JP5468099B2 - 双方向クラッチ - Google Patents
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Description
図6の昇降装置は、上下に配置したプーリP1、P2の間にベルトBを掛け渡し、ベルトBに移送する物品Wを固着した装置であって、上方のプーリP1には、これを回転駆動する正・逆回転可能なモーターMが、双方向クラッチDCを介して連結されている。双方向クラッチDCは、モーターMに連なる入力軸IS、プーリP1に連なる出力軸OS及び固定のハウジングHGを有している。
これに対し、出力軸OSが回転したときは、(b)に示されるように、ローラRがV字状凹所の斜面に押し上げられて外方に移動し、ハウジングHGと出力軸OSの突起部との間に挟み込まれる。これにより、出力軸OSがロックされてその位置で停止し、入力軸ISに回転が伝達されることはない。図6の昇降装置では、モーターMによる駆動を停止しても、物品Wが自重により落下するのを自動的に阻止することができる。このような双方向クラッチは、本出願人の先行する特許出願に係る特許第4850653号公報に開示されている。
まず、図6の双方向クラッチでは、出力軸の回転数は入力軸の回転数と等しく、別途変速機を組み合わせない限り、変速を行うことが不可能であり、トルクを増減することもできない。そのため、出力軸に作用する負荷トルクが大きいときは、それに見合うトルクを発生する大型のモーターを駆動源として用意する必要がある。
そして、図6の双方向クラッチでは、入力軸ISの扇形部と出力軸OSの突起部との間などに間隙が存在し、ローラRが出力軸OSの突起部のV字状凹所内を往復動するので、作動中に細かな振動や衝撃音が発生する。
「回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記入力軸には太陽歯車、前記ハウジングには内歯歯車からなるリング歯車が設けられ、かつ、前記太陽歯車及び前記リング歯車に噛み合う複数の遊星歯車が設けられており、さらに、
前記遊星歯車の各々には、遊星歯車の中心軸と同心に軸方向に突出する歯車延長軸が設けられ、前記出力軸には、前記歯車延長軸の各々が挿入される孔部が設けられるとともに、前記歯車延長軸の断面と前記孔部の断面とには同一形状の輪郭線部が形成されており、
前記入力軸が回転したときは、前記歯車延長軸が前記孔部内を自転しながら前記出力軸を回転させ、かつ、前記出力軸が回転したときは、前記孔部と前記歯車延長軸の前記輪郭線部が重なって当接した状態で、前記歯車延長軸の自転が阻止される」
ことを特徴とする双方向クラッチとなっている。
「回転不能のハウジング、中間部材、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記入力軸には第1太陽歯車、前記ハウジングには内歯歯車からなる第1リング歯車が設けられ、かつ、前記第1太陽歯車及び前記第1リング歯車に噛み合う複数の第1遊星歯車が設けられ、
前記第1遊星歯車の各々には、第1遊星歯車の中心軸と同心に軸方向に突出する歯車延長軸が設けられ、前記中間部材には、前記歯車延長軸の各々が挿入される孔部が設けられるとともに、前記歯車延長軸の断面と前記孔部の断面とには同一形状の輪郭線部が形成されており、さらに、
前記中間部材には、前記第1遊星歯車と反対側に置かれた第2遊星歯車が軸支され、前記第2遊星歯車は、前記ハウジングに設けられた内歯歯車からなる第2リング歯車と、前記出力軸に設けられた第2太陽歯車とに噛み合っており、
前記入力軸が回転したときは、前記歯車延長軸が前記孔部内を自転しながら前記中間部材を回転させて前記出力軸を回転させ、かつ、前記出力軸が回転したときは、前記中間部材の前記孔部と前記歯車延長軸の前記輪郭線部が重なって当接した状態で、前記歯車延長軸の自転が阻止されて前記入力軸の回転が阻止される」
ことを特徴とする双方向クラッチとすることができる。
本発明の双方向クラッチでは、複数の遊星歯車の各々に、遊星歯車の中心軸と同心に軸方向に突出する歯車延長軸を設け、かつ、出力軸に、歯車延長軸の各々が挿入される孔部を形成する。これら歯車延長軸と孔部とは、両者の断面に同一形状の輪郭線部が存在するように形成される。例えば、請求項2の発明では、遊星歯車の歯車延長軸を正多角形断面とするとともに、孔部の断面を、歯車延長軸断面の正多角形よりも辺の数の少ない正多角形断面とし、両者の断面に直線の輪郭線部が共通に存在する構成を採用している。この構成では、孔部の正多角形断面の1辺の長さは、歯車延長軸のそれよりも長いこととなる。
