JP2015063247A - 車両用制動システム - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキ操作部が解放された状態でも、車両の動き出しを効果的に抑制して停車した状態を維持できる車両用制動システムを提供する。
【解決手段】ブレーキペダル12の踏み込み操作量に応じたブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置16と、車両が停車したと判定したときにモータシリンダ装置16を制御して保持液圧を発生させる車両制御装置150と、を有する車両用制動システムとする。そして、車両制御装置150は、車両が停車したと判定したときに車両の傾斜角度を算出し、傾斜角度が大きいほど保持液圧が大きくなる相関関係にもとづいて傾斜角度に対応した保持液圧を決定する。さらに、車両制御装置150は、決定した保持液圧で車輪に制動力が付与された状態で車両が動き出したと判定したとき、傾斜角度に対応する保持液圧が大きくなるように傾斜角度と保持液圧の相関関係を補正することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両用制動システムに関する。
特許文献1には、運転者がブレーキペダルを操作して発生するブレーキ液圧を保持して車両に制動力が生じた状態を維持するブレーキホールド制御を実行可能な車両用制動装置(車両用制動システム)が記載されている。このようなブレーキホールド制御によって、運転者がブレーキペダルを解放したときの車両の動き出しが抑制される。
また、特許文献1に記載される車両用制動装置は、運転者による加速要求が検出されたときにブレーキホールド制御を終了するように構成されている。
国際公開番号WO2012/046299
特許文献1に記載される車両用制動装置は、ブレーキホールド制御の実行によって、運転者がブレーキペダル(ブレーキ操作部)を踏み込み操作して生じるブレーキ液圧をそのまま保持するように構成されている。したがって、例えば、車両が停車した状態で、車輪に摩擦制動力を付与している摩擦材(ブレーキパッド等)が濡れるなどして一時的に車輪と摩擦材の間の摩擦係数μが低下すると車両が動き出す場合がある。そして、特許文献1には、車輪と摩擦材の間の摩擦係数μが低下した場合の対応について記載されてない。
また、特許文献1に記載される車両用制動装置は、運転者による加速要求が検出されたときにブレーキホールド制御が停止する構成であるが、例えば、車両が上り勾配の路面に停車している状態でブレーキホールド制御が停止したときに車両が後退した場合の対応や、ブレーキホールド制御の終了時に、摩擦材が接触した状態の車輪が動き出すことによる摩擦材の引き摺りが発生した場合の対応についても記載されていない。
そこで本発明は、ブレーキ操作部が解放された状態でも、車両の動き出しを効果的に抑制して停車した状態を維持できる車両用制動システムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため本発明は、ブレーキ操作部の操作量に応じた液圧を作動液に発生させる液圧発生手段と、前記液圧で作動して車輪に制動力を付与して車両を停車させる制動手段と、前記車両の停車時に前記液圧発生手段を制御して所定の保持液圧を前記作動液に発生させ、前記保持液圧で前記制動手段を作動させる制御装置と、を有する車両用制動システムとする。そして、前記制御装置は、前記車両に備わる車両状態検出手段から入力される角度信号に基づいて当該車両の前後方向の傾斜角度を算出するとともに、前記傾斜角度が大きいほど前記保持液圧が大きくなる相関関係に基づいて、前記車両の停車時の前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、決定した前記保持液圧で前記制動手段が作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で前記車両が動き出したと判定したとき、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧が大きくなるように前記相関関係を補正することを特徴とする。
本発明によると、ブレーキ操作部が解放された状態でも保持液圧で制動手段を作動させて車輪に制動力を付与し、車両を停車した状態に維持できる車両用制動システムとすることができる。この保持液圧は、車両の停車時の傾斜角度に対応して決定され、傾斜角度が大きいほど保持液圧が大きくなる。したがって、上り勾配が急な路面に車両が停車したときには、車輪に大きな制動力が付与され、車両の動き出しが効果的に抑制される。さらに、保持液圧による制動力が車輪に付与された状態で車両が動き出したときには、傾斜角度と保持液圧の相関関係が補正され、傾斜角度に対応する保持液圧が大きくなる。したがって、同じ上り勾配でも車輪に付与される制動力が大きくなり、車両の動き出しが効果的に抑制される。
また、本発明の前記制御装置は、前記傾斜角度が大きいほど大きな前記保持液圧が設定されている対応関係情報に基づいて、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、決定した前記保持液圧で前記制動手段が作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で前記車両が動き出したと判定したときには、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧が大きくなるように前記対応関係情報を補正した補正情報を作成することを特徴とする。
本発明によると、制御装置は、所定の対応関係情報に基づいて、傾斜角度に対応する保持液圧を容易に決定できる。また、保持液圧による制動力が車輪に付与された状態で車両が動き出したときに制御装置は、傾斜角度に対応する保持液圧が大きくなるように対応関係情報を補正した補正情報を作成できる。したがって、車両が動き出したと判定した後、制御装置は、補正情報に基づいて保持液圧を容易に決定でき、車両を停止した状態に維持できる制動力を車輪に付与することができる。
また、本発明の前記制御装置は、前記制動手段が前記保持液圧で作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で、前記車輪に付与される駆動トルクが所定の閾値に達したと判定したときに、前記保持液圧が低下するように前記液圧発生手段を制御し、前記保持液圧が低下しているときに、前記駆動トルクでの前記車輪の回転による進行方向と逆方向に前記車両が動き出したと判定した場合に前記閾値を変更することを特徴とする。
本発明によると、制御装置は、車輪に付与される駆動トルクが所定の閾値に達したと判定したときに保持液圧の発生を停止して保持液圧を低下させ、車輪に付与される制動力を低下(解消)できる。さらに、制御装置は、保持液圧の発生を停止したとき、保持液圧が低下しているときに駆動トルクでの車輪の回転による進行方向と逆方向に車両が動き出したと判定した場合には閾値を変更できる。例えば、制御装置は、閾値を大きくし、保持液圧の発生を停止したときに車輪に付与される駆動トルクを大きくすることも可能であり、駆動トルクでの車輪の回転による進行方向と逆方向に車両が動き出さないようにすることが可能になる。
また、本発明の前記制御装置は、前記保持液圧を変更するとき、当該保持液圧が大きくなるように変更することを特徴とする。
本発明によると、制御装置は、駆動トルクでの車輪の回転による進行方向と逆方向に車両が動き出したと判定した場合に、閾値を大きくし、保持液圧の発生を停止したときに車輪に付与される駆動トルクを大きくすることができる。これによって、車両は、保持液圧の発生が停止されたときの、駆動トルクでの車輪の回転による進行方向と逆方向への動き出しが抑制される。
また、本発明の前記制御装置は、前記保持液圧が低下しているときに前記車両が動き出したと判定したとき、前記閾値を小さくするように変更することを特徴とする。
本発明によると、制御装置は、保持液圧が発生した状態で車輪に制動力が付与されているときに車両が動き出したと判定した場合、保持液圧の発生の停止を決定する駆動トルクの閾値を小さくできる。したがって、制御装置は、車両に付与される駆動トルクが小さいうちに保持液圧の発生を停止して車輪に付与されている制動力を解消することができ、車輪に制動力が付与されている状態での車両の動き出しを抑制できる。
また、本発明の前記制御装置は、前記傾斜角度が所定の基準角度以上の状態で前記車両が停車したときに、前記液圧発生手段を制御して前記保持液圧を発生させ、前記駆動トルクが前記閾値に達したと判定したときに、前記液圧発生手段を制御して前記保持液圧の発生を停止する発進補助機能を作動し、前記相関関係が補正された後では、補正された前記相関関係に基づいて前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、前記閾値が変更された後では、変更された前記閾値に前記駆動トルクが達したと判定したときに前記保持液圧の発生を停止するように前記発進補助機能を作動することを特徴とする。
本発明によると、制御装置は、車両が停車した路面が上り勾配であり、その勾配角度が所定の基準角度以上のとき、保持液圧による制動力を車輪に付与するとともに、車輪に付与される駆動トルクが所定の閾値に達したと判定したときに保持液圧の発生を停止して車輪に付与される制動力を解消するように発進補助機能を作動できる。また、制御装置は、車両の傾斜角度と保持液圧の相関関係が補正された後では、補正された相関関係に基づいて、傾斜角度に対応する保持液圧を決定できる。さらに、制御装置は、保持液圧の発生を停止することを決定する駆動トルクの閾値が変更された後では、変更された閾値にもとづいて、保持液圧の発生を停止できる。したがって、車両は、発進補助機能の作動時においても、効果的に動き出しが抑制される。
本発明によると、ブレーキ操作部が解放された状態でも、車両の動き出しを効果的に抑制して停車した状態を維持できる車両用制動システムを提供できる。
