JP2015034444A - 構造体の補強装置および補強方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、焼入れした棒鋼を表面のみ焼き戻すことにより、表面から所定の深さまでが低強度部とされ、低強度部の内側は高強度部とされた鋼材の従来例がある。この従来例では、低強度部および高強度部のそれぞれの強度やこれらの強度差、低強度部の深さなどを均一に管理することが難しく、施工品質の安定性の確保が課題となる。
特許文献1の従来例では、降伏点とエネルギー消費量とを両方大きく確保できる上、
棒鋼ではなく鋼管が高強度鋼材とされているため、棒鋼の強度が鋼管の強度よりも高強度とされた場合と比較して、圧縮力作用時に高強度鋼材が降伏せずに棒鋼を拘束する弾性範囲を大きく確保できる。そのため、降伏点とエネルギー消費量との両方をより大きく確保できるので、地震時や暴風時などの非常時の荷重エネルギーを十分に吸収できる。さらに、鋼管および棒鋼が予め組み立てられて鋼材が形成されるため現場での施工点数が増えず、施工品質の安定性の確保が容易となるという利点もある。
そのため、前述のような利点を有する特許文献1の従来例を具体的に構造躯体に取り付けるための補強装置が望まれている。
構造躯体に取り付けられた鋼材では、第一被取付部および第二被取付部を介して伝えられる荷重エネルギーにより、鋼管に引張力が作用した際には、鋼管と棒鋼との端部同士が適宜な固定手段により固定されているため、鋼管および棒鋼が伸びる。一方、荷重のエネルギーにより鋼管に圧縮力が作用した際には、鋼管に作用した圧縮力が固定部材を介して棒鋼に伝達されることにより、棒鋼は鋼管の端部から飛び出したり、撓んだりすることなく、鋼管内に拘束された状態で圧縮される。
棒鋼の降伏点を超える荷重が加わり棒鋼が降伏した後も鋼管は弾性範囲内で変形するため、鋼管の降伏点に棒鋼による負担分を加えた鋼材全体としての大きな降伏点が得られる。降伏後の棒鋼は、荷重による応力が増加することなく鋼管により拘束された状態で歪みだけが増加するため、荷重の載荷および除荷によるヒステリシスを大きく確保できる。棒鋼の履歴性状に対応する荷重エネルギーが消費されることから、エネルギー消費量を大きくできる。
以上のように、本発明では、鋼管が棒鋼よりも高強度とされ、かつ棒鋼が鋼管よりも低降伏点とされていることにより、鋼材全体としての降伏点を大きくできるとともに、エネルギー消費量を大きくできる。しかも、鋼管および棒鋼のそれぞれの端部同士を適宜な固定手段によって固定することにより、現場施工前にこれらの鋼管および棒鋼を一体化することが可能となるので、現場での施工点数が増えない。
この構成では、第一被取付部および第二被取付部の少なくとも一方がコンクリート体に係止されるので、地震等によって、コンクリート体を介して鋼管に荷重エネルギーが伝わっても、この荷重エネルギーを鋼材で十分に吸収することができるので、構造体の補強を十分に行うことができる。
この構成では、地震等によって基礎を介してアンカープレートとベースプレートとの間に相対的に近接あるいは離隔する方向の力がかかっても、地震等の荷重エネルギーを鋼材で十分に吸収することができる。
この構成では、一対の固定部材のうち一方が第一係止部を兼ねるため、部品点数の減少を図ることができる。そのため、補強装置を安価なものにできる。しかも、アンカープレートを固定部材と締結具とで挟持しているため、鋼材から伝達される力がアンカープレートを介して基礎に確実に伝達されるので、鋼材が基礎から抜けることを防止でき、さらに、荷重エネルギーを鋼材で十分に吸収することができる。
この構成では、第一プレキャストコンクリート体を挟んで第二プレキャストコンクリート体を接合するため、まず、棒鋼が内部に挿入されるとともに棒鋼の両端部がそれぞれ固定された鋼管を第二プレキャストコンクリート体のリブ、第一プレキャストコンクリート体および前記第二プレキャストコンクリート体のリブの順で貫通させる。その後、リブから突出した鋼管の一端部を一方の固定部材で係止し、鋼管の他端部を必要に応じて、ナット等の締結具を用いて第二被取付部であるリブに取り付ける。
そのため、鋼材によって、第一プレキャストコンクリート体および第二プレキャストコンクリート体からなる建物を確実に補強することができる。ここで、前記第一プレキャストコンクリート体は柱であり、前記第二プレキャストコンクリート体は前記柱を挟んで配置された梁である構成としてもよい。
