JP2015063661A - エポキシ樹脂系組成物 - Google Patents

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将範 大賀
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Abstract

【課題】エポキシ樹脂系組成物の硬化性および貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂系組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、及び硬化剤からなるエポキシ樹脂系組成物であって、該硬化剤が、下記一般式(1)で表されるホスホニウムカチオンと、特定構造の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩であることを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
Figure 2015063661

【選択図】図1

Description

硬化性および貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂系組成物に関する。
従来より、エポキシ樹脂系組成物は、優れた機械的、化学的および電気的性質を有する成形体などが得られるため、接着剤、塗料、注型材料の形態でコイル、コンデンサー、プリント基板などの各種の電気部品、あるいは半導体素子や集積回路の絶縁封止などの用途に広く使用されている。
積層板等用途のフィルム、シートなどの分野では、エポキシ樹脂系硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等はもとより、エポキシ樹脂系組成物の硬化性と貯蔵安定性(ポットライフ)の両立も課題となっている。しかし一般的に、硬化性と貯蔵安定性は相反する特性であり、これらの両立は極めて困難であった。
また、二液性エポキシ樹脂組成物がかつては主流であったが、主剤と硬化剤とを使用直前に混合しなくてはならないという煩雑さ、不便さから、一液性のエポキシ樹脂系組成物で貯蔵安定性が良好であるものが望まれている。
エポキシ樹脂の硬化剤として、イミダゾールはリン系と比較し、エポキシ樹脂からより多くの塩素を引き抜く(非特許文献1参照)ため、エポキシ樹脂系硬化物は耐湿信頼性が劣り、電子材料用途として不適であった。
エポキシ樹脂のリン系硬化剤としてテトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート等に代表されるテトラアルキルホスホニウムカルボキシレート、またテトラブチルホスホニウムフェノラート等に代表されるテトラアルキルホスホニウムフェノラートが知られている(特許文献1、2参照)。
テトラアルキルホスホニウムカルボキシレート、テトラアルキルホスホニウムフェノラートを硬化剤として用いた場合、硬化性(ゲル化物の均一な凝集)が不充分であり、その結果、硬化ムラが生じ、硬化不良となる問題があった。また、組成物の貯蔵安定性も満足のいくものではなかった。
また、さらにフェノール樹脂等の硬化剤を用いる場合においては、テトラアルキルホスホニウムカルボキシレート、テトラアルキルホスホニウムフェノラートの他、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン(非特許文献1参照)、ダイホスフィン類(特許文献3、特許文献4参照)、ホスホニウムチオシアネート類(特許文献5、6、非特許文献2、3参照)、ホスホニウムジシアナミド類(特許文献7、8、非特許文献4参照)などを用いることが出来る。しかし、この場合においても、硬化性と貯蔵安定性(ポットライフ)の両立は困難であった。
なお、特許5191131号公報に記載のホスホニウム塩は、エポキシ樹脂/酸無水物硬化系において、黄変防止用途のエポキシ樹脂用硬化促進剤として好適であることは知られている(特許文献9参照)が、硬化剤として使用出来ることは知られていなかった。
WO2009/014270号公報 特開2012−001573号公報 特開昭61−053321号公報 特許3876944号公報 特開2009−298960号公報 特開2010−209150号公報 特開2012−017414号公報 特開2012−017414号公報 特許5191131号公報
「ネットワークポリマー」合成樹脂工業協会発行(2012年)、Vol.33、No.3、p123〜129 エポキシ樹脂の配合設計と高機能化、サイエンス&テクノロジー発行、「第2章 第5節 リン系硬化促進剤の特性と使い方」 第59回ネットワークポリマー講演討論会、講演要旨集「リン系硬化促進剤の硬化特性〜ホスホニウムチオシアネート〜」 第60回ネットワークポリマー講演討論会、講演要旨集「リン系硬化促進剤の硬化特性〜ホスホニウムジシアナミド〜」 エポキシ樹脂技術協会、第41期第1回講演要旨集「リン系エポキシ樹脂硬化促進剤の特徴と硬化物物性への影響」
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものである。すなわち、エポキシ樹脂系組成物の硬化性および貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂系組成物を提供することである。
このような状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討した。その結果、硬化剤として下記一般式(1)
Figure 2015063661
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるホスホニウムカチオンと、
下記一般式(2)
Figure 2015063661
(式中、Rは、メチレン基又はエチレン基を示し、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸及び
一般式(3)
Figure 2015063661
(式中、R10〜R13は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩をエポキシ樹脂に配合して得られたエポキシ樹脂系組成物は、硬化性および貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
〔1〕(a)エポキシ樹脂および(b)硬化剤がホスホニウム塩からなるエポキシ樹脂系組成物であって、該ホスホニウム塩が、下記一般式(1)
Figure 2015063661
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるホスホニウムカチオンと、下記一般式(2)