本発明の実施形態に係る車両用制動システムを搭載する車両の概略構成図である。 車両用制動システムに備わるブレーキ装置の概略構成図である。 (a)は、車両の傾斜角度に対応するBH保持圧が設定されている保持圧マップを示す図、(b)は、車両の傾斜角度に対応する解除トルクが設定されている解除トルクマップを示す図である。 (a)は、車速の変化を示す線図、(b)は、ブレーキ液圧の変化を示す線図、(c)は、車輪に付与される制動力の変化を示す線図、(d)は、車輪に付与される駆動トルクの変化を示す線図である。 (a)は、保持圧補正マップの一例を示す図、(b)は、解除トルク上方補正マップと解除トルク下方補正マップの一例を示す図である。 (a)は、保持圧補正マップの別の一例を示す図、(b)は、解除トルク上方補正マップの別の一例と解除トルク下方補正マップの別の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用制動システムを搭載する車両の概略構成図、図2は、車両用制動システムに備わるブレーキ装置の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の車両1には、ブレーキ装置10と、エンジン2と、オートマチックトランスミッション(以下、ATと記載する)3と、が備わり、ブレーキ装置10によって車輪Wに制動力が付与される。
車両1は、前後左右に4つの車輪Wを備える4輪車両であり、それぞれの車輪Wには、ディスクブレーキ機構30a,30b,30c,30dが取り付けられている。なお、30aは右側前輪、30dは左側前輪、30cは右側後輪、30bは左側後輪のディスクブレーキ機構をそれぞれ示す。
また、車両1には、エンジン2やブレーキ装置10に供給される電力を蓄電する蓄電装置(バッテリ4)と、エンジン2を始動するときに運転者が操作するイグニッションスイッチ5(以下、IGSW5と記載する)などが備わっている。そして、エンジン2、AT3、ブレーキ装置10は制御装置(車両制御装置150)によって制御される。
また、車両1の各車輪Wには、それぞれの車輪Wの回転速度を計測し、計測した回転速度を車輪速信号に変換して出力する車輪速センサ31が備わっている。そして、車両制御装置150に、車輪速センサ31が出力する車輪速信号が入力される。車輪速信号は、車輪Wが1回転するごとに所定数のパルスを発生するパルス波であり、車両制御装置150は、単位時間当たりの車輪速信号のパルス数から車輪Wの回転速度を演算し、演算した車輪Wの回転速度から車両1の車速を算出するように構成される。
また、車両1には、傾斜角度を計測する傾斜角度計測手段8が備わっている。傾斜角度計測手段8は、車両1の前後方向の傾斜角度を検出し、検出した傾斜角度を検出信号(角度信号)として出力する。傾斜角度計測手段8は、例えば、車両1の前後方向の加速度を計測可能な加速度センサ(Gセンサ)であり、検出信号(角度信号)は、加速度の方向と加速度の大きさを電気信号に変換したものになる。
そして、傾斜角度計測手段8から検出信号として出力される角度信号は車両制御装置150に入力され、車両制御装置150は入力された角度信号に基づいて、車両1の傾斜方向(前後)と、傾斜角度θcの大きさを算出するように構成される。
なお、本実施形態においては、車輪Wの回転速度を計測する車輪速センサ31と、車両1の傾斜角度を計測する傾斜角度計測手段8(Gセンサ等)が、車両1の状態を検出する車両状態検出手段を構成する。
なお、車両状態検出手段に備わる傾斜角度計測手段8はGセンサに限定されず、傾斜角度センサであってもよい。
または、ナビゲーションシステム(図示せず)の地図データに基づいて、車両制御装置150が路面の勾配角度を算出し、算出した勾配角度を車両1の傾斜角度とする構成であってもよい。この場合、ナビゲーションシステムが傾斜角度計測手段8に含まれる。
エンジン2にはエンジンECU(Electronic Control Unit)2aが備わり、エンジンECU2aは、車両制御装置150からの指令によってエンジン2を始動および停止する。また、エンジンECU2aは、エンジン2の状態を取得可能に構成されている。例えば、エンジンECU2aは、エンジン2に初爆が発生したことを検出し、この検出信号(初爆信号)を出力可能に構成されている。さらに、車両制御装置150は、エンジンECU2aが出力する初爆信号によって、エンジン2が始動したことを検知可能に構成されている。
例えば、運転者がIGSW5をON操作(イグニッションをONする操作)した信号が車両制御装置150に入力されると、車両制御装置150はエンジンECU2aにエンジン始動の指令を与える。エンジン始動の指令を受けたエンジンECU2aは、図示しないセルモータを駆動してエンジン2を始動する。
また、運転者がIGSW5をOFF操作(イグニッションをOFFする操作)した信号が車両制御装置150に入力されると、車両制御装置150はエンジンECU2aにエンジン停止の指令を与える。エンジン停止の指令を受けたエンジンECU2aはエンジン2を停止させる。
AT3には変速制御装置3aが備わる。変速制御装置3aは、運転者がシフトレバー3bを操作して選択したモードに合わせてAT3を制御する。例えば、運転者が「ドライブモード」を選択した場合、変速制御装置3aは、車両1の車速等に応じて適宜変速比を決定し、エンジン2の出力する動力(回転動力)を、決定した変速比で変速して車輪W(駆動輪)に伝達する。そして、エンジン2で発生する駆動トルクが車輪Wに付与される。
そして、本実施形態においては、車輪Wに制動力を付与するブレーキ装置10と、ブレーキ装置10を制御する車両制御装置150と、を含んで車両用制動システム9が構成されている。
本実施形態のブレーキ装置10は、図2に示すように構成される。ブレーキ装置10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
このため、図2に示すように、ブレーキ装置10は、基本的に、運転者によってブレーキペダル12等のブレーキ操作部が操作されたときにその操作を入力する入力装置14と、ブレーキペダル12が踏み込み操作されたときの操作量(ストローク)を計測するペダルストロークセンサStと、作動液であるブレーキ液の液圧(ブレーキ液圧)を制御(発生)する電動ブレーキアクチュエータ(モータシリンダ装置16)と、車両挙動の安定化を支援する車両挙動安定化装置18(以下、VSA(ビークルスタビリティアシスト)装置18という、VSA;登録商標)とを別体として備えて構成されている。
本実施形態において、モータシリンダ装置16は、作動液であるブレーキ液にブレーキ液圧を発生させる液圧発生手段となる。
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された管路(液圧路)によって接続されていると共に、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスで電気的に接続されている。
このうち、液圧路について説明すると、図2中(中央やや下)の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図2中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホィールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホィールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホィールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホィールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪W(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
つまり、本実施形態において、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLは、ブレーキ液の液圧で作動する制動手段になる。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。一方のピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、他方のピストン40bは、一方のピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この一方及び他方のピストン40a、40bの外周面には、環状段部を介して一対のカップシール44a、44bがそれぞれ装着される。一対のカップシール44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40bとシリンダチューブ38の側端部と間には、他のばね部材50bが配設される。
なお、カップシール44a、44bが、シリンダチューブ38の内壁に取り付けられる構成であってもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側である上流側の液圧を計測するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側である下流側の液圧を計測するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した閉弁状態をそれぞれ示している。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第3遮断弁62は、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した開弁状態を示している。
このストロークシミュレータ64は、バイ・ワイヤ制御時に、ブレーキペダル12の操作に対して、ストロークと反力を与えて、あたかも踏力により、制動力が発生しているかのように運転者に思わせる装置であり、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が吸収可能に設けられる。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングが、既存のマスタシリンダ34を踏み込み操作したときのペダルフィーリングと同等になるように設けられている。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホィールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホィールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホィールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホィールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動機(電動モータ72)を含むアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76とを有する。
