JP2013234729A - 内接歯車機構を備えた双方向クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】入力側からの回転を伝達し、出力側からの回転は阻止する双方向クラッチにおいて、部品間の間隙をなくして作動の円滑化を図り、異音等の発生を防止する。
【解決手段】内歯歯車IGを形成したハウジング1の両側に入力軸2及び出力軸3をそれぞれ配置し、入力軸2と出力軸3との間に、外歯歯車EGを有する回転作動子4を設置して、回転作動子4が公転及び自転運動を行う内接歯車機構を構成する。入力軸2の設けた偏心体21を回転作動子4の中心孔41に嵌め込み、かつ、回転作動子4の突起軸42を出力軸3に設けた径方向の長溝31に嵌め込む。入力軸2を回転駆動すると、偏心体21が回転作動子4を駆動し、回転作動子4が公転しながら自転して突起軸42により出力軸3を回転させるが、出力軸3に回転トルクを加えたときは、回転作動子4と偏心体21との間に垂直方向の力が作用し、出力軸3及び入力軸2の回転がロックされる。
【選択図】図1
【解決手段】内歯歯車IGを形成したハウジング1の両側に入力軸2及び出力軸3をそれぞれ配置し、入力軸2と出力軸3との間に、外歯歯車EGを有する回転作動子4を設置して、回転作動子4が公転及び自転運動を行う内接歯車機構を構成する。入力軸2の設けた偏心体21を回転作動子4の中心孔41に嵌め込み、かつ、回転作動子4の突起軸42を出力軸3に設けた径方向の長溝31に嵌め込む。入力軸2を回転駆動すると、偏心体21が回転作動子4を駆動し、回転作動子4が公転しながら自転して突起軸42により出力軸3を回転させるが、出力軸3に回転トルクを加えたときは、回転作動子4と偏心体21との間に垂直方向の力が作用し、出力軸3及び入力軸2の回転がロックされる。
【選択図】図1
Description
本発明は、入力軸と出力軸との間の動力伝達状態を変更するクラッチ装置、特に、入力軸(駆動側)からの正・逆回転の動力を伝達するとともに、出力軸(従動側)からの動力伝達は遮断するように機能する双方向クラッチに関するものである。
モーターによって物品を上下に移送する昇降装置では、物品が所定の位置となったときにモーターを停止すると、物品が自動的にその位置を保持するような作動が求められる場合がある。そのため、ハウジング及び入力軸、出力軸を備えた双方向クラッチを用いて、入力軸を正・逆回転可能なモーターに連結するとともに、出力軸の回転により物品を昇降させる装置が知られている。この装置の双方向クラッチでは、モーターで入力軸を正・逆回転したときは、出力軸が連動して正・逆回転し物品を昇降させる一方、出力軸を正・逆回転しようとすると、出力軸がハウジングと噛み合い状態となってロックされ、物品の落下を防止する。
双方向クラッチを利用する昇降装置の概要と、双方向クラッチの構造の一例とを図7、図8により説明する。図7は、ベルト及びプーリによって物品を上下する昇降装置の概要と、その駆動装置に備えられる双方向クラッチのA−A断面構造を表すものであり、図8(a)は、出力軸が入力軸と連動して物品を昇降する状態のA−A断面を、(b)は、出力軸がロックされて物品の落下を阻止する状態のA−A断面を示す。
図7の昇降装置は、上下に配置したプーリP1、P2の間にベルトBを掛け渡し、ベルトBに移送する物品Wを固着した装置であって、上方のプーリP1には、これを回転駆動する正・逆回転可能なモーターMが、双方向クラッチDCを介して連結されている。双方向クラッチDCは、モーターMに連なる入力軸IS、プーリP1に連なる出力軸OS及び固定のハウジングHGを有している。
図7の昇降装置は、上下に配置したプーリP1、P2の間にベルトBを掛け渡し、ベルトBに移送する物品Wを固着した装置であって、上方のプーリP1には、これを回転駆動する正・逆回転可能なモーターMが、双方向クラッチDCを介して連結されている。双方向クラッチDCは、モーターMに連なる入力軸IS、プーリP1に連なる出力軸OS及び固定のハウジングHGを有している。
