JP2016161036A - 遊星歯車機構を備えたロックタイプ双方向クラッチ - Google Patents

遊星歯車機構を備えたロックタイプ双方向クラッチ Download PDF

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Abstract

【課題】入力側からの回転を伝達し、出力側からの回転伝達は阻止するロックタイプ双方向クラッチにおいて、作動の円滑化を図り、異音等の発生を防止する。【解決手段】入力軸2と出力軸3を備えたハウジング1の内部に、固定太陽歯車SGfを有する第1遊星歯車機構M1と回転太陽歯車SGrを有する第2遊星歯車機構M2とを組み合わせて設置する。そして、両方の太陽歯車に歯数差を設けるとともに、両方の太陽歯車を、第1遊星歯車機構M1及び第2遊星歯車機構M2に共通の遊星歯車に噛み合わせ、また、第1遊星歯車機構のリング歯車RGを入力軸2に連結し、回転太陽歯車SGrを出力軸3に連結する。入力軸2からの正・逆方向の回転は、減速されて出力軸3に伝達されるが、出力軸3側から駆動したときは、両方の太陽歯車の歯数差により、出力軸3がロックされて動力伝達が阻止される。【選択図】 図1

Description

本発明は、入力軸と出力軸との間の動力伝達状態を変更するクラッチ装置、特に、入力軸(駆動側)からの正・逆回転の動力を伝達するとともに、出力軸(従動側)からの動力伝達は、出力軸を回転不能として遮断するロックタイプ双方向クラッチに関する。
モーターなどの駆動源から作業機器等を駆動する動力伝達系、例えば、モーターにより物品を上下に移送する昇降装置では、物品が所定の位置に達したとき、モーターを停止すると物品が自動的にその位置を保持する作動が求められる場合がある。そのため、入力軸と出力軸を備えたロックタイプの双方向クラッチを用いて、入力軸を正・逆回転可能なモーターに連結するとともに、出力軸の回転により物品を昇降させる装置が知られている。この装置の双方向クラッチでは、モーターにより入力軸を正・逆回転したときは、出力軸が連動して正・逆回転し物品を昇降させる一方、出力軸を正・逆回転しようとすると、出力軸がロックされた状態となって物品の落下を防止する。
ロックタイプの双方向クラッチを利用する昇降装置の概要と、双方向クラッチの構造の一例とを図5、図6により説明する。図5は、ベルト及びプーリによって物品を上下する昇降装置と、その駆動装置に備えられる双方向クラッチの断面A−A構造を表すものであり、図6(a)は、出力軸が入力軸と連動して物品を昇降する状態の断面A−Aを、図6(b)は、出力軸がロックされて物品の落下を阻止する状態の断面A−Aを示す。
図5の昇降装置は、上下に配置したプーリP1、P2の間にベルトBを掛け渡し、ベルトBに移送する物品Wを固着した装置であって、上方のプーリP1には、これを回転駆動する正・逆回転可能なモーターMが、双方向クラッチDCを介して連結されている。双方向クラッチDCは、モーターMに連なる入力軸IS、プーリP1に連なる出力軸OS及び固定のハウジングHGを有している。断面矢視A−A図に示すように、双方向クラッチDCのハウジングHG内では、入力軸ISが複数の扇形部に分割され、扇形部の内側に出力軸OSが嵌め込まれる。出力軸OSには、入力軸ISの隣接する扇形部の間に入り込む突起部が設けてあり、この突起部の先端に形成したV字状凹所とハウジングHGとの間には、ローラRが介在されている。
図6(a)に示すとおり、モーターMにより入力軸ISが回転するときは、入力軸ISの扇形部の側面と出力軸OSの突起部の側面とが当接し、出力軸OSは、入力軸ISに押される形で同一方向に同一速度で回転する。入力軸ISが逆方向に回転するときも同様であって、図5の昇降装置において、モーターMを正・逆回転すると、ベルトBに固着した物品Wを上昇又は下降させることができる。
