JP4382245B2 - ガスセンサとガス検出器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス検出器等に用いるガスセンサに関するものであり、酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒を積層させた構成のガスセンサに関する。このようなガス検出器は、検出対象ガスの有無、濃度等の検出、ガスの存在に従って警報の発生を受け持つ。警報を発する場合は、所謂、ガス警報器となる。
【0002】
【従来の技術】
様々な気体成分と接触することにより酸化物半導体の電気抵抗値が変化する現象を利用した、半導体式ガスセンサが広く用いられている。この型のガスセンサにあっては、酸化物半導体表面上で起こるガスの吸着や反応を促進するために、多くの場合、半導体素子は加熱して用いられる。ここで、この表面とは検出対象のガスが到達する側の表面である。
【0003】
今日、天然ガスのエネルギー資源としての利用の拡大に伴い、微量の天然ガスの漏洩等を検出する技術に対する必要性が高まっている。
水素や可燃性ガスのような酸化反応性が高い成分に比べ、天然ガスの主成分であるメタンは、炭化水素類の中でも特に安定性が高く、反応性が低いため、一般には、半導体式ガスセンサにより高い感度を得ることは容易ではない。そこで、メタンに対する感度を増大させるため、酸化物半導体に貴金属を添加した素子が開発され、広く用いられている。
一方、低濃度のメタン検出が可能なセンサも開発されているが、水素やイソブタン等のガスにも大きな感度を有しており、微量のメタン漏洩をメタン以外のガスの妨害なしに検出することは、実質上困難であった。
【0004】
上記のような状況から、様々なガスに対する感度の調整を図るため、酸化物半導体を覆うように触媒層を設けて、センサ素子を構成することが行われている(特開昭57−127839)。このような例にあって、酸化物半導体を覆うように設けられる触媒層には、通常パラジウムや白金等がほぼ均等に含有されたものが用いられている。また、白金を内部において均等に含有させる場合、その濃度は、通常、0.1〜0.5重量%程度であった。この濃度に対応して白金の触媒層内における金属比表面積も比較的低い値に収まっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような構造を採用する場合は、メタンに対する選択性を付与するために、メタン以外の成分を除去する触媒層を設けることとなるが、通常は同時にメタンも部分的に燃焼除去され、低濃度のメタンに対する感度が得られにくかった。即ち、従来型の技術にあっては、低濃度域を高感度で、且つ、高選択性で検出することが困難であった。
さらに具体的には、従来型のガスセンサにあっては、測定対象雰囲気中に共存する水素、イソブタン、プロパン等の可燃性ガスの存在の影響を受けずに、微量のメタンの存在を検出すること(数ppmから数100ppm程度の濃度の検出に相当する)は困難であった。
従って、本発明の目的は、低濃度感度と高選択性とを両立させ、他の可燃性成分の影響を受けることなしに、例えば特に微量のメタンを検出することが可能なガスセンサを得ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る、酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じて組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサでは、前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、さらに酸化物半導体の表面を覆うように酸化物半導体表面からの距離に応じ白金の含有率や金属比表面積の異なる触媒を積層させ、酸化物半導体表面近傍の白金濃度を比較的低濃度にするか白金の金属比表面積を比較的低くすることにより目的は達成される。
先ずもって、触媒層における触媒の担体成分として絶縁性酸化物を用い、前記触媒層を多孔質触媒層として形成すると、触媒層は絶縁性酸化物を用いて多孔質層として構成され、ガスを適度な速度で半導体部分に拡散可能とすることができる。
【0007】
発明の経緯及び概要
発明の経緯から概略を説明すると、発明者らはメタン以外の可燃ガス成分を燃焼により除去する目的で、様々な触媒(主に貴金属)の酸化活性を調べた結果、特に白金を含有する触媒はメタンの酸化活性が比較的低く、水素やイソブタン等の可燃ガス成分の酸化活性が安定して高いことが判明した。
従来技術にあっては、通常、様々なガスに対する感度の調整を図るため、酸化物半導体を覆うように設けられる触媒層に白金を含有させる場合の濃度は、先にも述べたように、0.1〜0.5重量%程度とされていた。
発明者は鋭意研究の結果、メタン以外の可燃ガス成分に対する感度を抑制するためには、触媒層中に1重量%以上の高濃度の白金を含有させるかあるいは、触媒構成材料1g当たりの白金の表面積(これを以下金属比表面積と呼び、触媒層を構成し、貴金属担持触媒の担体の表面に表れている貴金属の金属比表面積は、この貴金属表面に吸着されるCOの量を測定することによる、所謂、CO吸着手法により求められる。)を1m2以上とすることが有効であり、特に、1重量%以上の白金を含有させる、あるいは金属比表面積1m2/g以上とすると、1000ppm以上のメタンに対する感度を発現させつつ、水素、イソブタン、プロパンに対する感度を低下させられる。
しかしながら、従来通常行われているように、触媒層中に白金をほぼ均一に存在させると、特に、(数100ppm以下の)低濃度メタンに対する感度も同時に低下することが明らかになった。そこで、この問題に対処する意味で、ある程度の検出が可能な濃度のメタンが酸化物半導体表面に到達できるように、上記のような構成を採用することで、問題が解決できることを見出し、本願発明を完成した。
【0008】
具体的には、以下のような構造を採用する。
1−1 請求項1に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域には、白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有し、
触媒層中の、酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、1.5重量%以上の白金を含有する上層部領域が存在するものとする。