A−A断面矢視図に示されるように、双方向クラッチDCのハウジングHG内においては、入力軸ISが複数の扇形部に分割され、扇形部の内側に出力軸OSが嵌め込まれる。出力軸OSには、入力軸ISの隣接する扇形部の間に入り込む突起部が設けてあり、この突起部の先端に形成したV字状凹所とハウジングHGとの間には、ローラRが介在されている。
図8(a)に示すように、モーターMにより入力軸ISが回転するときは、入力軸ISの扇形部の側面と出力軸OSの突起部の側面とが当接し、出力軸OSは、入力軸ISに押される形で同一方向に同一速度で回転する。入力軸ISが逆方向に回転するときも同様であって、図7の昇降装置において、モーターMを正・逆回転すると、ベルトBに固着した物品Wを上昇又は下降させることができる。
これに対し、出力軸OSが回転したときは、(b)に示されるように、ローラRがV字状凹所の斜面に押し上げられて外方に移動し、ハウジングHGと出力軸OSの突起部との間に挟み込まれる。これにより、出力軸OSがロックされてその位置で停止し、入力軸ISに回転が伝達されることはない。図7の昇降装置では、モーターMによる駆動を停止しても、物品Wが自重により落下するのを自動的に阻止することができる。このような双方向クラッチは、本出願人の先行する特許出願に係る特許第4850653号公報に開示されている。
これに対し、出力軸OSが回転したときは、(b)に示されるように、ローラRがV字状凹所の斜面に押し上げられて外方に移動し、ハウジングHGと出力軸OSの突起部との間に挟み込まれる。これにより、出力軸OSがロックされてその位置で停止し、入力軸ISに回転が伝達されることはない。図7の昇降装置では、モーターMによる駆動を停止しても、物品Wが自重により落下するのを自動的に阻止することができる。このような双方向クラッチは、本出願人の先行する特許出願に係る特許第4850653号公報に開示されている。
双方向クラッチは、例えば、複写機のフィニッシャーにおいて、用紙を載せた用紙テーブルを移送する昇降装置、あるいは、建築物の窓のブラインドを昇降する昇降装置に適用することができる。そして、これを利用すると、簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、例えば電磁クラッチにより制御する場合のような、電力等の使用が不必要となるとともに、出力軸側から不測の逆入力があった場合に、駆動源のモーターを保護することも可能となる。
上述のとおり、図7の双方向クラッチは、コンパクトであって確実に動力伝達を制御可能な機械部品であるけれども、用途によっては未だ改良すべき余地が残されている。本発明は、双方向クラッチの以下に述べるような課題を解決するものである。
図7の構造の双方向クラッチでは、その機能を達成するには、入力軸ISの扇形部と出力軸OSの突起部との間などに間隙を設ける必要があり、作動中に衝撃音が発生する。また、双方向クラッチを図7の昇降装置に適用した場合、モーターMを正転させて物品Wを上昇するときは問題ないが、モーターMを逆転させ物品Wを下降するときに、物品Wの重力に起因して出力軸OSの速度が細かな変動を繰り返し、振動や異音を生じることがある。これは、次の理由による。
物品Wを下降させるためモーターMを逆回転させた場合に、物品Wに作用する重力により、出力軸OSが入力軸ISよりも速く回転(オーバーラン)することがあり、オーバーランが起こると、図8(b)の状態となってローラRとハウジングHGとが噛み合い、出力軸OSがロックする。このロック状態は、入力軸ISの回転でローラRが押されたときに解除されるが、噛み込みと解除の繰り返しは、出力軸OSの速度に細かな変動を与えることとなる。なお、ロック状態の解除には、ローラRに働く摩擦力に打ち勝つトルク(モーメント)を付与する必要があるが、この点は、停止状態にある物品Wを上昇させるときも同じであって、モーターMには、物品Wを上昇させる負荷トルクに加えて噛み込み解除のためのトルクも要求される。
