JP2015066842A - 圧力緩衝装置、液体流通装置、画像記録装置、及び液体流通装置の状態検出方法 - Google Patents
圧力緩衝装置、液体流通装置、画像記録装置、及び液体流通装置の状態検出方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】低コストで圧力吸収性能と信頼性の高い圧力緩衝装置、液体流通装置、画像記録装置、及び液体流通装置の状態検出方法を提供する。
【解決手段】圧力緩衝装置18は液体を流入出させる流入口24B及び流出口24Aを有する液体室24と、気体が貯留される気体室26と、液体室と気体室とを隔離する予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜22a、22bとを備えた。
【選択図】図1
【解決手段】圧力緩衝装置18は液体を流入出させる流入口24B及び流出口24Aを有する液体室24と、気体が貯留される気体室26と、液体室と気体室とを隔離する予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜22a、22bとを備えた。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧力緩衝装置、液体流通装置、画像記録装置、及び液体流通装置の状態検出方法に関し、特に液体吐出ヘッドに液体を供給する圧力制御技術に関する。
インクジェットヘッドの安定動作や、インクジェットヘッドへの安定したインク供給のためには、インクジェットヘッドの内部圧力やインク流路の圧力を一定に制御する必要がある。かかる圧力を制御する手段として、インク流路に設けたポンプを用いることが考えられる。
しかしながら、ポンプを用いて圧力を制御する場合、ポンプの脈流などに起因する圧力変動が生じることがある。この圧力変動は安定したインク供給の障害となるだけでなく、インクジェットヘッドの安定動作を妨げることがある。
また、インク流路にダンパを備え、インク流路の圧力変動やインクジェットヘッドの内部圧力の変動を抑制する技術が知られている。例えば、特許文献1には、液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される圧力緩衝部において、可撓膜に予め初期撓みを与えた圧力緩衝部が記載されている。この技術によれば、可撓膜の影響を抑え、圧力緩衝部の性能を維持したまま、圧力緩衝部を小型化することができる。
このように液体室と気体室とを分離する可撓膜は、伸縮を繰り返すことで信頼性が低下する。また、可撓膜に破れが発生した場合には、インク流路の圧力変動を抑制することができないだけでなく、圧力緩衝部を交換するまでは装置自体が使用できないという問題点があった。
さらに、可撓膜の信頼性向上を目的に膜厚を増加すると、可撓膜の姿勢変更に要する圧力が高くなり、良好な圧力制御が困難となるという問題点があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、低コストで圧力吸収性能と信頼性の高い圧力緩衝装置、液体流通装置、画像記録装置、及び液体流通装置の状態検出方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために圧力緩衝装置の一の態様は、液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、気体が貯留される気体室と、液体室と気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜とを備えた。
本態様によれば、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜によって液体室と気体室とを隔離するようにしたので、弾性膜に薄い膜を使用することが可能になるとともに、少なくとも2枚の弾性膜が独立して変形することができるので、圧力吸収性能と信頼性を高めることができる。
複数枚の弾性膜の各々の弾性膜間に気体が封入されることが好ましい。これにより、適切な圧力緩衝性能を得ることができる。
複数枚の弾性膜はそれぞれドーム型形状を有することが好ましい。これにより、弾性膜が気体室の内壁に接触した場合であっても、弾性膜への負荷が少なくなる。また、撓み量を正確に制御でき、性能ばらつきを抑えることができる。
弾性膜は、樹脂シート材からなることが好ましい。これにより、撓み量を正確に制御でき、性能ばらつきを抑えることができる。
少なくとも2枚の弾性膜は、気体室側に配置された弾性膜の撓み量よりも液体室側に配置された弾性膜の撓み量の方が大きいことが好ましい。これにより、特に液体室の内部を負圧に維持した状態における液体の流通において圧力緩衝の性能を高めることができる。
上記目的を達成するために液体流通装置の一の態様は、液体吐出ヘッドに連通する液体流路と、液体流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、気体が貯留される気体室と、液体室と気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜とを備えた圧力緩衝装置であって、液体吐出ヘッドと液体圧力付与手段との間に設けられた圧力緩衝装置とを備えた。
本態様によれば、液体吐出ヘッドと液体圧力付与手段との間に、液体室と気体室とを隔離する少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜を有する圧力緩衝装置を設けたので、圧力吸収性能と信頼性を高めることができる。また、2枚の弾性膜の一方が破損した場合であっても他方の弾性膜だけで装置の稼働を継続することができるので、装置ダウンタイムを減らすことができる。
液体吐出ヘッドと圧力緩衝装置との間に設けられ、液体流路の連通、遮断を切り換える流路開閉手段と、液体室の内部の圧力を計測する圧力センサと、流路開閉手段により液体吐出ヘッドと圧力緩衝装置との間の液体流路を遮断し、液体圧力付与手段により液体室へ液体を送液又は液体室から液体を排出した状態で、圧力センサにより液体室の内部の圧力を計測し、計測した液体室の内部の圧力に基づいて2枚の弾性膜の状態を検出する検出手段と、検出手段の検出結果を報知する報知手段とを備えてもよい。
これにより、2枚の弾性膜の状態を検出することができるので、2枚の弾性膜の一方が破損した場合であってもユーザが知ることができ、装置の稼働を継続したまま弾性膜を交換することができる。したがって、装置ダウンタイムを減らすことができる。
検出手段は、液体室の内部の圧力の変化点により弾性膜の状態を検出することが好ましい。これにより、適切に弾性膜の状態を検出することができる。また、2枚の弾性膜のうちどちらの弾性膜が破損したのかを知ることができる。
検出手段を定期的に動作させる制御手段を備えることが好ましい。これにより、弾性膜の状態異常を事前に検出でき、装置の信頼性を確保することができる。
上記目的を達成するために画像記録装置の一の態様は、液体が貯留される液体タンクと、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに連通する液体流路と、液体流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、液体吐出ヘッドと液体圧力付与手段との間に設けられ、液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、気体が貯留される気体室と、液体室と気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜とを有する圧力緩衝装置とを備えた液体流通装置であって、液体タンクと液体吐出ヘッドとの間に配置された液体流通装置と、液体吐出ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、記録媒体を相対的に移動させながら液体吐出ヘッドから液体を吐出させて記録媒体の記録面に画像を記録させる記録制御手段とを備えた。
本態様によれば、液体吐出ヘッドと液体圧力付与手段との間に液体室と気体室とを隔離する予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜とを備えた圧力緩衝装置を設け、圧力吸収性能と信頼性を高めたので、液体吐出ヘッドの内部の圧力を適正に制御することができ、品質の高い画像を記録することができる。
液体吐出ヘッドは、ノズルに液体を供給する液体供給口と、ノズルから吐出されない液体を排出する液体排出口とを備え、液体流通装置は、液体タンクと液体吐出ヘッドの液体供給口との間、及び液体吐出ヘッドの液体排出口と液体タンクとの間にそれぞれ設けられてもよい。これにより、液体吐出ヘッドに液体を循環させる場合であっても、液体吐出ヘッドの内部の圧力を適正に制御することができ、品質の高い画像を記録することができる。
上記目的を達成するために液体流通装置の状態検出方法の一の態様は、液体吐出ヘッドに連通する液体流路と、液体流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、液体吐出ヘッドと液体圧力付与手段との間に設けられた圧力緩衝装置であって、液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、気体が貯留される気体室と、液体室と気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜とを備えた圧力緩衝装置と、液体吐出ヘッドと圧力緩衝装置との間に設けられ、液体流路の連通、遮断を切り換える流路開閉手段と、液体室の内部の圧力を計測する圧力センサとを有する液体流通装置の状態検出方法において、流路開閉手段により液体吐出ヘッドと圧力緩衝装置との間の液体流路を遮断する工程と、液体圧力付与手段により液体室へ液体を送液又は液体室から液体を排出する工程と、圧力センサにより液体室の内部の圧力を計測する工程と、計測した液体室の内部の圧力に基づいて2枚の弾性膜の状態を検出する工程と、検出した2枚の弾性膜の状態を報知する工程とを備えた。
本態様によれば、液体吐出ヘッドと圧力緩衝装置との間の液体流路を遮断し、液体室へ液体を送液又は液体室から液体を排出し、液体室の内部の圧力を計測し、計測した液体室の内部の圧力に基づいて2枚の弾性膜の状態を検出し、検出結果を報知するようにしたので、2枚の弾性膜の一方が破損した場合であってもユーザが知ることができ、装置の稼働を継続したまま弾性膜を交換することができる。したがって、装置ダウンタイムを減らすことができる。
本発明によれば、低コストで圧力吸収性能と信頼性を高めることができる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
<第1の実施形態>
〔非循環型インク供給装置の全体構成〕
図1は、第1の実施形態に係るインク供給装置(液体流通装置の一例)の全体構成を示すブロック図である。インク供給装置10は、インク(液体の一例)の供給対象であるインクジェットヘッド50(液体吐出ヘッドの一例)へインクを供給し、インクジェットヘッド50の内部圧力(背圧)をインクの送液量によって制御する非循環型のインク供給装置である。
〔非循環型インク供給装置の全体構成〕
図1は、第1の実施形態に係るインク供給装置(液体流通装置の一例)の全体構成を示すブロック図である。インク供給装置10は、インク(液体の一例)の供給対象であるインクジェットヘッド50(液体吐出ヘッドの一例)へインクを供給し、インクジェットヘッド50の内部圧力(背圧)をインクの送液量によって制御する非循環型のインク供給装置である。
図1に示すように、インク供給装置10は、供給流路12、供給バルブ14、圧力センサ16、供給サブタンク18、供給ポンプ20、インクタンク52等から構成される。
供給流路12(液体流路の一例)は、インクタンク52から供給サブタンク18、供給バルブ14を介してインクジェットヘッド50へ連通している。
供給バルブ14は、供給流路12の連通/遮断を切り換える流路開閉手段である。供給バルブ14は、制御信号により開閉が制御されるノーマルクローズ型(または、ラッチ型)の電磁バルブが適用され、非常停止機能が作動した場合などに電源が遮断されても、インクジェットヘッド50からインクが漏れ出さないよう構成される。
圧力センサ16は、供給流路12の内部圧力を計測して出力する圧力計測手段である。圧力センサ16には、半導体ピエゾ抵抗方式や静電容量方式、シリコンレゾナント方式などのセンサを適用することができる。
供給サブタンク18は、供給流路12の内部圧力の変動を抑制するように圧力調整を行う圧力緩衝装置である。
供給ポンプ20は、供給流路12の内部の液体に圧力を付与する液体圧力付与手段である。供給ポンプ20には、例えばチューブポンプを適用することができる。
インクタンク52(液体タンクの一例)は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド50へ供給するためのインクが貯留された貯留部である。インクタンク52に貯留されたインクは、供給ポンプ20により、供給サブタンク18、供給バルブ14を介してインクジェットヘッド50へ供給される。