Figure 2015063661
(式中、Rは、メチレン基又はエチレン基を示し、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)
Figure 2015063661
(式中、R10〜R13は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩であることを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
〔2〕一般式(1)において、R〜Rの全てがブチル基である〔1〕に記載の組成物。
〔3〕上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、(ア)一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rの全てが水素原子である脂環族ポリカルボン酸及び(イ)一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rの内いずれか1つがメチル基で残り3つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、(i)一般式(3)において、R10〜R13がすべて水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるか、又は、(ii)R10〜R13のうちの2つがカルボキシル基で残り2つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔5〕上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔6〕さらにエポキシ樹脂と硬化剤の硬化反応がそれぞれエポキシ基と活性水素化合物との付加重合反応である硬化剤を含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のエポキシ樹脂系組成物。
〔7〕硬化剤がフェノール樹脂であることを特徴とする〔6〕に記載のエポキシ樹脂系組成物。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂系硬化物。
本発明のホスホニウム塩を成分として含有するエポキシ樹脂系組成物は、従来と比べ、特に硬化性および貯蔵安定性に優れるため、極めて有用である。
150℃における硬化反応時の熱時硬度測定結果を示す図(実施例3、4、比較例6、7)。 150℃における硬化反応時の熱時硬度測定結果を示す図(実施例3、4、比較例8〜10)。 150℃における硬化反応時の熱時硬度測定結果を示す図(実施例3,4、比較例11,12)。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明にかかるエポキシ樹脂系組成物は、エポキシ樹脂、および硬化剤を含有するエポキシ樹脂系組成物である。
本発明においてエポキシ樹脂硬化物とは、当該エポキシ樹脂組成物にある特定の条件下で熱をかけることによってエポキシ樹脂が流動性を失って、硬化した固形物を指す。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する汎用的なエポキシ樹脂を用いることが可能であり、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等をエポキシ化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等をエポキシ化したフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型またはメチルグリシジル型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから合成される、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂のグリシジルエーテル;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。また、有姿でそのまま使用してもよく、適宜溶剤や添加材等を添加して使用することもできる。
<硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂系組成物で硬化剤として使用するホスホニウム塩は、下記一般式(1)
Figure 2015063661
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるホスホニウムカチオンと、
下記一般式(2)
Figure 2015063661
(式中、Rは、メチレン基又はエチレン基を示し、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)
Figure 2015063661
(式中、R10〜R13は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩である。
本明細書及び特許請求の範囲において、「脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基」とは、脂環族ポリカルボン酸の1個又は2個以上(典型的には1個)のカルボキシル基の水素原子が外れて、1価又は2価以上(典型的には1価)のカルボキシルアニオンとなったものを指すものとする。
上記のホスホニウムカチオンと少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩は公知であるか、又は、公知の方法、例えば、特開昭63−190893号公報に記載の方法により容易に製造できる。例えば、テトラアルキルホスホニウムハライドの溶液(溶媒は、水、メタノール等)を、イオン交換することによりテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドの溶液(溶媒は、水、メタノール等)とし、該溶液中で、そのテトラアルキルホスホニウムヒドロキシド1モルに対して上記一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.5〜5モル、より好ましくは0.5〜2モル用いて中和することにより塩形成する方法などが挙げられる。得られた塩を含む反応混合物から、適当な方法、例えば、減圧蒸留等により溶媒を除去して、目的の塩を分離する。なお、上記テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドは市販されているものを使用してもよい。また、一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸の代わりに、それぞれ、対応する脂環族ポリカルボン酸無水物を使用してもよい。
