JP2015038167A - シアネートエステル樹脂組成物 - Google Patents

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【課題】従来は、25℃で液状でありかつ溶剤を含まない一液型の硬化性シアネートエステル樹脂組成物は、低粘度のまま保存安定性を維持すると共に、200℃以下での反応性を開始することが困難であった。物理特性を維持した状態で、低粘度のまま保存安定性を維持すると共に、200℃以下の反応開始温度を有する液型シアネートエステル樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)成分と(B)成分を含み、25℃で液状でありかつ溶剤を含まない一液型硬化性樹脂組成物。(A)成分:シアネートエステル樹脂(B)成分:特定のメタロセンおよびその誘導体【選択図】図1

Description

本発明は、保存安定性(潜在性)を有すると共に、200℃以下で反応が開始する加熱硬化性を有する一液型シアネートエステル樹脂組成物に関するものである。
シアネートエステル樹脂は耐熱性があり、電子基板等に以前から使用されていた。しかしながら、当該用途に使用されるシアネートエステル樹脂は室温において固形であり、射出成形や含浸等で使用されているため、シアネートエステル樹脂組成物としては200℃以下で反応が開始する必要も無く、200℃以上の高温で硬化を行っていた。また、25℃で液状であることや、粘度変化しないという保存安定性は全く必要ではなかった。従来、ナフテン酸亜鉛等の金属触媒やフェノール樹脂も硬化触媒として知られているが、組成物にした場合に、−20℃に冷凍保管しても増粘を防ぐことができない。
特許文献1の表2には、チタノセンに分類されるチタノセンジクロライドが記載されており、金属触媒の添加の有無に関してDSC測定により比較がなされている。しかしながら、金属触媒が無添加の組成物と比較して、金属触媒を添加した組成物においてピークが低温側にシフトすることは従来から知られている事実である。また、特許文献1に記載されているポリアルキレングリコールの水酸基はシアネートエステル基と反応しないと推測され、当該ポリアルキレングリコールは可塑剤になっており、特許文献1の発明はガラス転移点の低下などの物理特性の悪化があると考えられる。
特許文献2には、チタノセンに分類される特定構造の金属触媒開示されている。しかしながら、チタノセンにおける配位子の種類による検証がなされている。しかしながら、特許文献2の発明は実質的に溶剤を含み、組成物そのものの保存安定性や反応性について検証がなされていない。
特表平11−501077号公報 特開平9−157391号公報
従来は、25℃で液状でありかつ溶剤を含まない一液型の硬化性シアネートエステル樹脂組成物は、低粘度のまま保存安定性を維持すると共に、200℃以下での反応性を開始することが困難であった。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、潜在性および保存安定性を有するシアネートエステル樹脂組成物に関する発明を完成するに至った。
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、下記の(A)成分と(B)成分を含み、25℃で液状でありかつ溶剤を含まない一液型硬化性樹脂組成物である。
(A)成分:シアネートエステル樹脂
(B)成分:化学式2のメタロセンおよびその誘導体
本発明の第二の実施態様は、エポキシ樹脂を含まない第一の実施態様に記載の硬化性樹脂組成物である。
本発明の第三の実施態様は、(B)成分以外に硬化剤または硬化触媒を含まない第一又は第二の実施態様のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物である。
本発明の第四の実施態様は、(A)成分に、ビスフェノールE型の骨格を有するシアネートエステル樹脂である第一から第四の実施態様のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物である。
本発明の第五の実施態様は、第一から第四の実施態様のいずれかに記載される硬化性樹脂組成物からなる接着剤である。
本発明の一液型シアネートエステル樹脂組成物は、物理特性を維持した状態で、低粘度のまま保存安定性を維持すると共に、200℃以下の反応開始温度を有する。
図1は、実施例1、2および比較例1〜5のDSC測定の結果である。
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、シアネートエステル樹脂である。25℃において液状であれば使用でき、また、再結晶し難いものであれば使用することができる。25℃で固形のシアネートエステル樹脂は、溶剤等で溶解させる必要があり、取扱性で劣ると共に、被着体を貼り合わせる方法では溶剤が揮発できないため内部に溶剤が残留するため適さない。
前記シアネートエステル樹脂の具体例としては式1の様なビスフェノールE型のシアネートエステル樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではない。ビフェニル型やノボラックフェノール型、ビスフェノールA型などのシアネートエステル樹脂は、25℃において固形であるが、25℃で液状のシアネートエステル樹脂に溶解させて、25℃において液状であれば、使用することができる。