供給サブタンク18は、初期撓みを有する第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22b(2枚の弾性膜の一例)によって液室24(液体室の一例)と気室26(気体室の一例)とが隔離されている。
液室24には、インク流出口24A、インク流入口24B、気泡排出口27が設けられている。インク流出口24Aは供給バルブ14を介してインクジェットヘッド50と連通し、インク流入口24Bは、供給ポンプ20を介してインクタンク52と連通している。また、気泡排出口27は、ドレイン流路28及びドレインバルブ30を介してインクタンク52と連通している。
インク流入口24Bから液室24へインクが流入すると、流入したインクの体積に応じて第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bが気室26側へ変形する。これにより、インク流出口24Aから流出するインクの体積は変動しない。したがって、供給流路12の圧力変動を抑制することができる。即ち、供給サブタンク18は、インクジェットヘッド50の内圧変動や、供給ポンプ20の動作による脈流による供給流路12の内部圧力の変動を抑制する圧力緩衝機能を有している。
ドレイン流路28は、液室24内のインクを強制的に排出させるための流路である。ドレインバルブ30が開かれると、液室24内のインクは、インクタンク52へ送液される。
また、インク供給装置10は、供給サブタンク18の圧力緩衝性能を決めるための気体弾性調整部として、エア流路32、エアコネクトバルブ34、エアタンク36、大気連通路38、及びエアバルブ40を備えている。
供給サブタンク18の気室26には、エア流路32と連通するエア流路連通口26Bが設けられている。エアコネクトバルブ34は、エア流路32の連通/遮断を切り換えるエア流路開閉手段であり、気室26は、エアコネクトバルブ34を介してエアタンク36と連通している。
また、大気連通路38には、大気連通路38の連通/遮断を切り替えるエアバルブ40が設けられており、エアタンク36は、大気連通路38を介して大気と連通している。
エアコネクトバルブ34には、ノーマルオープン型の電磁バルブが用いられる。また、エアバルブ40には、ノーマルクローズ型の電磁バルブが適用されることで、非常停止機能が作動した場合などに電源が遮断されても、インクジェットヘッド50からインクが漏れ出さないよう構成される。
気室26は、エアコネクトバルブ34を開くことでエアタンク36と連通し、インク送液の圧力制御に応じて気室26の容積を増加させることができる。さらに、エアバルブ40を開くことで、エアタンク36及び気室26を大気連通させることができる。このエアタンク36は、気室26のバッファタンクとして機能する。
〔供給サブタンクの構成〕
図2は、供給サブタンク18の構造例を示す分解図である。同図に示すように、供給サブタンク18は、上述の第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bの他、気室側タンクフレーム62、液室側タンクフレーム64、Oリング66、第1の結合用プレート68、第2の結合用プレート70等から構成される。
図2は、供給サブタンク18の構造例を示す分解図である。同図に示すように、供給サブタンク18は、上述の第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bの他、気室側タンクフレーム62、液室側タンクフレーム64、Oリング66、第1の結合用プレート68、第2の結合用プレート70等から構成される。
第1の弾性膜22aは気室26側に配置された弾性膜であり、第2の弾性膜22bは液室24側に配置された弾性膜である。第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bは、それぞれ初期撓みを有している。ここで、弾性膜を弛みがなくなるまで気室26側(または液室24側)へ寄せてドーム型形状にした場合の頂点の位置と、初期撓みが設けられていない場合の膜の位置との差を、初期撓み量(予め与えられた撓み量の一例)と呼ぶ。第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bは、それぞれ異なる初期撓み量を有している。
図2に示す例では、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bは、それぞれ真空成形により平面に形成されたフランジ部Fとドーム型形状に形成されたドーム部Dとを有している。ここで、ドーム型形状とは、曲面によって形成された膨らみを持つ形状をいい、球面の一部を平面で切断して切り出される形状や、断面が放物線状の形状を含む。
このように形成された第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bは、成形寸法のドーム高さh(フランジ部Fの構成する平面と該平面に直行する方向におけるドーム部Dの頂点との距離)により初期撓み量が規定される。ここでは、第1の弾性膜22aと第2の弾性膜22bとは、ともに液室24側に凸となるドーム形状を有しており、第1の弾性膜22aのドーム高さha、第2の弾性膜22bのドーム高さhbは、ha<hbの関係を有している。これにより、特に液室24の内部を負圧に維持した状態におけるインクの供給において、圧力緩衝の性能を高めることができる。
なお、第1の弾性膜22aと第2の弾性膜22bとを、ともに気室26側に凸となるドーム形状とし、ドーム高さの関係をha>hbとしてもよい。また、第1の弾性膜22aを気室26側、第2の弾性膜22bを液室24側に凸となるドーム形状とし、ドーム高さの関係をha≠hbとする態様も可能である。
また、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのフランジ部Fには、それぞれ11個の穴部が設けられている。
第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bの材料としては、成形性が良く、気体透過率が小さく、液体との化学的接液性の良いものが選ばれる。ここで、化学的接液性の良い材料とは、化学的に安定、即ち液体との接触により、変形(溶解・膨潤)や物性変化がないものを意味する。
また、後述する好ましい気体弾性領域を達成するためには、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bが気室26側に凸の状態から液室24側に凸の状態になるまでスムーズに変形させる必要があるため、柔軟で形状変形が容易である必要がある。
本実施形態では、スチレン系エラストマーを厚さ200μmの三次元形状の膜に成形し(樹脂シート材の一例)、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bとして使用している。このように、弾性膜に樹脂シートを用いることで、性能ばらつきのない圧力緩衝装置を得ることができる。
図3(a)は、図2の3A−3A線に沿った第1の弾性膜22aの断面図である。第1の弾性膜22aのドーム部Dは、内直径40mm、ドーム半径20.8mm、ドーム高さ15.0mmに形成されている。
また、図3(b)は、図2の3B−3B線に沿った第2の弾性膜22bの断面図である。第2の弾性膜22bのドーム部Dは、内直径40mm、ドーム半径20.0mm、ドーム高さ19.0mmに形成されている。
さらに、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bは、フランジ部Fとドーム部Dとの繋ぎ部が、曲率半径がR2.0からなる円弧状に丸められている。
図3の説明に戻り、気室側タンクフレーム62は、内部に気室26を構成するフレームである。気室側タンクフレーム62は、内壁がドーム型形状を受ける形状(ドーム型形状に沿った形状)に形成されており、その頂点に相当する位置にはエア流路連通口26Bが設けられている。ここで、ドーム型形状を受ける形状とは、内壁が内側方向に向かってドーム型形状に凹んだ形状を指す。
また、気室側タンクフレーム62はフランジ部を有し、フランジ部には11個の穴部と、図示しないOリング嵌合溝が設けられている。
液室側タンクフレーム64は、内部に液室24を構成するフレームであり、内壁がドーム型形状を受ける形状に形成されている。また、液室側タンクフレーム64には、インク流出口24A、インク流入口24B、気泡排出口27が設けられている。さらに、液室側タンクフレーム64はフランジ部を有し、フランジ部には8個の穴部と3個の突起部が設けられている。
Oリング66は、気室側タンクフレーム62と第1の弾性膜22aとの間を気密に閉塞するための弾性部材であり、気室側タンクフレーム62のOリング嵌合溝に嵌装される。
第1の結合用プレート68、第2の結合用プレート70は、リング状の固定部材であり、それぞれ8個の穴部を有している。また、第2の結合用プレート70の穴部には、螺旋状のねじ山が形成されている。
供給サブタンク18の組み立ては、まず第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bのフランジ部Fの11個の穴部のうち3個の穴部が、液室側タンクフレーム64のフランジ部の3個の突起部に挿通され、液室側タンクフレーム64に対して第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bが位置決めされる。
そして、第1の結合用プレート68と第2の結合用プレート70とで、気室側タンクフレーム62、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22b、及び液室側タンクフレーム64のフランジ部が挟持され、それぞれの8個の穴部に挿通された8本のボルトで固定される。
このとき、気室側タンクフレーム62のフランジ部のOリング嵌合溝に嵌装されたOリング66は、気室側タンクフレーム62と第1の弾性膜22aとの間に挟持され、気室側タンクフレーム62と第1の弾性膜22aとがシールされる。
また、第1の弾性膜22aと第2の弾性膜22bとの間には、大気圧の気体(空気)が封入される。
図4は、このように構成された供給サブタンク18の斜視図であり、図5は、供給サブタンク18の断面図である。供給サブタンク18は、インク流入口24Bからインクが流入すると、液室24の圧力(インクの送液量)と気室26内の圧力がつり合うように第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが気室26側へ変形し、ダンパとして機能する。
なお、供給サブタンク18の気室26は、第1の弾性膜22aと対向する気室側タンクフレーム62の内壁がドーム型形状を受ける形状を有しており、液室24は、第2の弾性膜22bと対向する液室側タンクフレーム64の内壁がドーム型形状を受ける形状を有している。さらに、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bは、ドーム型形状に形成されている。
したがって、液室24の内部のインクが増加し、第1の弾性膜22aが気室側タンクフレーム62の内壁に接触した場合や、液室24の内部のインクが減少し、第2の弾性膜22bが液室側タンクフレーム64の内壁に接触した場合であっても、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが気室26の内壁や液室24の内壁にならいやすくなり、角が当たる等の発生がなく、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bへの負荷が少なくなる。その結果、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの寿命を延ばすことができる。このように、第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22bの耐久性が確保されている。
また、2枚の弾性膜を有していることで、一方の弾性膜が破損した場合であっても、他方の弾性膜だけで装置の稼働を継続することができるので、装置ダウンタイムを減らすことができる。
さらに、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bは、それぞれ異なるドーム高さを有するドーム型形状に形成されているため、撓み量の管理が容易である。したがって、性能ばらつきのない圧力緩衝装置を得ることができる。
〔インク供給装置の電気的構成〕
〔非循環型インク供給装置の制御系の構成〕
