JP2015024079A - ゴルフボール - Google Patents

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Abstract

【課題】飛行性能に優れたゴルフボールの提供。【解決手段】ゴルフボールは、その表面に多数のディンプル10を備えている。このゴルフボールは、下記数式(I)を満たす。Su≰9.0・So−6.04(I)。この数式において、Soはその仮想球の表面積に対する全てのディンプル10の面積の合計の比を表し、Suは全てのディンプル10の球面面積の標準偏差(mm2)を表す。好ましくは、比Soは、0.780以上である。好ましくは、標準偏差Suは、2.150mm2以下である。好ましくは、ディンプル10の数は、300個以上390個以下である。好ましくは、全てのディンプル10の球面面積sの平均値Saは、14.00mm2以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボールのディンプルの改良に関する。
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。この現象は、「乱流化」と称される。乱流化によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流化によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。優れたディンプルは、よりよく空気の流れを乱す。優れたディンプルは、大きな飛距離を生む。
特開2005−137692公報には、ディンプルのサイズの標準偏差が小さなゴルフボールが開示されている。ディンプルのサイズの標準偏差は、ゴルフボールの飛行性能に影響を与える。この標準偏差が小さなゴルフボールが飛行性能に優れていることが、当業者に知られている。
特開2008−389公報には、ディンプルの密度が大きなゴルフボールが開示されている。ディンプルの密度は、ゴルフボールの飛行性能に影響を与える。この密度が大きなゴルフボールが飛行性能に優れていることが、当業者に知られている。
特開2005−137692公報 特開2008−389公報
複数のディンプルに囲まれた狭いゾーンに、小さなディンプルが配置されることにより、密度が大きなディンプルパターンが得られる。しかし、この小さなディンプルは、乱流化に寄与しにくい。この小さなディンプルを備えたゴルフボールでは、サイズの標準偏差が大きい。ディンプルの密度を大きくすることと、ディンプルのサイズの標準偏差を小さくすることとは、相反する。
ゴルフボールに対するゴルファーの最大の関心事は、飛距離である。飛行性能の観点から、ディンプルパターンには、さらなる改良の余地がある。本発明の目的は、ディンプルの密度を大きくすることとディンプルの球面面積の標準偏差を小さくすることとの、相反することを同時に実現することにより、飛行性能に優れたゴルフボールを提供することにある。
本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。このゴルフボールの仮想球の表面積に対する、全てのディンプルの球面面積の合計の比Soは、0.780以上である。このゴルフボールは、下記数式(I)を満たす。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.04 (I)
この数式において、Suは、全てのディンプルの球面面積の標準偏差(mm)を表す。
好ましくは、比Soは、0.840以上である。好ましくは、標準偏差Suは、2.150mm以下である。
好ましくは、ディンプルの数は、300個以上390個以下である。好ましくは、全てのディンプルの球面面積の平均値Saは、14.00mm以上である。ゴルフボールが、その輪郭が非円形であるディンプルを含んでもよい。
好ましくは、ゴルフボールは、下記数式(II)を満たす。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.25 (II)
好ましくは、ゴルフボールは、下記数式(III)を満たす。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.46 (III)
好ましくは、ゴルフボールは、下記数式(IV)を満たす。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.67 (IV)
本発明に係るゴルフボールでは、乱流化が促進される。このゴルフボールは、飛行性能に優れる。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された断面図である。 図2は、図1のゴルフボールが示された拡大平面図である。 図3は、図2のゴルフボールが示された底面図である。 図4は、図2のゴルフボールが示された右側面図である。 図5は、図2のゴルフボールが示された正面図である。 図6は、図2のゴルフボールが示された左側面図である。 図7は、図2のゴルフボールが示された背面図である。 図8は、占有率Soと標準偏差Suとの関係が示されたグラフである。 図9は、図1のゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。 図10は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールが示された正面図である。 図11は、図10のゴルフボールが示された平面図である。 図12は、その表面に多数の母点が想定された仮想球が示された正面図である。 図13は、図12の母点がボロノイ領域と共に示された拡大図である。 図14は、ボロノイ分割に用いられるメッシュが示された正面図である。 図15は、簡便な方法で得られたボロノイ領域が想定された仮想球が示された正面図である。 図16は、図15の仮想球が示された平面図である。 図17は、本発明の実施例1に係るゴルフボールが示された平面図である。 図18は、図17のゴルフボールが示された底面図である。 図19は、図17のゴルフボールが示された右側面図である。 図20は、図17のゴルフボールが示された正面図である。 図21は、図17のゴルフボールが示された左側面図である。 図22は、図17のゴルフボールが示された背面図である。 図23は、本発明の実施例3に係るゴルフボールが示された平面図である。 図24は、図23のゴルフボールが示された底面図である。 図25は、図23のゴルフボールが示された右側面図である。 図26は、図23のゴルフボールが示された正面図である。 図27は、図23のゴルフボールが示された左側面図である。 図28は、図23のゴルフボールが示された背面図である。 図29は、本発明の実施例4に係るゴルフボールが示された平面図である。 