JP2015021526A - フリータイプ双方向クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】入出力軸間の動力伝達の向きにより伝達状態を変更するフリータイプ双方向クラッチにおいて、簡易な構造で伝達トルクの増大等を図る。【解決手段】固定のハウジング1の内部に、共通の回転軸を備えた入力軸2と出力軸3とを設置するとともに、複数の外歯6tが形成された作動子6と、同一歯数の内歯5tが形成された円筒部材5とを組み合わせて設置する。入力軸2の回転時には、作動子6、円筒部材5及び出力軸3がロック状態となって、入力軸2の回転が出力軸3に伝達される。逆に出力軸3が回転したときは、出力軸3の偏心輪3sにより作動子6の中心が円周上を移動するが(公転)、作動子6は自転せず、円筒部材5には回転トルクが作用しない。入力軸2の穴部2rと作動子6の突軸6sとの関係も同様であり、出力軸3が回転しても入力軸2が回転することはなく、動力伝達は遮断される。【選択図】図1

Description

本発明は、入力軸と出力軸との間の動力伝達状態を変更するクラッチ装置、特に、入力軸からの正・逆回転の動力を出力軸に伝達し、出力軸からの動力の伝達は、出力軸を空転させて遮断するフリータイプ双方向クラッチに関するものである。
モーターなどの駆動源から機械装置あるいは作業機器等を駆動する動力伝達系では、駆動する機器の特性に対応するよう各種の伝達装置が使用される。このような伝達装置の中で双方向クラッチと呼ばれるものは、入力軸(駆動側)から出力軸(従動側)への動力伝達では、入力軸の正方向回転及び逆方向回転をともに出力軸に伝達し、反対向きの、出力軸から入力軸への動力伝達は遮断する機能を備えている。双方向クラッチには、出力軸からの動力伝達を遮断するときに出力軸を空転させるクラッチがあり、フリータイプ双方向クラッチと呼ばれている。
フリータイプ双方向クラッチは、一例として、電動カーテンや電動スライドドア等を手動でも操作できるようにした開閉駆動装置に適用することができる。この場合、フリータイプ双方向クラッチは、駆動モーターとカーテンの巻き上げ機構との間に介在され、入力軸に駆動モーターが、出力軸に巻き上げ機構が連結される。駆動モーターを正・逆回転させるとカーテンの昇降が可能であるとともに、駆動モーターの停止位置においては、手動による巻き上げ機構の操作が可能であって、このときには、出力軸が空転するので駆動モーターに悪影響を及ぼすことがない。こうした機能は、電磁クラッチを使用しても達成できるが、電磁クラッチを作動させるには電力を必要とし、電力制御のための複雑な制御装置等も必要となる。
フリータイプ双方向クラッチとしては、例えば、本出願人の創案に係る特許第4949196号に記載された双方向クラッチが知られており、これについて、図7により説明する。図7(a)は、フリータイプ双方向クラッチの全体的な構造を示す断面図、図7(b)(c)は、作動を示す作動図である。
図7(a)に示すとおり、円筒形のハウジングHGの内部には、間隙をおいて円筒形の出力部材OMを回転可能に配置し、これを出力軸に固着する。入力軸には、断面円形の上下部分を切除して長軸部と短軸部とを形成した入力部材IMが固着してあり、出力部材OMと入力部材IMとの間に2分割された中間部材MMが配置されている。2個の中間部材MMは、互いに接近するようその間に引張りばねTSが設けてあり、また、中間部材MMの周縁部には、楔形凹所に挿入されたローラROが、出力部材OMの内面と対向するように設けられている。
入力軸の回転に伴って、図7(b)に示すように、入力部材IMが時計方向に回転すると、長軸部と短軸部とを形成した入力部材IMは、カムのように作用して2個の中間部材MMを分離する方向に移動する。これにより、ローラROが楔形凹所と出力部材OMの内面との間に噛み込まれた状態となり、入力部材IMの回転が、中間部材MM及びローラROを介して出力部材OMに伝達される。入力部材IMの反時計方向の回転も、同様に出力部材OMから出力軸に伝達される。
一方、出力軸側から駆動されて出力部材OMが回転したとしても、図7(c)に示すように、2個の中間部材MMは、引張りばねTSにより接近した位置のままであって、ローラROと出力部材OMの内面との間には間隙が存在する。そのため、出力部材OMの回転は入力部材IMに伝達されず、出力軸は単に空転することとなる。
