JP5425330B1 - ゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】飛行性能に優れたゴルフボールの提供。
【解決手段】ゴルフボールは、その表面にランドと多数のディンプルとからなる凹凸パターンを有する。この凹凸パターンの設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の円を想定するステップ、
(2)上記多数の円の位置に基づき、多数の母点16を想定するステップ、
(3)上記多数の母点16に基づいたボロノイ分割によって、仮想球の表面の上に多数のボロノイ領域18を想定するステップ、及び
(4)上記多数のボロノイ領域18の輪郭に基づいて、仮想球の表面にディンプルとランドとを割り当てるステップ
を含む。
【選択図】図8

Description

本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法に関する。
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。乱流剥離によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流剥離によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。抗力の低減及び揚力の向上は、「ディンプル効果」と称される。
ディンプルの総面積の、ゴルフボールの仮想球の表面積に対する比率は、占有率と称されている。占有率が飛行性能と相関することが、知られている。占有率が高められたゴルフボールが、特開平4−347177号公報に記載されている。このゴルフボールは、円形のディンプルを有している。
複数の大きな円形ディンプルに囲まれたゾーンに、小さな円形ディンプルが配置されたゴルフボールでは、大きな占有率が達成されうる。しかし、小さなディンプルは、ゴルフボールの飛行性能に寄与しない。円形ディンプルを有するゴルフボールのディンプル効果には、限界がある。
米国特許第7,198,577号公報には、六角形のディンプルを備えたゴルフボールが記載されている。このゴルフボールの占有率は、大きい。このゴルフボールは、小さなディンプルを有していない。
特開平4−347177号公報 米国特許第7,198,577号公報
米国特許第7,198,577号公報に記載されたこのゴルフボールでは、ディンプルが整然と並んでいる。このゴルフボールのディンプル効果は、十分ではない。このゴルフボールの飛行性能には、改善の余地がある。
本発明の目的は、飛行性能に優れたゴルフボールの提供にある。
本発明に係るゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の円を想定するステップ、
(2)上記多数の円の位置に基づき、多数の母点を想定するステップ、
(3)上記多数の母点に基づいたボロノイ分割によって、仮想球の表面の上に多数のボロノイ領域を想定するステップ、及び
(4)上記多数のボロノイ領域の輪郭に基づいて、仮想球の表面にディンプルとランドとを割り当てるステップ
を含む、
好ましくは、ステップ(1)において、円とこの円に隣接する他の円とが交差しないように、多数の円が想定される。好ましくは、ステップ(1)において、その直径が2.0mm以上6.0mm以下である多数の円が想定される。好ましくは、ステップ(1)において想定される円の数は、280個以上400以下である。好ましくは、ステップ(1)において想定される円の合計面積の、仮想球の表面の面積に対する比率は、60%以上である。
好ましくは、ステップ(2)において、それぞれの円の中心が母点に想定される。ステップ(2)において、それぞれの円の中心が仮想球の表面に投影された点が母点に想定されてもよい。
好ましくは、ステップ(3)は、
(3.1)上記仮想球の表面の上に多数の微小なセルを想定するステップ、
(3.2)それぞれのセルに最も近い母点を選定するステップ、
(3.3)それぞれの母点に関し、この母点を最も近い母点とするセルの集合を想定するステップ、及び
(3.4)それぞれの集合を、ボロノイ領域とみなすステップ
を含む。
本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。これらのディンプルは、その半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプルを含む。好ましくは、半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプルの数の、ディンプルの総数に対する比率P1は、30%以上である。
他の観点によれば、本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。これらのディンプルは、下記数式を満たすディンプルを含む。
Rh / Rave ≧ 0.25
(この数式において、Rhは半径変化幅を表し、Raveは平均半径を表す。)
さらに他の観点によれば、本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。このゴルフボールでは、半径変化幅Rhが最大であるディンプルの半径変化幅Rhmaxと、半径変化幅Rhが最小であるディンプルの半径変化幅Rhminとの差は、0.1mm以上である。
さらに他の観点によれば、本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。このゴルフボールは、下記数式を満たす。
(Rhmax − Rhmin) > (R1 − R2)
この数式において、Rhmaxは半径変化幅Rhが最大であるディンプルの半径変化幅を表し、Rhminは半径変化幅Rhが最小であるディンプルの半径変化幅を表し、R1は半径変化幅Rhが最大であるディンプルの平均半径を表し、R2は半径変化幅Rhが最小であるディンプルの平均半径を表す。
