JP2006093066A - 硫黄および/または硫黄化合物を含む複合物質及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
【選択図】 図11
Description
このような硫黄の特性をいかして、容量の高い硫黄を活物質とした正極を有する電池の検討が行われている(特許文献2)。
(1)硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
(2)上記の出発物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を硫黄として70重量%以上を含有する原料混合物から製造されたものである(1)の導電性の繊維状複合物質。
(3)出発物質である複合物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を核とし、その表面に十分な電子・イオン伝導経路を確保した状態で圧密された複合微粒子層が形成されているものである(1)または(2)の導電性の繊維状複合物質。
(4)出発物質である複合物質は、電気伝導度が100〜101S・cm−1以上のものである(1)ないし(3)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(5)出発物質である複合物質は、粒子径75μm以下の硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子と、一次粒子径30nmないし50nmの炭素微粒子である導電性物質の微粒子の原料混合物から製造されたものである(1)ないし(4)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(6)炭素微粒子は、空隙率60Vol%以上、80Vol%以下の中空構造を有するものである(1)ないし(5)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(7)導電性の繊維状複合物質における導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造は数珠状に導電性物質の微粒子がネットワーク構造を形成するものである(1)ないし(6)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(8)導電性の繊維状複合物質は硫黄含有率を73%以上であって、かつ、電気伝導度が100〜101S・cm−1以上のものである(1)ないし(7)のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
(9)硫黄として70重量%以上を含有する硫黄および/または硫黄化合物の粒子および導電性物質の微粒子を原料とし、これらをメカノフュージョンし、該粒子を核とし、その表面に圧密された該粒子と微粒子の複合微粒子層を十分な電子・イオン伝導経路の両方を確保した状態で形成した硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質を製造する第1の工程、当該複合物質を融点以上に加熱する第2の工程、加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、該複合物質を室温まで冷却する第4の工程、第4の工程で得られた繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、粉砕された繊維状中間複合物質を導電性微粒子とさらにメカノフュージョンし、繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質を得る第6の工程からなることを特徴とする導電性の繊維状複合物質の製造方法。
(10)前記第4の工程は、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することを特徴とする(9)の製造方法。
この方法によって得られた複合粒子を均一に分散することにより、少ない導電性物質の含有量でも、電子・イオン伝導経路の両方が確保され、大きなエネルギーを貯えることができる。
複合微粒子層についてさらに詳細に説明する。図6は原料の硫黄とメカノフュージョンにより複合化した複合化粒子のSEM写真である。原料の硫黄(図7参照)では直径が約20〜50μmの粒子が存在するが複合物質では粒子径が約5〜10μmと小さくなり、形状もメカノフュージョンにより複合化を行うと球状形態となる。
すなわち、硫黄または硫黄化合物粒子と導電性微粒子をメカノフュージョンし、複合物質を作製する第1の工程、第1の工程で生成した複合物質を硫黄または硫黄化合物の融点以上に加熱する第2の工程、加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、該複合物質を室温まで冷却して繊維状中間複合物質を作製する第4の工程、該繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、粉砕した繊維状中間複合物質と導電性微粒子をメカノフュージョンする第6の工程を経ることで、十分な電子・イオン伝導経路を確保した繊維状複合物質を作製することができるのである。これを模式的に示すと図11のとおりとなる。
なお、第4の工程では、硫黄または硫黄化合物は100〜120℃付近の相変化温度域での内部構造の変化が生じるため、これを極力抑制するため、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することが好ましい。
また、第3の工程を経ることで、溶融硫黄または硫黄化合物の内部の炭素粒子がナノレベルで混合し、網目状の構造を形成する。これにより複合体内部に十分なイオン・電子伝導経路が形成されるため、より大電流での放電が可能となり、電池を高出力密度化することができる。
実施例1においては、ケッチェンブラック(登録商標)を硫黄系化合物にナノサイズで薄く均一に被覆する方法は、メカノケミカルボンディング法を用いた。メカノケミカルボンディング法は図13に示すように機械的・物理的な力により化学的な結合に近い結合・複合を作る効果である。メカノケミカルボンディング法による複合技術は、新たな励起エネルギーを作用させることで、ナノサイズ粒子の強固な結合による複合粒子化が可能となる。
電池セルにおける複合物質A−Cの放電容量測定は定電流法で行った。図24に電池セルにおける複合物質A−Cの放電容量測定の際の重量あたりの電流密度を示す。Cレートの定義は理論容量100%を1時間で充電あるいは放電する時に必要な電流密度を1Cとするものである。理論容量の異なる材料を評価するときは同じCレートでも電流密度が異なる。現行のリチウムイオン二次電池正極材料であるコバルト酸リチウムと単体硫黄との同じ電流密度(mAg−1)の時のそれぞれのCレートの比較を図24に示してある。
図28に繊維状中間複合物質の作製法の一例を示す。複合物質(今回は、一例としてBを用いた)を160〜165℃まで加熱する。160〜165℃を維持すると複合物質は流動状態となる。流動状態となった複合物質Bを撹拌して、延伸を行う。流動状態の中間複合物質Bを延伸の後、室温冷却を行う。次に作成した繊維状中間複合物質B’の表面と切断面の形態を走査型電子顕微鏡にて観察した。さらに得られた繊維状中間複合物質B’を粉砕して、その粒子を走査型電子顕微鏡にて観察した。
図30に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(2000倍)を示す。表面には葉脈状の模様が見えた。
