JP2015025510A - 変速機のブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】油圧室への油圧の給排のための油路が、変速機ケースの内周面に開口している変速機のブレーキ装置において、その開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに2つのシール部材を備える場合に、シール部材の損傷等を抑制しつつ、組み付け性を向上させる。
【解決手段】変速機のブレーキ装置(L−Rブレーキ60)は、第1ピストン部材671、第2ピストン部材672、及び、第3ピストン部材673、を備える。第2油圧室(A室61)に油圧を給排するための油路63が変速機ケース3の内周面に開口している。第1ピストン部材の周縁部には、第1シール部材(第1外周シール部材681)が取り付けられ、第2ピストン部材の周縁部には、第2シール部材(第2外周シール部材683)が取り付けられ、第1及び第2シール部材は、油路の開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに位置している。
【選択図】図4

Description

ここに開示する技術は、変速機のブレーキ装置に関する。
特許文献1には、変速機のブレーキ装置として、多板ブレーキ押圧用の第1油圧室と、クリアランス調整用の第2油圧室と、を備えたブレーキ装置が記載されている。具体的に、このブレーキ装置は、第2油圧室がその内部に形成された、全体としてドーナツ状の第1ピストン部材を備えている。第2油圧室内には、第2ピストン部材が嵌挿されており、第2油圧室への油圧の給排に伴い、第2ピストン部材は、第1ピストン部材に対して相対的に、軸方向に往復動する。一方、第1ピストン部材は、変速機ケースに内挿され、その変速機ケースに凹陥して形成された第1油圧室への油圧の給排に伴い、第2ピストン部材と共に軸方向に往復動する。
このような構成によって、特許文献1に記載されている変速機のブレーキ装置では、第2油圧室に油圧を供給することに伴い、第2ピストン部材が多板ブレーキに近づいて、第2ピストン部材と多板ブレーキの摩擦板との間のクリアランスが小さくなった状態と、第2油圧室から油圧を排出することに伴い、第2ピストン部材が多板ブレーキから離れて、第2ピストン部材と多板ブレーキの摩擦板との間のクリアランスが大きくなった状態と、を切り替え可能になる。
特開平7−12221号公報
ところで、特許文献1に記載されているブレーキ装置の構成では、第1ピストン部材内の第2油圧室に油圧を給排する油路が、変速機ケースの内周面に開口していると共に、第1ピストン部材の外周面には、油路と第2油圧室とを連通する連通孔が貫通形成している。そうして、第1ピストン部材の外周面には、油路の開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに位置する2つのシール部材が取り付けられている。この2つのシール部材の一方は、第1油圧室と第2油圧室との間を隔離するものであり、他方は、第2油圧室と変速機ケース内とを隔離するものである。
特許文献1に記載されているブレーキ装置において、第1ピストン部材を変速機ケースに対して組み付けるときには、第1ピストン部材を、変速機ケースの開口から軸方向に挿入することになる。この挿入の際に、第1ピストン部材の外周面に取り付けられた2つのシール部材はそれぞれ、変速機ケースの内周面を摺動することになる。また、特許文献1の図1によれば、2つのシール部材の内、移動方向の前側に位置するシール部材は、変速機ケースの内周面の、油路の開口を通過することになる。このような開口通過時には、シール部材が開口に引っ掛かって、ねじれ、変形又は損傷といった不具合が生じてしまう可能性がある。
ところが、特許文献1に記載されているブレーキ装置においては、第1ピストン部材に対して2つのシール部材が並んでいることから、組み付けの最中や組み付けの後に、挿入方向の前側に位置するシール部材は、挿入方向の後側に位置するシール部材の陰になって見ることができない。このため、シール部材が、変速機ケースの内周面の開口を通過する際の状態を確認することができないと共に、第1ピストン部材の組み付け後に、そのシール部材の状態を確認することもできない。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油圧室への油圧の給排のための油路が、変速機ケースの内周面に開口している変速機のブレーキ装置において、その開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに2つのシール部材を備える場合に、シール部材の損傷等を抑制しつつ、組み付け性を向上させることにある。
ここに開示する技術は、変速機ケースに設けられた多板ブレーキを、油圧の給排に応じて締結及び解放する変速機のブレーキ装置に係る。
ブレーキ装置は、前記変速機ケースに内挿されかつ、軸方向に往復動可能に構成された第1ピストン部材、前記第1ピストン部材と一体的に前記軸方向に往復動するよう構成された第2ピストン部材、及び、前記第1ピストン部材と前記多板ブレーキとの間の位置で、当該第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材に対し前記軸方向に相対移動可能に配設されかつ、前記多板ブレーキを押圧するように構成された第3ピストン部材、を備え、前記第1ピストン部材と前記変速機ケースとの間には、第1油圧室が区画形成されると共に、前記第1ピストン部材、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材並びに前記変速機ケースの間には、第2油圧室が区画形成される。
前記第1油圧室に油圧を供給したときには、前記第1ピストン部材、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材が共に、前記多板ブレーキに近接するように前記軸方向に移動をし、前記第2油圧室に油圧を供給したときには、前記第3ピストン部材が、前記第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材に対して相対的に、前記多板ブレーキに近接するように、前記軸方向に移動をする。
そうして、前記変速機ケースの内周面には、前記第2油圧室に対して油圧を給排するための油路が開口しており、前記第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材によって、前記油路に連通する前記第2油圧室の開口が形成されており、前記第1ピストン部材の周縁部には、前記変速機ケースの前記内周面に当接すると共に、前記第1油圧室と前記第2油圧室との間を隔離する第1シール部材が取り付けられ、前記第2ピストン部材の周縁部には、前記変速機ケースの内周面に当接すると共に、前記第2油圧室と前記変速機ケース内との間を隔離する第2シール部材が取り付けられ、前記第1ピストン部材の前記第1シール部材及び前記第2ピストン部材の前記第2シール部材は、前記変速機ケースの前記内周面における前記油路の開口を挟んだ前記軸方向の両側それぞれに位置している。
この構成によると、第1ピストン部材と変速機ケースとの間に区画形成される第1油圧室に油圧を供給したときには、第1、第2及び第3ピストン部材が共に、多板ブレーキに近接するように軸方向に移動をする。
一方、第1、第2及び第3ピストン部材並びに変速機ケースの間に区画される第2油圧室に油圧を供給したときには、第3ピストン部材のみが、多板ブレーキに近接するように軸方向に移動をする。
従って、このブレーキ装置は、第2油圧室に油圧を供給することによって第3ピストン部材を多板ブレーキに近接させて、第3ピストン部材と多板ブレーキとのクリアランスをゼロにすることができる(以下、この状態をゼロクリアランス状態とも言う)。そうして、このゼロクリアランス状態で、第1油圧室に油圧を供給することにより、第1、第2及び第3ピストン部材を共に多板ブレーキに近接させて、第3ピストン部材によって多板ブレーキを押圧し、多板ブレーキを締結することが可能になる。
また、これとは異なり、ブレーキ装置は、第1油圧室に油圧を供給することによって、第1、第2及び第3ピストン部材を共に多板ブレーキに近接させて、ゼロクリアランスの状態にした上で、第2油圧室に油圧を供給することによって、第3ピストン部材のみを多板ブレーキにさらに近接させて、多板ブレーキを締結するようにしてもよい。
