JP2015012774A - 静電電動機 - Google Patents

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Abstract

【課題】可動子と固定子の間の距離を狭めることなく、出力トルクの向上を図る。
【解決手段】本発明に係る静電電動機1は、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極5A〜5Cを有する固定子2と、固定子に対向するように配置され、エレクトレット材料からなる複数の帯状電極6Aを有する可動子3と、固定子の帯状電極に所定の電圧を印可し、固定子と可動子との電極間に作用する静電気のクーロン力で可動子を移動させるものであって、可動子のエレクトレット材料からなる帯電電極を配する基板表面3Aから当該帯電電極の表面6A1までの距離を離すことにより、帯電電極からの電界を固定子の帯状電極へ作用させるようにした。
【選択図】図4

Description

本発明は、エレクトレット材料で構成した電極を有する静電電動機に関する。
磁石を使用しない静電電動機の1つとして静電モータが知られている。静電モータは軽い、薄い、構成が簡単といったメリットがあるが、磁石を使った電磁モータに比べ出力トルクが小さく、高電圧を必要とするため、未だに実用化に至っていない。出力トルクを大きくするためには、半導体プロセス技術を使ってフィルムに複数の電極を形成し、この複数の電極が形成されたフィルムを積層することで、大トルクを取り出す方法やエレクトレットと呼ばれる永久帯電した物質を電極として使用して駆動電圧を下げる方法が既に知られている。
特許文献1(特開平6−311763号公報)には、固定子上の電極に犠牲層を形成し、犠牲層上にエレクトレット層、多結晶シリコンの層を形成し、犠牲層を除去することで、エレクトレット層および多結晶シリコン層を剥離し、剥離したエレクトレット層および多結晶シリコン層が可動子となる構成が開示されている。この場合、固定子と可動子を対で作製するため、エレクトレットとそれに対向する電極間のギャップを精度良く形成することができる。
しかしながら、特許文献1の構成では生産性が悪い、コストがかかるといった問題がある。近年、フッ素樹脂をベースとした表面電荷密度の大きいエレクトレット材料(アモルファスフッ素樹脂、商品名「サイトップ」旭硝子製)が開発されており、モータの高トルク化にはこのような表面電荷密度の大きいエレクトレット材料を用いることが望ましい。しかしながら、特許文献1において、プロセス上の理由でフッ素樹脂系のエレクトレット材料を用いることは難しいと予想される。
特許文献2(特開2012−257368号公報)には、金属材料の上にエレクトレット材料を厚さ15um程度形成して一方の電極(エレクトレット電極)とし、100μmの距離(ギャップ)空けて他方の電極(対向電極)を配置し、一方の電極と他方の電極の間の静電誘導により発電を行う発電素子の構成が開示されている。特許文献2の構成では、エレクトレット材料の厚さ15umに対し、距離(ギャップ)を100μmと十分離して、発電素子を構成している。この場合、距離(ギャップ)を狭めることにより、発電効率は良くなることが予想されるが、ギャップを狭めると、一方の電極と他方の電極の接触が懸念される。つまり、エレクトレット材料と対向電極間に形成される電界強度を、ギャップ間距離を狭めることで大きくする方法は、コスト、生産性およびデバイスの安定性の面で課題がある。
本発明は、互いに対向する可動子と固定子の間の距離を狭めることなく、出力トルクの向上を図ることを、その目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る静電電動機は、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極を有する固定子と、固定子に対向するように配置され、エレクトレット材料からなる複数の帯状電極を有する可動子と、固定子の帯状電極に所定の電圧を印可し、固定子と可動子との電極間に作用する静電気のクーロン力で可動子を移動させるものであって、可動子のエレクトレット材料からなる帯電電極を配する基板表面から当該帯電電極の表面までの距離を離すことにより、帯電電極からの電界を固定子の帯状電極へ作用させるようにしたことを特徴としている。
本発明によれば、可動子のエレクトレット材料からなる帯電電極を配する基板表面から当該帯電電極の表面までの距離を離すことにより、帯電電極からの電界を固定子の帯状電極へ作用させるようにしたので、固定子と可動子の距離を狭めることなく、固定子側の帯状電極と可動子のエレクトレット材料からなる帯電電極の間で効率よく電界を形成することができる。それにより、固定子と可動子の距離が離れていても電界強度が弱くなることがなく、出力トルクの向上を図ることができる。
本発明に係る静電電動機の第1の実施形態の主要構成をと示す斜視図。 (a)は第1の実施形態における固定子の構成を示す平面視図、(b)は(a)の断面図。 (a)は第1の実施形態における可動子の構成を示す平面視図、(b)は(a)の断面図。 固定子と可動子の部分拡大断面図であり、(a)、(d)は導電層とエレクトレット電極の間に絶縁層を備えた本発明の特徴部分を示す図、(c)は固定子と可動子の距離を広げた状態を示す図、(d)は固定子と可動子の距離を狭めた状態を示す図。 本発明に係る可動子の構成と固定子との関係を示す部分拡大断面図。 本発明に係る可動子の別な実施形態を示す部分拡大断面図。 本発明に係る可動子の別な実施形態を示す部分拡大断面図。 本発明に係る可動子の別な実施形態を示す部分拡大断面図。 本発明に係る静電電動機の第2の実施形態の概略構成を示す斜視図。 本発明に係る静電電動機の第3の実施形態の主要構成をと示す斜視図。 固定子と可動子の電極数比率が3対2の場合における駆動制御を示すもので、(a)は電圧切替えと可動子の移動状態を模式的に示す図、(b)は固定子への印加する電圧の切替えパターンを示す図。 固定子と可動子の電極数比率が3対4の場合における、電圧切替えパターンと可動子の移動状態を模式的に示す図。 電荷の注入に用いるコロナ荷電装置の概略構成図。 エレクトレット材料の電極の厚さと電界強度の関係の解析に用いた3次元電界シミュレーションモデルを示す図 エレクトレット材料の電極の厚さと電界強度の関係を示す図。 SU−8工法検討モデルの解析結果を示す図。 垂直方向の電界強度、水平方向の電界強度を示す電界ベクトル図。 可動子側のエレクトレット材料の電極の厚みを増やすと電界強度が大きくなることをコンデンサモデルで説明した図。
