JPH0937569A - 絶縁多層電界モータ - Google Patents

絶縁多層電界モータ

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JPH0937569A
JPH0937569A JP18233195A JP18233195A JPH0937569A JP H0937569 A JPH0937569 A JP H0937569A JP 18233195 A JP18233195 A JP 18233195A JP 18233195 A JP18233195 A JP 18233195A JP H0937569 A JPH0937569 A JP H0937569A
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electrodes
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rotor
voltage
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Tomoaki Abiko
倶明 安彦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電極間に数万ボルト程度の高電圧を印加で
き、磁界形モータと同程度あるいはそれ以上の高出力・
高効率を有し、しかも小型軽量な電界モータを実現する
こと 【解決手段】 電界モータは、フェノール樹脂製の円盤
状回転子1および円盤状固定子20を交互に軸線方向に
多層に配置した構成をしている。回転子1および固定子
20には、それぞれ、フッ素樹脂で被覆した放射状電極
2、22を埋め込んである。双方の電極の間には、フェ
ノール樹脂製の回転子および固定子の部分が絶縁材とし
て介在しており、これに加えて、フッ素樹脂被覆膜が絶
縁材として介在している。この複合絶縁構造を用いれ
ば、ミリ単位の近接電極に対する数万ボルトの高電圧印
加での無放電状態の維持を実現できる。このため、磁界
形モータと同程度あるいはそれ以上の高出力・高効率を
有し、しかも小型軽量な電界モータを実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固定子および回転
子のそれぞれに配置した電極の間に印加した高電圧によ
って発生するクーロン力を回転駆動力として利用する電
界モータに関するものであり、特に、電極間に配置され
る絶縁体として適切な素材を用いることにより、電界モ
ータの高出力・高効率化を図る技術に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】現在一般に使用されている電力モータは
全て磁界の引力、斥力を利用した磁界モータであり、そ
のエネルギー密度は、磁性体の磁気飽和の問題から10
6 J/m3 が実用的な限界であろうと言われている。一
方、電界の引力、斥力を利用した電界モータも知られて
いる。電界モータでは、回転子および固定子のそれぞれ
に配置されている電極に印加する電圧を上昇させると、
これらの間で放電が発生してしまう。このため、数十か
ら数百ボルトの電荷が作るクーロン力を利用する程度の
開発段階で足踏みしているのが現状である。このよう
に、従来の電界モータあるいは静電モータは、低電圧の
電荷を利用しているのみなので、自ずと小型の機種にな
り、目的もマイクロマシンへの利用技術に向けられてお
り、利用分野は極端に制限されている。
【0003】この点を更に説明すると、一般的に、電界
モータ或いは静電モータの出力はエネルギー密度の換算
から磁界モータの2万分の一程度の力を引き出すのが限
界であると思われている。この理由は、電界モータにお
いて電極間の誘電体として空気を前提としており、その
絶縁耐力、すなわち、スパークを起こさないために必要
な距離である3x106 V/Mがエネルギー密度計算の
基礎として成り立っているためであり、その値は50J
/m3 に過ぎないからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ここで、電界モータに
おいて電極間の誘電体として、適切な絶縁体を見いだ
し、これを有効に利用することができれば、その出力を
磁界モータに匹敵する値にまで増大することができる。
しかし、今までに様々な工夫によって電界モータが開発
されてきてはいるが、絶縁体を有効に利用したものが無
く、効率が悪すぎて実用には至たっていないのが現状で
ある。
【0005】一方、磁界モータでは、出力を増加させる
