JPWO2015111663A1 - リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

電極活物質層と、前記電極活物質層に直接に設けられた有機粒子を含む多孔層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極であって、前記有機粒子が、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用電極。

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用電極及びそれを備えたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源として用いられている二次電池には、リチウムイオン二次電池が多用されている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、正極、負極及び電解液を備える。また、リチウムイオン二次電池には、正極と負極との間の短絡を防ぐために、通常はセパレータが設けられる(特許文献1及び2参照)。
国際公開第2005/029614号 国際公開第2011/040474号
リチウムイオン二次電池は、一般に、充放電を繰り返すことによって電池容量が低下する。長寿命なリチウムイオン二次電池を実現するためには、充放電を繰り返しても電池容量が低下し難いことが求められる。このような観点から、高温サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できる技術の開発が求められている。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を製造しうるリチウムイオン二次電池用電極;並びに、高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明者は、電解液に対して所定の膨潤度で膨潤しうる重合体により形成され、コア部及び当該コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を備えるコアシェル構造を有する有機粒子を含む多孔層を、電極の電極活物質層上に直接に設けることにより、高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 電極活物質層と、前記電極活物質層に直接に設けられた有機粒子を含む多孔層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極であって、
前記有機粒子が、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用電極。
〔2〕 前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上150℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、〔1〕記載のリチウムイオン二次電池用電極。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕記載のリチウムイオン二次電池用電極及び電解液を備える、リチウムイオン二次電池。
〔4〕 前記リチウムイオン二次電池用電の前記多孔層側に、直接に又はシャットダウン機能を有しない部材を介して対極を備える、〔3〕記載のリチウムイオン二次電池。
〔5〕 前記電極が平らな形状を有する、〔3〕又は〔4〕記載のリチウムイオン二次電池。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用電極によれば、高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を製造できる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、高温サイクル特性に優れる。
図1は、多孔層が含む有機粒子の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を包含する。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを包含する。さらに、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包含する。また、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及びメタクリルアミドを包含する。
さらに、ある物質が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が1.0重量%未満であることをいう。また、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上であることをいう。
なお、水のpHによって水への溶解性が変わる場合において、水溶性となる領域があれば、その物質は水溶性であることに含まれる。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
さらに、「極板」とは、剛性のある板状部材だけでなく、可撓性のあるシート及びフィルムも含む。
また、「単量体組成物」は、2種類以上の単量体を含む組成物だけでなく、1種類の単量体を指す用語としても用いる。
[1.リチウムイオン二次電池用電極の概要]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、電極活物質層と、電極活物質層に直接に設けられた多孔層とを備える。また通常は、本発明の電極は、集電体を備える。集電体を備える場合、電極は、通常、集電体、電極活物質層及び多孔層をこの順に備える。
多孔層は、コア部と、このコア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有する有機粒子を含む。そして、有機粒子のコア部及びシェル部は、それぞれ電解液に対する所定の範囲の膨潤度を有する重合体からなる。
電極がこのような構成を有していることにより、次のような利点を得ることができる。
i.リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を改善することができる。
ii.通常は、充放電に伴う電池セルの膨れを抑制できる。
iii.通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にすることができる。
iv.通常は、リチウムイオン二次電池にシャットダウン機能を有する有機セパレータを設けなくても、そのリチウムイオン二次電池にシャットダウン機能を備えさせることができる。
このような優れた利点が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。ただし、以下に推察する理由により本発明は制限されるものではない。
i.高温サイクル特性:
一般に、リチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返すと、電解液の分解によりガスを生じることがある。このような電解液の分解は、通常は電極の電極活物質層の近傍において生じ易い。電解液が分解されてガスが生じた場合、その電解液が分解された部分において電極活物質と電解液とが接触できなくなるので、電池容量が低下することがある。
これに対し、本発明の電極においては、電極活物質層に直接に設けられた多孔層がコアシェル構造を有する有機粒子を含み、そのコア部が電解液に対する高い膨潤度を有する。高い膨潤度を有するので、このコア部は保液性に優れ、電解液を多く貯蔵できる。そのため、電解液の分解によって電極活物質の近傍において電解液が不足した場合、その電解液が不足した部分にコア部から電解液を補給することができる。したがって、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返しても電極活物質と電解液との接触が損なわれ難いので、電池容量の低下を抑制できる。
また、電解液に大きく膨潤した状態では、重合体の分子間の隙間が大きくなるので、その分子間をイオンが通り易くなる。また、シェル部がコア部の外表面を全体ではなく部分的に覆っているので、イオンの移動はシェル部によって留められ難く、イオンはコア部に容易に進入できる。そのため、電解液中においてイオンは有機粒子のコア部を容易に透過できる。したがって、リチウムイオンが多孔層を通りやすいので、通常は、電解液中でのリチウムの析出を防止できる。よって、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池は、充放電の繰り返してもリチウムの析出による抵抗の増加が生じにくいので、充放電の繰り返しによる抵抗の増大を抑制できる。
さらに、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池は、通常、充放電に伴う電池セルの膨れを抑制できる。そのため、充放電を繰り返しても正極と負極との距離が大きくなり難いので、これによっても電池容量の低下を抑制できる。
これらの要因が組み合わさることにより、本発明の電極は、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を改善できているものと推察される。
ii.電池セルの膨れの抑制:
リチウムイオン二次電池では、一般に、充放電を繰り返すと、例えば電解液及び添加剤の分解によるガスの発生、並びに電極活物質の膨張及び収縮による空隙の発生等によって、その電池セルが膨れることがあった。
しかし、有機粒子のシェル部を構成する重合体は、電解液において高い結着性を有する。この高い結着性は、例えば膨潤したシェル部の重合体が有する官能基が活性化して電極活物質層の表面にある官能基と化学的又は電気的な相互作用を生じることによって生じるものと推察される。このような高い結着性を有する有機粒子によって電池内の部材同士が結着されているので、電池の膨れが抑制されているものと推察される。
iii.低温出力特性:
前記のように、電解液中において多孔層がリチウムイオンを通しやすいので、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池は抵抗を低くできる。さらに、本発明の電極によれば前記のようにリチウムの析出を防止できるので、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池ではリチウムの析出による抵抗の上昇を抑制できる。そのため、低温出力特性を改善することができているものと推察される。また、本発明の電極を用いればセパレータを有さないリチウム二次電池を実現できる。このようにセパレータを有さないリチウムイオン二次電池は、そのセパレータによる抵抗が無いので、抵抗を小さくできる。そのため、セパレータを有さないリチウムイオン二次電池は、低温出力特性を更に改善することが可能と考えられる。
iv.シャットダウン機能:
本発明の有機粒子は熱が生じた場合に融解できる。そのため、電池内部の温度が高温になった場合には有機粒子が融解して細孔を塞ぐことができるので、リチウムイオンの移動を防ぎ、電流を遮断させることができる。このように多孔層に含まれる有機粒子自体が溶融してシャットダウン機能を発揮できるので、シャットダウン機能を有する有機セパレータを別途設けなくても、そのリチウムイオン二次電池にシャットダウン機能を備えさせることができているものと推察される。シャットダウン機能とは、電池の電極間に設けられた細孔を有する部材が、温度が上昇して所定の温度範囲(通常130℃±5℃)となった場合に、その細孔を塞いで電流を遮断させる機能のことをいう。
[2.集電体]
集電体は、電気導電性を有し、且つ、電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。通常、この集電体の材料としては、金属材料を用いる。その例を挙げると、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。
集電体は、電極活物質層との結着強度を高めるため、表面に予め粗面化処理して使用することが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極活物質層の結着強度や導電性を高めるために、集電体の表面に中間層を形成してもよい。
[3.電極活物質層]
電極活物質層は、電極活物質を含む層であり、通常は集電体上に設けられる。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、等のリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。
さらに、無機化合物及び有機化合物を組み合わせた複合材料からなる正極活物質を用いてもよい。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