これに対し、出力軸OSが回転したときは、図6(b)に示すように、ローラRがV字状凹所の斜面に押し上げられて外方に移動し、ハウジングHGと出力軸OSの突起部との間に挟み込まれる。これにより、出力軸OSがロックされてその位置で停止し、入力軸ISに回転が伝達されることはない。つまり、図5の昇降装置では、モーターMによる駆動を停止しても、物品Wが自重により落下するのを自動的に阻止することができる。このようなロックタイプの双方向クラッチは、本出願人の先行出願に係る特許第4850653号公報に開示されている。
ロックタイプの双方向クラッチは、例えば、複写機のフィニッシャーにおいて、用紙を載せた用紙テーブルを移送する昇降装置、あるいは、建築物の窓のブラインドを昇降する昇降装置に適用することができる。そして、これを利用すると簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、例えば、ブレーキ機構を設けて電気的に制御する場合のような、電力等の使用が不必要となるとともに、出力軸側から不測の逆入力があった場合に、駆動源のモーターを保護することも可能となる。
特許第4850653号公報
上述のとおり、図5のロックタイプ双方向クラッチは、コンパクトであって確実に動力伝達を制御可能な機械部品であるけれども、用途によっては改良すべき余地が残されている。本発明は、双方向クラッチの以下に述べるような課題を解決するものである。
図5の構造の双方向クラッチでは、その機能を達成するには、入力軸ISの扇形部と出力軸OSの突起部との間などに間隙を設ける必要があり、作動中に衝撃音が発生する。また、双方向クラッチを図5の昇降装置に適用した場合、モーターMを正転させて物品Wを上昇するときは問題ないが、モーターMを逆転させ物品Wを下降するときに、物品Wの重力に起因して出力軸OSの速度が細かな変動を繰り返し、振動や異音を生じることがある。これは、次の理由による。
物品Wを下降させるためモーターMを逆回転させた場合に、物品Wに作用する重力により、出力軸OSが入力軸ISよりも速く回転(オーバーラン)することがあり、オーバーランが起こると、図6(b)の状態となってローラRとハウジングHGとが噛み合い、出力軸OSがロックする。このロック状態は、入力軸ISの回転でローラRが押されたときに解除されるが、噛み込みと解除の繰り返しは、出力軸OSの速度に細かな変動を与えることとなる。なお、ロック状態の解除には、ローラに働く摩擦力に打ち勝つトルク(モーメント)を付与する必要があるが、この点は、停止状態にある物品Wを上昇させるときも同じであって、モーターMには、物品Wを上昇させる負荷トルクに加えて噛み込み解除のためのトルクも要求される。
さらに、図5のロックタイプの双方向クラッチでは、出力軸OSの回転数は常に入力軸ISの回転数と等しく、出力軸OSの回転方向も入力軸ISの回転方向と等しい。双方向クラッチ自体では、回転方向や回転速度を変更する変速作動が不可能であり、そのため、入出力軸間でトルクを増減することもできず、出力軸OSに作用する負荷トルクが大きいときは、それに見合うだけのトルクを発生する大型のモーターを駆動源として用意する必要がある。
上記の課題に鑑み、本発明は、噛み込み用ローラを用いることなく、遊星歯車機構、つまり、太陽歯車とリング歯車との間にキャリアに軸支される遊星歯車を配した歯車機構、を組み合わせてロックタイプ双方向クラッチを構成し、作動に伴う異音等の発生を防止するとともに、入出力軸間の変速作動を可能とし、かつ、出力軸を停止させるときはロック状態を確実に保持するようにしたものである。すなわち、本発明は、
「回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸を回転不能として遮断されるロックタイプ双方向クラッチであって、
