JP2015034796A - 半導体式ガス検知素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコールの検知を抑制してにおい成分などの所望の被検知ガスを正確に検知できる半導体式ガス検知素子を提供する。【解決手段】貴金属線材1と、貴金属線材1を覆い、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分としてモリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体を用いて形成したガス感応部2と、ガス感応部2の外周側に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層3と、を設け、触媒層3にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させた半導体式ガス検知素子X。【選択図】図1
Description
本発明は、貴金属線材と、ガス感応部と、を備えた半導体式ガス検知素子に関する。
例えば半導体製造工場などにおいて、製品の乾燥設備や排水中に微量含まれる有機溶剤分を除去する設備などがあり、これらの設備からは、におい成分である揮発性有機化合物(VOC)ガスが発生する場合があった。VOCガスには、例えばホルムアルデヒド、トルエン等が含まれ、目、鼻、喉への刺激等の症状が生じる虞がある。
VOCガスは、例えば半導体式ガス検知素子を備えたガス検知装置で検知することができる。
尚、本発明における従来技術となる上述した半導体式ガス検知素子を備えたガス検知装置は、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
上述した半導体製造工場において、特に、温度および湿度の管理された空気が循環する清浄なクリーンルーム内では、消毒用或いは清掃用のアルコール(エタノール)が頻繁に使用されていた。
このように半導体製造工場には、VOCガスやエタノールなどのガスが雰囲気中に浮遊することがあり、例えばVOCガスをガス検知装置で検知しようとした場合、エタノールが妨害ガスとして検知されてしまい、VOCガスを選択的に検知するのが困難となることがあった。VOCガスの他、対象となる所望の被検知ガスを検知しようとする場合も同様に、エタノールが妨害ガスとして検知されてしまい、被検知ガスを正確に検知できないという問題点があった。
従って、本発明の目的は、アルコールの検知を抑制してにおい成分などの所望の被検知ガスを正確に検知できる半導体式ガス検知素子を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る半導体式ガス検知素子の第一特徴構成は、貴金属線材と、当該貴金属線材を覆い、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分としてモリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体を用いて形成したガス感応部と、当該ガス感応部の外周側に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層と、を設け、当該触媒層にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させた点にある。
後述の実施例2(金属酸化物半導体の主成分が酸化スズ),実施例5(金属酸化物半導体の主成分が酸化インジウム)において、ガス感応部にモリブデン酸化物を添加した半導体式ガス検知素子(実験例1,2)と、ガス感応部にモリブデン酸化物を添加しない半導体式ガス検知素子(比較例1,2)とについて、におい成分の検知感度を調べた。
この結果、比較例1,2の半導体式ガス検知素子では、におい成分と可燃性ガスとにおいて、ガス感度の明瞭な差異は認められなかったのに対して(図4,8)、実験例1,2の半導体式ガス検知素子では、エタノール、トルエン、アセトン、酢酸エチルといったにおい成分の検知感度を増感できたと認められた(図3,7)。
この結果、比較例1,2の半導体式ガス検知素子では、におい成分と可燃性ガスとにおいて、ガス感度の明瞭な差異は認められなかったのに対して(図4,8)、実験例1,2の半導体式ガス検知素子では、エタノール、トルエン、アセトン、酢酸エチルといったにおい成分の検知感度を増感できたと認められた(図3,7)。
また、後述の実施例3において、シリコーンガスが存在する環境におけるガス感度の変化を、実験例1および比較例1について調べた。
この結果、比較例1の半導体式ガス検知素子では、特にシリコーンガスの曝露初期において不安定なガス感度を示す(図6)のに対して、実験例1の半導体式ガス検知素子では、シリコーンガス存在下であっても安定した(ほぼ一定の)ガス感度が得られるものと認められた(図5)。