正極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで選択されうる。負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、正極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。正極活物質の体積平均粒子径がこの範囲であると、充放電容量が大きい電池を得ることができ、かつ電極用スラリーおよび電極を製造する際の取扱いが容易である。ここで、電極用スラリーとは、電極を製造するための流体状の組成物であり、通常は電極活物質及び溶媒を含む。また、粒子の体積平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
電極活物質層における正極活物質の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であり、また、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。正極活物質の量を上記範囲とすることにより、リチウムイオン二次電池の容量を高くでき、また、正極の柔軟性並びに集電体と正極活物質層との結着性を向上させることができる。
負極活物質は、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物;前記金属又は合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等を使用してもよい。
なかでも、例えばSiO、SiO、SiOx(0.01≦x<2)、SiC、SiOC等のケイ素を含む活物質を用いることが好ましく、SiOx、SiC及びSiOCが特に好ましい。ケイ素を含む活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池の電池容量を大きくできる。また、ケイ素を含む活物質は、通常は充放電によって大きく膨張又は収縮を生じる。このように大きな膨張及び収縮を生じる活物質は、電解液の変動が大きくなるので電極活物質と電解液とが接触できない場が生じ易く、従来の技術では高温サイクル特性が低くなり易かった。しかし、本発明の電極はコア部から電解液を供給して電極活物質と電解液とが接触できない場を生じ難くできるので、高温サイクル特性を損なうこと無く、リチウムイオン二次電池の容量を大きくすることができる。
ケイ素を含む活物質の中でも、負極活物質自体の膨らみが抑制される点から、ケイ素を含む活物質としてSiOxを用いることが特に好ましい。SiOxは、SiO及びSiOの一方又は両方と金属ケイ素とを原料として形成されうる。このSiOxは、例えば、SiOと金属ケイ素との混合物を加熱して生成した一酸化ケイ素ガスを、冷却及び析出させることにより、製造しうる。
負極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。したがって、前記の負極活物質のうち、2種類以上を組み合わせて用いてよい。中でも、炭素と、ケイ素を含む活物質とを組み合わせて含む負極活物質を用いることが好ましい。炭素と、ケイ素を含む活物質とを組み合わせて含む負極活物質においては、高電位でケイ素を含む活物質へのLiの挿入及び脱離が起こり、低電位で炭素へのLiの挿入及び脱離が起こると推測される。このため、負極活物質全体として膨張及び収縮が抑制されるので、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
負極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
負極活物質の比表面積は、出力密度向上の観点から、好ましくは2m/g以上、より好ましくは3m/g以上、さらに好ましくは5m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下、より好ましくは15m/g以下、さらに好ましくは10m/g以下である。負極活物質の比表面積は、例えばBET法により測定しうる。
電極活物質層における負極活物質の割合は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは88重量%以上であり、また、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。負極活物質の量を上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも優れた柔軟性及び結着性を示す負極を実現できる。
また、電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものを使用してもよい。
電極活物質層は、電極活物質の他に、電極用バインダーを含むことが好ましい。電極用バインダーを含むことにより、電極活物質層の結着性が向上し、電極の機械的な力に対する耐性を高めることができる。また、電極活物質層が集電体及び多孔層から剥がれにくくなることから、剥れた脱離物による短絡の可能性を低くできる。
電極用バインダーとしては、例えば重合体を用いうる。電極用バインダーとして用いうる重合体としては、例えば、下記の軟質重合体が挙げられる。
軟質重合体としては、例えば、
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体;などが挙げられる。
これらの中でも、ジエン系軟質重合体及びアクリル系軟質重合体が好ましい。
また、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、変性により官能基を導入したものであってもよい。
さらに、電極用バインダーは、粒子状であってもよく、非粒子状であってもよい。
また、電極用バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極活物質層における電極用バインダーの量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。電極用バインダーの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、集電体と電極活物質層との結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電池の低温出力特性を良好にできる。
さらに、電極活物質層は、増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤として、例えば水溶性重合体を用いることができる。増粘剤として使用しうる水溶性重合体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸若しくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体等のポリビニルアルコール化合物;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。中でも、カルボキシメチルセルロースの塩を用いることが好ましい。ここで、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」及び「変性ポリ」を意味する。また、増粘剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
増粘剤を用いることにより、電極活物質層を製造するために用いる電極用スラリーの粘度を調整できる。また、増粘剤は、通常は電極活物質層においてバインダーとして機能して、結着材同士を結着しうる。
増粘剤の量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。増粘剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、集電体と電極活物質層との結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電池の低温出力特性を良好にできる。
電極活物質層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、電極活物質、電極用バインダー及び増粘剤以外にも、任意の成分が含まれうる。その例を挙げると、導電材、補強材などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン;黒鉛等の炭素粉末;各種金属のファイバー及び箔;などが挙げられる。導電材を用いることにより、電極活物質同士の電気的接触を向上させることができるので、サイクル特性等の電池特性を改善できる。
導電材の比表面積は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは60m/g以上、特に好ましくは70m/g以上であり、好ましくは1500m/g以下、より好ましくは1200m/g以下、特に好ましくは1000m/g以下である。導電材の比表面積を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。
補強材としては、例えば、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。補強材を用いることにより、強靭で柔軟な電極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を得ることができる。
導電材及び補強材の使用量は、電極活物質100重量部に対して、それぞれ、通常0重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
電極活物質層の厚みは、正極及び負極のいずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
電極活物質層の製造方法は特に制限されない。電極活物質層は、例えば、電極活物質及び溶媒、並びに、必要に応じて電極用バインダー、増粘剤及び任意の成分を含む電極用スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させて製造しうる。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用しうる。
[4.多孔層]
多孔層は、有機粒子を含む膜である。通常、有機粒子間の隙間が多孔層の細孔を構成している。
〔4.1.有機粒子〕
図1は、多孔層が含む有機粒子の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、有機粒子100は、コア部110及びシェル部120を備えるコアシェル構造を有する。ここで、コア部110は、この有機粒子100においてシェル部120よりも内側にある部分である。また、シェル部120は、コア部110の外表面110Sを覆う部分であり、通常は有機粒子100において最も外にある部分である。ただし、シェル部120は、コア部110の外表面110Sの全体を覆っているのではなく、コア部110の外表面110Sを部分的に覆っている。
(4.1.1.コア部)
コア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、コア部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常5倍以上、好ましくは6倍以上、より好ましくは7倍以上であり、通常30倍以下、好ましくは25倍以下、より好ましくは20倍以下である。コア部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、コア部における電解液の保液性を向上させることができるので、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を改善することができる。さらに、コア部の重合体の膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上することができ、また、上限値以下にすることにより、通常は、電解液中における多孔層の結着性を効果的に高めることができる。
コア部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm1/2)に、支持電解質としてLiPFを溶媒に対して1mol/リットルの濃度で溶かした溶液を用いる。
コア部の重合体の膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定しうる。
まず、有機粒子のコア部の重合体を用意する。例えば、有機粒子の製造方法においてコア部を製造するために行うのと同様の工程を行うことにより得られた重合体を用意する。
その後、用意した重合体によりフィルムを作製する。例えば重合体が固体であれば、25℃、48時間の条件で重合体を乾燥した後、その重合体をフィルム状に成形して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。また、例えば、重合体がラテックス等の溶液又は分散液である場合は、その溶液又は分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。
こうして作製したフィルムを1cm角に裁断して、試験片を得る。この試験片の重量を測定し、W0とする。