ためには、コイルの巻数を増大させ、大電流を供給でき
るように導線断面積を増大させる必要がある。したがっ
て、ある程度の出力を得ようとすれば、その小型軽量化
には自ずと限界がある。これに対して、電界モータで
は、コイルを形成する必要が無く、また、高電圧を印加
するので電流を必要としないので、導体の断面積を限り
なく微細なものにすることができる。したがって、その
構成要素の殆どをプラスチック等の絶縁体から形成でき
るので、動力源として小型軽量化を容易に図ることがで
きる。
【0006】電界モータの小型軽量化について更に言え
ば、それに必要となる高圧電源についても、近年その技
術が進み、コッククロフト、ウォルトン回路等小型軽量
のものが開発されており、この技術を発展させれば、高
電圧電源をモータの一部に組み込んだ状態でも、全体の
装置を小型軽量なものとすることができる。
【0007】このように、電界モータは、磁界モータと
同程度の高出力・高効率化を図ることができれば、小型
軽量化は容易に実現できるので、その利用範囲は広範囲
になることは明らかである。
【0008】本発明の課題は、この点に鑑みて、新規な
絶縁材を有効に用いることによって、電極間に数万ボル
ト程度の高電圧を印加できるようにし、以て、磁界形モ
ータと同程度あるいはそれ以上の高出力・高効率を有
し、しかも小型軽量な電界モータを実現することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】高電圧利用技術に携わる
中で、放電が起こらなければ、そこには強大なクーロン
力が得られる事は分かっているが、構造材として理想的
な絶縁材が見当たらず今日に至ってしまったが、本発明
者は、今回、使用目的を異にする絶縁材の利用技術の開
発において、その技術が高電圧による電界誘導モータに
利用できる技術であることを見いだし、本発明に至った
のである。
【0010】すなわち、本発明の電界モータにおいて
は、その固定子の側の電極と回転子の側の電極を、それ
ぞれフッ素樹脂で被覆すると共に、これらのフッ素樹脂
被覆電極の間に、フェノール樹脂製の絶縁材を配置した
構成を採用している。
【0011】ここで、前記固定子および前記回転子とし
ては、それぞれ、フェノール樹脂製の薄い絶縁性円盤
と、この内部に放射状に配置されたフッ素樹脂被覆電極
群とから構成することができ、これらの固定子および回
転子を回転軸線方向に向けて交互に多層に配列すること
が好ましい。
【0012】本発明では、フッ素樹脂で電極を被覆する
と共に、これらのフッ素樹脂被覆電極の間をフェール樹
脂で絶縁する構成を採用している。この構成を採用する
ことにより、ミリ単位の近接電極に対する数万ボルトの
高電圧印加での無放電状態の維持を実現できることが確
認された。よって、磁界形モータと同程度あるいはそれ
以上の高出力・高効率を有し、しかも小型軽量な電界モ
ータを実現できる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。
【0014】(基礎理論)電界モータにおいては、理論
的には電極間の絶縁体に比誘電率が大きく絶縁耐力の大
きな媒質が得られれば実用可能な電界モータを得ること
が出来ると言われている。まず、参考までに、この点に
ついての理論的な説明をする。
【0015】クーロンの法則から、二つの点電荷間に働
く静電気力Fは F=k0 ・Q1 2 /r2 (N) で求めることができる。上式から、力Fは電荷に比例し
距離の二乗に反比例することが分かる。k0 は真空中に
於ける比例定数である。上式における単位はMKSA単
位系であり、距離についてはメートル単位でとらえるも
のであり、ミリ単位で考えるものではないが、その力が
距離の二乗に逆比例するのであるから、距離が千分の一
になればその力は百万倍になる。また、線電荷における
1Mあたりのクーロン力は次の計算式によって算出する
ことができる。
【0016】 F=Q1 2 /4πε0 εs 2 (N/M) Q1 2 はそれぞれの線電極がもつ電荷であり、静電容
量と電圧の積によって求めることができる。静電容量C
は、 C=ε0 εs S/d (F) で求められる。
【0017】ここで、ε0 は真空における誘電率であ
り、εS は絶縁材の比誘電率であり、Sは導体の面積、
dは導体間の距離である。
【0018】仮に、二本の長い導線を平行に1mmの間
隔で張り、それぞれプラス、マイナス50kvの直流電
圧を印加するとその電位差は100kvになり、激しい
放電が発生し、供給電力の全てを、熱とイオンと電磁波
として消費することになる。
【0019】しかし、その間に絶縁材を置き、放電を起