前記第一被取付部および前記第二被取付部は、それぞれ前記柱と前記梁との設置部分に埋設される金具を備えている構成が好ましい。
この構成では、柱と梁とからなる開口を補強するにあたり、この開口の互いに対向する設置部分に鋼材を掛け渡し、これらの設置部分の一方に第一被取付部を構成する金具を埋設し、設置部分の他方に第二被取付部を構成する金具を埋設する。そのため、地震等によって開口が変形しようとしても、その変形に伴う荷重エネルギーを鋼材で吸収することになるので、建物の開口を効果的に補強することができる。
この構成では、位置決め用プレートを用いることで、鋼管の型枠内のセットを容易に行うことができる。しかも、鋼管の位置決め後は、位置決め用プレートを鋼管から外し、位置決め用プレートがあった場所にベースプレートを設けることで、ベースプレートに設けられる構造躯体をコンクリートに確実に接合することができる。
図1から図5には本発明の第1実施形態が示されている。
第1実施形態は、プレキャストコンクリート体の柱および梁を補強する補強装置100である。
図1および図2は第1実施形態の全体構成を示す。
図1および図2において、構造躯体は、柱を構成する長尺状の第一プレキャストコンクリート体C1と、この第一プレキャストコンクリート体C1を挟みかつ水平方向に延びて配置される梁を構成する2本の第二プレキャストコンクリート体B1とを備えている。これらの第一プレキャストコンクリート体C1および第二プレキャストコンクリート体B1を組み合わせて構造物である建物が施工される。
第二プレキャストコンクリート体B1の端部は、段部C’に係止されている。
第二プレキャストコンクリート体B1は、梁本体B10と、この梁本体B10の上下にそれぞれ形成されたフランジ部B11と、これらのフランジ部B11の端部を閉塞し第一プレキャストコンクリート体C1を挟んだ状態で互いに対向されたリブB121,B122とを有する。これらのリブB121,B122は、それぞれ第一プレキャストコンクリート体C1の側面に当接される。リブB121,B122には、それぞれ貫通孔Coと軸心が一致しかつ同一内径の貫通孔Boが形成されている。
本実施形態では、図1において、右側に位置するリブB121から第一被取付部が構成され、左側に位置するリブB122から第二被取付部が構成される。なお、第一プレキャストコンクリート体C1を梁とし、第二プレキャストコンクリート体B1を、当該梁を挟んで配置された柱としてもよい。
鋼材1は、貫通孔Bo,Coを貫通し、両端部がリブB121,B122から突出した曲げ引張鋼材10と、曲げ引張鋼材10における軸方向一端側の部分をリブB121に取り付けられる取付ナット15と、曲げ引張鋼材10における軸方向一端部に設けられる固定部材としての第一袋ナット16と、曲げ引張鋼材10の軸方向他端部に設けられて曲げ引張鋼材10をリブB122に取り付けられた固定部材としての第二袋ナット17とを備えている。
取付ナット15とリブB121との間には、ワッシャー181が介装されている。ワッシャー181とリブB121との間にはアンカープレート191が介装されている。アンカープレート191は、左右それぞれ2本の曲げ引張鋼材10を同時に係合する2枚から構成されてもよく、個々の曲げ引張鋼材10を係合するために合計4枚から構成されるものでもよい。第1実施形態では、取付ナット15、ワッシャー181およびアンカープレート191からリブ121を係止する第一係止部が構成されている。
第二袋ナット17とリブB122との間にはワッシャー182が介装されている。ワッシャー182とリブB122との間にはアンカープレート192が介装されている。アンカープレート192は、4本の曲げ引張鋼材10を同時に係合する1枚から構成されてもよく、個々の曲げ引張鋼材10を係合するために合計4枚から構成されるものでもよい。
第1実施形態では、第二袋ナット17、ワッシャー182およびアンカープレート192からリブB122を係止する第二係止部が構成される。
図1および図4に示される通り、鋼管11は、高強度鋼材により形成され、その両端部の端縁からリブB121,B122に固定される位置までを含む部分にはそれぞれ、鋼管雄ネジ部11Aが形成されている。
