JP2006093066A - 硫黄および/または硫黄化合物を含む複合物質及びその製造方法 - Google Patents

硫黄および/または硫黄化合物を含む複合物質及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 大量の導電補助剤を含有させることなく、容量密度の大きい硫黄を活物質とした新規物質、すなわち、高エネルギー密度な電池のための正極材料に適した新規物質の提供。
【解決手段】
硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
【選択図】 図11

Description

本発明は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子に導電性物質の微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質、およびその製造方法に関する。
近年、通信機器やOA機器の可搬化がすすみ、これら機器の軽量化及び小型化競争が繰り広げられている。このような各種機器や、或いは電気自動車等の電源として利用される電池において高エネルギー密度化が求められている。なかでも、リチウム電池は、水の分解電圧を考慮する必要がなく、正極材料を適宜選定することにより高電圧化が可能であることから、従来から注目されている。この種の電池の代表的な正極材料は金属酸化物である。なかでも、二酸化マンガンは、マンガンが自然界に豊富に存在し、安価なことから、最も実用性の高い正極材料の一つである。
しかしながら、二酸化マンガンを正極材料として使用したリチウム電池には、容量が小さいという問題がある。かかる問題を解決すべく、二酸化マンガンとの所定の割合の混合物を正極に使用した電池が提言されている(特許文献1)。
一方、高エネルギー密度の電池とするためには、容量密度の大きい活物質を用いることが好ましく、例えば、正極の電池材料として、硫黄が公知の材料としては最も大きな容量密度を有することが知られている。すなわち、図1に示すとおり、SがLiSまで完全に還元された時(利用率100%)、材料の重量あたりの理論容量密度は1675Ah/kgとなり、どの化学種より大きな容量密度を示すのである。
このような硫黄の特性をいかして、容量の高い硫黄を活物質とした正極を有する電池の検討が行われている(特許文献2)。
近年では、活性硫黄の他にも硫黄に着目した研究がいくつか行われており、ポリカーボンスルフィド、有機ジスルフィド化合物が挙げられる。これら2つの代表的な硫黄系化合物の理論容量密度も、一般的な導電性高分子や各種リチウム金属酸化物に比べ、3倍から高いものでは13倍もの値を示す。本発明者らは「複素環式有機硫黄化合物からエネルギー貯蔵デバイス材料を設計するに際し、理論容量密度の増加にジスルフィド部位の増加およびポリスルフィド化を組み合わせることを特徴とする新規化合物の設計方法」を提案し、すでに国際出願をしている(特許文献3)。
特開平8−213018号公報 米国特許第5523179号 WO 02/082569号
硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の電子伝導度は、室温で5×10−30S・cm−1程度ときわめて低いため、大量の導電補助剤を含有させる必要がある。通常、電極内の硫黄の割合は、50〜60重量%が上限である。また、硫黄の容量利用率は50〜70%程度であることが知られている。例えば、正極材中の硫黄の含有率が50パーセントである時、硫黄の容量密度は、電極内の硫黄の含有率(50%)、硫黄の容量利用率の上限(70%)を考慮すると、600Ah/kgが上限になり、理論容量の35%程度の容量しか得られない。さらに容量を増大させるためには、硫黄または硫黄化合物の含有率を高くする必要がある。
しかしながら、硫黄の電子伝導性が乏しいことから、十分な電子回収経路を得るためには過度の導電補助剤(導電性を有する物質)が必要となり、湿式法などの他の粒子複合化手法においては、硫黄の含有率をせいぜい50重量%程度までに制限されてしまっていた。
また、湿式法では混合時に硫黄の粘度が上がるため、再凝集しやすく加工性に難があり、含有率を高めることができなかった。
更には、硫黄の酸化還元反応が遅く電極反応の抵抗が高いため、金属リチウムの負極を用いた電池を室温で動作させても2V以下の低い電圧しか得られないという欠点があった。
上記課題を鑑み、本発明は、硫黄の最も大きい容量密度を有するという特性を生かしつつ、大量の導電補助剤(導電性を有する物質)を含有させることなく、容量密度の大きい硫黄を活物質とした正極材料に適した、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子に導電性物質の微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記の(1)〜(8)の硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質を要旨としている。
(1)硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
(2)上記の出発物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を硫黄として70重量%以上を含有する原料混合物から製造されたものである(1)の導電性の繊維状複合物質。
(3)出発物質である複合物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を核とし、その表面に十分な電子・イオン伝導経路を確保した状態で圧密された複合微粒子層が形成されているものである(1)または(2)の導電性の繊維状複合物質。