本発明に係る設計方法により、飛行性能に優れたゴルフボールが容易に得られうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。 図2は、図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。 図3は、図2のゴルフボールが示された平面図である。 図4は、その表面に多数の円が想定された仮想球が示された正面図である。 図5は、図4の仮想球が示された平面図である。 図6は、その表面に多数の母点が想定された仮想球が示された正面図である。 図7は、図6の仮想球が示された平面図である。 図8は、図6の母点がボロノイ領域と共に示された拡大図である。 図9は、ボロノイ分割に用いられるメッシュが示された正面図である。 図10は、簡便な方法で得られたボロノイ領域が想定された仮想球が示された正面図である。 図11は、図10の仮想球が示された平面図である。 図12は、図2のゴルフボールのディンプルが示された拡大図である。 図13は、図12のディンプルの半径変化幅の算出方法が説明されるためのグラフである。 図14は、比較例2に係るゴルフボールが示された正面図である。 図15は、図14のゴルフボールが示された平面図である。 図16は、図14のゴルフボールの半径変化幅の算出方法が説明されるためのグラフである。 図17は、図14のゴルフボールの半径変化幅の算出方法が説明されるためのグラフである。 図18は、本発明の実施例2に係るゴルフボールが示された正面図である。 図19は、図18のゴルフボールが示された平面図である。 図20は、比較例2に係るゴルフボールが示された正面図である。 図21は、図20のゴルフボールが示された平面図である。 図22は、本発明の実施例3に係るゴルフボールが示された正面図である。 図23は、図22のゴルフボールが示された平面図である。 図24は、比較例3に係るゴルフボールが示された正面図である。 図25は、図24のゴルフボールが示された平面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
コア4の架橋には、共架橋剤が用いられうる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
コア4のゴム組成物には、硫黄、硫黄化合物、充填剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
コア4の直径は30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。コア4の直径は42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4がその表面にリブを備えてもよい。
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとして、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。スピン性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
カバー6の厚みは0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。カバー6の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。カバー6の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。カバー6の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
図2は、図1のゴルフボール2が示された拡大正面図である。図3は、図2のゴルフボール2が示された平面図である。図2及び3から明らかなように、このゴルフボール2は、多数の非円形なディンプル8を備えている。これらディンプル8とランド10とにより、ゴルフボール2の表面に凹凸パターンが形成されている。
この凹凸パターンの設計方法には、ボロノイ分割(Voronoi tessellation)が用いられる。この設計方法では、多数の母点が仮想球12(図1参照)の表面の上に配置される。この母点に基づいて、ボロノイ分割により、仮想球12の表面の上に多数の領域が想定される。本願明細書では、この領域は、「ボロノイ領域」と称される。このボロノイ領域の輪郭に基づいて、ディンプル8及びランド10が割り当てられる。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。以下、この設計方法が詳説される。
この設計方法では、図4及び5に示されるように、仮想球12の表面に多数の円14が想定される。これらの円14の想定の方法は、円形ディンプルを有するディンプルパターンの設計方法と同様の方法である。円形ディンプルを有するディンプルパターンの設計方法は、当業者においてよく知られている。それぞれの円14は、円形ディンプルの輪郭と一致する。本実施形態では、円14の数は344個である。
これらの円14の位置に基づき、仮想球12の表面の上に多数の母点が想定される。本実施形態では、それぞれの円14の中心が母点に想定される。図6及び7に、これらの母点16が示されている。本実施形態では、円14の数が344個なので、母点16の数は344個である。それぞれの円14の中心が仮想球12の表面に投影された点が、母点16に想定されてもよい。この投影は、仮想球12の中心から放射される光線によってなされる。中心以外の点に基づき、母点が想定されてもよい。例えば、円周上の点が母点と見なされてもよい。
