JP2015028843A - リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレータ、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は以下の通りである。
前記第一粒子状重合体が、前記第一粒子状重合体において最も外にあるシェル部及び前記シェル部よりも内にあるコア部を備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔2〕 前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上100℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、〔1〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔3〕 前記第一粒子状重合体のシェル部が、前記第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対し、1%以上30%以下の厚みを有する、〔1〕又は〔2〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔4〕 さらに第二粒子状重合体を含み、
前記第二粒子状重合体が、アミド単量体単位0.1重量%〜20重量%を含み、
前記第二粒子状重合体のガラス転移温度が、−100℃〜0℃である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔5〕 セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
〔6〕 極板と、
前記極板上に〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
〔7〕 正極、負極、電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレータが、〔5〕記載のリチウムイオン二次電池用セパレータである、リチウムイオン二次電池。
〔8〕 正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、〔6〕記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、セパレータ基材と多孔膜との結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、極板と多孔膜との結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、低温出力特性に優れる。
本発明のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物(以下、適宜「多孔膜組成物」ということがある。)は、第一粒子状重合体を含む。
図1は、第一粒子状重合体の例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、第一粒子状重合体100は、コア部110及びシェル部120を備えるコアシェル構造を有する。ここで、シェル部120とは、この第一粒子状重合体100において最も外にある層部分であり、第一粒子状重合体100の表面100Sに露出している。また、コア部110は、シェル部120よりも内にある部分である。
第一粒子状重合体のシェル部を構成する重合体は、電解液に膨潤する。このとき、例えば膨潤したシェル部の重合体が有する官能基が活性化してセパレータ基材又は極板の表面にある官能基と化学的又は電気的な相互作用を生じるなどの要因により、シェル部はセパレータ基材又は極板に強固に結着できる。そのため、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を向上させることが可能になっていると推察される。
リチウムイオン二次電池において多孔膜は、一般に、正極と負極との間に設けられる。ここで、従来、リチウムイオン二次電池が充放電をすると、電極活物質(特に、負極活物質)が膨張及び収縮を生じるため、多孔膜と極板との間に空隙を生じることがあった。また、多孔膜に含まれる重合体成分が大きく膨潤することにより、多孔膜の体積が大きくなることがあった。このような現象が生じると、正極の極板と負極の極板との距離が大きくなって電池の内部抵抗が大きくなったり、リチウムイオンと電極活物質との反応場が不均一になったりするので、低温出力特性が低下することがあった。
また、電解液に対するシェル部の重合体の膨潤度は小さくなるように制御されているので、第一粒子状重合体は電解液中で膨潤による大きな体積の増大を生じ難い。このため、第一粒子状重合体を含む多孔膜は、電解液中での多孔膜の体積の増大が抑制されている。
したがって、リチウムイオン二次電池において正極の極板と負極の極板との距離が大きくなり難いので、電池の内部抵抗を小さくでき、また、リチウムイオンと電極活物質との反応場が不均一になり難い。
なお、コア部が電解液に大きく膨潤した場合でも、そのコア部は膨潤度が抑制されたシェル部に覆われているので、第一粒子状重合体は大きな体積の増大を生じ難いと推察される。
リチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返すと、例えば電解液及び添加剤の分解によりガスを生じることがある。また、前記のように、リチウムイオン二次電池では充放電により電極活物質の膨張及び収縮が生じることがある。そのため、リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返すと、多孔膜と極板との間に空隙ができ、正極の極板と負極の極板との距離が次第に大きくなって、電池容量が低下することがあった。
これに対し、第一粒子状重合体を備える多孔膜は、前記のように極板との結着性に優れる。そのため、この多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返しても多孔膜と極板との間に空隙ができ難いので、電池容量が低下しにくい。これにより、優れた高温サイクル特性が実現できているものと推察される。
通常、シェル部の重合体は、電解液に膨潤していない状態においては結着性を有さず、電解液に膨潤することにより始めて結着性を発現する。そのため、第一粒子状重合体は、電解液に膨潤していない状態において結着性を発現しない。これにより、第一粒子状重合体を備える多孔膜を備えたセパレータは、重ねてもブロッキングを生じ難いものと推察される。
コア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、コア部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常5倍以上、好ましくは6倍以上、より好ましくは7倍以上であり、通常30倍以下、好ましくは25倍以下、より好ましくは20倍以下である。コア部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、多孔膜のイオン拡散性を高めることができるので、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を改善することができる。また、コア部の重合体の膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、通常は、多孔膜のセパレータ基材又は極板に対する結着性を高めることができる。さらに、上限値以下にすることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の寿命を長くすることができる。
まず、第一粒子状重合体のコア部の重合体を用意する。例えば、第一粒子状重合体の製造方法においてコア部の製造するために行うのと同様の工程を行うことにより得られた重合体を用意する。
その後、用意した重合体によりフィルムを作製する。例えば重合体が固体であれば、25℃、48時間の条件で重合体を乾燥した後、その重合体をフィルム状に成形して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。また、例えば、重合体がラテックス等の溶液又は分散液である場合は、その溶液又は分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。
こうして作製したフィルムを1cm角に裁断して、試験片を得る。この試験片の重量を測定し、W0とする。
また、この試験片を電解液に60℃で72時間浸漬し、その試験片を電解液から取り出す。取り出した試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定する。
そして、これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算する。
SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することが可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。また、このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、求められている。