こさせなければ、そこには電流が流れないので、電力は
消費されず、何の仕事もなし得ないが、両電極の周囲に
は強力な電場(電界)が形成され、何らかの仕事ができ
る状態にある。
【0020】すなわち、そこにはクーロン力が生じてお
り、印加電圧がプラスとマイナスであれば、それは引力
として現れ、電極同士が強く引かれることになる。この
力が、コンデンサーにおける絶縁体が誘電体となり、静
電容量を増大させるために比誘電率の大きな誘電体が有
効であることの論証となる。
【0021】しかし、電極同士が強く引かれているだけ
では、物理的には何の仕事もなしえない。そこで、この
力を磁界モータと同様に固定子と回転子の組合せによっ
て回転運動に変換できれば動力源として利用することが
できる。
【0022】先に述べたように、エネルギー変換媒体に
絶縁体を用いて確実な絶縁をとり、電極の間隔をミリ単
位にとり、印加電圧を数万ボルトにすれば、絶縁体によ
る電圧降下を算入しても、エネルギー密度は磁界系と同
等までに上げることができる。すなわち、電極間距離が
1mmで5万ボルトの電圧を印加し、絶縁破壊を起こさ
なければ、その空間には約1.4x106 J/m3 のエ
ネルギー密度が現れる。絶縁体の電気抵抗によって30
パーセント程度の電圧降下があっても、約1x106
/m3 であるから、磁界系モータと同等の値となる。
【0023】また、大きな電荷を得るには、電圧を高く
するか、面積あるいは体積を大きくして、静電容量を増
大させなければならない。しかし、電圧の増大に対して
は、面積、体積を増大させる必要はなく、逆に、同じ電
力であれば、電圧が高いほど導線を細くできるので、軽
量、小型化を図るならば、できるだけ高い電圧を供給す
ることが有効になる。
【0024】そこで、先にも述べたように、電界強度は
距離の二乗に反比例するので、距離が小さくなればそこ
に現れる力は累乗的に増大することになる。したがっ
て、静電容量を増大させるために比誘電率の大きな絶縁
体によって電荷を比例的に増大させるよりも、電圧降下
の小さい絶縁体によって電極同士の距離をできるだけ小
さくして電界強度を大きくすることが有効になる。
【0025】したがって、コンデンサーにおいては電気
容量を増大させるために大きな電束密度の得られる比誘
電率の大きな値の絶縁材を用いるが、電界強度を大きく
得るには、上式からも分かるように比誘電率は小さい程
良いことになる。
【0026】以上のことから、電界のクーロン力を最大
限に利用するには、「絶縁破壊を起こさせずに、できる
だけ高い電圧を掛け、二極間の距離をできるだけ小さく
とり、電圧降下と比誘電率の小さい絶縁材」を探せば良
いことが分かる。
【0027】換言すると、実用可能な電界モータを実現
するためには、電圧降下と比誘電率の小さい絶縁材を用
いればよいことになる。
【0028】(絶縁材)このような要求を満足する絶縁
材について説明する。本発明で使用する絶縁材は、静電
植毛加工に使用する安全な高電圧電極を実現するために
利用したものを採用している。この絶縁材料の特性と働
きを検討することによって、本発明者は、電界誘導モー
タのネックとなっていなた絶縁破壊の問題を解決できる
ことを見い出した。ここで、以後の理解を容易にするた
めに、本発明者らが開発した静電植毛加工用の安全電極
の特性および働きをまず説明する。
【0029】安全電極 静電植毛加工装置を製作する中で、これまでにどうして
も避けることができなかった高電圧のスパークによる火
災事故を起こさないための安全な電極を開発することが
できた。静電植毛加工とは、目的物に接着剤を塗布した
後に、長さが1mm前後の短繊維を強電界(20乃至1
00kv)のクーロン力を利用して目的物に植え込み、
乾燥して、ビロード状の皮膜を形成する技術である。電
界強度を最大限に活用する為に、ピアノ線、ステンレス
線等を電極として作成しているために、何からの原因で
被植毛物との距離が近づき過ぎた時、スパークを起こし
て、火災を起こすケースが多々あり、静電植毛加工と火
災は付き物の様に思われてきた。そこで数万ボルトの電
圧印加によって充分な電界強度が得られ、その状態でア
ースを接触させても絶縁破壊によるスパークを起こさ
ず、且つ、短繊維の繰り返し飛翔運動を継続させるため
の電荷の移動ができる、という安全な電極をフッ素樹脂
被覆線を用いることによって開発することができた。
【0030】ここで、不導体は電界の作用で、その内部
の原子、分子に極性を生じて誘電分極を生ずるので、強
電界は不導体内の分子の空隙を透過し、その力を容易に
外部にも及ぼすことができる。しかし、シールド線は、
本来その電界を外部に及ぼさないために考案されたもの