入力軸回転速度/出力軸回転速度=1+(リング歯車の歯数/太陽歯車の歯数)
によって決定され、リング歯車と太陽歯車の歯数(又は、ピッチ円の径)を変えることにより、入・出力軸間の変速(減速)比及びトルク比を任意に選定できる。
請求項4の発明のように、ハウジングの内側に小径部と大径部とを設け、小径部にリング歯車を設けるとともに、大径部に前記フランジ部を収容する構造とすると、太陽歯車や遊星歯車を噛み合わせる遊星ギヤ機構部分の組み付けが終了してから、出力軸部分の取り付け作業を行うことができ、双方向クラッチ製造作業が容易化される。そして、請求項5の発明のように、フランジ部の中央に中心孔を形成して入力軸を軸受すると、入力軸と出力軸を安定して支持し回転させることが可能であり、ことに、太陽歯車や遊星歯車の軸方向長さが短い場合に有効である。
請求項6の発明において、入力軸から「中間部材」までの、前段部分の動力伝達は、請求項1の発明の入力軸から出力軸への動力伝達と同一であり、請求項6の中間部材が請求項1の出力軸に相当する。請求項6の発明は、後段部分として、遊星歯車担持用のキャリアである中間部材を駆動側とし、第2太陽歯車を従動側(出力軸)とする別の遊星ギヤ式変速装置を組み合わせた双方向クラッチとなっている。前段部分と後段部分とはいわば入出力が逆の遊星ギヤ式変速装置であって、第2太陽歯車を設けた出力軸は、前述の変速比の式に従って中間部材よりも増速される。そして、出力軸の第2太陽歯車の歯数を入力軸の第1太陽歯車の歯数より小さく、かつ、第2リング歯車の歯数を第1リング歯車の歯数より大きくしたときは、出力軸の回転速度は入力軸よりも増速されることとなる。なお、出力軸を回転した場合は、前段部分で中間部材がロックされるため、双方向クラッチの機能が失われることはない。
図1に示すように、第1実施例の双方向クラッチは、太陽歯車SGを設けた入力軸1、遊星歯車PGを設けた3個の遊星歯車体2、及びリング歯車RGが設けられ回転不能に固定されたハウジング3を備え、断面矢視A−A図に示すとおり、各部材の歯車は互いに噛み合って遊星ギヤ機構を構成している。各々の歯車は、各部材に一体的に形成されているが、歯車部分を別体として製造し各部材に嵌め込んでもよい。遊星歯車体2を挟んで入力軸1の反対側には、出力軸4が置かれている。出力軸4にはフランジ部41が一体に形成され、ハウジング3の内側には、リング歯車RGが設けられる小径部とフランジ部41が収容される大径部とが形成されている。出力軸4とハウジング3との間は、蓋体5が圧入されてシ−ルドされる。
この実施例においては、リング歯車RGの歯数が太陽歯車SGの歯数の2倍に設定されている。また、孔部42の断面は、1辺の長さが遊星歯車PGの歯元円の径に等しい正4角形であり、これに挿入される歯車延長軸21の断面は正8角形であって、孔部42内で自転が可能なように、孔部42との間に僅かな間隙を有している。歯車延長軸21の断面の正8角形には、孔部42の内面を滑らかに摺動するよう、角部に丸みが付されている。なお、この実施例では、歯車延長軸21と遊星歯車PGとが一体となり遊星歯車体2を構成しているが、これらを別体として形成し結合してもよいのは明らかである。
そして、位置決めのためモーターを停止すると、物品は自動的にその位置を保持することとなる。この位置の保持は、孔部の正多角形断面の直線的な辺と歯車延長軸のそれとが全体的に当接することによるものであって、図6の双方向クラッチのような部材同士の摩擦力に基づくものでないため、保持力の大きい確実な停止を実現できる。
図4の変形例では、ハウジング3の大径部に収容される出力軸4のフランジ部41は、その前端面が、ハウジング3の段付き部の端面に突き当てられてスラスト方向の軸受けが行われるとともに、フランジ部41の外周面が、ハウジング3の大径部の内周面に接触してラジアル方向の軸受けが行われる。そのため、出力軸4は、蓋体5の位置とフランジ部41の位置とでラジアル方向に軸受けされ、回転軸の振れや傾きが防止される。
図5の第2実施例の双方向クラッチは、第1実施例と同様な構造を備えた、図5上図の断面矢視A−Aから断面矢視B−Bに至る前段部分と、別の遊星ギヤ式変速装置を構成する断面矢視B−Bから断面矢視C−Cに至る後段部分とを組み合わせたものである。前段部分と後段部分の遊星ギヤ機構は、同一のギヤを対称的に配置した機構であり、図5の双方向クラッチでは、出力軸を入力軸と等速で回転させる。そして、双方向クラッチとしての入力軸1と出力軸4とは、それぞれの太陽歯車SG1、SG2と一体化されたボス部であって、ここに、駆動源のモーターや駆動負荷のプーリ等に連なる連結軸が別途相対回転不能に固着される(断面矢視A−A図、C−C図の太陽歯車参照)。