図6は、インク供給装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インク供給装置10は、制御系を統括制御するシステム制御部80、システム制御部80から送られる制御信号に基づいて供給ポンプ20の制御を行うポンプ制御部82、供給バルブ14,ドレインバルブ30,エアコネクトバルブ34,エアバルブ40等のバルブ類の開閉を制御するバルブ制御部84、供給サブタンク18の弾性膜に異常が発生した場合にその旨を報知する表示装置86、等を具備している。
〔非循環型インク供給装置の制御系の構成〕
図6は、インク供給装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インク供給装置10は、制御系を統括制御するシステム制御部80、システム制御部80から送られる制御信号に基づいて供給ポンプ20の制御を行うポンプ制御部82、供給バルブ14,ドレインバルブ30,エアコネクトバルブ34,エアバルブ40等のバルブ類の開閉を制御するバルブ制御部84、供給サブタンク18の弾性膜に異常が発生した場合にその旨を報知する表示装置86、等を具備している。
また、パラメータ記憶部88は、インク供給装置10の制御に用いられる各種パラメータや、制御の際に参照されるデータテーブルが格納されている。例えば、後述するインクの送液量に対して圧力が一定以上の勾配となる圧力値の基準値が格納される。
プログラム格納部90は、インク供給装置10の制御に使用されるプログラムが格納されている。システム制御部80は、プログラム格納部90に格納されている各種制御プログラムを読み出して実行し、パラメータ記憶部88に格納されている各種パラメータやデータテーブルを参照して、インク供給装置10を統括して制御する。
インク供給装置10は、供給バルブ14等のバルブ類の動作を制御するとともに、供給ポンプ20の動作を制御し、インクジェットヘッド50へインクを供給する。具体的には、システム制御部80は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、供給流路12の内部圧力が所定の圧力に調整されるように、供給ポンプ20の駆動を制御する。
また、供給サブタンク18の液室24内の液量と圧力センサ16から得られた液室24内の圧力情報に基づいて、供給サブタンク18の弾性膜の状態検出を行う。
〔供給サブタンクの圧力特性〕
次に、供給サブタンク18の圧力緩衝性能を決定するための気体量の初期化動作について説明する。
次に、供給サブタンク18の圧力緩衝性能を決定するための気体量の初期化動作について説明する。
図1に示したインク供給装置10において、エアコネクトバルブ34とエアバルブ40とを開放し、供給バルブ14とドレインバルブ30とを閉じ、供給ポンプ20により液室24にインクを送液し、液室24の内部を加圧する。このとき、圧力センサ16により液室24の内部の圧力をモニタし、一定圧に達するまで加圧する。
この加圧により、供給サブタンク18の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bは、気室26側に変形し、気室側タンクフレーム62の内壁に接した状態となる。この状態では、気室26内には気体が存在せず、気体弾性調整部の気体量はほぼエアタンク36の容量となる。
この状態から、一定量のインクを供給ポンプ20により液室24から排出し、所望の液量となったところで、エアバルブ40を閉塞する。
これにより、供給サブタンク18の圧力緩衝性能を決定することができる。
図7は、この気体量の初期化後における供給サブタンク18のインクの送液量(液室24からの排出量)と液室24の圧力との関係を示すグラフである。同図では、横軸を液室24内の液量[単位:ml]、縦軸を各液量における液室24内の圧力[単位:Pa]として、インク量と圧力をプロットしている。
また、横軸の液量は、液室24にインクを最大限に充填させた状態のインクの量を0[ml]とし、この状態から流出したインクの量(送液量)をマイナスの符号を用いて示している。さらに、縦軸の圧力値は、圧力センサ16と供給サブタンク18の設置高低差によりスライドする。
図7に示すように、送液量が0〜−1.0[ml]の領域(領域A)では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが気室側タンクフレーム62の内壁に張り付いているため、液室24の圧力は、液体の弾性(液体弾性)により決まる(液体弾性領域)。したがって、液量の変化に対する圧力の変化量が大きい。
また、送液量が−1.0〜−9.0[ml]の領域(領域B)では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの弾性(膜弾性)と気室26の内部の気体の弾性(気体弾性)により圧力が決まる(膜・気体弾性領域)。
次に、送液量が−9.0〜−39.0[ml]の領域(領域C)では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが初期撓みを有しているため、緩やかで直線性の高い特性となっている。この領域Cでは、気室26の気体弾性により圧力が決まる(気体弾性領域)。即ち、気体弾性領域における圧特性の傾きは、気室26及びエアタンク36の気体容量で決定される。本実施形態では、気体容量が200ccのときに圧特性が最適となるように設計されている。
この気体弾性領域では、インクジェットヘッド50のインク吐出や供給ポンプ20の脈動による圧変動を良好に吸収し、供給流路12、液室24の圧力を安定させることができる。
さらに、送液量が−39.0〜−46.0[ml]の領域では、第1の弾性膜22aの膜弾性と気室26の気体弾性により圧力が決まる(膜・気体弾性領域)。
そして、送液量が−46.0[ml]以上の領域では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが気室側タンクフレーム62の内壁に張り付いているため、液室24の圧力は、液体弾性により決まる(液体弾性領域)。
また、図7では、比較のために第2の弾性膜22bを備えない場合(第1の弾性膜22aのみの場合)の圧力特性を破線で示している。
図7に示すように、2枚の弾性膜(第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22b)を有する場合と1枚の弾性膜(第1の弾性膜22a)のみを有する場合とでは、特に領域B、領域Dにおいて圧力特性が異なる。したがって、この圧力特性の差を検出することで、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれかが破損し、機能する弾性膜が1枚になったことを検出することができる。
〔弾性膜の異常検出動作〕
図8は、インク供給装置10における供給サブタンク18の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの異常検出動作の処理(状態検出方法の一例)を示すフローチャートである。この異常検出動作は、装置立ち上げ時や所定時間経過時等に定期的に行ってもよいし、メンテナンス時等にユーザが強制的に行うように構成してもよい。
図8は、インク供給装置10における供給サブタンク18の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの異常検出動作の処理(状態検出方法の一例)を示すフローチャートである。この異常検出動作は、装置立ち上げ時や所定時間経過時等に定期的に行ってもよいし、メンテナンス時等にユーザが強制的に行うように構成してもよい。
最初に、エアコネクトバルブ34及びエアバルブ40を開け、気室26を大気と連通させる(ステップS1)。
次に、供給バルブ14及びドレインバルブ30を閉じ、インク流出口24A及び気泡排出口27におけるインクの流入出を防止する(ステップS2)。
この状態で、供給ポンプ20によって供給サブタンク18の液室24にインクを送液し、供給流路12及び液室24の内部を加圧する(ステップS3)。このとき、圧力センサ16によって、インクの送液量に対する供給流路12の圧力(液室24の内部の圧力)をモニタ(測定)する(ステップS4)。エアコネクトバルブ34とエアバルブ40が開けられているため、気室26及びエアタンク36の気体弾性効果はなく、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの弾性のみをモニタできる。
液室24への送液が終了したか否かを判定し(ステップS5)、終了していない場合はステップS3に戻り、送液を継続する。送液が終了したか否かの判断は、予め定めた液量を送液した場合を送液終了としてもよいし、予め定めた時間だけ送液した場合を送液終了としてもよい。
液室24への送液が終了すると、システム制御部80(検出手段の一例)は、圧力センサ16のモニタ結果に基づいて第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの状態を検出する(ステップS6)。この検出した第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの状態から、膜の異常の有無を判定する(ステップS7)。
図9は、液室24の内部のインクの量と圧力との関係を示した図であり、図7の領域Bに相当する領域付近の拡大図である。図9(a)に示す実線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが正常な場合の圧力特性を示しており、破線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうち気室26側に位置する第1の弾性膜22aが破損した場合の圧力特性を示している。ここでは、それぞれの弾性膜が気室26に接触した状態(図7の領域Aに相当)のプロット位置を一致させて示している。
また、図9(b)に示す実線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが正常な場合の圧力特性を示しており、破線は、液室24側に位置する第2の弾性膜22bが破損した場合の圧力特性を示している。ここでも、それぞれの弾性膜が気室26に接触した状態のプロット位置を一致させて示している。
図9(a)、(b)に示すように、圧力が一定以上の勾配となる圧力値は、2枚の弾性膜が正常な場合をP0、第1の弾性膜22aが破損した場合(第2の弾性膜22bのみの場合)をP1、第2の弾性膜22bが破損した場合(第1の弾性膜22aのみの場合)をP2とすると、
P0>P2>P1 …(式1)
の関係を有している。したがって、圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出することで、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bに異常があるか否か、異常がある場合には第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれかの弾性膜が破損したのかを判断することができる。
P0>P2>P1 …(式1)
の関係を有している。したがって、圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出することで、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bに異常があるか否か、異常がある場合には第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれかの弾性膜が破損したのかを判断することができる。
ここでは、インクの送液量に対して圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出し、予め記憶された基準値と比較する。この基準値は、パラメータ記憶部88に記憶させておけばよい。
第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのいずれかの弾性膜が異常と判断された場合、即ち圧力が一定以上の勾配となる圧力値が基準値と異なる場合には、ステップS8に移行する。正常と判断された場合、即ち圧力が一定以上の勾配となる圧力値が基準値と同様の場合は、処理を終了する。
最後に、膜の異常を報知し(ステップS8)、処理を終了する。第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれの弾性膜が破損したのかを報知してもよいし、2枚の膜が正常であることを報知してもよい。報知の方法は、表示装置86(報知手段の一例)に表示を行う方法や、警告音を鳴らす方法等、特に限定されない。
このように、本実施形態に係る供給サブタンク18によれば、予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜(第1の弾性膜22a、第2の弾性膜22b)によって液室24と気室26とを隔離するようにしたので、弾性膜に薄い膜を使用することが可能となり、圧力吸収性能と信頼性を高めることができる。