図31に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(25000倍)を示す。約10μmほどの単体硫黄の塊が見えた。ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図32,33に繊維状中間複合物質B’の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(70000倍)を示す。ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図34に繊維状中間複合物質B’の断面方向の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(800倍)を示す。
図35に繊維状中間複合物質B’の断面方向の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(35000倍)を示す。断面方向においても、2μm以下の単体硫黄の塊と、ケッチェンブラック(登録商標)由来の炭素の三次元ネットワーク構造が確認できた。
図37に示すように、図28にて作製した繊維状中間複合物質B’を粉砕して粒子化し、複合物質Aの炭素割合になるだけ、さらにケッチェンブラック(登録商標)を加えた。粉砕により粒子化した繊維中間複合物質B’とケッチェンブラック(登録商標)を加えてボールミル(レッチェ社製)により混ぜ、得られた複合物質を繊維状複合物質Aとする。
図12に単体硫黄の昇温に対する吸熱変化を示す。110℃では単斜硫黄から斜方硫黄の相変化に相当する吸熱反応があり、120℃では融解に相当する吸熱反応があり、160℃では高分子量化に相当する吸熱反応がある。
ケッチェンブラック(登録商標)とアセチレンブラックでは注入と排出の細孔分布の変化に伴う挙動が一致しないことから、水銀の注入により二次凝集体が飛散してしまったと考えられる。複合物質Aと繊維状複合物質Aでは1−10nmの細孔分布の範囲にて挙動が一致することから、単体硫黄内部にてケッチェンブラック(登録商標)による細孔が存在すると考えられる。
正極Dは硫黄73重量%、炭素微粒子27重量%から構成され、正極E及びFは硫黄84重量%、炭素微粒子16重量%から構成される。正極D〜Fの炭素微粒子は市販のケチェンブラック(登録商標)を用いた。
正極D及びEの製造は、図48に示すように、硫黄及び炭素微粒子を回転容器中に投入し、内部のロールと容器壁面との間で強い剪断力・圧縮・破断応力を加えることでメカノケミカル反応により複合化を行った。これによって硫黄粒子の表面に炭素微粒子が薄く被覆・複合化した正極材料D及びEを得た。作製した各正極材料の直径は約10μmであった。
複合物質DとEは硫黄粒子の表面にメカノフュージョンによりケッチェンブラック(登録商標)を複合したものであり、繊維状複合物質Fは図30〜34に示されるような繊維状中間複合物質を粉砕したものにメカノフュージョンにより表面に導電性物質のケッチェンブラック(登録商標)を被覆したものである。
4.測定方法
図49に示すようなコイン型の電池セルにて正極材料D、E及びFの電極性能評価を行った。負極にはリチウム金属(本城金属株式会社製)、厚さ150μmのセパレーター(日本高度紙工業株式会社製)に電解液として1Mのリチウムテトラフルオロボレート(キシダ化学株式会社製)を溶解させたエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒(キシダ化学株式会社製)(1:1)を用いた。
図50は、重量当たりの放電容量の比較結果である。複合物質Eと繊維状複合物質Fは共に硫黄84重量%であるが、繊維状複合物質Fは、複合物質Eと比べ約1.6倍の放電容量となった。
Claims (10)
- 硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子、および、導電性物質の微粒子をメカノフュージョンにより複合化して形成した、該粒子に微粒子が食い込んでいる状態の複合微粒子層を有する複合物質を出発物質として、該複合物質を融点以上に加熱し、加熱状態にある複合物質に撹拌あるいは延伸による物理的応力を加え、室温まで冷却し、得られた繊維状中間複合物質を粉砕し、これを導電性物質の微粒子とさらにメカノフュージョンにより複合化し形成した繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質。
- 上記の出発物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を硫黄として70重量%以上を含有する原料混合物から製造されたものである請求項1の導電性の繊維状複合物質。
- 出発物質である複合物質は、硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子を核とし、その表面に十分な電子・イオン伝導経路を確保した状態で圧密された複合微粒子層が形成されているものである請求項1または2の導電性の繊維状複合物質。
- 出発物質である複合物質は、電気伝導度が100〜101S・cm−1以上のものである請求項1ないし3のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
- 出発物質である複合物質は、粒子径75μm以下の硫黄および/またはS−S結合を有する硫黄化合物の粒子と、一次粒子径30nmないし50nmの炭素微粒子である導電性物質の微粒子の原料混合物から製造されたものである請求項1ないし4のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
- 炭素微粒子は、空隙率60Vol%以上、80Vol%以下の中空構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
- 導電性の繊維状複合物質における導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造は数珠状に導電性物質の微粒子がネットワーク構造を形成するものである請求項1ないし6のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
- 導電性の繊維状複合物質は硫黄含有率を73%以上であって、かつ、電気伝導度が100〜101S・cm−1以上のものである請求項1ないし7のいずれかの導電性の繊維状複合物質。
- 硫黄として70重量%以上を含有する硫黄および/または硫黄化合物の粒子および導電性物質の微粒子を原料とし、これらをメカノフュージョンし、該粒子を核とし、その表面に圧密された該粒子と微粒子の複合微粒子層を十分な電子・イオン伝導経路の両方を確保した状態で形成した硫黄および/または硫黄化合物および導電性物質の複合物質を製造する第1の工程、
当該複合物質を融点以上に加熱する第2の工程、
加熱状態にある複合物質に攪拌あるいは延伸による物理的応力を加える第3の工程、
該複合物質を室温まで冷却する第4の工程、
第4の工程で得られた繊維状中間複合物質を粉砕する第5の工程、
粉砕された繊維状中間複合物質を導電性微粒子とさらにメカノフュージョンし、繊維状中間複合物質を核とし、その表面に導電性物質の微粒子由来の三次元ネットワーク構造を有する導電性の繊維状複合物質を得る第6の工程からなることを特徴とする導電性の繊維状複合物質の製造方法。 - 前記第4の工程は、自然空冷もしくは冷却媒・放熱板等により毎分50℃〜200℃で室温付近まで急冷することを特徴とする請求項9の製造方法。
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