であるから、静電植毛用の電極材料として用いるなら
ば、充分な絶縁耐力と微小電流の透過という相反する要
求を満たさなければならない。そこで問題になるのが絶
縁破壊である。高電圧下における絶縁破壊は主としてシ
ンチレーション(局部的な微小発光放電)による分子破
壊であり、有機高分子化合物等の絶縁材ではシンチレー
ションの微小なジュール熱によって炭素が遊離され、遊
離された炭素がシンチレーションを加速させるというよ
うに、相乗効果となって短時間で絶縁破壊に至ってしま
う。
【0031】しかし、シンチレーションの初期状態が発
現しても炭素のような良導体が遊離されなければ絶縁破
壊には至らないか、或いは、絶縁破壊に到るまでに長時
間を要することになる。したがって、絶縁材として炭素
のような良導体を持たない無機物を用いればよいのだ
が、強い張りを持たせながら小さな角度で折り曲げなけ
けらばならない静電植毛用の線状電極を作成できる柔軟
性に富んだ無機質の絶縁材は見当たらない。
【0032】また、シンチレーションは微小放電の状
態、即ち、微量の電荷の移動が行われている状態である
から、この状態を保持できれば静電植毛用の電極となり
得る訳である。
【0033】そこで、有機高分子化合物であっても微小
放電の発熱によって分子破壊を起こさないもの、すなわ
ち、耐熱性の優れたものを用いれば良いわけである。し
かも、静電植毛用の電極に用いられる電流は1m当たり
0.01mAの微少電流であるから、微少放電による電
流で充分に補うことができる。そこで着目したのが高い
耐熱性をもつフッ素樹脂被覆導線である。
【0034】電界強度及び放電実験 測定距離10cmにおける裸導線、線径0.8mmの電
界強度の値と、テフロン被覆線、芯径0.8mm、外径
1.3mm、皮膜厚0.25mmの値との差によって被
覆表面の電界強度を算出する。電界強度は E=ko・Q/r2 によって求めることができるので、この式を変形して、 Q=E・r2 /ko の式に測定値を代入すれば、各印加電圧における電荷を
求めることができる。その値と、距離0.25mmを元
の計算式に代入すれば、その距離の電界強度を求めるこ
とができる。実験結果から表1のような値が得られ、算
出された値から0.25mmのテフロン皮膜による電圧
降下は12.5%であることが求められた。すなち、8
7.5%の電界がクーロン力として有効に働くことがで
きるという結果が得られた。
【0035】
【表1】
【0036】また、高電圧下における空中放電の発光状
態を観るために、暗室の中で、線径0.3mmの裸線
と、前述のテフロン被覆線で、それぞれの放電実験を行
い、次のような結論を得た。
【0037】1 裸線に電圧を印加し、徐々に電圧
を上げると、20kv程で空中放電が行われていること
を表す風切音のような音を発する。 30kvまで上げると、音が強くなり、線全体の周
囲が僅かに青白く発光する。 更に、電圧を上げると音が強くなり、発光の明るさ
が増し、60kv付近でかなり強く発光する。 この状態で、放電のエネルギーを観るために、塩化
ビニル製の細い棒を発光部分に接触させ30秒間置いた
が変色等の変化は無かった。 更に電圧を上げ、80kvになると発光色が僅かに
赤みを帯びて更に明るくなる。 再び、塩化ビニル製の棒を発光部分に30秒間接触
させると、僅かに茶色に変色した。
【0038】2 テフロン被覆線に電圧を印加し、
徐々に電圧を上げると被覆線にではなく、絶縁耐力をみ
るために接触させたアース線の被覆が無い部分に空中放
電と同じ青白い発光が生じた。 更に昇圧すると、80kvで、線の数カ所から部分
的に僅かに青白い発光が現れ、前述のアース部の発光が
更に明るくなった。 この状態で被覆線にアースを接触させてもスパーク
は起こらない。 なお、その状態を維持し約60秒経過したところ
で、アースを接触させた位置ではなく、約3cm離れ
た、前述のの他より強く発光する部分から強い放電が
起こり、その部分の絶縁破壊が起きた。
【0039】本実験では、高圧発生器の限界出力電圧が
80kvなので、これ以上のテストはできなかったが、
実験結果から次の事柄が考察できる。
【0040】1 被覆の無い裸線では20kv或いはそ
れ以下で空中放電が容易に起こり、30kv程度でコロ
ナ放電が確認できる。
【0041】2 線全体から発するコロナ放電のエネル
ギは小さく、青白いコロナ放電では塩化ビニルを炭化さ
せる程の力はない。
【0042】3 80kv程で見られる赤みを帯びた放
電になると、微弱ではあるが塩化ビニルを炭化させるだ
けのエネルギがある。
【0043】4 テフロン被覆線では、40kv付近で
