JP2015063463A - 繊維状硫黄及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、電池の正極活物質等として有用な硫黄を提供することにある。【解決手段】 形状が繊維状であり、平均直径が50μm以下であることを特徴とする繊維状硫黄。硫黄を溶融し、前記溶融した硫黄を、電場内で伸長させることを特徴とする繊維状硫黄の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維状硫黄、繊維状硫黄で形成された不織布及び繊維状硫黄の製造方法に関する。
近年、急速な携帯電子機器や電気自動車の普及に伴い、高容量で繰り返し充放電可能な二次電池が要求され、開発が盛んに行われている。なかでもリチウム電池が、軽量で高出力が期待されることから、特に注目されている。現在、リチウム電池としては、正極にLiCoOやLiMnなど、負極にはカーボンや金属リチウムが用いられているケースが多いが、負極カーボンの場合、電気容量が300−370mAh/g、リチウムの場合、3830mAh/gであるのに対して、正極のLiCoOやLiMnの電気容量は、110−140mAh/g程度であり、正極材料の開発が望まれている。
一方高エネルギー密度電池の正極としては、硫黄が着目されている。硫黄はLiSまでリチウムと完全に反応すると仮定した場合、2600Wh/gの理論エネルギー密度と1672mAh/gの理論的に高い容量を有している。さらに硫黄は毒性が低く、資源も豊富であるため、安価であるという利点もある。
しかしながら、硫黄は反応性に乏しく、また絶縁体であるため、正極活物質に用いるためには、硫黄の活性を高め、更に導電性を付与する必要がある。そこで、これらの欠点を補うため、開発が多くなされており、例えば金属ナトリウムを負極とし、硫黄を正極とする二次電池として、硫黄の活性を高めるために、作動温度を300℃以上とする提案がなされている。このような高温下での作動を改良するナトリウム/硫黄電池として、混合物全体の重量に対して50〜70重量%の硫黄、15〜30重量%の炭素、15〜20重量%のポリエチレンオキサイドの混合物を正極として用い、負極をナトリウム又はナトリウム含有炭素或いはナトリウム酸化物として、電解液にナトリウム塩を含むグリミド(grymid)溶液を用いることで、常温作動のナトリウム/硫黄電池(特許文献1)が提案されている。
また、硫黄の微粉体と炭素の微粉体とをメカノケミカルフュージョン法により緊密一体化した複合体を正極とする提案(特許文献2)などが提案されている。
しかしながら、300℃もの高温下に作動する電池では装置の大型化や安定性に欠けるなどの不便があり、硫黄と炭素等とを混合する正極にあっては硫黄以外の不純物の混合割合が多くなること及び繰り返し充放電することにより硫黄化合物が電解液中に溶出し、次第に出力が低下するという欠点があった。そこで硫黄を正極活物質として高エネルギー密度で長期間安定的に作用する正極材料の開発が期待されていたのである。
特表2007−522633号 公報 特開2006−092885号 公報
本発明は硫黄を正極活物質とする場合の上記問題点に鑑み、より効率的で且つ安定性の高い硫黄を含む正極材料を開発し、提案するものである。
本発明の第1の態様は、繊維状硫黄に導電性ポリマーとなるモノマーを吸着させた後、重合させることを特徴とする実質的に硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体である。
また、本発明の第2の態様は、前記導電性ポリマーを5〜30重量%含むことを特徴とする第1の態様に記載の実質的に硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体である。
更に本発明の第3の態様は、前記繊維状硫黄は、平均直径50μm以下、好ましくは10〜30μmよりなる不繊布である第1の態様又は第2の態様に記載の実質的に硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体である。
更に本発明の第4の態様は、導電性ポリマーとなるモノマーがピロールであり、導電性ポリマーがポリピロールである第1の態様乃至第3の態様のいずれかに記載の実質的に硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体である。
また、本発明の第5の態様は、繊維状硫黄が溶融電界紡糸法により作製されていることを特徴とする第1の態様乃至第4の態様のいずれかに記載の実質的に硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体である。