また、この試験片を電解液に60℃で72時間浸漬し、その試験片を電解液から取り出す。取り出した試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定する。
そして、これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算する。
コア部の重合体の膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該コア部の重合体を製造するための単量体の種類及び量を適切に選択することが挙げられる。一般に、重合体のSP値が電解液のSP値に近い場合、その重合体はその電解液に膨潤しやすい傾向がある。他方、重合体のSP値が電解液のSP値から離れていると、その重合体はその電解液に膨潤し難い傾向がある。
SP値とは、溶解度パラメーターのことを意味する。
SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することが可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。また、このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、求められている。
コア部の重合体を製造するために用いる単量体としては、その重合体の膨潤度が前記範囲となるものを用いうる。そのような単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記の単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び(メタ)アクリロニトリル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体がより好ましい。すなわち、コア部の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位又は(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、(メタ)アクリロニトリル単量体単位とは、(メタ)アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位を示す。これにより、重合体の膨潤度の制御を容易に行うことができる。また、多孔層のイオン拡散性を一層高めることができる。
コア部の重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の合計の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、より更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、膨潤度を前記範囲に制御しやすい。また、多孔層のイオン拡散性を高めることができる。さらに、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
なお、前記の「(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の合計」は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位だけを含んでいてもよく、(メタ)アクリロニトリル単量体単位だけを含んでいてもよく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位を組み合わせて含んでいてもよいことを意味する。
また、コア部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体としては、シェル部に含み得る酸基含有単量体と同様のものが用いられる。これらの中でも、酸基含有単量体としては、不飽和カルボン酸単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、コア部の重合体における酸基含有量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下である。酸基含有量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、コア部の重合体の分散性を高め、コア部の重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる。
また、コア部の重合体は、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、重合体の膨潤度を、前記の範囲に容易に収めることができる。
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート等の2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体;などが挙げられる。これらの中でも、コア部の重合体の膨潤度を容易に制御する観点から、ジメタクリル酸エステル化合物、及び、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、ジメタクリル酸エステル化合物がより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
一般に、重合体において架橋性単量体単位の割合が増えると、その重合体の電解液に対する膨潤度は小さくなる傾向がある。したがって、架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類及び量を考慮して決定することが好ましい。コア部の重合体における架橋性単量体単位の具体的な割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液中における多孔層の結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の寿命を長くすることができる。
コア部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上、より更に好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上、より特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下、より更に好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下、より特に好ましくは80℃以下である。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、充放電による電池のセルの膨張を抑制できるので、電池のセルの形状を長期間にわたって維持することができる。また、コア部の重合体のガラス転移温度が前記範囲にあると、有機粒子がシャットダウン機能を発現する温度において、有機粒子の融解を効果的に行うことができる。ガラス転移温度は、JIS K7121に従って測定しうる。
コア部の径は、有機粒子の体積平均粒子径100%に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは98.5%以下、特に好ましくは98%以下である。コア部の径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔層のイオン伝導度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電解液中における多孔層の結着性を高めることができる。
コア部の径は、有機粒子の製造過程において得られるシェル部を形成する前の粒子状の重合体の体積平均粒子径として測定しうる。このようなシェル部を形成する前の粒子状の重合体は、即ち、コア部を構成する粒子状の重合体である。
(4.1.2.シェル部)
シェル部は、電解液に対して、コア部の膨潤度よりも小さい所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、シェル部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常1倍より大きく、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、また、通常4倍以下、好ましくは3.5倍以下、より好ましくは3.0倍以下である。シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、電解液に膨潤した場合のシェル部の機械的強度を高めることができるので、外力がコア部に容易には伝わらないようにできる。そのため、電解液が不足していない場合に外力によるコア部からの電解液の意図しない送出を抑制できるので、コア部における電解液の保液性を向上させることができる。したがって、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を改善することができる。また、シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、通常は、有機粒子の電解液中における結着性を高めることができ、ひいては多孔層の電解液中における結着性を高めることができる。
シェル部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液としては、コア部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液と同様のものを用いる。
シェル部の重合体の膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定しうる。
まず、有機粒子のシェル部の重合体を用意する。例えば、有機粒子の製造方法において、コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いて、コア部の製造方法と同様にして重合体を製造する。
その後、コア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様の方法で、シェル部の重合体によりフィルムを作製し、そのフィルムから試験片を得て、膨潤度Sを測定する。
シェル部の重合体の膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該シェル部の重合体を製造するための単量体の種類及び量を適切に選択することが挙げられる。
シェル部の重合体を製造するために用いる単量体としては、その重合体の膨潤度が前記範囲となるものを用いうる。そのような単量体としては、例えば、コア部の重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の例が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの単量体の中でも、芳香族ビニル単量体が好ましい。すなわち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。ここで、芳香族ビニル単量体単位とは、芳香族ビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレン及びスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。芳香族ビニル単量体を用いると、重合体の膨潤度を制御し易い。また、電解液中における多孔層の結着性を高めることができる。
シェル部の重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、膨潤度を前記範囲に制御しやすい。また、多孔層の電解液中における結着力をより高めることができる。
また、シェル部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体単位とは、酸基を有する単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。酸基含有単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、及び、水酸基を有する単量体が挙げられる。
不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
これらの中でも、不飽和カルボン酸単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
シェル部の重合体における酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、多孔層中での有機粒子の分散性を向上させ、多孔層全体にわたって良好な結着性を発現することができる。
また、シェル部の重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部の重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の例が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
シェル部の重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
