以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用灯具について詳細に説明する。なお、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは車両用灯具が車両に装着されたときの姿勢における方向を意味する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10の概略水平断面図である。また、図2は、図1に示す車両用灯具10のA−A断面図である。図1に示す車両用灯具10は、車両前部の左右に1灯ずつ配置される前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両左側に配置される車両用灯具の構造を説明する。
図1および図2に示すように、車両用灯具10は、ランプボディ12と、ランプボディ12の前面開口部を覆う透明なアウターカバー13とを備える。ランプボディ12とアウターカバー13は、灯室14を形成している。図1に示すように、アウターカバー13は、車両のスラントノーズ形状に倣った形状とされ、車両内側から外側にかけて車両後方に傾斜している。ランプボディ12は、スラントしたアウターカバー13の形状に倣い、車両内側から外側にかけて車両後方に向かって階段状に形成されている。従って、ランプボディ12とアウターカバー13とにより形成される灯室14は、車両内側から外側にかけて車両後方に傾斜した空間とされている。
灯室14内には、ハイビーム用基板15aと、ロービーム用基板15bと、ハイビーム用リフレクタユニット16と、ロービーム用リフレクタユニット17とが収容されている。
ハイビーム用基板15aおよびロービーム用基板15bは、基材と呼ばれる板の表面に銅箔の回路パターンを形成したプリント基板である。ハイビーム用基板15aとロービーム用基板15bは、灯室14内の上方に並んで配置されている。ハイビーム用基板15aは車両内側に配置され、ロービーム用基板15bは車両外側に配置されている。図1に示すように、ハイビーム用基板15aおよびロービーム用基板15bは、スラントしたアウターカバー13の形状に倣い、車両内側から外側にかけて車両後方に傾斜するように構成されている。
ハイビーム用基板15aには、3個のLED(第1LED18a〜第3LED18c)が、発光面が下方を向くようにして搭載されている。これら3個のLEDは、表面実装型LEDであり、裏面にアノード電極とカソード電極とを備える。第1LED18a〜第3LED18cは、ハイビーム用基板15aから電流の供給を受けて発光する。第1LED18a〜第3LED18cは、ハイビームの照射に用いられるLEDであり、ハイビーム用基板15aの車幅方向に沿って設けられている。これら3つのLEDの中では、第1LED18aが最も車両内側に設けられ、第1LED18aの外側に第2LED18bが設けられ、第2LED18bの外側に第3LED18cが設けられている。
ロービーム用基板15bにも、3個のLED(第4LED18d〜第6LED18f)が、発光面が下方を向くようにして搭載されている。これら3個のLEDは、表面実装型LEDであり、裏面にアノード電極とカソード電極とを備える。第4LED18d〜第6LED18fは、ロービーム用基板15bから電流の供給を受けて発光する。第4LED18d〜第6LED18fは、ロービームの照射に用いられるLEDであり、ロービーム用基板15bの車幅方向に沿って設けられている。これら3つのLEDの中では、第4LED18dが最も車両内側に設けられ、第4LED18dの外側に第5LED18eが設けられ、第5LED18eの外側に第6LED18fが設けられている。
ハイビーム用リフレクタユニット16およびロービーム用リフレクタユニット17は、灯室14内のハイビーム用基板15aおよびロービーム用基板15bより下方に並んで配置されている。ハイビーム用リフレクタユニット16は車両内側に配置され、ロービーム用リフレクタユニット17は車両外側に配置されている。
