JP2015013945A - アクリル樹脂組成物とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】密着性に劣る熱可塑性樹脂を素材にした自動車部品に対して密着性、耐水性、耐油脂性等の特性バランスに優れた塗料用アクリル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】重合物(A)と、重合物(B)と、グラフト重合物(C)とを含有するアクリル樹脂組成物であって、
前記重合物(A)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル及びメタクリル酸ベンジル以外の(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分(a)であり、
前記重合物(B)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル以外の(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分(b)であり、
前記グラフト重合物(C)の構成単位は、幹部分が前記単量体成分(a)であり、枝部分が前記単量体成分(b)であり、
前記アクリル樹脂組成物のガラス転移点温度が75〜100℃、重量平均分子量が50,000〜150,000であるアクリル樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂基材への塗装に有用であるアクリル樹脂組成物とその製造方法に関するものである。
近年、熱可塑性樹脂は、様々な分野で利用されており、熱で変形する性質を利用してシート、フィルム、球状、円筒状、箱状などの形状に成形して各種形態で利用されている。特に自動車部品の分野では成型性を利用した内装部品用に多く使われているが、熱可塑性のため、比較的柔らかく傷がつきやすいので保護や外観の改善を目的に表面を塗料で塗装している。
熱可塑性樹脂の中には、成型性や耐久性等の特性を改善するため、例えば離型性成分を配合したり、他の樹脂を混合したりしている場合がある。しかし、一般的な自動車部品用塗料の主成分として用いられているアクリル系樹脂やアルキド系樹脂は、これらの熱可塑性樹脂製の基材に密着しにくいという問題がある。そこで、塗料に密着性付与剤等を添加するなどにより、特性向上の様々な工夫をしている(例えば特許文献1、特許文献2)。
特開2001−152076号公報 特開2009−256476号公報
しかし、前記のように塗料の材料の組成を検討し改善しようとしているが、熱可塑性樹脂への密着性と、耐水性、耐油脂性等の他特性とのバランスに劣っているため、有効な塗料用の樹脂を見出せていないのが現状である。
本発明の課題は、塗料との密着性に劣る基材、例えばアクリロニトリル−(エチレン、ブタジエン)−スチレン系樹脂を基材にした自動車部品のような熱可塑性樹脂製の基材に対して、密着性、耐水性、耐油脂性等のバランスに優れた特性を有する塗料に用いられる、アクリル樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、重合物(A)と、重合物(B)と、グラフト重合物(C)とを含有するアクリル樹脂組成物であって、
前記重合物(A)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル(a−1)及びメタクリル酸ベンジル(a−1)以外の(メタ)アクリル酸エステル(a−2)を含む単量体成分(a)であり、
前記重合物(B)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル(a−1)以外の(メタ)アクリル酸エステル(b−1)を含む単量体成分(b)であり、
前記グラフト重合物(C)の構成単位は、幹部分が前記単量体成分(a)であり、枝部分が前記単量体成分(b)であり、
前記アクリル樹脂組成物の、ガラス転移点温度が75〜100℃、重量平均分子量が50,000〜150,000であるアクリル樹脂組成物に関する。
また、本発明は前記アクリル樹脂組成物を製造する方法であって、
(イ) 前記単量体成分(a)と重合開始剤とを含む反応系内で、重合反応させる工程と、
(ロ) 前記単量体成分(a)の重合反応率が50〜90質量%に達した後、前記単量体成分(b)及び重合開始剤を、単量体成分(a)/単量体成分(b)の配合比率40/60〜70/30(質量比)で、前記反応系に加えて重合反応させる工程と、
を含むアクリル樹脂組成物の製造方法に関する。
さらに本発明は、前記アクリル樹脂組成物と、溶媒とを含有するアクリル樹脂塗料に関する。
