JP2015027849A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性を損なうことなく軽量化された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】繊度500〜900dtexのポリエステルフィラメント束に下撚りをかけ、これを2本上撚りしてなる双撚り構造のコードであって、上撚りと下撚りの平均の撚り数をT(回/10cm)及び総表示繊度をD(dtex)としてT×(D/1.39)1/2で定義される撚り係数Kが800〜1200であるポリエステルコードを用い、該ポリエステルコードからなる繊維材に、温度100℃かつせん断速度1000(1/秒)の条件で測定した粘度が4500〜6500Pa・sであるゴム組成物を被覆することにより、カーカス層などの繊維補強層を形成した空気入りタイヤである。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
近年、自動車の低燃費化が強く求められており、低燃費化にはタイヤの質量軽減が寄与するので、タイヤ軽量化のため、タイヤ構成材料の使用量削減が求められている。
従来、タイヤの軽量化を図るため、カーカス層に片撚りコードを使用し、カーカス層の厚みを低減することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、片撚りコードのようにコードゲージが小さいコードは、双撚りコードよりもコード強力が低く、カーカスの強度を維持するためにコードの打ち込み本数が増やす必要がある。それによってコード間隔が狭くなり、セパレーションに対して不利になることでタイヤの耐久性が低下する。また、片撚りコードは双撚りコードよりも収束性が低いため、圧縮や曲げ変形に対してコードを構成するフィラメントが局所的に座屈を起こしやすく、耐疲労性が劣る。かかる耐疲労性の低下は、片撚りコードに高い撚りを付与し収束性を高めることで改善することができるが、その場合、強度が低下するためコードの打ち込み本数を増やす必要があり、それによってコード間隔が狭くなり、セパレーションに対して不利となることでタイヤの耐久性が低下する。このように片撚りコードを用いて、軽量化と耐久性を両立することは難しい。
一方、特許文献2には、ポリエステル繊維からなる双撚り構造のコードをカーカス層に用いたものにおいて、タイヤの軽量化を図るため、総繊度を2200dtex以下と細く設定するとともに、総繊度と打ち込み本数と剛軟度と破断強力との間に所定の関係式を満たすように設定することが開示されている。しかしながら、総繊度と打ち込み本数の関係を規定したとしても、被覆ゴムの特性によってはコード間にゴムが確実に浸入するとは限らず、コード同士が接触することによるタイヤ耐久性の低下につながることが判明した。
特開2011−11594号公報 特開2011−225085号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、耐久性を損なうことなく軽量化を図ることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討していく中で、撚り係数及び繊度を適切に設定した双撚りのポリエステルコードを使用し、かつ被覆ゴムの粘度を適切に設定することにより、タイヤの耐久性を損なうことなく軽量化を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る空気入りタイヤは、繊維補強層を備えるものであり、前記繊維補強層は、繊度500〜900dtexのポリエステルフィラメント束に下撚りをかけ、これを2本上撚りしてなる双撚り構造のコードであって、上撚りと下撚りの平均の撚り数をT(回/10cm)及び総表示繊度をD(dtex)としてT×(D/1.39)1/2で定義される撚り係数Kが800〜1200であるポリエステルコードを用い、該ポリエステルコードからなる繊維材に、温度100℃かつせん断速度1000(1/秒)の条件で測定した粘度が4500〜6500Pa・sであるゴム組成物を被覆してなるものである。
本発明によれば、タイヤの繊維補強層に、上記特定の繊度及び撚り係数を持つ双撚りのポリエステルコードと、上記所定の粘度を持つ被覆ゴムとを組み合わせたことにより、タイヤの耐久性を損なうことなく軽量化を図ることができる。
実施形態の空気入りタイヤの半断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係る空気入りタイヤは、ポリエステルコードからなる繊維材に、被覆ゴムとしてのゴム組成物を被覆してなる繊維補強層を備えるものである。かかる繊維補強層としては、例えば、カーカス層、ベルト補強層、チェーファーなどが挙げられる。