鋼管11は、棒鋼12の強度よりも高強度であり、鋼管11の強度は、降伏点または0.2%耐力が390N/mm2を超えるか、もしくは引張強さが490N/mm2を超えるように設定されている。本実施形態において、「高強度」とは、降伏点または0.2%耐力が390N/mm2を超えるか、もしくは引張強さが490N/mm2を超えることを言う。
図3および図5に示される通り、棒鋼12の両端部にはそれぞれ、鋼管11の端部から突出する棒鋼雄ネジ部12Aが形成されている。棒鋼12は、鋼管11に比べて低降伏点の鋼材とされている。
なお、1本の棒鋼12に高降伏点領域と低降伏点領域とを形成するには、種々の方法を採用できる。例えば、低降伏点領域からなる鋼材と、高降伏点領域からなる鋼材とを、圧接、摩擦圧接、溶接、接着剤、ねじ止め等によって接合する。また、棒鋼12を製造するために、全体が低降伏点領域と同じ降伏点の鉄筋用棒状体を用意し、この鉄筋用棒状体の一端部側を熱処理して高降伏点領域を形成するものでもよい。
[棒鋼固定工程]
工場において、鋼管11の内部に棒鋼12を挿入し、各棒鋼雄ネジ部12Aにそれぞれ丸ナット13を螺合する。この際、丸ナット13の座面と鋼管11の端面とが密着するまで丸ナット13をきつくねじ込む。このように鋼管11と棒鋼12とが一体化されることにより、棒鋼が固定されて曲げ引張鋼材10が組み立てられることになる。
[第一係止工程]
第一プレキャストコンクリート体C1及び第二プレキャストコンクリート体B1を工場で製造し、これらを建設現場まで搬送する。
建設現場では、第一プレキャストコンクリート体C1を柱として立設し、この第一プレキャストコンクリート体C1の段部C’に梁を構成する第二プレキャストコンクリート体B1を係止する。
さらに、これらの第一プレキャストコンクリート体C1および第二プレキャストコンクリート体B1のリブB121,B122に貫通された貫通孔Co,Boに曲げ引張鋼材10を挿入する。
その後、鋼管11の一端部にアンカープレート191およびワッシャー181を設けるとともに、鋼管雄ネジ部11Aに取付ナット15をねじ込んで鋼管11とリブB121とを係止する。
鋼管11の他端部にアンカープレート192およびワッシャー182を設けるとともに、鋼管雄ネジ部11Aに第二袋ナット17をねじ込んで、所定のトルクで鋼管11を締め付ける。これにより、鋼管11とリブB122とが係止される。ここで、曲げ引張鋼材10を緊張してもよく、その場合には油圧ジャッキ等を使用する。
[圧縮工程]
その後、第一袋ナット16を鋼管雄ネジ部11Aに螺合する。この際、第一袋ナット16の底面と丸ナット13とを密着させる。以上により、鋼管11が固定部材である第一袋ナット16と第二袋ナット17とで圧縮されるとともに棒鋼12が軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえることになる。
曲げ引張鋼材10に引張力が作用すると、リブB121,B122に固定された鋼管11と、鋼管11に丸ナット13で固定された棒鋼12とが伸びる。一方、鋼管11に圧縮力が作用すると、鋼管11が弾性範囲内で圧縮変形するとともに、鋼管11に作用した圧縮力が第一袋ナット16および丸ナット13を介して棒鋼12に伝達される。すなわち、第一袋ナット16が棒鋼12を軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえるため、棒鋼12は鋼管11の端部から飛び出したり撓むことなく、鋼管11内に拘束された状態で圧縮される。
(1)補強装置100は鋼材1を備え、この鋼材1は、第二プレキャストコンクリート体B1のリブB121,B122に設けられた鋼管11と、鋼管11に挿入され両端部がそれぞれ鋼管11の端部に固定される棒鋼12と、鋼管11の両端部にそれぞれ設けられ棒鋼12を鋼管11に固定するとともに鋼管11が圧縮された際に棒鋼12を軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえる第一袋ナット16および第二袋ナット17と、鋼管11に取り付けられリブB121に係止される取付ナット15と、鋼管11に取り付けられリブB122に係止される第二袋ナット17とを備え、鋼管11を、棒鋼12の強度よりも高強度とし、かつ棒鋼12を、鋼管11の降伏点よりも低降伏点とした。そのため、取付ナット15と第二プレキャストコンクリート体B1のリブB121とを係止し、第二袋ナット17と第二プレキャストコンクリート体B1のリブB122とを係止したので、地震等によって生じる荷重エネルギーが補強装置100によって確実に鋼材1に伝わることになる。しかも、鋼材全体としての降伏点を大きくできるとともに、エネルギー消費量を大きくできる。その上、鋼管11および棒鋼12のそれぞれの端部同士を固定することにより、現場施工前にこれらの鋼管11および棒鋼12を一体化することが可能となるので、現場での施工点数が増えない。