ハイビーム用リフレクタユニット16は、ハイビームの照射に用いられるリフレクタ群であり、ハイビーム拡散用リフレクタ16aと、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bと、第2ハイビーム集光用リフレクタ16cの3つのパラボラ型のリフレクタから構成される。これら3つのリフレクタは、一体的に形成されている。これら3つのリフレクタの中では、ハイビーム拡散用リフレクタ16aが最も車両内側に設けられ、ハイビーム拡散用リフレクタ16aの外側に第1ハイビーム集光用リフレクタ16bが設けられ、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bの外側に第2ハイビーム集光用リフレクタ16cが設けられている。
ハイビーム拡散用リフレクタ16a、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bおよび第2ハイビーム集光用リフレクタ16cは、それぞれ、回転放物面を基準に形成された反射面19a〜19cを有する。各回転放物面の回転中心軸は、各リフレクタの光軸となる。すなわち、ハイビーム拡散用リフレクタ16aは第1光軸Ax1を有し、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bは第2光軸Ax2を有し、第2ハイビーム集光用リフレクタ16cは第3光軸Ax3を有する。ハイビーム拡散用リフレクタ16a、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bおよび第2ハイビーム集光用リフレクタ16cは、第1光軸Ax1、第2光軸Ax2および第3光軸Ax3が車両前後方向(水平方向)を向くように配置される。
ハイビーム拡散用リフレクタ16aの反射面19aの焦点位置(第1光軸Ax1上に位置する)には、第1LED18aが配置されている(図2参照)。第1ハイビーム集光用リフレクタ16bの反射面19bの焦点位置(第2光軸Ax2上に位置する)には、第2LED18bが配置されている。第2ハイビーム集光用リフレクタ16cの焦点位置(第3光軸Ax3上に位置する)には、第3LED18cが配置されている。各リフレクタは、各LEDからの光を光軸と平行な方向に反射する。
ロービーム用リフレクタユニット17は、ロービームの照射に用いられるリフレクタ群であり、ロービーム拡散用リフレクタ17aと、第1ロービーム集光用リフレクタ17bと、第2ロービーム集光用リフレクタ17cの3つのパラボラ型のリフレクタから構成される。これら3つのリフレクタは、一体的に形成されている。これら3つのリフレクタの中では、ロービーム拡散用リフレクタ17aが最も車両内側に設けられ、ロービーム拡散用リフレクタ17aの外側に第1ロービーム集光用リフレクタ17bが設けられ、第1ロービーム集光用リフレクタ17bの外側に第2ロービーム集光用リフレクタ17cが設けられている。
ロービーム拡散用リフレクタ17a、第1ロービーム集光用リフレクタ17bおよび第2ロービーム集光用リフレクタ17cは、それぞれ、回転放物面を基準に形成された反射面20a〜20cを有する。各回転放物面の回転中心軸は、各リフレクタの光軸となる。すなわち、ロービーム拡散用リフレクタ17aは第4光軸Ax4を有し、第1ロービーム集光用リフレクタ17bは第5光軸Ax5を有し、第2ロービーム集光用リフレクタ17cは第6光軸Ax6を有する。ロービーム拡散用リフレクタ17a、第1ロービーム集光用リフレクタ17bおよび第2ロービーム集光用リフレクタ17cは、第4光軸Ax4、第5光軸Ax5および第6光軸Ax6が車両前後方向(水平方向)を向くように配置される。
ロービーム拡散用リフレクタ17aの反射面20aの焦点位置(第4光軸Ax4上に位置する)には、第4LED18dが配置されている。第1ロービーム集光用リフレクタ17bの反射面20bの焦点位置(第5光軸Ax5上に位置する)には、第5LED18eが配置されている。第2ロービーム集光用リフレクタ17cの焦点位置(第6光軸Ax6上に位置する)には、第6LED18fが配置されている。各リフレクタは、各LEDからの光を光軸と平行な方向に反射する。
ハイビーム用リフレクタユニット16およびロービーム用リフレクタユニット17は、樹脂成形された基材の内面にアルミ蒸着を施すことにより形成される。
本実施形態において、ハイビーム用リフレクタユニット16および第1LED18a〜第3LED18cは、ハイビームを照射するハイビーム灯具ユニットを構成している。図3は、ハイビーム灯具ユニットにより形成されるハイビーム配光パターン30を示す。図3に示すハイビーム配光パターン30は、車両用灯具10の前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンである。図3には、灯具正面方向の消点であるH−V点を通る鉛直線V−Vと、H−V点を通る水平線H−Hとが図示されている。