(4)出発物質である複合物質は、電気伝導度が10〜10S・cm−1以上のものである(1)ないし(3)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(5)出発物質である複合物質は、粒子径75μm以下の硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子と、一次粒子径30nmないし50nmの炭素微粒子である導電性物質の微粒子の原料混合物から製造されたものである(1)ないし(4)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(6)炭素微粒子は、空隙率60Vol%以上、80Vol%以下の中空構造を有するものである(1)ないし(5)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(7)導電性の繊維状複合物質における導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造は数珠状に導電性物質の微粒子がネットワーク構造を形成するものである(1)ないし(6)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(8)導電性の繊維状複合物質は硫黄含有率を73%以上であって、かつ、電気伝導度が10〜10S・cm−1以上のものである(1)ないし(7)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
また、本発明は、下記の(9)および(10)の硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質の製造方法を要旨としている。
(9)硫黄として70重量%以上を含有する硫黄および/または硫黄化合物の粒子および導電性物質の微粒子を原料とし、これらをメカノフュージョンし、該粒子を核とし、その表面に圧密された該粒子と微粒子の複合微粒子層を十分な電子・イオン伝導経路の両方を確保した状態で形成した硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質を製造する第1の工程、当該複合物質を融点以上に加熱する第2の工程、加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、該複合物質を室温まで冷却する第4の工程、第4の工程で得られた繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、粉砕された繊維状中間複合物質を導電性微粒子とさらにメカノフュージョンし、繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質を得る第6の工程からなることを特徴とする導電性の繊維状複合物質の製造方法。
(10)前記第4の工程は、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することを特徴とする(9)の製造方法。
本発明は、導電性を有する物質の含有量が少なくても十分な電子・イオン伝導経路の両方を確保することで電流密度を増大するとともに、硫黄または硫黄化合物の構造を変化させることで動作電圧が高く、エネルギー密度および出力密度が極めて大きいリチウムイオン電池を提供することを可能とした。
また、乾式工法で製造するため、湿式工法と比べ硫黄の含有率を高めることが可能であり、しかも電極形成時の加工性に優れる。
更に、材料となる炭素微粒子及び硫黄粒子は、安価でありコスト性に優れるため、高エネルギー密度・高出力密度の電池を安価に提供することが可能となる。
本発明において、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物として、硫黄、ポリカーボンスルフィド、有機ジスルフィド化合物を挙げることができる。これら3つの代表的な硫黄系化合物の理論容量密度も、一般的な導電性高分子や各種リチウム金属酸化物に比べ、3倍から高いものでは13倍もの値を示す。図1ではこれまでリチウム電池正極として考えられている材料の重量あたりの理論的な容量密度(Ah/kg)を示す。理論容量密度は分子量(Mw)に対する反応電子数(n)の比(n/Mw)から求められる。現行リチウムイオン二次電池の正極材料であるリチウム遷移金属酸化物は130〜280Ah/kg、導電性高分子は70〜100Ah/kgであるのに対し硫黄系化合物は300〜1675Ah/kgの値であることから高容量化が期待できる。
本発明の正極には環状構造を有する単体硫黄(S)や有機骨格をもつ有機硫黄化合物(−(−R−S−R−)−:nは2以上8以下、mは2以上10以下)などの硫黄系化合物を用いる。どちらも内部にジスルフィド結合(−S−S−)、あるいはジスルフィド結合が連なるポリスルフィド結合(−S−)をもつ。硫黄は電気化学的に活性な単体硫黄である。硫黄系正極について、硫黄(S)はリチウムと反応してLiSを生成する。この容量密度は1165Ah/kgと非常に高いものであり、電圧を仮に2Vとするとエネルギー密度は2330Whkg−1となり、LiCo0の137Whkg−1の17倍にもなる魅力的な物質である。単体硫黄は図2に示すように還元反応によりSから、Li、Li、Li、LiSへと変化する。その時の反応で得られる反応電子数は16電子である。すなわち、リチウム電池の正極に硫黄または硫黄化合物を用いた際、単体硫黄は還元反応によりSから8LiSに変化し、その反応に用いられる電子の数は16であり、他の材料と比べ活物質量に対する反応電子数の比が大きい。しかし、単体硫黄の電子伝導性は常温(25℃)で5×10−30S・cm−1程度と、他の正極材料の電子伝導性(現行正極材料のリチウム遷移金属酸化物:10−2〜10−1S・cm−1)と比べ極めて低く、そのままでは正極材料として用いることができない。
硫黄系化合物の例として、(SRS)のRがカーボン(C)であるポリカーボンスルフィド化合物[(CS]は高分子の状態を保持した状態で充放電され、少なくとも680Ah/kgのエネルギー密度で一般の酸化物電極の2倍以上の値が期待できる。ポリカーボンスルフィド化合物は様々なものが知られているが、当然Cのy/xの値が大きいほどエネルギー密度的には有利になる。
