度目標値を決定する手順は、複数の設定モードのいずれかによって実行される。この場合、好ましくはコーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が、前後加速度制御に基づいて制御されているときは複数の設定モードの各々で異なるように、設定パラメータは、複数の設定モードの各々で別々に設定するのが好ましい。したがって、恐らくはドライバの好みに応じて、(カーブに入るときの)コーナリング時の前後方向の減速を他の設定モードの場合より小さくする設定モード、及び/又はカーブから出るときの正加速度を他の設定モードより大きくする設定モードを設けることができる。
上記の本発明の好ましい態様によれば、複数の設定モードは、少なくとも第1設定モード及び第2設定モードを含み、コーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が、第1設定モードより第2設定モードの場合に大きいと、さらに好ましい。この場合、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定する手順は、先行車に作用する推定横加速度の絶対値が予め定めた閾値より小さい場合は第1設定モードを選択すること、及び/又は先行車に作用する推定横加速度の絶対値がこの閾値より大きい場合は第2設定モードを選択することを含むことが好ましい。
したがって、被制御車両のドライバが好みに従って第2設定モードを標準設定として予め選択していた場合でも、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度が閾値より小さいと判断されると、前後加速度制御のために実際には第1設定モードが選択され、それによってコーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が、予め設定されていた制御挙動と比較して小さくなるため、コーナリング時に先行車との距離が縮まり過ぎるのを効果的かつ有利に避けることができる。
本発明の他の実施態様によれば、ドライバの好みに従ってどの設定モードが標準設定として予め設定されたか、すなわちドライバが第1設定モード又は第2設定モード(又は他の設定モード)のいずれを予め選択したかを判断する手順を、前記の方法にさらに含めることができる。好ましくは、前記の設定モード選択を、予め設定された設定モードに応じて実行することができる。例えば、ユーザーが第1設定モード(又はコーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が第1設定モードの場合よりさらに小さくなる別の設定モード)を予め設定していた場合は、先行車に作用する推定横加速度の絶対値が閾値より大きい場合でも、第2設定モードが選択されないのが好ましい。その代わりに、予め設定されていた設定モードが維持されるのが好ましい。ユーザーが第2設定モード(又はコーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が第2設定モードの場合よりさらに大きくなる別の設定モード)を予め設定していた場合に限り、先行車に作用する推定横加速度の絶対値が閾値より大きい場合に、第2設定モード(又はさらに大きくなる設定モード)が選択されるのが好ましい。
具体的には、上記の本発明の好ましい態様によれば、複数の設定モードは、少なくとも第1設定モード及び第2設定モードを含み、コーナリング時に被制御車両に作用する平均横加速度及び/又は最大横加速度が第1設定モードの場合より第2設定モードの場合が大きいことがさらに好ましい。この場合、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定する手順は、先行車に作用する推定横加速度の絶対値が閾値より小さい場合は(ドライバが第2設定モードを予め選択していたとしても)第1設定モードを選択すること、先行車に作用する推定横加速度の絶対値が閾値より大きいが、ユーザーが第1設定モードを予め選択していた場合は第1設定モードを選択すること、及び/又は先行車に作用する推定横加速度の絶対値が閾値より大きく、ユーザーが第2設定モードを予め選択していた場合は第2設定モードを選択することを含むことが好ましい。
上記の全ての態様では、先行車から受信した位置データに基づいて先行車の位置を求めることができ、かつ/又は先行車から受信した速度データに基づいて先行車の速度を求めることができる。さらに、先行車に作用する横加速度及び/又は前後加速度を、先行車から受信したセンサデータに基づいて求めることもできる。代替又は追加として、被制御車両のセンサで検知した先行車の相対位置(例えば、検知した先行車の方向及び/又は先行車までの距離)に基づいて先行車の位置を求めることができ、カメラ、ソナー、レーダー等のセンサデータに基づく被制御車両の相対速度に基づいて先行車の速度を求めることができる。