図30は、図29のゴルフボールが示された底面図である。 図31は、図29のゴルフボールが示された右側面図である。 図32は、図29のゴルフボールが示された正面図である。 図33は、図29のゴルフボールが示された左側面図である。 図34は、図29のゴルフボールが示された背面図である。 図35は、本発明の実施例5に係るゴルフボールが示された平面図である。 図36は、図35のゴルフボールが示された底面図である。 図37は、図35のゴルフボールが示された右側面図である。 図38は、図35のゴルフボールが示された正面図である。 図39は、図35のゴルフボールが示された左側面図である。 図40は、図35のゴルフボールが示された背面図である。 図41は、本発明の実施例6に係るゴルフボールが示された正面図である。 図42は、図41のゴルフボールが示された平面図である。 図43は、本発明の実施例7に係るゴルフボールが示された正面図である。 図44は、図43のゴルフボールが示された平面図である。 図45は、本発明の実施例8に係るゴルフボールが示された正面図である。 図46は、図45のゴルフボールが示された平面図である。 図47は、比較例5に係るゴルフボールが示された正面図である。 図48は、図47のゴルフボールが示された平面図である。 図49は、本発明の実施例9に係るゴルフボールが示された正面図である。 図50は、図49のゴルフボールが示された平面図である。 図51は、比較例6に係るゴルフボールが示された正面図である。 図52は、図51のゴルフボールが示された平面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル10が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル10以外の部分は、ランド12である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
コア4のゴム組成物は、共架橋剤を含んでいる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物が、共架橋剤と共に有機過酸化物を含むことが好ましい。好ましい有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
コア4のゴム組成物が、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、カルボン酸、カルボン酸塩等の添加剤を含んでもよい。ゴム組成物が、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末を含んでもよい。
コア4の直径は30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。コア4の直径は42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア4が、2以上の層を有してもよい。コア4が、その表面にリブを有してもよい。コア4が中空であってもよい。
中間層6は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
アイオノマー樹脂に代えて、中間層6の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
中間層6の樹脂組成物が、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。比重調整の目的で、この樹脂組成物がタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末を含んでもよい。
中間層6の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。中間層6の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。中間層6の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。中間層6の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。中間層6が、2以上の層を有してもよい。
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、ポリウレタンである。樹脂組成物が、熱可塑性ポリウレタンを含んでもよく、熱硬化性ポリウレタンを含んでもよい。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。
ポリウレタン成分の硬化剤として、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー8の黄変が抑制される。脂環式ジイソシアネートとして、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIが好ましい。
ポリウレタンに代えて、カバー8の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
カバー8の樹脂組成物が、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。
カバー8の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。カバー8の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。カバー8の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。カバー8の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。カバー8が、2以上の層を有してもよい。
ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に、補強層を備えてもよい。補強層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。補強層は、中間層6からのカバー8の剥離を抑制する。補強層の基材ポリマーとして、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が例示される。
図2から7に示されるように、ディンプル10の輪郭は円である。このゴルフボール2は、直径が4.50mmであるディンプルAと、直径が4.40mmであるディンプルBと、直径が4.30mmであるディンプルCと、直径が4.15mmであるディンプルDを備えている。ディンプル10の種類数は、4である。