さらに、本実施形態に係るインク供給装置10によれば、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのいずれかの膜が破損・漏れが発生した場合であっても、自動的に検知することができる。圧力制御自体は一方の膜により所望性能が継続できるため、装置が使用できない状態になる前に供給サブタンク18の部品交換を実施できる。したがって、装置のダウンタイムを減らすことが可能である。
また、本実施形態によれば、2枚の弾性膜の特性の違いを利用することで、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのいずれかの膜が破損したのかを判定することができる。
なお、本実施形態では、圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出することで2枚の弾性膜の状態を検出しているが、送液量に対する圧力値を検出することで2枚の弾性膜の状態を検出することも可能である。
<第2の実施形態>
供給サブタンク18の液室24内の液量と圧力との関係は、第1の弾性膜22aの寸法と第2の弾性膜22bの寸法が近いほど、一方の膜が破損した場合の特性に差がなくなってくる。即ち、図10(a)、(b)に示すように、圧力が一定以上の勾配となる圧力値の関係は、第1の弾性膜22aの寸法と第2の弾性膜22bの寸法が近いほど、P1とP2の差が小さくなり、
P0>P2≒P1 …(式2)
という関係になる。
供給サブタンク18の液室24内の液量と圧力との関係は、第1の弾性膜22aの寸法と第2の弾性膜22bの寸法が近いほど、一方の膜が破損した場合の特性に差がなくなってくる。即ち、図10(a)、(b)に示すように、圧力が一定以上の勾配となる圧力値の関係は、第1の弾性膜22aの寸法と第2の弾性膜22bの寸法が近いほど、P1とP2の差が小さくなり、
P0>P2≒P1 …(式2)
という関係になる。
この場合であっても、第1の実施形態と同様に、圧力が一定以上の勾配となる圧力値により、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれの弾性膜が破損したのかを判断することができる。また、圧力変化開始後の傾き(圧上昇率)での判定が可能である。
例えば、図10に示す例では、2枚の弾性膜が正常な場合の圧力開始後の傾きをθ0、第2の弾性膜22bが破損した場合(第1の弾性膜22aのみの場合)の圧力変化開始後の傾きをθ1、第2の弾性膜22bが破損した場合(第2の弾性膜22bのみの場合)をθ2とすると、
θ0>θ2≒θ1 …(式3)
の関係を有している。
θ0>θ2≒θ1 …(式3)
の関係を有している。
このように、2枚の弾性膜の寸法が近いと、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれの弾性膜が破損したのかを判断するのが難しくなるため、2枚の弾性膜の寸法はある程度異なることが好ましい。
<第3の実施形態>
次に、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの寸法が第1の実施形態とは逆(第1の弾性膜22aのドーム高さha、第2の弾性膜22bのドーム高さhbが、ha>hbの関係を有している)であり、膜間の気体(空気)が第1の実施形態よりも少ない場合について説明する。
次に、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの寸法が第1の実施形態とは逆(第1の弾性膜22aのドーム高さha、第2の弾性膜22bのドーム高さhbが、ha>hbの関係を有している)であり、膜間の気体(空気)が第1の実施形態よりも少ない場合について説明する。
図11は、膜間の気体が少ない場合の供給サブタンク18の液室24内のインク量と液室24内の圧力との関係を示すグラフであり、横軸を液室24内の液量[単位:ml]、縦軸を各液量における液室24内の圧力[単位:Pa]として、図7に示したグラフと同様の方法によりプロットしたものである。
図11に示すように、送液量が0〜−1.0[ml]の領域(領域A)では、液室24の圧力は、液室24の液体弾性により決まる(液体弾性領域)。
また、送液量が−1.0〜−6.0[ml]の領域(領域B1)では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの弾性(2枚膜弾性)と気室26の気体弾性により圧力が決まる(2枚膜・気体弾性領域)。
また、インク送液量が−6.0〜−9.0[ml]の領域(領域B2)では、第2の弾性膜22bの弾性(1枚膜弾性)と気室26の気体弾性により圧力が決まる(1枚膜・気体弾性領域)。
次に、送液量が−9.0〜−39.0[ml]の領域(領域C)では、気室26の気体弾性により圧力が決まる(気体弾性領域)。ここで、第1の弾性膜22aと第2の弾性膜22bとが密着していることで、領域Cには膜の姿勢変更に要する圧特性の異常個所が発生する場合がある。図11に示す例では、領域C1が異常個所となっている。
さらに、送液量が−39.0〜−46.0[ml]の領域(領域D)では、第2の弾性膜22bの膜弾性と気室26の気体弾性により圧力が決まる(膜・気体弾性領域)。
そして、送液量が−46.0[ml]以上の領域(領域E)では、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが気室側タンクフレーム62の内壁に張り付いているため、液室24の圧力は、液体弾性により決まる(液体弾性領域)。
図12は、膜間の気体が少ない場合の液室24の内部のインクの量と圧力との関係を示した図であり、気室26を大気と連通させた状態での図11の領域B付近に相当する領域の拡大図である。ここでは、領域Cの異常領域C1が発生していない場合を示している。
図12(a)に示す実線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが正常な場合の圧力特性を示しており、破線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうち液室24側に位置する第2の弾性膜22bが破損した場合の圧力特性を示している。ここでは、領域Cと領域B2との圧力変化点のプロット位置を一致させて示している。
また、図12(b)に示す実線は、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bが正常な場合の圧力特性を示しており、破線は、気室26側に位置する第1の弾性膜22aが破損した場合の圧力特性を示している。図12(a)と同様に、領域Cと領域B2との圧力変化点のプロット位置を一致させて示している。
図12(a)、(b)に示すように、圧力が一定以上の勾配となる圧力値は、2枚の弾性膜が正常な場合をP0、第2の弾性膜22bが破損した場合(第1の弾性膜22aのみの場合)をP1、第1の弾性膜22aが破損した場合(第2の弾性膜22bのみの場合)をP2とすると、式1の関係を有している。即ち、圧力が一定以上の勾配となる圧力値は、弾性膜の配置にかかわらず、2枚の弾性膜の場合>ドーム高さの低い方の弾性膜のみの場合>ドーム高さの高い方の弾性膜のみの場合、の関係を有する。
したがって、膜間の気体が少ない場合であっても、圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出することで、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bに異常があるか否か、異常がある場合に第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのうちいずれかの弾性膜が破損したのかを判断することができる。
<第4の実施形態>
〔循環型インク供給装置の全体構成〕
次に、予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜を有する供給サブタンクが適用された循環型インク供給装置について説明する。図13に示すインク供給装置100(液体流通装置の一例)は、循環系を備えた循環型である点で図1に示す非循環型インク供給装置と相違している。なお、以下の説明では、主として先に説明した第1実施形態に係るインク供給装置10と相違する構成について説明する。
〔循環型インク供給装置の全体構成〕
次に、予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜を有する供給サブタンクが適用された循環型インク供給装置について説明する。図13に示すインク供給装置100(液体流通装置の一例)は、循環系を備えた循環型である点で図1に示す非循環型インク供給装置と相違している。なお、以下の説明では、主として先に説明した第1実施形態に係るインク供給装置10と相違する構成について説明する。
図13に示すように、インク供給装置100は、供給流路12と回収流路112(液体流路の一例)とを有し、供給流路12には圧力センサ16、回収流路112には圧力センサ116が設けられている。また、供給流路12には供給サブタンク18が設けられるとともに、回収流路112には回収サブタンク118が設けられている。供給サブタンク18は、供給ポンプ20及び所定のインク流路を介してインクタンク52と連通され、回収サブタンク118は回収ポンプ120及び所定のインク流路を介してインクタンク52と連通される。
インクジェットヘッド50は、n個のヘッドモジュール51‐1,51‐2,…,51‐nがつなぎ合わせられた構造を有するヘッドである。ヘッドモジュール51は、それぞれインク供給口51A(液体供給口の一例)とインク排出口51B(液体排出口の一例)を有している。ヘッドモジュール51‐1,51‐2,…,51‐nの各インク供給口51Aは、それぞれ供給バルブ14‐1,14‐2,…,14‐nを介して供給流路12と連通されるとともに、各インク排出口51Bは、それぞれ回収バルブ114‐1,114‐2,…,114‐nを介して回収流路112と連通される。
供給側マニホールド54及び回収側マニホールド154は、供給流路12及び回収流路112とヘッド50との間に設けられるインクの一時貯留部である。供給側マニホールド54と回収側マニホールド154とは、バイパス流路190,192により連通され、バイパス流路190,192はそれぞれ、バイパス流路バルブ194,196が設けられている。
供給ポンプ20及び回収ポンプ120はチューブポンプが適用される。供給ポンプ20は、インクタンク52からインクジェットヘッド50へインクを供給する供給流路12の圧力(送液量)を制御し、回収ポンプ120はインクジェットヘッド50からインクタンク52へインクを回収する(循環させる)回収流路112の圧力(送液量)を制御する。供給ポンプ20と回収ポンプ120は同一の性能(容量)を有するポンプを適用することができる。
供給ポンプ20及び回収ポンプ120は、インクジェットヘッド50が動作を停止している期間(すなわち、インクが安定して流れている期間)は、一方向にのみ回転し、インクジェットヘッド50が吐出動作をしている期間に内部圧力が減少すると、供給ポンプ20は回転速度を増加させるとともに、回収ポンプ120は減速又は逆転してヘッド50の内部圧力を上昇させる。
即ち、供給流路12の内部圧力が回収流路112の内部圧力よりも相対的に高くなるように、かつ、インクジェットヘッド50のノズル内部のインクに所定の背圧(負圧)が付与されるように、供給ポンプ20及び回収ポンプ120の駆動が制御される。
また、図13に図示した循環系(回収側)のドレイン流路128、ドレインバルブ130、気体流路132、エアコネクトバルブ134、エアタンク136、大気連通路138、エアバルブ140はそれぞれ、供給系のドレイン流路28、ドレインバルブ30、エア流路32、エアコネクトバルブ34、エアタンク36、大気連通路38、エアバルブ40に対応している。
供給サブタンク18は、供給流路12の内部圧力の変動を抑制するように圧力調整を行う圧力緩衝装置であり、回収サブタンク118は、回収流路112の内部圧力の変動を抑制するように圧力調整を行う圧力緩衝装置である。供給サブタンク18及び回収サブタンク118は、図2〜図5に図示した供給サブタンク18と同一の構造を有している。
即ち、回収サブタンク118のインク流出口24Aは、回収バルブ114を介してインクジェットヘッド50と連通し、インク流入口24Bは、回収ポンプ120を介してインクタンク52と連通している。また、気泡排出口27は、ドレイン流路128及びドレインバルブ130を介してインクタンク52と連通している。気室26は、エア流路連通口26Bからエアコネクトバルブ134を介してエアタンク136と連通している。
供給バルブ14、ドレインバルブ130は、ラッチタイプの電磁バルブが適用され、エアコネクトバルブ134はノーマルオープン型の電磁バルブが適用され、回収バルブ114、エアバルブ140はノーマルクローズ型の電磁バルブが適用される。