いずれの構成においても、予めゼロクリアランスの状態にしておき、そこから、多板ブレーキを締結することが可能な2段ストローク構成であるため、多板ブレーキの締結時の応答性が高まる。
そうして、前記の構成では、変速機ケースの内周面に開口しかつ、第2油圧室に対して油圧を給排するための油路の開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに、当該変速機ケースの内周面に当接する第1シール部材及び第2シール部材が位置する。この第1及び第2シール部材の内、第1シール部材は、第1ピストン部材の周縁部に取り付けられる一方、第2シール部材は、第2ピストン部材の周縁部に取り付けられる。つまり、第1及び第2シール部材は、共通の一つの部材に取り付けられているのではなく、それぞれ別の部材に取り付けられている。
このため、第1、第2及び第3ピストン部材を変速機ケースに組み付ける際には、第1ピストン部材又は第2ピストン部材を先ず、変速機ケースの開口から軸方向に挿入して、そのピストン部材を所定の位置に組み付ける。この挿入時には、第1シール部材又は第2シール部材が、変速機ケースの内周面を摺動すると共に、シール部材は、変速機ケースの内周面における油路の開口を通過することになるが、単一のピストン部材に、単一のシール部材が取り付けられているだけであるため、組み付けの最中や、組み付けた後に、当該シール部材の状態を確認することが可能になる。こうして、シール部材の、ねじれ、変形、及び損傷等を抑制しつつ、第1又は第2ピストン部材を、変速機ケースに確実に組み付けることが可能になる。
第1又は第2ピストン部材を変速機ケースに組み付ければ、次は、第2ピストン部材又は第1ピストン部材を、変速機ケースの前記開口から軸方向に挿入して所定の位置に組み付ける。このとき、第2シール部材又は第1シール部材は、変速機ケースの内周面を摺動するものの、変速機ケースの内周面における油路の開口を通過することはない。第2又は第1ピストン部材も、先に組み付けた第1又は第2ピストン部材と同様に、変速機ケースに確実に組み付けることが可能になる。
こうして、変速機ケースの内周面における油路の開口を挟んだ両側それぞれに配置される第1シール部材及び第2シール部材を、互いに異なる第1ピストン部材及び第2ピストン部材に取り付けることによって、ピストン部材の組み付け時におけるシール部材の損傷等を抑制しつつ、ピストン部材を確実に組み付けることが可能になるため、ブレーキ装置の組み付け性が向上する。
前記多板ブレーキに対して径方向の外周側には、リターンスプリングが配設されており、前記第2ピストン部材は、前記リターンスプリングの反力を受けるリテーナー部を有し、前記第1ピストン部材は、前記第1油圧室の油圧を排出したときに、前記第2ピストン部材を通じて前記リターンスプリングの反力を受けて、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材と共に、前記多板ブレーキから前記軸方向に離間するように移動し、前記第1油圧室は、前記第3ピストン部材と前記多板ブレーキの摩擦板とのクリアランスをゼロにするために油圧が供給されるクリアランス調整油圧室であり、前記第2油圧室は、前記第3ピストン部材が前記多板ブレーキの前記摩擦板を押圧して前記多板ブレーキを締結するために油圧が供給される押圧油圧室である、としてもよい。
リターンスプリングを、多板ブレーキの径方向の外周側に配置することは、変速機の軸方向の長さを短くする上で有利になる。
また、第2ピストン部材のリテーナー部が、リターンスプリングの反力を受ける構成により、第3ピストン部材は、リターンスプリングの反力を直接受けることがない。このため、クリアランス調整油圧室(つまり、第1油圧室)及び押圧油圧室(つまり、第2油圧室)それぞれに油圧を供給して多板ブレーキを締結した後、そのクリアランス調整油圧室及び押圧油圧室の油圧を排出したときには、第3ピストン部材と、第1及び第2ピストン部材との相対位置を、そのまま保持することが可能になる。このことは、次に、クリアランス調整油圧室に油圧を供給して第1、第2及び第3ピストン部材を軸方向に移動させたときに、第3ピストンを自動的にゼロクリアランス状態にすることを可能にする。すなわち、クリアランス調整油圧室及び押圧油圧室それぞれに油圧を供給して多板ブレーキを締結する度に、第3ピストン部材と、第1及び第2ピストン部材との相対位置を、ゼロクリアランスを実現する位置に、自動的に調整しかつ、それを保持するため、ゼロクリアランス状態が逐次更新されることになる。このことは、例えば、第1、第2及び第3ピストン部品を含む、各種部品の寸法ばらつきや、組み付けばらつき、又は、寸法等が経時的に変化することに対応して、ゼロクリアランス状態を常に維持することを可能にする(以下、このことをメモリー効果と呼ぶ場合がある)。
ところで、第1ピストン部材及び第2ピストン部材は、一体的に移動をするものであり、第3ピストン部材は、この一体的に移動をする第1及び第2ピストン部材に対して、相対的に往復動をするものである。第1ピストン部材及び第2ピストン部材は、本来は一つのピストン部材を、前述の通り変速機ケースに対する組み付け性を考慮して、2つの部材に分割した部材である、ということができる。このように、2つに分割をした第1ピストン部材及び第2ピストン部材は、第1油圧室や第2油圧室への油圧の給排に際して、互いに一体的であることを維持することが望ましい。
例えば、前記の変速機のブレーキ装置において、前記第1ピストン部材は、前記軸方向を向くと共に、前記第2油圧室を区画する側壁を有し、前記第2ピストン部材は、前記第2油圧室内で前記第1ピストン部材の前記側壁に対して当接する当接端部を有しかつ、当該当接端部から前記多板ブレーキに向かって軸方向に広がり、前記第3ピストン部材には、前記第2ピストン部材の前記第2シール部材よりも径方向の内方側で、前記第2ピストン部材に当接すると共に、前記第2油圧室と前記変速機ケース内との間を隔離する第3シール部材が取り付けられている、とする。この構成では、第2油圧室と変速機ケース内とを遮断する第2シール部材及び第3シール部材は、第2ピストン部材を挟んで径方向に異なる位置に位置することになる。このため、第2油圧室に油圧を供給したときに、第2ピストン部材は、第2シール部材の径方向位置と、第3シール部材の径方向位置との差に相当する受圧面積に対応した力を受けることになり、この力は、第2ピストン部材が、第1ピストン部材から離間する方向に働く。従って、第2油圧室内に供給する油圧が高くなると、第2ピストン部材に作用する力も大きくなって、第1ピストン部材と第2ピストン部材とが離れてしまう可能性がある。第1ピストン部材と第2ピストン部材とが分離してしまうことは、第3ピストン部材の動作に悪影響を及ぼす虞がある。
そこで、前記第2ピストン部材の前記当接端部には、前記第2ピストン部材を挟んだ径方向の外方側と内方側との間で、当該当接端部と第1ピストン部材の前記側壁との間を通じて作動油が連通することを遮断する遮断部材が取り付けられている、としてもよい。
こうすることで、第2ピストン部材の当接端部において、第1ピストン部材の側壁との間を通じて作動油が連通することが遮断部材によって遮断されるから、当接端部には、第2油圧室内の油圧によって、第1ピストン部材の側壁に対して密着する方向の力が作用する。この力は、第2ピストン部材が、第1ピストン部材から離間する方向に働く前記の力とは逆向きであるから、第2ピストン部材が、第1ピストン部材から離間してしまうことが抑制される。つまり、第1及び第2ピストン部材を、一体的に動作させることが可能になる。
この構成は特に、前述の通り、第2ピストン部材にリターンスプリングの反力を受けるリテーナー部を設けた構成において有効である。すなわち、第2ピストン部材に作用する力の内、リターンスプリングの反力と前述した当接端部に作用する力の合力が、第2ピストン部材を第1ピストン部材に押しつける力となるため、第2ピストン部材が、第1ピストン部材から離間してしまうことを、より一層確実に、防止することが可能になる。
ここで、遮断部材は、第1ピストン部材の表面に対して、作動油が通過できない程度に密着する部材であればよく、一例として、但しこれに限定されないが、第1ピストン部材の表面に密着するように弾性変形する密着面を有するゴム製の部材としてもよい。