フリータイプ双方向クラッチは、手動操作ができる電動カーテン以外にも、例えば、複写機の紙送り用ローラに適用することも可能で、これに適用すると、紙詰まりの用紙を取り除くときに、ローラを手動で逆回転させることができる。そして、フリータイプ双方向クラッチを利用すると、簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、電磁クラッチにより制御する場合のような、電力等の使用が不必要となるとともに、出力軸側から不測の逆入力があった場合に、駆動源のモーター等を保護することも可能となる。
特許第4949196号公報
上述のとおり、図7のフリータイプ双方向クラッチは、コンパクトであって確実に動力伝達を制御可能な機械部品であるけれども、用途によっては未だ改良すべき余地が残されている。本発明は、こうしたフリータイプ双方向クラッチの、以下に述べるような課題を解決するものである。
まず、図7の双方向クラッチでは、入力軸から出力軸への動力伝達は、ローラROの噛み込みにより行われ、ローラROと出力部材OMの内面との間の摩擦によって入力トルクが出力側に伝達される。ローラROの接触面の摩擦力が失われるとトルク伝達が不可能となるため、双方向クラッチの伝達トルクは、摩擦力による制限を受ける。
また、入力軸の回転が出力軸に伝達するには、図7(b)に示すように、入力部材IMが少し回転して2個の中間部材MMを押し広げ、ローラROを出力部材OMの内面に当接する必要がある。入力部材IMの回転が直ちに出力部材OMの回転となるわけではなく、入力部材IMと出力部材OMとの間にはいわば不感帯が存在するとともに、部材の当接に伴って騒音が発生する。さらに、入力部材IMの駆動トルクを解除すると、引張りばねTSと中間部材MMにより入力部材IMが少し押し戻されて逆回転するため、入力部材IMの駆動トルクを解除する毎に、いわば0点復帰のための位置補償が必要となる。こうしたことから、図7のようなフリータイプ双方向クラッチを介在させて正確な位置制御を行う場合、制御系の構造が複雑化する。
上記の課題に鑑み、本発明は、複数の外歯が形成された作動子と同一歯数の内歯が形成された円筒部材とを組み合わせて、入力軸の回転時には作動子等をロック状態とし、さらに、出力軸の回転時には作動子の公転運動を許容するようにして、フリータイプ双方向クラッチを構成するものである。すなわち、本発明は、
「回転不能のハウジング、前記ハウジング内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
前記ハウジングの内部には、前記回転軸を中心として回転可能な円筒部材と、前記円筒部材内において前記回転軸の周りを公転する作動子とが設置され、
前記円筒部材の内周面には複数の内歯が形成され、前記作動子には前記円筒部材の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成され、
前記作動子の軸方向の一方側には、断面円形の中央穴部が形成されるとともに、他方側には突軸が形成されており、かつ、
前記作動子の中央穴部には、前記出力軸に設けられた断面円形の偏心部が嵌まり込み、前記作動子の突軸は、前記入力軸に設けられた穴部に入り込み、突軸の外周面の一部が前記入力軸の穴部の壁面に接触して、前記作動子が前記回転軸の周りを公転可能である」
ことを特徴とするフリータイプ双方向クラッチとなっている。
請求項2に記載のように、本発明のフリータイプ双方向クラッチでは、前記円筒部材が前記ハウジングに設けられた断面円形の収容部に転がりベアリングを介して嵌め込まれており、前記入力軸に設けられた穴部には複数の内歯が形成され、前記作動子の突軸には前記入力軸の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成されるよう構成することができる。
また、請求項3に記載のように、本発明のフリータイプ双方向クラッチの別実施例として、前記円筒部材の軸方向の一端には、前記入力軸に固着された円板部が結合され、前記円板部には、前記入力軸の回転軸中心から偏心した位置に断面円形の前記穴部が設けられるとともに、前記作動子には、前記穴部に入り込む断面円形の前記突軸が設けられるよう構成することができる。
請求項4に記載のように、前記入力軸及び前記出力軸の対向する面には、その一方の中心部に中央軸を形成するとともに、他方の中心部に前記中央軸が嵌まり込む中心穴を形成することが好ましい。
請求項5に記載のように、前記ハウジングと前記入力軸との間には、前記入力軸の回転に拘束力を付与するばねを設けることができる。