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお各図面において、同一部材又は同一機能を有する部材には、基本的には同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1、図2、図3を用いて、本発明に係る静電電動機の第1の実施形態の構成について説明する。
第1の実施形態に係る静電電動機は、アキシャルギャップ型の静電モータ1である。図1に示すように、静電モータ1は薄い平面上に帯状電極としてのパターン電極5を形成した固定子2(以下「ステータ」と記す)と、帯状電極としてのパターン電極6を形成した可動子3(以下「ロータ」記す)と、駆動軸4を備えている。ステータ2とロータ3とは互いに対向して配置されていて、微小ギャップを保ちながら複数枚積層されて構成されている。駆動軸4は金属製で、ロータ3だけに連結されていて、ロータ3が回転移動することで一体回転するように構成されている。ステータ2とロータ3の間に微小ギャップを設ける方法としては、例えば特開2005−278324号公報に記載のように数十μmのビーズをステータ2とロータ3の間に入れることや、特開2005−210852号公報に記載のようにロータ3の側面にスペーサを挟む周知技術を用いて達成することができる。
ステータ2に形成された複数のパターン電極5には、ここでは、3相の配線が3つのパターン電極5を1組としてそれぞれ接続されている。この3相の配線はU、V、Wと記載する。図1に示す第1の実施形態では、ステータ2のパターン電極5にU、V、Wの3相の配線を接続して極数を3層として構成しているが、ステータ2側の相数は3相に限定されるものでしなく、2相の配線をして駆動するようにしても良い。
図2を用いてステータ2の構成についてより詳細に説明する。
ステータ2は、図2(a)、図2(b)に示すように、中心に貫通孔2Cを有する円環状の基板2A上に複数のパターン電極5が形成されている。基板2Aは、例えばガラス、セラミックス、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド等の絶縁体で構成されている。基板2A上に形成された複数のパターン電極5は、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。図2の例では、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号5Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号5Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号5Cを付して区別している。基板2Aの貫通孔2Cには、駆動軸4が絶縁部材を介してあるいは非接触状態で挿入される。パターン電極5の電極形状は、図2(a)に示すように、放射状のパターンとして形成されている。また、パターン電極5の各個別電極5A、5B、5Cは、エッジからの絶縁破壊を防ぐために、曲率化処理を行うこともある。
図3を用いてロータ3の構成についてより詳細に説明する。
ロータ3は、図3(a)に示すように、中心に貫通孔3Cを有する円環状の基板3A上に複数のパターン電極6が形成されている。パターン電極6は、基板3Aの表面に、積層された導電層3Bを介して形成されている。本実施形態において、基板3Aの表面とは、導電層3Bの表面3B1を指す。
本実施形態において、パターン電極6は、帯状パターン膜に電荷を注入したエレクトレットとして形成されている。ここでエレクトレットとは、フッ素樹脂などの絶縁体に電場を加えて電気分極(正と負の電気に分かれた状態)を起させ、その状態が半永久的に保持されているものをいう。本実施形態の場合、図3(b)に示すように、ガラス製の基板3Aに導電層3Bを形成しているので、電場を加えた際の電気分極の状態が安定するので、パターン電極6をエレクトレットとして安定した状態で形成することができる。
上述した特許文献1には、静電引力に加え反発力(斥力)を利用してトルクを大きくする目的で、偶数個のエレクトレットを等間隔に形成し、隣接し合っているエレクトレットを互いに逆極性となるように帯電させて可動子とし、各エレクトレットの個数の倍数の電極をエレクトレットと対面するように等間隔に配置して各エレクトレットにそれぞれ2つの電極を対応させて固定子とし、固定子の電極の極性を順次切り替えることで、可動子を駆動させる駆動回路とが開示されている。しかし、この構成でトルクを大きくしようとすれば、エレクトレットの極数を増加させる必要があるが、極数が大きくなるとその分隣り合う逆極性のパターンが近接し、隣接するパターン(個別電極)間で放電を起す可能性がある。また、極性を交互に帯電させること自体が非常に難しい。
そこで本実施形態のように基板3Aの同一平面上に形成されるエレクトレット電極となる個別電極6Aは、全て+極あるいは−極の何れかの同一極(単極)に帯電させて、単極の電極とした。このため、製造上容易に形成することができる。
このようにステータ2のパターン電極5に、エレクトレットされたパターン電極6を形成されたロータ3を近づけると、ステータ2とロータ3の間に電界が生じるため、ロータ3に給電手段が不要になり、モータ構造が大幅に簡素化できる。さらに、ロータ3のエレクトレット製の電極(パターン電極6/個別電極6A)の表面電荷密度を向上させることによって、ステータ2側に印加する2相又は3相の交流電圧を低減することができる。このため、低電圧駆動が可能になり、モータ本体だけでなく駆動ドライバも小型化することができる。