これらの母点16に基づいて、多数のボロノイ領域が想定される。図8には、ボロノイ領域18が示されている。図8において、母点16aは6個の母点16bと隣接している。符号20で示されているのは、母点16aと母点16bとを結ぶ線分である。図8には、6本の線分20が示されている。符号22で示されているのは、それぞれの線分20の垂直二等分線である。母点16aは、6本の垂直二等分線22で囲まれている。図8において白抜き円で示されているのは、垂直二等分線22と他の垂直二等分線22との交点である。この交点が仮想球12の表面に投影された点は、球面多角形(例えば球面六角形)の頂点である。この投影は、仮想球12の中心から放射される光線によってなされる。この球面多角形が、ボロノイ領域18である。仮想球12の表面は、多数のボロノイ領域18に分割される。この分割の方法は、ボロノイ分割と称される。本実施形態では、母点16の数が344個なので、ボロノイ領域18の数は344個である。
垂直二等分線22に基づいてボロノイ領域18の輪郭を画定する計算は、複雑である。以下、簡便にボロノイ領域18が得られる方法が説明される。この方法では、仮想球12の表面が、多数の球面三角形に分割される。分割は、前進先端法(advancing front method)に基づいてなされている。前進先端法が、「大学院情報理工学3 計算力学(伊藤耿一編、講談社発行)」の第195−197頁に開示されている。この分割により、図9に示されたメッシュ24が得られる。このメッシュ24において、三角形の数は314086個であり、頂点の数は157045個である。それぞれの頂点は、セル(又はセルの中心)と定義される。このメッシュ24では、セルの数は157045個である。他の手法によって仮想球12が分割されてもよい。セルの数は、10000個以上が好ましく、100000個以上が特に好ましい。
このメッシュ24において、それぞれのセルにおける、このセルと全ての母点16との距離が算出される。セル毎に、母点16の数と同じ数の距離が算出される。これらの距離の中から、最も短い距離が選定される。この最も短い距離の対象となった母点16に、このセルが関連づけされる。換言すれば、このセルに最も近い母点16が選定される。なお、当該セルからの距離が大きいことが明らかである母点16との距離の計算が、省略されてもよい。
それぞれの母点16に関し、この母点16と関連づけされたセルの集合が想定される。換言すれば、この母点16を最も近い母点16とするセルの集合が想定される。この集合が、ボロノイ領域18とみなされる。こうして得られた多数のボロノイ領域18が、図10及び11に示されている。図10及び11では、当該セルと隣接する他のセルが、当該セルが属するボロノイ領域18とは異なるボロノイ領域18に属する場合に、当該セルが黒く塗りつぶされている。
図10及び11から明らかなように、それぞれのボロノイ領域18の輪郭は、ジグザグである。この輪郭に、スムージング等が施される。典型的なスムージングは、移動平均である。3点移動平均、5点移動平均、7点移動平均等によるスムージングが採用されうる。
3点移動平均では、下記の3つのセルの座標が平均される。
(1)当該セル
(2)時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
(3)反時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
5点移動平均では、下記の5つのセルの座標が平均される。
(1)当該セル
(2)時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
(3)反時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
(4)時計回りにおいて当該セルに2番目に近いセル
(5)反時計回りにおいて当該セルに2番目に近いセル
7点移動平均では、下記の7つのセルの座標が平均される。
(1)当該セル
(2)時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
(3)反時計回りにおいて当該セルに最も近いセル
(4)時計回りにおいて当該セルに2番目に近いセル
(5)反時計回りにおいて当該セルに2番目に近いセル
(6)時計回りにおいて当該セルに3番目に近いセル
(7)反時計回りにおいて当該セルに3番目に近いセル
移動平均で得られた座標を有する複数の点が、スプライン曲線で結ばれる。このスプライン曲線により、ループが得られる。ループの形成のとき、点の一部が間引かれてスプライン曲線が画かれてもよい。ループの拡大又は縮小がなされて、新たなループが得られてもよい。このループの上又はこのループの外部に、ランド10が割り当てられる。換言すれば、ボロノイ領域18の輪郭の近傍にランド10が割り当てられる。一方、ループの内部又はループの上にディンプル8が割り当てられる。このようにして、図2及び3に示された凹凸パターンが得られる。
ディンプル8の割り当て方法の一例が説明される。この方法では、最深点が決定される。好ましくは、ループの中心と仮想球12の中心とを結ぶ線上に、最深点が想定される。ループの中心の座標は、このループを画定する全ての基準点の座標の平均である。この最深点が、仮想球12の表面に投影される。この投影された点を通過し、その両端がループ上にある、仮想球12の表面の上にある円弧が想定される。この円弧の両端と最深点とを通過し、ゴルフボール2の半径方向内向きに凸な、滑らかな曲線が想定される。好ましくは、滑らかな曲線は、円弧である。この滑らかな曲線とループとが、滑らかな曲面で結ばれる。これにより、ディンプル8が得られる。最深点とループとが滑らかな曲面で結ばれることで、ディンプル8が得られてもよい。
ゴルフボール2の飛行性能の観点から、ディンプル8の占有率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、占有率は98%以下が好ましい。本実施形態では、占有率は92%である。ボロノイ分割が採用されることにより、小さなディンプル8が配置されなくても、大きな占有率が達成されうる。