シェル部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは100℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、充放電による電池セルの膨張を抑制できるので、電池セルの形状を長期間にわたって維持することができる。また、シェル部の重合体のガラス転移温度が前記範囲にあると、有機粒子がシャットダウン機能を発現する温度未満において、有機粒子の形状を効果的に維持することができる。
シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っている。すなわち、シェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない。外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆う本発明に係るシェル部である。したがって、例えば、シェル部の外表面からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える有機粒子は、本発明に係る有機粒子に含まれる。ここで、シェル部の外表面とは、通常は、有機粒子の周面である。
コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは60%以上であり、好ましくは99.9%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは95%以下、より更に好ましくは90%以下、特に好ましくは85%以下である。コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を前記範囲に収めることにより、電解液中におけるイオンの拡散性及び多孔層の結着性のバランスを良好にできる。
コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、有機粒子の断面構造の観察結果から測定しうる。具体的には、以下に説明する方法により測定しうる。
まず、有機粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を作製する。次に、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームでブロック片から厚さ80nm〜200nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製する。その後、必要に応じて、例えば四酸化ルテニウム又は四酸化オスミウムを用いて測定用試料に染色処理を施す。
次に、この測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、有機粒子の断面構造を写真撮影する。電子顕微鏡の倍率は、有機粒子1個の断面が視野に入る倍率が好ましく、具体的には10,000倍程度が好ましい。
撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の外表面に相当する周の長さD1、及び、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を測定する。そして、測定された長さD1及び長さD2を用いて、下記の(1)式により、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出する。
被覆割合Rc(%)=D2/D1×100 (1)
前記の被覆割合Rcを、20個以上の有機粒子について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合とする。
前記の被覆割合Rcは、断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
シェル部は、有機粒子の体積平均粒子径に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、有機粒子の体積平均粒子径に対するシェル部の平均厚みが、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、特に好ましくは5%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。シェル部の平均厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電解液中における多孔層の結着性を更に高めることができる。
シェル部の平均厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による有機粒子の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、有機粒子の断面構造におけるシェル部の最大厚みを測定し、任意に選択した20個以上の有機粒子のシェル部の最大厚みの平均値を、シェル部の平均厚みとする。ただし、シェル部が重合体の粒子によって構成されており、かつ、有機粒子の径方向で、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成している場合は、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径をシェル部の平均厚みとする。
シェル部の形態は特に制限されないが、シェル部は、重合体の粒子によって構成されていることが好ましい。シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、有機粒子の径方向にシェル部を構成する粒子が複数重なり合っていてもよい。ただし、有機粒子の径方向では、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成していることが好ましい。
シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。個数平均粒子径を前記範囲に収めることにより、電解液中におけるイオンの拡散性及び多孔層の結着性のバランスを良好にできる。
シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって有機粒子の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、有機粒子の断面構造におけるシェル部を構成する粒子の最長径を測定し、任意に選択した20個以上の有機粒子のシェル部を構成する粒子の最長径の平均値を、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径とする。
(4.1.3.任意の構成要素)
有機粒子は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部及びシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。
例えば、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、有機粒子をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。
ただし、本発明の効果を顕著に発揮する観点からは、有機粒子はコア部及びシェル部のみを備えることが好ましい。
(4.1.4.有機粒子の大きさ)
有機粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。有機粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、充放電による電池のセルの膨張を抑制できるので、電池のセルの形状を長期間にわたって維持することができる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。
(4.1.5.有機粒子の量)
有機粒子の量は、多孔層における有機粒子の割合が所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的には、多孔層における有機粒子の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下、更に好ましくは98重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。有機粒子の量を前記範囲にすることにより、電解液中における多孔層の結着性を高め、かつ、イオン拡散性を高めることができる。
(4.1.6.有機粒子の製造方法)
有機粒子は、例えば、コア部の重合体の単量体とシェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、製造しうる。具体的には、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法及び多段階懸濁重合法によって得ることができる。
多段階乳化重合法によりコアシェル構造を有する有機粒子を得る場合の一例を示す。
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、又はオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。これらの乳化剤及び重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合手順としては、まず、溶媒である水に、コア部を形成する単量体及び乳化剤を混合し、その後、重合開始剤を入れ、乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。さらに、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、コアシェル構造を有する有機粒子を得ることができる。
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部の重合体の単量体は複数回に分割して、もしくは、連続で重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体の単量体を一括で重合系に供給するのではなく分割若しくは連続で重合系に供給することにより、通常は、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
シェル部の重合体の単量体を複数回に分割して供給する場合には、単量体を分割する割合に応じてシェル部を構成する粒子の粒子径及びシェル部の平均厚みを制御することが可能である。また、シェル部の重合体の単量体を連続で供給する場合には、単位時間あたりの単量体の供給量を調整することで、シェル部を構成する粒子の粒子径及びシェル部の平均厚みを制御することが可能である。
また、シェル部の重合体を形成する単量体は、重合溶媒に対して親和性の低い単量体を用いると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向がある。重合溶媒が水の場合、シェル部の重合体を形成する単量体は、疎水性単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体を含むことが特に好ましい。
また、用いる乳化剤量を少なくすると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向があり、適宜乳化剤量を調整することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
また、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径、シェル部を形成した後の有機粒子の体積平均粒子径、及び、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することで、所望の範囲にすることができる。
さらに、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径に対応して、例えば、乳化剤の量、及び、シェル部の重合体の単量体の量を調整することで、所望の範囲にすることができる。
〔4.2.多孔層用バインダー〕
多孔層は、多孔層用バインダーを含むことが好ましい。この多孔層用バインダーを用いることにより、有機粒子同士を多孔層用バインダーで結着させて、多孔層の機械的強度を高めることができる。また、多孔層用バインダーは多孔層を電極活物質層に結着させる作用を奏するので、多孔層と電極活物質層との結着性を高めることができる。
多孔層用バインダーとしては、通常は重合体を用いる。多孔層用バインダーとしては非粒子状の重合体を用いてもよいが、多孔層の孔を大きくしてイオン透過性を高める観点では粒子状の重合体を用いることが好ましい。このような粒子状の重合体は、通常、非水溶性の重合体を用いる。多孔層を製造するための組成物である多孔層用スラリーは溶媒として水を含むことが多いので、非水溶性の重合体を多孔層用バインダーとして用いることにより、多孔層においてその多孔層用バインダーを容易に粒子状にできる。