前記入力軸に連結されたリング歯車、前記リング歯車と噛み合いキャリアに軸支された遊星歯車、及び、前記遊星歯車と噛み合う回転不能の固定太陽歯車により構成される第1遊星歯車機構と、
前記リング歯車、前記遊星歯車、及び前記遊星歯車と噛み合うとともに前記出力軸に連結された回転太陽歯車により構成される第2遊星歯車機構とを備え、かつ、
前記固定太陽歯車と前記回転太陽歯車との間には歯数差が設けられており、
前記入力軸から前記出力軸に減速して回転が伝達される」
ことを特徴とするロックタイプ双方向クラッチとなっている。
本発明のロックタイプ双方向クラッチは、回転不能のハウジングと、その中心に設置される入力軸及び出力軸とを有し、入力軸と出力軸との間に、太陽歯車、リング歯車及び遊星歯車からなる2組の遊星歯車機構が、軸方向に並列して配置されている。2組の遊星歯車機構において、遊星歯車及びそれを軸支するキャリアは共通のものとなっており、入力軸は第1遊星歯車機構のリング歯車に連結され、出力軸は第2遊星歯車機構の回転太陽歯車に連結される。入力軸の連結されるリング歯車も2組の遊星歯車機構で共通のものであるが、第1遊星歯車機構では、太陽歯車が回転不能の固定太陽歯車となっている。
第1遊星歯車機構の固定太陽歯車と第2遊星歯車機構の回転太陽歯車との間には歯数差が設定されている。歯数の異なる固定太陽歯車と回転太陽歯車とが共通の遊星歯車と噛み合う関係上、両方の歯車に標準歯車を用いることはできず、少なくとも一方の歯車には転位歯車等を使用することとなる。
入力軸に連結されたリング歯車が回転すると、固定太陽歯車を有する第1遊星歯車機構によりキャリアが減速して回転され、第2遊星歯車機構においては、入力軸に連結されたリング歯車と両方の遊星歯車機構に共通のキャリアの回転とに応じて、回転太陽歯車がさらに減速されて回転する。つまり、本発明のロックタイプ双方向クラッチにおいては、入力軸から出力軸に動力伝達を行うときは、両方の遊星歯車機構により減速して回転が伝達され、その変速比は、以下のように計算することができる。
一般に遊星歯車機構においては、太陽歯車の回転数nSG、リング歯車の回転数nRG及びキャリアの回転数nCRの間に次の関係がある。
nRG+γ・nSG=(1+γ)nCR
γ=ZSG/ZRG ZSG:太陽歯車の歯数、ZRG:リング歯車の歯数
本発明の場合、変速比(減速比)は、入力軸のリング歯車の回転数nRGと第2遊星歯車機構の回転太陽歯車の回転数nSGとの比である。第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構は共通のキャリアを備えており、その回転数nCRは、固定太陽歯車を備えた第1遊星歯車機構により決定される。第2遊星歯車機構における回転太陽歯車の回転数nSGは、リング歯車の回転数nRGとキャリアの回転数nCRから決定され、結局、本発明において変速比は次式で表される。
nSG/nRG=(γ2−γ1)/(1+γ1)γ2 (式1)
γ1=ZSGf/ZRG ZSGf:第1遊星歯車機構の固定太陽歯車の歯数
γ2=ZSG/ZRG ZSG :第2遊星歯車機構の回転太陽歯車の歯数
これに対し、出力軸から入力軸へ回転を伝達しようとすると、減速終端となる回転太陽歯車から第2遊星歯車機構及び第1遊星歯車機構を経由して入力軸へ動力が伝達されることとなる。しかし、第2遊星歯車機構の回転太陽歯車と第1遊星歯車機構の固定太陽歯車には歯数差が設けてあり、これらの太陽歯車が同一の遊星歯車に噛み合っているため、回転太陽歯車から遊星歯車への伝達の際にこじられるような力が作用し、出力軸は、実質的にロックされた状態となり回転が不能となる。また、出力軸から入力軸への回転の伝達は入力軸を増速して行われるが、入力軸に抵抗トルクが存在すると、それに変速比を乗じたトルクが出力軸に作用するので、この点からも実質的にロックされる結果となる。