これに対し、出力軸4に回転トルクを加えた場合には、第1実施例の双方向クラッチで説明したように、前段部分で中間部材MDがロックされる。したがって、第2実施例のものでも入力軸が回転することはなく、入力軸と出力軸の回転速度が等速の双方向クラッチを構成することができる。
つまり、第2実施例の双方向クラッチでは、後段部分の遊星ギヤ機構の設定を変更することにより、変速比を自由に選定し、出力軸を入力軸と等速あるいは増速とすることが可能となる。そのため、第2実施例の双方向クラッチは、迅速な物品の移動が要求される昇降装置に好適なものである。
2 遊星歯車体
21、21´ 歯車延長軸
3 ハウジング
4 出力軸
41、41´ フランジ部
42、42´、EH 孔部(遊星歯車と同心)
SG、SG1、SG2 太陽歯車
PG、PG1、PG2 遊星歯車
RG、RG1、RG2 リング歯車
MD 中間部材
Claims (7)
- 回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記入力軸には太陽歯車、前記ハウジングには内歯歯車からなるリング歯車が設けられ、かつ、前記太陽歯車及び前記リング歯車に噛み合う複数の遊星歯車が設けられており、さらに、
前記遊星歯車の各々には、遊星歯車の中心軸と同心に軸方向に突出する歯車延長軸が設けられ、前記出力軸には、前記歯車延長軸の各々が挿入される孔部が設けられるとともに、前記歯車延長軸の断面と前記孔部の断面とには同一形状の輪郭線部が形成されており、
前記入力軸が回転したときは、前記歯車延長軸が前記孔部内を自転しながら前記出力軸を回転させ、かつ、前記出力軸が回転したときは、前記孔部と前記歯車延長軸の前記輪郭線部が重なって当接した状態で、前記歯車延長軸の自転が阻止されることを特徴とする双方向クラッチ。 - 前記歯車延長軸の断面が正多角形断面であり、前記孔部の断面が、前記歯車延長軸断面の正多角形よりも辺の数の少ない正多角形断面であって、前記輪郭線部が直線となっている請求項1に記載の双方向クラッチ。
- 前記出力軸には、フランジ部が設けられており、前記孔部が前記フランジ部に形成される請求項1又は請求項2に記載の双方向クラッチ。
- 前記ハウジングの内側には、小径部と大径部とが形成されており、前記小径部に前記リング歯車が設けられ、前記大径部に前記フランジ部が収容される請求項3に記載の双方向クラッチ。
- 前記フランジ部の中央に中心孔を形成し、ここに前記入力軸を軸受する請求項3又は請求項4に記載の双方向クラッチ。
- 回転不能のハウジング、中間部材、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸の回転により前記出力軸が回転するとともに、前記出力軸の回転による前記入力軸の回転は阻止される双方向クラッチであって、
前記入力軸には第1太陽歯車、前記ハウジングには内歯歯車からなる第1リング歯車が設けられ、かつ、前記第1太陽歯車及び前記第1リング歯車に噛み合う複数の第1遊星歯車が設けられ、
前記第1遊星歯車の各々には、第1遊星歯車の中心軸と同心に軸方向に突出する歯車延長軸が設けられ、前記中間部材には、前記歯車延長軸の各々が挿入される孔部が設けられるとともに、前記歯車延長軸の断面と前記孔部の断面とには同一形状の輪郭線部が形成されており、さらに、
前記中間部材には、前記第1遊星歯車と反対側に置かれた第2遊星歯車が軸支され、前記第2遊星歯車は、前記ハウジングに設けられた内歯歯車からなる第2リング歯車と、前記出力軸に設けられた第2太陽歯車とに噛み合っており、
前記入力軸が回転したときは、前記歯車延長軸が前記孔部内を自転しながら前記中間部材を回転させて前記出力軸を回転させ、かつ、前記出力軸が回転したときは、前記中間部材の前記孔部と前記歯車延長軸の前記輪郭線部が重なって当接した状態で、前記歯車延長軸の自転が阻止されて前記入力軸の回転が阻止されることを特徴とする双方向クラッチ。 - 前記第1太陽歯車と前記第2太陽歯車とが同一径及び同一歯数を有するとともに、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車とが同一径及び同一歯数を有し、かつ、前記第1リング歯車と前記第2リング歯車とが共通の内歯歯車として構成された請求項6に記載の双方向クラッチ。
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