また、有機ジスルフィド化合物について、分子内にメルカプト基(−SH基)をもつ有機硫黄化合物(メルカプタンまたはチオール)が酸化されるとジスルフィド結合(−S−S−)を形成し、還元されると再びチオールに戻るという酸化還元反応がエネルギー貯蔵に応用できる。酸化反応によるS−S結合の生成を電池の充電に、還元反応によるS−S結合の開裂を放電に応用し、有機硫黄化合物がリチウム電池正極材料になる。理論エネルギー密度は、650〜1240Whkg−1と鉛蓄電池やニッカド電池と比べて一桁高く、しかも材料の価格、低毒性という観点からも高エネルギー密度電池材料として高い可能性をもっていると言える。
α位に炭素原子をもつ2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMcT)、トリチオシアヌル酸(TTCA)、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール(MTT)、それらのジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド体は代表的な有機ジスルフィド化合物である。有機ジスルフィド化合物をリチウム電池の正極材料に用いた場合の大きな欠点として、絶縁物であるため導電補助剤を付与しなければならず、そのため大きな特長である容量密度が小さくなってしまうことが挙げられる。
リチウム/硫黄電池の放電反応の説明をする。負極にはリチウム金属(Li)を用いる。正極には環状構造を有する単体硫黄(S)や有機骨格をもつ有機硫黄化合物(−(−R−S−R−) :nは2以上8以下、mは2以上10以下)などの硫黄系化合物を用いる。どちらも内部にジスルフィド結合(−S−S−)、あるいはジスルフィド結合が連なるポリスルフィド結合(−S−)をもつ。図3に示すように放電時に負極では酸化反応(溶解反応)が起こりLiからLiへと変化する。図3に示すように放電時に正極では還元反応(ジスルフィド結合の開裂反応)が起こり−S−S−から2S−へと変化する。
単体硫黄などは、従来、低い電子伝導性から電子を回収供与(酸化還元)するために大量の導電補助剤であるカーボンブラックやアセチレンブラックと呼ばれる炭素材料を必要とする。本発明において、複合物質を製造するための原料とする導電性を有する物質としては、カーボンあるいは触媒効果がある金属担持カーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとして市販されているものは高伝導率であり、取り扱いにすぐれている。炭素微粒子は一次粒子径30nmないし50nmで、空隙率60Vol%以上、80Vol%以下の中空構造を有する物が好ましく、この炭素微粒子はケッチェンブラック(登録商標)として市販されている。図4は、ケッチェンブラック(登録商標)を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真である。
通常、導電補助用炭素材料は一次粒子が約30−40nmの球状であり、単体硫黄は一次粒子が約70−100μmの粒子である。本発明においては、硫黄または硫黄化合物の粒子径は75μm以下のものを使用することが好ましく、該粒子表面に、ごく薄い炭素微粒子の層を形成することにより、硫黄または硫黄化合物の含有率が72.9重量%以上であり、電気伝導度が10〜10S・cm−1以上である電池正極材料を製造することが可能となる。
硫黄または硫黄化合物を電池正極材料として使用するためには、図2に示すような構造で単体硫黄粒子の周りに導電補助剤を覆う構造とするのが理想的である。例えば、単体硫黄と導電補助用炭素材料との複合物質をn−メチルピロリドンのような有機溶媒に混ぜ、インクを作り集電体である銅やアルミのシート上に塗布し、乾燥して図2のような単体硫黄の周りに導電補助用炭素材料が一様に被覆するような構造を集電体上に作るような電極にする。電極作製で必要なことは硫黄の微粒子化とその粒子の均一化、導電補助用炭素材料の添加量の最適化、均一分散化である。
そこで、本発明は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の材料特性を十分に活用するために、導電補助剤の含有率をできるだけ少なく(最適量添加)すること、硫黄または硫黄化合物粒子を均一に微粒子化すること、複合材料の均一分散化を図ることで、上記課題を解決している。本発明者らは、メカノフュージョンにより、硫黄または硫黄化合物の粒子表面に、ごく薄い導電性物質の層を形成することに成功した。原料の硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子と導電性物質の微粒子をメカノフュージョンし、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を形成する。
この方法によって得られた複合粒子を均一に分散することにより、少ない導電性物質の含有量でも、電子・イオン伝導経路の両方が確保され、大きなエネルギーを貯えることができる。
メカノフュージョンとは、複数の異なる素材粒子にメカニカルエネルギーを加えて、メカノケミカル的な反応を起こさせ、新しい素材を創造する乾式機械的複合化技術である。近年、複数の異なる素材粒子に、ある種の機械的エネルギーを加えると、反応が生じ、メカノフュージョン(表面融合)が起きることによって、新しい素材を創造できるようになることが明らかになってきている。この手法は、湿式法などの他の粒子複合化手法に比べて、プロセスがシンプルであり、組合せの幅が格段に広いことが特長である。なお、メカノケミカル反応とは、機械的エネルギーによる固体の高励起状態における周囲の物質との化学的相互作用をいう。
すなわち、機械的作用を与えられ活性化した核粒子表面に異種微粒子が付着する段階、ある程度異種微粒子が核粒子の表面に付着した後に、さらに微粒子が積層されるとともに微粒子層自体が圧密されて複合微粒子層が形成される段階を経ることにより、接合界面が強固な複合粒子が作製できるのである。