上記の方法により得られる塩は、通常は、ホスホニウムカチオン1モルと少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基1モルとの1:1塩が主成分であり、一般式(4)で示される。
Figure 2015063661
一般式(4)において、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。
また、一般式(4)において、Xは、一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基(1価のアニオン残基)を示す。即ち、一般式(4)において、Xは、一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸の複数のカルボキシル基のうちの一つがカルボキシルアニオン(−COO−)となったアニオン残基である。
上記製造法で得られる反応生成物中には、一般式(4)で表される1:1塩に加えて、他のタイプの塩(一般式(1)で表されるホスホニウムカチオンと上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩)が若干混在することもあるが、そのような反応生成物をそのまま本発明のホスホニウム塩として使用することもできる。
工業的に入手容易な一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸は、通常、一般式(2)で表される酸の2種以上を含む混合物であることが多い。従って、一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸の2種以上を含む混合物由来の混合アニオン残基と一般式(1)で表されるホスホニウムカチオンとの塩を使用してもよく、この場合も、後述の実施例1に示すように、優れた効果を示す。従って、上記一般式(4)において、Xは、一般式(2)で表される少なくとも2種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であってもよい。
また、一般式(1)で表されるホスホニウムカチオンと一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩を含むホスホニウム塩に関しては、一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸は実質上単品で工業上入手されることが多いので、通常は、1種類の一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸を用いて得られる塩を使用するのが、工業的な入手容易性の観点からは、有利である。従って、一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸を原料とする場合、典型的には、一般式(4)において、Xは、1種類の一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である。勿論、Xは、2種以上の一般式(3)で表される脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であってもよい。
一般式(1)のホスホニウムカチオンにおけるR〜Rは、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、特にブチル基であることが好ましい。R〜Rの全てが、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、特にブチル基であることがより好ましい。
一般式(2)及び一般式(3)の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基に関しては、次のアニオン残基が好ましいものとして例示できる。
一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rは全てが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基(ア)であるか、又は、一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rの内いずれか1つがメチル基で残り3つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基(イ)であるか、又はこれら(ア)と(イ)との混合物であるのが好ましい。
また、一般式(3)において、R10〜R13がすべて水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるか、又は、R10〜R13の内いずれか1つがメチル基で残り3つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるか、又は、R10〜R13のうちの2つが(特に、R11及びR12が)カルボキシル基で残り2つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるのが好ましい。
特に、一般式(3)において、R10〜R13がすべて水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるか、又は、R10〜R13のうちの2つが(特に、R11及びR12が)カルボキシル基で残り2つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるのがより好ましい。
特に、一般式(4)のXで表される脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基としては、 (i)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸(一般式(2)において、Rがメチレン基、R〜Rが水素原子)のアニオン残基、又は (ii)メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸(一般式(2)において、Rがメチレン基、R〜Rの内いずれか1つがメチル基で残り3つが水素原子)のアニオン残基、又は(iii)1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(一般式(3)において、R11及びR12がカルボキシル基、R10及びR13が水素原子)のアニオン残基であることが好ましい。これら(i)〜(iii)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、一般式(2)及び(3)で表される脂環族ポリカルボン酸においては、隣接する炭素原子にそれぞれ結合した二つのカルボキシル基がシス配置である異性体と、該二つのカルボキシル基がトランス配置である異性体が存在する。上記シス配置は、該二つのカルボキシル基が結合する二つの炭素原子の間の一重結合に関して、該二つのカルボキシル基が同じ側に存在する場合を指す。また、トランス配置は、該二つのカルボキシル基が結合する二つの炭素原子の間の一重結合に関して、該二つのカルボキシル基のうちの一方が、他方とは異なる側に存在している場合を指す。