本発明のフリータイプ双方向クラッチは、回転不能のハウジング内に、共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を設置し、また、複数の外歯が形成された作動子を、同一歯数の内歯が形成された円筒部材と組み合わせてハウジング内に収容するものである。作動子の軸方向の一方側には断面円形の中央穴部が形成され、ここに出力軸に設けられた偏心輪が嵌め込まれるとともに、他方側には突軸が形成され、この突軸は、入力軸に設けられた穴部に入り込んで穴部の壁面に接触している。
入力軸が回転したときは、後に詳述するように、入力軸と円筒部材及び作動子がロック状態となり、作動子は、入力軸の回転軸の周りを入力軸と一体的に回転する。作動子には出力軸の偏心輪が嵌め込まれ、出力軸の回転軸は入力軸と共通であるので、結局、入力軸は作動子を介して出力軸と一体化されることとなる。そのため、入力軸からの正・逆方向の回転は出力軸にそのまま伝達されて、出力軸が同一回転数で同じ方向に回転する。
これに対し、出力軸が回転すると、出力軸の偏心輪に嵌め込まれた作動子は、その中心が共通の回転軸の周りを移動(円運動)するが、作動子には複数の外歯が形成され、同一歯数の内歯が形成された円筒部材と組み合わされている。これにより、作動子は、円筒部材内で自転を起こすことなく共通の回転軸の周りを公転し、その際、円筒部材には回転トルクを作用させない。回転子の突軸は、入力軸の穴部に入り込んで一部はその壁面と接触しているけれども、作動子と円筒部材との関係と同様に、これらは公転運動を許容するよう係合されているので、作動子の公転が出力軸に回転トルクを作用させることはない。つまり、出力軸が回転しても、作動子が円筒部材内で公転するだけであって、出力軸は空転し、その回転は入力軸に伝達されない。
このように、本発明のフリータイプ双方向クラッチにおいては、公転運動を許容する作動子と円筒部材を利用して、入力軸から出力軸へ動力を伝達するとともに、反対向きへの伝達は、出力軸を空転させて遮断する。出力軸への伝達は、作動子や円筒部材をロック状態とすることにより行われ、摩擦力を利用するものではないため、伝達トルクが摩擦力により制限されることはない。作動子等のロック状態は、出力軸から駆動しようとすると直ちに生じるので、不感帯が存在せず、0点復帰のための位置調整を省くことができる。
また、図7のフリータイプ双方向クラッチとは異なり、本発明のフリータイプ双方向クラッチでは、ばねを使用していない。ばねの存在により機械装置の製造組み立て作業が困難となる場合があるが、本発明のものではそうした恐れはない。
請求項2のフリータイプ双方向クラッチは、内歯を形成した円筒部材を、ハウジングの断面円形の収容部に転がりベアリングを介して嵌め込み、そして、外歯を形成した作動子の突軸と内歯を形成した入力軸の穴部とを組み合わせて、作動子の公転運動を許容するよう係合させたものである。円筒部材と入力軸とが独立した部品となっているので、円筒部材の形状が単純化され、その製造や内歯の加工が容易である。
また、請求項3のフリータイプ双方向クラッチは、円筒部材の軸方向の一端に、入力軸に固着された円板部を結合し、円板部の中心から偏心した位置に断面円形の穴部を設けるとともに、この穴部に作動子の断面円形の突軸を作動子の公転運動を許容するよう係合させたものである。この双方向クラッチでは、円筒部材と入力軸とを単一の部品とすることが可能であって、その分、部品点数が減少する。さらに、作動子と入力軸との係合部の構造が単純化され、製造加工が容易となる。
請求項4の発明は、入力軸及び出力軸の対向する面の一方に中心軸を形成し、他方に中心穴を形成して、中心軸と中心穴とを嵌め合わせるものである。こうすると、中心軸が中心穴に軸受されて、入力軸と出力軸を安定して支持し回転させることが可能となる。
請求項5の発明は、ハウジングと入力軸との間にばねを設置して、入力軸の回転に拘束力を付与するものである。入力軸は回転可能に設置され、作動子の突軸と接触状態であるので、出力軸の回転で作動子が公転すると、作動子の公転と連動するように連れ回りを起こし、入力軸が回転する恐れがある。ばねによって入力軸に拘束力を付与したときは、このような入力軸の回転を確実に阻止して、出力軸から入力軸への回転伝達を防止することができる。ばねによる拘束力は、摩擦等による連れ回りを防止する程度の弱いもので十分である。
本発明のフリータイプ双方向クラッチの第1実施例を示す構造図である。 第1実施例のフリータイプ双方向クラッチの作動を説明する図である。 第1実施例の入出力軸の単体図である。 第1実施例の動力伝達関連部品の単体図である。 本発明のフリータイプ双方向クラッチの第2実施例を示す図である。 第2実施例の動力伝達関連部品の単体図である。 従来のフリータイプ双方向クラッチの一例を示す図である。