インク供給装置100は、インクタンク52と供給ポンプ20との間に脱気モジュール160及びインクの逆流を防止するための一方向弁162が設けられるとともに、供給ポンプ20と供給サブタンク18の間には、フィルタ164及び熱交換器(冷却加熱装置)166が設けられている。インクタンク52から送り出されたインクは脱気モジュール160によって脱気処理が施され、フィルタ164によって気泡や異物が除去され、熱交換器166による温度調整処理が施された後に供給サブタンク18へ送られる。
また、脱気モジュール160と回収ポンプ120との間には、インクの逆流防止のための一方向弁170が設けられるとともに、フィルタ172が設けられ、インクタンク52から回収サブタンク118へインクが送られる場合にも、所定の脱気処理及びフィルタ処理が施される。
さらに、インク供給装置100は、安全弁(リリーフバルブ)174,176を備えている。インク供給装置100は、供給ポンプ20及び回収ポンプ120に異常が発生して供給流路12及び回収流路112の内部圧力が所定値よりも上昇した場合には、安全弁174,176が動作して供給流路12及び回収流路112の内部圧力を降下させる。また、供給ポンプ20及び回収ポンプ120を逆転動作させたときにインクの逆流を防止するための一方向弁178,180が設けられている。
メインタンク56は、インクタンク52へ供給されるインクが貯留されている。インクタンク52内のインク量が減少すると、補充ポンプ182を動作させてメインタンク56内のインクがインクタンク52へ送られる。メインタンク56は、内部にフィルタ184が設けられている。
以上のように構成されたインク供給装置100は、供給ポンプ20と回収ポンプ120とを動作させて、供給側マニホールド54と回収側マニホールド154との間に差圧を設けてインクを循環させる。例えば、供給バルブ14及び回収バルブ114を開いた状態で、供給ポンプ20を正転動作させて供給側マニホールド54に負圧を発生させ、一方、回収ポンプ120を逆転動作させて回収側マニホールド154に供給側より低い負圧を発生させると、供給側マニホールド54からヘッド50を介して回収側マニホールド154へインクを流し、さらに回収流路112、回収サブタンク118等を介してインクを循環させることができる。
インクを循環させるときは、第2のバイパス流路192に設けられた第2のバイパス流路バルブ196を開き、供給側マニホールド54と回収側マニホールド154とを第2のバイパス流路192を介して連通させるとよい。なお、バイパス流路190,192が加圧時における圧力損失が発生しない直径を有するものであれば、いずれか一方を備えていればよい。
このように、インク供給装置100は、インクタンク52とインクジェットヘッド50のインク供給口51Aとの間にインク供給装置10(第1の液体流通装置の一例)を備えるとともに、インクジェットヘッド50のインク排出口51Bとインクタンク52との間にもう1つのインク供給装置10(第2の液体流通装置の一例)を備えた構成となっている。
〔回収サブタンクの弾性膜の異常検出動作〕
インク供給装置100において、供給サブタンク18の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの異常検出動作の処理は、図8に示した第1の実施形態における処理と同様である。インク供給装置10の場合は、図8のステップS2において供給バルブ14とドレインバルブ30を閉じているが、インク供給装置100の場合は、全ての供給バルブ14‐1,14‐2,…,14‐n及びバイパス流路バルブ194,196とドレインバルブ30を閉じればよい。
インク供給装置100において、供給サブタンク18の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの異常検出動作の処理は、図8に示した第1の実施形態における処理と同様である。インク供給装置10の場合は、図8のステップS2において供給バルブ14とドレインバルブ30を閉じているが、インク供給装置100の場合は、全ての供給バルブ14‐1,14‐2,…,14‐n及びバイパス流路バルブ194,196とドレインバルブ30を閉じればよい。
また、回収サブタンク118の第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの異常検出動作の処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。
最初に、エアコネクトバルブ134及びエアバルブ140を開け、気室26を大気と連通させる(ステップS11)。
次に、全ての回収バルブ114‐1,114‐2,…,114‐n、バイパス流路バルブ194,196、及びドレインバルブ130を閉じ、インク流出口24A及び気泡排出口27におけるインクの流入出を防止する(ステップS12)。
この状態で、回収ポンプ120を逆転させることによってインクタンク52から回収サブタンク118の液室24にインクを送液し、回収流路112及び液室24の内部を加圧する(ステップS13)。このとき、圧力センサ116によって、インクの送液量に対する回収流路112の圧力(液室24の内部の圧力)をモニタする(ステップS14)。
液室24への送液が終了したか否かを判定し(ステップS15)、終了していない場合はステップS13に戻り、送液を継続する。
液室24への送液が終了したら、システム制御部80は、圧力センサ116のモニタ結果に基づいて、第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの状態を検出する(ステップS16)。この検出した第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bの状態から、膜の異常の有無を判定する(ステップS17)。
膜の異常の有無は、供給サブタンク18の場合と同様に、圧力が一定以上の勾配となる圧力値を検出し、予め記憶された基準値と比較する。
第1の弾性膜22a及び第2の弾性膜22bのいずれかの弾性膜が異常と判断された場合には、ステップS18に移行し、膜の異常を報知する。正常と判断された場合は、処理を終了する。
このように、循環系に配置された圧力緩衝装置である回収サブタンクの2枚の弾性膜についても、いずれかの膜が破損・漏れが発生したことを検知することができる。
ここまで、予め与えられた撓み量が異なる2枚の弾性膜を備えた圧力緩衝装置について説明してきたが、弾性膜は少なくとも2枚以上あればよく、枚数は限定されない。3枚以上の弾性膜を備える場合、そのうち少なくとも2枚の撓み量が異なればよい。
ここで、n枚の弾性膜を気室26側から液室24側へ向かってそれぞれ弾性膜22−1,22−2,22−3,…,22−(n−1),22−nとしたとき、全ての膜が液室24側に凸のドーム型形状を有し、かつ、各弾性膜22−1,22−2,22−3,…,22−(n−1),22−nのドーム高さをh1,h2h3,…、hn―1,hnとすると、
hm−1≦hm
(ただし、mはn以下の整数)
の関係を満たすことが好ましい。
hm−1≦hm
(ただし、mはn以下の整数)
の関係を満たすことが好ましい。
又は、全ての膜について気室26側に凸のドーム型形状を有し、
hm−1≧hm
(ただし、mはn以下の整数)
の関係を満たしてもよい。このようにn枚の弾性膜の撓み量を与えることで、液室24の液量が変化したときに姿勢変更に要する圧特性の異常個所が発生することがなく、適切な圧力緩衝機能を実現することができる。
hm−1≧hm
(ただし、mはn以下の整数)
の関係を満たしてもよい。このようにn枚の弾性膜の撓み量を与えることで、液室24の液量が変化したときに姿勢変更に要する圧特性の異常個所が発生することがなく、適切な圧力緩衝機能を実現することができる。
次に、上述したインク供給装置の応用例として、インクジェットヘッドのインク供給部に上述したインク供給装置10,100を適用したインクジェット記録装置について説明する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図15は、本発明の実施形態に係る液体供給装置を具備するインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置200(画像記録装置の一例)は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体214の記録面に画像を形成する二液凝集方式の記録装置である。
図15は、本発明の実施形態に係る液体供給装置を具備するインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置200(画像記録装置の一例)は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体214の記録面に画像を形成する二液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置200は、主として、給紙部220、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260、及び排出部270を備えて構成される。また、図15では図示を省略されているが、描画部240へインク供給を行うインク供給装置が設けられている。
処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260の前段に搬送される記録媒体214の受け渡しを行う手段として渡し胴232,242,252,262が設けられるとともに、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260のそれぞれに記録媒体214を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴234,244,254,264が設けられている。
渡し胴232〜262及び圧胴234〜264は、外周面の所定位置に記録媒体214の先端部を挟んで保持するグリッパー280A,280Bが設けられている。グリッパー280Aとグリッパー280Bにおける記録媒体214の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体214の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパー280Aとグリッパー280Bは、圧胴234の外周面の圧胴234の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパー280A,280Bにより記録媒体214の先端部を狭持した状態で渡し胴232〜262及び圧胴234〜264を所定の方向に回転させると、渡し胴232〜262及び圧胴234〜264の外周面に沿って記録媒体214が回転搬送される。
なお、図15中、圧胴234に備えられるグリッパー280A,280Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
給紙部220に収容されている記録媒体(枚葉紙)214が処理液塗布部230に給紙されると、圧胴234の外周面に保持された記録媒体214の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体214の記録面」とは、圧胴234〜264の保持された状態における外側面であり、圧胴234〜264に保持される面と反対面である。
その後、凝集処理液が付与された記録媒体214は描画部240に送出され、描画部240において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体214は乾燥処理部250に送られ、乾燥処理部250において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部260に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体214上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体214の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体214の記録面に定着した後に、排出部270から装置外部に搬送される。
以下、インクジェット記録装置200の各部(給紙部220、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260、排出部270)について詳細に説明する。
(給紙部)
給紙部220は、給紙トレイ222と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体214は給紙トレイ222から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ222から送り出された記録媒体214は、渡し胴(給紙胴)232のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。そして、グリッパー(不図示)が記録媒体214の先端部を挟んで保持し、処理液胴234に備えられるグリッパーとの間で記録媒体214の受け渡しを行う。