(A)成分の具体例としては、Lonza社製のシアネートLeCy、PT−15、PT30、PT−60等、Huntsman社製のL−10、XU366、XU371、XU378等、三菱瓦斯化学株式会社製のCA200等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明で使用することができる(B)成分としては、一般式2の様なメタロセンおよびその誘導体である。一般式におけるRは、それぞれ独立したハロゲンまたは有機基であり、Mはチタンを除いた周期表4A族の金属である。価格が安価であること、入手の容易性及び触媒の安定性を考慮すると、金属はジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
(B)成分の具体例として、ジルコノセンジクロリド、ジルコノセンクロリドヒドリド、1,1−ジブチルジルコノセンジクロリド、デカメチルジルコノセンジクロリド、ジルコノセンジメチル、ハフノセンジクロリド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(B)成分は、単独または2種類以上を混合して使用しても良い。(A)成分が100質量部に対して、(B)成分を0.01〜1.0質量部添加することが好ましい。0.01質量部より多いと、加熱硬化性を維持することができ、1.0質量部より少ないと増粘を抑制することができる。加熱方法としては、熱風乾燥炉による熱風の送風等の一般的な方法を用いて硬化することができる。
本発明のシアネートエステル樹脂組成物には、エポキシ樹脂又は(B)成分以外に硬化剤または硬化触媒を含まないことが好ましい。エポキシ樹脂は、(B)成分を硬化剤として硬化することができない。そのため、本発明のシアネートエステル樹脂組成物にエポキシ樹脂を入れただけでは、エポキシ樹脂が硬化に関与せず、単なる可塑剤に相当してしまう。これにより、硬化物の物理特性が大きく変化し、具体的にはガラス転移点の低温化や、貯蔵弾性率の低下、引張せん断接着強さの低下が見られる。最悪の場合、硬化性が悪くなり、硬化物において部分的に未硬化が発生する。(A)成分は、エポキシ樹脂の硬化剤として挙げられるアミン系硬化剤により硬化が進みにくく、硬化させるためにはアミン系硬化剤を多く添加する必要がある。そのため、チクソ性が有って最適な性状になりにくく、硬化できたとしても最適な物理特性を発現することが難しい。また、硬化剤としてフェノール樹脂を添加した場合は、−20℃で保管しても保存安定性が無い。そのため、最適な性状および物理特性を発現するためには、(B)成分以外に硬化剤や硬化触媒を含まないことが好ましい。
本発明のシアネートエステル樹脂組成物には、溶剤を添加しないことが好ましい。貼り合わせの用途や空隙へ浸透させて使用する場合、溶剤が組成物内に残留して発泡する恐れがある。溶剤を添加しない場合、貼り合わせの接着やシールに使用することができる。
本発明は、電気・電子部品の組立てに用いる電気用途、耐熱性を必要とする車載用途など様々な用途に使用することができる。
本発明のシアネートエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、有機充填剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、カップリング剤等の添加剤を適量配合しても良い。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1、2および比較例1〜5]
シアネートエステル樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。(以下、シアネートエステル樹脂組成物を単に組成物と略す。)
(A)成分:シアネートエステル樹脂
・ビスフェノールE型シアネートエステル(シアネートLeCy;Lonza社製)
(B)成分:
・触媒1:ジルコノセンジクロライド(試薬)
・触媒2:ハフノセンジクロライド(試薬)
(B’)成分:(B)成分以外の金属触媒
・触媒3:ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(IRGACURE784 BASF社製)
・触媒4:チタノセンジクロライド(試薬)
・触媒5:チタノセンビストリフルオロメタンスルフォネート(試薬)
・触媒6:フェロセン(試薬)
・触媒7:ナフテン酸亜鉛(試薬)
(A)成分を容器に秤量し、次に(B)成分を秤量して容器に投入する。撹拌機により1時間攪拌した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
組成物について、粘度測定、保存安定性確認、引張せん断接着強さ測定、DMA測定、TMA測定を行った。粘度測定と保存安定性確認の結果を表2に、引張せん断接着強さ、DMA測定、TMA測定の結果を表3に示す。
[粘度測定]
組成物を調整した直後の粘度を下記の仕様で測定し、「初期粘度(mPa・s)」とする。残りの組成物は容器に保管する。
仕様
粘度計:東機産業株式会社製 VISCOMETER TV−33
コーン:1°34’×R24
測定条件:20rpm/3min
[保存安定性確認]
組成物を25℃雰囲気下の暗所に保管し、7日後と14日後に組成物を抜き出して、上記粘度測定と同じ方法で粘度を測定する。それぞれの粘度を「7日後粘度(mPa・s)」と14日後粘度(mPa・s)」とする。初期粘度と14日後粘度の「変化率(%)」とする。組成物の取扱性の観点から初期粘度は100mPa・s以下であることが好ましく、保存安定性の観点から変化率は100%以下が好ましい。粘度計の測定上限値を超えた場合、それに伴い、変化率が計算できない場合は、「測定不可」と記載する。
[引張せん断接着強さ測定]