本発明の別の好ましい態様によれば、前記の1つ以上の設定パラメータは、車両の負の前後加速度を制御するためのゲイン係数を少なくとも1つ含む。この場合、前後加速度目標値の絶対値は、ゲイン係数の増加と共に増加し、ゲイン係数の減少と共に減少する。好ましくは、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための前記の1つ以上の設定パラメータを設定する手順は、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の関数に基づいて車両の負の前後加速度を制御するためのゲイン係数を少なくとも1つ設定することを含む。好ましくは、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の関数としてのゲイン係数であって、車両の負の前後加速度を制御するための少なくとも1つのゲイン係数は、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の絶対値の増加と共に減少する。
したがって、(例えばカーブの入口など)被制御車両の負の前後加速度制御(減速制御)時には、先行車に作用する推定横加速度の絶対値の増加と共に減少する少なくとも1つのゲイン係数が、先行車の推定横加速度の絶対値の関数に基づいて求められる。
すなわち、先行車に作用する推定横加速度が小さくなったと判断され、それによって先行車のコーナリング速度が低下したことが示されると、少なくとも1つのゲイン係数が大きい値に設定され、それによって被制御車両は前後方向により強く減速される。また、先行車に作用する推定横加速度が大きくなったと判断され、それによって先行車のコーナリング速度が上昇したことが示されると、少なくとも1つのゲイン係数が小さい値に設定され、それによって被制御車両は前後方向にあまり強くなく減速される。
したがって、効率的で確実かつ利便性の高い前後加速度制御の実行が可能となり、先行車までの距離は、ドライバが積極的に減速する必要がある安全な車間距離以下の距離、又は追加として設けられたアダプティブ・クルーズ・コントロールによって車両を減速する必要がある安全な車間距離以下の距離に、ドライバの利便性及び運転快適性を犠牲にして、容易に減少することがない。
本発明の別の好ましい態様によれば、前記の1つ以上の設定パラメータは、車両の正の前後加速度を制御するためのゲイン係数を少なくとも1つ含む。この場合、前後加速度目標値の絶対値は、ゲイン係数の増加と共に増加し、ゲイン係数の減少と共に減少する。好ましくは、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための前記の1つ以上の設定パラメータを設定する手順は、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の関数に基づいて車両の正の前後加速度を制御するためのゲイン係数を少なくとも1つ設定することを含み、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の関数としてのゲイン係数であって、車両の正の前後加速度を制御するための少なくとも1つのゲイン係数は、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度の絶対値の増加と共に増加する。
したがって、(例えばカーブの出口など)被制御車両の正の前後加速度制御(正の加速制御)時には、先行車に作用する推定横加速度の絶対値の増加と共に増加する少なくとも1つのゲイン係数が、先行車の推定横加速度の絶対値の関数に基づいて求められる。
すなわち、先行車に作用する推定横加速度が小さくなったと判断され、それによって先行車のコーナリング速度が低下したことが示されると、少なくとも1つのゲイン係数が小さい値に設定され、それによって被制御車両は正の前後方向にあまり強くなく加速される。また、先行車に作用する推定横加速度が大きくなったと判断され、それによって先行車のコーナリング速度が上昇したことが示されると、少なくとも1つのゲイン係数が大きい値に設定され、それによって被制御車両は正の前後方向により強く加速される。
したがって、効率的で確実かつ利便性の高い前後加速度制御の実行が可能となり、先行車までの距離は、ドライバが積極的に減速する必要がある安全な車間距離以下の距離、又は追加として設けられたアダプティブ・クルーズ・コントロールによって車両を減速する必要がある安全な車間距離以下の距離に、ドライバの利便性及び運転快適性を犠牲にして、容易に減少することがない。
本発明の別の好ましい態様によれば、前後加速度目標値を決定する手順は、コーナリング時の車両の求められた横加速度とこれに対応する横加加速度に基づいて計算される第2前後加速度目標値を決定する手順を含む。