図2及び3から明らかなように、このゴルフボール2では、ディンプル8が整然と並んではいない。このゴルフボール2は、互いに輪郭形状が異なる多数種類のディンプル8を備えている。これらのディンプル8により、大きなディンプル効果が達成される。ディンプル8の種類数は50以上が好ましく、100以上が特に好ましい。本実施形態では、それぞれのディンプルは、他のいずれのディンプルの輪郭形状とも異なる輪郭形状を有している。
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、ディンプル8の最深点と仮想球12の表面との距離である。
本発明において「ディンプルの容積」とは、仮想球12の表面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。全てのディンプル8の容積の合計(総容積)は、ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から500mm以上が好ましく、550mm以上がより好ましく、600mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この合計は900mm以下が好ましく、850mm以下がより好ましく、800mm以下が特に好ましい。
実質的に球であるというゴルフボール2の本質が損なわれないとの観点から、ディンプル8の総数は250個以上が好ましく、280個以上がより好ましく、310個以上が特に好ましい。それぞれのディンプル8がディンプル効果に寄与しうるとの観点から、この総数は450個以下が好ましく、400個以下がより好ましく、370個以下が特に好ましい。
前述の通り、ボロノイ分割に先立ち、仮想球12の表面の上に多数の円14が想定される。ディンプル8が偏りなく配置されうるとの観点から、下記(1)−(4)に示される条件のうちの1又は2以上が満たされるように円14が想定されることが好ましい。
(1)円14とこの円14に隣接する他の円14とが、交差しないこと
(2)円14の直径が、2.0mm以上6.0mm以下であること
(3)円14の数が、280個以上400以下であること
(4)円14の合計面積の、仮想球12の表面の面積に対する比率が60%以上であること
好ましくは、上記(1)−(4)に示される条件のすべてが満たされるように、円14が想定される。
このゴルフボール2は、半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプル8を備えている。半径変化幅Rhの算出の方法が、図12に示されている。この方法では、ディンプル8の輪郭上のすべての制御点の座標が平均されることにより、中心Oの座標が決定される。制御点は、輪郭上のセルから選択される。典型的には、間引きによりセルの選択がなされる。本実施形態では、1つのディンプルあたりの制御点の数は30である。制御点の数は、30には限られない。制御点の数は、10以上50以下が好ましい。ディンプル8の輪郭上のすべてのセルが、制御点に選択されても良い。
中心Oの座標が決定された後、この中心Oと制御点との距離(つまり半径R)が算出される。すべての制御点に関し、半径Rが算出される。図13は、この半径Rがプロットされたグラフである。このグラフの横軸は、中心Oとそれぞれの制御点とを結ぶ線の、経線方向に対する角度である。このグラフに示されるように、半径Rの最大値から、半径Rの最小値が減じられた値が、半径変化幅Rhである。半径変化幅Rhは、ディンプルの歪さを示す指標である。
制御点ではなく、ディンプル8の輪郭上に想定された点に基づき、半径Rが決定されてもよい。ディンプル8の輪郭上の30個の点に基づき、半径変化幅Rhが算出される。これらの点は、中心Oにおける角度が12°刻みとなるように、想定される。この場合の中心Oの座標は、ディンプル8の輪郭上のすべてのセルの座標の平均値である。想定される点の数は、30には限られない。想定される点の数は、10以上50以下が好ましい。想定される点の数がnであるとき、中心点Oにおける角度は、(360/n)°である。
以上説明されたいずれかの算出方法によって算出された半径変化幅Rhが、0.4mm以上であればよい。
半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプル8を備えたゴルフボール2では、ディンプル8が整然と並ばない。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプル8の数の、ディンプル8の総数に対する比率P1は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。理想的な比率P1は、100%である。図2及び3に示されたゴルフボールでは、比率P1は81%である。
図13から明らかな通り、このディンプル8の半径Rの変化は周期性を有さない。このゴルフボール2では、ディンプル8が整然と並ばない。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。
飛行性能の観点から、半径変化幅Rhが最大であるディンプル8の半径変化幅Rhmaxと、半径変化幅Rhが最小であるディンプル8の半径変化幅Rhminとの差は、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。
飛行性能の観点から、すべてのディンプル8に関する半径変化幅Rhの標準偏差は、0.10以上が好ましく、0.13以上が特に好ましい。
このゴルフボール2は、下記数式(1)を満たすディンプル8を含んでいる。
Rh / Rave ≧ 0.25 (1)
この数式において、Rhは半径変化幅を表し、Raveは平均半径を表す。Raveは、1つのディンプル8が有するすべての制御点の半径Rの平均である。
制御点ではなく、ディンプル8の輪郭上に存在するすべてのセルに基づき、平均半径Raveが決定されてもよい。