絶縁体力を観るために接触させたアース線に発光現象が
現れることから、この時点で既に空中放電が行われてい
る。すなわち、発光現象は電極から飛び出した電子が空
中の分子と衝突してこれをイオン化するとき、集中的に
行われている部位に観察される現象であるから、絶縁被
覆全体の表面付近で発光を伴わない程、微量の分子がイ
オン化されアース線に集中するために、あたかもアース
線が放電をしているような発光現象を起こすのである。
【0044】5 75kv程で、電界の力が絶縁抵抗を
打ち破り、微弱ではあるが発光を伴う程の空中放電を行
うことができる。被覆線で部分的に強く発光するのは、
その部分の材質に不純物が混入しているか或いは製造工
程のばらつきで皮膜の厚さが薄くなっているためと思わ
れる。
【0045】6 絶縁破壊に至る時間と絶縁破壊部分の
アース迄の距離には相関関係があり、その距離が短けれ
ば絶縁破壊を起こす時間はもっと早かったであろう。
【0046】以上のように、テフロン被覆線のコロナ放
電を確認することによって、これが静電植毛用の電極線
として利用できるものであることが分かり、この材料で
電極を作成し静電植毛装置に装着したところ良好な植毛
状態が得られ、作業中に誤って電極に触れても感電する
ことの無い、安全な電極を完成することができた。
【0047】ここで言うテフロンは一般的に導線被覆材
として用いられているPTFE、PFA、FEP、ET
FEであり、それぞれ高電圧耐力、放電性、電圧降下率
等に差があるが、モータのサイズなどの使用目的によっ
てそれぞれの特性を最大限に生かして用いればよい。し
たがって、それぞれのテフロンの分子構造の違いにより
高電圧下における諸特性が解明されれば、より有効な材
料を開発することができるものと思われる。また、本願
人の実験によれば、1年以上毎日使用した静電植毛装置
の電極に60kvの電圧を印加してアースを接触させて
もスパークを起こさないので、相当の耐久性があること
も確認できた。
【0048】以上の安全電極の高電圧における電界の透
過状態と絶縁効果の安定性が電界誘導モータを開発する
ための問題点、すなわち、「ミリ単位の近接電極に対す
る数万ボルトの高電圧印加での無放電状態の維持」とい
う課題を解決するためのヒントになった。
【0049】(電界モータの構造)本発明においては、
上記のように、絶縁材を絶縁材としてではなく、言うな
れば強電界中における電界制御材として用いる。すなわ
ち、数万ボルトあるいは数十万ボルトの高電圧を印加す
ると共に、電界の力を出来るだけ阻害することなく、出
来る限り小さな距離で絶縁を取ることによって、大きな
クーロン力を引出し、その引力、斥力を電界の位相変化
によって回転トルクに変換して、電界モータを構成する
ようにしている。
【0050】電界モータとして効率を最大限に発揮でき
る構造は、面状の回転子と固定子によるトルク発生方式
である。すなわち、レコード盤のような薄い板状の回転
子と固定子に微細な電極を放射状に埋設し、それぞれの
電極が対向する状態となるように回転子および固定子を
対峙させ、その間にクーロン力による引力と斥力を発生
させ、その力を回転トルクに変換する形式のものであ
る。したがって、この形式の電界モータでは、回転子と
固定子を、軸線方向に交互に配列することにより、その
効率を向上させることができる。
【0051】なお、固定子および回転子の電極に印加す
る電圧の位相変換の方法としては、磁気モータの直流モ
ータの場合のような整流子とブラシによって行う方法が
簡便である。しかし、電界モータでは高電圧を印加する
必要があるので、整流子の間隔を大きく取る必要があ
り、このために、整流子が大きくなってしまう。したが
って、一般的なサイズのモータでは、角度検出のための
エンコーダを併用した供給電源の周波数変調による位相
変換の方法が適当である。この場合には、回転子に対す
る電源供給は、スリップリングと接触ブラシの組合せを
利用すればよく、この部分の絶縁構造を工夫すれば相当
の小型化を達成できる。
【0052】次に、回転子、固定子の構造材としての絶
縁材に求められる性能は、電界制御性と、高電圧におけ
る最適な絶縁漏電(放電)特性と、高速回転に耐える機
械的強度である。
【0053】ここで言う電界制御性とは、絶縁材の誘導
分極によって生ずる表面電荷も有効に利用しようとする
ものであり、発生電荷に特定の向きを持たせられるよう
な材料が開発出来れば、より一層のエネルギ変換効率の
向上を図ることができるということである。また、適当
な絶縁漏電特性とは、高電圧下において1mm以下の距
離で、絶縁破壊を起こさずに、電界エネルギの殆どを透