上記の本発明の態様の代替又は追加として用いることができる別の好ましい態様によれば、プレビューポイントにおける車両の推定横加速度であって、プレビューポイントにおける推定横加速度に基づいて計算される第3前後加速度目標値を決定する手順を、前後加速度目標値を決定する手順に含めることができる。プレビューポイントは、予め定めた所定の予見距離、又は予め定めた所定の予見時間と車両の現在速度とに基づいて計算される予見距離だけ、被制御車両の前方に位置する地点である。プレビューポイントにおける推定横加速度は、プレビューポイントにおける道路の曲率の推定値と被制御車両の現在速度とに基づいて計算される。
本発明の好ましい態様によれば、第2前後加速度目標値及び第3前後加速度目標値に基づいて、前後加速度目標値が決定される。
本発明の第2の態様によれば、道路を前後方向に走行する被制御車両の運転補助を、上記の本発明の態様のいずれか1つに従って実行するための装置(車両に実装された又は搭載可能な制御装置又は制御システムなど)であって、被制御車両の横加速度及び1つ以上の設定パラメータに基づいて前後加速度目標値を決定するための前後加速度目標値決定手段と、計算して決定した前後加速度目標値に基づいて被制御車両の前後加速度を制御するための前後加速度制御手段とを含む装置が提案される。
上記の装置には、被制御車両の前方の道路を前後方向に走行している先行車の運転特性を推定する又は求めるための運転特性決定手段と、推定又は求めた先行車の運転特性に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定する設定手段とを含めることができる。
具体的には、道路を前後方向に走行する被制御車両の運転補助を、第1の態様及びその好ましい態様のいずれかに記載した方法に従って実行するための装置(車両に実装された又は搭載可能な制御装置又は制御システムなど)を設けることができる。上記の装置には、被制御車両の横加速度及び1つ以上の設定パラメータに基づいて前後加速度目標値を決定するための前後加速度目標値決定手段と、計算して決定した前後加速度目標値に基づいて被制御車両の前後加速度を制御するための前後加速度制御手段とを含めることができる。さらに、被制御車両の前方の道路を前後方向に走行している先行車にコーナリング時に作用する横加速度を推定するための横加速度推定手段と、コーナリング時に先行車に作用する推定横加速度に基づいて前後加速度目標値を計算するための1つ以上の設定パラメータを設定する設定手段とを、上記の装置にさらに含めることができる。
本発明の第3の態様によれば、上記の本発明の第1の態様及び好ましい態様のうちのいずれか1つとして記載した方法の各手順を車両制御装置に実行させるためのコンピュータプログラムを含むプログラム製品が提案される。
上記において、「加速度」という用語は、速さ(又は速度)の時間についての導関数を、「加加速度」という用語は、加速度の時間についての導関数又は速さ(又は速度)の時間についての第2次導関数を、それぞれ指す場合がある。一般に、別段の記載がない限り、本明細書で用いる場合の「加速度」という用語は、正の加速度(すなわち速度を上げること)のみならず、負の加速度(すなわち減速又は速度を下げること)も含む場合がある。
車両の横方向とは、車両のピッチ軸の方向と呼ばれることもあり、車両の前後方向とは、車両のロール軸の方向と呼ばれることもある。
さらに、速度、加速度及び加加速度は概してベクトル量であるが、横加速度、前後加速度及び横加加速度等の用語は、一般にスカラー量を指す。
座標系の主軸としてヨー軸、ピッチ軸及びロール軸を有する車両のデカルト座標系では、横加速度は、加速度ベクトルのピッチ軸座標での値を指し、前後加速度は、加速度ベクトルのロール軸座標での値を指す。同様に、横加加速度は加加速度ベクトルのピッチ軸座標での値を指す。
運転制御では、減速及び/又は制動という意味において、車両の正の加速度(速度を上げるという意味での車両の加速)と負の加速度(減速)とを区別するのが好ましいことがあるが、運転制御は左折運転と右折運転とで同様に実行することが好ましいため、横加速度については、正の横加速度(すなわち左/右への加速)と負の横加速度(すなわち右/左への加速)とを必ずしも区別する必要はない。
したがって、横加速度は、加速度ベクトルのピッチ軸座標での絶対値を指す場合もある。横加加速度は、横加速度の絶対値の時間についての導関数を指すことが好ましい。一方、横加加速度については、やはり、正の加加速度(すなわち横加速度の増加)と負の加加速度(すなわち横加速度の減少)とを区別するのが好ましいことがある。
本発明の好ましい実施態様を、添付図面を参照しながら以下に説明する。説明する各実施態様の特徴及び態様を改良したり組み合わせたりすれば、本発明のさらなる実施態様を提供することができる。