この結果、比較例1の半導体式ガス検知素子では、特にシリコーンガスの曝露初期において不安定なガス感度を示す(図6)のに対して、実験例1の半導体式ガス検知素子では、シリコーンガス存在下であっても安定した(ほぼ一定の)ガス感度が得られるものと認められた(図5)。
従って、本構成の半導体式ガス検知素子は、ガス感応部にモリブデン酸化物を添加することにより、におい成分を感度よく検出することができ、かつ、シリコーンガスが存在する環境でもにおい成分を正確に検出できる。
また、触媒層を、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とするもので構成し、当該触媒層にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させることで、検知対象ガス中にアルコールがある場合にも、センサのアルコールに対する感度を抑制することができる(実施例12、図12参照)。即ち、タングステン酸化物或いはモリブデン酸化物により、触媒層の表面に到達したアルコールは分解(いわゆる酸性金属酸化物によるアルコールの分子内脱水反応と呼ばれるもの)を受ける。
この反応(C2H5OH→C2H4+H2O)は比較的高温(300℃程度以上)で起こる。このときエチレンが生成されるが、エチレンに対する本願のセンサの感度は非常に低いため、本願のセンサはアルコールに対する感度は極めて低い。
この反応(C2H5OH→C2H4+H2O)は比較的高温(300℃程度以上)で起こる。このときエチレンが生成されるが、エチレンに対する本願のセンサの感度は非常に低いため、本願のセンサはアルコールに対する感度は極めて低い。
従って、本構成の半導体式ガス検知素子は、アルコールに対する感度を抑制した状態で、におい成分を感度よく検出することができるものとなる。
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第二特徴構成は、前記金属酸化物半導体にランタン酸化物を添加した点にある。
本構成によれば、金属酸化物半導体部に、ランタン酸化物を添加することにより、例えばにおい成分であるトルエンやアセトンに対して高感度であるとともに、水素、メタン、エチレンなどの他のガスとの選択性に於いて優れた半導体式ガス検知素子が得られる。
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第三特徴構成は、前記金属酸化物半導体に鉛酸化物を添加した点にある。
本構成によれば、金属酸化物半導体部に、鉛酸化物を添加することにより、例えばにおい成分であるトルエンやアセトンに対して高感度であるとともに、水素、メタン、エチレンなどの他のガスとの選択性に於いて優れた半導体式ガス検知素子が得られる。
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第四特徴構成は、前記ガス感応部における前記モリブデン酸化物の含有量を0.5〜10モル%とした点にある。
実施例8において、ガス感応部に添加するモリブデン酸化物の有効濃度を調べた。その結果、モリブデン酸化物の含有量が0.5〜10モル%であれば、特に優れたガス感度を有し、かつシリコーンガスが存在する環境でもにおい成分を正確に検出できるものと認められた。
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第五特徴構成は、前記ランタン酸化物の含有量を0.05〜1モル%とした点にある。
実施例9において、ガス感応部に添加するランタン酸化物の有効濃度を調べた。その結果、ランタン酸化物の含有量が0.05〜1モル%であれば、特に優れたガス感度を有するものと認められた。
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第六特徴構成は、前記鉛酸化物の含有量を0.01〜1モル%とした点にある。
実施例10において、ガス感応部に添加する鉛酸化物の有効濃度を調べた。その結果、鉛酸化物の含有量を0.01〜1モル%の範囲とすれば、水素感度/エタノール感度の比が1以下となり、水素の感度を低下させ、におい成分をより感度よく検出することができるものと認められた。さらに、水素だけでなく、メタンやエチレンなどのVOCガス以外の感度についても同様に低下させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の半導体式ガス検知素子Xは、貴金属線材1と、当該貴金属線材1を覆い、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分としてモリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体を用いて形成したガス感応部2と、当該ガス感応部2の外周側に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層3と、を設け、当該触媒層3にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させてある。