ディンプルAの数は28個であり、ディンプルBの数は122個であり、ディンプルCの数は100個であり、ディンプルDの数は74個である。ディンプル10の総数Nは、324個である。全てのディンプル10の直径の平均値は、4.321mmである。
ディンプル10の球面面積sは、ゴルフボール2の仮想球の表面のうち、ディンプル10の輪郭線に囲まれたゾーンの面積である。図2から7に示されたゴルフボール2では、ディンプルAの球面面積sは15.95mmであり、ディンプルBの球面面積sは15.25mmであり、ディンプルCの球面面積sは14.56mmであり、ディンプルDの球面面積sは13.56mmである。全てのディンプル10の球面面積sの平均値Saは、14.71mmである。
全てのディンプル10の球面面積sの合計の、仮想球の表面積に対する比は、球面占有率Soと称される。乱流化の観点から、球面占有率Soは0.780以上が好ましく、0.800以上がより好ましく、0.840以上が特に好ましい。球面占有率Soは、0.950以下が好ましい。図2から7に示されたゴルフボール2では、球面面積sの合計は4765.8mmである。このゴルフボール2の仮想球の表面積は5728.0mmなので、球面占有率Soは0.832である。
全てのディンプル10の球面面積s(mm)の標準偏差Suは、2.150以下が好ましい。標準偏差Suが2.150以下であるゴルフボール2では、乱流化が促進される。この観点から、標準偏差Suは1.950以下がより好ましく、1.650以下が特に好ましい。標準偏差Suは、ゼロでもよい。図2から7に示されたゴルフボール2の標準偏差Suは下記数式によって算出される。
Su = (((15.95 - 14.71) ・ 28 + (15.25 - 14.71) ・ 122 +
(14.56 - 14.71) ・ 100 + (13.56 - 14.71) ・ 74) / 324)1/2
このゴルフボール2の標準偏差Suは、0.742である。
図8のグラフにおいて、横軸は球面占有率Soを表し、縦軸は標準偏差Suを表す。図8において符号L1で示された直線は、下記数式によって表される。
Su = 9.0 ・ So − 6.04
本発明者の得た知見によれば、その座標(So,Su)が直線L1の上又はこの直線L1よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能に優れる。換言すれば、下記数式(I)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.04 (I)
図8のグラフにおいて符号L2で示された直線は、下記数式によって表される。
Su = 9.0 ・ So − 6.25
本発明者の得た知見によれば、その座標(So,Su)が直線L2の上又はこの直線L2よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能により優れる。換言すれば、下記数式(II)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.25 (II)
図8のグラフにおいて符号L3で示された直線は、下記数式によって表される。
Su = 9.0 ・ So − 6.46
本発明者の得た知見によれば、その座標(So,Su)が直線L3の上又はこの直線L3よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能に特に優れる。換言すれば、下記数式(III)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.46 (III)
図8のグラフにおいて符号L4で示された直線は、下記数式によって表される。
Su = 9.0 ・ So − 6.67
本発明者の得た知見によれば、その座標(So,Su)が直線L4の上又はこの直線L4よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能に特に優れる。換言すれば、下記数式(IV)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Su ≦ 9.0 ・ So − 6.67 (IV)
ディンプル10を配置する際、設計者は、まず基本となるディンプル10の配置を設計し、次に、さらに球面占有率を上げるべく、複数のディンプル10に囲まれた狭いゾーンに小さなディンプル10を配置させる手段をとることが多い。しかし、この小さなディンプル10は、球面占有率を上げる効果には寄与するが、標準偏差を小さくする効果を阻害する。小さなディンプル10の配置は、本発明の趣旨と合致しない。本実施形態に係るディンプル10パターンの設計では、設計者は、基本となるディンプル10を設計する段階から、隣接するディンプル10の中心間の距離に着目している。設計者は、隣接するディンプル10の中心間の距離がなるべく小さくなるよう、配慮しつつ、パターンの設計を行っている。従って、小さなディンプル10が配置されなくても、球面占有率が高められうる。
全てのディンプル10の球面面積sの平均値Saは14.00mm以上が好ましく、15.00mm以上がより好ましく、15.50mm以上が特に好ましい。平均値Saは、20.00mm以下が好ましい。
図9には、ディンプル10の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。図9における上下方向は、ディンプル10の深さ方向である。図9において二点鎖線で示されているのは、仮想球14である。仮想球14の表面は、ディンプル10が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル10は、仮想球14の表面から凹陥している。ランド12は、仮想球14の表面と一致している。本実施形態では、ディンプル10の断面形状は、実質的には円弧である。
図9において両矢印Dmで示されているのは、ディンプル10の直径である。この直径Dmは、ディンプル10の両側に共通の接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル10のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル10の輪郭を画定する。図9において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル10の深さである。この深さDpは、ディンプル10の最深部と仮想球14との距離である。
それぞれのディンプル10の直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプル10は、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるディンプル10は、実質的に球であるというゴルフボール2の本質を損なわない。この観点から、直径Dmは5.8mm以下がより好ましく、5.6mm以下が特に好ましい。