以下、図面に基づいて、本発明のフリータイプ双方向クラッチについて説明する。図1には、本発明のフリータイプ双方向クラッチの第1実施例の全体構造を示し、その作動の説明図を図2に示す。また、図3、図4は、第1実施例のフリータイプ双方向クラッチの主要な構成部品を単体の状態で示すものである。
図1に示すように、第1実施例のフリータイプ双方向クラッチは、固定された断面円形のハウジング1の中心部に配置された入力軸2と出力軸3とを備えている。ハウジング1は、円周壁部と端板部からなるカップ状部材であって、開口端部には内部を閉鎖する円板状のシールド体1Sが圧入される。入力軸2及び出力軸3は共通の回転軸oを有し、その回転軸oはハウジング1の中心軸と同一である。入力軸2は、ハウジング1の端板部の中心を貫通してこれに軸受され、出力軸3は、シールド体1sの中心を貫通してこれに軸受される。図1の断面C−Cに示すように、ハウジング1の端板部にはC型リング4の配置された浅い凹部が設けられており、C型リング4は、入力軸2と接触してその回転に対し一定の拘束力を与えるばねとして機能する。
ハウジング1の内部には、円周壁部の内面に嵌め込まれた転がりベアリングBR1を介して円筒部材5が設置されている。図1の右方の断面B−Bに示すとおり(単体図である図4(a)も参照)、円筒部材5の中心軸は回転軸oと一致し、その内周面には複数の内歯5tが形成されている。円筒部材5の一方の端部には、入力軸2が、転がりベアリングBR2を介して嵌め込まれるとともに、反対側の端部には、出力軸3が貫通する円板状のシールド体5sが嵌め込まれる。
そして、円筒部材5の内部には作動子6が配置され、その外周には、円筒部材5の内歯5tの谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯6tが形成されている(単体図である図4(b)も参照)。作動子6は、その中心軸o´が回転軸oとeだけ偏心した状態で、円筒部材5の内部に配置されていて、これにより、図1の断面B−Bの状態では、上側で作動子6の外歯6tが円筒部材5の内歯5tの谷部に入り込むのに対し、下側で外歯6tが内歯5tから離れるようになる。つまり、内歯5tの形成された円筒部材5の内周面は、作動子6が自転することなくその中心軸o´が回転軸oの周りを相対的に移動(公転)したときに、外歯6tを備えた作動子6の外周面が創成する包絡線となっている。
入力軸2側の作動子6の端部には、外周に複数の外歯6stの形成された突軸6sが設けられており、突軸6sは、入力軸2に設けられる穴部2rに入り込む。図1の断面A−Aに示すとおり、入力軸2の穴部2rには、外歯6stと同一歯数の内歯2rtが形成してあり、作動子6外周の外歯6tと円筒部材5の内歯5tとの関係と同じように、突軸6sの外歯6stが穴部2rの内歯2rtの谷部にそれぞれ入り込む(単体図である図3(a)も参照)。作動子6の出力軸3側の端部には、断面円形の中央穴部6rが形成されており、この中央穴部6rには、転がりベアリングBR3を介して、出力軸3に設けられた断面円形の偏心輪3sが嵌まり込んでいる。偏心輪3sの中心は、出力軸3の回転軸oとeだけ離れている(単体図である図3(b)も参照)。
なお、出力軸3の中央部には、入力軸2に向けて延びる中央軸3pが設けてあり、この中央軸3pは、作動子6中央の貫通孔6hを通過して、入力軸2の中央部に形成された中央穴2hに嵌まり込む。これにより、入力軸2と出力軸3とは相互に軸受された状態となり、回転時における軸の傾きあるいは不安定な作動が防止される。
ここで、図1の第1実施例のフリータイプ双方向クラッチの作動について、図2を用いて説明する。
図2の上図の断面A−A等における各矢印に示すように、入力軸2が、例えば、駆動源のモーターにより反時計方向(軸方向の左方から見て)に回転すると、入力軸2の穴部2rの内周面と作動子6の突軸6sの外歯6stとが接触する接触点において、穴部2rの内周面が外歯6stを外側から押しつける形で、突軸6sを経由して作動子6に回転軸oの周りの回転トルクを付与する。このとき、円筒部材5は、ベアリングBR1によりハウジング1内で回転軸oの周りを回転可能に支持されているので、入力軸2、作動子6及び円筒部材5が一体となりロックされた状態で、回転軸oの周りを回転する。作動子6の回転は、偏心輪3sで結合された出力軸3を回転させることとなり、結局、出力軸3に連なる機械装置、例えば、カーテンの巻き上げ機構に駆動力が伝達される。作動子6等の入出力軸間の部材が全体的にロックされるこの駆動力の伝達は、入力軸2の回転方向が逆であっても同じである。
