JP6545228B2 - 歯車の空転を利用するフリータイプ双方向クラッチ - Google Patents
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Description
図7に示すとおり、このフリータイプ双方向クラッチでは、固定のハウジングH内に、共通の中心軸の回りに回転可能な入力軸I及び出力軸Oが設置されている。出力軸Oにはこれと同心の太陽歯車SGが固着されている。ハウジングH内には更に、太陽歯車SGと噛み合う遊星歯車PG有する一対の遊星歯車体PBが配置され、一対の遊星歯車体PBはキャリアCによって回転可能に軸支されている。一対の遊星歯車体PBのそれぞれには、異なる回転方向の空転を許容する一方向クラッチOCを介して作動子Mが取り付けられるとともに、入力軸Iには作動子Mと当接するカム体CBが設けられている。そして、作動子Mの断面の外周は略正六角形であると共にカム体CBの断面の外周は略矩形である。このことから、作動子M及びカム体CBの断面はそれぞれ直線部を有し、この直線部同士が当接するようにして、作動子Mのそれぞれがカム体CBの一方側及び他方側に配置されている。
図7のフリータイプ双方向クラッチでは、この状態において、出力軸Oの回転方向が、入力軸Iが停止する以前に回転していたのと同一方向であれば、遊星歯車PG(太陽歯車SGと逆方向に回転しようとする)は、一方向クラッチOCにより作動子Mと一体化されるため、キャリアCを伴いながら太陽歯車SGの回転方向にわずかに移動して作動子Mをカム体CBから離し、出力軸Oは回転可能となる。一方、出力軸Oの回転方向が、入力軸Iが停止する以前の回転方向と逆であれば、遊星歯車PGは一方向クラッチOCにより作動子Mと切り離される。そのため、作動子Mの直線部とカム体CBの直線部とが重なり作動子M自体の自転が拘束されていても、遊星歯車PGは自転が可能であって、入力軸Iに回転を伝達することなく、出力軸Oは回転可能となる。
「回転不能のハウジングと、前記ハウジング内で共通の中心軸の周りに回転可能な入力軸及び出力軸とを備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸から前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
前記出力軸には出力歯車が固着され、前記ハウジングの内部には、前記出力歯車と噛み合う中間歯車を有する中間歯車体と、前記中間歯車と噛み合う作動歯車を有する作動歯車体と、前記中間歯車体及び前記作動歯車体の夫々を回転可能に軸支し、前記共通の中心軸の周りに回転可能なキャリア体と、前記キャリア体に対して所定の摩擦力を付与する制動手段とが配置され、
前記作動歯車体には、軸方向に突出し且つ断面形状が円形である突出部が設けられるとともに、前記入力軸には、前記突出部が挿入される空間部が設けられており、前記空間部の縁部には、周方向中央から周方向両側に向かって前記突出部の外周面との距離が変化するカム面が形成され、
前記入力軸が駆動回転したときは、前記カム面と前記突出部の外周面との間で食い付きを生じ、前記作動歯車体の自転が阻止されて、前記出力軸が前記作動歯車体及び前記中間歯車体並びに前記キャリア体と一体的に回転する一方、前記出力軸が駆動回転したときは、前記作動歯車体の自転が許容されて、前記入力軸への回転の伝達が遮断される」
ことを特徴とするフリータイプ双方向クラッチである。
前記カム面は、前記空間部の径方向外側の縁部に形成されており、周方向片側に向かって半径方向内側に傾斜して直線状に延びる片側部分と、周方向他側に向かって半径方向内側に傾斜して直線状に延びる他側部分とを含み、前記片側部分と他側部分とは、両者の中間を通って径方向に延びる直線に対して線対称であること。
前記キャリア体には、前記中間歯車体及び前記作動歯車体を挟んで対向する位置に、キャリア補助板が一体的に結合されていること。
まず、ハウジング2内にキャリア体8を、端板部18と基部50とが近接乃至当接して対向するようにして配置する。次いで、キャリア体8の中間キャリア軸52及び作動キャリア軸54の夫々に、中間歯車体10及び作動歯車軸12の夫々を回転可能に軸支させる。そして、出力軸6を、出力軸部46がキャリア体8の基部50の中央孔及びハウジング2の端板部18の中央孔を貫通すると共に出力歯車44が全ての中間歯車体10の中間歯車66と噛み合うようにして、キャリア体8及びハウジング2と組み合わせる。その後に、入力軸4を、入力フランジ部28が出力軸6の軸方向端面と面接触した状態で、キャリア体8等に組み合わせる。このとき、空間部34の夫々には、作動歯車体12の突出部70と共にキャリア体8の作動キャリア軸54が挿入され、補助空間部42の夫々には、キャリア体8の中間キャリア軸52が挿入される。空間部34に作動歯車体12の突出部が挿入された状態にあっては、カム面36と作動歯車体12の突出部の外周面との距離は、周方向中央から周方向両側に向かって一旦増大した後に減少する。図示の実施例においては、突出部70は、空間部34の周方向中央において、カム面36と近接乃至当接し、中間キャリア軸52は、補助空間部42の中央に位置し、中間キャリア軸52の外周面は補助空間部42を規定する入力フランジ部28の内周面から十分に離隔している。そして、キャリア補助端60を、支持孔62の夫々に中間キャリア軸52及び作動キャリア軸54を挿通させると共に、爪64をキャリア体8の外側壁56に形成された爪64に嵌め合わせ、中間歯車体10及び作動歯車体12を挟んで対向する位置にてキャリア体8と一体的に結合させる。しかる後に、制動手段14である周知の波ばねをキャリア補助板60と当接するように配置し、シールド体26で円周壁部16の開口側端面を閉鎖する。所望ならば、制動手段14はキャリア補助板60とシールド体16との間に配置することに替えて、キャリア8の基部50とハウジング2の端板部18との間に配置してもよい。