アクチュエータ機構74は、電動モータ72の出力軸72b側に設けられ、複数のギヤが噛合して電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、前記ギヤ機構78を介して前記回転駆動力が伝達されることにより軸方向に沿って進退動作するボールねじ軸80a及びボール80bを含むボールねじ構造体80とを有する。
本実施形態においてボールねじ構造体80は、ギヤ機構78とともにアクチュエータハウジング172の機構収納部173aに収納される。
シリンダ機構76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。なお、配管チューブ86に、ブレーキ液を貯留するタンクが備わっていてもよい。
そして、略円筒状を呈するシリンダ本体82の開放された端部(開放端)がハウジング本体172Fとハウジングカバー172Rからなるアクチュエータハウジング172に嵌合してシリンダ本体82とアクチュエータハウジング172が連結され、モータシリンダ装置16が構成される。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
また、本実施形態における電動モータ72は、シリンダ本体82と別体に形成されるモータケーシング72aで覆われて構成され、出力軸72bが第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの摺動方向(軸方向)と略平行になるように配置される。つまり、出力軸72bの軸方向が液圧制御ピストンの軸方向と略平行になるように、電動モータ72が配置される。
そして、出力軸72bの回転駆動がギヤ機構78を介してボールねじ構造体80に伝達されるように構成される。
ギヤ機構78は、例えば、電動モータ72の出力軸72bに取り付けられる第1ギヤ78aと、ボールねじ軸80aを軸方向に進退動作させるボール80bをボールねじ軸80aの軸線を中心に回転させる第3ギヤ78cと、第1ギヤ78aの回転を第3ギヤ78cに伝達する第2ギヤ78bと、の3つのギヤで構成され、第3ギヤ78cはボールねじ軸80aの軸線を中心に回転する。したがって、第3ギヤ78cの回転軸はボールねじ軸80aになり、液圧制御ピストン(第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88b)の摺動方向(軸方向)と略平行になる。
前記したように、電動モータ72の出力軸72bと液圧制御ピストンの軸方向は略平行であることから、電動モータ72の出力軸72bと第3ギヤ78cの回転軸は略平行になる。
そして、第2ギヤ78bの回転軸を、電動モータ72の出力軸72bと略平行に構成すると、電動モータ72の出力軸72bと、第2ギヤ78bの回転軸と、第3ギヤ78cの回転軸と、が略平行に配置される。
本実施形態におけるアクチュエータ機構74は、前記した構造によって、電動モータ72の出力軸72bの回転駆動力をボールねじ軸80aの進退駆動力(直線駆動力)に変換する。第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bはボールねじ軸80aによって駆動されることから、アクチュエータ機構74は、電動モータ72の出力軸72bの回転駆動力を液圧制御ピストン(第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88b)の直線駆動力に変換する。
第1スレーブピストン88bの外周面には、環状段部を介して、一対のスレーブカップシール90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブカップシール90a、90bの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第1背室94bが形成される。
なお、第2及び第1スレーブピストン88a、88bの間には、第2リターンスプリング96aが配設され、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部と間には、第1リターンスプリング96bが配設される。
また、第2スレーブピストン88aの外周面と機構収納部173aとの間を液密にシールするとともに、第2スレーブピストン88aをその軸方向に対して移動可能にガイドする環状のガイドピストン90cが、第2スレーブピストン88aの後方に、シリンダ本体82をシール部材として閉塞するように備わっている。第2スレーブピストン88aが貫通するガイドピストン90cの内周面には、図示しないスレーブカップシールが装着され、第2スレーブピストン88aとガイドピストン90cの間が液密に構成されることが好ましい。さらに、第2スレーブピストン88aの前方の外周面には、環状段部を介して、スレーブカップシール90bが装着される。
この構成によって、シリンダ本体82の内部に充填されるブレーキ液がガイドピストン90cによってシリンダ本体82に封入され、アクチュエータハウジング172の側に流れ込まないように構成されている。
なお、ガイドピストン90cとスレーブカップシール90bの間には、後記するリザーバポート92aと連通する第2背室94aが形成される。
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホィールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホィールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98bが設けられる。
この構成によると、ブレーキ液が封入される第2背室94a、第1背室94b、第2液圧室98a、及び第1液圧室98bは、シリンダ本体82におけるブレーキ液の封入部であり、シール部材として機能するガイドピストン90cによって、アクチュエータハウジング172の機構収納部173aと液密(気密)に区画される。
なお、ガイドピストン90cがシリンダ本体82に取り付けられる方法は限定するものではなく、例えば、図示しないサークリップで取り付けられる構成とすればよい。
第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bの最大ストローク(最大変位距離)と最小ストローク(最小変位距離)とを規制する規制手段100が設けられる。さらに、第1スレーブピストン88bには、第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特にマスタシリンダ34で制動するバックアップ時において、1つの系統が失陥したときに、他の系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホィールシリンダ32FR、ホィールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホィールシリンダ32RR、ホィールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。なお、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、右側後輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bで対応するものには同一の参照符号を付していると共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホィールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する管路(第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114)を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する管路(液圧路)上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第2液圧室98aで制御されたブレーキ液圧を計測する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで計測された計測信号は、車両制御装置150に入力される。また、VSA装置18では、VSA制御のほか、ABS(アンチロックブレーキシステム)も制御可能である。
さらに、VSA装置18に代えて、ABS機能のみを搭載するABS装置が接続される構成であってもよい。
本実施形態に係るブレーキ装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
ブレーキ装置10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁されて弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁されて弁開状態となる。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68が第1及び第2リターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
このようなシステム状態において、車両制御装置150は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第2リターンスプリング96a及び第1リターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
具体的に、車両制御装置150は、ペダルストロークセンサStの計測値に応じてブレーキペダル12の踏み込み操作量を算出し、この踏み込み操作量(ブレーキ操作量)に基づいて目標となるブレーキ液圧(目標液圧)を設定し、設定したブレーキ液圧をモータシリンダ装置16に発生させる。