1−2 請求項2に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域においては、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積を1.0m2以下とし、
触媒層中の、酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上の上層部領域が存在するものとする。
これらの構造は、触媒層が比較的厚い場合に好適である。
【0009】
2−1 請求項3に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域には、白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有し、
触媒層中の、酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、1.5重量%以上の白金を含有する上層部領域が存在するものとする。
2−2 請求項4に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域は、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積を1.0m2以下とし、
触媒層中の、酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上の上層部領域が存在するものとする。
これらの構造は、触媒層が比較的薄い場合にも有効である。
ここで、触媒層該当部厚みとは、注目している部位での厚みという意味で、例えば、基板に沿って形成される下層部領域の上に上層部領域が設けられる場合は、基板表面に対してほぼ直交する方向での対応した厚みとする。
【0010】
3 請求項5に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域における白金の含有率の4倍以上の含有率の白金を含有する上層部領域が存在するものとする。
この構造は、比較的厚い触媒層を備える場合で、触媒濃度比によって本願の効果を得ようとする場合に有効である。
【0011】
4 請求項6に記載されているように、触媒層中の、酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域における白金の含有率の4倍以上の含有率の白金を含有する上層部領域が存在するものとする。
この構造は、比較的薄い触媒層を備える場合で、触媒濃度比によって本願の効果を得ようとする場合に有効である。
【0012】
さらに、上記の請求項5または6記載の構成において、請求項7に記載されているように、前記上層部領域に1.5重量%以上の白金を含有し、前記下層部領域に白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有することが好ましい。
さらに、上記の請求項5または6記載の構成において、請求項8に記載されているように、上層部領域は触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上であり、前記下層部領域には、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.0m2以下であることが好ましい。
【0013】
また、上記の請求項1から4記載の構成において、請求項9に記載されているように、上層部領域に、下層部領域の4倍以上の含有率の白金を含有することが好ましい。
以上、白金の濃度分布は酸化物半導体表面(検出対象のガスが気相側から到達する側の表面)から離間する方向に設けられ、白金の高濃度部分(高金属比表面積部分)をいずれかの部分に設ける場合にも、この部分により実質的に前記表面が覆われている構造とする。従って、この構造にあっては、前記高濃度部分を介して検出対象のガスは、酸化物半導体表面にいたる。
【0014】
以下、このような構成を採用することの作用・効果を実験結果とともに、図面を参照しながら説明する。
説明にあたって、先ず、本願における感度及び選択性の定義を述べておく。
1. 100ppmのメタンに対する感度
この感度は、空気中(メタンを含まない)のガスセンサ抵抗値を、メタンを100ppm含有する空気中に於ける抵抗値で割ったものと定義する。
この感度は、大きい程低濃度域でのメタン感度が高く、微量のメタンの存在を検出する場合、実用上1.3を越えることが好ましい。触媒層内に均一に比較的低濃度(0.5重量%程度、白金の金属比表面積が0.7m2/g程度)の白金を含有する従来型のセンサに於けるこの感度は、1.1程度である(比較例3−2参照)。
【0015】
2. 1000ppmのメタンに対する感度
この感度は、空気中(メタンを含まない)のガスセンサ抵抗値を、メタンを1000ppm含有する空気中に於ける抵抗値で割ったものと定義する。
この感度は、大きい程中濃度域でのメタン感度が高く、実用上4を越えることが好ましい。触媒層内に均一に比較的低濃度(0.5重量%程度、白金の金属金属比表面積が0.7m2/g程度)の白金を含有する従来型のセンサに於けるこの感度は、1.8程度である(比較例3−2参照)。
【0016】
3. 水素に対する選択性評価
この選択性評価にあたっては、以下のようにおこなう。即ち、10000ppmの水素に対する感度と同等の感度を示すメタン濃度(メタン相当濃度と称する)により評価する。この評価方式に従うと、このメタン相当濃度が小さい程、水素感度の影響が抑制されており、対水素選択性が高い。水素の存在の影響を受けることなく、微量のメタンの存在を検出しようとする場合、実用上は500ppm以下に抑制されていることが望まれ、150ppm以下に抑制されていることがさらに望ましい。触媒層内に均一に比較的低濃度(0.5重量%程度、白金の金属比表面積が0.7m2/g程度)の白金を含有する従来型のセンサに於けるこの値は、1200ppm程度である(比較例3−2参照)。
【0017】
4. イソブタンに対する選択性評価