これに対して、図2の下図中央の縦断面図における矢印に示すように、出力軸3が時計方向(軸方向の左方から見て)に回転した場合には、作動子6に嵌め込まれた偏心輪3sによって、作動子6の中心軸o´が、出力軸3の回転軸oを中心とする半径eの円周上を移動する。作動子6の外周には複数の外歯6tが形成され、これは、円筒部材5の内周面に形成された同一歯数の内歯5tの谷部に入り込んで、円筒部材5と組み合わされているため、作動子6は、円筒部材5内で回転(自転)しない。したがって、作動子6上の全ての点は、図2の下図のB−B断面における小円矢印のように、半径eの円周上を移動することとなり、円筒部材5には回転トルクを及ぼさない。この関係は、作動子6の突軸6sと入力軸2の穴部2rとにおいても同様であって(下図の断面A−A参照)、作動子6は、入力軸2に回転トルクを及ぼすことなく、回転軸oの周りを公転する。
このように、作動子6が円筒部材5や入力軸2に対して公転運動を許容するよう係合されているので、出力軸3が回転しても、作動子6は、固定された円筒部材5内で公転するだけであって、出力軸3は空転し、その回転は入力軸2に伝達されない。例えば、出力軸3に連なるカーテンの巻き上げ機構を駆動する動力伝達系では、駆動源のモーターを停止したまま、カーテンを手動で昇降することが可能である。
なお、図1の実施例のフリータイプ双方向クラッチでは、入力軸2と接触するC型リング4が設けられている。C型リング4は、入力軸2の回転に対し一定の拘束力を与えるばねとして機能し、作動子6と入力軸2との接触部の摩擦等に起因して、入力軸2が連れ回りを起こすのを防止する。
次いで、本発明の第2実施例のフリータイプ双方向クラッチについて、図5、図6に基づいて説明する。図5は、第2実施例のフリータイプ双方向クラッチの全体構造を示すものであり、図6は、主要な構成部品を単体の状態で示すものである。
図5の右上の軸方向縦断面図に示すように、第2実施例のフリータイプ双方向クラッチは、固定された断面円形のハウジング10の中心部に配置され、共通の回転軸oの周りに回転可能な入力軸20と出力軸30とを備えている。ハウジング10は、第1実施例のものと同様に、円周壁部と端板部からなるカップ状部材であり、開口端部には内部を閉鎖する円板状のシールド体10sが圧入される。第2実施例では、端板部とシールド体10sには凹部が設けられ、ここに入力軸20用及び出力軸30用の転がりベアリングがそれぞれ圧入されている。
入力軸20には、図6の単体図にも示すように、軸部の一端に円板部20dと円筒部50とを一体的に形成したもので、円板部20dと円筒部50とは、ハウジング10の内部に収容される。円筒部50の内周面には複数の内歯50tが形成され、また、円筒部50の内部には作動子60が配置され、その外周には、円筒部50の内歯50tの谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯60tが形成されている。つまり、作動子60は第1実施例の作動子6に、円筒部50は第1実施例の円筒部材5にそれぞれ相当する部材であって、第1実施例では円筒部材5が独立した部材であるのに対し、第2実施例においては、円筒部50は、その一端が入力軸20に固着された円板部20dに結合され、入力軸20と一体化されたものとなっている。
作動子60の入力軸20側の端部には、断面円形の突軸60sが設けられており、この突軸60sは、円板部20dの中心から偏心した位置に設けられた断面円形の穴部20rに入り込み、穴部20rの壁面と接触している(図5の断面B−B参照)。
第1実施例と同様に、作動子60の出力軸30側の端部には、断面円形の中央穴部60rが形成されており、この中央穴部60rには、転がりベアリングを介して、出力軸30に設けられた断面円形の偏心輪30sが嵌まり込んでいる。偏心輪30sの中心は、出力軸30の回転軸oとeだけ離れており(図5の断面A−A参照)、作動子60は、円筒部50内で公転運動を行う。出力軸30の中央部に設けられた中央軸30pは、入力軸20の中央部に形成された中央穴20hに嵌まり込む。
入力軸20が回転軸oの周りを回転すると、入力軸20の円板部20dと円筒部50とが共に回転する。作動子60は、その突軸60sが円板部20dの穴部20rと接触し、外歯60tが円筒部50と接触しているので、入力軸20の回転により、突軸60s及び外歯60tが外側から押しつけられるような形で、作動子60が入力軸20と一体となって回転する。作動子60の回転は、偏心輪30sで結合された出力軸3を回転させることとなり、入力軸20の回転は、ロックされた作動子60を介して、そのまま出力軸3に伝達される。