以上説明したように、前記の変速機のブレーキ装置によると、変速機ケースの内周面に設けられた油路の開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに位置する第1シール部材と、第2シール部材とを、第1ピストン部材の周縁部と、第2ピストン部材の周縁部とに取り付けることで、第1シール部材が取り付けられた第1ピストン部材と、第2シール部材が取り付けられた第2ピストン部材を、順次組み付けることが可能になり、各シール部材の状態を把握しながら組み付けることでシール部材の損傷等を抑制しつつ、ピストン部材を確実に組み付けることが可能になり、ブレーキ装置の組み付け性が向上する。
自動変速機の骨子図である。 自動変速機の締結表である。 自動変速機のオイルポンプから摩擦締結要素までの油圧経路を示すブロック図である。 自動変速機のL−Rブレーキの構造を示す断面図である。 L−Rブレーキの待機状態を示す図4対応図である。 L−Rブレーキの締結状態を示す図4対応図である。 L−Rブレーキの第1〜第3ピストン部材を示す分解斜視図である。 L−Rブレーキに油圧を給排する油路の付近を拡大して示す断面図である。 第3ピストン部材の外周縁部に取り付けられたシール部材の付近を拡大して示す断面図である。 変速機ケースの凹溝に固設したストッパ部材と、凹溝と油路との連通部分に配設した係止部材とを示す変速機ケースの横断面図である。 変速機ケースの内周面に形成された凹溝を示す断面図である。 係止部材を示す斜視図である。 係止部材の変形例を示す正面図及び側面図である。
変速機のブレーキ装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明に係るブレーキ装置は例示である。
(1)全体構成
図1は、自動変速機の骨子図である。この自動変速機1は、例えばフロントエンジンフロントドライブ車等のエンジン横置き式自動車に搭載されており、変速機構2と、変速機構2を収容する変速機ケース3とを有している。変速機構2の入力軸4に、図外のトルクコンバータを介して、エンジンの出力回転が入力される。変速機構2の出力回転は、出力ギヤ5から取り出され、図外の差動装置を介して、駆動輪に伝達される。
変速機構2は、第1プラネタリギヤセット10、第2プラネタリギヤセット20、及び第3プラネタリギヤセット30を備えている。これらは、変速機構2の動力伝達経路を構成し、エンジン側から前記の順に入力軸4の軸上に同軸に並んでいる。
変速機構2は、さらに、ロークラッチ40及びハイクラッチ50、L−Rブレーキ(ローリバースブレーキ)60、2−6ブレーキ70、並びにR−3−5ブレーキ80を備えている。これらは、摩擦締結要素であり、エンジン側から前記の順に入力軸4の軸上に同軸に並んでいる。
第1プラネタリギヤセット10及び第2プラネタリギヤセット20はシングルピニオン型、第3プラネタリギヤセット30はダブルピニオン型である。各プラネタリギヤセット10,20,30は、それぞれ、サンギヤ11,21,31と、このサンギヤ11,21,31と噛み合うピニオン12,22,32(第3プラネタリギヤセット30にあっては内側のピニオン)と、このピニオン12,22,32を支持するキャリヤ13,23,33と、前記ピニオン12,22,32(第3プラネタリギヤセット30にあっては外側のピニオン)と噛み合うインターナルギヤ14,24,34とを備えている。
第1プラネタリギヤセット10のサンギヤ11と、第2プラネタリギヤセット20のサンギヤ21とが連結され、さらにロークラッチ40を介して入力軸4に断接自在に連結されている。
第1プラネタリギヤセット10のインターナルギヤ14と、第2プラネタリギヤセット20のキャリヤ23とが連結され、さらにハイクラッチ50を介して入力軸4に断接自在に連結されると共に、L−Rブレーキ60を介して変速機ケース3に断接自在に連結されている。
第2プラネタリギヤセット20のインターナルギヤ24と、第3プラネタリギヤセット30のインターナルギヤ34とが連結され、さらに2−6ブレーキ70を介して変速機ケース3に断接自在に連結されている。
第3プラネタリギヤセット30のキャリヤ33がR−3−5ブレーキ80を介して変速機ケース3に断接自在に連結され、第3プラネタリギヤセット30のサンギヤ31が入力軸4に連結され、第1プラネタリギヤセット10のキャリヤ13が出力ギヤ5に連結されている。
この自動変速機1においては、図2の締結表(○は締結を示す)に示すように、摩擦締結要素40,50,60,70,80が選択的に締結されることにより、プラネタリギヤセット10,20,30の動力伝達経路が切り換わり、前進1〜6速と後退速とが達成される。
発進変速段の1つである前進1速ではロークラッチ40とL−Rブレーキ60とが締結される。前進2速ではロークラッチ40と2−6ブレーキ70とが締結される。前進3速ではロークラッチ40とR−3−5ブレーキ80とが締結される。前進4速ではロークラッチ40とハイクラッチ50とが締結される。前進5速ではハイクラッチ50とR−3−5ブレーキ80とが締結される。前進6速ではハイクラッチ50と2−6ブレーキ70とが締結される。発進変速段の1つである後退速ではL−Rブレーキ60とR−3−5ブレーキ80とが締結される。
図3は油圧経路を示しており、オイルポンプから吐出された油圧は、レギュレータバルブ(図示せず)により所定のライン圧(図中「PL」で示す)に調圧された後、専用の油路を介して常に油圧回路200に供給されると共に、Dレンジ又はRレンジが選択されたときに、マニュアルバルブ140を介して前記油圧回路200に供給される。
油圧回路200には、第1リニアソレノイドバルブ(以下、ソレノイドバルブを「SV」と記す)121、第2リニアSV122、オンオフSV123、及びシフトバルブ130が備えられている。第1リニアSV121は、ロークラッチ40の油圧室に油圧を供給するためのものである。第2リニアSV122は、後述するL−Rブレーキ60のA室61(押圧油圧室、第2油圧室)に油圧を供給するためのものである。オンオフSV123は、シフトバルブ130のスプールの位置を切り替えるためのものである。シフトバルブ130は、前記第2リニアSV122と前記A室61とを連通又は遮断し、及び所定のライン圧供給油路124と後述するL−Rブレーキ60のB室62(クリアランス調整油圧室、第1油圧室)とを連通又は遮断するためのものである。シフトバルブ130のスプールは図示しないリターンスプリングにより常に図3に関して左側に付勢されている。シフトバルブ130と前記A室61との間にA室用油路63が設けられ、シフトバルブ130と前記B室62との間にB室用油路64が設けられている。
前記オンオフSV123はノーマルオープンタイプである。そのため、前記オンオフSV123は、非通電状態(off)では油圧を出力し、シフトバルブ130のスプールを図3に関して右側に位置させる。前記第1、第2リニアSV121,122はノーマルクローズタイプである。そのため、前記第1、第2リニアSV121,122は、非通電状態(off)では対応する摩擦締結要素、すなわちロークラッチ40及びL−Rブレーキ60に油圧を供給しない。
(2)L−Rブレーキの構造
次に、L−Rブレーキ60の構造を図4〜図12に基づき説明する。図4、図5及び図6に関して右側がエンジン側、左側が反エンジン側である。尚、L−Rブレーキ60は、自動変速機1の軸方向の中間位置に配設された出力ギヤ5の近傍に配置されており、図4等における符号3bは、出力ギヤ5を支持するボス部である。
図4に示すように、L−Rブレーキ60は、主たる構成要素として、2つの油圧室(A室61及びB室62)と、2つのピストン(押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66)と、複数の摩擦板(ドライブプレート69a及びドリブンプレート69c)とを含む多板ブレーキ69を備えている。押圧用ピストン65と、クリアランス調整用ピストン66とは、入力軸4の軸上に同軸に並び、押圧用ピストン65は、クリアランス調整用ピストン66に内嵌している。押圧用ピストン65は、クリアランス調整用ピストン66と多板ブレーキ69との間に介在している。A室61は、押圧用ピストン65、クリアランス調整用ピストン66、及び変速機ケース3との間に区画形成され、B室62は、クリアランス調整用ピストン66、及び変速機ケース3との間に区画形成される。