個別電極6Aについてより詳細に説明する。
図4(c)、図4(d)に示すように、基板3Aの上に導電層3Bを介してエレクトレット電極となる個別電極6Aを形成する場合、エレクトレット材料の膜厚は5〜20μm程度が一般的である。そして個別電極6Aの表面としての対向面6A1と、個別電極6Aと対向するステータ2側の例えば個別電極5Aの表面となる対向面5A1との電極間で電場を形成する。このときの電場は、個別電極6Aの対向面6A1と個別電極5Aの対向面5A1との間のギャップ距離dが短いほど、個別電極6Aから出る電場が対向する個別電極5Aへ伝えることができる。従って、図4(d)に示すように、個別電極6A(エレクトレット材料)の膜厚d1よりも小さいギャップ距離dで個別電極5Aを設置したほうが良い。
しかしながら、短いギャップ距離dを維持しながら、静電モータや静電アクチュエータを駆動させることは、基板2A、3Aの面精度や個別電極5Aや個別電極6Aの厚さのばらつきなど面から難しい。これを実現させるには、面精度の良いステータ2およびロータ3(可動子)を必要とし、さらに加工機械の精度も要求されるため、コスト的に不利となる。従って、現実的には、図4(c)に示すように、ステータ2とロータ3の距離Dをロータ3(可動子)が移動しても接触しない距離として、個別電極6Aの対向面6A1と電極5Aの対向面5A1との間のギャップ距離dを広くして装置を構成した方がコスト面や安定性の面では好ましい。
しかし、このようにステータ2とロータ3の距離Dやギャップ距離dを広げてしまうと、個別電極6Aの対向面6A1とロータ3の導電層3Bの距離d1、すなわち、ここでは個別電極6Aの膜厚d1が、ギャップ距離dよりも短くなり、個別電極6Aと導電層3Bとの間で電界を形成しやすくなる。このように、導電層3B上にエレクトレットの個別電極6Aを形成した構成では、個別電極6Aと対向する個別電極5A間に電界を効率良く形成するのが難しい。図4ではステータ2側の電極として個別電極5Aを代表して例示しているが、個別電極5B、5Cと個別電極6A間においても同様の現象が発生する。なお、個別電極5B、5Cと対向面は、便宜的に5A1として表記する。
このような課題を解決するには、ステータ2とロータ3の距離Dを十分に確保しつつも、個別電極6Aの対向面6A1とロータ3の導電層3Bの距離d1よりを広げるのが望ましい。そこで、本実施形態では、図4(a)、図4(b)に示すように、ロータ3側のエレクトレットの個別電極6Aと導電層3B間に絶縁層60を設けている。図4(a)、図4(b)において、個別電極6Aの対向面6A1と個別電極5Aの対向面5A1との間のギャップ距離dは、図4(c)と同じ距離としている。図4(a)と図4(b)の違いは、絶縁層60の厚さd2の違いである。
図4(b)と図4(c)を比較した場合、絶縁層60の厚さd2の分だけ、対向面6A1と導電層3Bの距離d1が大きくなる。この結果として、対向面6A1と対向電極5Aの対向面5A1間のギャップ距離dと対向面6A1と導電層3Bの距離d1との比率d/d1が小さくなって導電層3Bへ逃げる電界が低減し、図4(b)の構成の方が、図4(c)の構成に比べて効率良く個別電極6Aから対向する電極5A間に電界を形成することができる。
更に、絶縁層60の厚さd2を、対向面6A1と対向面5A1間のギャップ距離dよりも大きくすることで、図4(a)に示すように、個別電極6Aの対向面6A1と個別電極5Aの対向面5A1との間のギャップ距離dを維持しつつ、図4(b)に比べて導電層3Bと対向面6A1との距離d1を大きくし、かつステータ2とロータ3の距離Dを拡げる(大きくする)ことができる。このため、より効率良く個別電極6Aと個別電極5Aの互いの対向面間に電界を形成することができる。
図5は、図4(a)の構成を図3に示すロータ3に適用した場合の拡大断面図である。
図5においては、上側にステータ2、下側にロータ3を配置し、両者の間に距離Dを形成して対向配置している。ロータ3はガラスなどの絶縁性の基板3A上に金属からなる導電層3Bが積層されて形成されている。導電層3Bの上には絶縁層60のパターンが形成され、その絶縁層60のパターン上にエレクトレット材料でパターンを形成してパターン電極6(個別電極6A)を形成している。図5においては、導電層3Bを形成したガラスなどの絶縁性の基板3Aを用いているが、基板3Aには金属材を用いても構わない。導電層3Bは接地されている。
ここで、本実施形態に係るロータ3の製造方法について具体的に説明する。
可動子となるロータ3は、ガラス製の基板3A上に、アルミなどの金属膜を蒸着などの方法により、0.1から1μm程度形成する。アルミ膜上にエポキシ樹脂からなるネガレジストSU8(日本化薬株式会社製)を10〜100μm程度、スピンコートあるいはスリットコータなどにより膜を形成する。ネガレジストSU8を所定のパターンに露光、現像を行い、厚さ(高さ)が10〜100μm程度、幅が5〜300μm程度のパターンを形成する。この上に、エレクトレット用サイトップEGG−811(旭硝子株式会社製)を5〜20μm程度スピンコートで形成する。サイトップを10um以上の厚さにする場合、複数回スピンコートを行い、重ね塗りすることで10um以上にすることができる。
更に、サイトップ上にアルミ膜などの金属膜を蒸着などの方法により0.1から1μm程度生成し、金属膜上にフォトレジストTSMR―8800(東京応化工業株式会社製)をスピンコートにて形成し、フォトレジストの露光、現像を行い、金属のエッチングを行い、フォトレジストおよび金属のパターンを形成する。フォトレジストおよび金属のパターンをマスクとして、サイトップをオゾンプラズマでアッシングを行なう。オゾンプラズマのアッシングにおいて、フォトレジストおよびパターン開口部分のサイトップが除去される。サイトップ上に残った金属をエッチングし、厚さ(高さ)が10〜100μm程度、幅が50〜300μm程度のネガレジストSU8のパターン上に、厚さ(高さ)厚さが5〜20μm程度のサイトップ製の個別電極6Aを形成する。
