以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、運転者によってブレーキペダル12等のブレーキ操作部が操作されたときにその操作の入力に応じた液圧(ブレーキ液圧)を、作動液であるブレーキ液に発生させる液圧発生装置(入力装置14)と、ブレーキペダル12が踏み込み操作されたときの操作量(以下、「ブレーキ操作量」と称する)を計測するペダルストロークセンサStと、車両挙動の安定化を支援する車両挙動安定化装置18(以下、VSA(ビークルスタビリティアシスト)装置18という、VSA;登録商標)とを備えて構成されている。
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された管路(液圧路)によって接続されているとともに、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスで電気的に接続されている。
このうち、液圧路について説明すると、図1中(中央やや下)の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図1中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪WFRに設けられたディスクブレーキ機構30aのブレーキ作動部(ホィールシリンダ32FR)と接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪WRLに設けられたディスクブレーキ機構30bのブレーキ作動部(ホィールシリンダ32RL)と接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪WRRに設けられたディスクブレーキ機構30cのブレーキ作動部(ホィールシリンダ32RR)と接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪WFLに設けられたディスクブレーキ機構30dのブレーキ作動部(ホィールシリンダ32FL)と接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに対して供給され、各ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL内のブレーキ液圧が上昇することにより、各ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)との摩擦力が高くなって制動力が付与される。
つまり、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧が、各ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(ブレーキ作動部)に供給されて、各車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に制動力が付与される構成である。
また、右側前輪WFR、左側後輪WRL、右側後輪WRR、左側前輪WFLのそれぞれには、車輪速を検出する車輪速センサ35a,35b,35c,35dがそれぞれ備わり、各車輪速センサ35a,35b,35c,35dが各車輪の車輪速を計測して発生する計測信号は制御手段150に入力される。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によってブレーキ液に液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設されたリザーバ(第1リザーバ36)とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン(セカンダリピストン40a,プライマリピストン40b)が摺動自在に配設される。セカンダリピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、プライマリピストン40bは、セカンダリピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
また、シリンダチューブ38の内壁には、プライマリピストン40bの外周に摺接する一対のリング状を呈するカップシール44Pa,44Pb、およびセカンダリピストン40aの外周に摺接する一対のリング状を呈するカップシール44Sa,44Sbが装着されている。さらに、セカンダリピストン40aとプライマリピストン40bの間には、ばね部材50aが配設され、プライマリピストン40bとシリンダチューブ38の閉塞端側の側端部38aと間には、他のばね部材50bが配設される。
また、シリンダチューブ38の側端部38aからプライマリピストン40bの摺動方向に沿ってガイドロッド48bが延設され、プライマリピストン40bは、ガイドロッド48bにガイドされて摺動する。
また、プライマリピストン40bのセカンダリピストン40a側の端部からセカンダリピストン40aの摺動方向に沿ってガイドロッド48aが延設され、セカンダリピストン40aは、ガイドロッド48aにガイドされて摺動する。
そして、セカンダリピストン40aとプライマリピストン40bはガイドロッド48aで連結されて直列に配置される。ガイドロッド48a,48bの詳細は後記する。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート(第2サプライポート46a、第1サプライポート46b)と、2つのリリーフポート(第2リリーフポート52a、第1リリーフポート52b)と、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、第2サプライポート46a、第1サプライポート46b及び第2リリーフポート52a、第1リリーフポート52bは、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
さらに、セカンダリピストン40aの外周に摺接する一対のカップシール44Sa,44Sbは、セカンダリピストン40aの摺動方向に第2リリーフポート52aを挟んで配置される。また、プライマリピストン40bの外周に摺接する一対のカップシール44Pa,44Pbは、プライマリピストン40bの摺動方向に第1リリーフポート52bを挟んで配置される。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応した液圧を発生する第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
第1圧力室56bと第2圧力室56aの間は、一対のカップシール44Sa,44Sbによって液密に封じられる。また、第2圧力室56aのブレーキペダル12側は、一対のカップシール44Pa,44Pbによって液密に封じられる。
第1圧力室56bは、プライマリピストン40bの変位に応じた液圧を発生するように構成され、第2圧力室56aは、セカンダリピストン40aの変位に応じた液圧を発生するように構成される。