複数のドライブプレート69aと、複数のドリブンプレート69cとは、軸方向に交互に配置されている。ドライブプレート69aは、図4では図示を省略する第1プラネタリギヤセット10のインターナルギヤ14(図1参照)の外周面にスプライン係合されている。ドライブプレート69aの両面にフェーシング69bが貼着されている。ドリブンプレート69cは、変速機ケース3の内面スプライン部3eにスプライン係合されている。内面スプライン部3eには、さらにリテーニングプレート69dがスプライン係合されている。リテーニングプレート69dは、スナップリング69eにより反エンジン側への移動が規制されている。
多板ブレーキ69の摩擦板69a,69cは、リテーニングプレート69dと、押圧用ピストン65との間に挟まれて配置されている。摩擦板69a,69cは、リテーニングプレート69dにより反エンジン側への移動が規制されている。
多板ブレーキ69に対し、径方向の外周側にはリターンスプリング164が配設されている。リターンスプリング164は、図示は省略するが、周方向に等間隔を空けて、複数設けられている。このように、リターンスプリング164を、多板ブレーキ69に対し径方向の外方に配置して、多板ブレーキ69とリターンスプリング164とを軸方向に重なるように配置することによって、L−Rブレーキ60の軸方向長さを短くすることが可能になる。
軸方向に延びる各リターンスプリング164の一端部(つまり、反エンジン側の端部)は、スプリングリテーナー69fに支持されている。スプリングリテーナー69fは、リテーニングプレート69dの外周縁部に設けられかつ、内周側よりも薄肉となるように設けられた段部に位置している。こうしてスプリングリテーナー69fとリテーニングプレート69dとを、軸方向に重なるように配置することにより、L−Rブレーキ60の軸方向長さを短くしている。尚、各リターンスプリング164の他端部(つまり、エンジン側の端部)は、後述するようにクリアランス調整用ピストン66の第2ピストン部材672に支持されている。
クリアランス調整用ピストン66は、変速機ケース3に内挿されかつ、軸方向に往復動可能な第1ピストン部材671と、第1ピストン部材671の反エンジン側に隣接しかつ、この第1ピストン部材671と一体的に、軸方向に往復動可能な第2ピストン部材672とによって構成されている。第1ピストン部材671及び第2ピストン部材672は共に、図7に示すように、軸方向に見て円環形状である。
この内、第1ピストン部材671は、その外周端部が反エンジン側に突出すると共に、それに続く外周部がエンジン側に膨出し、中間部が反エンジン側に膨出し、内周部がエンジン側に傾斜し、内周端部が反エンジン側に突出するような形状を有している。第1ピストン部材671の外周端部は、後述するように、A室用油路63に連通するA室61の開口部612の縁部674を構成する。この開口縁部674は、後述のストッパ部材160に当接して、第1ピストン部材671が、それ以上に反エンジン側へと移動することを防止する受け部としての機能を有している。また、第1ピストン部材671の外周部には、後述するように、反エンジン側を向くと共に、前記A室61を区画する側壁675(図7、8も参照)が設けられる。また、第1ピストン部材671の内周端部は、後述する第3ピストン部材673の第3内周シール部材686が摺動する摺動面を構成する。
第1ピストン部材671における外周端部及び内周端部には、第1外周シール部材681及び第1内周シール部材682がそれぞれ油密に装着されている。第1外周シール部材681はリップシールであり、変速機ケース3の内周面に当接して、この内周面上を摺動可能である。第1内周シール部材682もまたリップシールであり、変速機ケース3に設けられた凹部3aの壁面に当接して、この壁面上を摺動可能である。こうして、第1ピストン部材671と変速機ケース3との間に、第1外周シール部材681及び第1内周シール部材682によって隔離されたB室62が区画形成される。第1外周シール部材681は、B室62とA室61との間を隔離し、第1内周シール部材682は、B室62と変速機ケース3内との間を隔離する。B室62への油圧の給排に応じて、第1ピストン部材671は軸方向に往復動する。
第2ピストン部材672は、図7にも示すように、その内径が、第1ピストン部材671の内径よりも大きく構成されている。第2ピストン部材672の内周端部は、径方向に所定の範囲で広がると共に、第1ピストン部材671の前記側壁675に当接する当接端部676を構成する。第2ピストン部材672はまた、当接端部676に連続する中間部が、同径で軸方向に広がり、外周部が、中間部よりも大径で軸方向に広がるような形状を有している。第2ピストン部材672の外周部は、第1ピストン部材671の開口縁部674に対し軸方向に相対して、この開口縁部674と共に、A室用油路63に連通するA室61の開口部612の縁部を構成する。A室61の開口部612は、第1ピストン部材671と第2ピストン部材672との間で、全周に亘って設けられる。
第2ピストン部材672の中間部は、A室61の開口部674に対し径方向の内方位置で相対するように配置され、それによって、A室61内は、径方向に分割される。第2ピストン部材672の中間部には、A室61内を分割する第2ピストン部材672の内外を径方向に連通させる貫通孔677が、周方向に等間隔を空けて複数、形成されている(図7も参照)。
第2ピストン部材672の外周縁部にはまた、図7にも示すように、リターンスプリング164の他端を支持する複数のリテーナー部678が、周方向に等間隔を開けて、径方向の外方に向かって放射状に突出するように設けられている。
第2ピストン部材672の外周部には、第2外周シール部材683が、油密に装着されている。第2外周シール部材683も、第1ピストン部材671に取り付けられた第1外周シール部材681と同じくリップシールであり、変速機ケース3の内周面に当接して、この内周面上を摺動可能である。第2外周シール部材683は、A室61と変速機ケース3内との間を隔離する。
第2ピストン部材672の当接端部676には、ゴム製の遮断部材684が取り付けられている。この遮断部材684は、第1ピストン部材671の側壁675に密着することによって、当接端部676と側壁675との間を作動油が連通することを遮断する機能を有している。遮断部材684は、当接端部676と側壁675との間を油密に構成している。尚、この油密機能が得られるのであれば、ゴム製の遮断部材684を当接端部676に取り付ける構成に限らず、種々の構成を採用することが可能である。
押圧用ピストン65は、図7にも示すように、軸方向に見て円環形状の第3ピストン部材673によって構成されている。第3ピストン部材673は、図4に示すように、外周部が反エンジン側に膨出し、中間部が径方向に広がると共に、内周部がエンジン側に膨出するような形状を有している。第3ピストン部材673の外周部は、多板ブレーキ69の摩擦板69cに当たって、多板ブレーキ69を押圧する機能を有している。
第3ピストン部材673の外周端部及び内周端部には、第3外周シール部材685及び第3内周シール部材686がそれぞれ、油密に装着されている。第3外周シール部材685は、リップシールであり、第2ピストン部材672の外周部の内側に当接して、当該面上を摺動可能である。第3内周シール部材686もまた、リップシールであり、第1ピストン部材671の内周端部に当接して、当該面上を摺動可能である。第3外周シール部材685及び第3内周シール部材686はそれぞれ、A室61と変速機ケース3内との間を隔離する。
こうして、第1ピストン部材671、第2ピストン部材672、第3ピストン部材673及び変速機ケース3の間に、第1外周シール部材681、第2外周シール部材683、第3外周シール部材685、及び第3内周シール部材686によって隔離されたA室61が区画形成される。このA室61への油圧の給排に応じて、第3ピストン部材673は、第1及び第2ピストン部材671、672に対し相対的に、軸方向に往復動する。