そして、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧が導入ポート26a、26bからVSA装置18に供給される。つまり、モータシリンダ装置16は、ブレーキペダル12が操作されたときに電気信号で回転駆動する電動モータ72の回転駆動力で第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを駆動し、ブレーキペダル12の操作量に応じたブレーキ液圧を発生させてVSA装置18に供給する装置である。
また、本実施形態における電気信号は、例えば、電動モータ72を駆動する電力や電動モータ72を制御するための制御信号である。
なお、車両制御装置150は、例えば、いずれも図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されるマイクロコンピュータ及び周辺機器からなる。そして、車両制御装置150は、あらかじめROMに記憶されているプログラムをRAMに展開してCPUで実行し、ブレーキ装置10を制御するように構成される。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪W(図1参照)に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係るブレーキ装置10では、液圧発生手段として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する車両制御装置150等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪W(図1参照)を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両に好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bをそれぞれ弁開状態、第3遮断弁62を弁閉状態としマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
本実施形態の車両用制動システム9(図1参照)は、図2に示すように構成されるブレーキ装置10を含んで構成される。
そして、ブレーキペダル12が運転者によって踏み込み操作されたとき、車両制御装置150は、ブレーキペダル12の踏み込み操作量に応じたブレーキ液圧が発生するだけモータシリンダ装置16の第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aが変位するように電動モータ72を駆動させる。
例えば、モータシリンダ装置16で発生させるブレーキ液圧と、そのために電動モータ72に供給する電圧(駆動電圧)と、の関係を示すマップがあらかじめ設定されていれば、車両制御装置150は、当該マップを参照して電動モータ72に供給する駆動電圧を設定できる。そして、車両制御装置150は、設定した駆動電圧を電動モータ72に供給して第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aを変位させて、算出したブレーキ液圧をVSA装置18の第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bに発生させる。これによって、ブレーキペダル12の踏み込み操作量に応じた駆動電圧が電動モータ72に供給され、さらに、ブレーキ液にブレーキ液圧が発生する。
また、本実施形態のブレーキ装置10には、ブレーキホールド機能が備わっている。ブレーキホールド機能は、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作して車両1(図1参照)が停車した後で運転者がブレーキペダル12を解放した場合(運転者がブレーキペダル12から足を離した場合)に、各車輪W(図1参照)に付与されている制動力を保持して車両1の動き出しを抑制する機能である。
車両制御装置150は、VSA装置18の第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bにブレーキ液圧が発生した状態で車両1が停車したと判定したとき(つまり、車両1の停車時)、電動モータ72に所定の電圧(保持電圧)を供給する。
これによって、第1リターンスプリング96b及び第2リターンスプリング96aが第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aを押し戻す力に対抗するトルクを電動モータ72に発生させることができ、第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aが変位した状態に維持される。そして、VSA装置18の第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bにブレーキ液圧が発生した状態が維持され、各車輪Wに制動力が付与された状態が維持されて車両1が停車した状態が維持される。このように、車両1が停車したとき、電動モータ72に所定の保持電圧が供給されて各車輪W(図1参照)に制動力が付与された状態が維持され、ブレーキホールドが作動する。
ブレーキホールドの作動時に電動モータ72に供給される保持電圧は、ブレーキホールドの作動時に各車輪Wのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに供給するブレーキ液圧(保持液圧)に応じて設定される。以下、ブレーキホールドの作動中に保持液圧として発生するブレーキ液圧を「BH保持圧」と称する。
ブレーキホールドの作動時にホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに供給されるBH保持圧は、車両1(図1参照)が停車している路面の勾配角度θrに応じて変化することが好ましい。ここでいう路面の勾配は、車両1の前後方向への路面の傾きとする。
そして、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、傾斜角度計測手段8(図1参照)から入力される角度信号に基づいて算出する車両1の傾斜角度(前後方向の傾斜角度θc)を路面の勾配角度θrとする。
図3の(a)は、車両の傾斜角度に対応するBH保持圧が設定されている保持圧マップを示す図、(b)は、車両の傾斜角度に対応する解除トルクが設定されている解除トルクマップを示す図である。
図3の(a)に示す保持圧マップMP1は、横軸が車両1の傾斜角度θcを示し、「+」が上り勾配の路面に停車した状態(上り傾斜)、「−」が下り勾配の路面に停車した状態(下り傾斜)を示す。さらに、傾斜角度θcは、「0」から離れるほど大きく、傾斜が急になっていることを示す。また、縦軸は、傾斜角度θcに対応するBH保持圧を示す。
また、図3の(b)に示す解除トルクマップMP2は、横軸が車両1の傾斜角度θcを示し、「+」が上り傾斜の場合、「−」が下り傾斜の場合を示す。さらに、傾斜角度θcは、「0」から離れるほど大きく、傾斜が急になっていることを示す。また、縦軸は、傾斜角度θcに対応する解除トルクを示す。
例えば、車両1(図1参照)が勾配の無い平坦路(勾配角度θr=0)に停車したとき、車両1の傾斜角度θcは「0」になる。そこで、図3の(a)の保持圧マップMP1に示すように、車両1の傾斜角度θcが「0」の状態に対応するBH保持圧が所定値「P0」に設定される。保持圧マップMP1は、車両1の傾斜角度θcとBH保持圧の対応関係を示す対応関係情報である。
そして、保持圧マップMP1は、車両1が停車する路面の上り勾配の勾配角度θrが急で車両1の傾斜角度θcが大きいほど(+)、BH保持圧が大きくなるように設定されることが好ましい。また、保持圧マップMP1は、車両1が停車する路面の下り勾配の勾配角度θrが急で車両1の傾斜角度θcが大きいほど(−)、BH保持圧が大きくなるように設定されることが好ましい。
このように、保持圧マップMP1は、車両1の前後方向の傾斜角度θcが大きいほどBH保持圧が大きくなるという相関関係を有するマップ(対応関係情報)であることが好ましい。
BH保持圧がこのように設定されると、車両1が停車する路面の勾配角度θrが急なほど、ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに供給されるBH保持圧(ブレーキ液圧)が大きくなり、車輪W(図1参照)に付与される制動力が大きくなる。したがって、路面の勾配角度θrが急であっても、車両1は確実に停車した状態が維持される。
なお、路面の勾配は、車両1の前方に向かって上る方向への勾配を上り勾配とし、車両1の前方に向かって下る方向への勾配を下り勾配とする。そして、上り勾配の路面に停車した車両1の傾斜が上り傾斜、下り勾配の路面に停車した車両1の傾斜が下り傾斜になる。
また、車両制御装置150は、ブレーキホールドが作動しているときにエンジン2(図1参照)で発生して車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが所定の閾値に達したと判定したときにブレーキホールドを解除する。車両制御装置150がブレーキホールドを解除する閾値となるトルク(解除トルク)の大きさは、例えば、車両1が停車している路面の勾配角度θrに応じて変化することが好ましい。
例えば、図3の(b)の解除トルクマップMP2に示すように、車両1が停車する路面の上り勾配の勾配角度θrが急で、上り傾斜となる車両1の傾斜角度θcが大きいほど(+)、解除トルクが大きくなるように設定されていることが好ましい。なお、車両1が勾配の無い平坦路(勾配角度θr=0)に停車している場合や、下り勾配の路面に停車して下り傾斜となる場合(−)の解除トルクは「0」であってもよい。
解除トルクが解除トルクマップMP2に示すように設定されると、車両1が停車する路面の勾配角度θr(上り勾配の勾配角度θr)が急で、上り傾斜となる車両1の傾斜角度θcが大きいほど、ブレーキホールドが解除されるときに車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが大きくなり、ブレーキホールドが解除されたときの車両1の後退が抑制される。
図4の(a)は、車速の変化を示す線図、(b)は、ブレーキ液圧の変化を示す線図、(c)は、車輪に付与される制動力の変化を示す線図、(d)は、車輪に付与される駆動トルクの変化を示す線図である。