上記ポリエステルコードとしては、繊度500〜900dtexのポリエステルフィラメント束に下撚りをかけ、これを2本用いて上撚りしてなる双撚り構造のコードが用いられる。このような繊度の小さい(即ち、細い)ポリエステルコードを用いることにより、被覆ゴム量(トッピングゴム量)を低減することができ、タイヤの質量を低減させることができる。ここで、上記ポリエステルフィラメント束の繊度が500dtexよりも小さいと、カーカス層等のタイヤ用繊維補強層として必要な強度にするために要するコード打ち込み本数が多くなり、その結果、セパレーションが起こりやすくなってタイヤの耐久性が低下する。また、該繊度が900dtexよりも大きいと、繊維補強層の厚みを十分に低減できず、軽量化効果に劣る。ポリエステルフィラメント束の繊度は、より好ましくは500〜700dtexであり、更に好ましくは550〜600dtexである。
該ポリエステルコードは、上記ポリエステルフィラメント束をZ方向に撚り合わせた2本の下撚糸を引き揃え、これを下撚りの撚り方向と逆方向であるS方向に撚り合わせることにより作製することができる。
該ポリエステルコードは、上記のコード構造に撚り合わせる際の撚り係数が次のように設定される。すなわち、長さ10cm当たりの上撚りと下撚りの平均の撚り数をT(回/10cm)とし、総表示繊度(公称繊度)をD(dtex)として、下記式で表される撚り係数Kが800〜1200となるように撚り合わされる(式中の1.39はポリエステルの密度)。
K=T×(D/1.39)1/2
上記撚り係数Kが800未満では、ポリエステルコードの耐疲労性が低下するため、タイヤの耐久性が低下する。撚り係数Kが1200を超えると、ポリエステルコードの強度が小さくなりすぎるため、カーカス層等のタイヤ用繊維補強層として必要な強度にするために要するコード打ち込み本数が多くなり、その結果、セパレーションが起こりやすくなってタイヤの耐久性が低下する。なお、上撚りと下撚りの撚り数は、特に限定されないが、20〜50回/10cmであることが好ましく、また、上撚り数と下撚り数は同じ値に設定されることが好ましい。
本実施形態で用いる繊維材としては、該ポリエステルコードを所定の打ち込み本数でスダレ状等に製織したものであってもよく、あるいはまた、複数本の上記ポリエステルコードを所定の打ち込み本数で単に引き揃えたものであってもよい。なお、ポリエステルコードには、常法に従い、例えばRFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス)接着液などの公知の処理液に浸漬乾燥することで、接着処理を施してもよいが、かかる接着処理は、上記のようにスダレ状に製織してから行ってもよく、あるいはまたポリエステルコード単体の段階で行ってもよい。
ポリエステルコードの打ち込み本数(エンド数)は、特に限定しないが、上記のように繊度の低いポリエステルコードを用いるため、カーカス層等のタイヤ用繊維補強層として必要な強度を確保するために、比較的高い値に設定することが好ましく、具体的には、20〜50本/25mmであることが好ましく、より好ましくは30〜50本/25mmである。
上記繊維材は、所定の粘度を有するゴム組成物により被覆される。すなわち、該ゴム組成物を被覆ゴムとして、繊維材の両面を被覆することでトッピング反が形成される。繊維材にカレンダリングする際のゴム組成物の温度は、特に限定しないが、通常は90〜100℃である。被覆するゴム厚みは、特に限定しないが、繊維材の表裏それぞれ0.1〜0.8mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5mmである。
被覆ゴムとして用いるゴム組成物としては、測定温度100℃、せん断速度1000(1/秒)の条件で測定したときの粘度が4500〜6500Pa・sであるものを用いる。このような粘度の低いゴム組成物で被覆することにより、ポリエステルコード間にゴムが確実に侵入して、ポリエステルコード同士が接触することによるタイヤ耐久性の低下を防ぐことができる。すなわち、本実施形態では、上記のように繊度の低いポリエステルコードを高い打ち込み本数で設置するため、通常であればコード間にゴムが浸入しにくくなるが、被覆ゴムの粘度を上記の通りに設定することで、コード間へのゴムの浸入性を確保することができる。該ゴム組成物の粘度が4500Pa・s未満であると、トッピング反を巻き取る際に、トッピング反同士やトッピング反間に挟み込むインサート材との間で密着等の不具合が起こりやすくなり、生産性が低下する。また、該ゴム組成物の粘度が6500Pa・sを超えると、ポリエステルコード間へゴムが侵入しづらくなることにより、エンド乱れ等の不具合が起こりやすくなり、また、タイヤへ用いた際にポリエステルコード同士が接触することによりタイヤの耐久性が低下する。ゴム組成物の粘度は、より好ましくは、5000〜6000Pa・sである。