以上のような製造方法で、絶縁層60にネガレジストSU8、エレクトレット電極となる個別電極6Aにサイトップを用いたロータ3(可動子)を得ることができる。
ロータ3のエレクトレット材料を帯電させる方法として、一般的に絶縁体を帯電させる方法であれば手段を選ばずに用いることができる。たとえば、G.M.Sessler, Electrets Third Edition,pp20,Chapter2.2“Charging and Polarizing Methods”(Laplacian Press, 1998)に記載のコロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が適用可能である。本発明においては特にコロナ放電法、電子ビーム衝突法を用いることが好ましい。
図13にコロナ帯電器の概略図を示す。該コロナ荷電装置においては、コロナ針72と、電極73とが対向配置され、直流高圧電源装置71(たとえばHAR−20R5;松定プレシジョン製)により、コロナ針72と電極73との間に高電圧を印加できるようになっている。コロナ針72と電極73との間にはグリッド74が配置され、該グリッド74にはグリッド用電源75からグリッド電圧を印加できるようになっている。また、パターン膜に注入される電荷の安定を図るため、ホットプレート76によって、電荷注入工程中のパターン膜をガラス転移温度以上に加熱できるようになっている。符号77は電流計である。該コロナ装置の電極73上に、パターン膜が形成された基板を戴置し、ホットプレート76によって加熱し、グリッド用電源75からグリッド74にグリッド電圧を印加するとともに、直流高圧電源装置71によりコロナ針72と電極73との間に高電圧を印加する。これにより、コロナ針72から放電した負イオンが、グリッド74で均一化された後、電極73上に戴置したガラス基板61表面のパターン膜上に降り注ぎ、電荷が注入される。
−5から−20kV程度の高電圧をコロナ針72に印加し、コロナ帯電させる。上記の方法で帯電させた可動子上のエレクトレット材料は、表面電荷密度が−1から−2mC/m2の永久帯電を維持する。
このように、基板3A上に導電層3Bを介して形成されるにエレクトレット材料のパターンの個別電極6Aと導電層3Bとの間に絶縁層60を設けることで、個別電極6Aの対向面6A1がロータ3上の導電性層3Bからの離れ、対向電極5A〜5Cと個別電極6A間で効率よく電界を形成することができる。これにより、ステータ2とロータ2の距離Dが離れていても電界強度が弱くなることがなく、静電モータ1のトルクを大きくすることができる。
本実施形態では導電層3Bを接地しているので、導電層3Bの電位が0Vに固定され、個別電極6Aの電位も変動することがなく、個別電極6Aの帯電状態が安定する。このため、静電モータ1として使用する場合の電圧制御を容易に行うことができる。また、静電電動機がアキシャルギャップ型の場合、パターン電極5、6の形成を平面上に行うため作製が容易である。さらにがアキシャルギャップ型の場合、ステータ2とロータ3を一対として、これらの積載数を増やすことで、駆動トルクを増やすことができる。すなわち、ステータ2とロータ3を一対として複数積層することで、駆動トルクを容易に増やすことができる。
次に、可動子の別な実施形態について説明する。
図5に示したロータ3では、基板3A上の導電層3Bとエレクトレット材料で構成された個別電極6Aとの間に絶縁層60を介装したが、図6に示す実施形態では、絶縁層60の側面を覆うようにエレクトレット材料で個別電極6Aを形成し、個別電極6Aと導電層3Bとを同通させている。
図6に示す実施形態において、ロータ3の導電層3Bは接地されているので、導電層3Bの電位が0Vに固定され、エレクトレット材料の個別電極6Aの電位も変動することがなく、個別電極6Aの帯電状態が安定する。このため、このようなロータを図1に示した静電モータ1に適用すると、電圧制御を容易に行うことができる。また、図6に示す構成の場合、フォトレジストをマスクとしてサイトップをオゾンプラズマでアッシングするときの、フォトレジストのマスクサイズを調整することにより、絶縁層60の側面を覆うようにして個別電極6Aを容易に作製することができるという利点もある。
図6に示すロータ3では、個別電極6Aで絶縁層60を覆うようにして個別電極6Aと導電層3Bとを同通させたが、図7に示す実施形態におけるロータ3は、絶縁層60の上部に個別電極6Aを形成するとともに、導電層3B上に、個別電極6Aと導電層3Bとを同通するための導電部9を形成した。
このように構成しても、ロータ3の導電層3Bは接地されているので、導電層3Bの電位が0Vに固定され、エレクトレット材料の個別電極6Aの電位も変動することがなく、個別電極6Aの帯電状態が安定する。このため、このようなロータ3を図1に示した静電モータ1に適用すると、電圧制御を容易に行うことができる。
図7に示すロータ3の構造の作製について説明する。
絶縁層60のネガレジストSU8のパターンを形成後、アルミなどの金属膜を蒸着などの方法により、0.1〜1μm程度形成する。アルミ膜状にフォトレジストTSMR―8800(東京応化工業株式会社製)をスピンコートにて形成し、フォトレジストの露光、現像を行い、フォトレジストのパターンを形成する。フォトレジストのパターンをマスクとして、アルミ膜をアルミエッチング液(東京応化工業株式会社製)で所定の部分の除去を行う。更に、フォトレジストTSMR―8800を溶剤などにより除去し、絶縁層60のネガレジストSU8の側面が導電層9で覆われた状態となる。これ以降は図5で説明した製造方法と同様にして、サイトップEGG−811(旭硝子株式会社製)の形成、フォトレジストTSMR―8800(東京応化工業株式会社製)の形成、露光、現像を行い、サイトップをオゾンプラズマでアッシング、フォトレジストTSMR―8800の除去といった手順で図7の構造体を作製することができる。