第2LED18bから出射された後、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bの反射面19bで反射した光と、第3LED18cから出射された後、第2ハイビーム集光用リフレクタ16cの反射面19cで反射した光とにより、H−V点周辺にハイビーム集光配光パターン31が形成される。ハイビーム集光配光パターン31は、「ホットゾーン」と呼ばれる高光度領域である。また、第1LED18aから出射された後、ハイビーム拡散用リフレクタ16aの反射面19aで反射した光により、ハイビーム集光配光パターン31を覆うようにハイビーム拡散配光パターン32が形成される。ハイビーム拡散配光パターン32は、水平線H−H方向および鉛直線V−V方向の両方において、ハイビーム集光配光パターン31よりも広い。ハイビーム集光配光パターン31は、例えば水平線H−H方法に±10°〜15°程度、鉛直線V−V方向に±3°〜5°程度の領域であってよい。ハイビーム拡散配光パターン32は、例えば水平線H−H方法に±25°〜35°程度、鉛直線V−V方向に±8°〜10°程度の領域であってよい。ハイビーム集光配光パターン31とハイビーム拡散配光パターン32とが重畳されることにより、ハイビーム配光パターン30が形成される。
また、ロービーム用リフレクタユニット17および第4LED18d〜第6LED18fは、ロービームを照射するロービーム灯具ユニットを構成している。図4は、ロービーム灯具ユニットにより形成されるロービーム配光パターン40を示す。ロービーム配光パターンは、所定形状のカットオフラインを有する配光パターンである。
第5LED18eから出射された後、第1ロービーム集光用リフレクタ17bの反射面20bで反射した光と、第6LED18fから出射された後、第2ロービーム集光用リフレクタ17cの反射面20cで反射した光とにより、H−V点周辺にロービーム集光配光パターン41が形成される。ロービーム集光配光パターン41は、「ホットゾーン」と呼ばれる高光度領域であり、所定形状のカットオフラインCLを有する。また、第4LED18dから出射された後、ロービーム拡散用リフレクタ17aの反射面20aで反射した光により、ロービーム集光配光パターン41を覆うようにロービーム拡散配光パターン42が形成される。ロービーム拡散配光パターン42は、水平線H−H方向および鉛直線V−V方向の両方において、ロービーム集光配光パターン41よりも広い。ロービーム集光配光パターン41は、例えば水平線H−H方法に±10°〜15°程度、鉛直線V−V方向に0°〜−5°程度の領域であってよい。ロービーム拡散配光パターン42は、例えば水平線H−H方法に±25°〜45°程度、鉛直線V−V方向に0°〜−10°程度の領域であってよい。ロービーム集光配光パターン41とロービーム拡散配光パターン42とが重畳されることにより、ロービーム配光パターン40が形成される。
図5は、ハイビーム用基板15aの部品実装面50を示す図である。図6は、ハイビーム用基板15aとハイビーム用リフレクタユニット16の組み付け構造を説明するための図である。図5に示す部品実装面50は、図6に示すように車両取付時において下方を向いている。
ハイビーム用基板15aの部品実装面50上には、第1LED18a、第2LED18bおよび第3LED18cをそれぞれ搭載するための第1LED取付部51a、第2LED取付部51bおよび第3LED取付部51cが、基板の車幅方向に沿って形成されている。各LED取付部は、各LEDの電極をハンダ付けするためのランドを備える。LED取付部の構造については後述する。
図6に示すように、ハイビーム用リフレクタユニット16は、ハイビーム用基板15aの部品実装面50上に搭載される。本実施形態では、ハイビーム用リフレクタユニット16をハイビーム用基板15aの部品実装面50上に位置決めするために、ハイビーム用リフレクタユニット16は、第1位置決めピン52と、第2位置決めピン53とを備える。また、ハイビーム用基板15aは、第1位置決めピン52が挿入される第1位置決め穴54と、第2位置決めピン53が挿入される第2位置決め穴55とを有する。