従って、第1ピストン部材671の第1外周シール部材681は、A室61とB室62との間を隔離する第1シール部材に相当し、第2ピストン部材672の第2外周シール部材683は、A室61と変速機ケース3内との間を隔離する第2シール部材に相当し、第3ピストン部材673の第3外周シール部材685は、第2外周シール部材683よりも径方向の内方側でA室61と変速機ケース3内との間を隔離する第3シール部材に相当する。尚、第1ピストン部材671の第1外周シール部材681に対しては、そのエンジン側にB室62内の油圧が作用し、その反エンジン側にA室61内の油圧が作用する。後述の通り、B室62内の油圧はライン圧であり、A室61内の油圧はライン圧よりも低圧の制御油圧であり、多板ブレーキ69の締結時には、先ずB室62にライン圧が供給された後、A室61に制御油圧が供給されると共に、多板ブレーキ69の解放時には、先ずA室61内の制御油圧が解放された後、B室62内のライン圧が解放される。そのため、第1外周シール部材681を構成するリップシールは、相対的に高いB室62内の油圧が作用したときに、変速機ケース3の内周面に密着する向きに設定されている。
図4に示すように、シフトバルブ130から導かれたA室用油路63は、変速機ケース3の壁を径方向に延びるように通っており、A室用油路63は、変速機ケース3の内周面に開口している。尚、A室用油路63は、図10に示すように、実際は変速機ケース3の底部において、下から上向きに延びるように形成されているが、図4では、理解容易のために、変速機ケース3の上部にA室用油路63を描いている。
A室用油路63の開口は、第1ピストン部材671の開口縁部674と第2ピストン部材672の外周部との間に形成されるA室61の開口部612に対して、径方向に相対している。これにより、第1ピストン部材671の外周端部に装着された第1外周シール部材681は、A室用油路63の開口よりもエンジン側に位置し、第2ピストン部材672の外周部に装着された第2外周シール部材683は、A室用油路63の開口よりも反エンジン側に位置する。
変速機ケース3の内周面には、図11にも示すように、この内周面から凹陥する凹溝610が、周方向に連続して形成されている。図8から明らかなように、A室用油路63は、この凹溝610に対して軸方向に重なる位置に配置されており、A室用油路63は、凹溝610に連通している。凹溝610は、後述するように、第1ピストン部材671を、反エンジン側からエンジン側に向かって変速機ケース3内に挿入して、変速機ケース3に組み付ける際に、その外周端部に装着された第1外周シール部材681を、変速機ケース3の内周面に誘い込むために設けられる溝である。図8、11に示すように、凹溝610におけるエンジン側の縁には、第1外周シール部材681を変速機ケース3の内周面へと案内するテーパ611が設けられている。
この凹溝610にはまた、第1ピストン部材671のストローク量を規制するストッパ部材160が固設している。ストッパ部材160は、図10に端的に示すように、2つの端部161、161を有しかつ、その間が切れ目になったC型のスナップリングである。ストッパ部材160は、凹溝610内の、反エンジン側の側壁に当接する位置で、凹溝610に内嵌している。ストッパ部材160の内周端部は、凹溝610よりも径方向の内方に突出していて、第1ピストン部材671の開口縁部674と、第2ピストン部材672の外周部とによって構成されるA室61の開口部612内に位置している。図8に仮想的に示すように、第1ピストン部材671が、反エンジン側に移動をしたときには、第1ピストン部材671の開口縁部674が、ストッパ部材160に当接する。このことによって、第1ピストン部材671が、それ以上に移動することが規制され、その結果、第1ピストン部材671のストローク量が所定量になる。
ストッパ部材160はまた、図10に示すように、スナップリングの各端部161が、凹溝610内に開口するA室用油路63を挟んだ周方向の両側に位置する回転角度(つまり、位相)となるように、凹溝610内に配設されている。こうすることで、スナップリングの切れ目は、A室用油路63の開口の位置に、位置するから、当該開口がスナップリングによって塞がれず、A室用油路63からA室61への作動油の供給をスムースに行うことが可能になる。
A室用油路63と凹溝610との連通部分には、C型スナップリングからなるストッパ部材160が凹溝610内で回動して、A室用油路63の開口を塞がないようにするための係止部材162が取り付けられている。係止部材162は、図12に示すように、A室用油路63内に挿入される挿入部1621と、この挿入部1621に連続すると共に、凹溝610内に配置される干渉部1622、1622とを備えて構成されている。係止部材162は、比較的幅の狭い帯状の板を、所定の形状となるように曲げ加工することによって構成されている。これにより、係止部材162の内部は空間であり、この係止部材162を、A室用油路63と凹溝610との連通部分に配設したときでも、作動油は係止部材162の内部空間を通じて、スムースに流れることが可能である。
挿入部1621は、互いに平行に配置されかつ、それぞれ縦方向に延びる、2つの幅狭の板材によって構成されており、この挿入部1621の下端部には、互いに離れる方向に膨出する係合部1623が設けられている。係合部1623は、互いに離れる方向に作用する挿入部1621の弾性復元力によって油路63の内壁に係合し、係止部材162を、A室用油路63に固定する。この係合部1623により、自動変速機1の組み立て時に変速機ケース3の天地が逆転したようなときでも、A室用油路63に挿入した係止部材162が、A室用油路63から抜け落ちてしまうことが防止される。
干渉部1622は、挿入部1621の上端から左右の両側それぞれに延びるように配置されている。係止部材162の挿入部1621を、A室用油路63内に挿入したときには、図10に示すように、2つの干渉部1622は、そのA室用油路63の開口から、周方向の逆向きにそれぞれ延びるように配置される。この干渉部1622は、凹溝610内において、C型スナップリングが回動したときに、その端部161に当たる。これにより、C型スナップリングが、それ以上に回動をすることが防止されるから、スナップリングの切れ目は、油路63の開口の位置に必ず位置するようになり、ストッパ部材160によってA室用油路63の開口が塞がってしまうことが、未然に回避される。
係止部材162はまた、図8に示すように、ストッパ部材160と比較して、軸方向の厚みが薄く構成されている。これにより、第1ピストン部材671がストッパ部材160に当接したときでも、第1ピストン部材671は、係止部材162とは当たらない。係止部材162は、第1ピストン部材671のストロークに影響を及ぼすことなく、第1ピストン部材671は、所定のストローク量で確実にストロークをする。
尚、係止部材の形状は、図12に示す形状に限定されない。例えば図13は、断面円形状の線材を、図12と同じく、挿入部1631、干渉部1632及び係合部1633を含む所定形状となるように曲げ加工をして構成した係止部材163の変形例を示している。このような係止部材であっても、ストッパ部材160の回動を防止するという機能を発揮することが可能である。
また、シフトバルブ130から導かれたB室用油路64は、図4等に示すように、変速機ケース3の壁を貫通し、変速機ケース3内の側面に開口している。こうして、B室用油路64は、B室62に連通している。尚、B室用油路64は、図示は省略するが、実際は、A室用油路63と同様に、変速機ケース3の底部において、下から上向きに延びるように形成されているが、図4等では、理解容易のために、変速機ケース3の上部で、軸方向に延びるようにB室用油路64を描いている。
(3)L−Rブレーキの動作
次に、L−Rブレーキ60の動作を説明する。
(i)解放状態
L−Rブレーキ60は、解放状態にあっては、A室61及びB室62に油圧が供給されない。これにより、図4に示すように、リターンスプリング164の付勢力でクリアランス調整用ピストン66が多板ブレーキ69から離間する側に移動する。また、押圧用ピストン65は、クリアランス調整用ピストン66に対し内嵌しているため、クリアランス調整用ピストン66と共に、多板ブレーキ69から離間する側に移動する。クリアランス調整用ピストン66は、第1ピストン部材671における、エンジン側に膨出する外周部が変速機ケース3の側壁に当接して停止している。押圧用ピストン65は、図4の例では、第3ピストン部材673における径方向に延びる中間部が、第1ピストン部材671における反エンジン側に膨出する中間部に当接して停止している。尚、第2ピストン部材672は、その当接端部676が第1ピストン部材671における側壁675に当接している。