このように、本発明のロックタイプ双方向クラッチでは、遊星歯車機構を利用して、入力軸から出力軸へ回転動力を伝達するとともに反対向きへの伝達は遮断する。出力軸からの回転伝達の遮断は、遊星歯車機構をロック状態とすることにより行われるから、出力軸の停止の保持が摩擦力により制限されることはない。さらに、遊星歯車機構のロック状態は、出力軸側から駆動しようとすると直ちに生じるので、図5の双方向クラッチとは異なり、作動中に衝撃音が発生することはなく、ローラの噛み込みと解除の繰り返しに起因する出力軸の速度変動の発生がない。
また、本発明の双方向クラッチでは、入力軸から出力軸を駆動する際には、式1におけるγ1、γ2の値、すなわち、両方の遊星歯車機構太陽歯車の歯数、を変更することにより変速比を自由に設定することができる。γ1>γ2とすると、回転方向を逆転することが可能である。
本発明のロックタイプ双方向クラッチの実施例を示す図である。 図1の双方向クラッチの作動を説明する図である。 図1の双方向クラッチを構成する部品の単品分解図である。 本発明の双方向クラッチの別実施例を示す図である。 従来のロックタイプ双方向クラッチの一例を示す図である。 図5のロックタイプ双方向クラッチの作動を説明する図である。
以下、図面に基づき、本発明のロックタイプ双方向クラッチについて説明する。まず、本発明の一実施例の双方向クラッチの全体的な構造を図1に示し、その作動の説明図を図2に示す。図3は、図1の実施例の双方向クラッチの部品を単体で示すものである。
図1の中央の縦断面図に示すように(各部品を単品で示す図3も参照)、この実施例の双方向クラッチは、固定のハウジング1の中心部に入力軸2及び出力軸3をそれぞれ配置した構造であり、図示は省略するが、入力軸2はモーター等の駆動側に接続され(入力軸2の中央の孔は断面がD字状であり、ここにモーター等の駆動軸が相対回転不能に挿入される)、出力軸3は昇降装置等の従動側に接続される。ハウジング1の端部には、その一部をなす蓋体1Cが圧入されてシ−ルドされており、蓋体1Cは、これを貫通する入力軸2の軸受けを兼ねている。
ハウジング1の内部には、リング歯車、遊星歯車及び太陽歯車により構成される第1遊星歯車機構M1(断面A−A)と第2遊星歯車機構M2(断面B−B)とが、軸方向に並列して配置される。
入力軸2は、端板21と円周壁22とを備えるカップ状の回転部材であり(図3参照)、円周壁22の内周面にはリング歯車RGが形成されている。リング歯車RGは、軸方向に比較的長い単一の内歯歯車であり、第1、第2遊星歯車機構に共通(同一歯数)のリング歯車となっている。断面A−A、断面B−Bに示すとおり、リング歯車RGの内方には、これと噛み合う3個の遊星歯車PGが配置され、遊星歯車PGも第1、第2遊星歯車機構に共通の遊星歯車となっている。遊星歯車PGは、円板状のキャリア4の一方側の面に立設した3本の支持軸41に回転可能に嵌め込まれる。
断面A−Aに示す第1遊星歯車機構M1では、遊星歯車PGと噛み合う太陽歯車は、ハウジング1の端板11に突設したボス部の外周に形成される固定太陽歯車SGfである。これに対し、断面B−Bに示す第2遊星歯車機構M2では、共通の遊星歯車PGと噛み合う太陽歯車が、出力軸3の先端に設けた回転可能の回転太陽歯車SGrとなっており、出力軸3は、ハウジング1のボス部を貫通し、中央の縦断面図において左側に延びている。固定太陽歯車SGfと回転太陽歯車SGrとは軸方向に並設されていて、ともに遊星歯車PGと噛み合う。両方の太陽歯車の間には歯数差が設定してあり、この実施例では、固定太陽歯車SGfの歯数が9、回転太陽歯車SGrの歯数が12である。
図1の実施例のロックタイプ双方向クラッチの作動について、図2により説明する。