第1位置決めピン52は、ハイビーム拡散用リフレクタ16aと第1ハイビーム集光用リフレクタ16bとを連結する第1連結部56から突出している。第2位置決めピン53は、第1ハイビーム集光用リフレクタ16bと第2ハイビーム集光用リフレクタ16cとを連結する第2連結部57から突出している。第1位置決めピン52および第2位置決めピン53は、円柱状のピンであってよい。第1位置決めピン52および第2位置決めピン53の寸法は同じであってよい。第1位置決めピン52および第2位置決めピン53は、ハイビーム用基板15aの厚さ以上の高さを有するように形成されてよい。
図5および図6に示すように、第1位置決め穴54は、ハイビーム用基板15aの一方の車幅方向端部側(車両内側)に位置する第1LED取付部51aよりも基板内側に形成され、第2位置決め穴55は、ハイビーム用基板15aの他方の車幅方向端部側(車両外側)に位置する第3LED取付部51cよりも基板内側に形成されている。より詳細には、第1位置決め穴54は、第1LED取付部51aとその隣に位置する第2LED取付部51bとの間に形成され、第2位置決め穴55は、第3LED取付部51cとその隣に位置する第2LED取付部51bとの間に形成されている。
本実施形態において、第1位置決め穴54は、基板の車幅方向に延びる長穴に形成される。第1位置決め穴54に挿入される第1位置決めピン52が円柱形状を有する場合、第1位置決め穴54は、高さ方向に垂直な断面において、車幅方向の内径が第1位置決めピン52の直径よりも大きく、且つ車両前後方向の内径が第1位置決めピン52の直径と略同一の長穴に形成される。一方、第2位置決め穴55は、高さ方向に垂直な断面において、該穴に挿入される第2位置決めピン53と略同一の形状および大きさに形成される。第2位置決めピン53が円柱形状を有する場合、第2位置決め穴55は第2位置決めピン53の直径と同じ内径を有する円柱状の穴に形成される。本実施形態のように、2つの位置決め穴の一方を長穴とすることで、ハイビーム用リフレクタユニット16の寸法公差を許容できる。
ハイビーム用リフレクタユニット16をハイビーム用基板15aに組み付ける場合、図6に示すように、ハイビーム用リフレクタユニット16の第1位置決めピン52および第2位置決めピン53を、それぞれハイビーム用基板15aの第1位置決め穴54および第2位置決め穴55に挿入する。その後、部品実装面50と対向する裏面58側に突出した第1位置決めピン52および第2位置決めピン53の部分を熱カシメすることにより、ハイビーム用リフレクタユニット16がハイビーム用基板15aに固定される。なお、本実施形態では、第1位置決めピン52および第2位置決めピン53は、ハイビーム用基板15aに対するハイビーム用リフレクタユニット16の位置決めと固定の両方の役割を兼ねている。しかしながら、第1位置決めピン52および第2位置決めピン53は位置決めのみ行うこととし、固定は別の部材により行ってもよい。例えば、ハイビーム用基板15aおよびハイビーム用リフレクタユニット16にネジ固定用の穴を設け、ネジを用いてハイビーム用リフレクタユニット16をハイビーム用基板15aに固定してもよい。
上述の実施形態では、第2位置決めピン53と略同一の形状および大きさに形成される第2位置決め穴55は、図5および図6に示すように、拡散用の第1LED18aが実装される第1LED取付部51aよりも、集光用の第2LED18bおよび第3LED18cが実装される第2LED取付部51bおよび第3LED取付部51cに近い位置に形成されている。これは、拡散用の第1LED18aよりも、集光用の第2LED18bおよび第3LED18cの方がより高い位置精度を必要とするためである。このような構成とすることで、車両用灯具10の配光性能を向上できる。
以上の説明では、主にハイビーム用基板15aおよびハイビーム用リフレクタユニット16の組み付け構造について述べたが、ロービーム用基板15bおよびロービーム用リフレクタユニット17の組み付け構造についても同様である。
次に、本実施形態に係る車両用灯具10におけるLEDの取付構造について説明する。図7は、プリント基板15の部品実装面50と、LED18の裏面70を示す。図8は、プリント基板15とLED18の断面構造を示す。