この選択性評価にあたっては、以下のようにおこなう。即ち、5000ppmのイソブタンに対する感度と同等の感度を示すメタン濃度(メタン相当濃度と称する)により評価する。この評価方式に従うと、このメタン相当濃度が小さい程、イソブタン感度の影響が抑制されており、対イソブタン選択性が高い。イソブタンの存在の影響を受けることなく微量のメタンの存在を検出しようとする場合、実用上は、500ppm以下に抑制されていることが望まれ、150ppm以下に抑制されていることがさらに望ましい。触媒層内に均一に比較的低濃度(0.5重量%程度、白金の金属比表面積が0.7m2/g程度)の白金を含有する従来型のセンサに於けるこの値は、6000ppm程度である(比較例3−2参照)。
【0018】
5. プロパンに対する選択性評価
この選択性評価にあたっては、以下のようにおこなう。即ち、5000ppmのプロパンに対する感度と同等の感度を示すメタン濃度(メタン相当濃度と称する)により評価する。この評価方式に従うと、このメタン相当濃度が小さい程、プロパン感度の影響が抑制されており、対プロパン選択性が高い。プロパンの存在の影響を受けることなく微量のメタンの存在を検出しようとする場合、実用上は、1500ppm以下に抑制されていることが望まれ、1000ppm以下に抑制されていることがさらに望ましい。触媒層内に均一に比較的低濃度(0.5重量%程度、白金の金属比表面積が0.7m2/g程度)の白金を含有する従来型のセンサに於けるこの値は、10000ppm以上である(比較例3−2参照)。
【0019】
以上、本願におけるメタン感度の評価手法及び、妨害ガス(水素ガス、イソブタン及びプロパン)に対する選択性の評価手法に関して述べたが、以下の説明においては、メタン感度及び妨害ガス感度のメタン相当濃度に基づいて説明をおこなう。さらに、以下に示す表1、表2、表3の対応部位には、メタン感度を示すとともに、妨害ガスの欄に、メタン相当濃度を示している。
先ず、本願の実施例及び比較例を表1、2、3、4、5、6において、説明する。表1及び表4は、実施例1〜15を示しており、表2及び表5は、実施例16〜29(但し表5は実施例26まで)を示している。さらに、表3及び表6は、比較例1〜13(但し表6は実施例8まで)を示している。
表1,2,3において、横欄は、左から順に、識別ナンバー、本願における上層部領域とされる上層の厚み、上層組成、本願に於ける下層部領域とされる下層の厚み、下層組成、構成の特徴、100ppmメタンに対するメタン感度、1000ppmメタンに対するメタン感度、10000ppmの水素に対するメタン相当濃度、5000ppmのイソブタンに対するメタン相当濃度、5000ppmのプロパンに対するメタン相当濃度を示している。
上層、下層の組成については、実施例27から29、比較例11,12を除いては、アルミナを触媒担体として使用しており、含有されている貴金属濃度と貴金属種のみを記している。
表4,5,6において、横欄は、左から順に、識別ナンバー、実施例における上層部領域とされる上層部の白金の金属比表面積、上層部のパラジウム金属比表面積、本願に於ける下層部領域とされる下層部の白金の金属比表面積、下層部のパラジウムの金属比表面積を示している。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
以下、従来構成のガスセンサの特性、本願のガスセンサの特性に関する好ましい触媒層の貴金属濃度分布について、図面等を参照しながら順に説明していく。
以下、図中100CH4 は100ppmのメタンを、1000CH4 は1000ppmのメタンを、10000H2 は10000ppmの水素を、5000i−Buは5000ppmのイソブタンを、5000C3 H8 は5000ppmのプロパンをそれぞれ意味している。
【0028】
1 従来型のガスセンサの特性
図1は、左から比較例3,2,1の順にプロットしたものである。
例えば、酸化スズを主成分とする酸化物半導体の表面を覆うように、1〜5重量%の白金をほぼ均一に分布含有(白金の金属比表面積が1〜1.9m2/g)する厚さ約400μmの触媒層を形成してガスセンサを形成し、素子温度を約450℃として動作させ、メタン、水素、イソブタンに対する感度(空気中の金属酸化物半導体の抵抗を各ガス中での抵抗値で割った値)を測定した場合、1000ppmのメタンに対する感度に比べて、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンに対する感度が小さく抑制されているため、1000ppm程度よりも高い濃度のメタンに対しては、水素やイソブタンの影響を受けることなく選択性高く検出が可能である。
ところが、100ppmのメタンに対する感度が低いため、100ppm程度よりも低い濃度のメタンの選択的な検出は、実質的にできない。
【0029】
さらに、上記のように、水素やイソブタンに対する感度抑制が十分でない上、100ppm以下のメタン感度も小さい場合も発生する。このような例は、表3に於ける比較例3−2、11、12を見ると明らかである。
即ち、通常の白金含有触媒層で見られるように、触媒層中に白金の量や表面積をほぼ均一にすると、金属酸化物半導体に作用して感度を発現させるのに有効に働くメタンの実効濃度が低下していると推測される現象が起きていることが判る。
また、酸化物半導体に直接触れる部位近傍領域に高濃度の白金が存在する場合や高比表面積となっている場合にも、同様の現象が起きる。
【0030】
2 下層部領域に於ける白金濃度
触媒層の酸化物半導体表面近傍部(本願の下層部領域となる)に1重量%以上の白金を含有せず(あるいは白金の金属比表面積が1m2/g未満とし)、触媒層の酸化物半導体表面近傍部より遠く離れた領域(本願の上層部領域となる)に白金を1.5重量%以上含有する(あるいは白金の金属比表面積が1.2m2/g以上となる)領域を存在させることによって、水素、イソブタンに対する選択性を発現させられる。
ここで、「触媒層の酸化物半導体表面近傍部」とは、酸化物半導体表面からの距離が、2μmあるいは触媒層該当部厚みの1/40のいずれか小さい方の距離より酸化物半導体に近い領域である。
図2(イ)(ロ)は、左から実施例16、19、20、20−2、比較例2−2、1の順にプロットしたものである。これらの図に示すように、例えば、厚さ約400μmの触媒層を形成し、酸化物半導体表面から40μm以上離れた触媒層上層部に白金を5重量%含有(あるいは白金の金属比表面積が1.9m2/g)させた場合、酸化物半導体表面から40μm以内の下層部の白金濃度を、1重量%未満(あるいは白金の金属比表面積が1m2/g未満)とすることによって、100ppmのメタン感度が1.3を上回り、1000ppmのメタン感度が4を越え、かつ、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタンの濃度が500ppm以下に抑制されている。