また、セカンダリピストン40aはブレーキペダル12とプッシュロッド42を介して連結され、ブレーキペダル12の動作にともなってシリンダチューブ38内を変位する。さらに、プライマリピストン40bは、セカンダリピストン40aの変位によって第2圧力室56aに発生する液圧によって変位する。つまり、プライマリピストン40bはセカンダリピストン40aに応動して変位する。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されるとともに、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側である上流側の液圧を計測するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられるとともに、第1液圧路58bの下流側には、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに供給される液圧(ブレーキ液圧)を計測する供給液圧計測手段として圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL側である下流側の液圧を計測するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した閉弁状態をそれぞれ示している。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1において、第3遮断弁62は、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した開弁状態を示している。
このストロークシミュレータ64は、バイ・ワイヤ制御時に、ブレーキペダル12の踏み込み操作に対してストロークと反力を与えて、あたかも踏力によって制動力が発生しているかのように運転者に思わせる装置であり、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が吸収可能に設けられる。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a,66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングが、既存のマスタシリンダ34を踏み込み操作したときのペダルフィーリングと同等になるように設けられている。
つまり、ストロークシミュレータ64は、第1圧力室56bから導出されるブレーキ液の液圧に応じた反力を発生し、この反力をマスタシリンダ34を介してブレーキペダル12に与えるように構成される。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホィールシリンダ32FR,32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホィールシリンダ32RR,32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。第1液圧系統70bと第2液圧系統70aは互いに独立した液圧系統であり、一方の液圧系統におけるブレーキ液圧が他方の液圧系統におけるブレーキ液圧の影響を受けないように構成されている。つまり、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧は、独立した2系統からなる液圧系統(第1液圧系統70b,第2液圧系統70a)を介して、ブレーキ作動部(ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)に供給される。
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a,22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b,22cと、VSA装置18の導出ポート28a,28bと各ホィールシリンダ32FR,32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g,22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d,22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e,22fと、VSA装置18の導出ポート28c,28dと各ホィールシリンダ32RR,32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i,22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動機(電動モータ72)と、アクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76と、を有する。
アクチュエータ機構74は、電動モータ72の出力軸72b側に設けられ、複数のギヤが噛合して電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、前記ギヤ機構78を介して前記回転駆動力が伝達されることにより軸方向に沿って進退動作するボールねじ軸80a及びボール80bを含むボールねじ構造体80とを有する。
本実施形態においてボールねじ構造体80は、ギヤ機構78とともにアクチュエータハウジング172の機構収納部173aに収納される。
シリンダ機構76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。なお、配管チューブ86に、ブレーキ液を貯留するタンクが備わっていてもよい。
そして、略円筒状を呈するシリンダ本体82の開放された端部(開放端)がハウジング本体172Fとハウジングカバー172Rからなるアクチュエータハウジング172に嵌合してシリンダ本体82とアクチュエータハウジング172が連結され、モータシリンダ装置16が構成される。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に動作(変位)する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
なお、本実施形態においては、電動モータ72とアクチュエータ機構74(ボールねじ軸80a等)を含んでアクチュエータとし、ボールねじ軸80aの動作量(変位)をアクチュエータの動作量とする。
また、本実施形態における電動モータ72は、シリンダ本体82と別体に形成されるモータケーシング72aで覆われて構成され、出力軸72bが第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの摺動方向(軸方向)と略平行になるように配置される。
そして、出力軸72bの回転駆動がギヤ機構78を介してボールねじ構造体80に伝達されるように構成される。
ギヤ機構78は、例えば、電動モータ72の出力軸72bに取り付けられる第1ギヤ78aと、ボールねじ軸80aを軸方向に進退動作させるボール80bをボールねじ軸80aの軸線を中心に回転させる第3ギヤ78cと、第1ギヤ78aの回転を第3ギヤ78cに伝達する第2ギヤ78bと、の3つのギヤで構成され、第3ギヤ78cはボールねじ軸80aの軸線を中心に回転する。
本実施形態におけるアクチュエータ機構74は、前記した構造によって、電動モータ72の出力軸72bの回転駆動力をボールねじ軸80aの進退駆動力(直線駆動力)に変換する。
第1スレーブピストン88bの外周面には、環状段部を介して、一対のスレーブカップシール90a,90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブカップシール90a,90bの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第1背室94bが形成される。
なお、第2及び第1スレーブピストン88a,88bの間には、第2リターンスプリング96aが配設され、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部と間には、第1リターンスプリング96bが配設される。