物品Wを下降させるためモーターMを逆回転させた場合に、物品Wに作用する重力により、出力軸OSが入力軸ISよりも速く回転(オーバーラン)することがあり、オーバーランが起こると、図8(b)の状態となってローラRとハウジングHGとが噛み合い、出力軸OSがロックする。このロック状態は、入力軸ISの回転でローラRが押されたときに解除されるが、噛み込みと解除の繰り返しは、出力軸OSの速度に細かな変動を与えることとなる。なお、ロック状態の解除には、ローラRに働く摩擦力に打ち勝つトルク(モーメント)を付与する必要があるが、この点は、停止状態にある物品Wを上昇させるときも同じであって、モーターMには、物品Wを上昇させる負荷トルクに加えて噛み込み解除のためのトルクも要求される。
上記の課題に鑑み、本発明は、噛み合いローラを用いることなく、内接歯車機構を利用して双方向クラッチを構成し、双方向クラッチの作動に伴う異音等の発生を防止するとともに、出力軸を停止させるときはロック状態を確実に保持するようにしたものである。すなわち、本発明は、
「回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記ハウジングに設けられた内歯歯車と、前記内歯歯車の内側に偏心して配置され前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車が設けられた回転作動子とを有する内接歯車機構を備え、
前記回転作動子には、入力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の断面円形の中心孔が形成されるとともに、出力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の突起軸が形成されており、
前記入力軸及び前記出力軸が前記内歯歯車と同心に配置され、前記入力軸には前記回転作動子の中心孔に嵌め込まれる偏心体が設けられ、かつ、前記出力軸には前記回転作動子の突起軸が嵌め込まれる径方向の長溝が形成されている」
ことを特徴とする双方向クラッチとなっている。
「回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記ハウジングに設けられた内歯歯車と、前記内歯歯車の内側に偏心して配置され前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車が設けられた回転作動子とを有する内接歯車機構を備え、
前記回転作動子には、入力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の断面円形の中心孔が形成されるとともに、出力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の突起軸が形成されており、
前記入力軸及び前記出力軸が前記内歯歯車と同心に配置され、前記入力軸には前記回転作動子の中心孔に嵌め込まれる偏心体が設けられ、かつ、前記出力軸には前記回転作動子の突起軸が嵌め込まれる径方向の長溝が形成されている」
ことを特徴とする双方向クラッチとなっている。
内接歯車機構における内歯歯車と外歯歯車との組み合わせとしては、請求項2に記載のように、前記内歯歯車の歯数が10以上であり、前記外歯歯車の歯数が前記内歯歯車の歯数よりも2乃至4だけ少ないものを採用することが好ましい。
請求項3に記載のように、前記入力軸の偏心体と前記回転作動子の中心孔との間、及び前記入力軸の周囲と前記出力軸の周囲とには、ボールベアリング等の転がりベアリングを介在させることができる。
本発明の双方向クラッチは、固定された内歯歯車の内側を外歯歯車が噛み合いながら遊星運動を行う内接歯車機構を、入力軸と出力軸との間に介在させたものである。外歯歯車は回転作動子の周囲に形成されており、回転作動子には、一方の面に外歯歯車の中心軸と同心の断面円形の中心孔が形成され、他方の面に外歯歯車の中心軸と同心の突起軸が設けられる。そして、回転作動子の中心孔には、入力軸に設けられた偏心体が嵌め込まれるとともに、突起軸は、出力軸に形成された径方向の長溝に嵌め込まれている。