シェル部は、電解液に対して、コア部の膨潤度よりも小さい所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、シェル部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常1倍より大きく、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは1.2倍以上であり、また、通常4倍以下、好ましくは3.5倍以下、より好ましくは3倍以下である。シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。また、シェル部の電解液に対する膨潤度が小さくなるように制御されているので、第一粒子状重合体の膨潤による体積の増加を抑制できる。そのため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を小さくできるので、電池特性を良好に維持することができる。また、シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。さらに、上限値以下にすることにより、通常は、多孔膜のセパレータ基材又は極板に対する結着性を高めることができる。
まず、第一粒子状重合体のシェル部の重合体を用意する。例えば、第一粒子状重合体の製造方法において、コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いて、コア部の製造方法と同様にして重合体を製造する。
その後、コア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様の方法で、シェル部の重合体によりフィルムを作製し、そのフィルムから試験片を得て、膨潤度Sを測定する。
第一粒子状重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部及びシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。
例えば、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、第一粒子状重合体をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。
ただし、本発明の効果を顕著に発揮する観点からは、第一粒子状重合体はコア部及びシェル部のみを備えることが好ましい。
第一粒子状重合体の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。第一粒子状重合体の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物及び多孔膜における第一粒子状重合体の分散性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着力を高めることができる。
多孔膜組成物における第一粒子状重合体の量は、多孔膜における第一粒子状重合体の割合が所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的には、多孔膜における第一粒子状重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下、特に好ましくは98重量%以下である。第一粒子状重合体の量を前記範囲にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着力を高め、かつ、イオン拡散性を高めることができる。
第一粒子状重合体は、例えば、コア部の重合体の単量体とシェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、製造しうる。具体的には、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法及び多段階懸濁重合法によって得ることができる。
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、又はオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
本発明の多孔膜組成物は、第二粒子状重合体を含むことが好ましい。この第二粒子状重合体は、アミド単量体単位を含み、且つ、所定の範囲のガラス転移温度を有する粒子状の重合体である。ここでアミド単量体単位とは、アミド単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、アミド単量体とは、アミド基を有する単量体であり、アミド化合物だけでなく、イミド化合物も含む。
ここで、前記のガスの発生量は、充放電を繰り返したときのリチウムイオン二次電池のセルの体積変化により評価することができる。
また、アミド単量体及びアミド単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明の多孔膜組成物は、通常、溶媒を含む。溶媒としては、水を用いることが好ましい。第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体は通常は非水溶性であるので、溶媒として水を用いた場合には、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体は水中において粒子状となって分散している。
本発明の多孔膜組成物は、更に、非導電性粒子を含んでいてもよい。非導電性を有する粒子を多孔膜に充填することにより、多孔膜の絶縁性を高め、リチウムイオン二次電池における短絡を更に安定して防止することができる。また、通常、非導電性粒子は高い剛性を有し、これにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。そのため、熱によってセパレータ基材に収縮しようとする応力が生じた場合でも、多孔膜がその応力に抗することができるので、セパレータ基材の収縮による短絡の発生を防止することが可能である。このような非導電性粒子としては、無機粒子を用いてもよく、有機粒子を用いてもよい。
本発明の多孔膜組成物は、更に、水溶性重合体を含みうる。多孔膜組成物において水溶性重合体は、通常は粘度調整剤として機能する。また、特に多孔膜組成物が溶媒として水を含む場合は、多孔膜組成物において、一部の水溶性重合体は溶媒中に遊離しているが、別の一部の水溶性重合体は第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の表面に吸着する。これにより、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の表面が水溶性重合体の層で覆われるので、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の水中における分散性を向上させることができる。
多孔膜組成物は、上述した第一粒子状重合体、第二粒子状重合体、溶媒、非導電性粒子及び水溶性重合体以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分としては、電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものを用いうる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明の多孔膜組成物は、通常、流体状のスラリー組成物となっている。また、本発明の多孔膜組成物において、その多孔膜組成物に含まれる各成分は、高い分散性を有する。そのため、本発明の多孔膜組成物の粘度は、通常、容易に低くできる。多孔膜組成物の具体的な粘度は、多孔膜を製造する際の塗布性を良好にする観点から、10mPa・s〜2000mPa・sが好ましい。ここで、前記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
多孔膜組成物の製造方法は、特に限定はされない。通常は、上述した各成分を混合することにより、多孔膜組成物が得られる。
各成分の混合順序には特に制限は無い。また、混合方法にも特に制限は無い。通常は、粒子を速やかに分散させるため、混合装置として分散機を用いて混合を行う。
本発明の多孔膜組成物を適切な基材上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより、多孔膜組成物の固形分により形成された膜として、リチウムイオン二次電池用多孔膜(以下、適宜「多孔膜」ということがある。)を製造することができる。例えば、多孔膜組成物を基材上に塗布して当該多孔膜組成物の膜を得る工程と、必要に応じてその膜から乾燥によって水等の溶媒を除去する工程とを含む製造方法により、多孔膜を製造できる。