また、第2スレーブピストン88aの外周面と機構収納部173aとの間を液密にシールするとともに、第2スレーブピストン88aをその軸方向に対して移動可能にガイドする環状のガイドピストン90cが、第2スレーブピストン88aの後方に、シリンダ本体82をシール部材として閉塞するように備わっている。第2スレーブピストン88aが貫通するガイドピストン90cの内周面には、図示しないスレーブカップシールが装着され、第2スレーブピストン88aとガイドピストン90cの間が液密に構成されることが好ましい。さらに、第2スレーブピストン88aの前方の外周面には、環状段部を介して、スレーブカップシール90bが装着される。
この構成によって、シリンダ本体82の内部に充填されるブレーキ液がガイドピストン90cによってシリンダ本体82に封入され、アクチュエータハウジング172の側に流れ込まないように構成されている。
なお、ガイドピストン90cとスレーブカップシール90bの間には、後記するリザーバポート92aと連通する第2背室94aが形成される。
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a,92bと、2つの出力ポート24a,24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホィールシリンダ32FR,32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホィールシリンダ32RR,32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98bが設けられる。
この構成によると、ブレーキ液が封入される第2背室94a、第1背室94b、第2液圧室98a、及び第1液圧室98bは、シリンダ本体82におけるブレーキ液の封入部であり、シール部材として機能するガイドピストン90cによって、アクチュエータハウジング172の機構収納部173aと液密(気密)に区画される。
なお、ガイドピストン90cがシリンダ本体82に取り付けられる方法は限定するものではなく、例えば、図示しないサークリップで取り付けられる構成とすればよい。
第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bの最大ストローク(最大変位距離)と最小ストローク(最小変位距離)とを規制する規制手段100が設けられる。さらに、第1スレーブピストン88bには、第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特にマスタシリンダ34で制動するバックアップ時において、1つの系統が失陥したときに、他の系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、公知のものからなり、右側前輪WFR及び左側後輪WRLのディスクブレーキ機構30a,30b(ホィールシリンダ32FR,32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪WRR及び左側前輪WFLのディスクブレーキ機構30c、30d(ホィールシリンダ32RR,32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。なお、第2ブレーキ系110aは、左側前輪WFL及び右側前輪WFRに設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、右側後輪WRR及び左側後輪WRLに設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪WFR及び右側後輪WRRに設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪WFL及び左側後輪WRLに設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bで対応するものには同一の参照符号を付しているとともに、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホィールシリンダ32FR,32RL(32RR,32FL)に対して、共通する管路(第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114)を有する。このうち、第1共通液圧路112は、ホィールシリンダ32FR,32RL(32RR,32FL)にブレーキ液圧を供給する供給路となる。
VSA装置18は、導入ポート26a(26b)と第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a(26b)側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a(26b)側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28a(第4導出ポート28d)との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a(第4導出ポート28d)側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a(第4導出ポート28d)側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28b(第3導出ポート28c)との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b(第3導出ポート28c)側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b(第3導出ポート28c)側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
第1インバルブ120および第2インバルブ124は、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに、ブレーキ液圧を供給する管路(第1共通液圧路112)を開閉する開閉手段である。そして、第1インバルブ120が閉弁すると、ホィールシリンダ32FR,32RLへの第1共通液圧路112からのブレーキ液圧の供給が遮断される。また、第2インバルブ124が閉弁すると、ホィールシリンダ32RR,32FLへの第1共通液圧路112からのブレーキ液圧の供給が遮断される。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28a(第4導出ポート28d)と第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28b(第3導出ポート28c)と第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ装置132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26a(26b)との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、各圧力センサPm、Ppで計測された計測信号は、制御手段150に入力される。また、VSA装置18では、VSA制御のほか、ABS(アンチロックブレーキシステム)も制御可能である。
さらに、VSA装置18に代えて、ABS機能のみを搭載するABS装置が接続される構成であってもよい。