図7および図8に示すLED18は、表面実装型LEDである。LED18の裏面70には、アノード電極72と、第1カソード電極73と、第2カソード電極74の3個の電極が形成されている。アノード電極72は裏面70のX方向の左端に配置されており、第1カソード電極73は裏面70のX方向の中央に配置されており、第2カソード電極74は裏面70のX方向の右端に配置されている。本実施形態において第1カソード電極73と第2カソード電極74は、別々の電極として構成されているが、LED内部において導通している。アノード電極72、第1カソード電極73および第2カソード電極74は、平面視において長方形状に形成されている。
プリント基板15の部品実装面50には、LED18を搭載するためのLED取付部51が形成されている。LED取付部51は、アノード電極用ランド75と、第1カソード電極用ランド76と、第2カソード電極用ランド77の3個のランドを備える。第1カソード電極用ランド76は、LED取付部51のX方向の左端に配置されており、LED18のアノード電極72とハンダ接続される。第1カソード電極用ランド76は、LED取付部51のX方向の中央に配置されており、LED18の第1カソード電極73とハンダ接続される。第2カソード電極用ランド77は、LED取付部51のX方向の右端に配置されており、LED18の第2カソード電極74とハンダ接続される。
LED取付部51のランドは、ガラス布エポキシなどの基材78上に、導体パターン79,80,81と、ソルダレジスト82とを設けることで形成されている。本実施形態において、ランドの形状は、2種類の方法により規定される。1つは導体パターン上にソルダレジストを印刷してランド形状を規定する方法であり、もう1つは導体パターンのエッチング面をむき出しにすることによりランド形状を規定する方法である。
図7および図8を参照して具体的に説明すると、第2カソード電極用ランド77は、基材78上に形成された導体パターン81の全周をソルダレジスト82aで覆うことで、ランド形状が規定されている。導体パターン81の全側面、すなわち、導体パターン81のY方向の両側面、X方向の左側面81aおよびX方向の右側面81bは、ソルダレジスト82aで覆われている。以下において、ソルダレジストで覆われた導体パターンの側面を「レジスト側面」と呼ぶ。第2カソード電極用ランド77では、レジスト側面で囲まれた領域の形状がランド形状となる。
一方、アノード電極用ランド75では、導体パターン79の一部の側面は、ソルダレジストで覆われていない。すなわち、導体パターン79のY方向の両側面とX方向の左側面79aはソルダレジスト82bで覆われているが、X方向の右側面79bはソルダレジストで覆われておらず、エッチングで形成された導体パターン79の右側面79bがむき出しになっている。以下において、ソルダレジストで覆われていない導体パターンの側面を「非レジスト側面」と呼ぶ。アノード電極用ランド75では、レジスト側面と非レジスト側面で囲まれた領域の形状がランド形状となる。
同様に、ソルダレジスト82でも、導体パターン80の一部の側面は、ソルダレジストで覆われていない。すなわち、導体パターン80のY方向の両側面とX方向の右側面80aはソルダレジスト82cで覆われているが、X方向の左側面80bはソルダレジストで覆われておらず、エッチングで形成された導体パターン80の左側面80bがむき出しになっている。第1カソード電極用ランド76でも、レジスト側面と非レジスト側面で囲まれた領域の形状がランド形状となる。
本実施形態において、LED取付部51は上記のように3つのランドを有するが、これらのうち隣接するアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76は、非レジスト側面同士が対向するように形成されている。すなわち、アノード電極用ランド75の非レジスト側面である右側面79bと、第1カソード電極用ランド76の非レジスト側面である左側面80bが対向している。
隣接するアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76との間の基材78上には、ソルダレジスト領域82dが形成されている。このソルダレジスト領域82dは、アノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76との間でハンダが互いに流れ込むのを防ぐために設けられる。