この解放状態のときの押圧用ピストン65の位置及びクリアランス調整用ピストン66の位置がそれぞれ押圧用ピストン65の初期位置及びクリアランス調整用ピストン66の初期位置である。尚、クリアランス調整用ピストン66の初期位置は構造的に一定であるが、クリアランス調整用ピストン66に対する押圧用ピストン65の相対位置は、後述するゼロクリアランス位置に応じて様々に変化するので、押圧用ピストン65の初期位置は一定ではない。ただし、ここでは、押圧用ピストン65の初期位置が構造的に、多板ブレーキ69から最も離間した位置にある場合(つまり、図4に例示するように、第3ピストン部材673の中間部が第1ピストン部材671の中間部に当接している場合)について説明する。
(ii)締結時−待機位置まで
解放状態のL−Rブレーキ60が締結されるときは、まず、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66がそれぞれ初期位置に位置した状態で、B室62に油圧が供給される。B室62には、ライン圧が供給される。これにより、図5に示すように、クリアランス調整用ピストン66が反エンジン側に移動をすると共に、このクリアランス調整用ピストン66に内嵌している押圧用ピストン65もまた、反エンジン側に移動をする。こうして、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66が共に、多板ブレーキ69に近接するようにストロークする。尚、このとき、クリアランス調整用ピストン66は、リターンスプリング164を縮めつつ、つまりリターンスプリング164の付勢力に抗してストロークする。
クリアランス調整用ピストン66は、反エンジン側に突出する外周端部、つまり第1ピストン部材671の開口縁部674が、変速機ケース3の内周面に取り付けたストッパ部材160に当接して停止する。押圧用ピストン65は、図5の例では、径方向に延びる中間部がクリアランス調整用ピストン66の中間部に当接した状態を保持したまま停止している。すなわち、このクリアランス調整用ピストン66のストロークが終了したときの押圧用ピストン65の位置及びクリアランス調整用ピストン66の位置がそれぞれ、押圧用ピストン65の待機位置及びクリアランス調整用ピストン66の待機位置である。
尚、前述したように、クリアランス調整用ピストン66に対する押圧用ピストン65の相対位置はゼロクリアランス位置に応じて様々に変化するので、クリアランス調整用ピストン66の待機位置は構造的に一定であるが、押圧用ピストン65の待機位置は一定ではない。ただし、ここでは、押圧用ピストン65の中間部がクリアランス調整用ピストン66の中間部に当接している場合について説明する。
(iii)締結時−押圧完了位置まで
次いで、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66がそれぞれ待機位置に位置した状態で、A室61に油圧が供給される。A室61には、ライン圧よりも低くなるように調圧された制御油圧が供給される。B室62には、A室61よりも高いライン圧が供給されているため、クリアランス調整用ピストン66はエンジン側に移動せず、図6に示すように、A室61に供給された油圧により、押圧用ピストン65のみが、多板ブレーキ69に近接する側にストロークする。尚、押圧用ピストン65は、リターンスプリング164の影響を受けることなくストロークする。
押圧用ピストン65は、第3ピストン部材673における、反エンジン側に膨出する外周部が摩擦板69a,69cを押圧する。押圧用ピストン65は、ドライブプレート69aの回転を停止させて移動を停止する。この押圧用ピストン65のストロークが終了したときの押圧用ピストン65の位置が押圧用ピストン65の押圧完了位置である。このとき、ドライブプレート69a、フェーシング69b、ドリブンプレート69c、リテーニングプレート69d及びスナップリング69e等は、押圧用ピストン65の押圧力を受けて弾性変形する(特にフェーシング69bの厚みが薄くなる)。こうして、L−Rブレーキ60は締結状態になる。
(iv)解放時−ゼロクリアランス位置まで
締結状態のL−Rブレーキ60が解放されるときは、まず、押圧用ピストン65が押圧完了位置に位置し、クリアランス調整用ピストン66が待機位置に位置した状態で、A室61の油圧が排出される。これにより、押圧用ピストン65の押圧力が除去されるから、例えば図5に示すように、それまで押圧されていた摩擦板(ドライブプレート69a、フェーシング69b、ドリブンプレート69c、リテーニングプレート69d及びスナップリング69e等を含めていう)の弾性復元力により、押圧用ピストン65のみが摩擦板69a,69cから離間する側に移動される。
押圧用ピストン65は、前記弾性復元力で押し戻されて、摩擦板69a,69cの押圧を解除して停止する。このときの押圧用ピストン65の位置は、動力の伝達が行われないクリアランスのうち最もクリアランスが小さい位置(つまりクリアランスがゼロの位置)である。すなわち、このときの押圧用ピストン65の位置が押圧用ピストン65のゼロクリアランス位置である。
このゼロクリアランス位置は、摩擦板(ドライブプレート69a、フェーシング69b、ドリブンプレート69c、リテーニングプレート69d及びスナップリング69e等を含めていう)の構造的状況(例えば厚み等の寸法)によって決まる位置であり、しかも現在の構造的状況(摩耗による厚みの減少等)を反映している。例えば、摩擦板69a,69cが新しいと、摩耗による厚みの減少等が少ないため、押圧用ピストン65が押し戻される距離が長くなって、ゼロクリアランス位置はエンジン側に変位し、摩擦板69a,69cが古いと、摩耗による厚みの減少等が多いため、押圧用ピストン65が押し戻される距離が短くなって、ゼロクリアランス位置は反エンジン側に変位する。
L−Rブレーキ60の締結前の押圧用ピストン65の待機位置と締結後のゼロクリアランス位置とは一致するとは限らない。つまりゼロクリアランス位置はL−Rブレーキ60を締結する度に摩擦板の現在の構造的状況によって更新され、クリアランス調整用ピストン66に対する押圧用ピストン65の相対位置はゼロクリアランス位置に応じて様々に変化する。そのため、L−Rブレーキ60の締結前の押圧用ピストン65の待機位置と締結後のゼロクリアランス位置とは多くの場合一致しない。
(v)解放時−初期位置まで
次いで、押圧用ピストン65がゼロクリアランス位置に位置し、クリアランス調整用ピストン66が待機位置に位置した状態で、B室62の油圧が排出される。これにより、例えば図4に示すように、リターンスプリング164の付勢力で押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66が共に摩擦板69a,69cから離間する側に移動され、それぞれ初期位置に位置する。これにより、L−Rブレーキ60は解放状態となる。
このとき、リターンスプリング164はクリアランス調整用ピストン66のみに作用し、押圧用ピストン65には作用しない。そのため、押圧用ピストン65は、クリアランス調整用ピストン66に対する相対位置が乱されず保持した状態で、リターンスプリング164の反力によってエンジン側に移動するクリアランス調整用ピストン66と共に、エンジン側へと移動をする。つまり、ゼロクリアランス位置が記録されたまま押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66は初期位置に戻る(つまり、メモリー効果)。
L−Rブレーキ60の締結前の押圧用ピストン65の初期位置と締結後の押圧用ピストン65の初期位置とは一致するとは限らない。つまりゼロクリアランス位置はL−Rブレーキ60を締結する度に摩擦板の現在の構造的状況によって更新され、クリアランス調整用ピストン66に対する押圧用ピストン65の相対位置はゼロクリアランス位置に応じて様々に変化する。そのため、L−Rブレーキ60の締結前の押圧用ピストン65の初期位置と締結後の押圧用ピストン65の初期位置とは多くの場合一致しない。
(vi)再締結時−待機位置まで