図4の(a)に示すように、車両1(図1参照)が車速Vで走行しているときに時刻t1で運転者がブレーキペダル12(図2参照)を踏み込み操作すると、図4の(b)に示すようにVSA装置18(図2参照)にブレーキペダル12の踏み込み操作量に応じたブレーキ液圧(要求液圧P1)が発生する。そして、図4の(c)に実線で示すように、各車輪W(図1参照)に制動力(第1制動力B1)が付与されて車速が低下する。そして、時刻t2で車速が「0」になると、車両制御装置150(図1参照)は車両1が停車したと判定してブレーキホールドを作動する。
車両制御装置150(図1参照)は、車速が「0」になった時刻t2で、傾斜角度計測手段8(図1参照)から入力される角度信号に基づいて、車両1(図1参照)の傾斜方向(上り傾斜/下り傾斜)と傾斜角度θcの大きさを算出する。車両制御装置150は、車両1の前方が上がるように傾斜しているとき、傾斜方向を上り傾斜と判定し、車両1の前方が下がるように傾斜しているとき、傾斜方向を下り傾斜と判定する。
そして、車両制御装置150(図1参照)は、図3の(a)に示す保持圧マップMP1を参照し、車両1(図1参照)の傾斜方向(上り傾斜(+)/下り傾斜(−))と傾斜角度θcに対応するBH保持圧(大きさを「Pb」とする)を決定する。
保持圧マップMP1を参照して決定したBH保持圧「Pb」が、ブレーキルペダル12の踏み込み操作量に応じた要求液圧P1より小さい場合、車両制御装置150は電動モータ72(図2参照)に供給する電圧(駆動電圧)を低下させる。
電動モータ72に発生するトルクが小さくなって、モータシリンダ装置16の第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88a(図2参照)が、第1リターンスプリング96b及び第2リターンスプリング96a(図2参照)に押し戻され、図4の(b)に破線(太い破線)で示すように、VSA装置18(図2参照)に発生するブレーキ液圧が要求液圧P1(実線)からBH保持圧P2に低下する。
なお、図示はしないが、車両制御装置150(図1参照)が保持圧マップMP1を参照して算出したBH保持圧「Pb」が、ブレーキルペダル12の踏み込み操作量に応じた要求液圧P1より大きい場合、車両制御装置150は電動モータ72(図2参照)に供給する電圧(駆動電圧)を上昇させて、VSA装置18(図2参照)に発生するブレーキ液圧を要求液圧P1(実線)から上昇させる。
このように、車両制御装置150は、車両1(図1参照)が停車したと判定してブレーキホールドを作動するとき、モータシリンダ装置16(電動モータ72)を制御してブレーキ液圧を加減する。
そして、車両制御装置150(図1参照)は、第2ブレーキ系110aに備わる圧力センサPh(図2参照)が計測するブレーキ液圧が、算出したBH保持圧「Pb」になった時刻t3のときに電動モータ72(図2参照)に供給している電圧を保持電圧とし、保持電圧を継続して電動モータ72に供給する。
これによって、各車輪W(図1参照)に付与される制動力が、図4の(c)に示すように、ブレーキペダル12(図2参照)の踏み込み操作量に応じた第1制動力B1(実線)から、破線で示されるブレーキホールドによる制動力(第2制動力B2)に低下する。
その後の時刻t4で運転者が図示しないアクセルペダルを操作すると(アクセルON)、エンジン2(図1参照)に発生して車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが上昇する。車両制御装置150(図1参照)は、エンジン2(図1参照)の回転速度やAT3(図1参照)の変速比等に基づいて、車輪Wに付与される駆動トルクの算出値(トルク算出値)を算出する。さらに、車両制御装置150は、ブレーキホールドを作動した時刻t2で算出した、車両1の傾斜方向(上り傾斜(+)/下り傾斜(−))と傾斜角度θcに基づいて、図3の(b)に示す解除トルクマップMP2を参照し、ブレーキホールドを解除する解除トルク(大きさを「Tr1」とする)を決定する。そして、車両制御装置150は、算出するトルク算出値が、決定した解除トルク「Tr1」に達した時刻t5で、車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルク「Tr1」に達したと判定してブレーキホールドを解除する。
具体的に車両制御装置150(図1参照)は、算出したトルク算出値が解除トルク「Tr1」に達した時刻t5で、電動モータ72(図2参照)への保持電圧の供給を停止する。これによって、モータシリンダ装置16の第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88a(図2参照)が第1リターンスプリング96b及び第2リターンスプリング96a(図2参照)で押し戻される。そして、ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL(図2参照)に供給されるBH保持圧が徐々に低下して、BH保持圧が消失する。したがって、図4の(c)に破線で示すように、各車輪W(図1参照)に付与されている第2制動力B2が消失する。
つまり、車両制御装置150は、車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルク「Tr1」に達したと判定したとき、BH保持圧が低下するようにモータシリンダ装置16を制御する。
そして、車両1(図1参照)は、第2制動力B2の消失にともなって、時刻t5以降に走行を開始し、図4の(a)に示すように車速が上昇する。
以上のように、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、運転者がブレーキペダル12(図2参照)を踏み込み操作して車両1(図1参照)が停車したと判定したとき、車両1の傾斜(傾斜方向と傾斜角度θc)を算出(確定)する。さらに、車両制御装置150は、算出(確定)した傾斜に基づいて、保持圧マップMP1(図3の(a)参照)を参照し、車両1の傾斜に対応したBH保持圧「Pb」を決定する。
そして、車両制御装置150は、電動モータ72(図2参照)に保持電圧を供給し、決定したBH保持圧「Pb」をモータシリンダ装置16(図2参照)で発生させ、発生したBH保持圧「Pb」をホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL(図2参照)に供給する。
これによって、車両1の車輪W(図1参照)には、車両1の傾斜に応じた制動力が付与され、車両1は停車した状態に維持される。
また、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの作動中に、車両1の傾斜(傾斜方向、傾斜角度θc)に基づいて、解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)を参照し、ブレーキホールドを解除する解除トルク「Tr1」を決定する。そして、車両制御装置150は、決定した解除トルク「Tr1」にトルク算出値が達した時点で、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが解除トルク「Tr1」に達したと判定し、ブレーキホールドを解除する。
これによって、車両1が停車している路面が上り勾配であっても、車両1は後退することなく発進可能となる。
しかしながら、例えば、車輪W(図1参照)に制動力を付与する摩擦材(図示しないブレーキパッド等)が濡れるなどして、当該摩擦材と車輪Wの間の摩擦係数μが一時的に低下する場合がある。このような場合、ブレーキホールドの作動時に、図3の(a)に示す保持圧マップMP1に基づいて設定されるBH保持圧で車輪Wに付与される制動力が、規定の制動力よりも小さくなることがある。そして、車両1(図1参照)が停車する路面に勾配があるとブレーキホールドが作動しても車両1が動き出す場合がある。
そこで、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの作動時に、車輪速センサ31(図1参照)から入力される車輪速信号を監視する。そして、少なくとも1つの車輪W(図1参照)に備わる車輪速センサ31から入力される車輪速信号にパルスが発生したと判定した場合、車両制御装置150は、車両1(図1参照)が動き出したと判定し、モータシリンダ装置16の電動モータ72(図2参照)に供給する保持電圧を高めてBH保持圧を高める。
BH保持圧の上昇にともなって各車輪Wに付与される制動力が高まり、車両1が確実に停車する。車両制御装置150は、全ての車輪速センサ31から入力される車輪速信号にパルスが発生しない状態になるまで電動モータ72に供給する保持電圧を高める。そして、車両制御装置150は、全ての車輪速センサ31から入力される車輪速信号にパルスが発生しない状態のときの保持電圧で生じるBH保持圧を、車両1の傾斜角度θcに対応するBH保持圧とする。なお、車両制御装置150は、例えば、電動モータ72に供給する保持電圧とBH保持圧の関係を示すマップ(図示せず)に基づいて、保持電圧に対するBH保持圧を算出可能である。
図5の(a)は、保持圧補正マップの一例を示す図、(b)は、解除トルク上方補正マップと解除トルク下方補正マップの一例を示す図である。
車両制御装置150(図1参照)は、図5の(a)に示すように、あらかじめ設定されている保持圧マップMP1(破線)において、車両1(図1参照)の傾斜角度θc(例えば、「θ1」)に対応するBH保持圧を、高めた保持電圧に対応するBH保持圧(例えば、「Pθ1」)に変更(補正)する。さらに、車両制御装置150は、あらかじめ設定されている保持圧マップMP1(破線)を、車両1の傾斜角度θcが「θ1」のときに、高めた保持電圧に対応するBH保持圧「Pθ1」を通るように補正(実線)した保持圧補正マップMP10(補正情報)を作成して記憶する。
例えば、車両制御装置150(図1参照)は、あらかじめ設定されている保持圧マップMP1(破線)と同じ傾斜の直線が、車両1の傾斜角度θcが「θ1」のときに、高めた保持電圧に対応するBH保持圧「Pθ1」を通るように変更して、保持圧補正マップMP10(実線)を作成する。
このように、車両制御装置150は、ブレーキホールドの作動中に車両1(図1参照)が動き出したと判定した場合、車両1の傾斜角度θcに対応するBH保持圧が大きくなるように、傾斜角度θcとBH保持圧の相関関係を補正し、補正した相関関係に基づいて補正情報(保持圧補正マップMP10)を作成する。