本発明では、図5に示すように、硫黄微粒子の表面にナノオーダーで粒子化した導電性物質の層を形成することにより、電子・イオン伝導経路の両方を確保することで、高容量化することを可能とした。メカノフュージョンにより複合化して形成した複合微粒子層は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子に、導電性物質の微粒子が食い込んでいる状態である。すなわち、図5に示すように、ケッチェンブラック(登録商標)が硫黄系化合物にナノサイズで薄く均一に被覆した複合化材料を提供する。ケッチェンブラック(登録商標)と硫黄系化合物とのナノ複合化は、ケッチェンブラック(登録商標)により電子・イオン伝導経路の両方を硫黄系化合物に付与する新規な複合材料である。図5に示すようにケッチェンブラック(登録商標)が硫黄化合物に薄く均一に被覆することで電子伝導経路が形成され、ケッチェンブラック(登録商標)の中空構造によるナノサイズの空隙により電解液がよくしみこむ構造となり、ケッチェンブラック(登録商標)の数珠状構造によるマイクロサイズの空隙により電解液がよくしみこむ構造となる。
複合微粒子層についてさらに詳細に説明する。図6は原料の硫黄とメカノフュージョンにより複合化した複合化粒子のSEM写真である。原料の硫黄(図7参照)では直径が約20〜50μmの粒子が存在するが複合物質では粒子径が約5〜10μmと小さくなり、形状もメカノフュージョンにより複合化を行うと球状形態となる。
図8は水銀ポロシメータ測定により得たケッチェンブラック(登録商標)についての細孔体積分布、図9は複合物質の細孔体積分布である。水銀ポロシメータ測定とは、サンプルに水銀を圧力により注入・排出することで表面積や細孔分布、細孔体積を見積もることができる測定である。水銀の注入・排出の経路を見ることで粉体の状態がわかる。ケッチェンブラック(登録商標)単独での測定では水銀注入時の細孔径に対する細孔体積変化微分値の経路が一致しない。これは水銀注入時に一次粒子が集まっている凝集体が飛散したためである。一方、複合物質では20nm以下の細孔径の細孔体積変化微分値の経路が一致する。これはケッチェンブラック(登録商標)の一次粒子又はその凝集体が飛散せず存在することを意味している。すなわち、メカノフュージョンにより複合化した複合粒子は硫黄にケッチェンブラック(登録商標)が食い込んでいる状態の複合微粒子層を形成していることがわかる。
しかしながら、上記製造方法では、硫黄含有率を73%以上にすることはできたが、図10に示すように硫黄含有率を高めるにつれて、放電容量が低くなるという現象が見られた。導電補助剤の含有率が低下することにより、十分な電子・イオン伝導経路を確保することができなくなったためであると考えられる。
そこで、発明者は更に次の工程を加えることにより、より少ない導電補助剤の含有率においても、十分な電子・イオン伝導経路を確保することを可能とした。
すなわち、硫黄または硫黄化合物粒子と導電性微粒子をメカノフュージョンし、複合物質を作製する第1の工程、第1の工程で生成した複合物質を硫黄または硫黄化合物の融点以上に加熱する第2の工程、加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、該複合物質を室温まで冷却して繊維状中間複合物質を作製する第4の工程、該繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、粉砕した繊維状中間複合物質と導電性微粒子をメカノフュージョンする第6の工程を経ることで、十分な電子・イオン伝導経路を確保した繊維状複合物質を作製することができるのである。これを模式的に示すと図11のとおりとなる。
なお、第4の工程では、硫黄または硫黄化合物は100〜120℃付近の相変化温度域での内部構造の変化が生じるため、これを極力抑制するため、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することが好ましい。
上記工程を経ることで硫黄の構造に変化が生じると考えられる。すなわち、図12に示すように、通常Sの構造を持つ硫黄が高分子化することにより、高作動電圧の放電特性が得られ、これを正極とする電池の高エネルギー密度化が可能になる。
また、第3の工程を経ることで、溶融硫黄または硫黄化合物の内部の炭素粒子がナノレベルで混合し、網目状の構造を形成する。これにより複合体内部に十分なイオン・電子伝導経路が形成されるため、より大電流での放電が可能となり、電池を高出力密度化することができる。
なお、単体硫黄の代わりに、有機ポリスルフィド化合物を用いることにより、高作動電圧化することもできる。また、マイクロ波照射と有機ポリスルフィド化を併用することにより、さらなる高作動電圧化が可能である。単体硫黄を用いた電池の放電時の電圧は2.0〜2.3V程度であるが、マイクロ波照射とポリスルフィド化を併用した電池においては、作動電圧3.3〜3.6Vで放電を行うことができる。
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が以下の実施例に限られるわけではない。
[単体硫黄の粒子にケッチェンブラック(登録商標)の微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有することを特徴とする硫黄およびケッチェンブラック(登録商標)の複合物質の製造と同定]
実施例1においては、ケッチェンブラック(登録商標)を硫黄系化合物にナノサイズで薄く均一に被覆する方法は、メカノケミカルボンディング法を用いた。メカノケミカルボンディング法は図13に示すように機械的・物理的な力により化学的な結合に近い結合・複合を作る効果である。メカノケミカルボンディング法による複合技術は、新たな励起エネルギーを作用させることで、ナノサイズ粒子の強固な結合による複合粒子化が可能となる。
メカノケミカルボンディング法によるケッチェンブラック(登録商標)を単体硫黄に被覆する際のケッチェンブラックと単体硫黄(高純度化学社製)の混合割合を図14に示す。図14には硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の重量比(W硫黄/Wケッチェンブラック(登録商標))、硫黄化合物の重量割合と複合物質あたりの理論容量密度を示す。図14に示すSampleA、B、Cを複合物質A、B、Cとする。