本発明によれば、二種類の重合物(A)及び(B)と、それらがグラフト重合している重合物(C)とを含むことにより、塗膜とした際に密着性、耐水性、耐油脂性等の特性バランスに優れるアクリル樹脂組成物が得られる。塗料との密着性に劣る熱可塑性樹脂、特にアクリロニトリル−(エチレン、ブタジエン)−スチレン系樹脂を素材とする、自動車部品のような熱可塑性樹脂製の基材に、このアクリル樹脂組成物から製造した塗料を塗布すると、密着性、耐水性、耐油脂性等の塗膜特性に優れた塗膜が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアクリル樹脂組成物は、重合物(A)と、重合物(B)と、グラフト重合物(C)とを含有する。重合物(A)の構成単位は単量体成分(a)であり、重合物(B)の構成単位は単量体成分(b)である。グラフト重合物(C)の構成単位は、幹部分が前記単量体成分(a)であり、枝部分が前記単量体成分(b)である。
重合物(A)及び(C)において、単量体成分(a)は、メタクリル酸ベンジル(a−1)と、前記メタクリル酸ベンジル(a−1)以外の(メタ)アクリル酸エステル(a−2)とを含む。重合物(A)として例えばメタクリル酸ベンジル(a−1)及び前記アクリル酸エステル(a−2)を重合して得られる共重合体が挙げられる。
メタクリル酸ベンジル(a−1)によって、本発明のアクリル樹脂組成物は密着性を向上することができる。メタクリル酸ベンジルは置換基等を有する誘導体であってもよい。
単量体成分(a)に含まれる、(メタ)アクリル酸エステル(a−2)としては、メタクリル酸ベンジル以外であれば特に限定されないが、一般式CH=C(R1)−COOR2(R1は水素原子又はCH3、R2は有機基)で示され、R2がC1〜C12の直鎖状アルキル基及び分岐状アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基からなる群から選ばれる一種以上であるのが好ましい。さらに、R2が置換基を有していてもよい。
例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独でも、又は二種類以上を併用してもよい。
本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸との少なくとも一方を示す。
重合物(A)及び(C)に含まれる単量体成分(a)において、メタクリル酸ベンジル(a−1)と(メタ)アクリル酸エステル(a−2)との好ましい組成比は、質量比で(a−1)/(a−2)が40/60〜80/20、より好ましくは50/50〜70/30である。前記組成比は、配合比で規定するのが作業性の点で好ましい。メタクリル酸ベンジルの配合比が少なすぎなければ密着性が良好であり、配合比が多すぎなければ耐油脂性が良好である傾向がある。
重合物(B)及び(C)において単量体成分(b)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(b−1)も、前記(メタ)アクリル酸エステル(a−2)と同じものを使用できる。単量体成分(a)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(a−2)と、単量体成分(b)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(b−1)とは、同じ種類であっても異なる種類であっても、一部同じ種類であってもよい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル(a−2)及び(b−1)は、いずれもメタクリル酸ベンジル(a−1)を含まないものとする。
また、(メタ)アクリル酸エステル(a−2)及び(b−1)の少なくとも一方は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の官能基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一種を少量含んでもよい。
さらに、前記単量体成分(a)及び単量体成分(b)の少なくとも一方は、(メタ)アクリル酸エステル(a−2)及び(b−1)以外に、(メタ)アクリル酸等の官能基含有重合性単量体を含んでもよい。(メタ)アクリル酸は、単量体成分(b)に含まれるのが好ましく、重合物(B)に共重合されるのがより好ましい。
これらの官能基含有(メタ)アクリル酸エステル及び官能基含有重合性単量体は多く用いると耐水性が低下するため、アクリル樹脂組成物内の重合物(A)、(B)及び(C)の総質量中、官能基含有(メタ)アクリル酸エステル及び官能基含有重合性単量体の合計量が0〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい。10質量%以下であれば耐水性が良好で、粘度が高くならず加工性を維持できる。
これら官能基含有(メタ)アクリル酸エステル及び官能基含有重合性単量体は、いずれか一方でもよいし併用してもよい。また、それぞれは単独でも、又は二種類以上を併用してもよい。さらにこれらのうち、単量体成分(a)と単量体成分(b)とに同じ種類を含有させてもよいし、全部又は一部異なる種類を含有させてもよい。
さらに、単量体成分(a)及び単量体成分(b)の少なくとも一方は、重合性二重結合を2個以上有する単量体を含んでもよい。これにより、樹脂組成物の低粘度を維持しつつ高分子量化(三次元化)することができる。例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独でも、又は二種類以上を併用してもよい。