その後、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドを作動するとき、新たに作成した保持圧補正マップMP10に基づいて、車両1(図1参照)の傾斜角度θcに対応するBH保持圧を決定し、決定したBH保持圧がホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL(図2参照)に供給されるように、電動モータ72(図2参照)に保持電圧を供給する。
これによって、同じ傾斜角度θcに対応するBH保持圧があらかじめ設定されているBH保持圧よりも高くなり、車輪W(図1参照)に付与される制動力が大きくなる。したがって、車輪Wに制動力を付与する摩擦材(図示しないブレーキパッド等)と車輪Wの間の摩擦係数μが一時的に低下しても、ブレーキホールド作動時に車輪Wには、車両1(図1参照)を確実に停車させることが可能な制動力が付与される。
なお、運転者がIGSW5(図1参照)をOFF操作した信号が車両制御装置150(図1参照)に入力されたときに、車両制御装置150が、記憶している保持圧補正マップMP10を消去するように構成されていれば、次に運転者がIGSW5をON操作して車両1(図1参照)が走行するとき、車両制御装置150は、あらかじめ設定されている保持圧マップMP1(図3の(a)参照)に基づいたBH保持圧でブレーキホールドを作動できる。
また、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が摩滅した場合や、ブレーキ液の液量減少などによって、ブレーキパッドなどの摩擦材と車輪W(図1参照)の間の摩擦係数μが恒久的に低下する場合がある。
このような場合、運転者がIGSW5(図1参照)をON操作するたびに、車両制御装置150は、ブレーキホールドの作動時に保持圧補正マップMP10(図5の(a)参照)を作成することになる。
そこで、例えば、運転者がIGSW5(図1参照)を所定回数(N回)ON操作したときに、車両制御装置150(図1参照)が保持圧補正マップMP10を同じ回数(N回)作成した時に、車両制御装置150はブレーキパッドなどの摩擦材と車輪Wの間の摩擦係数μが恒久的に低下していると判定し、作成した保持圧補正マップMP10を恒久的に使用する構成としてもよい。
この場合、例えば、摩擦材(ブレーキパッド等)の交換やブレーキ液の補充など、運転者が車両1(図1参照)を整備するなどして摩擦材と車輪Wの間の摩擦係数μが回復したとき、車両制御装置150(図1参照)はブレーキホールドの作動時に、あらかじめ設定されている従来の保持圧マップMP1(図3の(a)参照)に基づいてBH保持圧を決定する構成とすればよい。
また、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドが作動しているとき、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが、解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)に基づいて決定される、車両1の傾斜角度θcに対応した解除トルクに達したと判定したときにブレーキホールドを解除する。
しかしながら、車両制御装置150(図1参照)は、エンジン2(図1参照)の回転速度やAT3(図1参照)の変速比等に基づいて算出するトルク算出値が解除トルクに達したときに、駆動トルクが解除トルクに達したと判定する。このため、トルク算出値と、車輪W(図1参照)に付与される実際の駆動トルクと、に誤差が生じると、車両制御装置150がブレーキホールドを解除するときに車輪Wに付与される駆動トルクが適切でなくなる場合がある。
また、傾斜角度計測手段8(図1参照)が検出する車両1の傾斜角度に誤差が生じる場合もある。そして、傾斜角度計測手段8が検出する車両1の傾斜角度に誤差が生じると、車両制御装置150(図1参照)が算出する車両1の傾斜角度θcに誤差が生じることになる。したがって、車両制御装置150が、解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)に基づいて決定する、車両1の傾斜角度θcに対応した解除トルクにも誤差が生じる。
例えば、車両制御装置150(図1参照)が算出したトルク算出値が、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクよりも大きい場合、車両制御装置150は、駆動トルクがブレーキホールドを解除するのに適切な解除トルクよりも小さい状態でブレーキホールドを解除する。
この結果、車両1が上り勾配の路面に停車している場合に当該車両1が後退することがある。つまり、車両1が、駆動トルクでの車輪Wの回転による進行方向(前進方向)と逆方向(後退方向)に動き出す場合がある。
また、傾斜角度計測手段8(図1参照)が検出する車両1の傾斜角度が実際より小さい場合にも、車両制御装置150は、駆動トルクがブレーキホールドを解除するのに適切な解除トルクより小さい状態でブレーキホールドを解除する。したがって、車両1が上り勾配の路面に停車している場合に当該車両1が後退することがある。
そこで、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)はブレーキホールドを解除する時に、車輪速センサ31(図1参照)から入力される車輪速信号を監視する。そして、車両1(図1参照)が上り勾配の路面に停車している状態で、少なくとも1つの車輪W(図1参照)に備わる車輪速センサ31から入力される車輪速信号にパルスが発生したと判定した場合、車両制御装置150は、車両1(図1参照)が動き出して後退したと判定する。
そして、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの解除時に、車両1(図1参照)が後退したと判定したとき、図5の(b)に破線(解除トルクマップMP2)で示すように設定されている解除トルクを、実線(解除トルク上方補正マップMP20)で示すように持ち上げる。例えば、車両制御装置150は、車両1の傾斜角度θcの上昇に対する解除トルクの上昇の傾きを大きくし、変更した後の解除トルク上方補正マップMP20を記憶する。なお、解除トルクの持ち上げ量は、あらかじめ実験計測等によって好適な量が設定されていればよい。
このように、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの解除時にBH保持圧が低下しているときに、付与される駆動トルクでの車輪W(図1参照)の回転による進行方向(前進方向)と逆方向(後退方向)に車両1(図1参照)が動き出したと判定したとき、傾斜角度θcの上昇に対する解除トルクの上昇の傾きを大きくして傾斜角度θcに対応する解除トルクを大きくし、ブレーキホールドを解除する閾値を変更する(閾値が大きくなるように変更する)。
その後、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドを解除するとき、解除トルク上方補正マップMP20に基づいて、車両1(図1参照)の傾斜角度θcに対応する解除トルクを決定する。さらに、車両制御装置150は、エンジン2(図1参照)の回転速度等に基づいて算出するトルク算出値が、決定した解除トルクに達したときに、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが解除トルクに達したと判定してブレーキホールドを解除する。
これによって、同じ傾斜角度θcに対応する解除トルクがあらかじめ設定されている解除トルクよりも大きくなり、ブレーキホールドが解除されるときに車輪Wに付与される駆動トルクが大きくなる。したがって、車両制御装置150が算出するトルク算出値が、車輪Wに付与される駆動トルクより大きくても、車両1はブレーキホールドの解除時に後退することなく発進可能となる。
なお、運転者がIGSW5(図1参照)をOFF操作した信号が車両制御装置150(図1参照)に入力されたときに、車両制御装置150が、記憶している解除トルク上方補正マップMP20(図5の(b)参照)を消去するように構成されていれば、次に運転者がIGSW5をON操作して車両1(図1参照)が走行するとき、車両制御装置150は、あらかじめ設定されている解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)に基づいた解除トルクでブレーキホールドを解除できる。
また、例えば、傾斜角度計測手段8(図1参照)の誤差が大きくなった場合など、ブレーキホールドが解除されるときに車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが、適切な解除トルクよりも小さくなる状態が恒久的に継続される場合がある。
このような場合、運転者がIGSW5(図1参照)をON操作するたびに、車両制御装置150は、ブレーキホールドの解除時に解除トルク上方補正マップMP20を作成することになる。
そこで、例えば、運転者がIGSW5(図1参照)を所定回数(N回)ON操作したときに、車両制御装置150(図1参照)が解除トルク上方補正マップMP20(図5の(b)参照)を同じ回数(N回)作成した時に、車両制御装置150は、傾斜角度計測手段8(図1参照)に誤差が発生しているなど、ブレーキホールドが解除されるときの解除トルクが恒久的に低下していると判定し、作成した解除トルク上方補正マップMP20を恒久的に使用する構成としてもよい。
このような構成であれば、例えば、傾斜角度計測手段8に大きな誤差が発生しても、ブレーキホールドが解除されるときに、車輪W(図1参照)には適切な駆動トルクが付与されて発進時の車両1の後退が好適に抑制される。
また、車両制御装置150(図1参照)が算出したトルク算出値が、車輪W(図1参照)に付与されている駆動トルクよりも小さい場合や傾斜角度計測手段8(図1参照)が計測する車両1の傾斜角度が実際よりも大きい場合、車輪Wに付与されている駆動トルクがブレーキホールドを解除するのに適切な解除トルクであってもブレーキホールドが解除されない場合がある。
このような場合、ブレーキホールドの作動で車輪W(図1参照)に付与されている制動力に抗して車輪Wが回転することがあり、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪Wに引き摺られる状態になる。