図15に、メカノケミカルボンディング法によりケッチェンブラック(登録商標)を硫黄化合物に被覆した複合物質A、B、Cの走査型電子顕微鏡写真を示す。複合物質A−Cは、単体硫黄の周りがケッチェンブラック(登録商標)に三次元の網目状に覆われる複合状態となった。硫黄化合物を被覆するケッチェンブラック(登録商標)はメカノケミカルボンディング法により、規則的な三次元網目構造を形成していることからマイクロサイズの空隙が複合粒子の周りに形成していることがわかる。
図16に複合物質Aの熱分析の結果を示す。図16ではTG曲線が温度上昇に対する質量変化で、DTAが温度上昇に対する熱量変化である。昇温速度は1℃min−1である。温度上昇に伴い200℃及び600℃においてそれぞれ複合物質Aの硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の酸化分解における質量変化と熱量の増加が見られた。
図17に熱分析の質量減少から複合物質Aの硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の重さを読み取った結果を示す。
図18に複合物質A−Cの温度上昇に対する質量減少の結果を示す。温度上昇に対する質量減少の結果から複合物質中の硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の重さを計算した結果を示す。
図19に複合物質A−Cの熱分析の結果から得られる硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の割合を示す。複合物質A−Cの加えた混合割合と熱分析結果から得られた混合割合を示す。得られた複合物質A−Cは調合時の混合割合とほぼ同じ値であった。
図20に複合物質A−Cの密度と導電率を示す。ケッチェンブラック(登録商標)の混合割合が多くなるにつれて複合状態の密度が小さくなった。ケッチェンブラック(登録商標)の混合割合が多くなるにつれて導電率が大きな値を示した。複合物質Aの導電率は約8S・cm−1であった。ケッチェンブラック(登録商標)の導電率は約10S・cm−1であることから、複合物質Aではケッチェンブラック(登録商標)が硫黄化合物の粒子をほぼ一様に被覆している。
図21では複合物質A−Cと単体硫黄のラマンスペクトルを示す。単体硫黄では218cm−1と417cm−1にピークが見える。複合物質A−Cでは3328cm−1にブロードのピークが見える。これはケッチェンブラック(登録商標)のピークである。複合物質Aでは218cm−1と417cm−1のピークは見られない。複合物質BとCでは218cm−1と417cm−1のピークが見える。
図22に複合物質A−Cの被覆状態のイメージ図を示す。導電率とラマンスペクトルから複合物質Aでは単体硫黄粒子の表面にケッチェンブラック(登録商標)が一様に被覆していると考えられる。複合物質BとCでは部分的に単体硫黄が露出している被覆状態であると考えられる。
図23に示すようなねじ込み式の電池セルにて複合物質A−Cの放電容量の測定を行った。負極にはリチウム金属(本城金属株式会社製)、厚さ150μmのセパレーター(日本高度紙工業株式会社製)に電解液として1Mのリチウムテトラフルオロボレート(キシダ化学株式会社製)を溶解させたエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒(キシダ化学株式会社製)(1:1)を用いた。
電池セルにおける複合物質A−Cの放電容量測定は定電流法で行った。図24に電池セルにおける複合物質A−Cの放電容量測定の際の重量あたりの電流密度を示す。Cレートの定義は理論容量100%を1時間で充電あるいは放電する時に必要な電流密度を1Cとするものである。理論容量の異なる材料を評価するときは同じCレートでも電流密度が異なる。現行のリチウムイオン二次電池正極材料であるコバルト酸リチウムと単体硫黄との同じ電流密度(mAg−1)の時のそれぞれのCレートの比較を図24に示してある。
図25に電池セルにおける複合物質A−Cの放電カーブとその時の容量密度を示す。
図26に示すように、複合物質A−Cのラマンスペクトルの417cm−1と3328cm−1(I417/I3328)、218cm−1と3328cm−1(I218/13328)のピーク強度比を計算する。ピーク強度比はそれぞれ単体硫黄のピーク(218cm−1と417cm−1)とケッチェンブラック(登録商標)のピーク(3328cm−1)から計算するのでラマンピーク強度比は表面における単体硫黄とケッチェンブラック(登録商標)の露出の割合を示すものである。
図27に単体硫黄とケッチェンブラック(登録商標)のラマンピーク強度比(I417/I3328、I218/I3328)と導電率、容量密度の関係を示す。ケッチェンブラック(登録商標)のピーク強度(I3328)の割合が増加するにつれて、すなわちラマンピーク強度(I417/I3328、I218/I3328)が減少するにつれて導電率は直線的に増加する関係を示した。ケッチェンブラック(登録商標)のピーク強度(I3328)の割合が増加するにつれて、すなわちラマンピーク強度(I417/I3328、I218/I3328)が減少するにつれて放電における容量密度は増加する関係を示した。
[繊維状中間複合物質の製造と同定]
図28に繊維状中間複合物質の作製法の一例を示す。複合物質(今回は、一例としてBを用いた)を160〜165℃まで加熱する。160〜165℃を維持すると複合物質は流動状態となる。流動状態となった複合物質Bを撹拌して、延伸を行う。流動状態の中間複合物質Bを延伸の後、室温冷却を行う。次に作成した繊維状中間複合物質B’の表面と切断面の形態を走査型電子顕微鏡にて観察した。さらに得られた繊維状中間複合物質B’を粉砕して、その粒子を走査型電子顕微鏡にて観察した。