【0031】
より大きなメタン選択性を得るためには、触媒層の酸化物半導体表面近傍側(下層部領域)の白金濃度を、0. 1重量%未満(あるいは白金の金属比表面積が0.3m2/g未満)とすることがさらにより好ましい。このことは、実施例19,20と16、21とを比較することにより明らかとなる。
図7(イ)(ロ)は、左から 実施例16, 21, 19, 20の順にプロットしたものである。例えば、厚さ約400μmの触媒層を形成し、上層部の白金濃度を5重量%とした場合、酸化物半導体表面から40μm以内の下層部領域の白金濃度をさらに0. 1重量%未満(あるいは白金の金属比表面積が0.3m2/g未満)とすると、メタン感度を保持しながら、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタンの濃度が150ppm以下に抑制され、さらに高い選択性が得られていることがわかる。
【0032】
3 下層部領域の厚み
白金を1.5重量%以上(あるいは白金の金属比表面積が1.2m2/g以上)含有させる領域(上層部領域)を、酸化物半導体表面から2μm以上離れた部位とすることによって、メタン感度を保持しつつ、水素やイソブタンに対する感度が抑制される。
図3(イ)(ロ)は、左から比較例1、実施例18−4、18−2、16の順にプロットしたものである。厚さ約400μmの触媒層上層部に白金を5重量%含有させ(あるいは白金の金属比表面積が1.9m2/g)、触媒層下層部の白金濃度を0.1重量%未満(あるいは白金の金属比表面積を、0.3m2/g未満)としている。1重量%以上(あるいは白金の金属比表面積が1m2/g以上)の白金を含有させない触媒層下層部の厚みを2μm以上とすることにより、メタン感度が実用上望ましい大きさになり、10000ppmの水素や、5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタン濃度も500ppm以下に抑制されている。
【0033】
4 触媒層全体の厚みに対する下層部領域の厚みの比率
一方、例えば、触媒層全体の厚みが薄い場合等も考慮すると、白金の濃度を1重量%未満(あるいは白金の金属比表面積を1m2/g未満)に抑制しなければならない下層部領域は、酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの厚みの1/40以内の領域と規定される。
図4(イ)(ロ)は、左から比較例13、実施例18−2、18−6、16の順にプロットしたものであり、上層部領域の白金濃度を5重量%(あるいは白金の金属比表面積を1.9m2/g)とし、白金を1重量%以上含有しない(あるいは白金の金属比表面積が1.m2/g未満)下層部領域の厚みを、触媒層該当部厚みの1/40(=0. 025) 以上とすることにより、メタン感度が実用上望ましい大きさに保持され、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタンの濃度が500ppm以下に抑制されている。
【0034】
5 上下層部領域に於ける白金濃度の比率(1)
触媒層下層部の白金濃度を、上層白金濃度に対して1/ 4未満とすることによっても、水素、イソブタンに対する選択性を発現させられる。
図5(イ)(ロ)は、左から実施例16、20、20−2、比較例2−2、1の順にプロットしたものである。例えば、厚さ約400μmの触媒層を形成し、上層部の白金濃度を5重量%(白金の金属比表面積を1.9m2/g)とした場合、酸化物半導体表面から40μm以内の下層部の白金濃度を、上層白金濃度に対して1/4未満とすることによって、メタン感度が増大し、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタンの濃度が500ppm以下に抑制されている。2/ 3を超えると、再び選択性は向上するが、メタン感度が低下する傾向を有する。
【0035】
6 上下層部領域に於ける白金濃度の比率(2)
一方、触媒層上層部の白金濃度が2重量%(白金の金属比表面積が1.4m2 /g)未満である場合でも、請求項5、6に対応する特徴構成の何れかを満たすとにより、水素、イソブタンの感度が抑制されつつ、大きな低濃度感度を発現させることができる。
図6(イ)(ロ)は、左から実施例4−4, 20−6,比較例3−2の順にプロットしたものである。例えば、上層部の白金濃度を0. 5重量%(白金の金属金属比表面積を0.7m2/g)として厚さ約400μmの触媒層を形成した時、酸化物半導体表面から40μm以内の下層部の白金濃度(金属比表面積)を、上層白金濃度(金属比表面積)に対して1/ 4未満とすることによって、メタン感度が大きく、10000ppmの水素や5000ppmのイソブタンと同等の感度を示すメタンの濃度が500ppm以下に抑制されている。
【0036】
7 触媒層上層部の白金濃度
触媒層の気体接触表面側(触媒層上層部)いずれかの部位の白金濃度が1. 5重量%(白金の金属比表面積で1.2m2/g)を超えると、メタン感度を保持しつつ、水素、イソブタンに対する選択性が発現し、さらに2重量%(白金の金属金属比表面積で1.4m2/g)を超えるとプロパンに対する選択性も得ることができる。
図8(イ)(ロ)、図9(イ)(ロ)は、左から比較例9, 実施例18−1, 18, 17, 16, 16−2の順にプロットしたものである。例えば、厚さ約400〜440μmの触媒層を形成し、酸化物半導体表面から40μm以上離れた上層部の白金濃度を1. 5重量%(白金の金属比表面積で1.2m2/g)を上回らせると、水素、イソブタンに対する感度が抑制される。
水素、イソブタンに比べると、プロパンは燃焼活性が低いため、酸化触媒層により除去することは比較的難しい。さらに、酸化物半導体表面から40μm以上離れた上層部の白金濃度を2重量%(白金の金属比表面積で1.4m2/g)を上回らせると、メタン感度を高く保ったまま、5000ppmのプロパンに対する感度と同等の感度を示すメタンの濃度を5000ppm以下に抑制でき、さらに高い選択性が得られていることが解る。
上層部の白金濃度を10重量%(白金の金属比表面積で2.8m2/g)を上回らせると、メタン感度が若干低下するが有意である。