第2実施形態は基礎に設けられた柱を補強する補強装置200である。
図6は第2実施形態の全体構成が示されている。
図6において、構造躯体は、コンクリートを打設して形成される基礎Dと、この基礎Dの上に設けられた柱体Cとを備えて構成されている。柱体Cは、基礎Dの上面に配置されたベースプレート20と、このベースプレート20に立設された柱C2とを備えている。基礎Dとベースプレート20との間にはグラウト材Gが設けられている。
補強装置200は、柱C2を挟んで前後左右に配置されていた4本(図6では2本のみ示す)の鋼材1を備えて構成されている。
第2実施形態では、取付ナット15から第一係止部が構成される。第一定着ナット26および第二定着ナット27から一対の固定部材が構成される。第二定着ナット27は第二係止部を兼ねる。アンカープレート22から第一被取付部が構成され、ベースプレート20から第二被取付部が構成される。
鋼管11の上端部には、取付ナット15および第一定着ナット26を螺合するための鋼管雄ネジ部11Aが形成されている。鋼管11の下端部には、締結具21(図7では図示省略)および第二定着ナット27を螺合するための鋼管雄ネジ部11Aが形成されている。
鋼管11と棒鋼12との強度の関係は第1実施形態と同じである。
[棒鋼固定工程]
第1実施形態と同様に、工場において、鋼管11の内部に棒鋼12を挿入し、各棒鋼雄ネジ部12Aにそれぞれ丸ナット13を螺合する。鋼管11と棒鋼12とが一体化されることにより、棒鋼が固定されて曲げ引張鋼材10が組み立てられることになる。
図8に示される通り、建設現場において、鋼管11の下端部の鋼管雄ネジ部11Aに締結具21を螺合し、アンカープレート22を鋼管11の下端から挿通し、その後、第二定着ナット27を鋼管雄ネジ部11Aに螺合する。第二定着ナット27を十分に締め付けてアンカープレート22を第二定着ナット27と締結具21とでぐらつかないように挟持する。
第一係止工程の後に、鋼管11の上端部に位置決め用プレート23を一対の組立用薄ナット24で取り付ける。
型枠内にコンクリートスラリーを打設する。コンクリートスラリーの打設後に所定時間が経過すると、コンクリートスラリーが硬化して基礎Dとなる。コンクリートスラリーが硬化した後、位置決め用プレート23を鋼管11から取り外す。
図9に示される通り、位置決め用プレート23が取り外された鋼管11の上端部にベースプレート20を係止する。そのため、取付ナット15を鋼管11の上端部に形成された鋼管雄ネジ部11Aに螺合してベースプレート20を係止する。
その後、ベースプレート20と基礎Dの上面との間にグラウト材Gを充填する。
[圧縮工程]
その後、第一定着ナット26を鋼管雄ネジ部11Aに螺合する。これにより、鋼管11が第一定着ナット26と第二定着ナット27とで圧縮されるとともに棒鋼12が軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえられることになる。
圧縮工程が終了したら、型枠を外す。
曲げ引張鋼材10に引張力や圧縮力が作用すると、ベースプレート20とアンカープレート22とに係止された鋼管11と、鋼管11に丸ナット13で固定された棒鋼12とが伸び、あるいは、圧縮する。鋼管11に作用した圧縮力が第一定着ナット26および丸ナット13を介して棒鋼12に伝達されると、第一定着ナット26が棒鋼12を軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえるため、棒鋼12は鋼管11の端部から飛び出したり撓むことなく、鋼管11内に拘束された状態で圧縮される。