図1に示すように、本発明の半導体式ガス検知素子Xは、貴金属線材1と、当該貴金属線材1を覆い、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分としてモリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体を用いて形成したガス感応部2と、当該ガス感応部2の外周側に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層3と、を設け、当該触媒層3にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させてある。
半導体式ガス検知素子Xとして、熱線型半導体式ガス検知素子、基板型半導体式ガス検知素子が挙げられるが、これに限られるものではない。本実施形態では、熱線型半導体式ガス検知素子とした場合について説明する。
熱線型半導体式ガス検知素子Xは、コイル状の貴金属線材1にガス感応部2が設けてある。貴金属線材1は、例えば白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の線材を使用できる。貴金属線材1の線径、コイル径、コイル巻数等は、従来の熱線型半導体式ガス検知素子に使用するものと同様で、特に限定されない。
ガス感応部2は、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分とする金属酸化物半導体を塗布して覆い、乾燥後、焼結成型したものである。当該金属酸化物半導体には、モリブデン酸化物(MoO2、MoO3)を添加してある。モリブデン酸化物の含有量は、例えば0.5〜10モル%、好ましくは1〜10モル%とするとよい。これにより、エタノール、トルエン、アセトン、酢酸エチル等の所謂におい成分を感度よく検出することができ、かつ、シリコーンガスが存在する環境でもにおい成分を正確に検出できる。
金属酸化物半導体には、モリブデン酸化物に加えて、ランタン酸化物や鉛酸化物を添加してもよい。金属酸化物半導体部に、ランタンや鉛の酸化物を添加することにより、例えばにおい成分であるトルエンやアセトンに対して高感度であるとともに、水素、メタン、エチレンなどの他のガスとの選択性に於いて優れた半導体式ガス検知素子Xが得られる。
ランタン酸化物(La2O3)の含有量は、例えば0.05〜1モル%とすれば、良好なガス感度を有する。
また、鉛酸化物(PbO)の含有量は、例えば0.01〜1モル%とするのがよい。これにより、水素、メタン、エチレンなどVOCガス以外の感度を低下させ、におい成分をより感度よく検出することができる。
ガス感応部2の外周側には、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層3を設け、当該触媒層3にタングステン酸化物(WO3)或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させている。
タングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の含有量は、0.1〜10モル%となるようにすれば、アルコールの感度を十分抑制することができる。
触媒層3に含まれるタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物により、触媒層3の表面に到達したアルコールは分解を受ける。これにより、被検知ガスにアルコールが混入している場合においても、センサのアルコールに対する感度を抑制することができる。従って、本構成の半導体式ガス検知素子Xは、アルコールに対する感度を抑制した状態で、におい成分を感度よく検出することができるものとなる。
図2に示すように、熱線型半導体式ガス検知素子Xは、固定抵抗R0,R1,R2とともにブリッジ回路に組み込んでガスセンサを構成できる。ブリッジ回路は電源Eによって常時または間欠的に通電してあり、熱線型半導体式ガス検知素子Xが検知の際に適した温度となるようにしてある。また、熱線型半導体式ガス検知素子Xは被検知ガスが吸着すると抵抗値が変化する。このため、本実施形態に係るガスセンサでは、熱線型半導体式ガス検知素子Xの抵抗値の変化を偏差電圧をとして取り出し、これをセンサ出力Vとすることで被検知ガス(におい成分)の濃度を測定することができる。
〔実施例1〕
本発明の半導体式ガス検知素子の製造方法を以下に説明する。
アンチモン(Sb+5)を0.1モル%ドープして所定の電導度を得た酸化スズ(SnO2)半導体のペーストを、白金コイルに塗布して直径が約0.5mmの球状になるように形成し、乾燥後、白金コイルに通電してジュール熱により加熱し、650℃で1時間、酸化スズを焼結させた。
本発明の半導体式ガス検知素子の製造方法を以下に説明する。