幅25mm×長さ10mm×厚さ1.6mmのSPCC−SD製の被着体を25mm×10mmで貼り合わせて固定した後、硬化条件として150℃×1h+200℃×1hで加熱して組成物を硬化してテストピースを作成する。テストピースの両末端を固定し、引張速度50mm/minで引っ張り、最大強度から「接着強さ(MPa)」を測定する。接着剤として使用する場合、被着体の固定のためには10MPa以上であることが好ましい。
[DSC測定(示差走査熱量測定)]
セイコーインスツル株式会社製SSC5200を用いて、組成物が未硬化の状態の状態で装置にセットし、25〜300℃まで昇温速度5℃/minで測定を行い、DSC(μW)のピークトップ温度を「反応温度(℃)」とする。組成物の反応温度は、ラインタクトを考慮すると、100〜200℃が好ましい。
[DMA測定(動的粘弾性測定)]
組成物を2枚のポリテトラフルオロエチレン板の間にクリアランスが1.0mmにして挟みこむ。その後、硬化条件として150℃×1h+200℃×1hで加熱して硬化物を作成する。硬化物を10mm×50mmの大きさに切り出し、セイコーインスツル株式会社製DMS6100にて、温度範囲を25〜350℃、5℃/min、周波数1Hzの引張りモードで測定を行った。同じ硬化物に対して、2回測定を行う。2回目の測定で、「25℃における貯蔵弾性率(MPa)」をE’と、「損失弾性率のピークトップ温度(℃)」をE”と、「tanδのピークトップ温度(℃)」をtanδと示す。E”又はtanδが、DMA測定におけるガラス転移点に相当すると考えられる。耐熱性の観点から硬化物は硬質であり、E’は5.0以下であることが好ましい。また、耐熱性の観点から硬化物が軟化する温度は高温である必要があり、E”は250℃以上であることが好ましく、またはtanδは250℃以上であることが好ましい。
[TMA測定(熱機械分析測定)]
直径5mmの円筒形に組成物を流し込み、硬化条件として150℃×1h+200℃×1hで加熱して硬化物を作成する。長さ10mmに切断し、セイコーインスツル株式会社製TMA/SS6000にて、温度範囲を25〜380℃、5℃/min、周波数1Hzの引張りモードで測定を行った。同じ硬化物に対して、2回測定を行う。2回目の測定で、「ガラス転移点より低い温度領域の線膨張率(ppm/℃)」をα1と、「ガラス転移点より高い温度領域の線膨張率(ppm/℃)」をα2と、ガラス転移点をTgと示す。熱時の膨張が少ない方が被着体に与える影響が少ないため、α1は70ppm以下、α2は200ppm以下が好ましい。また、耐熱性の観点から硬化物が軟化する温度は高温である必要があり、Tgは250℃以上であることが好ましい。
実施例1および2と比較例5の初期粘度を比較すると、触媒7を使用した組成物は増粘していることが判る。つまり、図1のDSC測定の結果から判るとおり比較例5は、DSCのピークの発熱量が低く、測定時に既に反応が始まっていると考えられる。実施例1、2および比較例1〜4は初期粘度が安定している。しかしながら、25℃で7日後放置した時点で比較例2〜4は増粘している。比較例4に至っては、図1のDSC測定の結果から反応温度が低くすぎて、潜在性が無いため反応が進んでいると考えられ、粘度を測定することができない程に粘度が高くなっている。
実施例1および2、比較例1〜3は変化率が低く保存安定性が良いものの、DSCに於ける反応温度で違いが見られる。つまり、比較例1〜3の反応温度は、200℃より高い温度であり、実施例1と2は反応温度が200℃以下である。変化率が低かったとしても、反応温度が高ければ、それだけ高温でまたは長時間で加熱する必要がある。実施例1および2は保存安定性が良好であると共に、200℃以下の低温で硬化することが可能である。
従来の一液型シアネートエステル樹脂組成物は、保存安定性が悪く、硬化温度も高かったため、取扱いが良くなかった。本発明は、これらの問題点を改善すると共に、初期粘度が低く取扱いが良好である。また、ガラス転移点等の物理特性も従来通り発現する。これらより、本発明は従来では余り使用されることが少なかった、接着剤やシール剤用途等にも使用することができ、シアネートエステル樹脂の使用範囲を広げることができる。
1:実施例1におけるDSCのピークトップ
2:実施例2におけるDSCのピークトップ
3:比較例1におけるDSCのピークトップ
4:比較例2におけるDSCのピークトップ
5:比較例3におけるDSCのピークトップ
6:比較例4におけるDSCのピークトップ
7:比較例5におけるDSCのピークトップ

Claims (5)

  1. (A)成分と(B)成分を含み、25℃で液状でありかつ溶剤を含まない一液型硬化性樹脂組成物。
    (A)成分:シアネートエステル樹脂
    (B)成分:一般式のメタロセンおよびその誘導体
    (一般式におけるRは、それぞれ独立したハロゲンまたは有機基であり、Mはチタンを除いた周期表4A族の金属である。)
  2. エポキシ樹脂を含まない請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. (B)成分以外に硬化剤または硬化触媒を含まない請求項1または2のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  4. (A)成分に、ビスフェノールE型の骨格を有するシアネートエステル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載される硬化性樹脂組成物からなる接着剤。
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