入力軸及び出力軸の回転中心は、ハウジングに固定の内歯歯車と同心であって、入力軸が回転したときは、嵌め込まれた偏心体によって回転作動子が駆動され内歯歯車に沿って移動する。回転作動子の外歯歯車が内歯歯車と噛み合っているので、回転作動子は、その中心軸(外歯歯車の中心軸)が内歯歯車の中心の周りを公転しつつ、回転作動子自体が自転する遊星運動(よろめき運動)を行うこととなり、回転作動子の突起軸の嵌め込まれた出力軸も、回転作動子により駆動されて回転する。ただし、出力軸の径方向の長溝に突起軸が嵌め込まれていて、出力軸が回転作動子の公転運動のみを取り出す形となるため、出力軸の回転数は入力軸の回転数と等しくなる。
入力軸及び出力軸の回転中心は、ハウジングに固定の内歯歯車と同心であって、入力軸が回転したときは、嵌め込まれた偏心体によって回転作動子が駆動され内歯歯車に沿って移動する。回転作動子の外歯歯車が内歯歯車と噛み合っているので、回転作動子は、その中心軸(外歯歯車の中心軸)が内歯歯車の中心の周りを公転しつつ、回転作動子自体が自転する遊星運動(よろめき運動)を行うこととなり、回転作動子の突起軸の嵌め込まれた出力軸も、回転作動子により駆動されて回転する。ただし、出力軸の径方向の長溝に突起軸が嵌め込まれていて、出力軸が回転作動子の公転運動のみを取り出す形となるため、出力軸の回転数は入力軸の回転数と等しくなる。
一方、出力軸側から入力軸を駆動するよう出力軸に回転トルクを加えると、出力軸の長溝の壁が回転作動子の突起軸に対して横方向の力を加え、回転作動子を公転方向に移動させようとする(後述の図3(c)参照)。このとき、回転作動子の外歯歯車は、噛み合う部分の内歯歯車から反力を受けるが、外歯歯車と内歯歯車との接触面がいわば接線方向であるため、作用する反力は径方向内側に向かい、回転作動子の中心孔に嵌め込まれた偏心体の接触面にほぼ垂直方向の力を及ぼす。その結果、回転作動子と偏心体との間に大きな摩擦力が生じるとともに、編心体が設けられた入力軸が軸受面に押しつけられ、入力軸がロックされてその回転は不能となる。
このように、本発明の双方向クラッチでは、入力軸と出力軸との間に配置された内接歯車機構の作動により、入力軸からの動力を伝達し出力軸からの動力伝達は遮断するという双方向クラッチの機能が達成される。内接歯車機構は部品相互の間に間隙が存在するものではないから、本発明の双方向クラッチでは、原理的に間隙が必須である図7のローラ式の双方向クラッチと異なり、作動中に衝撃音が発生することはない。また、ローラの噛み込みと解除の繰り返しに起因する出力軸の速度変動の発生がないとともに、ローラの噛み込みの解除のために余分なトルクを付与する必要も生じない。
請求項2の発明は、内接歯車機構における内歯歯車と外歯歯車の具体的な構造として、歯数が10以上の内歯歯車と、歯数が内歯歯車の歯数よりも2乃至4だけ少ない外歯歯車とを組み合わせた構成としたものである。
本発明の双方向クラッチの精密に作動させるには、ハウジングに形成した内歯歯車の歯数をなるべく多くし、これと噛み合う外歯歯車の歯数(原理的に内歯歯車よりは少ない)を内歯歯車の歯数に近づけることが望ましく、こうすると、入力軸が停止したときに出力軸がロックされるまでの逆回転量(バックラッシュ)も小さくなる。しかし、外歯歯車と内歯歯車の歯数を近づけると、両方の歯車の中心軸間の距離、つまり回転作動子の偏心量eも小さくなるため、出力軸を回転させるトルクの腕(出力軸の回転中心と回転作動子の突起軸の中心との間の距離)が短くなって、入力軸を回転させても出力軸が円滑に回転しない事態も起こる。請求項2の発明のように、外歯歯車の歯数を内歯歯車の歯数よりも2乃至4だけ少なく設定したときは、内歯歯車の径が小さい小型の双方向クラッチであっても、その出力軸を円滑に回転させながら、双方向クラッチの精密な作動を達成することができる。