アンチモン(Sb+5)を0.1モル%ドープして所定の電導度を得た酸化スズ(SnO2)半導体のペーストを、白金コイルに塗布して直径が約0.5mmの球状になるように形成し、乾燥後、白金コイルに通電してジュール熱により加熱し、650℃で1時間、酸化スズを焼結させた。
酸化スズの半導体に、1モル/Lのモリブデン酸アンモン水溶液の液滴を含浸させ、20℃で60分乾燥させた。乾燥後、白金コイルに通電(1時間)して約600℃で加熱分解処理を行い、モリブデン酸化物を金属酸化物半導体(ガス感応部)の表面に担持させた。このようにして得られた半導体式ガス検知素子X’(実験例1)をブリッジ回路に組み込み、被検知ガスに対する感度評価に使用した。
尚、金属酸化物半導体にランタン酸化物を添加する場合は、酸化スズの半導体に例えば1mol/Lの硝酸ランタン水溶液を含浸させ、金属酸化物半導体に鉛酸化物を添加する場合は、酸化スズの半導体に例えば0.5mol/Lの硝酸鉛水溶液を含浸させるとよい。
尚、金属酸化物半導体にランタン酸化物を添加する場合は、酸化スズの半導体に例えば1mol/Lの硝酸ランタン水溶液を含浸させ、金属酸化物半導体に鉛酸化物を添加する場合は、酸化スズの半導体に例えば0.5mol/Lの硝酸鉛水溶液を含浸させるとよい。
触媒層3は、以下のようにして作製した。
アルミナの粉末100gに、タングステン酸アンモニウムの水溶液(0.1mol/L)を含浸法により0.1〜10mol%(最適添加量2mol%)になるように添加した後、乾燥し、電気炉で700℃で2時間焼成した。これを粉砕し、水で練ってペースト状とし前述の金属酸化物半導体の表面全周に塗布する。さらに室温で乾燥後、600℃で1時間加熱し、焼結させ形成する。
このようにして得られた本発明の半導体式ガス検知素子X(本発明例1)をブリッジ回路に組み込み、被検知ガスに対する感度評価に使用した。
アルミナの粉末100gに、タングステン酸アンモニウムの水溶液(0.1mol/L)を含浸法により0.1〜10mol%(最適添加量2mol%)になるように添加した後、乾燥し、電気炉で700℃で2時間焼成した。これを粉砕し、水で練ってペースト状とし前述の金属酸化物半導体の表面全周に塗布する。さらに室温で乾燥後、600℃で1時間加熱し、焼結させ形成する。
このようにして得られた本発明の半導体式ガス検知素子X(本発明例1)をブリッジ回路に組み込み、被検知ガスに対する感度評価に使用した。
〔実施例2〕
実験例1の半導体式ガス検知素子X’(ガス感応部に2モル%のモリブデン酸化物を添加)と、比較例1として酸化スズを主成分とするガス感応部を有する半導体式ガス検知素子(ガス感応部にモリブデン酸化物を添加しない)とにおいて、各種ガスの検知感度(DC2.4V通電時(10オーム負荷))を調べた。使用したガスは、エタノール、メタン、イソブタン、水素、一酸化炭素、トルエン、アセトン、酢酸エチルであった。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’(ガス感応部に2モル%のモリブデン酸化物を添加)と、比較例1として酸化スズを主成分とするガス感応部を有する半導体式ガス検知素子(ガス感応部にモリブデン酸化物を添加しない)とにおいて、各種ガスの検知感度(DC2.4V通電時(10オーム負荷))を調べた。使用したガスは、エタノール、メタン、イソブタン、水素、一酸化炭素、トルエン、アセトン、酢酸エチルであった。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’による測定結果を図3、比較例1の半導体式ガス検知素子による測定結果を図4に示した。
図3より、実験例1の半導体式ガス検知素子X’では、におい成分であるエタノール、トルエン、アセトン、酢酸エチルに対するガス感度は、メタン、一酸化炭素に比べて増感されたと認められた。一方、図4より、比較例1の半導体式ガス検知素子では、何れのガスのガス感度も明確に増感せず、におい成分と可燃性ガスとにおいて、ガス感度の明瞭な差異は認められなかった。
よって、半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部にモリブデン酸化物を添加することにより、におい成分を感度よく検出することができるものと認められた。
よって、半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部にモリブデン酸化物を添加することにより、におい成分を感度よく検出することができるものと認められた。
〔実施例3〕
実験例1の半導体式ガス検知素子X’と、比較例1の半導体式ガス検知素子とにおいて、シリコーンガス(OMCTS:Octamethylcyclotetrasiloxane、10ppm)が存在する環境におけるガス感度の変化を調べた。検知対象のガスは、空気、エタノール(5〜100ppm)とした。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’と、比較例1の半導体式ガス検知素子とにおいて、シリコーンガス(OMCTS:Octamethylcyclotetrasiloxane、10ppm)が存在する環境におけるガス感度の変化を調べた。検知対象のガスは、空気、エタノール(5〜100ppm)とした。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’による測定結果を図5、比較例1の半導体式ガス検知素子による測定結果を図6に示した。