コーナリングのための前後加速度制御(プレビューGベクトル制御と呼ばれ、PGVCと表す)は、曲がりくねった道路を運転する際にドライバのペダル作業を軽減するためのドライバ補助システムの1つである。このシステムにより、運転コースの曲率に応じて車両を自動的に減速/加速させることができる。しかし、このシステムには、先行車との車間距離を維持するように車両を減速/加速させる機能はない。アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、先行車との車間距離を維持する機能であり、PGVCとACCを組み合わせれば、コーナリング時に先行車との車間距離を維持するための1つの解決策になると考えられる。これらの機能を調整/付加/交換/縮小するという観点からは、これら2つの機能を別々に扱えば有用である。しかし、このように異なる機能によって別々に前後加速度を制御すると、前後加速度が断続的に変化する可能性があり、ドライバに不快感を与えることになる。
前後加速度のこのような断続的変化を避けるため、PGVCは対象物検知装置から入力信号を受信し、先行車情報(車間距離、速度)に基づいてコーナリングのための前後加速度制御を変更する。PGVCパラメータは、コーナリング時に先行車の挙動に応じて車両を減速/加速させるように設定される。例えば、コーナリング時に先行車が横加速度を落とすためにカーブをゆっくり走行する場合は、ドライバが高加速度のコーナリング設定を選択していたとしても、自車もカーブをゆっくり走行する。この結果、自車は、コーナリング時に先行車との車間距離を維持し、先行車との安全な時間間隔を維持するためのACCによる減速制御は作動せず、コーナリング時の前後方向の加速がスムーズになる。
図1は、先行車がいる場合にカーブを走行中の自車(実線)と先行車(一点鎖線)の速度V、先行車までの距離(一点鎖線)と目標距離(点線)、及び前後加速度(Gx)と横加速度(Gy)を例示している。自車とは制御される車両であり、以下では被制御車両とも言う。
被制御車両の前後加速度Gxは、PGVC及びACCシステムによって制御される。直線道路を走行中は(図1の区間A)、自車(被制御車両)は先行車を検知するが、速度が異なる(自車が先行車より速い)ため、自車と先行車との車間距離が減少する。しかし、実際の車間距離は目標距離より十分に長いため、ACCにより自車が減速することはない。先行車がカーブを曲がり始めると、自車のセンサは先行車を見失う(図1の区間B)。この期間中、PGVCは、運転コースの曲率情報を用いて車両を減速させる(図1の区間C)。コーナリング終了時に、自車が先行車を再度検知するが、実際の車間距離は目標距離より短くなっている(図1の区間D)。したがって、ACCは車両の急減速を開始する(図1の区間E)。これによって、自車のドライバに不快感が生じる。
図1では、障害物検知装置の性能に限界があるために、自車が先行車を見失った可能性がある。しかし、自車が先行車の検知を継続していたとしても、コーナリング時にはACCが自車と先行車との車間距離に基づいて車両を減速させていたと考えられる。この減速は、コーナリングのための前後加速度制御には関係なく制御され、前後方向の加速はコーナリング時にはスムーズに変化しない。本実施態様は、この問題を解決するために提案され、先行車がいる場合のコーナリング時のスムーズな前後加速度制御を提供するものである。
以下では、最初に、コーナリングのための前後加速度制御について記載する。ACCの機能を拡張し、曲がりくねった道路を走行する際にも使用できるようにするため、曲率情報を用い、かつ、GVC又はPGVCに従った前後加速度制御アルゴリズムを、追加として例示的に提案する。
前後加速度制御は横方向の移動に基づいているため、横加加速度を用いた「Gベクトル制御」(G-Vectoring Control、GVC)と呼ばれる前後加速度制御を利用することができる。GVCを定義する基本式として、以下の式を用いることができる。
ここで、Gxt_GVCは前後加速度コマンド(前後加速度目標値)、Cxyはゲイン係数、Gyは被制御車両の横加速度、dGy/dtは、被制御車両の横加速度の時間導関数として得られた被制御車両の横加加速度である。式(1)は、横移動と連携して前後加速度を制御する場合の基本式である。言い換えれば、非常に単純な制御ルールである。すなわちGxt_GVCは基本的に、一次遅れ(Ts)を含むCxyとGyの積によって決まる。車両テストの結果によると、熟練ドライバの協調制御の方法の一部を式(1)で再現できることが確認された。
具体的には、定期的もしくは周期的に求める又は継続的に監視する、車両のピッチ軸方向の横加速度Gyを制御ユニット(制御装置)に直接入力するように構成された、又は横加速度Gyを推定できる場合の基となるセンサ情報を間接的に提供するように構成されたセンサA又はセンサシステムによるセンサ入力に基づいて、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは、決定され、制御ユニットからの前後加速度制御目標値Gxt_GVC出力に従って、車両を加速/減速させるための1つ以上の駆動装置Bに出力される。