非水溶性の重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体等の熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。これらの中でも、多孔層用バインダーとしては(メタ)アクリル酸エステル重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体をいう。(メタ)アクリル酸エステル重合体を多孔層用バインダーとして用いることにより、多孔層のイオン伝導性を高くできるので、リチウムイオン二次電池のレート特性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は電気化学的に安定であるので、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を更に向上させることができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に対応する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、柔軟性に優れる点から、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
多孔層用バインダーにおける(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、特に好ましくは97重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、多孔層の柔軟性を高めて、多孔層の結着性を高めることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記上限値以下にすることにより、多孔層の剛性を高めて、これによっても多孔層の結着性を高めることができる。
また、多孔層用バインダーは、アミド単量体単位を含むことが好ましい。アミド単量体単位とは、アミド単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、アミド単量体とは、アミド基を有する単量体であり、アミド化合物だけでなく、イミド化合物も含む。
アミド単量体単位を有することにより、多孔層用バインダーは、電解液中のハロゲン化物イオンを捕捉できる。そのため、ハロゲン化物イオンを原因とした電解液及びSEI(Solid Electrolyte Interphase)の分解を抑制できるので、充放電に伴うガスの発生を抑制できる。また、多孔層用バインダーは、電解液中の遷移金属イオンを捕捉できる。例えば、正極から溶出する金属イオンを、多孔層用バインダーで捕捉できる。そのため、充放電に伴う負極での遷移金属の析出を効果的に抑制できる。したがって、多孔層用バインダーを用いれば、充放電に伴う電池容量の低下の程度を小さくできるので、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
また、多孔層用バインダーを用いれば、前記のように充放電に伴うガスの発生を抑制できるので、そのガスによる空隙の発生を抑制できる。したがって、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に改善できる。このようなガスの発生量は、充放電を繰り返したときのリチウムイオン二次電池のセルの体積変化により評価することができる。
アミド単量体としては、例えば、カルボン酸アミド単量体、スルホン酸アミド単量体、リン酸アミド単量体などが挙げられる。
カルボン酸アミド単量体は、カルボン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミド化合物;N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミドのN−アミノアルキル誘導体;などが挙げられる。
スルホン酸アミド単量体は、スルホン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。スルホン酸アミド単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−t−ブチルアクリルアミドスルホン酸などが挙げられる。
リン酸アミド単量体は、リン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。リン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミドホスホン酸、アクリルアミドホスホン酸誘導体などが挙げられる。
これらのアミド単量体の中でも、多孔層の耐久性を高める観点から、カルボン酸アミド単量体が好ましく、不飽和カルボン酸アミド化合物がより好ましく、(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
また、アミド単量体及びアミド単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔層用バインダーにおけるアミド単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。アミド単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池におけるガスの発生を効果的に抑制でき、また、電解液中の遷移金属イオンを効果的に捕捉できる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を高めることができる。
また、多孔層用バインダーは、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体単位としては、例えば、有機粒子に用いうるものとして説明したものと同様の範囲から選択されるものを用いうる。また、酸基含有単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔層用バインダーにおける酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上、特に好ましくは0.6重量%以上であり、好ましくは10.0重量%以下、より好ましくは6.0重量%以下、特に好ましくは4.0重量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲内とすることにより、多孔層の凝集破壊が抑制されて、電解液中での多孔層の結着性を向上させることができる。
さらに、多孔層用バインダーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含みうる。この際、(メタ)アクリロニトリル単量体単位に対応する(メタ)アクリロニトリル単量体としては、アクリロニトリルを用いてもよく、メタクリロニトリルを用いてもよく、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとを組み合わせて用いてもよい。
多孔層用バインダーにおける(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは20.0重量%以下、より好ましくは10.0重量%以下、特に好ましくは5.0重量%以下である。(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の寿命を特に長くすることができる。また、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記上限値以下にすることにより、多孔層の機械的強度を高めることができる。
また、多孔層用バインダーは、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体単位に対応する架橋性単量体の例としては、有機粒子の説明において例示したものと同様の例が挙げられる。さらに、カルボン酸アミド単量体として例示したN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドは、アミド単量体及び架橋性単量体の両方として作用しうるので、このN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドを架橋性単量体として用いてもよい。架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔層用バインダーにおける架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下、特に好ましくは3.0重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、多孔層の機械的強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔層の柔軟性が損なわれて脆くなることを防止できる。
多孔層用バインダーは、更に、前記以外の任意の構造単位を含みうる。任意の構造単位としては、例えば、スチレンを重合して形成される構造を有する構造単位(スチレン単位)、ブタジエンを重合して形成される構造を有する構造単位(ブタジエン単位)などが挙げられる。また、これらの任意の構造単位は、1種類を単独で用いていてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔層用バインダーのガラス転移温度は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−90℃以上、特に好ましくは−80℃以上であり、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−10℃以下である。多孔層用バインダーのガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔層の結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔層の柔軟性を高めることができる。
多孔層用バインダーが粒子状の重合体である場合、多孔層用バインダーの粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.9μm以下、特に好ましくは0.8μm以下である。多孔層用バインダーの体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔層用バインダーの分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔層の結着性を高めることができる。
多孔層用バインダーの製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま多孔層用スラリーの材料として好適に使用できるので、乳化重合法及び懸濁重合法が好ましい。また、多孔層用バインダーを製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。多孔層用バインダーは、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
多孔層用バインダーの量は、有機粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下である。多孔層用バインダーの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、充放電による電池のセルの膨張を抑制できるので、電池のセルの形状を長期間にわたって維持することができる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。
〔4.3.任意の成分〕
多孔層は、上述した有機粒子及び多孔層用バインダー以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分としては、電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものを用いうる。例えば、多孔層は、非導電性粒子、水溶性重合体、イソチアゾリン系化合物、キレート化合物、ピリチオン化合物、分散剤、レベリング剤、濡れ剤、酸化防止剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、及び、電解液分解抑制の機能を有する電解液添加剤などを含んでいてもよい。これらの任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔4.4.多孔層の位置〕
多孔層は、電極活物質層に直接に設けられている。すなわち、多孔層は電極活物質層に直接に接していて、多孔層と電極活物質層との間には他の層は存在しない。これにより、多孔層に含まれる有機粒子が電極活物質層の直ぐ近くにあるので、電極活物質層の近傍で電解液が分解して空隙が生じた場合に、有機粒子のコア部から電解液を速やかに供給し、空隙を埋めることができる。このため、リチウムイオン二次電池においては電解液の分解による電池容量の低下を抑制できるので、高い高温サイクル特性を実現できる。
〔4.5.多孔層の厚み〕