例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔膜に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、基材と多孔膜との結着性を向上させることができる。ただし、多孔膜の空隙率を好ましい範囲に保つ観点では、圧力および加圧時間が過度に大きくならないように適切に制御することが好ましい。
また、残留水分除去のため、例えば真空乾燥やドライルーム内で乾燥することが好ましい。
さらに、例えば加熱処理することも好ましく、これにより重合体成分に含まれる熱架橋基を架橋させて、結着力を高めることができる。
本発明のセパレータは、セパレータ基材と多孔膜とを備える。本発明のセパレータが本発明に係る多孔膜を備えるので、当該セパレータを備えるリチウムイオン二次電池においては、多孔膜とセパレータ基材及び極板とは強力に結着されている。また、本発明にかかる多孔膜はイオン拡散性に優れるので、本発明のセパレータによる内部抵抗の上昇は小さい。
セパレータ基材としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このようなセパレータ基材を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。セパレータ基材の具体例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微孔膜または不織布などが挙げられる。
本発明のセパレータは、セパレータ基材上に上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明のセパレータは、セパレータ基材と、前記セパレータ基材上に多孔膜組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して得られる多孔膜とを備える。このようなセパレータは、例えば、基材としてセパレータ基材を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、セパレータ基材の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、極板と多孔膜とを備える。また、極板は、通常、集電体及び電極活物質層を備える。本発明の電極が本発明に係る多孔膜を備えるので、当該電極を備えるリチウムイオン二次電池においては、多孔膜とセパレータ基材又は極板とは強力に結着されている。また、本発明にかかる多孔膜はイオン拡散性に優れるので、電極の内部抵抗を小さくできる。さらに、本発明の多孔膜はセパレータとして機能しうるので、リチウムイオン二次電池の内部短絡を防止することができる。
集電体は、電気導電性を有し、且つ、電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。通常、この集電体の材料としては、金属材料を用いる。その例を挙げると、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極活物質層は、集電体上に設けられた層であり、電極活物質を含む。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
さらに、以下に例示する軟質重合体の粒子を、電極用バインダーとして用いてもよい。軟質重合体としては、例えば、
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体;などが挙げられる。これらの中でも、ジエン系軟質重合体及びアクリル系軟質重合体が好ましい。また、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、変性により官能基を導入したものであってもよい。
また、電極用バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明の電極は、前記の極板上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明の電極は、極板と、極板上に多孔膜組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して得られる多孔膜とを備える。このような電極は、例えば、基材として極板を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、極板の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。ただし、通常は、多孔膜が電極活物質層上に設けられるので、本発明の電極は、集電体、電極活物質層及び多孔膜をこの順に備える。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明の二次電池は、下記の要件(A)を満たすか、要件(B)を満たすか、要件(A)及び(B)の両方を満たす。
(A)本発明のリチウムイオン二次電池の正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電極である。
(B)本発明のリチウムイオン二次電池がセパレータを備え、且つ、そのセパレータが本発明のセパレータである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、正極及び負極の一方又は両方として、本発明の電極を備える。ただし、本発明のリチウムイオン二次電池がセパレータとして本発明のセパレータを備える場合には、正極及び負極の両方として本発明の電極以外の電極を備えていてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、セパレータとして本発明のセパレータを備える。ただし、本発明の二次電池が正極及び負極の少なくとも一方として本発明の電極を備える場合には、セパレータとして本発明のセパレータ以外のセパレータを備えていてもよい。また、本発明の電極が備える多孔膜はセパレータとしての機能を有するので、本発明の電極を備える二次電池においてはセパレータを省略してもよい。
電解液としては、第一粒子状重合体のコア部の重合体及びシェル部の重合体を、前述した所定の範囲の膨潤度で膨潤させられるものを用いうる。このような電解液としては、有機溶媒と、その有機溶媒に溶解した支持電解質とを含む有機電解液が好ましく用いうる。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
〔1.高温サイクル試験の前後でのセル体積変化の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。この捲回型セルを流動パラフィンに浸漬し、セルの体積X0を測定した。
実施例1〜23、25及び26並びに比較例1〜6において製造した多孔膜を備えるセパレータを、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)に3日間浸漬した。電解液から試験片を取り出し、多孔膜の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、電解液を拭き取った多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータ基材の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、セパレータ基材と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度Pが大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
実施例24において製造した電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)に3日間浸漬した。電解液から試験片を取り出し、多孔膜の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、電解液を拭き取った多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、極板と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度Pが大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
実施例及び比較例で製造したセパレータを、幅5cm×長さ5cm、及び、幅4cm×長さ4cmにそれぞれ正方形に切って試験片を得た。これらを二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cm2の加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、各サンプルのセパレータ同士の結着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングしない。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングするが剥がれる。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングして剥がれない。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングする。