センサA又はセンサシステムには、例えばモーションセンサ、加速度計及び/又はヨーレート、ピッチレート、ロールレートを検知するジャイロセンサなどの、加速度を検知するセンサを含めることができる。これらに加えて又はこれらの代わりに、ハンドル(又は駆動輪)角度を検知するハンドル角度(駆動輪角度)センサをセンサAに含めることもでき、横加速度は、車両速度及び求められたハンドル角度(駆動輪角度)に基づいて計算することができ、及び/又はジャイロセンサによって求められたピッチレート、ロールレート及び/又はヨーレートに基づいて推定することができる。
入力された横加速度Gyに基づき、時間についての横加速度Gyの導関数として得られた又は計算されたものを横加加速度dGy/dtと呼び、横加速度Gy及び横加加速度dGy/dtに基づいて、上記の式(1)に従い、前後加速度制御目標値Gxt_GVCが計算される。
ここでCxy及びTは、予め定義し、制御ユニット1の記憶ユニットに格納することができる補助的な制御パラメータである。Cxyは「ゲイン係数」(無次元パラメータ)と呼ばれ、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは、ゲイン係数Cxy及び横加加速度dGy/dtの絶対値に正比例する。前後加速度制御目標値Gxt_GVCはゲイン係数Cxyが増加すると増加し、ゲイン係数Cxyが減少すると減少する。「時定数」あるいは「時間係数」(無次元パラメータ)と呼ばれるTなどの別の制御パラメータを含めてもよい。この場合、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは、時間係数Tが減少すると増加し、時間係数Tが増加すると減少する。
上記の式(1)によると、前後加速度制御目標値Gxt_GVCの符号は、横加速度Gyと横加加速度dGy/dtの積の符号の反対である。
ここで横加速度Gyは、左(又は右)側横加速度の場合は負であり、これに対応して右(又は左)側横加速度の場合は正であることにより、左右横方向の間で区別される。一方、横加速度Gyは、横加速度の絶対値のみを指すこともあるが、この場合は横加加速度dGy/dtが、時間に関する横加速度の絶対値の導関数である必要がある。
図2は、上述の前後加速度制御目標値Gxt_GVCに従って前後加速度Gxが制御された場合の、時間の関数として、横加速度Gy、横加加速度dGy/dt、及び横加速度Gyと横加加速度dGy/dtに基づく前後加速度Gxの間の関係を例示している。図2は、横加速度(Gy)、横加加速度(dGy/dt)及びGベクトル制御(GVC)による前後加速度コマンド(Gxt_GVC)の間の関係を例示している。車両が角を曲がり始めると、横加加速度が増加するのと同時に制動が開始される(図2の(1))。その後は横加加速度がゼロになるため、定常状態のコーナリング時に制動は停止される(図2の(2))。車両が直進運転に戻り始めると、車両は加速を開始する(図2の(3))。
具体的には、車両がカーブでコーナリングに入り、ヨー軸を中心に車両が曲がるようにドライバがハンドルを操作すると、横加速度Gyは、(直線道路では加速、減速又は定速走行に関わらずゼロであるが、)図2の時刻t1とt2の間の時間に示すように、ゼロから増加し始める。
図2の時刻t2とt3の間の中間の時間には、横加速度Gyは、最大値に達した後ほぼ一定になり、図2の時刻t3とt4の間の時間の最後のコーナリングで減少して再度ゼロになり、カーブ出口でカーブから離れる。
この場合、カーブの形状によっては、時刻t2とt3の間の時間が非常に短いか、又は存在しない場合さえある。存在しない場合、横加速度Gyはゼロから最大値に達した後、カーブから離れるときには再度ゼロへと直接減少する。
図2に示されるように、このコーナリング状況では、横加加速度dGy/dtは時刻t1とt2の間で最大値まで増加した後、再度ゼロに減少する。このコーナリング状況の時刻t2とt3の間の中間の時間には、横加速度Gyは著しく変化せず、横加加速度dGy/dtもゼロのままであり、時刻t3とt4の間の最後の時間には、横加加速度dGy/dtがゼロから最小値まで減少し、再度ゼロまで増加する。
上述の前後加速度制御目標値Gxt_GVCは横加加速度dGy/dtの絶対値と正比例するため、前後加速度制御目標値Gxt_GVCの挙動は横加加速度dGy/dtの絶対値の挙動と同様であるが、符号は、横加速度と横加加速度の積の逆の符号になる。
したがってこのコーナリング状況では、カーブに入った直後に最初の時刻t1とt2の間でコーナリングが開始されると、前後加速度制御目標値Gxt_GVCはゼロから最小値まで減少した後、再度ゼロまで増加する。この時間中、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは負であり、したがって、コーナリングの初期段階での車両の負の加速度すなわち減速(制動)に該当する。すなわち、時刻t1とt2の間中、車両速度は低下することになる(減速又は制動制御)。
時刻t2とt3の間の時間中、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは、横加加速度dGy/dtがほぼゼロのままである限り、ほぼゼロのままである、すなわち時刻t2とt3の間の中間の時間のコーナリング時には、車両はほぼ一定速度でカーブを走行する。