多孔層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下である。多孔層の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、充放電による電池のセルの膨張を抑制できるので、電池のセルの形状を長期間にわたって維持することができる。また上限値以下とすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。
〔4.6.多孔層による作用〕
前述したように、多孔層は、充放電に伴って電解液が分解された場合に、その分解によって失われた分の電解液をコア部から供給して、電池容量の低下を抑制する効果を発揮する。また、この多孔層は、例えば、下記のような作用も発現しうる。
通常、有機粒子のシェル部が電解液に膨潤すると、高い結着性を発現する。このため、この有機粒子を含む多孔層は電解液中において高い結着性を有することができる。なお、有機粒子は電解液に膨潤していない状態であっても、一定温度以上(例えば60℃以上)に加熱されることにより、結着性を発現しうる。
多孔層は有機粒子を含むので、多孔層中には孔が形成され易い。そのため、多孔層は、通常、多孔性を有し、優れたイオン拡散性を発現しうる。さらに、通常、有機粒子のコア部は、高いイオン拡散性を有する。そのため、リチウムイオンは多孔層を容易に透過できるので、リチウムイオン二次電池の抵抗を小さくできる。
通常、有機粒子のシェル部は、その剛性を過度に損なうほど大きくは膨潤しないので、有機粒子は適度な剛性を有する。そのため、多孔層は機械的強度に優れる。このように機械的強度に優れる多孔層が電極活物質層に直接に設けられているので、電極活物質層からの電極活物質等の粒子の脱離、並びに電極活物質層の集電体からの剥離を防止することができる。
〔4.7.多孔層の形成方法〕
多孔層は、例えば、多孔層用スラリーを電極活物質層上に塗布して当該多孔層用スラリーの膜を得る工程と、必要に応じてその膜から乾燥によって水等の溶媒を除去する工程とを含む製造方法により、形成できる。ここで、多孔層用スラリーとは、多孔層に含まれる成分、溶媒、及び、必要に応じて任意の成分を含む流体状の組成物である。
溶媒としては、水を用いることが好ましい。有機粒子及び多孔層用バインダーは通常は非水溶性であるので、溶媒として水を用いた場合には、有機粒子及び多孔層用バインダーは水中において粒子状となって分散している。
溶媒として、水以外の溶媒を水とを組み合わせて用いてもよい。水と組み合わせて用いうる溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、溶媒としては、水を単独で用いることが好ましい。
多孔層用スラリーにおける溶媒の量は、多孔層用スラリーの固形分濃度が所望の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的な多孔層用スラリーの固形分濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。ここで、ある組成物の固形分とは、その組成物の乾燥を経て残留する物質のことをいう。
多孔層用スラリーに含まれる各成分は、通常、高い分散性を有する。そのため、多孔層用スラリーの粘度は、通常、容易に低くできる。多孔層用スラリーの具体的な粘度は、多孔層を製造する際の塗布性を良好にする観点から、10mPa・s〜2000mPa・sが好ましい。前記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
多孔層用スラリーは、例えば、上述した各成分を混合することにより製造できる。各成分の混合順序には特に制限は無い。また、混合方法にも特に制限は無い。通常は、粒子を速やかに分散させるため、混合装置として分散機を用いて混合を行う。分散機は、上記成分を均一に分散及び混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。中でも、高い分散シェアを加えることができることから、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置が特に好ましい。
多孔層用スラリーの塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔層が得られる点で、ディップ法及びグラビア法が好ましい。
多孔層用スラリーの膜の乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風等の風による乾燥;真空乾燥;赤外線、遠赤外線、及び電子線などの照射による乾燥法;などが挙げられる。
乾燥の際の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。乾燥温度を前記範囲の下限以上にすることにより多孔層用スラリーの膜からの溶媒及び低分子化合物を効率よく除去できる。また、上限以下とすることにより、基材としての電極活物質層の熱による変形を抑えることができる。
乾燥時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、特に好ましくは15秒以上であり、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。乾燥時間を前記範囲の下限以上にすることにより、多孔層用スラリーから溶媒を十分に除去できるので、電池の出力特性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、製造効率を高めることができる。
多孔層の製造方法においては、上述した以外の任意の操作を行ってもよい。
例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔層に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、電極活物質層と多孔層との結着性を向上させることができる。ただし、多孔層の空隙率を好ましい範囲に保つ観点では、圧力および加圧時間が過度に大きくならないように適切に制御することが好ましい。
また、残留水分除去のため、例えば真空乾燥やドライルーム内で乾燥することが好ましい。
さらに、例えば加熱処理することも好ましい。これにより、重合体成分に含まれる熱架橋基を架橋させて、多孔層の結着性を高めることができる。
[5.リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の電極及び電解液を備える。具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を備え、且つ、前記の正極及び負極のうちの少なくとも一つとして本発明の電極を備える。本発明の電極を備えるので、本発明のリチウムイオン二次電池は、高温サイクル特性に優れる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池においては、本発明の電極が、折られたり曲げられたりせずに、平らな形状を有していてもよい。このように平坦な形状を有する電極を備えるリチウムイオン二次電池は、その平坦な形状を有する電極が積み重ねられた構成を有するので、積層型の電池と呼ばれる。積層型の電池は、折り曲げ及び巻き締めのように高い圧力が加えられる工程を経ないで製造されるので、一般に充放電によって電極間の距離が広がり易く、サイクル特性及び出力特性等の電池特性に劣る傾向がある。ところが、本発明の電極は電解液中において多孔層が高い結着性を有するので、この多孔層によって正極と負極とを強力に結着できる。そのため、本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池は、積層型であっても電極間距離が増大し難いので、電池特性を良好にできる。
電解液としては、有機粒子のコア部の重合体及びシェル部の重合体を、前述した所定の範囲の膨潤度で膨潤させられるものを用いうる。このような電解液としては、有機溶媒と、その有機溶媒に溶解した支持電解質とを含む有機電解液が好ましく用いうる。
支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すことから、LiPF、LiClO及びCFSOLiが好ましい。また、支持電解質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほど、リチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液中における支持電解質の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。また、支持電解質の種類に応じて、支持電解質は、好ましくは0.5モル/リットル〜2.5モル/リットルの濃度で用いられる。支持電解質の量をこの範囲に収めることにより、イオン導電度を高くできるので、リチウムイオン二次電池の充電特性及び放電特性を良好にできる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものを用いうる。有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート化合物;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル化合物;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;などが好適に挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広い範囲で有するので、カーボネート化合物が好ましい。また、用いる溶媒の粘度が低いほど、リチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
また、電解液は、必要に応じて添加剤を含みうる。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上述した電解液の中でも、有機粒子のコア部の重合体及びシェル部の重合体の膨潤度を制御し易いという観点から、電解液の溶媒としては所望のSP値を有するものを用いることが好ましい。電解液の溶媒の具体的なSP値は、好ましくは8(cal/cm1/2以上、より好ましくは9(cal/cm1/2以上であり、また、好ましくは15(cal/cm1/2以下、より好ましくは14(cal/cm1/2以下である。前記の範囲内に収まるSP値を有する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状エステル化合物;エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル化合物;などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池において、本発明の電極とその対極との間には、セパレータを設けなくてもよい。よって、本発明の電極の多孔層側には、直接に対極を設けてもよい。ここで直接に対極を設ける、とは、本発明の電極と本発明の電極の多孔層側の対極との間に別部材が無いことをいう。多孔層は絶縁性の層であるので、多孔層と別部材としてのセパレータを設けなくても、正極と負極との間の短絡を防止できる。また、この場合でも、通常は多孔層がシャットダウン機能を有するので、リチウムイオン二次電池の安全性は良好である。さらに、セパレータを設けないことにより抵抗を減らせるので、電池の低温出力特性を向上させることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池において、電極間に任意の部材を設ける場合でも、本発明の電極とその対極との間には、シャットダウン機能を有する部材を設けなくてもよい。よって、本発明の電極の多孔層側には、シャットダウン機能を有しない部材を介して対極を設けてもよい。このようにシャットダウン機能を有する部材を電極間に設けなくても、通常は本発明の電極が備える多孔層がシャットダウン機能を有するので、リチウムイオン二次電池の安全性は良好である。また、電極間に任意の部材としてセパレータを設ける場合でも、そのセパレータはシャットダウン機能を有さなくてもよいので、セパレータの材料の選択の幅を増やすことができる。よって、選択できるセパレータの範囲を広げ、ひいてはそのセパレータに対応する広範な作用を電池に付与できる。また、電極間には、例えば耐熱層など、シャットダウン機能を有さないセパレータ以外の構成要素を設けてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とを重ね合わせ、これを電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(1)高温サイクル試験の前後でのセル体積変化の測定方法
実施例及び比較例で製造した1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。この電池のセルを流動パラフィンに浸漬し、セルの体積X0を測定した。
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。1000サイクル後の電池のセルを流動パラフィンに浸漬し、セルの体積X1を測定した。