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁されて弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁されて弁開状態となる。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生した液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生した液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給された液圧によってシミュレータピストン68が第1及び第2リターンスプリング66a,66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されるとともに、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
このようなシステム状態において、制御手段150は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると制動時と判定し、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第2リターンスプリング96a及び第1リターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図1中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。このように、本実施形態のモータシリンダ装置16は、電動モータ72およびアクチュエータ機構74の動作(アクチュエータの動作)でブレーキ液を加圧して液圧(ブレーキ液圧)を発生する液圧発生手段として機能する。
具体的に、制御手段150は、ペダルストロークセンサStの計測値に応じてブレーキペダル12の踏み込み操作量(ブレーキ操作量)を算出し、このブレーキ操作量に基づいて、回生制動力を考慮した上で目標となるブレーキ液圧を設定し、設定したブレーキ液圧をモータシリンダ装置16に発生させる。
本実施形態の制御手段150は、例えば、いずれも図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されるマイクロコンピュータ及び周辺機器からなる。そして、制御手段150は、あらかじめROMに記憶されているプログラムをCPUで実行し、車両用ブレーキシステム10を制御するように構成される。
また、本実施形態における電気信号は、例えば、電動モータ72を駆動する電力や電動モータ72を制御するための制御信号である。
また、ブレーキペダル12の踏み込み操作量(ブレーキ操作量)を計測する操作量計測手段はペダルストロークセンサStに限定されるものではなく、ブレーキ操作量を計測可能なセンサであればよい。例えば、操作量計測手段を圧力センサPmとして、圧力センサPmが計測する液圧をブレーキ操作量に変換する構成であってもよいし、図示しない踏力センサによってブレーキ操作量を計測する構成であってもよい。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120,124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに伝達され、前記ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLが作動することにより各車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、動力液圧源(液圧発生手段)として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する制御手段150等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことで液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)との連通を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bをそれぞれ弁開状態、第3遮断弁62を弁閉状態としマスタシリンダ34で発生する液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)にブレーキ液圧として伝達し、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の液圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
本実施形態の車両用ブレーキシステム10は図1に示すように構成される。そして、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(ブレーキ作動部)に供給されるブレーキ液圧は、第1液圧路58bに配設される圧力センサPpで計測するように構成される。
また、制御手段150は、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧の目標値(運転者の要求するブレーキ液圧であり、本実施形態では目標液圧になる)を演算する。さらに、制御手段150は、圧力センサPpから入力(フィードバック)される計測信号に基づいて、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに供給されるブレーキ液圧(計測値)を演算する。そして、制御手段150は、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(ブレーキ作動部)に供給されるブレーキ液圧が目標液圧に近づくように、モータシリンダ装置16を制御(フィードバック制御)する。
図2は制御手段によるアクチュエータ(電動モータ)の制御を示すブロック図、図3の(a)はリークが発生したときのブレーキ液圧とボールねじ軸の動作量(以下、符号「ACTst」で示す)の関係を示す線図、図3の(b)は制御手段がリークを判定するリーク判定手順のフローチャートである。また、図4は、ブレーキ液圧の目標液圧とボールねじ軸の目標動作量の関係を示す動作量設定マップの一例であり、縦軸はボールねじ軸80aの目標動作量、横軸はブレーキ操作量に応じた目標液圧を示す。また、横軸のPxMaxは、車両用ブレーキシステム10におけるブレーキ液圧の最大値である。なお、図4の一点鎖線および二点鎖線は、本実施形態で採用しない動作量設定マップの形態を比較例として示している。
例えば、第1液圧系統70b,第2液圧系統70aのいずれにもブレーキ液のリーク(漏洩)が発生していない状態(本実施形態における正常時)で、制御手段150は、図2に示すように、ペダルストロークセンサStから入力される計測信号に基づいて、ブレーキ操作量に対応する目標液圧を演算する。例えば、制御手段150は、ペダルストロークセンサStから入力される計測信号に基づいてブレーキ操作量を演算する。さらに、制御手段150は、ブレーキ操作量を目標液圧に変換するマップ(液圧設定マップMP0)に基づいて、ブレーキ操作量に対応する目標液圧を演算する。
なお、ブレーキ操作量を目標液圧に変換する液圧設定マップMP0は、実験計測やシミュレーション等によって予め設定されているものを利用すればよい。
または、制御手段150が、ブレーキ操作量に対応する目標液圧を示す関数を利用して目標液圧を演算する構成であってもよい。