前記重合性二重結合を2個以上有する単量体の使用量は、アクリル樹脂組成物内の重合物総質量中、2質量%以下の範囲で用いることが好ましい。2質量%以下であれば、樹脂の分子量が高くなり過ぎたり、セミゲル状となったりするのを防ぐことができるため、塗装等の加工性が良好である。2質量%以下、1質量%以上であればより好ましい。
本発明におけるグラフト重合物(C)は、前記単量体成分(a)を幹部分として、前記単量体成分(b)を枝部分としてグラフト重合している構造である。
グラフト重合物(C)の幹部分である単量体成分(a)の好ましい重合度は45〜70である。グラフト重合物(C)の一つの幹部分に枝部分は一箇所以上重合していればよい。
本発明のアクリル樹脂組成物は、重合物(A)〜(C)の他に、溶媒等を含んでもよい。溶媒として、後述するアクリル樹脂組成物の製造方法に使用される溶媒を引き続き含有してもよい。
本発明のアクリル樹脂組成物のガラス転移点温度(Tg)は、75〜100℃であり、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは85℃以上、95℃以下である。Tgが75℃以上であれば耐油脂性が良好で、100℃以下であれば塗料化作業性及び塗工性が良好である。
ここで、アクリル樹脂組成物のTgが75〜100℃になるように組成を決定するには、例えばアクリレート系単量体のようなTgの低い単量体の含有率を上げればTgを下げることができ、例えばメタクリレート系単量体のようなTgの高い単量体の含有率を上げればTgを上げることができる。
また、本発明のアクリル樹脂組成物に含まれる重合物全体の重量平均分子量は50,000〜150,000であり、好ましくは80,000〜110,000である。重量平均分子量が50,000以上であれば耐水性、耐油脂性が良好で、150,000以下であれば塗膜外観が良好である。
本発明のアクリル樹脂組成物の製造方法は、
(イ) 前記単量体成分(a)と重合開始剤とを含む反応系内で、重合反応させる工程と、
(ロ) 単量体成分(a)の重合反応率が50〜90質量%に達した後、単量体成分(b)及び重合開始剤を、単量体成分(a)/単量体成分(b)の配合比率40/60〜70/30(質量比)で、前記反応系に加えて重合反応させる工程と、を含む。反応系内には必要に応じて溶媒等が含まれてもよい。
各重合反応としては、溶媒を用いた通常のラジカル重合法が挙げられるが、特に制限されるものではない。前記工程(イ)によってある程度の重合物(A)が得られ、工程(ロ)によって重合物(B)及び(C)と、さらに重合物(A)とが得られる。
単量体成分(a)/単量体成分(b)の好ましい配合比率は質量比で45/55〜65/35である。アクリル樹脂組成物内の単量体成分(a)の割合は、増加するにつれ密着性、耐水性が向上し、減少するにつれ耐油脂性が向上する傾向がある。
単量体成分(a)の重合反応率が50質量%以上、90%質量以下の時点で単量体成分(b)を加えて重合させることにより、密着性と耐水性、耐油脂性とのバランスが良好で、密着性、耐水性、耐油脂性のいずれも優れる。
工程(ロ)の単量体成分(b)及び重合開始剤を加えるのは、単量体成分(a)の重合反応率が60〜80質量%に達した後が好ましく、より好ましくは55〜70質量%に達した後、さらに好ましくは65〜75質量%に達した後である。
本発明において、重合反応率とは、仕込んだ単量体の総量に対する、重合した比率(質量比)をいう。この比率は重合物の加熱残分から以下の手順で算出される。
工程(イ)がある程度進行した反応系から、反応物サンプルを取り出し、150℃で1時間加熱する。重合開始剤及び未反応の単量体成分(a)はこの加熱でほとんど気化又は分解するので、加熱後のサンプル質量では無視する。
加熱残分S1(%)=(S1´/S0)×100
加熱前のサンプル質量S0=サンプル内の、単量体成分(a)+重合開始剤+溶媒の質量
加熱後のサンプル質量S1´=重合物(A)の実測質量
前記「サンプル内の単量体成分(a)」が全て重合して同質量の重合物(A)になったとする、理論重合物分S0(%)=(S1/S0)×100
=(サンプル内の単量体成分(a)の質量/S0)×100
重合反応率(%)=(S1/S0)×100
本発明のアクリル樹脂組成物の製造方法は、工程(ロ)で単量体成分(a)及び単量体成分(b)の重合反応がある程度進んだ後で、(ハ)さらに重合開始剤及び溶媒を前記反応系に加える工程を含むのが好ましい。これによって最終的な重合反応率を上げることができる。重合開始剤及び溶媒は、工程(イ)、(ロ)の重合開始剤及び溶媒と同じものを使用できる。
溶媒を用いた通常のラジカル重合法で重合する例を挙げると、例えば溶媒が酢酸ブチルの場合、工程(イ)及び工程(ロ)の重合反応温度は100℃前後が好ましく、反応時間は滴下時間を含めてそれぞれ約2〜4時間程度が好ましい。工程(ハ)は工程(イ)及び工程(ロ)と同温度が好ましく、反応時間は滴下時間を含まずに約2時間程度が好ましい。