給紙部220は、給紙トレイ222と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体214は給紙トレイ222から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ222から送り出された記録媒体214は、渡し胴(給紙胴)232のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。そして、グリッパー(不図示)が記録媒体214の先端部を挟んで保持し、処理液胴234に備えられるグリッパーとの間で記録媒体214の受け渡しを行う。
(処理液塗布部)
処理液塗布部230は、渡し胴232から受け渡された記録媒体214を外周面に保持して記録媒体214を所定の搬送方向へ搬送する処理液胴(処理液ドラム)234と、処理液胴234の外周面に保持された記録媒体214の記録面に処理液を付与する処理液塗布部230と、含んで構成されている。処理液胴234を図15における反時計回りに回転させると、記録媒体214は処理液胴234の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
処理液塗布部230は、渡し胴232から受け渡された記録媒体214を外周面に保持して記録媒体214を所定の搬送方向へ搬送する処理液胴(処理液ドラム)234と、処理液胴234の外周面に保持された記録媒体214の記録面に処理液を付与する処理液塗布部230と、含んで構成されている。処理液胴234を図15における反時計回りに回転させると、記録媒体214は処理液胴234の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
処理液塗布部230は、処理液胴234の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布部230の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体214上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液胴234の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、記録媒体214以外の部分に処理液の塗布を行わないように構成する態様が好ましい。また、記録媒体214の先端部を挟持するグリッパー280A,280Bは、周面から突出しないように配置されている。
処理液塗布部230により記録媒体214に付与される処理液は、描画部240で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体214上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
処理液塗布部230は、記録媒体214に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体214上の処理液の膜厚は、描画部240から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
(描画部)
描画部240は、記録媒体214を保持して搬送する描画胴(描画ドラム)244(移動手段の一例)と、記録媒体214を描画胴244に密着させるための用紙押さえローラ246と、記録媒体214にインクを付与するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yを備えている。描画胴244の基本構造上述した処理液胴234と共通している。
描画部240は、記録媒体214を保持して搬送する描画胴(描画ドラム)244(移動手段の一例)と、記録媒体214を描画胴244に密着させるための用紙押さえローラ246と、記録媒体214にインクを付与するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yを備えている。描画胴244の基本構造上述した処理液胴234と共通している。
用紙押さえローラ246は、描画胴244の外周面に記録媒体214を密着させるためのガイド部材であり、描画胴244の外周面に対向し、渡し胴242と描画胴244との記録媒体214の受渡位置よりも記録媒体214の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yよりも記録媒体214の搬送方向上流側に配置される。
また、用紙押さえローラ246と記録媒体214の搬送方向における最上流側のインクジェットヘッド248Yとの間には、用紙浮き検出センサ(不図示)が配置されている。該用紙浮き検出センサは、記録媒体214がインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下に進入する直前の浮き量を検出している。本例に示すインクジェット記録装置200は、用紙浮き検出センサにより検出された記録媒体214の浮き量が所定のしきい値を超える場合には、その旨を報知するとともに記録媒体214の搬送を中断させるように構成されている。
渡し胴242から描画胴244に受け渡された記録媒体214は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙押さえローラ246によって押圧され、描画胴244の外周面に密着する。このようにして、記録媒体214を描画胴244の外周面に密着させた後に、描画胴244の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画胴244の回転方向(図15における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのインク吐出面(ノズル面)が描画胴244に保持された記録媒体214の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体214の記録面と対向するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図17に符号308を付して図示する)が形成される面である。
また、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yは、描画胴244の外周面に保持された記録媒体214の記録面とインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yは、記録媒体214における画像形成領域の最大幅(記録媒体214の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体214の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。また、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのそれぞれは、インク供給装置(図15では不図示)からインクが供給される。
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのノズル面(液体吐出面)には、記録媒体214の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
記録媒体214がインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yから記録媒体214の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yから、対応する色インクの液滴が、描画胴244の外周面に保持された記録媒体214の記録面に向かって吐出されると、記録媒体214上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体214上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ずれ、ドットの色ムラ)が防止される。
また、描画部240の描画胴244は、処理液塗布部230の処理液胴234に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
なお、本例では、MKCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥処理部)
乾燥処理部250は、画像形成後の記録媒体214を保持して搬送する乾燥胴(乾燥ドラム)254と、該記録媒体214上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す乾燥処理装置256を備えている。なお、乾燥胴254の基本構造は、先に説明した処理液胴234及び描画胴244と共通しているので、ここでの説明は省略する。
乾燥処理部250は、画像形成後の記録媒体214を保持して搬送する乾燥胴(乾燥ドラム)254と、該記録媒体214上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す乾燥処理装置256を備えている。なお、乾燥胴254の基本構造は、先に説明した処理液胴234及び描画胴244と共通しているので、ここでの説明は省略する。
乾燥処理装置256は、乾燥胴254の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体214に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部240により記録媒体214にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体214上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
乾燥処理装置256は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体214上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体214上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体214に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体214上に残留する水分量、記録媒体214の種類、及び記録媒体214の搬送速度(乾燥処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
乾燥処理装置256による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部250の乾燥胴254は、描画部240の描画胴244に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
記録媒体214のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥胴254の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥胴254の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
また、乾燥胴254の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体214の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥胴254の外周面に記録媒体214を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体214を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
なお、乾燥胴254の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥胴254の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
このように構成された乾燥胴254の外周面に、記録媒体214の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体214の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体214のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
(定着処理部)