図29に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(200倍)を示す。得られた繊維状複合物質Bは直径約2μmであった。
図30に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(2000倍)を示す。表面には葉脈状の模様が見えた。
図31に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(25000倍)を示す。約10μmほどの単体硫黄の塊が見えた。ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図32,33に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(70000倍)を示す。ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図34に繊維状中間複合物質B’の断面方向の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(800倍)を示す。
図35に繊維状中間複合物質B’の断面方向の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(35000倍)を示す。断面方向においても、2μm以下の単体硫黄の塊と、ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図36に繊維状中間複合物質B’を粉砕した粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(18000倍)を示す。粉砕しても、2μm以下の単体硫黄の塊と、ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
[繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質の製造と同定]
図37に示すように、図28にて作製した繊維状中間複合物質B’を粉砕して粒子化し、複合物質Aの炭素割合になるだけ、さらにケッチェンブラック(登録商標)を加えた。粉砕により粒子化した繊維中間複合物質B’とケッチェンブラック(登録商標)を加えてボールミル(レッチェ社製)により混ぜ、得られた複合物質を繊維状複合物質Aとする。
図38に電池セルにおける複合物質Aと繊維状複合物質Aの放電カーブとその時の容量密度を示す。
[熱分析による各サンプルの混合状態・組成の評価]
図12に単体硫黄の昇温に対する吸熱変化を示す。110℃では単斜硫黄から斜方硫黄の相変化に相当する吸熱反応があり、120℃では融解に相当する吸熱反応があり、160℃では高分子量化に相当する吸熱反応がある。
図39には単体硫黄と複合物質A−Cの130℃までの昇温に対する吸熱変化を示す。複合物質のケッチェンブラックの割合が増加するにつれて単斜硫黄から斜方硫黄の相変化に相当する吸熱反応温度が低下する。複合物質のケッチェンブラックの割合が増加するにつれて融解に相当する吸熱反応温度が低下する。
図40には単体硫黄と繊維状複合物質A及び複合物質B,Cの150−175℃までの昇温に対する吸熱変化を示す。単体硫黄では160℃付近に高分子量化に相当する吸熱ピークが見える。複合物質BとCではベースラインの吸熱側へのシフトが見られた。
図41に複合物質Bと繊維状複合物質Aの昇温に対する示差熱変化を示す。繊維状複合物質Bでは複合物質Bに比べて低温側で単斜硫黄から斜方硫黄の相変化に相当する吸熱反応温度が低下する。
図42には水銀注入式ポロシメーター(ユアサアイオニックス社製)によるケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔分布に対する重量あたりの細孔面積の結果を示す。アセチレンブラックに比べてケッチェンブラック(登録商標)は非常に大きな重量あたりの細孔面積を有していた。繊維状複合物質Aは複合物質Aよりも大きな重量あたりの細孔面積を有していた。
図43には水銀注入式ポロシメーター(ユアサアイオニックス社製)によるケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔分布に対する重量あたりの細孔面積の分布結果を示す。
図44には水銀注入式ポロシメーター(ユアサアイオニックス社製)によるケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔容積、空隙率、および比表面積を示す。
図45にはケッチェンブラック(登録商標)の水銀の注入と排出における細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化を示す。
図46にはケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、および複合物質Aの水銀の注入と排出における細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化を示す。
図47にはケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの水銀の注入と排出における1nmから100nmの範囲での細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化を示す。
ケッチェンブラック(登録商標)とアセチレンブラックでは注入と排出の細孔分布の変化に伴う挙動が一致しないことから、水銀の注入により二次凝集体が飛散してしまったと考えられる。複合物質Aと繊維状複合物質Aでは1−10nmの細孔分布の範囲にて挙動が一致することから、単体硫黄内部にてケッチェンブラック(登録商標)による細孔が存在すると考えられる。
本実施例においては、メカノフュージョンにより生成した硫黄と導電補助剤の複合物質から構成される正極D及びEと、更に中間複合物質に加熱して物理的応力を加える工程、室温まで冷却する工程、粉砕する工程、導電補助剤とメカノフュージョンする工程を経て得られた繊維状複合物質から構成される正極Fについて、放電容量の比較試験を行った。