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル10の深さDpは0.10mm以上が好ましく、0.13mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さDpは0.65mm以下が好ましく、0.60mm以下がより好ましく、0.55mm以下が特に好ましい。
図9において矢印CRで示されているのは、ディンプル10の曲率半径である。曲率半径CRは、下記数式によって算出される。
CR = (Dp + Dm / 4) / (2 * Dp)
その断面形状が円弧でないディンプル10の場合でも、上記数式に基づいて、近似的に曲率半径CRが算出される。
十分な球面占有率Soが達成されるとの観点から、ディンプル10の総数Nは300個以上が好ましく、310個以上がより好ましく、320個以上が特に好ましい。個々のディンプル10が乱流化に寄与しうるとの観点から、総数Nは390個以下が好ましく、380個以下がより好ましく、370個以下が特に好ましい。
本発明において「ディンプルの容積」とは、仮想球14とディンプル10の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル10の総容積は450mm以上が好ましく、480mm以上がより好ましく、500mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は750mm以下が好ましく、730mm以下がより好ましく、710mm以下が特に好ましい。
図10は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボール22が示された正面図である。図11は、図10のゴルフボール22が示された平面図である。図10及び11から明らかなように、このゴルフボール22は、多数の非円形なディンプル24を備えている。これらディンプル24とランド26とにより、ゴルフボール22の表面に凹凸パターンが形成されている。
この凹凸パターンの設計方法には、ボロノイ分割(Voronoi tessellation)が用いられる。この設計方法では、多数の母点が仮想球14(図1参照)の表面の上に配置される。この母点に基づいて、ボロノイ分割により、仮想球14の表面の上に多数の領域が想定される。本願明細書では、この領域は、「ボロノイ領域」と称される。このボロノイ領域の輪郭に基づいて、ディンプル24及びランド26が割り当てられる。ボロノイ分割に基づいたパターン設計方法が、特開2013−9906公報に開示されている。
以下、ボロノイ分割に基づいたパターン設計方法の一例が詳説される。この設計方法では、仮想球14の表面の上に多数の母点が想定される。図12に、これらの母点28が示されている。本実施形態では、母点28の数は344個である。これらの母点28に基づいて、多数のボロノイ領域が想定される。図13には、ボロノイ領域30が示されている。図13において、母点28aは6個の母点28bと隣接している。符号32で示されているのは、母点28aと母点28bとを結ぶ線分である。図13には、6本の線分32が示されている。符号34で示されているのは、それぞれの線分32の垂直二等分線である。母点28aは、6本の垂直二等分線34で囲まれている。図13において白抜き円で示されているのは、垂直二等分線34と他の垂直二等分線34との交点である。この交点が仮想球14の表面に投影された点は、球面多角形(例えば球面六角形)の頂点である。この投影は、仮想球14の中心から放射される光線によってなされる。この球面多角形が、ボロノイ領域30である。仮想球14の表面は、多数のボロノイ領域30に分割される。この分割の方法は、ボロノイ分割と称される。本実施形態では、母点28の数が344個なので、ボロノイ領域30の数は344個である。
垂直二等分線34に基づいてボロノイ領域30の輪郭を画定する計算は、複雑である。以下、簡便にボロノイ領域30が得られる方法が説明される。この方法では、仮想球14の表面が、多数の球面三角形に分割される。分割は、前進先端法(advancing front method)に基づいてなされている。前進先端法が、「大学院情報理工学3 計算力学(伊藤耿一編、講談社発行)」の第195−197頁に開示されている。この分割により、図14に示されたメッシュ36が得られる。このメッシュ36において、三角形の数は314086個であり、頂点の数は157045個である。それぞれの頂点は、セル(又はセルの中心)と定義される。このメッシュ36では、セルの数は157045個である。他の手法によって仮想球14が分割されてもよい。セルの数は、10000個以上が好ましく、100000個以上が特に好ましい。
このメッシュ36において、それぞれのセルにおける、このセルと全ての母点28との距離が算出される。セル毎に、母点28の数と同じ数の距離が算出される。これらの距離の中から、最も短い距離が選定される。この最も短い距離の対象となった母点28に、このセルが関連づけされる。換言すれば、このセルに最も近い母点28が選定される。なお、当該セルからの距離が大きいことが明らかである母点28との距離の計算が、省略されてもよい。
それぞれの母点28に関し、この母点28と関連づけされたセルの集合が想定される。換言すれば、この母点28を最も近い母点28とするセルの集合が想定される。この集合が、ボロノイ領域30とみなされる。こうして得られた多数のボロノイ領域30が、図15及び16に示されている。図15及び16では、当該セルと隣接する他のセルが、当該セルが属するボロノイ領域30とは異なるボロノイ領域30に属する場合に、当該セルが黒く塗りつぶされている。
図15及び16から明らかなように、それぞれのボロノイ領域30の輪郭は、ジグザグである。この輪郭に、スムージング等が施される。スムージングにより、図10及び11に示されたパターンが得られる。
図15及び16から明らかなように、このゴルフボール22では、ディンプル24が整然と並んではいない。このゴルフボール22は、互いに輪郭形状が異なる多数種類のディンプル24を備えている。これらのディンプル24により、大きなディンプル効果が達成される。ディンプル24の種類数は50以上が好ましく、100以上が特に好ましい。本実施形態では、それぞれのディンプル24は、他のいずれのディンプル24の輪郭形状とも異なる輪郭形状を有している。
このゴルフボール22の球面占有率Soは、0.780以上である。このゴルフボール22は、上記数式(I)、(II)、(III)及び(IV)を満たす。