過し、微量の通電能力のある材料が開発できれば、最終
的には理論計算によって算出される強大なトルクを引き
出すことができるのである。ここで問題となるのは、絶
縁耐力を得ようとすると通電性が得られず、通電性が現
れると比誘電率が増大し、通電性が無いと残存電荷が大
きくなりヒステリシス損が生じてしまうということであ
る。この相反する要求をどう解決することができるのか
が課題である。
【0054】本発明では、特性の異なった高分子化合物
による複合材の形で回転子と固定子を製作するようにし
ている。すなわち、帯電についての研究から、絶縁性の
高い高分子ほど帯電性が大きいことが知られており、そ
の中でもフッ素樹脂は最も帯電性が大きく、且つ、帯電
を恒久的に持続するエレクトレットになることが知られ
ている。また、フェノール樹脂は最も帯電しにくいもの
として知られている。
【0055】したがって、ヒステリシス損の解決には、
絶縁材としてフェノール樹脂を用いれば良いことなる。
しかし、フェノール樹脂の絶縁耐力は1011しかなく、
フッ素樹脂に比べて七桁も小さく。このため、フェノー
ル樹脂のみでは充分な絶縁を確保することができない。
そこで、放射電極をフッ素樹脂で被覆して絶縁耐力を補
償し、円盤をフェノール樹脂で製作すれば、残存電荷に
よるヒステリシス損を相当小さくすることができる。
【0056】図1ないし図7には、本発明を適用した電
界モータの構造およびその構成部品の構造を示してあ
る。以下に、図面を参照して各構成部品および全体の構
造を説明する。
【0057】(回転子の構造)まず、図1には、本発明
を適用した電界モータの構成要素である回転子を示して
ある。本例の回転子1は、図1(a)に示すように、薄
い円盤状をしたフェノール樹脂板から形成されており、
中心には、回転軸装着孔1aが形成されている。本例で
は、この回転子1の大きさは、厚さが0.55mm、外
径が40cm、装着孔内径が16cmである。この回転
子1には、太さ0.01mmのフッ素樹脂被覆電極2を
放射状に300本埋め込んで配置してある。回転軸装着
孔1aの内周縁には厚さが2.5mmの厚肉の環状ボス
1bが形成されており、この厚肉ボス1bの部分がスペ
ーサとして機能して、図7に示すように組まれた状態に
おいて隣接する固定子との隙間が保持されるようになっ
ている。
【0058】ここで、各放射状電極2は、一本置きに二
系統に分割配線してあり、各系統の電極群は、それぞ
れ、内側の環状ボス1bの内部でそれぞれ結線してあ
る。各系統の電圧印加用接続端子3、4は、環状ボス1
bの直径方向の両端に配置されていると共に、それぞれ
反対側の環状端面側に引き回されて、その内周面から先
端が露出している。これにより、これらの間の絶縁距離
を確保している。
【0059】また、環状ボス1bの内周面には等角度で
凹凸が形成され、回転子を確実に回転軸に装着固定する
ための装着部として機能する。
【0060】(回転軸の構造)図2に示すように、回転
軸10は、駆動シャフト11の外周に回転子固定用の絶
縁スリーブ12を同軸状態に固定した構造となってい
る。絶縁スリーブ12の外周面は、上記の回転子1を軸
端側から装着できるように、回転子の環状ボス1bの内
周面形状に対応する外周面形状とされている。また、そ
の外周の両端側に回転子固定用の環状突起12a、12
bが形成されており、これらの間に、上記の回転子1を
軸線方向に向けて多数枚積層配列できるようになってい
る。
【0061】ここで、回転子1の高圧端子3、4への電
力供給用接触端子13、14は、絶縁スリーブ12の直
径方向の両端側における外周面にそれぞれ埋め込まれ、
軸線方向に向けてそれぞれ逆方向に延びてブラシ接触子
15、16にそれぞれ接続している。これらの端子には
逆極性の電源が供給される。各配電系統における回転子
1のブラシ接触子15、16はリング状であり、常に接
触ブラシと軽く接触する構造としてある。
【0062】図3には、回転軸10に回転子1を取り付
けた状態を示してある。なお、周波数変調制御では、回
転子の角度検出が必要なので、図に示すように、回転軸
10の出力側とは反対側の端にエンコーダ17を固定し
て角度検出を行うようにしてある。
【0063】(固定子の構造)図4に示すように、固定
子20は回転子1を一回り大きくした形状をしており、
厚さは、回転子1と同様に0.55mmであり、その内
径は18cm、外径は42cmとしてある。固定子20
もフェノール樹脂製である。固定子20では、その外周
端に厚肉の環状ボス20bが形成されており、中心には
回転軸10を通すための軸孔20aが形成されている。
また、回転子1と同数のフッ素樹脂で被覆した放射状電