1.使用材料
正極Dは硫黄73重量%、炭素微粒子27重量%から構成され、正極E及びFは硫黄84重量%、炭素微粒子16重量%から構成される。正極D〜Fの炭素微粒子は市販のケチェンブラック(登録商標)を用いた。
2.正極材料の製造
正極D及びEの製造は、図48に示すように、硫黄及び炭素微粒子を回転容器中に投入し、内部のロールと容器壁面との間で強い剪断力・圧縮・破断応力を加えることでメカノケミカル反応により複合化を行った。これによって硫黄粒子の表面に炭素微粒子が薄く被覆・複合化した正極材料D及びEを得た。作製した各正極材料の直径は約10μmであった。
正極Fの製造は、硫黄99.1重量%とケチェンブラック(登録商標)0.9重量%をメカノフュージョンにより混合させる第1の工程、第1の工程で生成した複合物質を硫黄または硫黄化合物の融点以上である160〜165℃に加熱する第2の工程、加熱状態にある複合物質に攪拌による物理的応力を加える第3の工程、該複合物質を急冷する第4の工程、該複合物質を粉砕する第5の工程、該複合物質を硫黄84.8重量%とケチェンブラック(登録商標)15.2重量%となるような割合でメカノフュージョンにより混合させる第6の工程とからなる。
3.複合物質D、E、および繊維状複合物質Fの同定
複合物質DとEは硫黄粒子の表面にメカノフュージョンによりケッチェンブラック(登録商標)を複合したものであり、繊維状複合物質Fは図30〜34に示されるような繊維状中間複合物質を粉砕したものにメカノフュージョンにより表面に導電性物質のケッチェンブラック(登録商標)を被覆したものである。
4.測定方法
図49に示すようなコイン型の電池セルにて正極材料D、E及びFの電極性能評価を行った。負極にはリチウム金属(本城金属株式会社製)、厚さ150μmのセパレーター(日本高度紙工業株式会社製)に電解液として1Mのリチウムテトラフルオロボレート(キシダ化学株式会社製)を溶解させたエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒(キシダ化学株式会社製)(1:1)を用いた。
上記正極材料D、E及びF10mgを正極材料として用い、厚み0.3mmのリチウム金属を負極材料として用い、リチウムテトラフルオロボレートを1M溶解した容積比1:1で混合した1,3−ジオキソランと1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒0.1mlを電解液として、厚み150μmの不織布をセパレータ層に含浸させ、直径20mmの電池を構成した。これらの電池を室温20℃において、0.7mAの一定電流で3〜0Vの範囲で放電させた。
5.測定結果
図50は、重量当たりの放電容量の比較結果である。複合物質Eと繊維状複合物質Fは共に硫黄84重量%であるが、繊維状複合物質Fは、複合物質Eと比べ約1.6倍の放電容量となった。
図51は、体積当たりの放電容量の比較結果である。同体積においては、繊維状複合物質Fは、複合物質Eと比べ約1.8倍の放電容量を得ることができ、複合物質Dと比べても約1.7倍の放電容量を得ることができた。
現行リチウムイオン電池用正極材料の理論容量密度のグラフである。 理想的な硫黄と導電補助剤の混合状態の模式図である。 リチウム/硫黄電池の放電反応の説明図である。 ケッチェンブラック(登録商標)を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である 表面にナノ炭素粒子を被覆させた硫黄粒子の模式図である。 本発明の複合物質を走査型電子顕微鏡で撮影した写真(1000倍)である。 硫黄粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した写真(1000倍)である。 ケッチェンブラック(登録商標)単独での細孔体積分布である。 本発明の複合物質の細孔体積分布である。 異なる硫黄量における複合物質の放電容量である。 繊維状複合物質の製造工程の模式図である。 加熱冷却工程における硫黄の組成変化の説明図である。 メカノケミカルボンディング法による複合物質の作成イメージである。 メカノケミカルボンディング法による単体硫黄とケッチェンブラック(登録商標)の混合割合である。 複合物質A〜Cを走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。 複合物質Aの熱分析の結果である。 複合物質Aにおける硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の重量比の分析結果の詳細である。 複合物質A〜Cにおける硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の重量比の分析結果の概要である。 複合物質A〜Cにおける硫黄化合物とケッチェンブラック(登録商標)の割合である。 複合物質A〜Cの密度と導電率である。 複合物質A〜Cにおける単体硫黄のラマンスペクトルである。 複合物質A〜Cの被覆状態のイメージ図である。 複合物質A〜Cの放電容量の測定を行った、ねじ込み式の電池セルである。 複合物質A〜Cの定電流法による放電容量の測定結果である。 複合物質A〜Cの放電カーブと容量密度である。 複合物質A〜Cのラマンスペクトルのピーク強度比である。 単体硫黄とケッチェンブラック(登録商標)とのラマンピーク強度比と導電率、及び容量密度の関係である。 繊維状中間複合物質の作製法の一例である。 粉砕前の繊維状中間複合物質を、走査型電子顕微鏡により200倍で撮影した写真である。 粉砕前の繊維状中間複合物質を、走査型電子顕微鏡により2000倍で撮影した写真である。 粉砕前の繊維状中間複合物質を、走査型電子顕微鏡により25000倍で撮影した写真である。 粉砕前の繊維状中間複合物質を、走査型電子顕微鏡により70000倍で撮影した写真である。 粉砕前の繊維状中間複合物質を、走査型電子顕微鏡により70000倍で撮影した写真である。 