上記形態では、個別電極6Aの対向面6A1と導電層3Bの距離d1を広げるのに、個別電極6Aと導電層3Bの間に絶縁層60を設け、導電層3Bから対向面6A1の位置を嵩上げして、個別電極5Aの対向面5A1と対向面6A1のギャップ距離dを狭めるようにした。導電層3Bから対向面6A1の位置を嵩上げするには、必ずしも絶縁層60を設ける必要は無く、例えば、図8に示すように、所定の厚さの個別電極6Aを複数積層して、導電層3Bから対向面6A1の位置を離すように形成してもよい。つまり、所定の厚さの個別電極6Aを複数積層して対向面6A1と導電層3Bの距離d1を広め、個別電極5Aの対向面5A1と対向面6A1のギャップ距離dを狭めるようにしてもよい。
本実施形態では、アキシャルギャップ型のロータ3のパターン電極6をエレクトレットにしたが、エレクトレットのパターン電極6を用いる実施形態としては、このような形態に限定されるものではなく、他の形態の静電電動機に適用しても良い。
次に、本発明者らは、コンピュータを使用した3次元電界シミュレーションで、エレクトレット電極(個別電極6A)の厚さが、個別電極6Aと個別電極5A間での電界に与える影響を検討した。エレクトレット電極は簡略してエレクトレットと称する。
エレクトレットで強い電界を発生させるには、2つの方法が考えられる。
・高い表面電荷密度を持った材料を使用する。
・エレクトレットの厚みを増やす。
高い表面電荷密度を実現するのは材料による所が大きいため、ここではエレクトレットの厚みを増やすことを検討する。
(解析条件)
1.エレクトレットの厚み
図14に3次元電界シミュレーションモデルを示す。また、表1に解析の設定条件を示す。
Figure 2015012774
モデル全長はx=1800μm、高さy=560μm+エレクトレット厚み、幅z=500μmである。境界条件としては上下境界が0V、左右境界が対称境界に設定する。ステータはガラスエポキシ上に3相電極が配置されており、ロータは金属上にエレクトレットが配置されている。ステータ・ロータ間のGAPかっこは50μmに固定し、エレクトレットの厚みを変化させる。その時の空気層に働く垂直電界強度Eyを比較した。
解析結果を図15に示す。
図15はエレクトレットの厚さと電界強度の関係を示す。図15は、縦軸を垂直方向最大電界強度Ey(kV/mm)とし、横軸をエレクトレットの厚さt(μm)としている。
この解析結果からエレクトレットの厚みを増やすとステータ・ロータ間のギャップを一定に保ったまま、電界強度を大きくすることができる。
しかし、実際に金属基板上にCYTOP(エレクトレット材料)を厚く塗布する方法は現実的ではない。そこで、高アスペクト比が比較的容易に製作できるフォトレジスト用絶縁材料のSU−8を絶縁層として厚く塗布し、その上にCYTOP(エレクトレット材料)を塗布する方法を検討した。ここでは、下記3つの工法の違いにより、電界強度に影響がないかシミュレーション上で検討した。
(解析条件)
SU−8工法検討モデル
(1).SU−8(絶縁層)厚さ50μm+エレクトレット(CYTOP)厚さ10μm
(2).エレクトレット単体 厚さ60μm(default)
(3).エレクトレット単体 厚さ10μm(default)
なお、シミュレーションは図14とほぼ同じモデルを使用する。今回のシミュレーションは、空気の絶縁破壊強度も考慮してエレクトレットの表面電荷密度を−0.3mC/m、3相電極の電圧を150Vに設定した。
SU−8工法検討モデルの解析結果を図16に示す。
図16は、縦軸を電界強度(kV/mm)とし、横軸をX方向距離(μm)としている。図16では電界強度が大きい方から順に下記のようになる。
エレクトレット単体60μm(2)>SU−8 50μm+エレクトレット10μm(1)>エレクトレット10μm(3)
(1)のSU−8+エレクトレットの組み合わせは、(2)のエレクトレット単体60μmにはやや劣る程度であり、電界強度としては問題ないといえる。
図16中、ロータ製作プロセスの違いによる電界強度分布も示す。図16中、符号Eyは垂直方向の電界強度(引力、斥力)、Exは水平方向の電界強度を示している。
図17に、それぞれの工法を比較した電界ベクトル図を示す。図17において、電界強度は電界強度表示部200に色が変化して示される。電界強度は、電界強度表示部200の一端200aよりも他端200bが強い電界強度を示している。
この結果、(3)のエレクトレット単体10μmより、(1)のSU−8 50μm+エレクトレット10μm、(2)のエレクトレット単体60μmの方が電界強度は大きくなっている。
(3)のエレクトレット単体10μmは、表面電荷密度−0.3mC/m2、電極−150V付近で斥力が働いているように見えるが、(1)のSU−8 50μm+エレクトレット10μm、(2)のエレクトレット単体60μmだと、エレクトレット側に引き寄せられる引力電界になっている。
このことから引力電界になるのでスイッチングを行う際は注意が必要であり、斥力を発生させるには、電界強度に応じて電極側に−150Vよりも大きな電圧をかけるのが好ましい。
エレクトレットの厚みを増やすと電界強度が大きくなる点について図18に示すコンデンサモデルを使用し、考察を行った。
図18に示すように、誘電体が表面電荷Qs、誘電体表面電位Vsを保持しているとする。ここで、コンデンサの電荷Qは容量C、電圧Vより下記の数式1で表すことができる。
Figure 2015012774
面積一定として空気側の容量Ca、誘電側の容量Cbを定義すると下記の数式2、数式3になる。
Figure 2015012774
Figure 2015012774
数式2、数式3において、真空中の誘電率ε0、誘電体の誘電率ε、ギャップg、誘電体の厚みdを示す
次に誘電体表面電位Vsを表面電荷Qsと数式2、数式3を使って定義すると数式4になる。
Figure 2015012774
これより電界強度Eは誘電体表面電位Vsとギャップgを使って数式5で定義することができる。
Figure 2015012774
ここで、仮にε=g=1とすると、数式5は次の数式6のようになる。
Figure 2015012774
数式6を使って、誘電体の厚みを変化させると数式7、数式8のようになる。