図2の上方の断面A−Aのように、入力軸2に形成したリング歯車RGに時計方向(中央の縦断面図の右方から見て)の回転トルクを付与したときは、リング歯車RGは、これと噛み合う遊星歯車PGに同一方向に自転するような力を作用させる。遊星歯車PGには並設された2個の太陽歯車に噛み合っているが、第1遊星歯車機構M1の固定太陽歯車SGfは回転不能であるため、遊星歯車PGは、固定太陽歯車SGfの周りを自転し、キャリア4をリング歯車RGと同一方向に回転させる。
遊星歯車PGは、第2遊星歯車機構M2の回転可能な回転太陽歯車SGrとも噛み合っており、両方の太陽歯車の間には歯数差が存在する。そのため、第2遊星歯車機構M2では、リング歯車RG、キャリア4及びの回転太陽歯車SGrの各要素が回転する遊星歯車機構を構成し、出力軸3に連なる回転太陽歯車SGrが、入力軸2に形成したリング歯車RGよりも減速して回転することとなる(上方の断面B−B)。
この実施例では、各歯車の歯数は、リング歯車RGが36、固定太陽歯車SGfが9、回転太陽歯車SGrが12に設定されている。したがって、上述の(式1)におけるγ1=1/4、γ2=1/3であり、回転太陽歯車SGrとリング歯車RGとの回転数の比は1/5となる。つまり、この実施例のロックタイプ双方向クラッチにおいては、入力軸2の回転方向にかかわらず、出力軸3が入力軸2の1/5の回転数に減速されて同一方向に回転し、出力軸3のトルクは入力軸2の5倍となる。
一方、出力軸3から入力軸2へ回転を伝達する場合には、図2の下方の断面B−Bのように、第2遊星歯車機構M2の回転太陽歯車SGrに回転トルクを与えて、これと噛み合う遊星歯車PGを回転させることとなる。ここで、遊星歯車PGは、歯数の異なる固定太陽歯車SGfと同時に噛み合っており、両方の太陽歯車では、一方に転位歯車が採用されるなど歯の形状も異なっているので、回転太陽歯車SGrから遊星歯車PGへのトルク伝達の際に、歯車にこじられるような力が作用する。そのため、出力軸3はロックされた状態となり、実質的に回転が不能となる。また、この実施例では、入力軸2に抵抗トルクが存在すると、出力軸3に要する回転トルクは抵抗トルクの5倍となるので、この点からも出力軸3が実質的にロックされることとなる。
このように、本発明のロックタイプ双方向クラッチにおいては、入力軸2のリング歯車RG側からの回転は、減速されて出力軸3側に伝達されるが、出力軸3の回転太陽歯車SGr側からの逆の動力伝達は、出力軸3が回転不能となって遮断される。
ここで、図1の実施例のロックタイプ双方向クラッチにおけるハウジングや入出力軸等の構造について、図3の単品分解図により説明する。
図3の最上部に示されるとおり、ハウジング1は、端板11と円周壁12とを備えるカップ状の固定部材であり、端板11の反対側には蓋体1C(図1参照)が圧入されて、内部が封鎖される。端板11の内側の中央部にはボス部が突設してあり、その外周には、第1遊星歯車機構M1の固定太陽歯車SGfが形成されるとともに、ボス部中心には、出力軸3が貫通する貫通孔が形成される。出力軸3の端部には第2遊星歯車機構M2の回転太陽歯車SGrが設けられており、出力軸3が貫通孔に挿入されると、歯数の異なる固定太陽歯車SGfと回転太陽歯車SGrとが軸方向に並列するようになる。
ハウジング等をこうした構造とすることにより、本発明のロックタイプ双方向クラッチの全体的な構造を簡素化し、小型でコンパクトな双方向クラッチを得ることができると同時に、出力軸の回転太陽歯車とハウジングの固定太陽歯車とを同一の遊星歯車と噛み合わせることが容易となる。
図3の中段に示す入力軸2は、端板21と円周壁22とを備えるカップ状の回転部材であって、円周壁22の内周面には第1、第2遊星歯車機構に共通のリング歯車RGが形成されている。入力軸2は、ハウジング1の内部に回転可能に設置され、その出力軸側先端がハウジング1の端板11に当接するとともに、端板21の背面側が蓋体1Cに当接している(図1参照)。そのため、入力軸2はハウジング1の内部で安定的に回転し、回転軸の傾きなどに起因する振動、騒音等が防止される。入力軸2の端板21の中央部には、ボス部23が突設されている。