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、充電後の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始から15秒後の電圧V1を測定した。
電圧変化ΔVを、ΔV=V0−V1にて計算した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
実施例及び比較例においてコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、第一粒子状重合体のコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した。この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造した。
また、前記の試験片を電解液に、60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定した。
これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いたこと以外は実施例及び比較例において第一粒子状重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、シェル部を形成する重合体からなる粒子状重合体を含む水分散液を製造した。試験片を製造するための水分散液として、このシェル部を形成する重合体からなる粒子状重合体を含む水分散液を用いたこと以外はコア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様にして、シェル部の重合体の膨潤度Sを測定した。
シェル部を形成した後の第一粒子状重合体の体積平均粒子径から、第一粒子状重合体の製造過程において得られるシェル部を形成する前の粒子状重合体(即ち、コア部を構成する粒子状の重合体)の体積平均粒子径を引くことにより、シェル部の厚みを測定した。測定したシェル部の厚みを第一粒子状重合体の体積平均粒子径で割ることにより、コアシェル比率を計算した。
なお、前記体積平均粒子径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置「SALD−3100(島津製作所社製)」により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。その後、電池を分解して負極を取り出し、その負極における金属の析出を評価した。
負極における金属の析出は、ICP発光分光分析装置「SPS3000(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、負極中のコバルトの割合を重量基準で評価した。
負極中のコバルト重量が大きいほど、負極に金属析出が起こっていることを示す。
(1−1.第一粒子状重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して、重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得た。
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
得られた第二粒子状重合体の体積平均粒子径D50は0.3μm、ガラス転移温度は−40℃℃であった。
水溶性重合体として、エーテル化度0.8〜1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製、製品名「D1200」)を用意した。この水溶性重合体の1%水溶液の粘度は、10mPa・s〜20mPa・sであった。
ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。用意したセパレータ基材の両面に、前記の多孔膜組成物を塗布し50℃で1分間乾燥させた。これにより、1層当たりの厚みが2μmの多孔膜を両面に備えるセパレータを得た。
このセパレータについて、上述した方法で、ピール強度の測定及び耐ブロッキング性の評価を行った。
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状バインダーを含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって前記の混合物から未反応単量体の除去を行い、30℃以下まで冷却して、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部混合し、さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を68%に調製し、25℃で60分間混合した。こうして得られた混合液に、イオン交換水を加えて固形分濃度を62%に調製した後、さらに25℃で15分間混合した。この混合液に、上記の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当で1.5部入れ、さらにイオン交換水を加えて最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
前記負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoO2を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部、及び、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部混合し、これにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%にした。これをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリーを得た。
前記正極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極を得た。
プレス後の正極を49×5cm2に切り出した。切り出された正極の正極活物質層上に、55×5.5cm2に切り出したセパレータを配置した。さらに、プレス後の負極を50×5.2cm2の正方形に切り出し、この切り出された負極を前記セパレータの正極とは反対側に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃0.5MPaでプレスし、扁平体とした。この扁平体を、電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性、低温出力特性、及び、負極における金属の析出を評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.85部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.15部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を71.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を4.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.95部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、メタクリル酸メチル55部と2−エチルヘキシルアクリレート20部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりにアクリロニトリル75部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、アクリロニトリル65部と2−エチルヘキシルアクリレート10部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりにアクリロニトリル72部を用い、エチレンジメタクリレートの量を4.0部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン10部とアクリロニトリル10部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン5部とアクリロニトリル15部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりにスチレンスルホン酸のナトリウム塩20部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレンスルホン酸のナトリウム塩15部とアクリロニトリル5部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を72.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を3.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を90部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を1部に変更した。