(7)基礎Dに曲げ引張鋼材10を上端部が露出した状態で埋設し、鋼管11の下端部にアンカープレート22を取り付け、鋼管11の上端部に基礎Dの上面と対向するベースプレート20を取り付けたので、地震等によって基礎Dを介してアンカープレート22とベースプレート20との間に相対的に近接あるいは離隔する方向の力がかかっても、地震等の荷重エネルギーを曲げ引張鋼材10で十分に吸収することができる。
第3実施形態は、鋼材1をPC造の緊張材として使用した補強装置300である。
図11には第3実施形態の全体構成が示されている。
図11において、構造躯体は、鋼材1によってプレストレスが付与されるコンクリート製のブロックEである。ブロックEには挿通孔Eoが貫通して形成されている。
補強装置300は、複数本(図11では1本のみ示す)の鋼材1を備えて構成されている。
第3実施形態では、定着板31から第一被取付部が構成され、定着板32から第二被取付部が構成される。
曲げ引張鋼材10は、鋼管11と、鋼管11に挿入される棒鋼12と、これらの鋼管11と棒鋼12とを固定する丸ナット13とを有している。
鋼管11と棒鋼12との強度の関係は第1実施形態と同じである。
[棒鋼固定工程]
図12に示される通り、工場において、鋼管11の内部に棒鋼12を挿入し、図13に示される通り、各棒鋼雄ネジ部12Aにそれぞれ丸ナット13を螺合する。鋼管11と棒鋼12とが一体化されることにより、曲げ引張鋼材10が組み立てられることになる。
[第一係止工程]
建設現場では、図14に示される通り、ブロックEの挿通孔Eoに曲げ引張鋼材10を挿入し、この曲げ引張鋼材10の鋼管11の一端部に定着板31を取り付け、他端部に定着板32を取り付ける。
図15に示される通り、鋼管11の他端部の鋼管雄ネジ部11Aに第二定着ナット27をねじ込む。これにより、鋼管11と定着板32とが係止される。
第3実施形態では、曲げ引張鋼材10に緊張力を付与する。その場合には、定着ナット15を予め鋼管雄ネジ部11Aにねじ込んでおく。緊張力の付与のために、油圧ジャッキ等を使用する。
鋼管11の他端部の鋼管雄ネジ部11Aに取付ナット15を螺合し、取付ナット15とブロックEとで定着板31を挟持する。
[圧縮工程]
その後、第一定着ナット26を鋼管雄ネジ部11Aに螺合する。この際、第一定着ナット26の底面と丸ナット13とを密着させる。以上により、鋼管11が固定部材である第一定着ナット26と第二定着ナット27とで圧縮されるとともに棒鋼12が軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえることになる。
さらに、必要箇所にグラウト材(図示せず)を充填する。
曲げ引張鋼材10に引張力が作用すると、鋼管11と棒鋼12とが伸びる。一方、鋼管11に圧縮力が作用すると、鋼管11が弾性範囲内で圧縮変形するとともに、鋼管11に作用した圧縮力が第一定着ナット26および丸ナット13を介して棒鋼12に伝達される。
(10)プレストレストを付与する対象であるブロックEに、鋼管11および棒鋼12を有する曲げ引張鋼材10を挿通し、ブロックEと取付ナット15とで定着板31を挟持し、第二定着ナット27とブロックEとで定着板32を挟持する構成としたので、これらの定着板31,32の間に相対的に近接あるいは離隔する方向の力がかかっても、地震等の荷重エネルギーを曲げ引張鋼材10で十分に吸収することができる。
第3実施形態は、鋼材1を建物の開口を補強するための補強装置400である。
図16には第4実施形態の全体構成が示されている。
図16において、建物Hが基礎Fに設けられている。建物Hの構造躯体は、それぞれ複数本の柱C4と、梁B4とを備えている。柱C4と梁B4とで囲われる平面矩形状の開口Wには第4実施形態の補強装置400が取り付けられている。これらの柱C4や梁B4は、木製でもよく、コンクリート製でもよい。コンクリート製の場合には、現場打ちコンクリートでもプレキャストコンクリートでもよい。
補強装置400は、開口Wのうち互いに対向する入り隅部分の対角線上に掛け渡される鋼材1と、この対角線とは交差する対角線に沿った入り隅に掛け渡される鋼材1とを有する。これらの鋼材1は、2本が1組とされるブレースを構成する。
鋼材1は、図16に示される通り、全ての開口Wに設けてもよいが、一部の開口Wに設けるものであってもよい。
図17において、柱C4と梁B4とが交差する部分が鋼材1の設置部分H4である。