該ゴム組成物の配合は、特に限定されず、例えば、ゴム成分としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムから選択される少なくとも1種のジエン系ゴムを用いることができ、好ましくは、ゴム成分100質量部中、天然ゴムの含有量が81〜90質量部、かつスチレンブタジエンゴムの含有量が19〜10質量部である。また、該ゴム成分に添加する成分としては、例えば、カーボンブラック等の充填剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、オイル等の軟化剤、接着樹脂、加硫剤、加硫促進剤など、有機繊維材被覆用ゴム組成物において一般に使用される様々な成分が挙げられる。その際、上記粘度は、例えば、オイルなどの軟化剤、及びカーボンブラック等の充填剤の配合量や種類を変更することで、上記範囲内に設定することができる。特に限定するものではないが、オイルは、上記ゴム成分100質量部に対して10〜19質量部配合してもよい。かかるゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやロール、ニーダー等の混合機を用いて混練し作製することができる。
このようにして得られたトッピング反は、空気入りタイヤにおける繊維補強層として用いることができ、すなわち、該トッピング反を、例えば、カーカス層、ベルト補強層又はチェーファーのいずれか少なくとも1つを構成する部材として用いて、未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製し、次いで、未加硫タイヤを金型にセットして加硫することにより、製品タイヤを得ることができる。
図1は、一実施形態に係るものとして乗用車用空気入りラジアルタイヤの1例を示すタイヤ(1)の半断面図である。このタイヤ(1)は、トレッド部(2)と、左右一対のビード部(3)と、トレッド部(2)とビード部(3)との間に介在する左右一対のサイドウォール部(4)とを備えて構成されており、一対のビード部(3)間にまたがって延びるカーカス層(5)が有する。
カーカス層(5)は、トレッド部(2)からサイドウォール部(4)を通ってビード部(3)に至り、ビード部(3)においてビードコア(6)で内側から外側に折り返すことにより係止されている。カーカス層(5)は、繊維コード、例えば上記ポリエステルコードを、タイヤ周方向に対して実質上直角に配列してなり、1プライ又は2プライ以上で構成することができる。
トレッド部(2)におけるカーカス層(5)の外周側(即ち、タイヤ径方向外側)にはスチールコードよりなる2層のベルト(7)が設けられている。そして、ベルト(7)の外周側において、ベルト(7)とトレッドゴム(8)との間に、ベルト補強層(9)が設けられている。ベルト補強層(9)は、繊維コード、例えば上記ポリエステルコードを、タイヤ周方向に沿って配列して構成することができる。図示した例では、ベルト補強層(9)は、ベルト層の幅方向全体を覆うキャッププライであるが、ベルト端部のみを覆うエッジプライでもよい。
なお、チェーファーは、ビード部を補強するために設けられるものであって、通常はトラックやバスなどの大型車に用いられる重荷重用タイヤに設けられるものであるが、これを図1において図示すれば、符号(10)の如くその一例を示すことができる。図示するように、チェーファー(10)は、ビード部(3)におけるカーカス層(5)の巻き上げ部(5A)の外側に隣接させて設けられる。チェーファー(10)は、繊維コード、例えば上記ポリエステルコードを、タイヤ径方向に対して傾斜するように配列して構成することができる。
以下、実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
タイヤサイズが205/65R15である空気入りラジアルタイヤを試作した。カーカス層の構成は、実施例及び比較例の各タイヤについて、下記表1,2に示す通りであり、カーカス層以外の構成は、全て共通の構成とした。
詳細には、ベルトは、2+1×0.27mmのスチールコードよりなるものを2枚(コード角度は、+25°/−25°)とした。ベルト補強層はナイロン66の940dtex/2からなるコードを用いて作製した。
表1,2中のコード材質における「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを意味し、「560dtex/2」は繊度560dtexのPETフィラメントからなる下撚りしたヤーンを2本撚り合わせて得られた双撚り構造であることを意味し、「1100dtex/1」は繊度1100dtexのPETフィラメント束からなる片撚り構造であることを意味する。なお、被覆ゴムの配合は下記表3に示す通りである。
表1,2中の各物性、およびタイヤ性能についての各測定・評価方法は以下の通りである。
・コード径、コード強力:JIS L1017に準じ、20℃、65%RHの恒温条件で24時間以上放置後、コード径及び引っ張り試験機にて強伸度を測定した。
・コード強度:コード強力を総表示繊度で割った値である。