本発明の双方向クラッチの精密に作動させるには、ハウジングに形成した内歯歯車の歯数をなるべく多くし、これと噛み合う外歯歯車の歯数(原理的に内歯歯車よりは少ない)を内歯歯車の歯数に近づけることが望ましく、こうすると、入力軸が停止したときに出力軸がロックされるまでの逆回転量(バックラッシュ)も小さくなる。しかし、外歯歯車と内歯歯車の歯数を近づけると、両方の歯車の中心軸間の距離、つまり回転作動子の偏心量eも小さくなるため、出力軸を回転させるトルクの腕(出力軸の回転中心と回転作動子の突起軸の中心との間の距離)が短くなって、入力軸を回転させても出力軸が円滑に回転しない事態も起こる。請求項2の発明のように、外歯歯車の歯数を内歯歯車の歯数よりも2乃至4だけ少なく設定したときは、内歯歯車の径が小さい小型の双方向クラッチであっても、その出力軸を円滑に回転させながら、双方向クラッチの精密な作動を達成することができる。
請求項3の発明は、入力軸の偏心体と回転作動子の中心孔との間、及び入力軸の周囲と出力軸の周囲とに、ボールベアリング等の転がりベアリングを介在させたものであり、これによれば、回転部品の間の摩擦抵抗を減少させてより円滑な作動が可能となることは明らかである。
以下、図面に基づいて、本発明の双方向クラッチについて説明する。まず、比較的小型の装置として好適な第1実施例の双方向クラッチを、図1乃至図3により説明する。
図1の中央の縦断面図に示すように(各部品を単品で示す図2も参照)、第1実施例の双方向クラッチは、中央に置かれた固定のハウジング1の両側に入力軸2及び出力軸3をそれぞれ配した構造であり、図示は省略するが、入力軸2はモーター等の駆動側に連結され、出力軸3は昇降装置等の従動側に連結される。ハウジング1の内部には、入力軸2と出力軸3との間に回転作動子4(分かり易いようにハッチングを施す)が配置してある。ハウジング1の端部には蓋体5が圧入されてシ−ルドされており、蓋体5は、これを貫通する入力軸2の軸受けを兼ねている。
図1の中央の縦断面図に示すように(各部品を単品で示す図2も参照)、第1実施例の双方向クラッチは、中央に置かれた固定のハウジング1の両側に入力軸2及び出力軸3をそれぞれ配した構造であり、図示は省略するが、入力軸2はモーター等の駆動側に連結され、出力軸3は昇降装置等の従動側に連結される。ハウジング1の内部には、入力軸2と出力軸3との間に回転作動子4(分かり易いようにハッチングを施す)が配置してある。ハウジング1の端部には蓋体5が圧入されてシ−ルドされており、蓋体5は、これを貫通する入力軸2の軸受けを兼ねている。
断面矢視A−A図に示すとおり、回転作動子4の外周には外歯歯車EGが形成され、この外歯歯車EGは、ハウジング1の軸方向中央部に形成された内歯歯車IGと噛み合い、両方の歯車で内接歯車機構を構成する。回転作動子4の入力軸2側の面には断面円形の中心孔41が形成されるとともに、出力軸3側の面には断面円形の突起軸42が設けられ、中心孔41及び突起軸42は外歯歯車EGの中心軸と同心になっている。入力軸2には中心孔41に嵌まり込む断面円形の偏心体21が固定されており、偏心体21の中心は、入力軸2の回転中心(内歯歯車IGの中心と同心)とはeだけ偏心している。また、出力軸3には、断面矢視B−B図に示すとおり、径方向に延びる長溝31が形成され、この長溝31に回転作動子4の突起軸42が嵌め込まれている。
次いで、本発明の双方向クラッチの作動について説明する。
入力軸2が回転して偏心体21も一体に回転すると、これが嵌め込まれた回転作動子4の中心は、偏心体21に案内されて偏心量eを半径とする円周上を移動する。それによって、回転作動子4がハウジング1に形成された内歯歯車IGの中心軸の周りを公転すると同時に、内歯歯車IGと噛み合う外歯歯車EGにより、回転作動子4自体は公転の方向と反対方向に自転することとなる。ちなみに、公転の角速度ω1と自転の角速度ω2との関係は、内歯歯車IGの歯数をS、外歯歯車EGの歯数をPとすると、次式で表される。
ω2/ω1=1−S/P=−(S−P)/P (ただし、S>P)
つまり、自転角速度が公転角速度よりも減速されるときは、歯数差(S−P)が小さいほど減速比が大きいが、偏心量eは小さくなる。図1の第1実施例のものでは、内歯歯車IGの歯数は15、外歯歯車EGの歯数は12で、両歯車の歯数差が3である。また、この実施例の各歯車は、サイクロイド歯型曲線を基本とする、歯の強度の高いサイクロイド歯車となっている。