入力軸2の円周壁22の内部には、リング歯車RG及び2個の太陽歯車と噛み合う遊星歯車PGと、遊星歯車PGを軸支するキャリア4とが収容される。入力軸2をこのような構造にすると、共通のリング歯車や共通の遊星歯車を配置する本発明の双方向クラッチの全体的な構造を、コンパクトなものとすることができる。
そして、円板状のキャリア4の中央には中央孔42が設けてあり、この中央孔42が、入力軸2のボス部23に嵌め込まれて、キャリア4の背面側が入力軸2の端板21と当接する(図1参照)。これにより、キャリア4は、スラスト方向及びラジアル方向に入力軸2に支持される形となり、キャリア4や遊星歯車PGの安定した回転が可能となる。
次いで、本発明のロックタイプ双方向クラッチの別実施例について、図4により説明する。別実施例の双方向クラッチは、図1の実施例の双方向クラッチの前段に増速装置を設置したものであり、増速装置には、遊星歯車機構を備えた増速機が採用されている。図4では、図1の実施例の部品に相当するものについては同一の符号を付してある。
図4の縦断面図、断面A−A及び断面B−Bに示すように、別実施例の双方向クラッチは、図1の実施例のものと同じく、第1遊星歯車機構M1(断面A−A)と第2遊星歯車機構M2(断面B−B)とを組み合わせた本発明の基本構造を備えている。入力軸2がカップ状部材であって、その円周壁に両方の遊星歯車機構に共通するリング歯車RGが形成されていること、第1遊星歯車機構M1の固定太陽歯車SGfと第2遊星歯車機構M2の回転太陽歯車SGrとが、共通の遊星歯車PGと噛み合っていること、さらには、両方の太陽歯車に歯数差が設けられ、回転太陽歯車SGrが出力軸3に連結されていることも図1の実施例の双方向クラッチと同様である。
図4の別実施例と図1の実施例との相違点は、別実施例の双方向クラッチが、入力軸2の前段(縦断面図では入力軸2の右側)に増速装置である増速遊星歯車機構Mf(断面C−C)を備えていることにある。増速遊星歯車機構Mfは、その入力側となる前段入力軸2fが増速遊星歯車機構Mfのキャリアに連結されるとともに、出力側は、入力軸2の外周に形成された太陽歯車SGiとなっている。増速遊星歯車機構Mfのリング歯車RGfは、固定のハウジング1の内周面に形成された内歯歯車であり、増速遊星歯車機構Mfの遊星歯車PGfがリング歯車RGfと太陽歯車SGiとの間に介在される。ここで、図4の別実施例では、増速装置として増速遊星歯車機構Mfが用いられており、双方向クラッチ全体の入力軸となる前段入力軸2fが出力軸3と同一軸線上に配置されるので、双方向クラッチを動力伝達経路に設置する際の利便性が向上する。
この別実施例においては、固定のリング歯車RGfの歯数が36、太陽歯車SGiの歯数が12に設定されている。増速遊星歯車機構Mfの変速比、つまり、出力側の太陽歯車SGfと入力側の前段入力軸2fとの回転数の比は4であり、増速遊星歯車機構Mfでは回転数が4倍に増速される。出力軸3と入力軸2との回転数の比は、図1の実施例と同じく1/5であり、したがって、別実施例の全体の変速比となる出力軸3と前段入力軸2fとの回転数の比は4/5となる。
このように、本発明のロックタイプ双方向クラッチの前段に増速装置を設置すると、入力軸から出力軸への動力伝達の際の変速比を変更することが可能で、例えば、固定のリング歯車RGfの歯数を36、太陽歯車SGfの歯数を9に設定すると、等速で同一方向に回転する双方向クラッチとなり、双方向クラッチとして使い勝手が良いものを容易に構成することができる。なお、増速遊星歯車機構Mfの太陽歯車SGfの歯数を12としたまま、基本構造部分の固定太陽歯車SGfの歯数を12、回転太陽歯車SGrの歯数を9とした場合には(図4の断面A−Aと断面B−Bとを入れ換えることに相当)、等速で逆方向に回転する双方向クラッチとなる。