そこで、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)はブレーキホールドの作動中に、車輪速センサ31(図1参照)から入力される車輪速信号を監視する。そして、車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除していない時点で(つまり、ブレーキホールドを解除する前に)、少なくとも1つの車輪W(図1参照)に備わる車輪速センサ31から入力される車輪速信号にパルスが発生したと判定した場合、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪Wに引き摺られていると判定する。
そして、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪W(図1参照)に引き摺られたと判定したとき、図5の(b)に破線(解除トルクマップMP2)で示すように設定されている解除トルクを、一点鎖線(解除トルク下方補正マップMP21)で示すように低下させる。例えば、車両制御装置150は、車両1(図1参照)の傾斜角度θcの上昇に対する解除トルクの上昇の傾きを小さくし、変更した後の解除トルク下方補正マップMP21を記憶する。
このように、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの解除前に車両1(図1参照)が動き出したと判定したとき、傾斜角度θcの上昇に対する解除トルクの上昇の傾きを小さくして傾斜角度θcに対応する解除トルクを小さくし、ブレーキホールドを解除する閾値を変更する(閾値が小さくなるように変更する)。
その後、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドを解除するとき、解除トルク下方補正マップMP21に基づいて、車両1(図1参照)の傾斜角度θcに対応する解除トルクを決定する。さらに、車両制御装置150は、エンジン2(図1参照)の回転速度等に基づいて算出するトルク算出値が、決定した解除トルクに達したときに車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルクに達したと判定してブレーキホールドを解除する。
これによって、同じ傾斜角度θcに対応する解除トルクがあらかじめ設定されている解除トルクよりも小さくなり、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが小さい状態でブレーキホールドが解除される。したがって、ブレーキホールドが作動しているときに、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪Wに引き摺られることが抑制される。
なお、運転者がIGSW5(図1参照)をOFF操作した信号が車両制御装置150(図1参照)に入力されたときに、車両制御装置150が、記憶している解除トルク下方補正マップMP21(図5の(b)参照)を消去する構成であってもよいし、一度作成した解除トルク下方補正マップMP21を恒久的に使用する構成であってもよい。
以上のように、本実施形態の車両用制動システム9(図1参照)は、車両1(図1参照)が停車したときにブレーキホールドが作動して、ブレーキペダル12(図2参照)が解放されても車両1を停車した状態に維持可能に構成される。
そして、車両制御装置150(図1参照)はブレーキホールドを作動するとき、車両1の傾斜角度θcに対応するBH保持圧を、対応関係情報である保持圧マップMP1(図3の(a)参照)に基づいて決定する。さらに、車両制御装置150は、決定したBH保持圧をホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL(図2参照)に供給して、車輪W(図1参照)に制動力を付与する。
また、車両制御装置150は、ブレーキホールドの作動時に、車輪速センサ31(図1参照)から入力される車輪速信号を監視し、車両1が動き出していると判定した場合にBH保持圧を高めるとともに、高めた後のBH保持圧に基づいて保持圧マップMP1を補正した補正情報である保持圧補正マップMP10(図5の(a)参照)を作成する。
その後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを作動するとき、車両1の傾斜角度θcに対応するBH保持圧を保持圧補正マップMP10に基づいて決定し、決定したBH保持圧をホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに供給する。
このように、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの作動時に車両1(図1参照)が動き出したと判定した後は、BH保持圧を決定するための保持圧マップMP1(図3の(a)参照)を補正する。さらに、保持圧マップMP1を補正した保持圧補正マップMP10(図5の(a)参照)を作成した後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを作動するとき、車両1の傾斜角度θcに対応するBH保持圧を保持圧補正マップMP10に基づいて決定する。
したがって、車輪W(図1参照)とブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)との摩擦係数μが変化した場合であっても、車両1はブレーキホールドの作動によって、停車した状態が好適に維持される。
また、本実施形態の車両用制動システム9(図1参照)は、車輪W(図1参照)に付与される駆動トルクが、解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)に基づいて決定される解除トルクに達したと判定された時点でブレーキホールドが解除される。
さらに、車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドを解除するとき、車輪速センサ31(図1参照)から入力される車輪速信号で、車両1が後退するか否かを判定する。そして車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除するときに車両1が後退していると判定した場合(つまり、車両1が動き出したと判定した場合)、解除トルクマップMP2の解除トルクを大きくする方向に補正し、補正した解除トルクに基づいて解除トルク上方補正マップMP20(図5の(b)参照)を作成する。
その後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除するとき、車両1の傾斜角度θcに対応する解除トルクを解除トルク上方補正マップMP20に基づいて決定する。さらに、車両制御装置150は、エンジン2(図1参照)の回転速度等に基づいて算出するトルク算出値が、決定した解除トルクに達した時点で、車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルクに達したと判定してブレーキホールドを解除する。
このように、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの解除時に車両1(図1参照)が後退したと判定した後は、解除トルクを決定するための解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)を補正し、ブレーキホールドを解除するトルクの閾値を変更する。さらに、解除トルクマップMP2を補正した解除トルク上方補正マップMP20(図5の(b)参照)を作成した後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除するとき、車両1の傾斜角度θcに対応する解除トルクを解除トルク上方補正マップMP20に基づいて決定する。
したがって、車両制御装置150がエンジン2(図1参照)の回転速度等に基づいて算出するトルク算出値と、車輪Wに付与される駆動トルクと、の間に誤差が生じる場合であっても車両1はブレーキホールドが解除されるときに、後退することなく発進できる。
また、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドを解除する前に、ブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪W(図1参照)に引き摺られているか否かを監視する。そして、車両制御装置150は、ブレーキパッドなどの摩擦材が車輪Wに引き摺られていると判定した場合、解除トルクマップMP2の解除トルクを小さくする方向に補正し、補正した解除トルクに基づいて解除トルク下方補正マップMP21(図5の(b)参照)を作成する。
その後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除するとき、車両1の傾斜角度θcに対応する解除トルクを解除トルク下方補正マップMP21に基づいて決定し、エンジン2(図1参照)の回転速度等に基づいて算出するトルク算出値が、決定した解除トルクに達した時点で、車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルクに達したと判定してブレーキホールドを解除する。
このように、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドの作動時にブレーキパッドなどの摩擦材(図示せず)が車輪W(図1参照)に引き摺られていると判定した後は、解除トルクを決定するための解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)を補正する。さらに、解除トルクマップMP2を補正した解除トルク下方補正マップMP21(図5の(b)参照)を作成した後、車両制御装置150は、ブレーキホールドを解除するとき、車両1の傾斜角度θcに対応する解除トルクを解除トルク下方補正マップMP21に基づいて決定する。
したがって、車両1は、ブレーキパッドなどの摩擦材が車輪Wに引き摺られることなくブレーキホールドが解除される。
また、本実施形態の車両用制動システム9(図1参照)は、上り勾配の路面で運転者が車両1(図1参照)を発進させるときの発進を補助する発進補助機能(HSA:ヒルスタートアシスト)を作動可能に構成される。発進補助機能は、ブレーキペダル12(図2参照)の踏み込み操作量に応じて発生しているブレーキ液圧を保持する機能(液圧保持機能)で、ブレーキホールドよりもブレーキ液圧を保持する時間が短い場合が多い。例えば、運転者がブレーキペダル12からアクセルペダル(図示せず)に踏み替える間だけ作動する液圧保持機能である。なお、ブレーキペダル12の踏み込み操作量に応じて発生しているブレーキ液圧を加減圧することなく保持する発進補助機能もある。