入力軸2が回転して偏心体21も一体に回転すると、これが嵌め込まれた回転作動子4の中心は、偏心体21に案内されて偏心量eを半径とする円周上を移動する。それによって、回転作動子4がハウジング1に形成された内歯歯車IGの中心軸の周りを公転すると同時に、内歯歯車IGと噛み合う外歯歯車EGにより、回転作動子4自体は公転の方向と反対方向に自転することとなる。ちなみに、公転の角速度ω1と自転の角速度ω2との関係は、内歯歯車IGの歯数をS、外歯歯車EGの歯数をPとすると、次式で表される。
ω2/ω1=1−S/P=−(S−P)/P (ただし、S>P)
つまり、自転角速度が公転角速度よりも減速されるときは、歯数差(S−P)が小さいほど減速比が大きいが、偏心量eは小さくなる。図1の第1実施例のものでは、内歯歯車IGの歯数は15、外歯歯車EGの歯数は12で、両歯車の歯数差が3である。また、この実施例の各歯車は、サイクロイド歯型曲線を基本とする、歯の強度の高いサイクロイド歯車となっている。
上記のように、入力軸2が回転し回転作動子4が遊星運動を行うと、回転作動子4の突起軸42の断面の各点も遊星運動を行う。ここで、突起軸42は出力軸3の径方向の長溝31に嵌め込まれているため、出力軸3は、突起軸42の自転の影響を受けることなく、図3(a)に示すように、回転作動子4の公転運動に従って入力軸2と同一回転速度で回転する。第1実施例の双方向クラッチでは内歯歯車IGと外歯歯車EGとの歯数差が3であって、出力軸3を回転させるトルクの腕である偏心量eがある程度の長さ確保されており、ハウジング1の径が小さい小型の双方向クラッチであっても、出力軸3のスムースな回転が可能である。
これに対し、出力軸3に回転トルクを加えると、図3(c)に示すように、出力軸3の長溝31の壁が回転作動子4の突起軸42に対して横方向の力を加える。その力は、回転作動子4を公転方向に移動させようとし、このとき、回転作動子4の外歯歯車EGは、噛み合う部分の内歯歯車IGから反力を受ける。外歯歯車EGと内歯歯車IGとの接触面がいわば接線方向であるため、作用する反力は、回転作動子4の径方向内側に向かい、中心孔41に嵌め込まれた偏心体21の接触面にほぼ垂直方向の力を及ぼす(図3(c)左図の矢印参照)。その結果、回転作動子4と偏心体21との接触面に大きな摩擦力が生じるとともに、偏心体21が設けられた入力軸2が蓋体5の軸受面に押しつけられ、入力軸2がロックされてその回転は不能となる。
図1等の第1実施例について述べたとおり、本発明の双方向クラッチでは、入力軸2と出力軸3との間に内接歯車機構を配置することによって、入力軸2(駆動側)からの動力を出力軸3(従動側)に伝達するとともに、逆方向の動力伝達は遮断するという双方向クラッチの機能が達成されることとなる。内歯歯車IGと外歯歯車EGあるいは偏心体21等の、内接歯車機構を構成する部品相互の間には間隙が存在するものではないので、本発明の双方向クラッチでは作動中に衝撃音が発生することはない。また、ローラを利用する双方向クラッチとは異なり、出力軸の速度変動の発生がなく、ローラの噛み込みの解除のために余分なトルクを付与する必要もない。
図4に示す変形例の双方向クラッチは、第1実施例の双方向クラッチに対して、相対的に回転する部品の間に転がりベアリングを設置したものである。具体的には、出力軸2の偏心体21と回転作動子4の中心孔41との間にボールベアリングB1が設置され、そのため、偏心体21の径は、図1のものより相当小さくなるよう変更されている。また、入力軸2とハウジング1及び出力軸3とハウジング1との間には、ボールベアリングB2、B3がそれぞれ設置されており、これらのボールベアリングにより摩擦損失が減少して、入力軸2から出力軸3への動力伝達が円滑化される。場合によっては、回転作動子4の突起軸42と出力軸3の長溝31との間にもボールベアリングを介在させてもよい。