極22が埋め込まれており、これらの電極22は、回転
子1の場合とは逆に、外周端で結線をとり、二系統に振
り分けて、それらの先端の接続端子23、24は、反対
側の端面に向けて延びている。
【0064】(モータハウジング)図5を参照して説明
すると、モータハウジング30は、耐熱プラスチック、
セラミックス等の絶縁材で成形したものをベースとし
て、外周を電界遮蔽のために金属材料で覆うか、あるい
は、導通性塗料を塗布して接地を取ってある。モータハ
ウジング30は円筒状をしており、その底壁31および
先端壁32には同軸状態にベアリング33、34が取付
けられており、これらによって、回転軸10のシャフト
両端が回転自在に支持される。先端壁32の中心には軸
孔32aが開いており、ここを介して、回転軸10の先
端がモータ出力軸として外部に突出する。また、モータ
ハウジング30の内部において、底壁31および先端壁
32よりも中寄りの位置には、それぞれ中心孔が形成さ
れが環状遮蔽板33、34が形成されている。底壁側の
遮蔽板33よりも内側の位置には第一系統の固定側接触
ブラシ35が配置されており、この内部には電極36が
埋め込まれている。同様に、先端壁側の遮蔽板34より
も外側の位置には第二の系統の固定側接触ブラシ37が
配置されており、この内部には電極38が埋め込まれて
いる。なお、底壁側においては、接触ブラシ35の内側
に更に円盤状の遮蔽板39が配置された構造となってい
る。
【0065】図6には、この構造のモータハウジング3
0に固定子20を装着した状態を示してある。さらに、
図7には、回転子1も装着した状態を示してある。な
お、高電圧電源からの接続端子の構造は図には示してい
ないが、それぞれの接触ブラシに電圧を印加すると共に
確実な絶縁が保たれるように配慮されている。
【0066】一方、電源供給は、固定子、回転子に同時
に同極の高電圧交流を供給し、電圧と周波数変調によっ
て回転速度を制御することを基本としているが、磁界モ
ータの直流モータのように、接触ブラシと整流子によっ
て回転子の位相変換によっても同様の回転トルクを得る
ことができる。この場合、スパークのジュール熱による
溶融の問題が生ずるので耐久性の問題が発生するが、高
電圧電源が直流型の場合、コンデンサの積層回路である
コッククロフト、ウォルトン回路にように小型軽量化が
容易なでの、接触ブラシと整流子に耐熱性の高い金属を
用いる等の工夫をして、位置検出エンコーダを必要とし
ない簡便な構造とすることもできる。
【0067】引力テスト 実際に電界誘導モータを作成するには、インジェクショ
ン成形機、プリント配線設備等の相当大がかりな設備と
費用が掛かるので、現段階では、安全電極に用いたテフ
ロン被覆線を用いて、実際に線電荷において理論値に近
い引力値が得られることをテストする。
【0068】テフロン被覆線を30cm角の絶縁体の枠
に間隔5mmで平行に10本張り、+50kvの直流電
圧を印加して、アースを取った10cm角のアルミニウ
ム板を吸着させると20gの引力を計測することができ
る。
【0069】このテスト方法は、理論的にはもう一本の
電極に−50kvの電圧を印加した場合の1/2の値が
えられるので、絶縁皮膜の厚さの2倍、即ち絶縁距離
0.5mmで、一対の導体間に正負50kvの電圧を印
加した場合、2倍の40gの引力が得られることにな
る。従って、単純に計算して、この電極が3000mあ
れば120kgの引力が得られることになる。即ち、一
方の電極を固定して、もう一方の電極に120kgの張
力を掛けても引き離されないということである。
【0070】この力をニュートン量に置き換えると1
(N)は1kgm/s2 であるから、120kgの張力
は120(N)ということになる。この値は、同じ条件
における理論計算の引力370(N)の約1/3にしか
ならないが、これは、テフロン被覆線を固定することが
できない為のたわみが生じたり、線自体に微妙な曲がり
が有りアルミニウム板との間隔が正確に0.25mmに
なっていない等、実験方向に問題があるので、より確実
な方法でテストすれば理論計算による算出値に近い値が
得られるはずである。
【0071】電圧印加のタイミングにおいては、基本的
には磁気モータの各種の始動方法と同じ考え方でよく、
使用目的によって様々な方法が考えられるが、低速回転
においては、理論計算を行ったようなタイミングで電圧
を印加すので、印加時間はかなり長くなるが、回転の上
昇に伴って残存電荷が回転トルクに対して反発力となる
ので、残存電荷を打ち消すためと、クーロン力伝達時間
の遅れを考慮してタイミングを早めて行かなければなら