最後に、カーブから離れる前のコーナリングの最終段階、すなわちこのコーナリング状況の時刻t3とt4の間の時間中、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは、ゼロから最大値まで増加し、再度ゼロまで減少する。この時間中、前後加速度制御目標値Gxt_GVCは正であり、したがって、コーナリングの最終段階での車両の正の加速度に該当する。すなわち、時刻t3とt4の間中、車両速度は上昇することになる(加速制御)。
図3は、前後加速度制御目標値Gxt_GVCに従い、横加速度Gy及び横加加速度dGy/dtに基づいて前後加速度Gxが制御されている場合の車両のコーナリング時の横加速度Gy及び前後加速度Gxに関するG−Gダイアグラムを例示している。この場合、横軸は前後加速度Gx(左が負の値、右が正の値)を示し、縦軸は横加速度Gyの正の値を示す。
図2を参照しながら説明した関係によると、図3のG−Gダイアグラムでは、コーナリング前のカーブに入る前のGx=Gy=0である起点から始まって時計回り方向に回転している。車両がコーナリングを開始した直後に横加速度Gyが上昇する結果、横加速度Gyが最大値に達するまで前後加速度Gxは負となり、結果的に前後加速度Gxがゼロとなった後、コーナリングの最終段階で横加速度Gyは再度ゼロまで低下し、カーブ出口で横加速度Gyが再度ゼロに達するまで、前後加速度Gxは正となる。
以上を要約すると、前後加速度制御目標値Gxt_GVCに従った車両の前後加速度Gxの制御においては、車両がカーブに入り始めると、横加加速度dGy/dtが増加するのと同時に車両は自動的に制動(又は減速)した後(図2の時刻t1とt2の間の時間、図3の左側を参照)、図2の時刻t2とt3の間の時間中は横加加速度dGy/dtがゼロになるため、車両の定常状態のコーナリングが維持され、前後加速も前後減速も実行されない(すなわち車両は制動を停止し、再加速もしない)。最後に、車両が直進運転に戻り始めるコーナリングの最終段階で、車両は再度加速を開始する(図2の時刻t3とt4の間の時間、図3の右側を参照)。
上記で検討したGVCに加え、曲率に基づくもう1つの前後加速度制御として、「プレビューGベクトル制御」(PGVC)と呼ばれる前後加速度モデルを用いた前後加速度制御も利用することができる。
図4は、プレビューポイント(例えば被制御車両から前方方向に距離Lpvだけ離れた位置にある地点)を用いる予見の一般概念、すなわち、プレビューポイントにおける被制御車両の速度(Vpv)、車両速度(V)、及びプレビューポイントにおける道路曲率(κpv)に基づく前後加速度モデルを示している。車両がプレビューポイントにおいて一定速度で走行している場合、車両に生じる横加速度(Gy_pv)は、以下の式(2)で求められる。
車両の横移動への対応として前後加速度制御と同等のアルゴリズム(すなわちGVC)により加速/減速が実行されることを前提にすると、車両の横移動が実際に生じる前に前後加速度を制御することが可能になる。上述の前提に基づき、GVCではGy_pvに対応する前後加速度が、式(1)に示される横加加速度(dGy/dt)の代わりにGy_pvを用いて計算される。この方法により、(実際に生じた車両の横移動ではなく)これから生じる車両の横移動に関連する前後加速度コマンド値(Gxt_pv)が求められる。ある前提(κpvが正数、Vが定数)に基づくと、Gxt_pvは、ゲイン(Cxy_pv)及び時定数(Tpv)を用い、式(1)、(2)からの式(3)により求められる。
PGVCの前後制御(Gxt_PGVC)は、式(1)により記述されるGベクトル制御コマンド(Gxt_GVC)、及び式(3)により記述されるコーナリングの前後加速度(Gxt_pv)に基づいて計算される。図5及び図6は、PGVCにより減速/加速が制御される典型的なコーナリング状況を示している。
図5は、コーナリングの初期段階、すなわちカーブへの接近から定常状態のコーナリングまでを例示している。車両がカーブに接近すると、車両が方向転換を開始する前にプレビューポイントの曲率(κpv)が増加する(図5のA部分)。κpvが増加するこの段階でのコーナリング前の減速コマンド(Gxt_pv)(破線)は、κpvに基づいて計算される。車両が方向転換を開始した後は(図5のB部分)、横加速度(Gy)が増加し始める。この段階では、Gベクトル減速コマンド(Gxt_GVC)(図5の一点鎖線)が横加加速度情報に基づいて計算される。図5に示されるように、PGVCによる減速コマンド(図5の実線)は、Gxt_pvとGxt_GVCを組み合わせることにより計算される。その結果、コーナリングの初期段階でPGVCにより車両を減速させることが可能になる。