定着処理部260は、記録媒体214を保持して搬送する定着胴(定着ドラム)264と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体214に加熱処理を施すヒータ266と、該記録媒体214を記録面側から押圧する定着ローラ268と、を備えて構成される。なお、定着胴264基本構造は処理液胴234、描画胴244、及び乾燥胴254と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ266及び定着ローラ268は、定着胴264の外周面に対向する位置に配置され、定着胴264の回転方向(図15において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部260は、記録媒体214を保持して搬送する定着胴(定着ドラム)264と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体214に加熱処理を施すヒータ266と、該記録媒体214を記録面側から押圧する定着ローラ268と、を備えて構成される。なお、定着胴264基本構造は処理液胴234、描画胴244、及び乾燥胴254と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ266及び定着ローラ268は、定着胴264の外周面に対向する位置に配置され、定着胴264の回転方向(図15において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部260では、記録媒体214の記録面に対してヒータ266による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ268による定着処理が施される。ヒータ266の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
定着ローラ268は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体214を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ268は、定着胴264に対して圧接するように配置されており、定着胴264との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体214は、定着ローラ268と定着胴264との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
定着ローラ268の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体214を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体214の記録面に加圧を施すと、記録媒体214の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ268を複数段設けた構成も好ましい。
また、定着ローラ268の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ268の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体214の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体214の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
定着処理部260の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ282が設けられている。インラインセンサ282は、記録媒体214に形成された画像(又は記録媒体214の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
インクジェット記録装置200は、インラインセンサ282の読取結果に基づいてインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの吐出異常の有無を判断する。また、インラインセンサ282は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部250の処理温度や定着処理部260の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
(排出部)
定着処理部260に続いて、排出部270が設けられている。排出部270は、張架ローラ272A,272Bに巻きかけられた無端状の搬送チェーン274と、画像形成後の記録媒体214が収容される排出トレイ276と、を備えて構成されている。
定着処理部260に続いて、排出部270が設けられている。排出部270は、張架ローラ272A,272Bに巻きかけられた無端状の搬送チェーン274と、画像形成後の記録媒体214が収容される排出トレイ276と、を備えて構成されている。
定着処理部260から送り出された定着処理後の記録媒体214は、搬送チェーン274によって搬送され、排出トレイ276に排出される。
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、描画部240に具備されるインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造の一例について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号300によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
次に、描画部240に具備されるインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造の一例について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号300によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
図16は、インクジェットヘッド300の概略構成図であり、同図はインクジェットヘッド300から記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。同図に示すヘッド300は、n個のヘッドモジュール302‐i(iは1からnの整数)をヘッド300の長手方向に沿って一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各ヘッドモジュール302‐iは、ヘッド300の短手方向の両側からヘッドカバー304,306によって支持されている。なお、ヘッドモジュール302を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)について、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図17に符号308を付して図示する)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するヘッド300と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
ヘッド300を構成するヘッドモジュール302‐iは、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、ヘッドモジュール302‐iの並び方向について、隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される。なお、図16に示すヘッド300は図13に示したヘッド50と等価であり、ヘッドモジュール302はヘッドモジュール51と等価である。
図17は、ヘッドモジュール302‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各ヘッドモジュール302‐iは、ノズル308が二次元状に並べられた構造を有し、かかるヘッドモジュール302‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。図17に図示したヘッドモジュール302‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル308が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図17では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号310を付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号312を付して図示されている。
なお、ノズル308のマトリクス配置の他の例として、主走査方向Xに沿う行方向、及び主走査方向Xに対して斜め方向の列方向に沿って複数のノズル308を配置する構成が挙げられる。
図18は、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル308に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のヘッド300(ヘッドモジュール302)は、ノズル308が形成されたノズルプレート314と、圧力室316や共通流路318等の流路が形成された流路板320等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート314は、ヘッド300のノズル面314Aを構成し、各圧力室316にそれぞれ連通する複数のノズル308が2次元的に形成されている。
流路板320は、圧力室316の側壁部を構成するとともに、共通流路318から圧力室316にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口322を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図18では簡略的に図示しているが、流路板320は一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート314及び流路板320は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路318はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路318を介して各圧力室316に供給される。
圧力室316の一部の面(図18における天面)を構成する振動板324には、個別電極326及び下部電極328を備え、個別電極326と下部電極328との間に圧電体330が挟まれた構造を有するピエゾアクチュエータ332が接合されている。振動板324を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ332の下部電極328に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
個別電極326に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ332が変形して圧力室316の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル308からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ332が元の状態に戻る際、共通流路318から供給口322を通って新しいインクが圧力室316に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニットを図17に示す如く、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向Yの隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向Xについては実質的に各ノズル308が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
本例では、ヘッド300に設けられたノズル308から吐出させるインクの吐出力発生手段としてピエゾアクチュエータ332を適用したが、圧力室316内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
〔制御系の説明〕
図19は、インクジェット記録装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置200は、通信インターフェース340、システム制御部342、搬送制御部344、画像処理部346、ヘッド駆動部348を備えるとともに、画像メモリ350、ROM352を備えている。
図19は、インクジェット記録装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置200は、通信インターフェース340、システム制御部342、搬送制御部344、画像処理部346、ヘッド駆動部348を備えるとともに、画像メモリ350、ROM352を備えている。