誘電体の厚みd=1の場合
Figure 2015012774
誘電体の厚みd=2の場合
Figure 2015012774
よって、数式7、数式8が示すように、誘電体の厚みを増やすと電界強度が増加することが分かる。このため、エレクトレットの厚みを増やすと電界強度が増加するとともに、SU−8を使った工法は電界強度の観点からすると実用上問題ないということになる。
つまり、導電層3B上に、個別電極6Aを積層して個別電極6Aを形成しても良いし、導電層3B上に絶縁層60を介して個別電極6Aを形成しても、電界強度の低下を抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に図9を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、静電電動機としてラジアルギャップ型の静電モータ10を示している。図9に示すように、静電モータ10は、円筒状の固定子となるステータ12と、ステータ12内に配置された可動子となる円柱状のロータ13とを備えている。ステータ12とロータ13とは半径方向に隙間Dを有するように配置されていて、それぞれに帯状電極として形成されたパターン電極15とパターン電極16が接触しないように構成されている。パターン電極15は、線方向に延在し、絶縁性のステータ12の内周面12Aの周方向に、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。図9の例では、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号15Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号15Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号15Cを付して区別している。
絶縁層を有する円筒状のロータ13の外周面13Aには、複数のエレクトレット材料で構成されたパターン電極16が形成されている。パターン電極16は、外周面13A上に金属により複数の個別電極16Aが軸線方向に延在し、周方向に形成されていて、各個別電極16Aに、単相の配線7がスリップリング8、駆動軸14を介して接続されている。本形態では、ロータ13の回転中心に金属製の駆動軸14が装着されていて、駆動軸14と金属電極16Aとがロータ内部で接触している。
このような構成において、ステータ12の各個別電極15A、15B、15Cに3相交流電流を流すとともに、ロータ13の個別電極16Aを−極とし、個別電極15A、15B、15Cの極を、順次切り替えることで、ステータ12とロータ13間に静電気のクーロン力が作用する。このクーロン力は、ロータ13の個別電極16Aの−極に対して+極となるステータ側の個別電極との間には引力が発生し、−極となるステータ側の個別電極との間には斥力が発生する。このため、個別電極15A、15B、15Cの極の切換え方向、すなわち、各相で発生する電界の合成磁界が順次方向を変えて移動する方向にステータ13を移動することができる。また、本実施形態のように、ロータ13のパターン電極16の各個別電極16Aが単極であることで、ロータ13への給電手段が簡素化でき、駆動ドライバの部品も少なくて済むことから、小型化を図り易くなる。また、ロータ13に給電しない場合よりも、パターン電極15、16間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。
第1の実施形態のようにアキシャルギャップ型は放射状に電極パターン5Aを形成する際、内周と外周の長さが異なるためピッチが可変するが、本実施形態のようにラジアル型の場合、ピッチが可変するということはなく、組み付けが容易である。また、ラジアルギャップ型の場合、各電極の軸線方向の長さを長くすることによりトルクの増大を図ることができる。個別電極15A、15B、15Cに対する極の切換え制御については、後述する。
このような構成のロータ13のエレクトレット材料で構成された個別電極16Aを、上述したロータ3の個別電極6Aのように、ロータ13の外周面13A上に導電層3Bを介して個別電極16Aを形成し、個別電極16Aと導電層3Bの間に絶縁層60を設けることで、個別電極16Aの対向面がロータ13上の導電性層3Bからの離れ、対向電極15A〜15Cと個別電極16A間で効率よく電界を形成することができる。これにより、ステータ12とロータ13の距離Dが離れていても電界強度が弱くなることがなく、静電モータ10のトルクを大きくすることができる。
また、導電層3Bを接地し、導電層3Bと個別電極16Aとを導電層9を介して同通いることですることで、導電層3Bの電位が0Vに固定され、個別電極16Aの電位も変動することがなく、個別電極16Aの帯電状態が安定する。このため、静電モータ10として使用する場合の電圧制御を容易に行うことができる。
(第3の実施形態)
次に図10を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、静電電動機としてリニア型の静電電動機20を説明する。基本的な構成はアキシャルギャップ型、ラジアルギャップ型と同じであり、帯状電極としてのパターン電極25を備えた固定子としてのステータ22と、帯状電極としてのエレクトレット材料で構成されたパターン電極26を備えた可動子23とが互いて隙間Dを持って構成されている。
ステータ22は、絶縁性の基板22A上に複数のパターン電極25が可動方向と直交する方向に延在し、可動方向に間隔を空けて形成されている。基板22A上に形成された複数のパターン電極25は、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。本形態にでは、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号25Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号25Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号25Cを付して区別している。