前記溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒としては、材料である単量体成分(a)、単量体成分(b)、及び得られる各重合物が溶解するものであれば制限はない。環境影響、加工性、価格等を考慮すると工業的に生産され比較的安全で安価に入手可能な溶媒として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが使用できる。これらは単独で又は二種類以上併用して使用される。
また、前記ラジカル重合法において重合開始剤として、脂肪族パーブチルエステル型、芳香族パーエステル型、ジアルキルパーオキサイド型等のパーオキサイド系重合開始剤が使用できる。例えば、ベンゾゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のパーオキサイド系重合開始剤が使用できる。また、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾビス系化合物が使用できる。
本発明の樹脂組成物を、溶媒と混合して、塗料として使用することができる。溶媒として、上述した各種溶媒と同様のものを、単独で又は二種類以上使用できる。前記アクリル樹脂組成物が溶媒を含有している場合は、そのまま塗料として使用してもよい。また、必要に応じて無機顔料、有機顔料、フィラー類、アルミペースト、可塑剤、分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を配合して塗料として使用することができる。これらの塗料は、成型品、シート、フィルムに塗装することができ、トップクリアー、エナメル塗料、メタリック塗料、プライマー等として使用できる。
以下、実施例により本発明を説明する。なお、部、%はそれぞれ質量部、質量%を示し、表1〜表2で示す配合は質量部である。
(実施例1)
冷却器、温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた四つ口フラスコに、表1に示す配合割合で酢酸ブチルを仕込み、100℃に加熱した。続いて表1に示す割合の単量体成分(a)と重合開始剤との配合物(以下、配合物(A)という。)を2時間で滴下し、ひき続き100℃で1時間保温して重合反応させた。ガラス管で四つ口フラスコから反応物サンプルを取り出し、配合物(A)の重合反応率を以下の方法で測定し、78%に達したことを確認した。
(重合反応率)
前記反応物サンプルを60mmφの金属シャーレに1.5g精秤し、150℃で1時間加熱した。重合開始剤、溶媒及び未反応のメタクリル酸ベンジル(a−1)及び(メタ)アクリル酸エステル(a−2)はこの加熱でほとんど気化又は分解する。
加熱残分S1(%)=(S1´/S0)×100
加熱前のサンプル質量S0=サンプル内の、メタクリル酸ベンジル(a−1)及び(メタ)アクリル酸エステル(a−2)+重合開始剤+溶媒の質量
加熱後のサンプル質量S1´=重合物(A)の実測質量
前記「サンプル内のメタクリル酸ベンジル(a−1)及び(メタ)アクリル酸エステル(a−2)」が全て重合して同質量の重合物(A)になったとする、理論重合物分S0(%)=(S1/S0)×100
=(サンプル内のメタクリル酸ベンジル(a−1)及び(メタ)アクリル酸エステル(a−2)の質量/S0)×100
重合反応率(%)=(S1/S0)×100
続いて表1に示す割合の単量体成分(b)と重合開始剤との配合物(以下、配合物(B)という。)を2時間で滴下し、100℃で1時間保温して重合反応させた。さらに、表1に示す割合の酢酸ブチルと重合開始剤との配合物(以下、配合物(C)という。)を15分間で滴下し、同温度で2時間保温して反応を進行させた。その後、室温まで冷却し、反応物の割合が40%になるように酢酸ブチルを加えて、アクリル樹脂組成物の溶液を得た。
(実施例2〜9)
表1〜2に示す割合で混合した配合物(A)、配合物(B)及び表1〜2に示す量の酢酸ブチルを用いた以外は、実施例1と同様の反応工程で重合させ、それぞれのアクリル樹脂組成物溶液を得た。それぞれの配合物(A)の重合反応率を表1〜2に示す。
(実施例10)
配合物(A)を2時間で滴下し、同温度で30分間保温後、重合反応率が50%に達したことを確認した以外は、実施例2と同様の反応工程で重合させ、アクリル樹脂組成物溶液を得た。
(実施例11)
配合物(A)を2時間で滴下し、同温度で2時間保温後、重合反応率が90%に達したことを確認した以外は、実施例2と同様の反応工程で重合させ、アクリル樹脂組成物溶液を得た。
(比較例1)
冷却器、温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた四つ口フラスコに表2に示す配合割合で酢酸ブチルを仕込み、100℃に加熱した。続いて表2に示す割合の配合物(A)を2時間で滴下し、同温度で1時間保温して重合反応させた。さらに、表2に示す割合の配合物(C)を15分間で滴下し、同温度で2時間保温して反応を進行させ、その後、室温まで冷却した。このときの配合物(A)の重合反応率を実施例1と同様にして測定した結果を表2に示す。前記冷却した反応物の割合が40%になるように酢酸ブチルを加えて、アクリル樹脂組成物溶液を得た。