本発明においては、アニオン残基は、シス配置の脂環族ポリカルボン酸由来のもの及びトランス配置の脂環族ポリカルボン酸由来のものの何れであってもよく、また、両者の混合物であってもよい。原料とする該脂環族ポリカルボン酸がトランス−シス混合物であって、且つ隣接する炭素原子に結合した二つのカルボキシル基が1組である場合(換言すると一般式(2)においてR〜Rがすべて水素原子である場合、又は、一般式(3)においてR10〜R13がすべて水素原子である場合)、シス配置の脂環族ポリカルボン酸由来のアニオン残基が、80%以上(GC(ガスクロマトグラフィー)分析による面積基準)であるのが好ましい。基本的には、原料脂環族ポリカルボン酸の立体配置は、ホスホニウム塩の形成反応においても保存され、原料脂環族ポリカルボン酸のシス体含有量が、生成するホスホニウムと脂環族ポリカルボン酸アニオン残基との塩のシス体含有量とほぼ同一となるものと考えられる。
本発明のエポキシ樹脂系組成物で硬化剤として使用するホスホニウム塩に含まれる脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、エポキシ樹脂のエポキシ基の自己重合(アニオン重合)を引き起こし、エポキシ樹脂を硬化させる。
本発明において、さらにエポキシ樹脂と硬化剤の硬化反応がそれぞれエポキシ基と活性水素化合物との付加重合反応である硬化剤が使用できる。このような硬化剤としては、フェノール樹脂、アミン系硬化剤、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。
フェノール樹脂系硬化剤としては、特に限定されず、一般に硬化剤として使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する汎用的なフェノール樹脂を用いることが可能であり、例えば、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等から合成されるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、有姿でそのまま硬化剤として使用してもよく、適宜溶剤や添加材等を添加し、硬化剤組成物として使用することもできる。
アミン系硬化剤としては、特に限定されず、汎用的な芳香族アミン、脂肪族アミンなどを用いることが可能であり、例えば、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリオキシテトラメチレンビス(p−アミノベンゾエート)などが挙げられる。
これらの硬化剤は、有姿でそのまま使用してもよく、適宜溶剤や添加材等を添加し、硬化剤組成物として使用することもできる。
なお、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤の硬化反応がそれぞれエポキシ基と活性水素化合物との付加重合反応である硬化剤を使用する場合、上記したホスホニウム塩は、硬化促進剤として機能する。この場合、当該ホスホニウム塩は非特許文献5の「3−4−2 ホスホニウムハライドによる硬化反応機構」に記載のホスホニウムハライドと同様に機能し、エポキシ樹脂と硬化剤は付加重合反応により硬化する。
<エポキシ樹脂系組成物>
エポキシ樹脂系組成物は、線膨張率を小さくするために、公知の各種無機充填剤を含有することができる。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化アルミニウムなどを挙げることができる。またそれらは、シランカップリング剤などのカップリング剤で表面処理してもよい。
その他、エポキシ樹脂系組成物に添加される公知の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、イオントラップ剤、離型剤、カーボンブラックなどの顔料などが挙げられる。また、エポキシ樹脂以外の樹脂を含むこともできる。
エポキシ樹脂系組成物のうち、一般式(1)のホスホニウムカチオンと一般式(2)及び(3)の少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩の含有量は、硬化性エポキシ樹脂100重量部に対して0.5重量部〜10重量部であることが好ましい。かかる含有量が0.5重量部より少ないと、硬化力を十分に発揮することができない場合があり、また、10重量部より多いと、組成物の貯蔵安定性を損なうからである。硬化性をより厳密に考慮すれば、かかる含有量を1重量部〜5重量部とすることが更に好ましい。
さらにフェノール樹脂、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の硬化剤を使用する場合、硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂中のエポキシ当量と、硬化剤の活性水素当量との当量比を考慮して決定される。一般的には、エポキシ当量と活性水素当量との当量比が1:1となるように、硬化剤の含有量を決定する。
本発明のエポキシ樹脂系組成物は、前記各成分を前記所定割合で混合することにより調製できる。好ましい調製方法として、エポキシ樹脂と本発明のホスホニウム塩とを温度20〜80℃程度で均一に撹拌混合する方法を挙げることができる。また、硬化剤を加える場合、必要に応じて150℃程度に加熱してもよい。エポキシ樹脂、本発明のホスホニウム塩、硬化剤、その他公知の添加剤の各成分は1度に添加してもよく、又は複数回に分けて少しずつ添加してもよい。
なお、混合の際は、均一に攪拌、混合することを容易とするため、ロールやニーダーなどの混練機等を用いることが好ましい。
<エポキシ樹脂系硬化物>
エポキシ樹脂系硬化物は、上記説明した本発明のエポキシ樹脂系組成物を、硬化温度80〜250℃程度で硬化時間30秒〜15時間加熱することで得ることができる。
以下、実施例及び試験例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>