図5より、実験例1の半導体式ガス検知素子X’では、シリコーンガス存在下であっても安定した(ほぼ一定の)ガス感度が得られるものと認められた。一方、図6より、比較例1の半導体式ガス検知素子では、特にシリコーンガスの曝露初期において、ガス感度が急変するため、シリコーンガス存在下では不安定なガス感度を示すものと認められた。
〔実施例4〕
実施例1で説明した実験例1の半導体式ガス検知素子X’の作製方法において、使用した酸化スズの半導体ペーストを酸化インジウム(In2O3)の半導体ペーストに替えて半導体式ガス検知素子を作製した。このようにして得られた半導体式ガス検知素子X’(実験例2:ガス感応部に2モル%のモリブデン酸化物を添加)をブリッジ回路に組み込み、被検知ガスに対する感度評価に使用した。
実施例1で説明した実験例1の半導体式ガス検知素子X’の作製方法において、使用した酸化スズの半導体ペーストを酸化インジウム(In2O3)の半導体ペーストに替えて半導体式ガス検知素子を作製した。このようにして得られた半導体式ガス検知素子X’(実験例2:ガス感応部に2モル%のモリブデン酸化物を添加)をブリッジ回路に組み込み、被検知ガスに対する感度評価に使用した。
〔実施例5〕
実験例2の半導体式ガス検知素子X’と、比較例2として酸化インジウムを主成分とするガス感応部を有する半導体式ガス検知素子(ガス感応部にモリブデン酸化物を添加しない)とにおいて、各種ガスの感度(DC2.4V通電時(10オーム負荷))を調べた。使用したガスは、エタノール、水素、トルエン、アセトン、酢酸エチルであった。
実験例2の半導体式ガス検知素子X’と、比較例2として酸化インジウムを主成分とするガス感応部を有する半導体式ガス検知素子(ガス感応部にモリブデン酸化物を添加しない)とにおいて、各種ガスの感度(DC2.4V通電時(10オーム負荷))を調べた。使用したガスは、エタノール、水素、トルエン、アセトン、酢酸エチルであった。
実験例2の半導体式ガス検知素子X’による測定結果を図7、比較例2の半導体式ガス検知素子による測定結果を図8に示した。
図7より、実験例2の半導体式ガス検知素子X’では、におい成分であるエタノール、トルエン、アセトン、酢酸エチルに対するガス感度は増感されたものと認められた。一方、図8より、比較例2の半導体式ガス検知素子では、何れのガスのガス感度も殆ど増感せず、におい成分と可燃性ガスとにおいて、ガス感度の明瞭な差異は認められなかった。
〔実施例8〕
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加するモリブデン酸化物の有効濃度を調べた。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加するモリブデン酸化物の有効濃度を調べた。
ガス感応部の表面に担持されるモリブデン酸化物の含有量が0.001〜30モル%となるように、11種類(表1)の半導体式ガス検知素子を製造した。これら半導体式ガス検知素子について、におい成分であるエタノール100ppm、アセトン100ppmをそれぞれ検出した場合のガス感度を調べた。結果を表1および図9示した。
この結果、モリブデン酸化物の含有量が0.1モル%以上、特に0.5モル%以上において優れたガス感度を有するものと認められた。
また、上記11種類の半導体式ガス検知素子において、シリコーンガス(OMCTS)が存在する環境におけるガス感度の変化を調べた。ガス感度の変化は、半導体式ガス検知素子をシリコーンガス10ppmに対して20時間曝露したときの、エタノール100ppmの感度変化率(20時間暴露時の測定値/初期測定値)で表した。結果を表2および図10に示した。
半導体式ガス検知素子がシリコーンガスに曝露した前後において、ガス感度の変化率は1.0〜1.5程度であれば、良好なガス感度を有するものと認められる。モリブデン酸化物の含有量が0.5〜10モル%の場合に、ガス感度の変化率が1.0〜1.5の範囲に収まるものと認められた。また、モリブデン酸化物の含有量が1〜10モル%の場合に、ガス感度の変化率が1.0〜1.2の範囲に収まるため、より良好なガス感度を有するものと認められた。
従って、モリブデン酸化物の含有量が0.5〜10モル%であれば、シリコーンガスが存在する環境でもにおい成分を正確に検出できることが判明した。
従って、モリブデン酸化物の含有量が0.5〜10モル%であれば、シリコーンガスが存在する環境でもにおい成分を正確に検出できることが判明した。
〔実施例9〕