充放電を1000サイクル繰り返す前後での電池のセルの体積変化ΔXを、「ΔX(%)=(X1−X0)/X0×100」にて計算した。この体積変化ΔXの値が小さいほど、その電池がセル膨れ抑制に優れていることを示す。
(2)HOT−ER試験(シャットダウン性の評価方法)
実施例及び比較例で製造した1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し、0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。次に、この電池のセルを500kgfの圧力でプレスしながら、温度を200℃まで高め、セル抵抗Rを抵抗測定器(三菱化学アナリテック社製「ロレスタMCP−TP06P」)で測定した。測定されたセル抵抗Rの値を、下記の評価基準によって評価した。セル抵抗Rの値が大きいほど、シャットダウン性に優れることを示す。
(シャットダウン性の評価基準)
E:R=0(Ω)
D:0(Ω)<R≦1(Ω)
C:1(Ω)<R<10(Ω)
B:10(Ω)≦R<100(Ω)
A:100(Ω)≦R(Ω)
(3)高温サイクル特性の評価方法
実施例及び比較例で製造した1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電を1000サイクル繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。
容量維持率ΔCを、「ΔC=C1/C0×100(%)」にて計算した。この容量維持率ΔCが高いほど、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が優れ、電池が長寿命であることを示す。
(4)低温出力特性の評価方法
実施例及び比較例で製造した1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。
電圧変化ΔVを「ΔV=V0−V1」にて計算した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
(5)負極での金属リチウムの析出量の測定方法
実施例及び比較例で製造した1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、−10℃の環境下で、1Cの充電レートで4.35Vまで1時間かけて充電する操作を行った。その後、室温アルゴン環境下で、電池から負極を取り出した。取り出した負極を観察して、リチウム金属が析出している面積Ws(cm)を測定した。測定された面積を、下記の評価基準にて評価した。リチウム金属が析出している面積が小さいほど、充放電によるリチウム金属の析出が少なく、負極が電解液中のリチウムイオンを円滑に受け入れることが可能であることを示す。このように負極が電解液中のリチウムイオンを円滑に受け入れられることを、低温受け入れ特性に優れるという。
(リチウム金属の析出量の評価基準)
A:0(cm)≦Ws<1(cm
B:1(cm)≦Ws<5(cm
C:5(cm)≦Ws<10(cm
D:10(cm)≦Ws<15(cm
E:15(cm)≦Ws<20(cm
F:20(cm)≦Ws≦25(cm
(6)コア部の重合体の膨潤度の測定方法
実施例及び比較例においてコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、有機粒子のコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した。この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造した。
このフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。
また、前記の試験片を電解液に、60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定した。
これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
この際、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm1/2)に、支持電解質としてLiPFを溶媒に対し1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いた。
(7)シェル部の重合体の膨潤度の測定方法
コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いたこと以外は実施例及び比較例において有機粒子を含む水分散液を製造した方法と同様にして、シェル部を構成する重合体を含む水分散液を製造した。試験片を製造するための水分散液として、このシェル部を構成する重合体を含む水分散液を用いたこと以外はコア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様にして、シェル部の重合体の膨潤度Sを測定した。
(8)コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法
有機粒子を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D−800」)に十分に分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を作製した。次に、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
次に、染色した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM−3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、有機粒子の断面構造を写真撮影した。電子顕微鏡の倍率は、視野に有機粒子1個の断面が入るように倍率を設定した。
撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の周の長さD1、及び、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、下記(1)式により、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出した。
被覆割合Rc(%)=D2/D1×100 (1)
前記の被覆割合Rcを、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合とした。
(9)粒子の体積平均粒子径の測定方法
レーザ回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により試料となる粒子の粒子径分布を測定した。測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を、体積平均粒子径として求めた。
(10)コアシェル比率の測定方法
有機粒子のシェル部の平均厚みを、以下の手順で測定した。
シェル部が重合体の粒子により構成されている場合、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法の項で説明したのと同様にして、透過型電子顕微鏡によって、有機粒子の断面構造を観察した。観察された有機粒子の断面構造から、シェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定した。任意に選択した20個の有機粒子について、前記の方法でシェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定し、その最長径の平均値をシェル部の平均厚みとした。
また、シェル部が粒子以外の形状を有している場合、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法の項で説明したのと同様にして、透過型電子顕微鏡によって、有機粒子の断面構造を観察した。観察された有機粒子の断面構造から、シェル部の最大厚みを測定した。任意に選択した20個の有機粒子について、前記の方法でシェル部の最大厚みを測定し、その最大厚みの平均値をシェル部の平均厚みとした。
そして、測定されたシェル部の平均厚みを有機粒子の体積平均粒子径で割ることにより、コアシェル比率を計算した。
[実施例1]
(1−1.多孔層用バインダーの製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部、及び過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、アリルメタクリレート1部及びアクリルアミド1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記の反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、粒子状の多孔層用バインダーとして(メタ)アクリル重合体を含む水分散液を製造した。
得られた(メタ)アクリル重合体の粒子の体積平均粒子径D50は0.36μm、ガラス転移温度は−45℃であった。
(1−2.有機粒子の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得た。
次いで、この水分散液に、シェル部の製造に用いる単量体組成物としてスチレン19部及びメタクリル酸1部を連続で添加し、70℃に加温して重合を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止することにより、有機粒子を含む水分散液を製造した。得られた有機粒子の体積平均粒子径D50は0.45μmであった。得られた有機粒子について、上述した方法で、コアシェル比率及びコア部の表面がシェル部によって覆われる平均割合を測定した。
(1−3.多孔層用スラリーの製造)
前記の有機粒子を含む水分散液を有機粒子の量で100部、前記の(メタ)アクリル重合体を含む水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部、及び、ポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製「SNウェット366」)0.2部を混合して、多孔層用スラリーを製造した。
(1−4.負極用のバインダーの製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状の負極用バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記負極用バインダーを含む混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行い、30℃以下まで冷却して、粒子状の負極用バインダーを含む水分散液を得た。
(1−5.負極用スラリーの製造)
人造黒鉛(体積平均粒子径15.6μm)90部、SiOx粒子(体積平均粒子径5μm)10部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1.0部混合し、さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を68%に調製した後、25℃60分間混合した。さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を62%に調製した後、さらに25℃15分間混合した。こうして得られた混合液に、上記の負極用バインダーを含む水分散液を固形分相当で1.5部入れ、さらにイオン交換水を加えて最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
(1−6.負極用の極板の製造)
上記で得られた負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の片面に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、片面に負極活物質層を備えるプレス前の極板原反を得た。この極板原反をロールプレスで圧延して、集電体の片面に厚み80μmの負極活物質層を有する負極用の極板を得た。
また、前記のプレス前の極板原反を製造する工程と同様にして集電体の片面に負極用スラリーの塗布及び乾燥を行なった後で、その集電体のもう片面にも同様に負極用スラリーの塗布及び乾燥を行ない、さらに120℃にて2分間加熱処理して、両面に負極活物質層を備えるプレス前の極板原反を得た。この極板原反をロールプレスで圧延して、集電体の両面にそれぞれ厚み80μmの負極活物質層を有する負極用の極板を得た。
(1−7.負極の製造)
上記で得られた負極用の極板の各負極活物質層上に、多孔層用スラリーを、乾燥厚みが12μmとなるようにコンマコーターで塗布し、乾燥した。乾燥は、極板を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行なった。これにより、集電体の片面に負極活物質層及び多孔層を有する負極(以下、適宜「片面負極」ということがある。)、及び、集電体の両面に負極活物質層及び多孔層を有する負極(以下、適宜「両面負極」ということがある。)を得た。