(比較例2〜4)
表2に示す割合で混合した配合物(A)及び表2に示す量の酢酸ブチルを用いた以外は、比較例1と同様の反応工程で重合させ、それぞれのアクリル樹脂組成物溶液を得た。
(アクリル樹脂組成物の評価)
前記樹脂組成物溶液に含まれる重合物全体のガラス転移点温度及び重量平均分子量を下記方法により調べた。その評価結果を表1、表2に併記する。
(ガラス転移点温度)
メタクリル酸ベンジル(a−1)、(メタ)アクリル酸エステル(a−2)及び(b−1)等、使用した全N種類の単量体のうち、
n番目の単量体のみからなる重合物のTg文献値(℃)+273=Tg(K)
をそれぞれ求めた。
次に、(単量体nの配合質量/Tg)値の、nが1からNまでの総和=Xとし、
重合物全体の調和平均値Tg(℃)=(単量体1からNまでの全配合質量/X)−273
を、ガラス転移点温度Tg(℃)とした。
(重量平均分子量)
アクリル樹脂組成物溶液を、高速液体ゲルパミエーションクロマトで測定し、標準ポリスチレンで換算して重量平均分子量を得た。
(試験板の作製及び評価)
実施例1〜11及び比較例1〜4で得られたアクリル樹脂組成物溶液を、酢酸ブチルでフォードカップ#4で11秒/25℃になるように希釈した。次いでアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合系プラスチック成型板表面に乾燥膜厚が25〜35μmになるようにスプレー塗装し、80℃で1時間乾燥させて、アクリル樹脂組成物膜を形成した試験板を得た。
前記試験板を用いて下記方法により外観、密着性、耐水性、耐油脂性を調べた。その評価結果を表3、表4に示す。
(表面の外観)
目視で表面を観察し、下記基準で評価した。
○:異常なし
△:わずかに艶が消失
×:艶がない
(密着性)
JIS K−5400の碁盤目試験法に従った。すなわち、試験板にナイフで2mm間隔で縦横各10本線状に切り、100個の碁盤目を作製し、その上にセロハンテープを貼り付けた。1〜2分後にセロハンテープを膜から直角に剥がし、残ったアクリル樹脂組成物膜の碁盤目の数を数えて評価した。
(耐水性)
試験板を50℃の温水に168時間浸漬し、表面を目視で観察及び前記の密着性試験法と同様の方法で密着性を調べ評価した。
(耐油脂性)
試験板に牛脂の200g/m2量を表面に塗布し、その上をガーゼで覆い80℃で168時間放置した。その後、洗剤で表面の牛脂を洗浄し、水分が乾燥するまで室温に放置した。次いで、表面を目視で観察及び前記の密着性試験法と同様の方法で密着性を調べ評価した。
Figure 2015013945
Figure 2015013945
Figure 2015013945
Figure 2015013945
表1〜表4から、以下のことが確認できる。
比較例1〜4は単量体成分(b)が重合しておらず、これら比較例1〜4は密着性、耐水性、及び耐油脂性のいずれかが不良である。
これに対して、実施例1〜11は、密着性、耐水性、及び耐油脂性の全てに優れ、外観もほとんどが良好である。

Claims (4)

  1. 重合物(A)と、重合物(B)と、グラフト重合物(C)とを含有するアクリル樹脂組成物であって、
    前記重合物(A)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル(a−1)及びメタクリル酸ベンジル(a−1)以外の(メタ)アクリル酸エステル(a−2)を含む単量体成分(a)であり、
    前記重合物(B)の構成単位は、メタクリル酸ベンジル(a−1)以外の(メタ)アクリル酸エステル(b−1)を含む単量体成分(b)であり、
    前記グラフト重合物(C)の構成単位は、幹部分が前記単量体成分(a)であり、枝部分が前記単量体成分(b)であり、
    前記アクリル樹脂組成物の、ガラス転移点温度が75〜100℃、重量平均分子量が50,000〜150,000であるアクリル樹脂組成物。
  2. 前記単量体成分(a)中の、メタクリル酸ベンジル(a−1)/前記(メタ)アクリル酸エステル(a−2)の組成比が質量比で40/60〜80/20である請求項1記載のアクリル樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載のアクリル樹脂組成物を製造する方法であって、
    (イ) 前記単量体成分(a)と重合開始剤とを含む反応系内で、重合反応させる工程と、
    (ロ) 前記単量体成分(a)の重合反応率が50〜90質量%に達した後、前記単量体成分(b)及び重合開始剤を、単量体成分(a)/単量体成分(b)の配合比率40/60〜70/30(質量比)で、前記反応系に加えて重合反応させる工程と、
    を含むアクリル樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項1又は2記載のアクリル樹脂組成物と、溶媒とを含有するアクリル樹脂塗料。
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