ここで、白金の濃度もしくは1gあたりの表面積の上限に関しては、特に規定するものではなく、検出対象ガスが膜状酸化物半導体表面に到達できればよい。
【0037】
以上が、請求項1〜9に記載の構成の優位性の説明であるが、このような構成のガスセンサにあって、請求項10あるいは11に記載されているように、
前記触媒層中のいずれかの部位にあるいは、酸化物半導体中に、ロジウム、パラジウム、ルテニウムのうち少なくとも一つ以上の貴金属元素を含有することが好ましい。
このような構成を採用すると、メタン感度を増大させたりメタンの選択性をさらに向上させる作用・効果を得ることができるが、特に効果的なパラジウムを添加する場合について、以下説明する。
図10(イ)(ロ)は、左から実施例3, 2, 4の順にプロットしたものである。例えば、厚さ約400μmの触媒層を形成し、酸化物半導体表面から100μm以上離れた上層部に白金を3重量%(白金の金属比表面積が1.6m2/g)およびパラジウムを0. 03重量%(パラジウムの金属比表面積が0.1m2/g)含有させると、実施例3(同図の横軸= 0の点)に見られるように、上層部にパラジウムを含有しない実施例14等に比べてメタン感度が増大している。
さらに上層部にパラジウムを含有する構成で、下層部にもパラジウムを含有させると、一層メタン感度の増大と選択性向上が見られ、下層に0. 05重量%以上にパラジウムを含有させる(あるいはパラジウムの金属比表面積を0.3m2 /g以上とする)と、5000ppmのプロパンに対する感度と同等の感度を示すメタンの濃度を1500ppm 以下に抑制でき、さらに高い選択性が得られる。この例に示されるように、触媒層中にパラジウムを含ませることにより、とりわけ、100ppmのメタンに対する感度が顕著に大きくなる。
【0038】
一方、特に、少なくとも、触媒層中の、酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域あるいは触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域に、パラジウムを含有することが有効である。
図11(イ)(ロ)、図12(イ)(ロ)は、左から実施例14, 13−6, 1, 13, 13−2, 13−4の順にプロットしたものである。例えば、厚さ約400μmの触媒層を形成し、酸化物半導体表面から300μm以上離れた上層部に白金濃度を5重量%含有させ(あるいは白金の金属比表面積を1.9m2/gとする)、下層部領域にパラジウムを含有させると、一層メタン感度の増大と選択性向上が見られ、下層に0. 05重量%以上のパラジウムを含有させる(あるいはパラジウムの金属比表面積を0.3m2/g以上とする)と、5000ppmの プロパンに対する感度と同等の感度を示すメタンの濃度を1500ppm以下に抑制でき、高い選択性が得られる。
この場合、とりわけ、下層に約0. 05〜1重量%程度のパラジウムを含有させる(あるいはパラジウムの金属比表面積を0.3〜2.1m2/g程度とする)と 、特に大きなメタン感度が得られる。さらに下層部のパラジウム濃度を増大させると、水素、イソブタンやプロパン等に対する選択性は良好であるが、メタン感度は低下する傾向を示し、2重量%(あるいはパラジウムの金属比表面積が2.8m2/gを超える)程度までが良い。
【0039】
下層部領域にパラジウムを含有する場合にも、白金を多くとも1重量%以上含有しない(あるいは白金の金属比表面積が1.m2/g未満となる)触媒層下層部の厚みを、2μmあるいは触媒層該当部厚みの1/ 40のいずれか小さい方とすることにより、より望ましい大きな低濃度メタン感度と高い選択性を発現させることが出来る。
図13(イ)(ロ)、図14(イ)(ロ)は、左から比較例8,実施例8, 10, 1, 12の順にプロットしたものである。例えば、上層部領域に白金濃度を5重量%含有させ(あるいは白金の金属比表面積を1.9m2/gとする)、下層部領域にパラジウムを0. 1重量%含有させ(あるいはパラジウムの金属比表面積を0.5m2/gとする)た場合、下層部領域厚みが2μmを超えると、対水素、イソブタン選択性が大きくなり、下層部領域厚みが3μm超えると、対プロパン選択性も大きくなる。
図14に見られるように、下層領域厚みが200μmを超えると、プロパン選択性が低下する傾向が見られるが、プロパンを問題としない検出では有用である。
請求項3の説明で述べたように、一方、例えば、触媒層全体の厚みが薄い場合等では、白金の濃度を1重量%(あるいは白金の金属比表面積を1m2/gとする)未満に抑制しなければならない「酸化物半導体に直接触れる部位近傍領域(下層部領域)」は、酸化物半導体表面からの距離は、パラジウム等を含有する場合にも、触媒層該当部厚みの1/ 40で規定される。
図15(イ)(ロ)、図16(イ)(ロ)は、左から比較例8, 7,実施例9, 25, 10, 1, 12の順にプロットしたものである。例えば、上層部に白金濃度を5重量%含有させ(あるいは白金の金属比表面積を1.9m2/gとする)、下層部にパラジウムを0. 1重量%含有させ(あるいはパラジウムの金属比表面積を0.5m2/gとする)た場合、下層厚み比率が1/ 40を超えると、メタン感度が大きく、対水素、イソブタン、プロパン選択性も高くなり、感度・選択性とも良好なものが得られる。
図16において、下層厚み比率が1/ 4を超えると、プロパン選択性が低下する傾向が見られるが、上記と同様に、プロパンが問題とならない検出では有用である。
また、以上の構成にあって酸化物半導体中にパラジウムを添加することにより、さらにメタン感度を増大させることができる。
図17(イ)(ロ)は、左から実施例10, 22, 23の順にプロットしたものである。例えば、パラジウム含有量の異なる酸化スズ上に、パラジウムを0. 1重量%含有させ(パラジウムの金属比表面積が0.5m2/g)た下層部領域および、白金濃度を5重量%含有させ(白金の金属比表面積を1.9m2/gとする)た上層部領域を積層し、上層部と下層部の厚み比を10:1とした場合、酸化スズ半導体中のパラジウム含有量の増加に伴って、対水素、イソブタン、プロパン選択性を良好に維持したまま、メタン感度を大きくすることができる。
【0040】