本発明は、硫黄を繊維状とし得るという新知見に基づき、特に電界紡糸技術によりナノオーダー乃至ミクロンオーダーの直径を有する繊維とすることができ、これに導電性ポリマーとなるモノマーを吸着させた後重合して主として繊維表面を薄い導電性ポリマー皮膜で、被覆することにより、絶縁体である硫黄の活性を助長し、導電性を付与することが可能となり、高密度のエネルギーを与える電池の正極材料とすることができるのである。
また本発明にあっては、繊維の表面に導電性皮膜が形成されているため、硫黄化合物の電解液への流出が抑えられるため、充放電の繰り返しに対しても出力の減少や電圧の低下などは少なく、安定して作用するものである。
硫黄の溶融電界紡糸装置の概略図である。 電圧を印加しながら押し出した硫黄繊維(a)と溶融電界紡糸による硫黄繊維(b)のSEM写真。 本発明により繊維状硫黄を導電性ポリマーで被覆した硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体の一例を示すSEM写真。 本発明の硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体におけるサイクリックボルタンメトリによる測定結果の一例。 硫黄及びその繊維のXRDスペクトル図 本発明の硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体におけるサイクリックボルタンメトリによる測定結果の一例。 本発明の硫黄と導電性ポリマーよりなる複合体におけるサイクリックボルタンメトリによる測定結果の一例。 硫黄繊維におけるサイクリックボルタンメトリによる測定結果。
本発明のポイントは、硫黄を繊維状、特に極細繊維状に成形し得るという知見を得たことにある。従来硫黄又は、硫黄化合物の表面積を増大し、活性な電極物質とする試みは、一般に硫黄を微粒化することであり、これらを導電性物質である炭素で継ぎ合わせる方法が奨められていた。この場合、硫黄粒子の全表面を覆う炭素の量が多くなり、実用的な正極とするには炭素が50%程度混合されることになる。しかるに本発明にあっては細い繊維状とするため、その側面方向だけを被覆すればよいため、同様の効果を得るための導電性物質の量を減ずることが可能となる。このため正極活物質としての複合体中の硫黄割合を多くすることができる。
更に本発明にあっては、導電性ポリマーとなるモノマーを繊維状硫黄に吸着させるため、硫黄の表面や繊維の割れ目等に均一に付着させることが可能となり、しかも極めて薄い層状となっているため、これを重合することにより、薄い導電性ポリマーの皮膜とすることができるのである。このように、薄い被膜を形成させることで、電解液の浸み込みは容易となり、しかもLi(nは硫黄原子の数、一般に8以下)で表わされる硫黄化合物の電解液への溶出が抑制されるという利点を有する。
本発明において、繊維状の硫黄の形状は特に限定されない。一般に繊維の直径は、細い程表面積は大きくなり、且つ導電率は5.0×10−16Ω−1・m−1と低く、絶縁体である硫黄の反応性や電子の移動性は確保されるが、繊維としての強度も減少し、取扱が不便になる。一般に繊維の直径は、平均50μm以下とするのがよく、取扱や加工の面から10μm以上好ましくは、平均20〜30μm程度である。
また、繊維の長さは特に制限されない。一般に不織布のマット状として用いられる場合が多く、1〜30cm、好ましくは20〜30cmである。
これらの繊維の製造方法は、何ら制限されないが、一般に溶融し、ノズルから押し出して作ることができる。すなわち、硫黄の融点は112.8℃(α硫黄)〜119.6℃(γ硫黄)であるが、195℃までは粘度が増加し、更に高温では再び減少する。そこで、溶融紡糸は、180〜250℃、好ましくは190〜220℃程度で行うことができる。好ましい紡糸方法の一つは、電界紡糸方法である。
溶融電界紡糸装置の概細を図1に示す。図中、シリンジ中に硫黄を入れ加熱して、ニードル(針)とコレクター(集電体)の間に印加した電圧により、電圧がしきい値を超えると、電荷の反発力が溶融硫黄の表面張力に打ち勝って電荷を帯びた噴流が発生し、電場内で噴流は伸長して非常に細いファイバーを形成し、コレクター上に堆積する。溶融電界紡糸法における条件としては、通常溶融電界紡糸温度が180〜250℃の場合、ニードル〜コレクター間の距離は、過度に短い場合には、ニードル〜コレクター間で放電が起こり紡糸が出来ないことがあり、過度に長い場合には、ファイバーを引っ張る静電引力が小さくなることで紡糸が出来ないことがあるので、前記距離は、4cm〜10cmとするのが好ましい。また、印加電圧は、過度に低い場合には、静電引力が小さくなることで紡糸が出来ないことがあり、過度に高い場合には、ニードル〜コレクター間で放電が起こり紡糸が出来ないことがあるので、前記印加電圧は8kV〜10kVとすることが好ましい。なお、周囲条件(主に湿度)の変化により放電の起こり易さが変化し、湿度20%以下と低い条件が好まれるが、この場合、湿度10〜50%程度の条件において紡糸可能である。