また、制御手段150(図1参照)は圧力センサPp(図1参照)から入力される計測信号に基づいて、モータシリンダ装置16(図1参照)が実際に発生して第1液圧系統70b(図1参照)に供給されたブレーキ液圧(計測値)を演算する。そして、制御手段150は、演算した目標液圧と実際のブレーキ液圧(計測値)の偏差を演算し、この偏差をゼロに近づけるようにモータシリンダ装置16(アクチュエータ機構74)を制御して目標液圧と等しいブレーキ液圧を発生させる。このように、圧力センサPpからフィードバックされる計測信号(計測値)に基づいたモータシリンダ装置16のフィードバック制御を「液圧フィードバック制御」と称する。つまり、本実施形態の制御手段150は、液圧フィードバック制御を実行してモータシリンダ装置16を制御する。
しかしながら、圧力センサPp(図1参照)が配設される第1液圧路58b(図1参照)を含む第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生すると、第1液圧系統70bにおけるブレーキ液圧が低下する。したがって、圧力センサPpは、モータシリンダ装置16(図1参照)から第1液圧系統70bに供給されたブレーキ液圧を正確に計測できなくなる。
したがって、第1液圧系統70bにリークが発生すると、制御手段150は、圧力センサPpが計測する計測値に基づいた液圧フィードバック制御の実行が不可能になる。
そこで、図1に示す、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、第1液圧系統70bや第2液圧系統70aにリークが発生したとき、制御手段150が液圧フィードバック制御を停止するように構成される。
そのため、車両用ブレーキシステム10は、第1液圧系統70bおよび第2液圧系統70aにブレーキ液のリークが発生しているか否かを判定するリーク判定手段を備える。
本実施形態においては、制御手段150が、ボールねじ軸80aの動作量と圧力センサPpから入力される計測信号に基づいて、第1液圧系統70bおよび第2液圧系統70aにおけるリークの発生を判定可能に構成される。
そして、制御手段150は、第1液圧系統70bにリークが発生したと判定したとき、図2に示すように、ペダルストロークセンサStから入力される計測信号に基づいて、ブレーキ操作量に対する目標液圧を演算する。さらに、制御手段150は、演算した目標液圧に基づいて、予め設定されている動作量設定マップMP1を参照し、目標液圧に対応する、ボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量(アクチュエータの目標動作量)を決定する。動作量設定マップMP1の詳細は後記する。
また、制御手段150は、ボールねじ軸80aの実際の動作量(実動作量)と、決定した目標動作量と、の偏差を演算する。そして、制御手段150は、この偏差をゼロに近づけるようにモータシリンダ装置16(電動モータ72)を制御してボールねじ軸80aを目標動作量だけ動作(変位)させる。なお、制御手段150は、モータシリンダ装置16の電動モータ72の回転角度に基づいてボールねじ軸80aの実動作量を検出する構成とすればよい。または、ボールねじ軸80aの動作量を計測するセンサ(図示せず)が備わる構成であってもよい。
このように、目標液圧に対応するボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量に基づいたモータシリンダ装置16(図1参照)の制御を「目標動作量制御」と称する。つまり、本実施形態の制御手段150(図1参照)は、第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生したと判定したとき、液圧フィードバック制御から目標動作量制御に切り替え、目標動作量制御を実行してモータシリンダ装置16を制御する。
しかしながら、第1液圧系統70b(図1参照)や第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生している場合、制御手段150(図1参照)が目標動作量制御でモータシリンダ装置16(図1参照)を制御するとブレーキフィールが低下する場合がある。
例えば、図1に示す第1液圧系統70bにリークが発生すると、モータシリンダ装置16において第1液圧系統70bにブレーキ液圧を供給する第1液圧室98bからVSA装置18に供給されるブレーキ液が漏洩する。そして、第1液圧室98bに発生するブレーキ液圧は、第2液圧室98aに発生するブレーキ液圧よりも小さくなる。
したがって、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aでは、第1液圧室98bに配設される第1スレーブピストン88bのほうが変位に対する抵抗が小さくなる。このため、第1スレーブピストン88bが第2スレーブピストン88aよりも変位しやすい状態になる。
このため、ボールねじ軸80aが動作(変位)したとき、第1液圧室98bは、第2液圧室98aよりも先に第1スレーブピストン88bによって圧縮されて第1液圧室98bからブレーキ液がVSA装置18の第1ブレーキ系110bに供給される。しかしながら、第1液圧系統70bにはリークが発生しているため、第1ブレーキ系110bにおけるブレーキ液圧は増大せず制動力は発生しない。
その後、第1スレーブピストン88bが変位してシリンダ本体82の端部に当接した後に第2スレーブピストン88aが変位すると、第2液圧室98aが圧縮されて第2液圧室98aからブレーキ液がVSA装置18の第2ブレーキ系110aに供給される。第2液圧系統70aにリークが発生していなければ、第2ブレーキ系110aに供給されたブレーキ液圧は増大し、第2ブレーキ系110aに配設されるディスクブレーキ機構30a,30bに制動力が発生する。
つまり、第1液圧系統70bにリークが発生すると、モータシリンダ装置16が駆動してから、第1スレーブピストン88bがシリンダ本体82の端部に当接するまでの間、車両用ブレーキシステム10は制動力を発生できない状態になる。
したがって、ボールねじ軸80aの動作量に応じたブレーキ液圧がモータシリンダ装置16に発生せず、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作してから制動力が発生するまでタイムラグが生じてブレーキフィールが低下する。
一方、第2液圧系統70aにリークが発生すると、モータシリンダ装置16において第2液圧系統70aにブレーキ液圧を供給する第2液圧室98aからVSA装置18に供給されるブレーキ液が漏洩する。そして、第2液圧室98aに発生するブレーキ液圧が、第1液圧室98bに発生するブレーキ液圧よりも小さくなる。
したがって、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aでは、第2液圧室98aに配設される第2スレーブピストン88aのほうが変位に対する抵抗が小さくなる。このため、第2スレーブピストン88aが第1スレーブピストン88bよりも変位しやすい状態になる。
したがって、ボールねじ軸80aが動作(変位)したとき、第2液圧室98aは、第1液圧室98bよりも先に第2スレーブピストン88aによって圧縮されて第2液圧室98aからブレーキ液がVSA装置18の第2ブレーキ系110aに供給される。しかしながら、第2液圧系統70aにはリークが発生しているため、第2ブレーキ系110aにおけるブレーキ液圧は増大せず制動力は発生しない。
その後、第2スレーブピストン88aが変位して規制手段100が第1スレーブピストン88bに当接した後に第1スレーブピストン88bが変位すると、第1液圧室98bが圧縮されて第1液圧室98bからブレーキ液がVSA装置18の第1ブレーキ系110bに供給される。第1液圧系統70bにリークが発生していなければ、第1ブレーキ系110bに供給されたブレーキ液圧は増大し、第1ブレーキ系110bに配設されるディスクブレーキ機構30c,30dに制動力が発生する。