・プライ厚さ:被覆ゴムによってポリエステルコードを被覆してなるカーカスプライとしての厚みであり、スタンド型ダイヤルゲージ(脚の直径9.5±0.03mm,荷重1666±29.4mN,精度 0.01mm)により測定した。
・コード間距離:カーカスプライにおける隣接するポリエステルコード間の距離であり、コード打ち込み本数とコード径から算出した。
・被覆ゴム粘度:株式会社東洋精機製作所のキャピログラフ(型式:1D)を使用して測定。試験温度:100℃、キャピラリー径:1.5mm、キャピラリー長:1.52mm、せん断速度S/R:1000s−1
・プライ枚数:タイヤのカーカス層を構成するプライの枚数。
・プライトータル強力:コード強力にコード打ち込み本数とプライ枚数を乗じて算出されるカーカス層25mm幅当たりの引張強力。
・タイヤ1本当たりカーカス質量(指数):被覆ゴム質量を含むカーカス層全体としての質量を、比較例1を100とした指数で表示したものであり、指数が小さいほど軽量であることを意味する。
・タイヤ質量(指数):タイヤ全体としての質量を、比較例1を100とした指数で表示したものであり、指数が小さいほど軽量であることを意味する。
・タイヤ耐久性:FMVSS109(UTQG)に準拠し、表面が平滑な鋼製の直径1700mmの回転ドラムを有するドラム試験機により、次のようにして測定した。タイヤ内圧は180kPaとして、JIS規定の標準リムに組み付け、試験速度は80km/hとした。試験負荷は、JATMA規定の最大荷重の85%からスタートし、4時間後に最大荷重の90%、さらに6時間後に最大荷重の100%と段階的に試験負荷を上昇させ、故障が発生するまで走行させた。故障が発生するまでの走行距離を、比較例1のタイヤを100とした指数で表示した。指数が大きいほど耐久性が良好であることを意味する。
・部材密着度合い:トッピング反を作製してロールに巻き取る際に、トッピング反間に布状のインサート材を挟んで巻き取り、その後、ロールからトッピング反を引き出す際のインサート材への密着の有無を確認した。密着しているものは「有」、密着していないものは「無」で表記した。
Figure 2015027849
Figure 2015027849
Figure 2015027849
表1,2に示すように、繊度の高い双撚り構造のポリエステルコードを用いた比較例1に対し、比較例2では、繊度を小さくすることで軽量化は図られたものの、繊度が小さすぎたため、コード強力が低く、その分打ち込み本数が増えたため、セパレーションの発生によりタイヤ耐久性が低下した。比較例3では、ポリエステルコードの撚り係数が小さすぎたため、ポリエステルコードの耐疲労性が低下することで、タイヤ耐久性が低下した。比較例4では、ポリエステルコードの撚り係数が大きすぎたため、コード強力が低く、その分打ち込み本数が増えたため、セパレーションの発生によりタイヤ耐久性が低下した。比較例5では、片撚り構造のポリエステルコードを用いたため、コードの耐疲労性が劣り、タイヤ耐久性が低下した。比較例6では、被覆ゴムの粘度が高すぎたため、コード間へのゴムの浸入が不十分であり、コード同士が接触することによりタイヤ耐久性が低下した。比較例7では、被覆ゴムの粘度が低すぎたため、インサート材に対する密着が発生し、タイヤを成形できなかった。
これに対し、所定の粘度及び撚り係数を持つポリエステルコードと、所定の粘度を持つ被覆ゴムとを組み合わせた実施例1〜9であると、繊度の大きい双撚り構造のポリエステルコードを用いた比較例1に対し、タイヤ耐久性を損なうことなく、タイヤの軽量化が達成できた。
本発明は、乗用車用タイヤを始めとする各種の空気入りタイヤに好適に用いることができる。
1…空気入りラジアルタイヤ、2…トレッド部、3…ビード部、4…サイドウォール部、5…カーカス層、7…ベルト、9…ベルト補強層、10…チェーファー

Claims (2)

  1. 繊維補強層を備えた空気入りタイヤであって、
    前記繊維補強層は、繊度が500〜900dtexのポリエステルフィラメント束に下撚りをかけ、これを2本上撚りしてなる双撚り構造のコードであって、上撚りと下撚りの平均の撚り数をT(回/10cm)及び総表示繊度をD(dtex)としてT×(D/1.39)1/2で定義される撚り係数Kが800〜1200であるポリエステルコードを用い、該ポリエステルコードからなる繊維材に、温度100℃かつせん断速度1000(1/秒)の条件で測定した粘度が4500〜6500Pa・sであるゴム組成物を被覆してなるものである
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記繊維補強層がカーカス層である
    ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
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