ゼロクリアランス位置が記録された状態で、L−Rブレーキ60を再度、締結するときには、前記と同様に、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66がそれぞれ初期位置に位置した状態で、B室62に油圧が供給される。これにより、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66は、反エンジン側に移動をし、クリアランス調整用ピストン66が、ストッパ部材160に当接して、押圧用ピストン65及びクリアランス調整用ピストン66は停止する。このときの押圧用ピストン65の位置及びクリアランス調整用ピストン66の位置がそれぞれ、押圧用ピストン65の待機位置及びクリアランス調整用ピストン66の待機位置であるが、前述の通りゼロクリアランス位置が記録されているため、押圧用ピストン65は、自動的にゼロクリアランス位置に位置することになる。
その後、A室61に油圧を供給して、L−Rブレーキ60を締結する動作は、前記と同じである。
このように、この構成のL−Rブレーキ60は、2段ピストン構造・2段ストローク構造であるから、L−Rブレーキ60を締結する可能性が生じた段階で、クリアランス調整用ピストン66をストロークさせて、ゼロクリアランス状態としておき、そして、L−Rブレーキ60を締結する必要が生じた段階で、押圧用ピストン65を、ゼロクリアランス状態からストロークさせる。このため、L−Rブレーキ60の締結応答時間は、ゼロクリアランス状態の押圧用ピストン65を、締結位置までストロークさせる分の時間となるため、応答性良く締結することができる。このことは、L−Rブレーキ60を精度よく適切なタイミングで締結することを可能にし、L−Rブレーキ60の締結タイミングがずれることに起因する変速ショック等を抑制することができる。
図1に示すように、この自動変速機1においては、従来、用いられていたワンウエイクラッチを廃止する代わりに、前進1速で締結するL−Rブレーキ60を用いており、当該L−Rブレーキ60は、その容量が大きいため、締結タイミングがずれたときに発生する変速ショックが、より大きくなるという課題を有する。そのため、前述の通り、ゼロクリアランス状態からの締結を可能にしてその締結応答性を高める構成は、本構成の自動変速機1において、変速ショックの抑制に有効である。
そうして、2段ピストン構造・2段ストローク構造である前記構成のL−Rブレーキ60においては、変速機ケース3の内周面に開口する、A室用油路63の開口を挟んだ軸方向の両側それぞれに、A室61及びB室62を隔離する第1外周シール部材681、及び、A室61及び変速機ケース3内を隔離する第2外周シール部材683がそれぞれ位置するものの、これらのシール部材の内、第1外周シール部材681は第1ピストン部材671に装着され、第2外周シール部材683は第2ピストン部材672に装着されている。変速機ケース3における、図外の反エンジン側の端部は開口している。L−Rブレーキ60を、変速機ケース3に組み付けるときには、先ず、第1外周シール部材681が装着された第1ピストン部材671を、反エンジン側からエンジン側に向かって変速機ケース3に挿入し、第1ピストン部材671を所定位置に組み付ける。変速機ケース3の内周面に設けた凹溝610は、第1ピストン部材671の挿入途中で、リップシールからなる第1外周シール部材681の拘束を、一旦解放する機能を果たし、凹溝610のテーパ611は、第1外周シール部材681を、変速機ケース3の内周面へと誘い込む機能を果たす。これにより、第1外周シール部材681が、この凹溝610を通過する際の、ねじれ、変形及び破損等が抑制される。また、第1ピストン部材671の外周部には、第1外周シール部材681のみが装着されているため、第1ピストン部材671を挿入している最中、及び、第1ピストン部材671を組み付けた後において、第1外周シール部材681の状態を、反エンジン側から軸方向に視認することが可能である。このことは、第1ピストン部材671の組み付けを、正確かつ確実に行うことを可能にする。
こうして、第1ピストン部材671を変速機ケース3に組み付けた後には、C型スナップリングからなるストッパ部材160を、凹溝610内の所定位置に組み付ける。また、係止部材162を、A室用油路63内に挿入する。
ストッパ部材160の組み付けが完了すれば、第2ピストン部材672を、反エンジン側からエンジン側に向かって変速機ケース3に挿入し、第2ピストン部材672を所定位置に組み付ける。第2ピストン部材672の外周部には、第2外周シール部材683のみが装着されているため、第2ピストン部材672を挿入している最中、及び、第2ピストン部材672を組み付けた後において、第2外周シール部材683の状態を、反エンジン側から軸方向に視認することが可能である。第2ピストン部材672の組み付けもまた、正確かつ確実に行うことが可能になる。
こうして、クリアランス調整用ピストン66を、第1ピストン部材671及び第2ピストン部材672の2つのピストン部材に分割した上で、各ピストン部材について、一つのシール部材を装着することにより、変速機ケース3の内周面に対し、軸方向に並んだ状態で当接する二つのシール部材を含む構成のL−Rブレーキ60の、組み付け性を向上させることができる。
また、第1ピストン部材671及び第2ピストン部材672の2つのピストン部材に分割したクリアランス調整用ピストン66において、軸方向の中間位置に、A室61の開口部612を設けており、その開口縁部674を、ストッパ部材160に当接させる受け部として利用している。つまり、A室61への油圧の給排に必要な構成を利用して、クリアランス調整用ピストン66の軸方向の中間位置に、第1ピストン部材671のストローク量を規制する構成を設けているため、L−Rブレーキ60の軸方向長さを短くすることが可能になる。
また、ストッパ部材160は、前述の通り、第1ピストン部材671の組み付けに利用される凹溝610内に取り付けており、このこともまた、L−Rブレーキ60の軸方向長さを短くする上で有利になると共に、A室用油路63を、凹溝610に対して軸方向に重なる位置に設けることにより、L−Rブレーキ60の軸方向長さは、さらに短くなり得る。
前述したように、凹溝610内に固設されるストッパ部材160は、その内周端部が、第1ピストン部材671の開口縁部674と、第2ピストン部材672の外周部とによって構成されるA室61の開口部612内に位置するものの、第1ピストン部材671と第2ピストン部材672とを別体にすることによって、これら第1ピストン部材671、ストッパ部材160及び第2ピストン部材672を、順次、変速機ケース3に組み付けることが可能になる。その結果、第1ピストン部材671及び第2ピストン部材672を、ストッパ部材160を間に挟んで軸方向に並ぶように配置することが可能になる。
ここで、図8に示すように、クリアランス調整用ピストン66を、第1ピストン部材671及び第2ピストン部材672の2つの部材に分割をした構成において、A室61と変速機ケース3内とを隔離するシール部材の内、第2ピストン部材672の外周部に装着されかつ、変速機ケース3の内周面に当接する第2外周シール部材683と、第3ピストン部材673の外周部に装着されかつ、第2ピストン部材672の内周側に当接する第3外周シール部材685との径方向位置は相違している。このため、第2ピストン部材672は、A室61に油圧Pを供給したときに、この2つのシール部材683、685の位置の差に相当する受圧面積に対応した力Fouterを受ける。この力Fouterは、図8において実線の矢印で示すように、反エンジン側に向かう方向である。従って、第2ピストン部材672は、リターンスプリング164の反力Fspg(図8の白抜きの矢印参照)と、前述した受圧面積に対応する力Fouterとをそれぞれ受けることになるが、A室61内に供給される油圧Pが高くなるほど、前述した反エンジン側に向かう方向の力Fouterは大きくなるため、第2ピストン部材672が、リターンスプリング164の反力Fspgに抗して反エンジン側に移動し、その結果、第1ピストン部材671から離れてしまう虞がある。前記の構成では、クリアランス調整用ピストン66に内嵌している押圧用ピストン65(つまり、第3ピストン部材673)の外周端部は、クリアランス調整用ピストン66の第2ピストン部材672に当接している一方、第3ピストン部材673の内周端部は、第1ピストン部材671に当接していることから、第2ピストン部材672が第1ピストン部材671から離れてしまって、第2ピストン部材672と第1ピストン部材671との相対位置が変化してしまうと、第3ピストン部材673のストローク動作に支障を来す。