本願のガスセンサに於ける触媒層の総厚みに関しては、基本的に薄膜化、厚膜化もともに可能である。ここで、薄化に関しては、薄くすると透過過程での反応時間が短くなってしまうため、メタン以外の感度を抑制したい成分の除去が十分に行えないという限界が存在する。このような場合は、透過速度を抑制し反応時間を稼ぐため、触媒層を比較的緻密にすることが好ましい。低濃度に対する応答性は高く無くても良い用途には、このような構成を採用することでも使用可能である。但し、保温効果が低く、気流の影響を受けやすくなる。このような例は、実施例7,18−6が相当する。
触媒層の総厚みの上限は、メタンを完全に燃焼させてしまわない厚さとしてきまる。また、本願において、総厚み(厚み)が薄いとは、40μm以下を意味する。
【0042】
さらに、請求項13に記載されているように、触媒層における触媒の担体成分としてアルミナ、酸化チタン、ジルコニア、シリカから選ばれる一つ以上の金属酸化物またはその混合物あるいは固溶体を用いることが好ましい。
実施例1〜26では、アルミナを用いているが、実施例27〜29に示されるジルコニアや、酸化チタン、シリカを用いても同様の効果が得られる。例えば、触媒の担体成分としてジルコニアを用いた場合にも、触媒層中に白金をほぼ均一に存在させると、比較例11,12に示されるように、特に(100ppm以下の)低濃度メタンに対する感度だけでなく、選択性も低い。
一方、請求項1〜9の何れかを満たすように、酸化物半導体表面からの距離に応じ白金濃度の異なる触媒を積層させることにより、実施例27〜29に示されるように、低濃度メタン感度・選択性共に向上する。
【0043】
本願において、金属酸化物半導体とは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化銅、酸化鉄などの遷移金属酸化物や酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ビスマス等に代表される金属酸化物を主成分とする半導体材料から構成される感ガス部を有し、その電気抵抗値が、検出ガスの存在や濃度により変化しうるものを言う。
本願の様に、メタン検出を目的とした場合、請求項14に記載されているように、酸化物半導体として、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化ガリウムから選ばれる一つ以上の金属酸化物またはその混合物あるいは固溶体を用いることが好ましい。
特に、酸化物半導体としては、とりわけメタン感度が大きく発現する酸化スズが好ましく、実施例では酸化スズを用いた場合が示されているが、他の金属酸化物半導体でも同様の効果が得られる。
酸化物半導体の形態としては、ブロック状、ペレット状、ビーズ状、膜状のいずれの場合でも、酸化物半導体の表面(気相接触部)を覆うように、ここまで述べたような触媒層を形成すれば、同様の効果が得られる。
素子を効率よく加熱して用いる為に、酸化物半導体を、加熱手段を有する基板上に形成させることが好ましい。
即ち、請求項15に記載されているように、酸化物半導体を、加熱手段を備えた基板上に形成させることが好ましいのである。
この場合、メタンに対する感度を大きくするため、請求項16に記載されているように、酸化物半導体を膜状とし、基板表面に垂直あるいはほぼ垂直の方向に配列した柱状構造粒子の集合体として形成されてことがさらに好ましい。
特に、柱状構造組成の径(半導体表面に平行もしくはほぼ平行に計測される径)が、0.001〜10μmの範囲にあることが好ましい。
ここで、「基板表面に垂直あるいはほぼ垂直の方向に配列した柱状構造粒子」とは、微小な結晶粒子の集合体である柱状構造粒子自体が、基板表面に垂直もしくはほぼ垂直の方向に長手方向を備えて、成長、構成されていることを意味する。更に、その径は、概略、基板表面に沿った方向で測定する。
さて、このようなガスセンサを利用して、検出対象のガスの有無、濃度検出、さらには警報発生を行おうとする場合は、請求項17に記載されているように、
これまで説明してきたいずれか1項に記載のガスセンサを備え、このガスセンサの抵抗値の変化を電気的出力として検出する検出回路を備え、検出回路により検出される電気的出力に基づいて、検出対象ガスに関係したガス情報を出力する出力手段を備えておけば良い。
このガスセンサは、メタン等の検出対象ガスに対して感応して、その抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を、検出回路における電気的出力として捉え、この出力に基づいて、検出対象ガスの有無、濃度、警報等のガス情報を出力手段から出力することで、ガス検出の様々な用途に対して実用できる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本願ガスセンサの構成及びその製造方法、さらには、その特性の測定方法に関して説明する。
ガスセンサの構造
ガスセンサ1は、図18(イ)に示すように、加熱手段としての膜状ヒーター2を備えた絶縁基板3(例えばアルミナ基板)上に、酸化物半導体(例えば酸化スズ)からなる感応層4を備えると共に、この感応層4を覆うように、触媒層5を設けて形成される。この感応層4の両端部には、この層4の抵抗値の変化を検出するための一対の電極6a,6bが設けられる。更に、上記の触媒層5は、これまで説明してきたように、前記感応層表面40に接触する側に設けられる触媒層下層部領域5aと触媒層上層部領域5bとに別れる。
【0045】
このような基板3としては、この基板の何れかの部位に膜状ヒーター2を設けたものを用いることができる。即ち、図18(イ)のように、基板下部に設ける他、図18(ロ)に示されるような、シリコン基板上にSiO2 絶縁層を形成し、膜状ヒーター2を内蔵した基板を用いることもできる。
さらに、前記触媒層下層部領域5aの厚み、さらに触媒層上層部領域5bの厚みは、先に説明した表1、2、4、5に示したようにしたが、この内、特に触媒層下層部5a側部(基板側に感応層である半導体層を備えず、直接、触媒層下層部が基板に接触している部位)の厚みは,いくら厚くなっても感度や選択性に殆ど影響しない。
【0046】
ガスセンサの製造方法
所定の基板3を用意し、所定の位置に一対の電極6を設けておく。次に、この基板3及び電極6にかかるように、それらの表面に垂直あるいはほぼ垂直の方向に配列した径0.001〜10μmの柱状構造粒子の集合体として酸化スズ薄膜を形成する。この製膜手法としては、例えば特開昭63- 008548に示されるようなスパッタリング法により、形成する。