鋼材1は、両端部が構造躯体の互いに対向する設置部分H4に設置される曲げ引張鋼材10と、曲げ引張鋼材10の一端部に設けられる取付ナット15と、曲げ引張鋼材10の一端部に設けられる第一袋ナット16と、曲げ引張鋼材10の他端部に設けられた第二袋ナット17とを備えている。
曲げ引張鋼材10は、鋼管11と、鋼管11に挿入される棒鋼12と、これらの鋼管11と棒鋼12とを固定する丸ナット13とを有している。鋼管11と棒鋼12との強度の関係は第1実施形態と同じである。
曲げ引張鋼材10の一端部、取付ナット15、第一袋ナット16および第一金具41は設置部分H4に埋設されている。第4実施形態では、第一金具41が構造躯体の第一被取付部を構成する。
鋼管11の他端部には、板状の第二金具42が第二袋ナット17により取り付けられている。この第二金具42には、鋼管11を挿通する孔42Aが形成されている。
曲げ引張鋼材10の他端部、第二袋ナット17および第二金具42は、設置部分H4に埋設されている。第4実施形態では、第二袋ナット17が構造躯体の第二被取付部を構成する。
また、設置部分H4は、開口Wの入り隅部分ではなく、互いに対向する柱C4、あるいは、互いに対向する梁B4としてもよい。すなわち、鋼材1は、ブレースとして機能するものであれば、その設置箇所は限定されない。
[棒鋼固定工程]
工場において、鋼管11の内部に棒鋼12を挿入し、各棒鋼雄ネジ部12Aにそれぞれ丸ナット13を螺合して曲げ引張鋼材10を製造する。
柱C4や梁B4に第一金具41や第二金具42を埋設しておき、さらに、取付ナット15、第一袋ナット16、第二袋ナット17を取り付けるためのスペースや曲げ引張鋼材10の端部を挿入するスペースを予め形成しておく。
第一金具41の孔41Aに鋼管11の一端部を挿入し、鋼管雄ネジ部11Aに取付ナット15を螺合して第一金具41を係止する。
[第二係止工程]
第二金具42の孔42Aに鋼管11の他端部を挿入し、鋼管雄ネジ部11Aに第二袋ナット17を螺合して第二金具42を係止する。
[圧縮工程]
その後、第一袋ナット16を鋼管雄ネジ部11Aに十分に螺合する。これにより、鋼管11が固定部材である第一袋ナット16と第二袋ナット17とで圧縮されるとともに棒鋼12が軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえられることになる。
(11)柱C4と梁B4とからなる開口Wを補強するにあたり、開口Wの互いに対向する設置部分H4に鋼材1を掛け渡し、これらの設置部分H4の一方に第一被取付部を構成する第一金具41を埋設し、設置部分H4の他方に第二被取付部を構成する第二金具42を埋設するため、地震等によって開口Wが変形しようとしても、その変形に伴う荷重エネルギーを鋼材1で吸収することになるので、建物の開口Wを効果的に補強することができる。
例えば、前記第1実施形態から第3実施形態では、構造躯体をコンクリート製としたが、本発明の構造躯体はコンクリート製に限定されるものではなく、木質や金属の構造躯体であってもよい。
また、第4実施形態では、施工する建物自体の開口を補強する構成であったが、本発明では、既設建物の開口を建物施工後に補強する場合にも適用できる。
例えば、既存建物の窓部以外の位置にコンクリート製の補強柱とコンクリート製の補強梁とを新たに設け、これらの補強柱と補強梁で構成されるフレーム構造の互いに対向する隅部の少なくとも一対に鋼材1を掛け渡した構成でもよい。この場合、補強柱と補強梁との交差部分に鋼管11を係合するための金具を設ける。
さらに、第二袋ナット17および第二定着ナット27は固定部材と係止部との双方の機能を有するものに限定されるものではなく、係止部として、別途、ナットを設けるものでもよい。
Claims (8)
- 構造躯体に鋼材を取り付けて構造体を補強する装置であって、
前記構造躯体には、互いに対向する第一被取付部および第二被取付部が設けられ、
前記鋼材は、軸方向両端側の部分がそれぞれ前記第一被取付部と前記第二被取付部とに取り付けられる鋼管と、前記鋼管に挿入され、両端部がそれぞれ前記鋼管の端部に固定される棒鋼と、前記鋼管の両端部にそれぞれ設けられ前記棒鋼を前記鋼管に固定するとともに、前記鋼管が圧縮された際に前記棒鋼を軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえる一対の固定部材と、前記鋼管に取り付けられ前記第一被取付部に係止される第一係止部と、前記鋼管に取り付けられ前記第二被取付部に係止される第二係止部とを備え、前記鋼管は、前記棒鋼の強度よりも高強度であり、前記棒鋼は、前記鋼管の降伏点よりも低降伏点である