一方、出力軸30が回転した場合には、作動子60に嵌め込まれた偏心輪30sのよって、作動子60の中心が回転軸oを中心とする半径eの円周上を移動する。このときは、作動子60の外歯60tと、円筒部50の内周面の内歯50tとの嵌まり合いにより、作動子60は、全ての点が半径eの円周上を移動する公転運動を行うのみで、自転を起こすことはない。また、作動子60の突軸60sも穴部20r内で公転を行うだけであり、出力軸30は空転し、その回転が入力軸20に伝達されることはない。
第2実施例のフリータイプ双方向クラッチでは、円筒部材(円筒部50)が、円板部20dで結合された入力軸20の一部として構成されているため、部品点数を削減することができる。さらに、作動子60と入力軸30との係合部は、断面円形の軸と穴との係合であって構造が単純であり、製造加工も容易である。
以上詳述したように、本発明のフリータイプ双方向クラッチは、複数の外歯が形成された作動子と同一歯数の内歯が形成された円筒部材とを組み合わせ、入力軸の回転時には、作動子等をロック状態として動力伝達を可能とする一方、出力軸の回転時には、作動子の公転運動を許容して出力軸を空転させ、フリータイプ双方向クラッチを構成するものである。上記の実施例では、出力軸の偏心輪と作動子との間に転がりベアリングを介在させているが、これを省いて滑り軸受けの構造としてもよい、また、入出力軸と作動子との間に軸方向のスラスト軸受けを設け、各可動部品の円滑な回転を図るなど、上記実施例に対し各種の変形が可能であるのは明らかである。
1、10 ハウジング
2、20 入力軸
2r、20r 穴部
2rt 内歯
20d 円板部
3、30 出力軸
3s、30s 偏心輪
4 C型リング
5、50 円筒部材
5t、50t 内歯
6、60 作動子
6r、60r 中央穴部
6s、60s 突軸
6t、60t 外歯

Claims (5)

  1. 回転不能のハウジング、前記ハウジング内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
    前記ハウジングの内部には、前記回転軸を中心として回転可能な円筒部材と、前記円筒部材内において前記回転軸の周りを公転する作動子とが設置され、
    前記円筒部材の内周面には複数の内歯が形成され、前記作動子には前記円筒部材の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成され、
    前記作動子の軸方向の一方側には、断面円形の中央穴部が形成されるとともに、他方側には突軸が形成されており、かつ、
    前記作動子の中央穴部には、前記出力軸に設けられた断面円形の偏心部が嵌まり込み、前記作動子の突軸は、前記入力軸に設けられた穴部に入り込み、突軸の外周面の一部が前記入力軸の穴部の壁面に接触して、前記作動子が前記回転軸の周りを公転可能であることを特徴とするフリータイプ双方向クラッチ。
  2. 前記円筒部材は、前記ハウジングに設けられた断面円形の収容部に転がりベアリングを介して嵌め込まれており、前記入力軸に設けられた穴部には複数の内歯が形成され、前記作動子の突軸には前記入力軸の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成される請求項1に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
  3. 前記円筒部材の軸方向の一端には、前記入力軸に固着された円板部が結合され、前記円板部には、前記入力軸の回転軸中心から偏心した位置に断面円形の前記穴部が設けられるとともに、前記作動子には、前記穴部に入り込む断面円形の前記突軸が設けられる請求項1に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
  4. 前記入力軸及び前記出力軸の対向する面には、その一方の中心部に中央軸が形成されるとともに、他方の中心部に前記中央軸が嵌まり込む中心穴が形成される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフリータイプ双方向クラッチ。
  5. 前記ハウジングと前記入力軸との間には、前記入力軸の回転に拘束力を付与するばねが設けられている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフリータイプ双方向クラッチ。
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