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加するランタン酸化物の有効濃度を調べた。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加するランタン酸化物の有効濃度を調べた。
モリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体に対してランタン酸化物0〜3モル%を添加し、シリコーンガスに曝露(10ppm、100時間曝露)した前後において、ガス感度の変化率(シリコーンガス暴露後の100ppm感度/シリコーンガス暴露前の100ppm感度)が1.0〜1.5の範囲に収まるものを調べた。上述したように、半導体式ガス検知素子がシリコーンガスに曝露した前後において、ガス感度の変化率は1.0〜1.5程度であれば、シリコーンガスに対して影響されないものと認められる。
結果を図11(a)に示した。図11(a)より、当該変化率が1.0〜1.5を示すのは、概ねランタン酸化物の含有量が0.05〜1モル%の範囲となっている。従って、ランタン酸化物の含有量が0.05〜1モル%の範囲であれば、シリコーンガスに対して影響されないものと認められる。
また、ランタン酸化物が0〜3モル%の範囲において、エタノール100ppmに対する感度(mV)を測定した。金属酸化物半導体にはモリブデン酸化物2モル%添加し、触媒層3にはタングステン酸化物2モル%を添加したものを使用し、触媒層3の有無、および、鉛酸化物の含有量を0.01〜1モル%の間で変化させた半導体式ガス検知素子を使用して測定を行った。結果を図11(b)に示した。
エタノールの最高感度は、触媒層3なしの半導体式ガス検知素子X’(実験例1)において、ランタン酸化物が0.1モル%の場合の測定値251mVであった。本実施例ではこの測定値の7割(175mV)以上であれば良好な感度であると判断し、かつ、触媒層3ありの半導体式ガス検知素子X(本発明例1)の感度が、触媒層3なしの半導体式ガス検知素子X’(実験例1)の1/2以下となるときにエタノールの除去性能が優れたものと判断した。その結果、ランタン酸化物の含有量が0.05〜1モル%の範囲であればこれらの条件を満たし、エタノールの除去性能が優れていると認められた。
〔実施例10〕
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加する鉛酸化物の有効濃度を調べた。
実験例1の半導体式ガス検知素子X’において、ガス感応部に添加する鉛酸化物の有効濃度を調べた。
ガス感応部の表面に担持されるモリブデン酸化物の含有量を、0.5,2.0,10モル%とした場合に、鉛酸化物の含有量を0.005〜5モル%の範囲となるようにそれぞれ7種類(表3)の半導体式ガス検知素子X’を製造した(合計21種類)。これら半導体式ガス検知素子X’について、エタノール100ppm、水素100ppmをそれぞれ検出した場合のガス感度を調べた。鉛酸化物の有効濃度は、におい成分の選択性が優れている範囲を適用すればよい。におい成分の選択性が優れている範囲は、可燃性ガス感度/エタノール感度の比を1以下とする。結果を表3に示した。
この結果、鉛酸化物の含有量を0.01〜5モル%の範囲とすれば、水素感度/エタノール感度の比が1以下となるものと認められた。ただし、水素感度/エタノール感度の比が1以下となる場合であっても、におい成分(エタノール)の感度が低いのは好ましくない。従って、鉛酸化物の含有量の上限値は、におい成分(エタノール)の最高感度(モリブデン酸化物の含有量が0.5モル%、鉛酸化物の含有量が0.5モル%の場合の感度170mV)の50%以上を有する感度となる鉛酸化物の含有量のうち、最大とするのが好ましい。これらのことから、鉛酸化物の含有量は、0.01〜1モル%の範囲とするのが好ましい。
従って、鉛酸化物の含有量が0.01〜1モル%の範囲であれば、水素の感度を低下させ、におい成分をより感度よく検出することができることが判明した。尚、結果は示さないが、水素だけでなく、メタンやエチレンなどのVOCガス以外の感度についても同様に低下させることができる。
〔実施例11〕
触媒層3に添加したタングステン酸化物の添加量を0〜10モル%の間で変化させた場合に、エタノール100ppmに対する感度およびアセトン100ppmに対する感度がどのように変化するかを調べた。金属酸化物半導体にはモリブデン酸化物2モル%、ランタン酸化物0.5モル%および鉛酸化物0.5モル%を添加したものを使用した。結果を表4に示した。
触媒層3に添加したタングステン酸化物の添加量を0〜10モル%の間で変化させた場合に、エタノール100ppmに対する感度およびアセトン100ppmに対する感度がどのように変化するかを調べた。金属酸化物半導体にはモリブデン酸化物2モル%、ランタン酸化物0.5モル%および鉛酸化物0.5モル%を添加したものを使用した。結果を表4に示した。