かくして、直径ナノサイズ〜ミクロンサイズの硫黄繊維が得られる。この場合、繊維の平均直径は、溶融硫黄の粘度、印加する電圧及びニードル〜コレクター間の距離により、ほぼ決めることができる。従って、数度程度の試行錯誤により、繊維状硫黄の直径を決めることができる。
図2に電圧を印加しながら押し出し調製した硫黄繊維(a)と溶融電界紡糸による硫黄繊維(b)(ニードル〜コレクター間6cm、印加電圧10kV、溶融温度200℃)のSEM写真を示す。
一般に電池の正極とする場合、該溶融紡糸の堆積は集電体上に行われる、集電体としては板状、網状、凹凸状の金属、例えば、銅、白金、鉄、ニッケル等であるが、炭素であってもよい。また正極活物質と集電体との接触を考慮して、後述する導電性ポリマーの一部が集電体を被覆していてもよい。
次に、繊維状の硫黄は、導電性ポリマーで一体化されるが、該導電性ポリマーは、まず、モノマーを繊維状硫黄に吸着させ、この吸着したモノマーを硫黄上で重合させることにより薄い被膜を形成させる必要がある。
導電性ポリマー用モノマーとしては周知のモノマーを使用し得る。例えば、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどを形成するモノマー等である。中でも、ピロールが重合の容易性や得られる皮膜の状態から特に好ましい。
繊維状の硫黄に上記モノマーを吸着させる方法は、繊維状硫黄を、そのまま又は、場合によっては集電体上に堆積させた不織布状物をそのまま、モノマー溶液又は、モノマーガス中に入れることによって達成される。この場合、あらかじめ重合触媒中で処理し、あらかじめ触媒を付着させておいてもよいし、またモノマーを吸着させた後、触媒で処理することもできる。また場合によっては紫外線照射や加熱によって重合させることも可能となる。
なお、触媒処理により、重合を行う場合は、あらかじめ触媒を吸着した後、モノマー中に入れるより、あらかじめモノマーを吸着させた後、触媒で処理する方がモノマーの重合量を制御し易いので好ましい。
また、繊維状硫黄を導電性ポリマーで被覆した後、或いは導電性ポリマーの形成時にヨウ素等導電性ポリマーの導電性を高める物質をドープすることも好ましい場合がある。
図3に繊維状硫黄にヨウ素を触媒して用い、ピロールを重合させて得た実質的に硫黄と導電性ポリマーの複合体のSEM写真を示す。図中(1’)、(2’)はそれぞれ次の表1に示す条件による。
図中、(a)は不織布全体の模様を示し、(b)は各1本の繊維の状態を示す。なお、1’(b)にあっては、特に繊維切断面を示す。この例から、導電性ポリマーが硫黄表面を主として覆い内部間際にも浸透して重合していることがわかる。
本発明により得られる、電気化学的性能を見るため、酸化還元電位及び電流量をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行った結果の一例を図4に示す。図4では、3.5ボルトからスタートし、1〜4.5ボルトを10サイクル行った図である。第一サイクル目においては、2.0、2.8ボルトにわずかな還元反応に伴うピークが見られるが、5サイクル目以降では、多少の還元ピーク電位のシフトはあるものの、2.5〜3.5ボルトと高い電位で還元ピークが見られる。更に還元電流もサイクル数と共に増大し、10サイクル目においても還元電流は大きな値を維持している。これらの要因としては、本発明の複合体が、絶縁体である硫黄繊維へ導電性ポリマーが緊密に付加し、導電経路が確立され、硫黄の酸化還元反応の進行が助長されているものと理解される。
以下に実施例を示す。
(繊維状硫黄の製造)
(1)溶融電界紡糸装置
ステンレス針(内径0.7mm)を装着した3mlガラスシリンジ[MITSUBA株式会社]へ、変圧器[YAMABISHI株式会社 TYPE S−130−10]に接続したシリコンコードヒータ(1.5m)[相互理化化学硝子製作所株式会社 SKH−0151]を巻きつけた。収集板としてステンレス板(9×9cm)を用いた。電圧を印加した際にステンレス針が正に、収集板コレクターが負に帯電するよう高圧電源装置[松定プレシジョン株式会社]を接続した。コードヒータの温度は、被接触温度センサ[タスコジャパン株式会社 THI−303F]およびセンサ電源付ディジタルメータリレー[タスコジャパン株式会社 TAT−806A]によって測定、制御した。溶融電界紡糸に用いた装置の概略図を図1に示す。