図5の第2実施例の双方向クラッチ(図1の双方向クラッチの部品等と対応するものには同一の符号を付す)は、歯数が5個の内歯歯車IGと、歯数が4個の外歯歯車EGとを組み合わせて、歯数差が1の内接歯車機構を構成するものである。内歯歯車IGの歯数が5程度の少ない数であれば、歯数差が最少の1であっても偏心量eをある程度の長さ確保されるので、出力軸の回転のスムースな双方向クラッチが実現できる。
また、図6に示す第3実施例の双方向クラッチ(やはり、図1の双方向クラッチの部品等と対応するものには同一の符号を付す)は、歯数が11個の内歯歯車IGと、歯数が10個の外歯歯車EGとを組み合わせ、歯数差が1の内接歯車機構を構成するものである。この実施例の双方向クラッチでは、内歯歯車IGの歯数が10以上で、外歯歯車EGと内歯歯車IGとの歯数差が1であるため、回転作動子4の偏心量eが小さくなるが、入力軸2を停止したときに出力軸3がロックされるまでの逆回転量を小さくして、精密な双方向クラッチを構成することが可能となる。したがって、ハウジング1の径が大きい大型の双方向クラッチなどでは、こうした組み合わせの内接歯車機構を採用してもよい。
以上詳述したように、本発明は、外歯歯車が内歯歯車に接しながら遊星運動を行う内接歯車機構を利用して双方向クラッチを構成し、双方向クラッチの作動に伴う異音等の発生を防止するとともに、出力軸を停止させるときは、そのロック状態を確実に保持するようにしたものである。上記の実施例では、入力軸の偏心体あるいは回転作動子の突起軸等をそれぞれの部品と一体に形成しているが、これらを別体で製作して部品に組み付けるようにしてもよい。また、外歯歯車及び内歯歯車の歯型曲線としてインボリュート歯形、その他特殊形状歯型を採用するなど、上記実施例に対し各種の変形が可能であるのは明らかである。
1 ハウジング
2 入力軸
21 偏心体
3 出力軸
31 長溝
4 回転作動子
41 中心孔
42 突起軸
5 蓋体
EG 外歯歯車
IG 内歯歯車
2 入力軸
21 偏心体
3 出力軸
31 長溝
4 回転作動子
41 中心孔
42 突起軸
5 蓋体
EG 外歯歯車
IG 内歯歯車
Claims (3)
- 回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記ハウジングに設けられた内歯歯車と、前記内歯歯車の内側に偏心して配置され前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車が設けられた回転作動子とを有する内接歯車機構を備え、
前記回転作動子には、入力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の断面円形の中心孔が形成されるとともに、出力軸側の面に前記外歯歯車の中心軸と同心の突起軸が形成されており、
前記入力軸及び前記出力軸が前記内歯歯車と同心に配置され、前記入力軸には前記回転作動子の中心孔に嵌め込まれる偏心体が設けられ、かつ、前記出力軸には前記回転作動子の突起軸が嵌め込まれる径方向の長溝が形成されていることを特徴とする双方向クラッチ。 - 前記内歯歯車の歯数が10以上であり、前記外歯歯車の歯数が前記内歯歯車の歯数よりも2乃至4だけ少ない請求項1に記載の双方向クラッチ。
- 前記入力軸の偏心体と前記回転作動子の中心孔との間、及び前記入力軸の周囲と前記出力軸の周囲とには、転がりベアリングが介在されている請求項1又は請求項2に記載の双方向クラッチ。
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JP2012108233A JP2013234729A (ja) | 2012-05-10 | 2012-05-10 | 内接歯車機構を備えた双方向クラッチ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2012
- 2012-05-10 JP JP2012108233A patent/JP2013234729A/ja active Pending
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