ディンプル8の輪郭上に想定された点に基づき、平均半径Raveが決定されてもよい。具体的には、ディンプル8の輪郭上の30個の点に基づき、平均半径Raveが算出される。これらの点は、中心Oにおける角度が12°刻みとなるように、想定される。この場合の中心Oの座標は、ディンプル8の輪郭上のすべてのセルの座標の平均値である。想定される点の数は、30には限られない。想定される点の数は、10以上50以下が好ましい。想定される点の数がnであるとき、中心点Oにおける角度は、(360/n)°である。
以上説明されたいずれかの算出方法で算出された半径変化幅Rh及び平均半径Raveの対において、上記数式(1)が満たされればよい。
上記数式(1)を満たすゴルフボール2では、ディンプル8が整然と並ばない。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。上記数式(1)を満たすディンプル8の数の、ディンプル8の総数に対する比率P2は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が特に好ましい。理想的な比率P2は、100%である。図2及び3に示されたゴルフボールでは、比率P2は36%である。
飛行性能の観点から、ゴルフボール2が下記数式(2)を満たすことが好ましい。
(Rhmax − Rhmin) > (R1 − R2) (2)
この数式において、Rhmaxは半径変化幅Rhが最大であるディンプル8の半径変化幅を表し、Rhminは半径変化幅Rhが最小であるディンプル8の半径変化幅を表し、R1は半径変化幅Rhが最大であるディンプル8の平均半径を表し、R2は半径変化幅Rhが最小であるディンプル8の平均半径を表す。(Rhmax−Rhmin)と(R1−R2)との差は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。図2及び3に示されたゴルフボールでは、この差は0.449mmである。
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(ジェイエスアール社の商品名「BR−730」)、30質量部のアクリル酸亜鉛、6質量部の酸化亜鉛、10質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.5質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃で18分間加熱して、直径が39.7mmであるコアを得た。一方、50質量部のアイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1605」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1706」)及び3質量部の二酸化チタンを混練し、樹脂組成物を得た。上記コアを、内周面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入し、コアの周囲に上記樹脂組成物を射出成形法により注入して、厚みが1.5mmであるカバーを成形した。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。このカバーに、二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmであり質量が約45.4gであるゴルフボールを得た。このゴルフボールのPGAコンプレッションは、約85である。このゴルフボールは、図2及び3に示されたディンプルパターンを有する。このゴルフボールの占有率は、92%である。ディンプルの詳細が、下記の表1及び3に示されている。
[比較例1]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、比較例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、344個の円形ディンプルを有している。これらのディンプルの輪郭のパターンが、図4及び5に示されている。このゴルフボールの占有率は、82%である。
[実施例2]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、実施例2のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、324個の非円形ディンプルを有している。これらのディンプルの輪郭のパターンが、図18及び19に示されている。このパターンは、ボロノイ分割によって設計されている。このボロノイ分割の母点は、後述される比較例2のパターンの円の中心である。このゴルフボールの占有率は、92%である。
[比較例2]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、比較例2のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、324個の円形ディンプルを有している。これらのディンプルの輪郭のパターンが、図20及び21に示されている。このゴルフボールの占有率は、81%である。
[実施例3]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、実施例3のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、344個の非円形ディンプルを有している。これらのディンプルの輪郭のパターンが、図22及び23に示されている。このパターンは、ボロノイ分割によって設計されている。このボロノイ分割の母点は、後述される比較例3のパターンの円の中心である。このゴルフボールの占有率は、85%である。
[比較例3]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、比較例3のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、344個の円形ディンプルを有している。これらのディンプルの輪郭のパターンが、図24及び25に示されている。このゴルフボールの占有率は、84%である。