(a)テトラブチルホスホニウムヒドロキシドの40重量%水溶液100重量部に、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸/メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸(重量比1/4)混合物42重量部を加えて中和し、得られた反応混合物から減圧蒸留法を用いて脱水することにより、ホスホニウム塩、即ち、テトラブチルホスホニウムカチオンとビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸/メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸(重量比1/4)混合物由来の混合アニオン残基との塩(以下、「TBP−HNA塩」と略記する)80重量部を得た。
(b)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸及びメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸は、シス体及びトランス体の異性体混合物であるが、シス体が95重量%であることをGC(ガスクロマトグラフィー)測定において確認した。
<製造例2>
テトラブチルホスホニウムヒドロキシドの40重量%水溶液100重量部に、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸38重量部を加えて中和し、得られた反応混合物から減圧蒸留法を用いて脱水することによりホスホニウム塩、即ち、テトラブチルホスホニウムカチオンと1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸のアニオン残基との塩(以下、「TBP−HPMA塩」と略記する)76重量部を得た。
<実施例1>
エポキシ樹脂のビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製、jER828EL、エポキシ当量185)100重量部に、製造例1で得たホスホニウム塩、即ち、TBP−HNA塩を5.0重量部添加、加熱下攪拌し均一化した後、室温まで冷却しエポキシ樹脂系組成物を得た。
<実施例2>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、製造例2で得たTBP−HPMA塩を5.0重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例1>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩(以下、「TBPDA」と略記する)を2.6重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例2>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、テトラブチルホスホニウムセバシン塩(以下、「TBP−セバシン塩」と略記する)を3.0重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例3>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、テトラブチルホスホニウムグリシン塩(以下、「TBP−グリシン塩」と略記する)を6.0重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例4>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、テトラブチルホスホニウムグルタミン酸塩(以下、「TBP−グルタミン酸塩」と略記する)を6.0重量部使用した以外は、実施例1と同様に行ったが、均一なエポキシ樹脂系組成物は得られなかった。
<比較例5>
TBP−HNA塩5.0重量部に代えて、2−エチル−4−メチルイミダゾール(以下、「2E4MZ」と略記する)を4.0重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
〔硬化性評価〕
実施例1〜2および比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂系組成物を140℃下、所定時間加熱して得られるゲル化物の外観を目視で観察した。ゲル化物の外観が良好(均一に凝集している)であるものは○、やや不充分であるものは△、ぼろぼろで凝集力がないものは×とした。
なお、本測定において、ゲル化試験器としては日新科学社製GT―Dを使用した。
〔貯蔵安定性試験〕
実施例1〜2および比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂系組成物の流動性を目視で確認した。貯蔵安定性は流動性を失うまでの日数である。
実施例1〜2および比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂系組成物のGT測定結果及び貯蔵安定性評価結果を表1に示す。
Figure 2015063661
表1に示すように、本発明のエポキシ樹脂系組成物(実施例1、2)は、硬化性および貯蔵安定性に優れている。
一方、比較例1、2、5は、硬化性および貯蔵安定性が劣り、比較例3は、硬化性が良好であるものの貯蔵安定性が劣り、比較例4は、エポキシ樹脂系組成物が不均一であった。
<実施例3>
フェノール樹脂系硬化剤のMEH−7851M(水酸基当量214、明和化成社製)214重量部に、製造例1で得たホスホニウム塩、即ち、TBP−HNA塩を10.0重量部加え、150℃で2分加熱下に攪拌・混合した後、室温まで冷却した。これにエポキシ樹脂のNC−3000(エポキシ当量274、日本化薬社製)280重量部を加え、120℃で2分加熱下に攪拌・混合した後、室温まで冷却しエポキシ樹脂系組成物を得た。ここで、エポキシ当量と水酸基当量の当量比は、1.0である。