(2)繊維状硫黄の作製
調製法としては、硫黄粉末をガラスシリンジへ加えた後、シリコンコードヒータによってガラスシリンジを200℃まで加熱した。その後、ステンレス針および収集板へ電圧を印加することで、収集板上の硫黄の溶融電界紡糸を行った。最適な紡糸条件を探索するために、印加電圧、ステンレス針の針先から集電体までの距離をそれぞれ変化させて紡糸を行う。
なお電気化学的測定(CV)を行うため、電極とするための集電体として、白金メッシュ(3×20mm)を収集板状に載置した。紡糸条件を表2にまとめて示す。
なお、ステンレス針の針先から収集板あるいは集電体までの距離を紡糸距離と表記する。
また、硫黄を溶融電界紡糸した直後(b)、2日後(c)、5日後(d)のファイバーおよび硫黄粉末(a)のXRDスペクトルを図5に示す。硫黄粉末のXRDスペクトルでは2θ=22−23゜に見られたピークが紡糸した直後の硫黄ファイバーでは消失し、新たに2θ=20,24°付近に、硫黄粉末では見られなかったピークが出現した。したがって、溶融電界紡糸法によって作製した硫黄ファイバーは、ポリマー硫黄の結晶構造で紡糸されたことがわかる。しかし、硫黄ファイバーを作製してから2日後,5日後のXRDスペクトルでは、紡糸した直後のファイバーで見られた2θ=20,24°付近のピークは再び消失し、硫黄粉末と同じXRDスペクトルとなった。これらのことより、紡糸直後のファイバーの結晶構造は不安定であり、時間が経つと単体硫黄の安定な結晶構造として知られるα硫黄へと変化する。
(3)導電性ポリマー(ポリピロール)の被覆
iodine(ヨウ素)吸着後のPyrrole(ピロール;Py)接触によるポリピロール(PPy)重合:
表2の条件3で作製した硫黄ファイバーを用いて、PPyの被覆を行った。各条件を表3に示す。Ptメッシュ(5mm×3mm)上へ硫黄を溶融紡糸したもの(Pt/S)を、iodineの入ったガラスセル中に静置してArガスで脱気後、暗所、50℃(オイルバス中)でiodineをファイバーへ所定時間吸着させた(Pt/S/iodine)。その後、Pt/S/iodineをPyの入ったガラスセル中へ移し、Arガスで脱気後、50℃(オイルバス中)でPyと所定時間接触させた。重合後50℃、24h減圧乾燥を行った。生成したPPy量/(S+PPy)量(%)を表3に示す。
Py吸着後のiodine接触によるPPy重合:
表2の条件3で作製した硫黄ファイバーを用いて、PPyの被覆を行った。各条件を表4に示す。Pt/SをPyの入ったガラスセル中に静置してArガスで脱気後、暗所、50℃(オイルバス中)でPyをファイバーへ所定時間吸着させた(Pt/S/Py)。その後Pt/S/Pyをiodineの入ったガラスセル中へ移し、Arガスで脱気後、暗所、50℃(オイルバス中)でiodineと所定時間吸着させた。重合後50℃、24h減圧乾燥を行った。生成したPPy量/(S+PPy)量(%)を表4に示す。
(4)電気化学的挙動
サイクリックボルタンメトリ(CV)測定:
表2の3に示す繊維状硫黄を用い、下記表5に示す条件で導電性ポリマーを被覆した電極の電気化学的挙動を調査するためにCV測定を行った。また比較のために、硫黄繊維を白金メッシュ上へ堆積し、その後50℃で24時間減圧乾燥を行うことで、硫黄電極を作製した。なお、この硫黄電極をSf電極と表記する。測定には電気化学システム[北斗電工株式会社 HZ−5000]を使用した。全ての電極に対して電位走査範囲1.0V−4.5V、走査速度1mVs−1とし、恒温槽[東京理科器械株式会社 EYELA M
G−2300]中でセルの温度を30℃で一定に保ち測定を行った。
なお、これらの操作は全てアルゴン雰囲気下、グローブボックス中で行った。
また、電解質は1モルLiPF/プロピレンカーボネート−ジエチルカーボネート(容積比1:1)とする。またCV測定グラフの図の番号をそれぞれ表5に示す。

Claims (5)

  1. 形状が繊維状であり、平均直径が50μm以下であることを特徴とする繊維状硫黄。
  2. 長さが1cm以上であることを特徴とする請求項1記載の繊維状硫黄。
  3. 請求項1又は2記載の繊維状硫黄で形成された不織布。
  4. 硫黄を溶融し、前記溶融した硫黄を、電場内で伸長させることを特徴とする繊維状硫黄の製造方法。
  5. ノズルとコレクター間に電圧を印加し、溶融した硫黄を前記ノズルから噴出させて伸長させることを特徴とする請求項4記載の繊維状硫黄の製造方法。
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