即ち、ここまで述べた実施例のように、酸化スズを採用する場合は、酸化スズを主成分とするターゲットを用い、酸素/アルゴンの比を約1/ 8とし、3パスカルの圧力条件下、高周波出力180Wで、成膜を行う。このようにすることによって、酸化物半導体からなる感応層4としての、酸化スズ薄膜は基板上に設けられた電極の一部分を覆うように形成できる。
【0047】
触媒層5は、形成する厚みに応じて、例えば、触媒材料を含むペーストを用いた塗布法やスクリーン印刷法、ドクターブレード法等、あるいはスパッタリング法等により形成される。
ここまで述べた実施例の多くでは、まず触媒層下層部用触媒に溶媒やバインダーを調合してペースト化し、スクリーン印刷法あるいは塗布法により酸化スズ薄膜の表面40を覆い隠すように所定の厚みで形成し乾燥させた後、触媒層上層部用触媒を同様にペースト化したものをスクリーン印刷法あるいは塗布法により触媒層下層部5aを覆い隠すように所定の厚みで形成し乾燥させた後焼成した。
触媒層厚みが薄い場合には、目的の触媒層組成に応じた所定組成のターゲットを用い、スパッタリング法により触媒層5を順次形成させた。
以上のようにして、本願のガスセンサを得ることができる。
【0048】
センサ特性の測定
先に説明したセンサ特性(メタン感度、メタン相当濃度)の測定にあたっては、酸化スズ薄膜部が約450℃となる様に加熱した状態で感度を測定した。
以上説明したようにすることで、ガスセンサを得ることができ、その特性を確認できた。表1、2、4、5にこれらの実施例の結果を示したが、比較例は、実施例に準じて製造すると共に、その特性を測定した結果を表3、6に示した。
さらに、図20、21、22、23に、実施例1、実施例14、比較例1、比較例4の具体的なセンサ特性を示した。横軸は各ガスの濃度、縦軸は各ガスを含まない空気中での抵抗値で各ガス中の抵抗値を割ったものを示している。 図の上部部位に、触媒層下層部領域5aと触媒層上層部領域5bとの厚み及びその材料を示した。
【0049】
これまで説明してきたガスセンサ1を使用したガス検出器を構成する場合は、図24に示すような構成を採用することができる。
この機能ブロック図においては、これまで説明してきたガスセンサ1を可変抵抗Rsとして示している。図24の構成は、定電圧源10を使用する場合のものであり、可変抵抗Rsとしてのガスセンサと、固定抵抗Roとを直列に定電圧源10に接続し(可変抵抗Rsの端子は、先の一対の電極6(6a,6b)を使用する)、この固定抵抗Roを挟んだ端子13間の電圧出力Voutを検出する構造を採用する。このような回路を検出手段と称する。
さて、電圧出力VoutはA/D変換器14によりA/D変換し、この様にして得られるデジタルデーターに基づいて、採用されているガスセンサの感度特性(抵抗値もしくは、これに対応する電圧出力と検出対象ガスのガス濃度との関係を示す感度特性)から、ガス濃度を求める。一方、ガス濃度あるいは抵抗値は、予め設定される閾値と比較され、これが閾値を越えた場合に、ガスガ検出された等の警報を発生するものとする。この操作は、マイクロプロセッサー15によって行われる。さらに、処理された情報は、濃度表示手段17、警報発生、表示手段16等に送られ、外部出力される。本願にあっては、マイクロプロセッサー15、表示手段16、17等を纏めて出力手段と称する。従って、濃度出力及び警報が、この例の場合はガス情報となる。更に、このようなガス情報としては、検出対象ガスの有無の情報であっても良い。
このようにして、ガス検出器を構成することができる。
このように、ガスセンサにおける検出対象ガスとの接触による抵抗値の変化を電気的出力として取り出す構成としては、公知の任意の構成を採用でき、例えば、ブリッジ回路の一片にガスセンサの抵抗を用いる構成や、定電流源を利用し電圧を検出する構成等も採用できる。
図24は、A/D変換器14を用いた回路を示したが、オペアンプ等を用いたアナログデーターに基づいて濃度表示手段、警報発生、表示手段等により外部出力してもよい。
【0050】
〔別実施形態〕
(イ) 以上、ここに挙げた例では、本発明の範囲や効果を定量的に明確に説明しやすくするため、触媒層の上層部領域、下層部領域の構成を単純にして、二層の組成の異なる触媒を順次積層して、酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒層を形成させているが、三層以上の組成の異なる触媒層の多重積層を行ったりしても、ここまで説明したものと同様の効果を発現させることが出来る。
(ロ)これまで説明してきたガスセンサの構造としては、所謂、基板型のものを示したが、本願発明は、基板型のみならず、図19に示すような、電極及びヒーターを兼ねる電極線10のコイルの周りに、酸化物半導体からなる感応層4を形成し、この周部に触媒層5を形成する場合も適応できる。この場合も、触媒層5内において、感応層4に接触する側を触媒層下層部領域5a,外側を触媒層上層部領域5bとみなして、本願の特徴構成を適応すれば良い。
【0051】
【発明の効果】
本願ガスセンサあるいはガス検出器(警報発生機能も含む)にあっては、比較的低濃度のメタンガスに対して有意な感度を備え、メタン以外の妨害ガスに対して選択性を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来構成のガスセンサの特性を示す図
【図2】ガスセンサの特性を示す図
【図3】ガスセンサの特性を示す図
【図4】ガスセンサの特性を示す図
【図5】ガスセンサの特性を示す図
【図6】ガスセンサの特性を示す図
【図7】ガスセンサの特性を示す図
【図8】ガスセンサの特性を示す図
【図9】ガスセンサの特性を示す図
【図10】ガスセンサの特性を示す図
【図11】ガスセンサの特性を示す図
【図12】ガスセンサの特性を示す図
【図13】ガスセンサの特性を示す図
【図14】ガスセンサの特性を示す図
【図15】ガスセンサの特性を示す図
【図16】ガスセンサの特性を示す図
【図17】ガスセンサの特性を示す図
【図18】本願構成のガスセンサの構造を示す図
【図19】本願構成のガスセンサの構造を示す図
【図20】実施例1の特性を示す図
【図21】実施例14の特性を示す図
【図22】比較例1の特性を示す図
【図23】比較例4の特性を示す図
【図24】ガス検出器の構成を示す図
【符号の説明】
1 ガスセンサ
2 加熱手段(膜状ヒーター)