この結果、タングステン酸化物の添加量を変化させた場合においてもアセトン100ppmに対する感度は顕著な変化が認められなかったのに対して、エタノール100ppmに対する感度は、タングステン酸化物の添加量を0.1〜10モル%とした場合にはタングステン酸化物の添加量が0である場合に比べて、顕著に抑制されているものと認められた。
尚、本実施例では触媒層3に担持される担持物としてタングステン酸化物を使用した場合について説明したが、モリブデン酸化物であっても同様の結果を示した(結果は示さない)。
尚、本実施例では触媒層3に担持される担持物としてタングステン酸化物を使用した場合について説明したが、モリブデン酸化物であっても同様の結果を示した(結果は示さない)。
〔実施例12〕
本発明の半導体式ガス検知素子X(本発明例1、金属酸化物半導体:モリブデン酸化物2モル%、ランタン酸化物1モル%、鉛酸化物0.5モル%を含有、触媒層:タングステン酸化物2モル%を含有)において、9種のガス(エタノール、スチレン、キシレン、トルエン、トリメチルアミン、アンモニア、イソブタノール、酢酸メチル、アセトン)に対する感度とガス濃度との関係について調べた(図12)。図12より、全てのガスに対して1ppmから感度が十分得られ、また、エタノールの感度が最も低く、エタノールと他のガスとの分離も十分良いものと認められた。
このように本構成の半導体式ガス検知素子Xは、アルコールに対する感度を抑制した状態で、におい成分(硫化水素)を感度よく検出することができる。
本発明の半導体式ガス検知素子X(本発明例1、金属酸化物半導体:モリブデン酸化物2モル%、ランタン酸化物1モル%、鉛酸化物0.5モル%を含有、触媒層:タングステン酸化物2モル%を含有)において、9種のガス(エタノール、スチレン、キシレン、トルエン、トリメチルアミン、アンモニア、イソブタノール、酢酸メチル、アセトン)に対する感度とガス濃度との関係について調べた(図12)。図12より、全てのガスに対して1ppmから感度が十分得られ、また、エタノールの感度が最も低く、エタノールと他のガスとの分離も十分良いものと認められた。
このように本構成の半導体式ガス検知素子Xは、アルコールに対する感度を抑制した状態で、におい成分(硫化水素)を感度よく検出することができる。
また、実験例1の半導体式ガス検知素子X’(金属酸化物半導体:モリブデン酸化物2モル%、ランタン酸化物1モル%、鉛酸化物0.5モル%を含有)において、9種のガス(エタノール、スチレン、キシレン、トルエン、トリメチルアミン、アンモニア、イソブタノール、酢酸メチル、アセトン)に対する感度とガス濃度との関係について調べた(図13)。この結果、エタノールは他のガスと全く分離されないものと認められた。
尚、本実施例では、触媒層3の担体としてアルミナを使用した場合について説明したが、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトのいずれか、あるいはこれらの複数からこの担体を構成しても同様の結果を示した。さらに、触媒層3に担持される担持物としてタングステン酸化物を使用した場合について説明したが、これはモリブデン酸化物であっても同様の結果を示した(何れも結果は示さない)。
本発明は、貴金属線材と、ガス感応部と、を備えた半導体式ガス検知素子に利用することができる。
X 半導体式ガス検知素子
1 貴金属線材
2 ガス感応部
3 触媒層
1 貴金属線材
2 ガス感応部
3 触媒層
Claims (6)
- 貴金属線材と、
当該貴金属線材を覆い、酸化スズあるいは酸化インジウムを主成分としてモリブデン酸化物を添加した金属酸化物半導体を用いて形成したガス感応部と、
当該ガス感応部の外周側に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を担体とする触媒層と、を設け、当該触媒層にタングステン酸化物或いはモリブデン酸化物の少なくとも一方を担持させた半導体式ガス検知素子。 - 前記金属酸化物半導体にランタン酸化物を添加してある請求項1に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記金属酸化物半導体に鉛酸化物を添加してある請求項1または2に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記ガス感応部における前記モリブデン酸化物の含有量が0.5〜10モル%である請求項1〜3の何れか一項に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記ランタン酸化物の含有量が0.05〜1モル%である請求項2に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記鉛酸化物の含有量が0.01〜1モル%である請求項3に記載の半導体式ガス検知素子。
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