可動子23は、絶縁性の基板23A上に金属により複数の個別電極26Aが可動方向と直交する方向に延在し、可動方向に間隔を空けて形成されている。パターン電極26は、基板23A上に金属により複数の個別電極26Aが形成されていて、各個別電極26Aに単相の配線7が接続する。
このような構成において、ステータ22の各個別電極25A、25B、25Cに3相交流電流を流すとともに、可動子23の個別電極26Aを−極とし、個別電極25A、25B、25Cの極を、順次切り替えることで、ロータ22と可動子23間に静電気のクーロン力が作用する。このクーロン力は、可動子23の個別電極26Aの−極に対して+極となるステータ側の個別電極との間には引力が発生し、−極となるステータ側の個別電極との間には斥力が発生する。このため、個別電極25A、25B、25Cの極の切換え方向、すなわち、各相で発生する電界の合成磁界が順次方向を変えて移動する方向に可動子23を移動することができる。また、本実施形態のように、可動子23のパターン電極26の各個別電極26Aが単極であることで、可動子23への配線を簡略化することができるので、静電電動機20および印加するための駆動ドライバの小型化、軽量化を図ることができる。可動子23に給電しない場合よりも、パターン電極25、26間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。
リニア型の静電電動機の特徴としては、回転型であるアキシャルギャップ型やラジアルギャップ型に比べて、電極パターン25、26の寸法精度が緩和でき、比較的製作しやすい点にある。このようなリニア型の静電電動機20の場合、可動子23への給電手段が簡素化でき、駆動ドライバの部品も少なくて済むことから、小型化を図り易くなる。また、ポリイミドフィルムを基材として、ロータ22および可動子23を作製することも可能である。
このような構成の可動子23のエレクトレット材料で構成された個別電極26Aを、上述したロータ3の個別電極6Aのように、可動子23の基板23A上に導電層3Bを介して個別電極26Aを形成し、個別電極26Aと導電層3Bの間に絶縁層60を設けることで、個別電極26Aの対向面が可動子23上の導電性層3Bからの離れ、対向電極25A〜25Cと個別電極26A間で効率よく電界を形成することができる。これにより、ステータ22と可動子23の距離Dが離れていても電界強度が弱くなることがなく、リニア型の静電電動機20のトルクを大きくすることができる。
また、導電層3Bを接地し、導電層3Bと個別電極26Aとを導電層9を介して同通いることですることで、導電層3Bの電位が0Vに固定され、個別電極26Aの電位も変動することがなく、個別電極26Aの帯電状態が安定する。このため、リニア型の静電電動機20として使用する場合の電圧制御を容易に行うことができる。
次に、上述した静電電動機の駆動原理となる極性切換え制御の実施形態について説明する。
(第4の実施形態)
図11(a)は、固定子と可動子の各個別電極と、各個別電極への電圧の印加状態を模式的に示し、図11(b)は固定子へ印加する電圧の切替パターンを示す。本形態では可動子(ロータ)側は1相であり、固定子側は3相交流電圧を印加するようにしている。そして、固定子と可動子の個別電極数の比率を、固定子側が可動子側よりも大きくして異なるようにしている。図11の例では、固定子の個別電極を450極とし、可動子の個別電極を300極としている。図11(a)は、回転角度0°を開始位置として回転角度0.6°まで移動した状態を示している。
本実施形態では、可動子のエレクトレット電極が−帯電した状態とする。本実施形態において可動子のエレクトレット電極を−極(マイナス極)に帯電させたが、+極(プラス極)に帯電させることも可能である。
固定子側は、図11(b)に示すように、3相交流に給電し、所定角度(ここでは0.1°)毎に、V電極、W電極、U電極に対して+極、0、−極に電極の極性切換え制御がなされている。なお、所定角度は0.1°に限定されるものではない。
このように各個別電極を定義した場合、固定子の+極と可動子の−極の間には引力が発生する。同時に固定子の−極と可動子の−極の間には斥力が発生する。固定子の0と可動子の−極の間には引力が発生するが、固定子の+極と可動子の−極の間に発生する引力に比べて小さい。図11(a)の例では、これら引力と斥力(静電気のクーロン力)を利用して可動子が右方向へ移動する。このように固定子の電極にかける電圧を角度毎に+、0、−に極性切換え制御すべくスイッチングさせることで、可動子は右方向に持続的に移動する。すなわち、図11に示す極性切換え制御では、斥力と引力の双方を駆動力として利用しているので、十分な駆動力を得ることができる。
この極性切換え制御を、第1、第2の実施形態で示した各静電モータに適用することで、駆動軸4、14を持続的に回転駆動することができ、第3の実施形態で示した静電電動機20に利用することで、モータ以外のリニア型の静電電動機の駆動を持続的に行うことができるようになる。
このような静電電動機の駆動方法とすることにより、可動子が単相であっても駆動することができるので、実用上十分な駆動トルクと剛性を実現しつつも、小型・軽量・薄型な静電電動機を実現することができる。
(第5の実施形態)
図12を用いて、極性切換え制御の別な実施形態について説明する。
図12は、固定子と可動子の各個別電極と、各個別電極への電圧の印加状態を模式的に示す。本実施形態では可動子(ロータ)側は1相であり、固定子側はパルス電圧を印加するようにしている。そして、固定子と可動子の個別電極数の比率を、固定子側よりも可動子側を大きくして異ならせている。図12の例では、固定子の個別電極を450極とし、可動子の個別電極を600極としている。図11は、回転角度0°を開始位置として回転角度0.2°まで移動した状態を示している。
本実施形態では、可動子のエレクトレット電極が−帯電した状態とする。本実施形態において可動子のエレクトレット電極を−極(マイナス極)に帯電させたが、+極(プラス極)に帯電させることも可能である。