図6は、コーナリングの最終段階、すなわち定常状態からカーブ終了までを例示している。プレビューポイントの曲率(κpv)が一定である間は、PGVCによる加速/減速は生じない(一定速度が維持される)(図6のC部分)。κpvが減少し始め、κpvがマイナスになると、κpvに基づいてコーナリング加速コマンド(Gxt_pv)(図6の破線)が計算される(図6のD部分)。コーナリング終了時には横加速度(Gy)が減少し始め、Gベクトル加速コマンド(Gxt_GVC)(図6の一点鎖線)が横加加速度情報に基づいて計算される(図6のE部分)。図6に示されるように、PGVCによる加速コマンド(図6の実線)は、Gxt_pvとGxt_GVCを組み合わせることにより計算される。その結果、カーブ終了地点からの距離が増加していくにつれてPGVCにより車両を加速させることが可能になる。
図7は、Gxt_PGVCとドライバの加速/減速行動を比較するため、2箇所のコーナリングがあるコースを例示している。
図8は、初期速度(V0)が80km/時の場合に熟練ドライバによって生じた前後加速度(図8(a))と、PGVCコマンド(Gxt_PGVC)の計算結果(図8(b))との比較を示している。左側は前後加速度と横加速度(Gx、Gy)の変化を、右側はG−Gダイアグラムを示している。
図8(b)では、PGVCコマンド(Gxt_PGVC)が、図7に示される目標車線から計算された曲率データ、求められた車両速度のデータ、及び運転テストによる横加速度を用い、上記の式(1)及び(3)に基づいて計算される。図8に示されるように、横加速度(Gy)はカーブAではプラスに、カーブBではマイナスに変化し、それぞれの横加速度の変化には3段階がある。すなわち増加段階(段階(1))、定常状態段階(段階(2))、及び減少段階(段階(3))である。ドライバは、横加速度の変化に応じて加速/減速を制御し、段階(1)が始まる前に車両の減速を開始し(図8の「減速」)、段階(1)が終了する時点で減速を終了している。その後、ドライバは、段階(2)で、すなわち段階(3)が始まる前に加速を開始している(図8の「加速」)。図8(b)に示されるように、計算されたPGVCコマンド(Gxt_PGVC)の特徴は、ドライバのこの加速/減速と同じである。また、Gxt_PGVCによるG−Gダイアグラム(図8(b))の形状も、ドライバの場合(図8(a))の形状と同じである。
コーナリング時の所望する加速度は、ドライバの好みに大きく依存する。すなわち、高加速でのコーナリングを好むドライバもいれば、過度に加速することなく曲がりたいと望むドライバもいる。ドライバの好みの相違への対応として、PGVCパラメータ(主としてゲインCxy、Cxy_pv)を変更させることにより、様々な設定のPGVCを用意する。
図9は、複数のPGVC設定(設定1〜4)による横加速度と前後加速度を例示している。PGVCによる前後加速度(Gx、図9の破線)は、各設定に適応するようにPGVCパラメータを調整することによって、調整される。図9に示すように、PGVCでは、Gxが同じであっても、設定によって横加速度(Gy、図9の実線)が異なるようにすることができる。すなわち、平均Gy(図9の点線)は、設定の番号(1〜4)の増加と共に増加する。
図10は、複数のPGVC設定についてのG−Gダイアグラムを例示している。設定が異なると、G−Gダイアグラムも異なる(図9参照)。すなわち、G−Gダイアグラムの曲線は、設定の番号の増加と共に広がっている。しかし、GxとGyの関係は比較的維持され、この結果、加速の方向はG−Gダイアグラムで滑らかに変化している。G−Gダイアグラムのこのような加速の変化は、PGVCの特徴の1つであり、コーナリング時にドライバの気分を快適にする。
図11は、基本的なPGVCシステムの構成図を例示している。このシステムでは、PGVCパラメータ設定ブロック110が、PGVCのパラメータを設定するドライバの入力を検知する。この設定パラメータはPGVCブロック120に送信され、PGVCによる前後加速度コマンド(Gxt_PGVC)が計算される。Gxt_PGVCは駆動制御装置200に送信され、駆動制御装置200によって車両が減速/加速される。
具体的には、設定手段を具現化したPGVCパラメータ設定ブロック110にドライバ入力情報として入力できるPGVCパラメータのパラメータ設定値をユーザーが選択できるように、ドライバ入力スイッチ230を適合させることができる。一方、車両挙動情報検知装置210(スピードセンサ、加速度計、ジャイロセンサ、ハンドル角度センサなどのセンサ等)は、被制御車両に作用する車両速度、ハンドル角度、横加速度及び/又は前後加速度などの車両挙動に関する情報(車両挙動情報)を提供することができる。車両挙動情報は、前後加速度目標値決定手段を具現化したPGVCブロック120に提供される。さらに、曲率情報(地図データ、及び/又は地図データに基づいて決定されたプレビューポイントにおける曲率等)が、曲率検知装置220から、前後加速度目標値決定手段を具現化したPGVCブロック120に提供される。
PGVC制御装置100(例えば、前後加速度制御手段)は、PGVCブロック120及びPGVCパラメータ設定ブロック110を備え、目標制御値Gxt_PGVCを、駆動制御装置200を介して(又は、他の実施態様においては直接)、車両の駆動制御装置に出力する。