また、前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を52.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を3.5部に変更した。
また、前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を40部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)において、乳化剤として用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を2部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)において、乳化剤として用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を0.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN−メチロールアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにメタクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、ブチルアクリレートの量を94.5部に変更し、アクリルアミドの量を0.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、ブチルアクリレートの量を86.5部に変更し、アクリルアミドの量を8.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
実施例1の工程(1−7)で製造したプレス後の負極と同様の構成を有する極板を用意した。この極板の負極活物質層上に、実施例1の工程(1−3)で得た多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cm2となるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、極板を20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、極板と多孔膜とを備える負極を得た。
この負極について、上述した方法で、ピール強度の測定を行った。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性及び低温出力特性を評価した。
前記工程(1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で50部とアルミナ粒子(体積平均粒子径0.8μm)50部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で90部とポリスチレン粒子(体積平均粒子径0.5μm)50部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、ブチルアクリレートの量を95部に変更し、アクリルアミドを用いなかった。
また、前記工程(1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりに実施例25と同様のアルミナ粒子100部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、ブチルアクリレートの量を80部に変更し、アクリルアミドの量を15部に変更した。
また、前記工程(1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりに実施例25と同様のアルミナ粒子100部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−2)において、ブチルアクリレートの量を95部に変更し、アクリルアミドを用いなかった。
また、前記工程(1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりにポリメチルメタクリレート粒子(体積平均粒子径0.5μm;膨潤度25倍)100部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート60部、スチレン15部及びメタクリル酸5部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル25部及びメタクリル酸5部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記工程(1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、2−エチルヘキシルアクリレート25部及びメタクリル酸5部を用いた。
また、前記工程(1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりにアクリロニトリル20部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。また、下記の表において、単量体の項において単量体の略称の隣に記載の数値は、その単量体の重量部を表す。
EDMA:エチレンジメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AN:アクリロニトリル
PMMA:ポリメチルメタクリレート
Tg:ガラス転移温度
ST:スチレン
NaSS:スチレンスルホン酸のナトリウム塩
コアシェル比率:第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対するシェル部の厚みの比率
BA:ブチルアクリレート
AMA:アリルメタクリレート
AAm:アクリルアミド
NMA:N−メチロールアクリルアミド
MAAm:メタクリルアミド
DMAEAA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド
DMAPAA:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
CMC:カルボキシメチルセルロース
セパ:セパレータ基材
PST:ポリスチレン
実施例においては、電解液により膨潤した多孔膜とセパレータ基材又は極板とが強力に結着していることが確認された。これにより、本発明に係る多孔膜組成物により製造される多孔膜が、セパレータ基材及び極板に対して高い結着性を有することが確認された。
また、実施例においては、比較例よりも低い電圧変化ΔVが得られた。これにより、本発明に係るリチウムイオン二次電池が、低温出力特性に優れることが確認された。
100S 第一粒子状重合体の表面
110 コア部
120 シェル部
Claims (8)
- 第一粒子状重合体を含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物であって、
前記第一粒子状重合体が、前記第一粒子状重合体において最も外にあるシェル部及び前記シェル部よりも内にあるコア部を備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。 - 前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上100℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。 - 前記第一粒子状重合体のシェル部が、前記第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対し、1%以上30%以下の厚みを有する、請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
- さらに第二粒子状重合体を含み、
前記第二粒子状重合体が、アミド単量体単位0.1重量%〜20重量%を含み、
前記第二粒子状重合体のガラス転移温度が、−100℃〜0℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。 - セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレータ。 - 極板と、
前記極板上に請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。 - 正極、負極、電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレータが、請求項5記載のリチウムイオン二次電池用セパレータである、リチウムイオン二次電池。 - 正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項6記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
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