ない。
【0072】仮に、回転数を毎分1800回とすれば、
今回の設計寸法の場合、放射電極が300本であるか
ら、供給電源には21260Hzの高周波が必要にな
り、印加時間は4.2x10-5秒というマイクロ秒単位
のパルス波となり、エネルギ変換効率はより優れたもの
になる。また、この構造は、電極に殆ど重量が発生せ
ず、他の構成要素をプラスチックあるいは軽量のセラミ
ックス等で作成することができるので、動力源の軽量化
を図ることができる。
【0073】この原理は、磁気モータでも同じである
が、磁気モータでは磁界を発生させるために、コイルを
形成しなければならず、強い磁界を発生させるには、大
きな電流を流さねばならないので、太い導線を使い、巻
付け数を多くしなければならないために、それなりの大
きな体積を示すことになり、そのエネルギ変換効率には
おのずと限界が生ずる。
【0074】特に電磁誘導モータにおける固定子のコイ
ルにおいては、その構造上コイル両側に現れる磁界の一
方しか動力エネルギに変換することができず、もう一方
の発生磁力は無駄になってしまっている。しかし、電界
誘導モータでは、そこに現れるクーロン力の回転方向の
力の全てを回転エネルギに変換することができ、且つ、
積層による相乗効果を生むことができるので、非常に高
効率の動力源を得ることができる。また、電界誘導モー
タにおいては、その外径を大きく取れば、それなりに電
極の数を増やすことができ、大きくなることによる重量
の増大よりも、それによって得られる出力の増加量が上
回るので、より効率を引き上げることになる。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電界モー
タにおいては、電極間の絶縁材料として、フェノール樹
脂およびフッ素樹脂を用いている。すなわち、フッ素樹
脂によって電極を被覆すると共に、このように被覆した
電極をフェノール樹脂製の絶縁材で絶縁するようにして
いる。したがって、ミリ単位の近接電極に対する数万ボ
ルトの高電圧印加での無放電状態の維持を実現すること
ができる。よって、磁界形モータと同程度あるいはそれ
以上の高出力・高効率を有し、しかも小型軽量な電界モ
ータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電界モータの構成要素である回転
子を示す図である。
【図2】本発明による電界モータの構成要素である回転
軸を示す図である。
【図3】図2の回転軸に図1の回転子を装着した状態を
示す図である。
【図4】本発明による電界モータの構成要素である固定
子を示す図である。
【図5】本発明による電界モータの構成要素であるモー
タハウジングを示す縦断面図である。
【図6】図5のモータハウジング内に固定子を装着した
状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明による電界モータの縦断面図である。
【符号の説明】
1 フェノール樹脂製の回転子 2 フッ素樹脂で被覆された回転子側の放射状電極 10 回転軸 11 駆動シャフト 20 フェノール樹脂製の固定子 22 フッ素樹脂で被覆された固定子側の放射状電極 30 モータハウジング

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定子および回転子のそれぞれに配置し
    た電極の間に高電圧を印加して得られるクーロン力を用
    いて回転出力を得る電界モータにおいて、 前記固定子の側の電極と前記回転子の側の電極のそれぞ
    れをフッ素樹脂で被覆すると共に、これらの被覆電極の
    間にフェノール樹脂製絶縁材を配置してあることを特徴
    とする電界モータ。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記固定子および前
    記回転子は、それぞれ、フェノール樹脂製の薄い絶縁性
    円盤と、この内部に放射状に配置されたフッ素樹脂被覆
    電極群とから構成されており、これらの固定子および回
    転子が回転軸線方向に向けて交互に多層に配列されてい
    ることを特徴とする絶縁多層電界モータ。
JP18233195A 1995-07-19 1995-07-19 絶縁多層電界モータ Pending JPH0937569A (ja)

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Cited By (5)

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