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 請求項1に記載の構造体の補強装置において、
前記第一被取付部および前記第二被取付部の少なくとも一方は、コンクリート体に係止される
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 請求項2に記載の構造体の補強装置において、
前記コンクリート体は基礎であり、前記第一被取付部は、前記基礎に埋設されたアンカープレートを備え、前記第二被取付部は、前記基礎の上面と対向するベースプレートを備えている
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 請求項3に記載の構造体の補強装置において、
前記アンカープレートには前記鋼管が挿通される挿通孔が形成され、前記第一係止部は、前記一対の固定部材のうちの一方の固定部材と、前記一方の固定部材とは前記アンカープレートを挟んで配置された締結具とを備えた
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 請求項2に記載の構造体の補強装置において、
前記構造躯体は、長尺状の第一プレキャストコンクリート体と、この第一プレキャストコンクリート体を挟み前記第一プレキャストコンクリート体の長手方向とは交差する方向に並んで配置された複数の第二プレキャストコンクリート体とを備え、前記第一被取付部および前記第二被取付部は、それぞれ前記第二プレキャストコンクリート体の端部に一体に設けられ前記第一プレキャストコンクリート体に当接するコンクリート製のリブを有し、
前記鋼管は、前記第一プレキャストコンクリート体と前記第二プレキャストコンクリート体のリブを貫通するとともに前記リブから端部が突出して配置され、
前記第一係止部は、前記リブから突出した前記鋼管の一端部に設けられ前記一対の固定部材のうち一方の固定部材を備えた
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 請求項1に記載の構造体の補強装置において、
前記構造躯体は、それぞれ複数本の柱と梁とを備え、前記柱と前記梁とで囲われる開口のうち互いに対向する設置部分に前記鋼材を掛け渡し、
前記第一被取付部および前記第二被取付部は、それぞれ前記柱と前記梁との設置部分に埋設される金具を備えている
ことを特徴とする構造体の補強装置。 - 互いに対向する第一被取付部および第二被取付部が設けられた構造躯体に、鋼管と棒鋼とを有し前記鋼管が前記棒鋼の強度よりも高強度であり、かつ、前記棒鋼は前記鋼管の降伏点よりも低降伏点である鋼材を取り付けて構造体を補強する方法であって、
前記鋼管に前記棒鋼を挿入し、前記棒鋼の両端部を前記鋼管の両端部に固定する棒鋼固定工程と、
前記鋼管と前記第一被取付部とを第一係止部で係止する第一係止工程と、
前記鋼管と前記第二被取付部とを第二係止部で係止する第二係止工程と、
前記鋼管を一対の固定部材で圧縮するとともに前記棒鋼を軸方向外側から軸方向内側に向かって押さえる圧縮工程とを備えた
ことを特徴とする構造体の補強方法。 - 請求項7に記載の構造体の補強方法において、
前記第一被取付部は、アンカープレートを備え、前記第二被取付部は、ベースプレートを備え、
前記第一係止工程は、前記アンカープレートを前記一対の固定部材のうちの一方の固定部材と締結具とで挟持し、
前記第一係止工程の後に、前記鋼管の前記アンカープレートが設けられた端部とは反対側の端部に取り付けられた位置決め用プレートで位置決めして前記鋼管を型枠内に配置し、この型枠内にコンクリートスラリーを打設し、
前記コンクリートスラリーが打設された後に前記位置決めプレートを前記鋼管から取り外し、
前記第二係止工程は、前記位置決めプレートが取り外された前記鋼管の端部に前記ベースプレートを係止する
ことを特徴とする構造体の補強方法。
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