3 基板
4 感応層(酸化物半導体層)
5 触媒層
5a 触媒層の下層部領域
5b 触媒層の上層部領域
6 電極
Claims (17)
- 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じて組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域には、白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有し、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、1.5重量%以上の白金を含有する上層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じて組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域においては、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.0m2以下であり
、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上の上
層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域には、白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有し、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、1.5重量%以上の白金を含有する上層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域は、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.0m2以下であり、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上の上層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
前記触媒層中に、酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から少なくとも2μm以上離れた部分のいずれかに、前記酸化物半導体表面からの距離が2μm未満の下層部領域における白金の含有率の4倍以上の含有率の白金を含有する上層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 酸化物半導体と、この酸化物半導体の表面を覆うように設けられた触媒層を有し、
酸化物半導体表面からの距離に応じ組成の異なる触媒を積層されて構成され、妨害ガスとしての水素、イソブタンに対して選択的にメタンを検出するガスセンサであって、
前記触媒層における触媒の担体成分に絶縁性酸化物を用い、前記触媒層が多孔質層として形成され、
前記触媒層中の、前記酸化物半導体表面から触媒層該当部厚みの少なくとも1/40以上離れた部分のいずれかに、前記酸化物半導体表面からの距離が触媒層該当部厚みの1/40未満の下層部領域における白金の含有率の4倍以上の含有率の白金を含有する上層部領域が存在することを特徴とするガスセンサ。 - 前記上層部領域に1.5重量%以上の白金を含有し、前記下層部領域に白金を含有しない、もしくは1重量%未満の白金を含有する請求項5または6記載のガスセンサ。
- 前記上層部領域は触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.4m2以上であり、前記下層部領域は、触媒層構成材料1g当たりの白金の表面積が1.0m2以下である請求項5または6記載のガスセンサ。
- 前記上層部領域に、前記下層部領域の4倍以上の含有率の白金を含有する請求項1、2、3または4記載のガスセンサ。
- 前記触媒層中のいずれかの部位に、ロジウム、パラジウム、ルテニウムのうち少なくとも一つ以上の貴金属元素を含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のガスセンサ。
- 前記酸化物半導体中に、ロジウム、パラジウム、ルテニウムのうち少なくとも一つ以上の貴金属元素を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のガスセンサ。
- 前記下層部領域に、パラジウムを含有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載のガスセンサ。
- 前記触媒層における触媒の担体成分としてアルミナ、酸化チタン、ジルコニア、シリカから選ばれる一つ以上の金属酸化物またはその混合物あるいは固溶体を用いることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載のガスセンサ。
- 前記酸化物半導体として、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化ガリウムから選ばれる一つ以上の金属酸化物またはその混合物あるいは固溶体を用いることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載のガスセンサ。
- 酸化物半導体を、加熱手段を備えた基板上に形成させることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載のガスセンサ。
- 酸化物半導体を膜状とし、その膜状酸化物半導体が、基板表面に垂直あるいはほぼ垂直の方向に配列した柱状構造粒子の集合体として形成されてることを特徴とする請求項15記載のガスセンサ。
- 請求項1〜16のいずれか1項記載のガスセンサを備え、前記ガスセンサの抵抗値の変化を電気的出力として検出する検出回路を備え、前記検出回路により検出される前記電気的出力に基づいて、検出対象ガスに関係したガス情報を出力する出力手段を備えたガス検出器。
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JP2000356614A (ja) | 2000-12-26 |
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