[比較例4]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、比較例4のゴルフボールを得た。このゴルフボールディンプルパターンが、図14及び15に示されている。このゴルフボールは、320個の六角形ディンプルと、12個の五角形ディンプルとを備えている。図16に、六角形ディンプルの半径変化幅Rhの算出のためのグラフが示されている。図17に、五角形ディンプルの半径変化幅Rhの算出のためのグラフが示されている。このゴルフボールの占有率は、86%である。
[飛距離テスト]
ITRテストで得られた空力特性値を用い、弾道計算を行った。この弾道計算の条件は、以下の通りである。
ボール速度:57m/s(187.0ft/s)
打ち出し角度:13°
バックスピン速度:2400rpm
この弾道計算で得られた飛距離が、下記の表1及び2に示されている。飛距離は、発射地点から落下地点までの距離である。
Figure 0005425330
Figure 0005425330
Figure 0005425330
Figure 0005425330
表1及び2に示されるように、各実施例のゴルフボールは、飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたディンプルパターンは、ツーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボールにも適用されうる。
2・・・ゴルフボール
8・・・ディンプル
10・・・ランド
12・・・仮想球
14・・・円
16・・・母点
18・・・ボロノイ領域
22・・・垂直二等分線
24・・・メッシュ

Claims (13)

  1. (1)仮想球の表面の上に多数の円を想定するステップ、
    (2)上記多数の円の位置に基づき、それぞれの円ごとに1つの母点を想定するステップ、
    (3)上記多数の母点に基づいたボロノイ分割によって、仮想球の表面の上に多数のボロノイ領域を想定するステップ、及び
    (4)上記多数のボロノイ領域の輪郭に基づいて、仮想球の表面にディンプルとランドとを割り当てるステップ
    を含んでおり、
    上記ステップ(1)において、円とこの円に隣接する他の円とが交差しないように多数の円が想定されるゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法。
  2. 上記ステップ(1)において、その直径が2.0mm以上6.0mm以下である多数の円が想定される請求項1に記載の設計方法。
  3. 上記ステップ(1)において想定される円の数が、280個以上400以下である請求項1又は2に記載の設計方法。
  4. 上記ステップ(1)において想定される円の合計面積の、上記仮想球の表面の面積に対する比率が60%以上である請求項1から3のいずれかに記載の設計方法。
  5. 上記ステップ(2)において、それぞれの円の中心が母点に想定される請求項1から4のいずれかに記載の設計方法。
  6. 上記ステップ(2)において、それぞれの円の中心が仮想球の表面に投影された点が母点に想定される請求項1から4のいずれかに記載の設計方法。
  7. 上記ステップ(3)が、
    (3.1)上記仮想球の表面の上に多数の微小なセルを想定するステップ、
    (3.2)それぞれのセルに最も近い母点を選定するステップ、
    (3.3)それぞれの母点に関し、この母点を最も近い母点とするセルの集合を想定するステップ、及び
    (3.4)それぞれの集合を、ボロノイ領域とみなすステップ
    を含む請求項1から6のいずれかに記載の設計方法。
  8. 上記ステップ(4)において、仮想球の表面のうちボロノイ領域の輪郭の近傍にランドが割り当てられる請求項1から7のいずれかに記載の設計方法。
  9. その表面に多数のディンプルを備えており、これらのディンプルが、その半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプルを含んでおり、
    それぞれのディンプルが、他のいずれのディンプルの輪郭形状とも異なる輪郭形状を有しているゴルフボール。
  10. 上記半径変化幅Rhが0.4mm以上であるディンプルの数の、ディンプルの総数に対する比率P1が、30%以上である請求項9に記載のゴルフボール。
  11. その表面に多数のディンプルを備えており、これらのディンプルが下記数式を満たすディンプルを含んでおり、
    それぞれのディンプルが、他のいずれのディンプルの輪郭形状とも異なる輪郭形状を有しているゴルフボール。
    Rh / Rave ≧ 0.25
    (この数式において、Rhは半径変化幅を表し、Raveは平均半径を表す。)
  12. その表面に多数のディンプルを備えており、
    半径変化幅Rhが最大であるディンプルの半径変化幅Rhmaxと、半径変化幅Rhが最小であるディンプルの半径変化幅Rhminとの差が0.1mm以上であり、
    それぞれのディンプルが、他のいずれのディンプルの輪郭形状とも異なる輪郭形状を有しているゴルフボール。
  13. その表面に多数のディンプルを備えており、
    下記数式を満たしており、
    それぞれのディンプルが、他のいずれのディンプルの輪郭形状とも異なる輪郭形状を有するゴルフボール。
    (Rhmax − Rhmin) > (R1 − R2)
    (この数式において、Rhmaxは半径変化幅Rhが最大であるディンプルの半径変化幅を表し、Rhminは半径変化幅Rhが最小であるディンプルの半径変化幅を表し、R1は半径変化幅Rhが最大であるディンプルの平均半径を表し、R2は半径変化幅Rhが最小であるディンプルの平均半径を表す。)
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