固定子側は、パルス電圧に給電し、ここでは、V電極、W電極、U電極に対して初期において+極、−極、−極とし、第1の所定角度(0.15°)移動後に電極の極性切換え制御を行って+極、+極、−極とし、第2の所定角度(0.2°)となると、電極の極性切換え制御を行って−極、+極、−極とする。
このように各個別電極を定義した場合、固定子の+極と可動子の−極の間には引力が発生し、この引力を利用して可動子が図中、右方向へ移動する。このように固定子の個別電極への電圧の極性切換え制御をすべくスイッチングさせることで、可動子は右方向に持続的に移動する。すなわち、図11に示す極性切換え制御では、引力のみを駆動力として利用している。そしてこの実施形態の場合、固定子の+極と可動子の−極とが対向して引力が作用する極数が増えることで、駆動トルクが増大することになり、十分な駆動力を得ることができる。
この極性切換え制御を、第1、第2の実施形態で示した各静電モータに適用することで、駆動軸4、14を持続的に回転駆動することができ、第3の実施形態で示した静電電動機20に利用することで、モータ以外のリニア型の静電電動機の駆動を持続的に駆動することができるようになる。
次に、静電電動機の駆動力について説明する。
ここで静電電動機の推進力Fxtotalおよび平均トルクTを求める数式9、数式10を下記に記載する。
ε0:空気の誘電率
G:固定子・可動子間のギャップ[mm]
L:電極長さ[mm]
V:印加電圧[V]
N:電極数(固定子と可動子)
t:積層数(固定子と可動子)
r:外半径[mm]
r0:内半径[mm]
Figure 2015012774
Figure 2015012774
上記数式9、数式10から、トルクを増やすためには以下の方法が考えられる。
(1)電圧を上げる。
(2)固定子や可動子の基板に形成される電極数および積層数を増やす。
(3)固定子・可動子間のギャップを狭くする。
(4)各個別電極の長さを大きくする。
駆動トルクを増やすには(1)の電圧を上げる方法が一番効果的だが、絶縁破壊の課題や駆動ドライバが大型化する課題がある。このため、最大でも印加電圧を1kV程度しか上げることができない。また、(3)の固定子・可動子間のギャップを狭くする方法も機械公差や回転時のブレの観点から難しく、実現できたとしてもコストが大幅にアップしてしまう。(4)の各個別電極の長さを大きくすることは、静電電動機が大型化してしまう。
このような観点から、静電電動機の小型化を実現しつつ、駆動トルクを増やすには(2)の固定子や可動子の基板に形成される個別電極数および積層数を増やす方法が好ましい。また、上記で説明したように、可動子の基板上に導電層を介して形成されるエレクトレット材料のパターンの個別電極と導電層との間に絶縁層を設けることで、個別電極がロータ上の導電性層からの距離が離れ、対向する電極と個別電極間で効率よく電界を形成することができる。これにより、固定子と可動子の距離が離れていても電界強度が弱くなることがなく、静電電動機のトルクを大きくすることができる。つまり、可動子と固定子の距離(D)(エレクトレット製の電極と対向電極の間のギャップ間距離d)を狭めることなく、出力トルクの向上を図ることができる。
1,10 静電モータ(静電電動機)
2,12,22 ステータ(固定子)
3,13 ロータ(可動子)
5,15,25 複数の帯状電極
6,16,26 エレクトレット材料からなる複数の帯状電極
5A1 対向面(帯状電極の表面)
6A1 対向面(帯状電極の表面)
20 静電電動機
23 可動子
3A 基板
3B 導電層
3B1 基板表面
60 絶縁層
d 可動子の帯電電極の表面と固定子の帯電電極の表面との距離
d1 基板表面と帯電電極の表面との距離
d2 絶縁層の厚み
D 固定子と可動子の距離
特開平6−311763号公報 特開2012−257368号公報

Claims (8)

  1. 互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極を有する固定子と、前記固定子に対向するように配置され、エレクトレット材料からなる複数の帯状電極を有する可動子と、前記固定子の帯状電極に所定の電圧を印可し、前記固定子と前記可動子との電極間に作用する静電気のクーロン力で前記可動子を移動させる静電電動機において、
    前記可動子のエレクトレット材料からなる帯電電極を配する基板表面から当該帯電電極の表面までの距離を離すことにより、帯電電極からの電界を固定子の帯状電極へ作用させることを特徴とする静電電動機。
  2. 前記帯電電極を配する基板表面から当該帯電電極の表面までの距離をd1とし、前記可動子の帯電電極の表面から、前記表面と対向する側に位置する固定子の帯電電極の表面までの距離をdとしたとき、d1>d>0.5d1としたことを特徴とする請求項1記載の静電電動機。
  3. 前記距離d1は、前記可動子の帯電電極と前記基板の間に絶縁層を介装することで形成されていることを特徴とする請求項2記載の静電電動機。
  4. 前記距離d1は、前記可動子の帯電電極を積載することで形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の静電電動機。
  5. 前記基板は、その表面に導電層を有し、
    前記可動子の帯電電極は、前記導電層上に絶縁層を介して形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の静電電動機。
  6. 前記導電層が接地されていることを特徴とする請求項5記載の静電電動機。
  7. 前記可動子の帯電電極と前記導電層が接地されていることを特徴とする請求項5記載の静電電動機。
  8. 前記固定子と前記可動子の対が、複数積層されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の静電電動機。
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