本実施形態において、アノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76は、ハンダ付けされる電極と同一形状に形成される。すなわち、アノード電極用ランド75および第1カソード電極用ランド76は、それぞれ、アノード電極72および第1カソード電極73と同じ長方形状に形成される。なお本実施形態では、第2カソード電極用ランド77も、ハンダ付けされる第2カソード電極74と同じ長方形状に形成されているが、これは特に限定されない。
また本実施形態において、アノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76は、ハンダ付けされる電極の大きさ以下に形成される。すなわち、アノード電極用ランド75のX方向幅LX1、Y方向幅LY1は、アノード電極72のX方向幅EX1、Y方向幅EY1以下に形成される。また、第1カソード電極用ランド76のX方向幅LX2、Y方向幅LY2は、第1カソード電極73のX方向幅EX2、Y方向幅EY2以下に形成される。なお、本実施形態では第2カソード電極用ランド77もハンダ付けされる第2カソード電極74の大きさ以下に形成されているが、これは特に限定されない。
さらに本実施形態において、各ランドは、基材78上に形成されるソルダレジスト82よりも厚く形成される。各ランドの厚さTLは、基材78上に形成されるソルダレジスト82の厚さTRの2倍以上且つ6倍以下であることが好ましい。例えば、ソルダレジスト厚TRが20μmである場合、ランド厚TLは40μm〜120μmであることが好ましい。
図9は、LED18をプリント基板15のランドにハンダ付けしている様子を示す。図9に示すように、アノード電極72とアノード電極用ランド75との間にはハンダ90が設けられており、第1カソード電極73と第1カソード電極用ランド76との間にはハンダ91が設けられており、第2カソード電極74と第2カソード電極用ランド77との間にはハンダ92が設けられている。図9において、ハンダ90,91,92は溶融中であるとする。
ハンダ溶融中には、ハンダの張力が発生するが、これが搭載されるLED18を動かす力となる。図9には、ハンダ90の右側部分によりLED18に働くハンダ張力F1と、ハンダ91の左側部分によりLED18に働くハンダ張力F2と、ハンダ91の右側部分によりLED18に働くハンダ張力F3と、ハンダ92の左側部分によりLED18に働くハンダ張力F4を示す。ハンダ張力F1〜F4は、X方向に働く力である。図9に示すように、ハンダ張力F1とF2は互い違いの方向に均等に働く。また、ハンダ張力F3とF4は互い違いの方向に均等に働く。
図9に示すように、アノード電極72の右側面79bと第1カソード電極73の左側面80bは非レジスト面であるので、側面にまでハンダが回り込んでいる。一方、第1カソード電極用ランド76の右側面80aと第2カソード電極用ランド77の左側面81aはレジスト面であるので、側面にハンダは回り込んでいない。また本実施形態では、各ランドは、基材78上に形成されるソルダレジスト82よりも厚く形成されている。そのため、ハンダ90の右側部分とハンダ91の左側部分の単位面積当たりのハンダ量は、ハンダ91の右側部分とハンダ92の左側部分の単位面積当たりのハンダ量よりも多くなっている。その結果、ハンダ張力F1とF2は、ハンダ張力F3とF4よりも大きくなる。ハンダ張力F3とF4よりもハンダ張力F1とF2の方がLED18を動かす力が強いということであるので、LED18を移動させる力は、ハンダ張力F3およびF4よりも、ハンダ張力F1およびF2が支配的になる。
図10(a)および(b)は、ハンダ張力によるLED18のX方向の動きを説明するための図である。
図10(a)は、アノード電極用ランド75、第1カソード電極用ランド76の大きさが、ハンダ付けされるアノード電極72、第1カソード電極73の大きさと同等に形成されている場合のLED18のX方向の動き方を示す。この場合、図10(a)に示すように、ハンダ張力F1およびF2により、アノード電極72の右側面72aとアノード電極用ランド75の右側面79bが重なり合い且つ第1カソード電極73の左側面73aと第1カソード電極用ランド76の左側面80bとが重なり合うようにLED18がX方向に動く。