つまり、第2液圧系統70aにリークが発生すると、モータシリンダ装置16が駆動してから、規制手段100が第1スレーブピストン88bに当接するまでの間、車両用ブレーキシステム10は制動力を発生できない状態になる。
したがって、第2液圧系統70aにリークが発生した場合もボールねじ軸80a(図1参照)の動作量に応じたブレーキ液圧がモータシリンダ装置16(図1参照)に発生せず、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作してから制動力が発生するまでタイムラグが生じてブレーキフィールが低下する。
そこで、図1に示す、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、第1液圧系統70bや第2液圧系統70aにブレーキ液のリークが発生したときのブレーキフィールの低下を軽減するように動作する。具体的に、制御手段150は、第1液圧系統70bにリークが発生したときには目標動作量制御を実行し、第2液圧系統70aにリークが発生したときには第1液圧系統70bにリークが発生していなければ液圧フィードバック制御を実行する構成とする。
そのため、制御手段150(リーク判定手段)は、第1液圧系統70bと第2液圧系統70aのどちらにリークが発生しているかを判定可能に構成される。
例えば、制御手段150は、図3の(a)に示す特性に基づいて、第1液圧系統70bと第2液圧系統70aのリークの発生を判定する。
圧力センサPp(図1参照)が配設される第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生すると、図3の(a)に実線で示すように、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量ACTstが増えても圧力センサPpの計測値(ブレーキ液圧)は増加しない。
一方、圧力センサPpが配設されない第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生すると、図3の(a)に破線で示すように、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量ACTstが所定の閾値(第1閾値SCth1)を超えた時点で圧力センサPpの計測値が増加する。これは、前記したように、第2液圧系統70aにリークが発生した場合、規制手段100(図1参照)が第1スレーブピストン88b(図1参照)に当接した後に第1液圧系統70bにブレーキ液が供給されて、第1液圧系統70bにおけるブレーキ液圧が上昇するためである。
つまり、図3の(a)に示す特性において、第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生したときに、圧力センサPp(図1参照)の計測値が増加を始める第1閾値SCth1は、ボールねじ軸80a(図1参照)が動作を始めてから、規制手段100(図1参照)が第1スレーブピストン88b(図1参照)に当接するまでのボールねじ軸80aの動作量ACTstに相当する。
よって、第1閾値SCth1は、第1スレーブピストン88bに当接するまでの規制手段100の移動距離に基づいた設計値として設定される。
さらに、制御手段150(図1参照)は、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量ACTstが、第1閾値SCth1より大きいときの圧力センサPp(図1参照)の計測値が、図3の(a)に斜線で示される領域(リーク判定領域Lk1)に入っているか否かによって、第1液圧系統70b(図1参照)または第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生しているか否かを判定する。
リーク判定領域Lk1は、例えば、第1液圧系統70bにリークが発生している場合でも、例えば誤差として生じる圧力センサPpの計測値の上限値(Pmax)よりも低い領域に設定される。このようなリーク判定領域Lk1は、車両用ブレーキシステム10(図1参照)の構成や圧力センサPpの精度によって設定される特性値であり、実験計測やシミュレーションによって予め設定される値とすればよい。
リーク判定領域Lk1は、例えば、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第1閾値SCth1以上で「1MPa」以下の領域のように設定される。
そして、制御手段150(図1参照)は、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量ACTstが第1閾値SCth1より大きいとき(ACTst>SCth1)の圧力センサPp(図1参照)の計測値が上限値Pmaxよりも小さいとき(リーク判定領域Lk1内のとき)、第1液圧系統70b(図1参照)または第2液圧系統70a(図1参照)の何れか一方にリークが発生していると判定する。
さらに、本実施形態の制御手段150(図1参照)は、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量ACTstが、第1閾値SCth1より大きく設定される第2閾値SCth2(SCth2>SCth1)よりも大きく(ACTst>SCth2)、かつ、圧力センサPp(図1参照)の計測値が上限値Pmaxよりも小さければ(リーク判定領域Lk1内であれば)、圧力センサPpが配設される第1液圧系統70bにリークが発生したと判定する。なお、制御手段150は、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第2閾値SCth2より大きい場合に圧力センサPpの計測値が上限値Pmax以上であれば(リーク判定領域外であれば)、圧力センサPpが配設されない第2液圧系統70aにリークが発生したと判定する。
制御手段150(図1参照)が、第2液圧系統70a(図1参照)のリークを判定する第2閾値SCth2は、第2液圧系統70aにリークが発生した状態での第1液圧系統70b(図1参照)におけるブレーキ液圧の上昇(圧力センサPpの計測値の上昇)に基づいて決定される値であって、実験計測やシミュレーションによって予め設定される値とすればよい。
図3の(b)を参照して、本実施形態の制御手段150(図1参照)が、第1液圧系統70b(図1参照)と第2液圧系統70a(図1参照)のリークを判定する手順(リーク判定手順)を説明する(適宜図1参照)。
なお、制御手段150は、例えば、ブレーキペダル12が踏み込み操作されたときにリーク判定手順を実行して、第1液圧系統70bと第2液圧系統70aのリークを判定する。
制御手段150はリーク判定手順を開始すると、ボールねじ軸80aの動作量ACTstと第1閾値SCth1を比較する(ステップS1)。そして、制御手段150は、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第1閾値SCth1以下であれば(ステップS1→No)、手順をステップS1に戻す。一方、制御手段150は、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第1閾値SCth1より大きければ(ステップS1→Yes)、手順をステップS2に進める。
制御手段150は、圧力センサPpが計測するブレーキ液圧の計測値が所定の上限値Pmaxより大きい場合(ステップS2→Yes)、つまり、ブレーキ液圧の計測値がリーク判定領域Lk1外の場合、第1液圧系統70b及び第2液圧系統70aにリーク無しと判定する(ステップS3)。