車両制御装置150(図1参照)は、発進補助機能を作動すると、ブレーキペダル12が踏み込み操作されて車両1が停車したとき、傾斜角度計測手段8から入力される角度信号に基づいて車両1の傾斜方向(上り傾斜/下り傾斜)と、傾斜角度θcの大きさを算出する。
さらに、車両制御装置150(図1参照)は、停車した車両1(図1参照)の傾斜方向が上り傾斜であると判定した場合、算出した傾斜角度θcがあらかじめ設定されている所定の基準角度以上のときには、図3の(a)に示す保持圧マップMP1を参照して傾斜角度θcに対応するBH保持圧を決定する。そして、車両制御装置150は、電動モータ72(図2参照)に保持電圧を供給し、決定したBH保持圧をモータシリンダ装置16(図2参照)に発生させる。
これによって、ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL(図2参照)にはBH保持圧が供給され、各車輪W(図1参照)に制動力が付与される。
なお、車両制御装置150が、発進補助機能の作動を決定する基準角度は、車両1に要求される性能等に基づいて、適宜設定されていることが好ましい。
運転者がブレーキペダル12(図2参照)からアクセルペダル(図示せず)に踏みかえる間、車両1(図1参照)は各車輪W(図1参照)に付与された制動力で停車した状態に維持され後退が抑制される。そして、車両制御装置150は、エンジン2(図1参照)の回転速度やAT3(図1参照)の変速比等に基づいて算出するトルク算出値が、図3の(a)に示す解除トルクマップMP2に基づいて決定する解除トルクに達した時点で、車輪Wに付与される駆動トルクが解除トルクに達したと判定する。そして、車両制御装置150は、電動モータ72(図2参照)への保持電圧の供給を停止し、各車輪W(図1参照)に付与されている制動力を消失させる。
本実施形態の車両用制動システム9(図1参照)には、このように作動する発進補助機能(HSA)が備わっている。そして、例えば、運転者が図示しない操作スイッチを操作して、発進補助機能を「ON」に設定したときに、発進補助機能が作動するように構成されている。
そして、図5の(a)に示す保持圧補正マップMP10が作成されている場合、車両制御装置150(図1参照)は、発進補助機能の作動時に当該保持圧補正マップMP10に基づいてBH保持圧を決定する。また、図5の(b)に示す解除トルク上方補正マップMP20や解除トルク下方補正マップMP21が作成されている場合、車両制御装置150は、発進補助機能の作動時に解除トルク上方補正マップMP20や解除トルク下方補正マップMP21に基づいて解除トルクを決定する。
したがって、発進補助機能の作動時においても、発進時における車両1(図1参照)の後退や、摩擦材(図示せず)が車輪W(図1参照)に引き摺られることが好適に抑制される。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
図6の(a)は、保持圧補正マップの別の一例を示す図、(b)は、解除トルク上方補正マップの別の一例と解除トルク下方補正マップの別の一例を示す図である。
例えば、図5の(a)に実線で示す保持圧補正マップMP10は、破線で示す保持圧マップMP1を、同じ傾斜角度θcに対応するBH保持圧が高くなるように持ち上げたマップである。このような保持圧補正マップMP10に限定されず、例えば、図6の(a)に実線で示すように、破線で示す保持圧マップMP1の直線の傾きが大きくなるように補正された保持圧補正マップMP10であってもよい。
また、図5の(b)に示す解除トルク上方補正マップMP20は、解除トルクマップMP2の直線の傾きを大きくしたマップであるが、図6の(b)に実線で示すように、破線で示す解除トルクマップMP2を、同じ傾斜角度θcに対応する解除トルクが大きくなるように全体を持ち上げた解除トルク上方補正マップMP20であってもよい。
同様に、図6の(b)に一点鎖線で示すように、破線で示す解除トルクマップMP2を、同じ傾斜角度θcに対応する解除トルクが小さくなるように全体を低下させた解除トルク下方補正マップMP21であってもよい。
また、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、保持圧マップMP1(図3の(a)参照)を対応関係情報とし、保持圧マップMP1に基づいてBH保持圧を決定する構成とした。この構成に限定されず、車両1(図1参照)の傾斜角度θcとBH保持圧の関係を示す関数やテーブルを対応関係情報とし、これらの関数やテーブルを使用して、傾斜角度θcに対応するBH保持圧を算出する構成であってもよい。
同様に、車両制御装置150は、解除トルクマップMP2(図3の(b)参照)を使用することなく、車両1の傾斜角度θcと解除トルクの関係を示す関数やテーブルを使用して、傾斜角度θcに対応する解除トルクを算出する構成であってもよい。
また、本実施形態の車両制御装置150(図1参照)は、ブレーキホールドやHSAを作動するとき、モータシリンダ装置16の電動モータ72(図2参照)に保持電圧を供給して、各車輪W(図1参照)に制動力が付与された状態を維持する。しかしながら、この構成も限定されるものではない。例えば、VSA装置18のレギュレータバルブ116(図2参照)等の閉弁でVSA装置18内にブレーキ液圧を封じ込めて、各車輪Wに制動力が付与された状態を維持する構成であってもよい。この場合、車両制御装置150は、ポンプ136(図2参照)を駆動して、VSA装置18内に閉じ込められているブレーキ液圧を加圧できる。ひいては、各車輪Wに付与される制動力を増大できる。
また、車両制御装置150は、レギュレータバルブ116を適宜開弁して、VSA装置18内に閉じ込められているブレーキ液圧を減圧できる。ひいては、各車輪Wに付与される制動力を低下できる。
1 車両
8 傾斜角度計測手段(車両状態検出手段)
9 車両用制動システム
10 ブレーキ装置
12 ブレーキペダル(ブレーキ操作部)
16 モータシリンダ装置(液圧発生手段)
31 車輪速センサ(車両状態検出手段)
150 車両制御装置(制御装置)
32FR,32RL,32RR,32FL ホィールシリンダ(制動手段)
MP1 保持圧マップ(対応関係情報)
MP10 保持圧補正マップ(補正情報)
W 車輪
θc 傾斜角度

Claims (6)

  1. ブレーキ操作部の操作量に応じた液圧を作動液に発生させる液圧発生手段と、
    前記液圧で作動して車輪に制動力を付与して車両を停車させる制動手段と、
    前記車両の停車時に前記液圧発生手段を制御して所定の保持液圧を前記作動液に発生させ、前記保持液圧で前記制動手段を作動させる制御装置と、を有する車両用制動システムにおいて、
    前記制御装置は、
    前記車両に備わる車両状態検出手段から入力される角度信号に基づいて当該車両の前後方向の傾斜角度を算出するとともに、前記傾斜角度が大きいほど前記保持液圧が大きくなる相関関係に基づいて、前記車両の停車時の前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、
    決定した前記保持液圧で前記制動手段が作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で前記車両が動き出したと判定したとき、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧が大きくなるように前記相関関係を補正することを特徴とする車両用制動システム。
  2. 前記制御装置は、
    前記傾斜角度が大きいほど大きな前記保持液圧が設定されている対応関係情報に基づいて、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、
    決定した前記保持液圧で前記制動手段が作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で前記車両が動き出したと判定したときには、前記傾斜角度に対応する前記保持液圧が大きくなるように前記対応関係情報を補正した補正情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
  3. 前記制御装置は、
    前記制動手段が前記保持液圧で作動して前記車輪に前記制動力が付与された状態で、前記車輪に付与される駆動トルクが所定の閾値に達したと判定したときに、前記保持液圧が低下するように前記液圧発生手段を制御し、
    前記保持液圧が低下しているときに、前記駆動トルクでの前記車輪の回転による進行方向と逆方向に前記車両が動き出したと判定した場合に前記閾値を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用制動システム。
  4. 前記制御装置は、
    前記保持液圧を変更するとき、当該保持液圧が大きくなるように変更することを特徴とする請求項3に記載の車両用制動システム。
  5. 前記制御装置は、
    前記保持液圧が低下しているときに前記車両が動き出したと判定したとき、前記閾値を小さくするように変更することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用制動システム。
  6. 前記制御装置は、
    前記傾斜角度が所定の基準角度以上の状態で前記車両が停車したときに、前記液圧発生手段を制御して前記保持液圧を発生させ、
    前記駆動トルクが前記閾値に達したと判定したときに、前記液圧発生手段を制御して前記保持液圧の発生を停止する発進補助機能を作動し、
    前記相関関係が補正された後では、補正された前記相関関係に基づいて前記傾斜角度に対応する前記保持液圧を決定し、
    前記閾値が変更された後では、変更された前記閾値に前記駆動トルクが達したと判定したときに前記保持液圧の発生を停止するように前記発進補助機能を作動することを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の車両用制動システム。
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