そこで、前記の構成では、第2ピストン部材672の当接端部676に、遮断部材684を取り付け、それによって、第2ピストン部材672が、第1ピストン部材671から離れてしまうことを防止している。つまり、この遮断部材684によって、当接端部676と第1ピストン部材671の側壁675との間を作動油が通過することが、遮断されるから、この当接端部676には、A室61に供給した油圧Pにより、エンジン側に向かう方向の力Finnerが作用することになる。この力Finnerは、当接端部676の面積(この面積は、図8に示すように、径方向の幅に比例する)と、A室61内の油圧Pの大きさと、によって設定されるから、当接端部676を適宜の大きさにすることで、Fouter≦(Fspg+Finner)を維持して、第2ピストン部材672が、第1ピストン部材671から離れてしまうことを確実に防止することが可能になる。こうして、押圧用ピストン65が内嵌されるクリアランス調整用ピストン66を、第1ピストン部材671と第2ピストン部材672とに分割した構成において、第1ピストン部材671と第2ピストン部材672とが離れてしまうことが回避される。その結果、クリアランス調整用ピストン66に内嵌した押圧用ピストン65のストローク動作が安定化する。
尚、第2ピストン部材672が、仮に第1ピストン部材671から離れてしまうようなときでも(例えば、前述の遮断部材684の劣化によって、作動油の通過を遮断する機能が低下したとき等)、リップシールの破損等を防止して、A室61の油密性を確実に確保すべく、第3外周シール部材685は、図8、9に示すように、ガード部6851を有している。このガード部6851は、第2ピストン部材672に当接するシール部6852の内周側に隣接して、シール部6852よりもエンジン側に突出するように設けられている。第3外周シール部材685は、第2ピストン部材672における外周部と中間部との段差部分に対して、軸方向に相対しており、前述の通り、第2ピストン部材672が、第1ピストン部材671から離れて、反エンジン側へと移動したときには、図9に示すように、第2ピストン部材672の段差部分が、ガード部6851と当接する。このことで、第2ピストン部材672が、反エンジン側に、それ以上に移動することが防止される。その結果、第2ピストン部材672が、第3外周シール部材685のシール部6852に当たることが抑制され、シール部6852による油密性を維持しつつ、シール部6852の破損等も防止するようにしている。
尚、前記構成のL−Rブレーキ60では、A室61を押圧油圧室とし、B室62をクリアランス調整油圧室としているが、これとは逆に、A室61をクリアランス調整油圧室、とし、B室62を押圧油圧室とすることも可能である。
1 自動変速機(変速機)
160 ストッパ部材
162 係止部材
163 係止部材
164 リターンスプリング
3 変速機ケース
60 L−Rブレーキ(ブレーキ装置)
61 A室(押圧油圧室、第2油圧室)
62 B室(クリアランス調整油圧室、第1油圧室)
63 A室用油路
65 押圧用ピストン(第2ピストン)
66 クリアランス調整用ピストン(第1ピストン)
69 多板ブレーキ
69a 摩擦板
69c 摩擦板
610 凹溝
612 開口部
671 第1ピストン部材
672 第2ピストン部材
673 第3ピストン部材
674 開口縁部
675 側壁
676 当接端部
678 リテーナー部
681 第1外周シール部材(第1シール部材)
683 第2外周シール部材(第2シール部材)
684 遮断部材
685 第3外周シール部材(第3シール部材)

Claims (3)

  1. 変速機ケースに設けられた多板ブレーキを、油圧の給排に応じて締結及び解放する変速機のブレーキ装置であって、
    前記変速機ケースに内挿されかつ、軸方向に往復動可能に構成された第1ピストン部材、
    前記第1ピストン部材と一体的に前記軸方向に往復動するよう構成された第2ピストン部材、及び、
    前記第1ピストン部材と前記多板ブレーキとの間の位置で、当該第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材に対し前記軸方向に相対移動可能に配設されかつ、前記多板ブレーキを押圧するように構成された第3ピストン部材、を備え、
    前記第1ピストン部材と前記変速機ケースとの間には、第1油圧室が区画形成されると共に、前記第1ピストン部材、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材並びに前記変速機ケースの間には、第2油圧室が区画形成され、
    前記第1油圧室に油圧を供給したときには、前記第1ピストン部材、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材が共に、前記多板ブレーキに近接するように前記軸方向に移動をし、前記第2油圧室に油圧を供給したときには、前記第3ピストン部材が、前記第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材に対して相対的に、前記多板ブレーキに近接するように、前記軸方向に移動をし、
    前記変速機ケースの内周面には、前記第2油圧室に対して油圧を給排するための油路が開口しており、前記第1ピストン部材及び前記第2ピストン部材によって、前記油路に連通する前記第2油圧室の開口が形成されており、
    前記第1ピストン部材の周縁部には、前記変速機ケースの前記内周面に当接すると共に、前記第1油圧室と前記第2油圧室との間を隔離する第1シール部材が取り付けられ、
    前記第2ピストン部材の周縁部には、前記変速機ケースの内周面に当接すると共に、前記第2油圧室と前記変速機ケース内との間を隔離する第2シール部材が取り付けられ、
    前記第1ピストン部材の前記第1シール部材及び前記第2ピストン部材の前記第2シール部材は、前記変速機ケースの前記内周面における前記油路の開口を挟んだ前記軸方向の両側それぞれに位置している変速機のブレーキ装置。
  2. 請求項1に記載の変速機のブレーキ装置において、
    前記多板ブレーキに対して径方向の外周側には、リターンスプリングが配設されており、
    前記第2ピストン部材は、前記リターンスプリングの反力を受けるリテーナー部を有し、
    前記第1ピストン部材は、前記第1油圧室の油圧を排出したときに、前記第2ピストン部材を通じて前記リターンスプリングの反力を受けて、前記第2ピストン部材及び前記第3ピストン部材と共に、前記多板ブレーキから前記軸方向に離間するように移動し、
    前記第1油圧室は、前記第3ピストン部材と前記多板ブレーキの摩擦板とのクリアランスをゼロにするために油圧が供給されるクリアランス調整油圧室であり、
    前記第2油圧室は、前記第3ピストン部材が前記多板ブレーキの前記摩擦板を押圧して前記多板ブレーキを締結するために油圧が供給される押圧油圧室である変速機のブレーキ装置。
  3. 請求項1又は2に記載の変速機のブレーキ装置において、
    前記第1ピストン部材は、前記軸方向を向くと共に、前記第2油圧室を区画する側壁を有し、
    前記第2ピストン部材は、前記第2油圧室内で前記第1ピストン部材の前記側壁に対して当接する当接端部を有しかつ、当該当接端部から前記多板ブレーキに向かって軸方向に広がり、
    前記第3ピストン部材には、前記第2ピストン部材の前記第2シール部材よりも径方向の内方側で、前記第2ピストン部材に当接すると共に、前記第2油圧室と前記変速機ケース内との間を隔離する第3シール部材が取り付けられ、
    前記第2ピストン部材の前記当接端部には、前記第2ピストン部材を挟んだ径方向の外方側と内方側との間で、当該当接端部と第1ピストン部材の前記側壁との間を通じて作動油が連通することを遮断する遮断部材が取り付けられている変速機のブレーキ装置。
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