また、制御手段150は、圧力センサPpが計測する計測値が所定の上限値Pmax以下の場合(ステップS2→No)、つまり、ブレーキ液圧の計測値がリーク判定領域Lk1内の場合、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第2閾値SCth2より大きくなるまで待機する(ステップS4→No)。
制御手段150は、ボールねじ軸80aの動作量ACTstが第2閾値SCth2より大きくなったら(ステップS4→Yes)、圧力センサPpの計測値が所定の上限値Pmaxより大きいか否かを判定する(ステップS5)。
そして、制御手段150は、圧力センサPpの計測値が所定の上限値Pmaxより大きい場合(ステップS5→Yes)、つまり、ブレーキ液圧の計測値がリーク判定領域Lk1外の場合、第2液圧系統70aにリークが発生したと判定する(ステップS6)。一方、制御手段150は、圧力センサPpの計測値が所定の上限値Pmax以下の場合(ステップS5→No)、つまり、ブレーキ液圧の計測値がリーク判定領域Lk1内の場合、第1液圧系統70bにリークが発生したと判定する(ステップS7)。
以上のように、本実施形態の制御手段150はリーク判定手段として機能し、圧力センサPpが配設される第1液圧系統70b及び圧力センサPpが配設されない第2液圧系統70aにおけるリークの発生を判定する。
そして、制御手段150(図1参照)は、第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生していると判定したときには液圧フィードバック制御から目標動作量制御に切り替えてモータシリンダ装置16(図1参照)を制御する。また、制御手段150は、第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生していると判定した場合、第1液圧系統70bにリークが発生していないと判定したときには、目標動作量制御に切り替えることなく、液圧フィードバック制御を実行してモータシリンダ装置16を制御する。
また、図1に示す、本実施形態の制御手段150は、目標動作量制御を実行する場合、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にブレーキ液圧が急速に高まるようにモータシリンダ装置16を制御するように構成される。
このため、ブレーキペダル12の踏み込み前期時において、ブレーキ操作量の変化に対してボールねじ軸80aが急速に動作するように目標動作量が設定されることが好ましく、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、図4に示すような動作量設定マップMP1を備える。
本実施形態の動作量設定マップMP1は、図4に実線で示すように、ボールねじ軸80aの目標動作量が「0」から最大値(最大動作量StMax)の半分(StMax/2)の範囲では目標液圧の増大にともなって目標動作量が急速に増大し、目標動作量が最大動作量StMaxの半分を超えると目標液圧の増大に応じた目標動作量の変化が緩やかになるように設定されている。
以下、最大動作量StMaxの半分の動作量を特定動作量StHと称する。また、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量が特定動作量StHのときにモータシリンダ装置16(図1参照)に発生する、所定の中間液圧を特定液圧Pxと称する。なお、特定液圧Pxは、モータシリンダ装置16の設計値として決定される液圧である。
つまり、動作量設定マップMP1は、目標液圧が所定の中間液圧(特定液圧Px)より小さい範囲では、目標液圧が特定液圧Pxより大きい範囲よりも、目標液圧の変化に対する目標動作量の変化量が大きく設定されるという目標液圧と目標動作量の相関関係を有する。
本実施形態の車両用ブレーキシステム10(図1参照)は、このような、目標液圧と目標動作量の相関関係を有する動作量設定マップMP1に基づいて、目標液圧に対応するボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量が設定される。この構成によって、ブレーキペダル12(図1参照)の踏み込み前期(目標液圧が特定液圧Pxよりも小さい範囲)に、モータシリンダ装置16(図1参照)から出力されるブレーキ液圧を急速に高めることができる。したがって、第1液圧系統70b(図1参照)からブレーキ液が漏洩(リーク)している場合であっても、ブレーキペダル12の踏み込み前期時に、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(図1参照)に速やかにブレーキ液圧を供給できる。よって、車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に付与される制動力の遅れを軽減することができる。
また、動作量設定マップMP1は、目標液圧が特定液圧Pxよりも大きい範囲(ブレーキペダル12の踏み込み後期時)では、目標液圧の増大に応じた目標動作量の変化が緩やかになる。したがって、ブレーキペダル12の踏み込み後期時におけるボールねじ軸80aの過剰な動作が抑制される。これによって、第1スレーブピストン88b(図1参照)および第2スレーブピストン88a(図1参照)の過剰な変位が抑制され、車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に過剰な制動力が付与されることが抑制される。
図4に示す動作量設定マップMP1において、ボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量を特定動作量StHとする目標液圧(特定液圧Px)が小さすぎると(例えば、二点鎖線で示すPxs)、目標液圧が小さくても、リークするブレーキ液の量よりも多量のブレーキ液が第1液圧系統70b(図1参照)や第2液圧系統70a(図1参照)に供給され、車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に制動力が付与される。その後、ブレーキ液が第1液圧系統70bからリークしてホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(図1参照)に供給されるブレーキ液圧が減圧するため、車輪に付与される制動力が低下する。したがって、車両は、制動力が作用した状態の後に制動力が解消した状態になるため、挙動が不安定になる。そこで、ボールねじ軸80aの目標動作量が特定動作量StHとなる目標液圧(特定液圧Px)は、このような挙動の不安定を発生させない値に適宜設定されることが好ましい。
例えば、第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生したときの平均的なブレーキ液の漏洩量に基づいた実験計測またはシミュレーションによって、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作量が特定動作量StHのときに好適な制動力が車輪に付与されるように設定される特定液圧Pxとすればよい。
また、本実施形態において、目標液圧の変化に対する目標動作量の変化の傾斜が変わる特定動作量StHを最大動作量StMaxの半分(StMax/2)とした。
このような特定動作量StHが、最大動作量StMaxの半分より大きいと(例えば、一点鎖線で示すSta)、目標液圧が特定液圧Pxより大きい範囲で、目標液圧の変化に対する目標動作量の変化量が小さくなりすぎ、制御手段150(図1参照)は、目標液圧の変化に対応して精度よくボールねじ軸80aを制御できなくなる。