通信インターフェース340は、ホストコンピュータ354から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース340は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース340は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システム制御部342は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ350及びROM352のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部342は、通信インターフェース340、搬送制御部344等の各部を制御し、ホストコンピュータ354との間の通信制御、画像メモリ350及びROM352の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
ホストコンピュータ354から送出された画像データは通信インターフェース340を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、画像処理部346によって所定の画像処理が施される。
画像処理部346は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをヘッド駆動部348に供給する制御部である。画像処理部346において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッド駆動部348(記録制御手段の一例)を介してヘッド300の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、ヘッド駆動部348には、ヘッド300の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
搬送制御部344は、画像処理部346により生成された印字制御用の信号に基づいて記録媒体214(図15参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図19における搬送駆動部356は、図15の圧胴234〜264を回転させるモータや、渡し胴232〜262を回転させるモータ、給紙部220における記録媒体214の送出機構のモータ、排出部270の張架ローラ272A(272B)を駆動するモータなどが含まれ、搬送制御部344は上記のモータのドライバーとして機能している。
画像メモリ(一次記憶メモリ)350は、通信インターフェース340を介して入力された画像データを一旦格納する一次記憶手段としての機能や、ROM352に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部346の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ350には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
ROM352は、システム制御部342のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部342を通じてデータの読み書きが行われる。ROM352は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
さらに、このインクジェット記録装置200は、処理液付与制御部360、乾燥処理制御部362、及び定着処理制御部364を備えており、システム制御部342からの指示に従って、それぞれ、処理液塗布部230、乾燥処理部250、及び定着処理部260の各部の動作を制御する。
処理液付与制御部360は、画像処理部346から得られた印字データに基づいて、処理液付与のタイミングの制御を制御するとともに、処理液の付与量を制御する。また、乾燥処理制御部362は、乾燥処理装置256における乾燥処理のタイミングを制御するとともに、処理温度、送風量等を制御し、定着処理制御部364は、ヒータ266の温度を制御するとともに、定着ローラ268の押圧を制御する。
インク供給制御部386は、インク供給部388によるヘッド300へのインク供給の制御を行う。インク供給制御部386の具体例として、図6に示す構成が挙げられる。また、図19に示すインク供給部388は、上述したインク供給装置10やインク供給装置100が適用される。
インクジェット記録装置200は、ユーザインターフェース370を具備し、該ユーザインターフェース370は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置372と、表示部(ディスプレイ)374を含んで構成される。入力装置372には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置372を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部374の表示を通じて確認することができる。この表示部374はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能し、図6に示した表示装置86に適用することができる。
脱気制御部368は、インクタンク52からヘッド300へ送られる液に脱気処理を施す脱気モジュール160(図13参照)の動作を制御する。
パラメータ記憶部380は、インクジェット記録装置200の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部342は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
圧力センサ381(図13に示した圧力センサ16、116と等価)は、インク流路の圧力を計測するための圧力検出素子を含み、計測された圧力情報を電気信号に変換してシステム制御部342へ提供する。システム制御部342は、当該圧力情報に基づいてインク供給部388に含まれるポンプの動作(回転速度)を補正するようにインク供給制御部386へ指令信号を送出する。
プログラム格納部384は、インクジェット記録装置200を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。この制御プログラムにはインク供給部388に含まれる供給ポンプ20、回収ポンプ120や脱気モジュール160、熱交換器166等の制御プログラムが含まれる。
(他の装置構成への適用例)
本変形例では、画像形成装置の例として、インクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲は写真プリントやポスター印刷などのいわゆるグラフィック印刷の用途に限定されず、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、微細構造物形成装置など、画像として把握できるパターンを形成し得る工業用途の装置も包含する。
本変形例では、画像形成装置の例として、インクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲は写真プリントやポスター印刷などのいわゆるグラフィック印刷の用途に限定されず、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、微細構造物形成装置など、画像として把握できるパターンを形成し得る工業用途の装置も包含する。
本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合せることができる。
10,100…インク供給装置、12…供給流路、16,116,381…圧力センサ、18,118…サブタンク、20,120…ポンプ、22a…第1の弾性膜、22b…第2の弾性膜、24…液室、26…気室、30,34,40,130,134,140…バルブ、50,248M,248K,248C,248Y,300…インクジェットヘッド、80,342…システム制御部、82…ポンプ制御部、84…バルブ制御部、86…表示装置、88,380…パラメータ記憶部
Claims (12)
- 液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、
気体が貯留される気体室と、
前記液体室と前記気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜と、
を備えた圧力緩衝装置。 - 前記複数枚の弾性膜の各々の弾性膜間に気体が封入された請求項1に記載の圧力緩衝装置。
- 前記複数枚の弾性膜はそれぞれドーム型形状を有する請求項1又は2に記載の圧力緩衝装置。
- 前記弾性膜は、樹脂シート材からなる請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力緩衝装置。
- 前記少なくとも2枚の弾性膜は、気体室側に配置された弾性膜の撓み量よりも液体室側に配置された弾性膜の撓み量の方が大きい請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力緩衝装置。
- 液体吐出ヘッドに連通する液体流路と、
前記液体流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力緩衝装置であって、前記液体吐出ヘッドと前記液体圧力付与手段との間に設けられた圧力緩衝装置と、
を備えた液体流通装置。 - 前記液体吐出ヘッドと前記圧力緩衝装置との間に設けられ、前記液体流路の連通、遮断を切り換える流路開閉手段と、
前記液体室の内部の圧力を計測する圧力センサと、
前記流路開閉手段により前記液体吐出ヘッドと前記圧力緩衝装置との間の前記液体流路を遮断し、前記液体圧力付与手段により前記液体室へ液体を送液又は前記液体室から液体を排出した状態で、前記圧力センサにより前記液体室の内部の圧力を計測し、前記計測した前記液体室の内部の圧力に基づいて前記2枚の弾性膜の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を報知する報知手段と、
を備えた請求項6に記載の液体流通装置。 - 前記検出手段は、前記液体室の内部の圧力の変化点により前記弾性膜の状態を検出する請求項7に記載の液体流通装置。
- 前記検出手段を定期的に動作させる制御手段を備えた請求項7又は8に記載の液体流通装置。
- 液体が貯留される液体タンクと、
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
請求項6から9のいずれか1項に記載の液体流通装置であって、前記液体タンクと前記液体吐出ヘッドとの間に配置された液体流通装置と、
前記液体吐出ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、
前記記録媒体を相対的に移動させながら前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させて前記記録媒体の記録面に画像を記録させる記録制御手段と、
を備えた画像記録装置。 - 前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルに液体を供給する液体供給口と、前記ノズルから吐出されない液体を排出する液体排出口とを備え、
前記液体流通装置は、前記液体タンクと前記液体吐出ヘッドの前記液体供給口との間、及び前記液体吐出ヘッドの前記液体排出口と前記液体タンクとの間にそれぞれ設けられる請求項10に記載の画像記録装置。 - 液体吐出ヘッドに連通する液体流路と、前記液体流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、前記液体吐出ヘッドと前記液体圧力付与手段との間に設けられた圧力緩衝装置であって、液体を流入出させる流入口及び流出口を有する液体室と、気体が貯留される気体室と、前記液体室と前記気体室とを隔離する複数枚の弾性膜であって、少なくとも2枚の弾性膜の予め定められた撓み量が異なる複数枚の弾性膜とを備えた
圧力緩衝装置と、前記液体吐出ヘッドと前記圧力緩衝装置との間に設けられ、前記液体流路の連通、遮断を切り換える流路開閉手段と、前記液体室の内部の圧力を計測する圧力センサと、
を有する液体流通装置の状態検出方法において、
前記流路開閉手段により前記液体吐出ヘッドと前記圧力緩衝装置との間の前記液体流路を遮断する工程と、
前記液体圧力付与手段により前記液体室へ液体を送液又は前記液体室から液体を排出する工程と、
前記圧力センサにより前記液体室の内部の圧力を計測する工程と、
前記計測した前記液体室の内部の圧力に基づいて前記2枚の弾性膜の状態を検出する工程と、
前記検出した2枚の弾性膜の状態を報知する工程と、
を備えた液体流通装置の状態検出方法。
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