<実施例4>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、製造例2で得たTBP−HPMA塩を11.4重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例6>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン(以下、「TPTP」と略記する)を3.4重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例7>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(以下、「DPPB」と略記する)を5.1重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例8>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート(以下、「TPP−SCN」と略記する)を3.2重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例9>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート(以下、「TPTP−SCN」と略記する)を2.9重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例10>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート(以下、「TPPB−SCN」と略記する)を2.8重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例11>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド(以下、「TPP−DCA」と略記する)を6.7重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
<比較例12>
TBP−HNA塩10.0重量部に代えて、ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド(以下、「TPPB−DCA」と略記する)を6.6重量部使用した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
〔ゲルタイム測定〕
JIS K 6910記載のゲル化時間測定方法に準じ、鋼板温度を150℃として、実施例3〜4および比較例6〜12で得られたエポキシ樹脂系組成物のゲルタイム(GT)を日新科学社製GT―Dを使用して測定した。
なお、各硬化促進剤を配合した実施例および比較例は、硬化促進剤の配合量を調整することで、ゲルタイムを一致させた。
〔硬化性評価〕
実施例3〜4および比較例6〜12で得られたエポキシ樹脂系組成物の熱時硬度を、デュロメーターにより経時測定した。熱時硬度の立ち上がりが急峻であるほど、硬化性良好といえる。デュロメーターとしてはテクロック社製デュロメーターGS−720G(JIS K6253、JIS K7215準拠、タイプD)を使用し、エポキシ樹脂系組成物を150℃熱板上で測定した。
実施例3、4および比較例6〜12で得られたエポキシ樹脂系組成物の150℃におけるゲルタイム測定結果を表2に示し、硬化反応時の熱時硬度測定結果を図1〜図3に示す。
Figure 2015063661
表2に示すように、本発明にかかるエポキシ樹脂系組成物(実施例3、4)は、ゲル化時間の変化が小さく、貯蔵安定性に優れている。
また、図1〜図3に示す150℃における硬化反応時の熱時硬度測定結果のとおり、各例において熱時硬化の挙動に違いがあり、実施例3、4のエポキシ樹脂系組成物は、比較例6〜12と比較して、硬化反応時における熱時硬度の上昇が急峻となった。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂系組成物は、従来と比べ、硬化性および貯蔵安定性に優れている。
本発明のエポキシ樹脂系組成物は、硬化性と貯蔵安定性に優れているため、例えば、各種の小型の電気・電子部品や半導体部品の樹脂封止、また積層板等用途のフィルム、シートなどの分野においても極めて有用である。

Claims (8)

  1. (a)エポキシ樹脂および(b)硬化剤がホスホニウム塩からなるエポキシ樹脂系組成物であって、該ホスホニウム塩が、下記一般式(1)
    Figure 2015063661
    (式中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。)
    で表されるホスホニウムカチオンと、
    下記一般式(2)
    Figure 2015063661
    (式中、Rは、メチレン基又はエチレン基を示し、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸及び一般式(3)
    Figure 2015063661
    (式中、R10〜R13は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はカルボキシル基を示す。)で表される脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基との塩であることを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
  2. 一般式(1)において、R〜Rの全てがブチル基である請求項1に記載の組成物。
  3. 上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、(ア)一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rの全てが水素原子である脂環族ポリカルボン酸及び(イ)一般式(2)において、Rがメチレン基であり、R〜Rの内いずれか1つがメチル基で残り3つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、(i)一般式(3)において、R10〜R13がすべて水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基であるか、又は、(ii)R10〜R13のうちの2つがカルボキシル基で残り2つが水素原子である脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である請求項1又は2に記載の組成物。
  5. 上記少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂環族ポリカルボン酸のアニオン残基である請求項1又は2に記載の組成物。
  6. さらにエポキシ樹脂と硬化剤の硬化反応がそれぞれエポキシ基と活性水素化合物との付加重合反応である硬化剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂系組成物。
  7. 硬化剤がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂系組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂系硬化物。
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