(1−8.正極用スラリーの製造)
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部混合し、これにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%に調整した。これをプラネタリーミキサーによって混合し、正極用スラリーを得た。
(1−9.正極の製造)
前記の正極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、片面に正極活物質層を備えるプレス前の正極原反を得た。この正極原反をロールプレスで圧延して、集電体の片面に厚み80μmの正極活物質層を有する正極(以下、適宜「片面正極」ということがある。)を得た。
また、前記のプレス前の正極原反を製造する工程と同様にして集電体の片面に正極用スラリーの塗布及び乾燥を行なった後で、その集電体のもう片面にも同様に正極用スラリーの塗布及び乾燥を行ない、さらに120℃にて2分間加熱処理して、両面に正極活物質層を備えるプレス前の正極原反を得た。この正極原反をロールプレスで圧延して、集電体の両面にそれぞれ厚み80μmの正極活物質層を有する正極(以下、適宜「両面正極」ということがある。)を得た。
(1−10.リチウムイオン二次電池の製造)
片面正極及び両面正極を5cm×15cmに切り出した。また、片面負極及び両面負極を5.5cm×15.5cmに切り出した。片面正極、両面負極、両面正極及び片面負極をこの順に配置して、電極積層体を得た。この際、片面正極の向きは、両面負極に近い方から正極活物質層及び集電体の順に配置される向きにした。さらに、片面負極の向きは、両面正極に近い方から多孔層、負極活物質層及び集電体の順に配置される向きにした。
この電極積層体を、アルミニウム包材外装で包んだ。外装の中に電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材外装の開口を密封するために150℃のヒートシールを施すことによってアルミニウム包材外装を閉口して、電池外装体を得た。その後、この電池外装体に100℃、2分間、100Kgfで平板プレス処理を施して、1000mAh積層型のリチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で評価を行なった。
[実施例2]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.85部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.15部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例3]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を71.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を4.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例4]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を76.85部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例5]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、メタクリル酸メチル55部及び2−エチルヘキシルアクリレート20部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例6]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの代わりにアクリロニトリルを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例7]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、アクリロニトリル65部及び2−エチルヘキシルアクリレート10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例8]
前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部の代わりに、スチレン9部及びアクリロニトリル10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例9]
前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部の代わりに、スチレン4部及びアクリロニトリル15部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例10]
前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部及びメタクリル酸1部を組み合わせて用いる代わりに、スチレンスルホン酸のナトリウム塩20部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例11]
前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部及びメタクリル酸1部を組み合わせて用いる代わりに、スチレンスルホン酸のナトリウム塩15部及びアクリロニトリル5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例12]
実施例1で製造した多孔層を有さない片面正極及び両面正極を極板として用いて、これらの極板の各正極活物質層上に、多孔層用スラリーを、乾燥厚みが12μmとなるようにコンマコーターで塗布し、乾燥した。乾燥は、極板を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行なった。これにより、集電体の片面に正極活物質層及び多孔層を有する正極、及び、集電体の両面に正極活物質層及び多孔層を有する正極を得た。
前記工程(1−10)において、多孔層を有さない片面正極及び両面正極の代わりに、前記のように製造した多孔層を有する片面正極及び両面正極を用いた。
また、前記工程(1−10)において、多孔層を有する片面負極の代わりに集電体の片面に負極活物質層を有するが多孔層を有さない負極用の極板を用い、多孔層を有する両面負極の代わりに集電体の両面に負極活物質層を有するが多孔層を有さない負極用の極板を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例13]
前記工程(1−10)において、多孔層を有さない片面正極及び両面正極の代わりに、実施例12で製造した多孔層を有する片面正極及び両面正極を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[実施例14]
前記工程(1−10)において、片面正極と両面負極との間、両面負極と両面正極との間、及び、両面正極と片面負極との間のそれぞれに、セパレータとしてセルガード2500(厚み:25μm、材質:ポリプロピレン、セルガード社製)を設けた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[比較例1]
前記工程(1−3)において、有機粒子の代わりにアルミナ粒子(体積平均粒子径0.5μm)を100部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[比較例2]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部を組み合わせて用いる代わりにスチレン80部を用いた。
また、前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部及びメタクリル酸1部を組み合わせて用いる代わりに、スチレン20部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
この比較例2は、コア部及びシェル部の両方がポリスチレンからなるコアシェル構造を有する有機粒子を用いた例となっている。
[比較例3]
前記工程(1−2)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を50部に変更し、メタクリル酸の量を5部に変更し、エチレンジメタクリレート1部の代わりにアクリロニトリル25部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
[比較例4]
前記工程(1−2)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン19部の代わりに、メタクリル酸メチル10部及びアクリロニトリル9部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池の製造及び評価を行なった。
「結果」
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。また、下記の表において、単量体の項において単量体の略称の隣に記載の数値は、その単量体の重量部を表す。さらに、下記の表において、活物質の項において活物質の名称の隣に記載の数値は、その活物質の重量部を表す。
LCO:LiCoO
MAC350HC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
ST:スチレン
BD:1,3−ブタジエン
IA:イタコン酸
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
EDMA:エチレンジメタクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AN:アクリロニトリル
NaSS:スチレンスルホン酸のナトリウム塩
Tg:ガラス転移温度
コアシェル比:コアシェル比率
被覆率:コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合
D50:体積平均粒子径
BA:ブチルアクリレート
AMA:アリルメタクリレート
AAm:アクリルアミド
SN366:ポリエチレングリコール型界面活性剤
Figure 2015111663
Figure 2015111663
Figure 2015111663
Figure 2015111663
Figure 2015111663
[検討]
実施例及び比較例の結果から、本発明により、高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できることが確認された。比較例2及び3と実施例との対比から、コア部の重合体の膨潤度を所定の範囲に収めることには、高温サイクル特性を改善する上で技術的意義があることが分かる。また、比較例4と実施例との対比から、シェル部の重合体の膨潤度を所定の範囲に収めることには、高温サイクル特性を改善する上で技術的意義があることが分かる。
さらに、実施例1〜13が実施例14よりも低温出力特性に優れることから、多孔層のシャットダウン機能を利用してセパレータを省略することにより、高温サイクル特性だけでなく低温出力特性にも優れるリチウムイオン二次電池を実現できることが確認された。
100 有機粒子
110 コア部
110S コア部の外表面
120 シェル部

Claims (5)

  1. 電極活物質層と、前記電極活物質層に直接に設けられた有機粒子を含む多孔層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極であって、
    前記有機粒子が、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、
    前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
    前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用電極。
  2. 前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上150℃以下であり、
    前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用電極。
  3. 請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池用電極及び電解液を備える、リチウムイオン二次電池。
  4. 前記リチウムイオン二次電池用電極の前記多孔層側に、直接に又はシャットダウン機能を有しない部材を介して対極を備える、請求項3記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記電極が平らな形状を有する、請求項3又は4記載のリチウムイオン二次電池。
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