ボロノイ領域の重心が算出され、この重心を母点とするさらなるボロノイ分割が行われてもよい。重心の算出とボロノイ分割とが、繰り返されてもよい。この繰り返しにより、球面面積の標準偏差Suが極めて小さなディンプルパターンが得られうる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、35質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド、0.9質量部のジクミルパーオキサイド及び2.0質量部のオクタン酸亜鉛を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃で18分間加熱して、直径が39.7mであるコアを得た。
50質量部のアイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン8945」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名の「ハイミランAM7329」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で6時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは、10μmであった。
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の商品名「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球体を被覆した。このハーフシェル及び球体を、共に半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にてカバーを得た。カバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が約42.7mmであり質量が約45.6gである実施例1のゴルフボールを得た。YAMADA式コンプレッションテスターにて測定された、荷重が98N−1274Nである場合の圧縮変形量は、約2.45mmであった。このゴルフボールのディンプルの仕様が、下記の表1に示されている。
[実施例2−10及び比較例1−6]
ディンプルの仕様を下記の表1−6に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−10及び比較例1−6のゴルフボールを得た。比較例1に係るゴルフボールは、特開2009−95593公報に記載された実施例1に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。比較例2に係るゴルフボールは、特開2008−389公報に記載された比較例2に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。比較例3に係るゴルフボールは、特開2011−30909公報に記載された比較例2に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。
[飛距離テスト]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタン合金製のヘッドを備えたドライバー(ダンロップスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX」、シャフト硬度:X、ロフト角:8.5°)を装着した。ヘッド速度が50m/secであり、打ち出し角度が約10°であり、バックスピン速度が約2500rpmである条件でゴルフボールを打撃して、発射地点から静止地点までの距離を測定した。テスト時は、ほぼ無風であった。20回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表3−6に示されている。
Figure 2015024079
Figure 2015024079
Figure 2015024079
Figure 2015024079
Figure 2015024079
Figure 2015024079
表3−6に示されるように、各実施例のゴルフボールは飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
前述のディンプルは、スリーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール、シックスピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボール等、様々な構造を有するゴルフボールに適用されうる。
2、22・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8・・・カバー
10、24・・・ディンプル
12、26・・・ランド
14・・・仮想球
28、28a、28b・・・母点
30・・・ボロノイ領域
34・・・垂直二等分線
36・・・メッシュ

Claims (9)

  1. その表面に多数のディンプルを備えており、
    その仮想球の表面積に対する全てのディンプルの球面面積の合計の比Soが、0.780以上であり、
    下記数式(I)を満たすゴルフボール。
    Su ≦ 9.0 ・ So − 6.04 (I)
    (この数式において、Suは、全てのディンプルの球面面積の標準偏差(mm)を表す。)
  2. 上記比Soが0.840以上である請求項1に記載のゴルフボール。
  3. 上記標準偏差Suが2.150mm以下である請求項1又は2に記載のゴルフボール。
  4. 上記ディンプルの数が300個以上390個以下である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
  5. 全てのディンプルの球面面積の平均値Saが14.00mm以上である請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
  6. その輪郭が非円形であるディンプルを含む請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
  7. 下記数式(II)を満たす請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
    Su ≦ 9.0 ・ So − 6.25 (II)
  8. 下記数式(III)を満たす請求項7に記載のゴルフボール。
    Su ≦ 9.0 ・ So − 6.46 (III)
  9. 下記数式(IV)を満たす請求項8に記載のゴルフボール。
    Su ≦ 9.0 ・ So − 6.67 (IV)
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