図12は、改良型PGVCシステムの構成図を示している。このシステムでは、障害物検知装置240が追加され、先行車の情報(先行車の速度、先行車までの距離)がPGVC制御装置100に送信される。PGVC制御装置100では、PGVCパラメータ設定ブロック110が、ドライバの入力、運転コースの曲率情報、及び障害物検知装置240から受信した先行車情報に基づいて、PGVCパラメータを設定する。障害物検知装置240は、先行車の位置、速度、横加速度及び/又は前後加速度を示すデータを、例えば通信プロトコルを介して、先行車から(及び/又はデータセンターから間接的に)受信することができる。代替又は追加として、障害物検知装置240に、先行車の相対位置及び/又は相対速度を求めるためのセンサ(カメラ、レーダー、ソナー等)を含めることもできる。
これらの情報を用いて、コーナリング時に先行車の挙動のように車両を減速/加速させるためのPGVCパラメータが設定される。例えば、コーナリング時に先行車が横加速度を落とすためにカーブをゆっくり走行する場合は、ドライバが図9の設定4のように高加速度のコーナリング設定を選択していたとしても、自車もカーブをゆっくり走行する。この結果、自車は、コーナリング時に先行車との車間距離を維持し、車間距離を維持するためのACCによる減速制御は作動せず、コーナリング時の前後方向の加速がスムーズになる。
図13は、PGVCパラメータの設定の一例を示す。この例では、予め設定されるPGVC設定モードが複数あり(設定1〜4)、図9に示した設定の番号(1〜4)が増加すると共にコーナリング時の平均/最大横加速度が増加するように、パラメータが設定される。先行車に作用する推定横加速度(GyestPV)は、先行車の速度及び曲率情報により計算される。PGVC設定は、最初は、GyestPVの絶対値(図13の場合は、Gyl<Gy2<Gy3)に応じて選択される。このように選択された値がドライバにより選択された設定と比較され、小さい方の設定番号がPGVC設定として選択される。
図14A、図14Bは、PGVCパラメータ設定のもう1つの例を示している。この例では、PGVCのパラメータである減速制御のPGVCゲインCxy_d、Cxy_pv_d(図14A)と、加速制御のPGVCゲインCxy_a、Cxy_pv_a(図14B)とが、GyestPVの絶対値と共に直接変化している。減速制御のPGVCゲイン(図14A)は、GyestPVの絶対値の増加と共に減少し、加速制御のPGVCゲイン(図14B)は、GyestPVの絶対値の増加と共に増加している。PGVCゲイン(Cxy_d、Cxy_pv_d、Cxy_a、Cxy_pv_a)は、最初は計算され、ドライバにより選択されたゲインと比較される。減速制御の場合は、値の大きい方がPGVCゲインとして選択され、加速制御の場合は、値の小さい方がPGVCゲインとして選択される。
図15は、先行車がいる場合にカーブを走行中の自車(実線)と先行車(一点鎖線)の速度、先行車までの距離(一点鎖線)と目標距離(点線)、及び前後加速度(Gx)と横加速度(Gy)を例示している。Gxは、図9に示した4つの異なる設定による改良型PGVC及びACCシステムによって制御される。
この例では、ドライバが最初に設定4を選択している。直線道路を走行中(図15の区間A)は、自車は先行車を検知するが、速度が異なる(自車が先行車より速い)ため、自車と先行車との車間距離が減少する。しかし、実際の車間距離は目標距離より十分に長いため、ACCにより自車が減速することはない。この期間中、PGVCの設定は設定4から設定1に変わり(図15の区間B)、PGVCの減速開始タイミングが図1に示した例より早くなる(図15の区間C)。この結果、自車と先行車間の車間距離を適切に維持することができ(図15の区間D)、ACCによる減速制御は作動しない。また、コーナリング時の前後加速度も、スムーズに変化する。
図16は、ACCとPGVCを組み合わせて前後加速度を制御するシステムの概要を例示している。この制御システムは、前後加速度制御ユニット1(例えば、図11又は図12に示されるように実現される)、加速度計2、ジャイロセンサ3、ハンドル4、ハンドル角度センサ5、(例えば、先行車との距離及び/又は先行車の速度を検知するための)障害物検知装置6、タイヤ7、車両8、カーブ検知装置9、ブレーキ制御ユニット10、ブレーキアクチュエータ11、駆動トルク制御装置12、駆動トルクアクチュエータ13、及び通信母線14を備える。
上述の各実施態様の構成の特徴、要素及び具体的細部を交換する又は組み合わせることにより、それぞれの用途にとって最適な実施態様をさらに構成することができる。そのような変更態様が熟練した当業者にとって容易かつ明白に理解できるものである限り、この変更態様は、本明細書を簡潔にするために、可能なあらゆる組み合わせの明細を明示しなくとも、本明細書によって黙示的に開示されるものとする。