一方、特定動作量StHが最大動作量StMaxの半分より小さいと(例えば、一点鎖線で示すStb)、ブレーキペダル12(図1参照)の踏み込み前期(目標液圧が特定液圧Pxより小さい範囲)においてブレーキ液圧を急速に高める効果が小さくなり、車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に付与される制動力の遅れを軽減する効果が小さくなる。
よって、本実施形態の動作量設定マップMP1は、目標液圧の変化に対する目標動作量の変化の傾斜が変わる特定動作量StHを、最大動作量StMaxの半分(StMax/2)とすることが好適であるとした。
以上のように、本実施形態の制御手段150(図1参照)は、第1液圧系統70b(図1参照)にブレーキ液のリークが発生していると判定したとき、予め設定される動作量設定マップMP1(図4参照)を参照して、目標液圧に対する、ボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量を決定する。そして、制御手段150は、決定した目標動作量に基づいて、モータシリンダ装置16(図1参照)を制御(目標動作量制御)する。
さらに、動作量設定マップMP1は、ボールねじ軸80aの最大動作量StMaxの半分である特定動作量StHよりも小さい動作量が目標動作量となる目標液圧の範囲(ブレーキペダル12の踏み込み前期時)では、特定動作量StHよりも大きい動作量が目標動作量となる目標液圧の範囲(ブレーキペダル12の踏み込み後期時)よりも目標液圧の変化に対する目標動作量の変化量が大きくなるように設定されている。
これによって、第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生している場合であっても、ブレーキペダル12(図1参照)の踏み込み前期時で、モータシリンダ装置16(図1参照)から出力されるブレーキ液圧が急速に高まり、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(図1参照)に速やかにブレーキ液圧が供給される。したがって、車輪(右側前輪WFR,左側後輪WRL,右側後輪WRR,左側前輪WFL)に付与される制動力の遅れが軽減される。つまり、ブレーキ液がリークして制動力の発生にタイムラグが発生する状態のときでも、制御手段150は、高いブレーキ液圧を速やかにVSA装置18に供給することによって車輪に速やかに制動力を付与することができる。
一方、制御手段150(図1参照)は、第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生していると判定した場合でも第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生していないと判定した場合には、圧力センサPpから入力される計測信号で演算するブレーキ液圧に基づいてモータシリンダ装置16を制御(液圧フィードバック制御)する。
この構成によって、制御手段150(図1参照)は、車両用ブレーキシステム10(図1参照)にブレーキ液のリークが発生している場合であっても、圧力センサPp(図1参照)が配設されている第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生していないと判定した場合には、圧力センサPpの計測値に基づいてモータシリンダ装置16(図1参照)を液圧フィードバック制御できる。したがって、制御手段150は、モータシリンダ装置16で発生するブレーキ液圧に、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作に対する誤差が生じても、その誤差の影響を受けることなく、ブレーキ操作量に応じた目標液圧と等しいブレーキ液圧をモータシリンダ装置16に発生できる。このことによって、制御手段150は、車両に好適な制動力を精度よく作用させることができる。
また、圧力センサPp(図1参照)が配設されている第1液圧系統70b(図1参照)にリークが発生していると判定した場合、制御手段150(図1参照)は、ブレーキ操作量に応じたボールねじ軸80a(図1参照)の動作量をフィードバックする目標動作量制御によって、モータシリンダ装置16(図1参照)を好適に制御できる。また、制御手段150は、目標動作量制御の実行時に、ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL(図1参照)に供給されるブレーキ液圧をブレーキペダル12の踏み込み前期時に急速に高めるようにモータシリンダ装置16を制御する。したがって、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作してから制動力が発生するまでのタイムラグが小さくなってブレーキフィールの低下が軽減される。
このように、本実施形態の車両用ブレーキシステム10(図1参照)は、独立した第1液圧系統70b(図1参照)と第2液圧系統70a(図1参照)の一方(本実施形態では、第1液圧系統70b)に圧力センサPp(図1参照)が配設される構成とした。この構成によって、圧力センサPpの数を減らすことができ、安価な車両用ブレーキシステム10とすることができる。
さらに、第2液圧系統70aにリークが発生しても、第1液圧系統70bにリークが発生していなければ、圧力センサPpから制御手段150(図1参照)にフィードバックされるブレーキ液圧の計測値に基づいた液圧フィードバック制御で、モータシリンダ装置16(図1参照)が制御される。したがって、モータシリンダ装置16で発生するブレーキ液圧に、ボールねじ軸80a(図1参照)の動作に対する誤差が生じても、その誤差の影響を受けることなく、ブレーキ操作量に応じた正確なブレーキ液圧が発生する車両用ブレーキシステム10とすることができる。したがって、本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、ブレーキ液のリークが発生した場合であっても、ブレーキ作動部(ホィールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)に供給されるブレーキ液圧の精度の低下が軽減される。
なお、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、本実施形態では、制御手段150(図1参照)は、図4に示す動作量設定マップMP1を参照して目標液圧に対するボールねじ軸80a(図1参照)の目標動作量を決定する構成とした。この構成に替えて、制御手段150が、目標液圧と目標動作量の関係を示す関数を利用して、目標液圧に対する、ボールねじ軸80aの目標動作量を決定する構成としてもよい。
この場合の関数は、例えば、図4に示す動作量設定マップMP1を関数化したものであり、目標液圧が特定液圧Pxより小さい範囲では、目標液圧が特定液圧Pxより大きい範囲よりも目標液圧の変化に対する目標動作量の変化量が大きい関数とすればよい。
また、本実施形態では、圧力センサPp(図1参照)が配設される第1液圧系統70b(図1参照)にブレーキ液のリークが発生したときのみ、制御手段150(図1参照)が、液圧フィードバック制御から目標動作量制御に切り替えてモータシリンダ装置16(図1参照)を制御する構成とした。この構成に限定されず、例えば、第2液圧系統70a(図1参照)にリークが発生したときに、制御手段150が、液圧フィードバック制御から目標動作量制御に切り替えてモータシリンダ装置16を制御する構成としてもよい。また、第1液圧系統70bと第2液圧系統70aの両方にリークが発生したときに、制御手段150が液圧フィードバック制御から目標動作量制御に切り替えてモータシリンダ装置16を制御する構成であってもよい。