図2における各矢印に示すように、入力軸4が、駆動源のモーターにより反時計方向(中央縦断面図の右方から見て)に駆動回転すると、入力軸4の入力フランジ部28に形成された空間部34が反時計方向に移動し、空間部34の縁部に形成されたカム面36、更に詳しくは他側部分40、と作動歯車体12の突出部70の外周面との間で食い付きを生じる。これは、制動手段14によってキャリア体8に付与された摩擦力が作動歯車体12を現在の位置に保持させようとして作用するため、入力軸4が回転してカム面36の他側部分40が作動歯車体12の突出部70の外周面に押し付けられた際に、入力軸4のカム面36と突出部70の外周面との間で滑りが生じないためである。入力軸4のカム面36と作動歯車体12の突出部70の外周面との間で食い付きを生じることで作動歯車体12の自転は阻止され、これにより作動歯車体12の作動歯車68と噛み合う中間歯車66を有する中間歯車体10の自転も阻止される。この状態から入力軸4を更に回転すると、自転が阻止された作動歯車体12及び中間歯車体10、これらの歯車体を支持するキャリア体8と共に、中間歯車体10の中間歯車66と噛み合う出力歯車44が入力フランジ部28と一体となって回転する。つまり、出力軸6は入力軸4と一体となって回転する。このとき、作動歯車体12の突出部70の断面形状は円形であり、突出部70は、入力軸4の空間部34において、周方向中央から周方向両側に向かって突出部70の外周面との距離が変化するカム面36と当接乃至密接することから、入力軸4を回転させて出力軸6へ回転を伝達させる際のバックラッシは小さく、動力伝達時の応答性が良好となる。本実施例においては更に、空間部34の周方向中央位置において、作動歯車体12の突出部70がカム面36と近接乃至当接していることから、空間部34が僅かに移動しただけで上記食い付きを生じ、入力軸4から出力軸6への回転の遅れが生じることはない。入力軸4が反時計方向に回転した場合には、カム面36の片側部分38と突出部70の外周面との間で噛み合いを生じることを除いては、入力軸4が時計方向に回転した場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。
4:入力軸
6:出力軸
8:キャリア体
10:中間歯車体
12:作動歯車体
14:制動手段
34:空間部
36:カム面
44:出力歯車
66:中間歯車
68:作動歯車
70:突出部
Claims (3)
- 回転不能のハウジングと、前記ハウジング内で共通の中心軸の周りに回転可能な入力軸及び出力軸とを備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸から前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
前記出力軸には出力歯車が固着され、前記ハウジングの内部には、前記出力歯車と噛み合う中間歯車を有する中間歯車体と、前記中間歯車と噛み合う作動歯車を有する作動歯車体と、前記中間歯車体及び前記作動歯車体の夫々を回転可能に軸支し、前記共通の中心軸の周りに回転可能なキャリア体と、前記キャリア体に対して所定の摩擦力を付与する制動手段とが配置され、
前記作動歯車体には、軸方向に突出し且つ断面形状が円形である突出部が設けられるとともに、前記入力軸には、前記突出部が挿入される空間部が設けられており、前記空間部の縁部には、周方向中央から周方向両側に向かって前記突出部の外周面との距離が変化するカム面が形成され、
前記入力軸が駆動回転したときは、前記カム面と前記突出部の外周面との間で食い付きを生じ、前記作動歯車体の自転が阻止されて、前記出力軸が前記作動歯車体及び前記中間歯車体並びに前記キャリア体と一体的に回転する一方、前記出力軸が駆動回転したときは、前記作動歯車体の自転が許容されて、前記入力軸への回転の伝達が遮断される、ことを特徴とするフリータイプ双方向クラッチ。 - 前記カム面は、前記空間部の径方向外側の縁部に形成されており、周方向片側に向かって半径方向内側に傾斜して直線状に延びる片側部分と、周方向他側に向かって半径方向内側に傾斜して直線状に延びる他側部分とを含み、前記片側部分と他側部分とは、両者の中間を通って径方向に延びる直線に対して線対称である、請求項1に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
- 前記キャリア体には、前記中間歯車体及び前記作動歯車体を挟んで対向する位置に、キャリア補助板が一体的に結合されている、請求項1又は2に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
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