図10(b)は、アノード電極用ランド75、第1カソード電極用ランド76の大きさが、ハンダ付けされるアノード電極72、第1カソード電極73の大きさよりも小さく形成されている場合のLED18のX方向の動き方を示す。この場合、図10(b)に示すように、ハンダ張力F1およびF2により、対向するアノード電極72の右側面72aと第1カソード電極73の左側面73aとの中心C1と、対向するアノード電極用ランド75の右側面79bと第1カソード電極用ランド76の左側面80bとの中心C2とが釣り合うように、LED18がX方向に動く。このように、図10(a)と図10(b)のいずれの場合も、プリント基板15に対してLED18が所定のX方向の位置に位置決めされる。
このように、本実施形態によれば、非レジスト面が対向するようにアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76を形成したことにより、これらのランドに設けられるハンダによる張力が、LED18の移動に関して支配的になる。また、非レジスト面が対向するアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76の形状をハンダ付けされるアノード電極72および第1カソード電極73の形状と同一とし、アノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76の大きさをアノード電極72および第1カソード電極73の大きさ以下としたことにより、プリント基板15のランドに対してLED18が所定のX方向の位置に位置決めされるので、プリント基板15の設計通りのX方向の位置にLED18を実装できる。
上記ではLED18のX方向の実装精度向上について説明したが、本実施形態によればY方向の実装精度も向上する。上記のように本実施形態では、アノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76の形状をハンダ付けされるアノード電極72および第1カソード電極73の形状と同一としているので、Y方向の両端においてランドの側面と電極の側面は平行となる。これにより、ランドのY方向の中点に電極のY方向の中点が一致する方向にハンダ張力が働くので、LED18のY方向の実装精度も向上できる。すなわち、本実施形態によれば、X方向およびY方向の実装精度を向上できる。
図7〜図10で説明したLEDの取付構造を図1に示す車両用灯具10に適用することで、LEDとリフレクタを設計通りの位置関係に搭載できるので、配光パターンの位置ずれを防止あるいは少なくとも抑制できる。
図1に示す車両用灯具10のように、複数のリフレクタが一体に形成されていたり、複数のLEDが共通の一枚の基板に実装されている場合、各リフレクタの姿勢を調整して各リフレクタから出射される光線の方向を理想的な方向に設定することは難しい。一部または全部のLEDの取付位置が所定の位置からずれると、特に高光度とすべき配光パターンのH−V点周辺が暗くなるので、遠方視認性が低下するおそれがある。また、ロービーム用灯具ユニットにおいては、LEDの取付位置のずれは、カットオフラインの形状の変形を引き起こし、その結果、自車の運転者に違和感を与えたり、対向車の運転者に眩しさを与えるおそれがある。その点、図7〜図10で説明したLEDの取付構造を採用した車両用灯具10によれば、配光パターンの位置ずれを抑制できるので、これらの不具合を防止できる。
上述の実施形態では、隣接するアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76をハンダ付けされる電極と同一形状に形成したが、隣接する2つのランドのうち少なくとも一方の形状がハンダ付けされる電極と同一形状であればよい。また、上述の実施形態では、隣接するアノード電極用ランド75と第1カソード電極用ランド76をハンダ付けされる電極の大きさ以下に形成したが、隣接する2つのランドのうち少なくとも一方の大きさがハンダ付けされる電極の大きさ以下であればよい。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば上述の実施形態では、プリント基板上に表面実装する電子部品として表面実装型LEDを例示したが、本発明にの実施形態に係るプリント基板は、表面実装型LEDに限定されず、任意の表面実装型電子部品に対して適用できる。
また、上述の実施形態では、LEDからの光を前方に照射する光学部材としてリフレクタを例示したが、これはリフレクタに限定されず、例えば投影レンズであってもよい。