以上詳述したように、本発明のロックタイプ双方向クラッチは、固定太陽歯車を有する第1遊星歯車機構と回転太陽歯車を有する第2遊星歯車機構を組み合わせ、両方の太陽歯車に歯数差を設け、第1遊星歯車機構のリング歯車を入力軸に連結するとともに回転太陽歯車を出力軸に連結し、出力軸側からの動力伝達を遮断するものである。したがって、本発明の双方向クラッチでは、作動に伴う異音等の発生を防止、入出力軸間での変速等が可能となる。
上記の実施例では、入出力軸とハウジング等を直接滑り接触させているが、回転要素と固定部との間に転がりベアリングを介在させて摩擦損失を低減することもできる。また、リング歯車等の歯車部分を別体で製作して部品に組み付ける、別実施例における増速装置として、外歯歯車のみを用いる単純な歯車列の増速装置を使用するなど、上記実施例に対し各種の変形が可能であるのは明らかである。
1 ハウジング
1C 蓋体
2 入力軸
3 出力軸
4 キャリア
SGf 固定太陽歯車
SGr 回転太陽歯車
PG 遊星歯車
RG リング歯車
M1 第1遊星歯車機構
M2 第2遊星歯車機構
Mf 増速遊星歯車機構

Claims (5)

  1. 回転不能のハウジング、入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸を回転不能として遮断されるロックタイプ双方向クラッチであって、
    前記入力軸に連結されたリング歯車、前記リング歯車と噛み合いキャリアに軸支された遊星歯車、及び、前記遊星歯車と噛み合う回転不能の固定太陽歯車により構成される第1遊星歯車機構と、
    前記リング歯車、前記遊星歯車、及び前記遊星歯車と噛み合うとともに前記出力軸に連結された回転太陽歯車により構成される第2遊星歯車機構とを備え、かつ、
    前記固定太陽歯車と前記回転太陽歯車との間には歯数差が設けられており、
    前記入力軸から前記出力軸に減速して回転が伝達されることを特徴とするロックタイプ双方向クラッチ。
  2. 前記ハウジングは、円周壁と端板とを備えるカップ状の固定部材であり、その端板の中央部には、前記出力軸が貫通する中央孔と前記固定太陽歯車とが形成されている請求項1に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
  3. 前記入力軸は、円周壁と端板とを備えるカップ状の回転部材であり、その円周壁には、前記リング歯車が形成されるとともに、円周壁の内方に、前記キャリア及び遊星歯車が収容される請求項1又は請求項2に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
  4. ロックタイプ双方向クラッチの前段に増速装置が設置されており、前記入力軸が、前記増速装置の出力側に結合される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のロックタイプ双方向クラッチ。
  5. 前記増速装置は、増速遊星歯車機構を備えた増速装置であり、増速装置の入力側が前記増速遊星歯車機構のキャリアに連結されるとともに、ロックタイプ双方向クラッチの前記入力軸に、前記増速遊星歯車機構の遊星歯車と噛み合う太陽歯車が形成されている請求項4に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
JP2015039993A 2015-03-02 2015-03-02 遊星歯車機構を備えたロックタイプ双方向クラッチ Pending JP2016161036A (ja)

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