粉砕後の繊維状中間物質を断面方向から走査型電子顕微鏡により800倍で撮影した写真である。 粉砕後の繊維状中間物質を走査型電子顕微鏡により35000倍で撮影した写真である。 粉砕後の繊維状中間物質を走査型電子顕微鏡により18000倍で撮影した写真である。 繊維状複合物質の作成工程の模式図である。 電池セルにおける複合物質と繊維状複合物質の放電カーブとその時の容量密度である。 単体硫黄と複合物質A−Cの130℃までの昇温に対する吸熱変化である。 単体硫黄と複合物質A−Cの150−175℃までの昇温に対する吸熱変化である。 複合物質Bと繊維状複合物質Aの昇温に対する示差熱変化である。 ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔分布に対する重量あたりの細孔面積の結果である。 ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔分布に対する重量あたりの細孔面積の分布結果である。 ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの細孔容積、空隙率、および比表面積である。 ケッチェンブラック(登録商標)の水銀の注入と排出における細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化である。 ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、および複合物質Aの水銀の注入と排出における細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化である。 ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、繊維状複合物質A、複合物質Aの水銀の注入と排出における1nmから100nmの範囲での細孔分布による細孔容積変化と細孔容積分布変化である。 メカノケミカル反応を行うための複合化装置の模式図である。 実施例2で用いた比較測定用電池の構成図である。 実施例2に係る重量当たりの放電容量の比較結果である。 実施例2に係る体積当たりの放電容量の比較結果である。

Claims (10)

  1. 硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
  2. 上記の出発物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を硫黄として70重量%以上を含有する原料混合物から製造されたものである請求項1の導電性の繊維状複合物質。
  3. 出発物質である複合物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を核とし、その表面に十分な電子・イオン伝導経路を確保した状態で圧密された複合微粒子層が形成されているものである請求項1または2の導電性の繊維状複合物質。
  4. 出発物質である複合物質は、電気伝導度が10〜10S・cm−1以上のものである請求項1ないし3のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
  5. 出発物質である複合物質は、粒子径75μm以下の硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子と、一次粒子径30nmないし50nmの炭素微粒子である導電性物質の微粒子の原料混合物から製造されたものである請求項1ないし4のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
  6. 炭素微粒子は、空隙率60Vol%以上、80Vol%以下の中空構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
  7. 導電性の繊維状複合物質における導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造は数珠状に導電性物質の微粒子がネットワーク構造を形成するものである請求項1ないし6のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
  8. 導電性の繊維状複合物質は硫黄含有率を73%以上であって、かつ、電気伝導度が10〜10S・cm−1以上のものである請求項1ないし7のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
  9. 硫黄として70重量%以上を含有する硫黄および/または硫黄化合物の粒子および導電性物質の微粒子を原料とし、これらをメカノフュージョンし、該粒子を核とし、その表面に圧密された該粒子と微粒子の複合微粒子層を十分な電子・イオン伝導経路の両方を確保した状態で形成した硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質を製造する第1の工程、
    当該複合物質を融点以上に加熱する第2の工程、
    加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、
    該複合物質を室温まで冷却する第4の工程、
    第4の工程で得られた繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、
    粉砕された繊維状中間複合物質を導電性微粒子とさらにメカノフュージョンし、繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質を得る第6の工程からなることを特徴とする導電性の繊維状複合物質の製造方法。
  10. 前記第4の工程は、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することを特徴とする請求項9の製造方法。
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