JP2015015881A - 静電電動機 - Google Patents

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長尾 和也
Kazuya Nagao
和也 長尾
升澤 正弘
Masahiro Masuzawa
正弘 升澤
崇尋 今井
Takahiro Imai
崇尋 今井
大樹 山下
Daiki Yamashita
大樹 山下
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Abstract

【課題】構成の簡略化を図ることで、小型・軽量とするとともに、十分な駆動力を得られる静電電動機を提供する。
【解決手段】 本発明に係る静電電動機は、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極5を有する固定子2と、固定子に対向するように配置され、複数の帯状電極6を有する可動子3とを有し、固定子の帯状電極に電圧を印加し、固定子2と可動子3の間に作用する静電気のクーロン力で移動子を移動せしめるものであり、可動子3が単極であって、固定子の帯状電極5と可動子の帯状電極6の一部が重ならないように構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電電動機に関するものである。
磁石を使用しない静電電動機の1例として静電モータが知られている。静電モータは軽い、薄い、構成が簡単といったメリットがあるが、磁石を使った電磁モータに比べトルクが小さく、高電圧を必要とするため未だに実用化に至っていない。そこで、半導体プロセス技術を使ってフィルムに複数のパターン電極を形成し、このフィルムを積層し、大トルクを取り出す方法やエレクトレットと呼ばれる永久帯電した物質を電極して使って駆動電圧を下げる方法が既に知られている。従来の静電モータは電極の数が互いに等しい可動子と固定子の両方に2相もしくは3相の交流電圧を印加することで、静電気のクーロン力となる引力および斥力を発生させて可動子を動かしていた。しかし、この駆動方式では高電圧の回路が必要なため、大型化になってしまい、静電モータのメリットである薄型化、小型化といったことが薄れてしまう。また、可動子に永久帯電したエレクトレットを使用する場合、固定子側移動子側の電極比率が3:1では十分な駆動力が得られず、駆動したとしても断続的な動きとなり、トルクリップルが大きかった。また、可動子に2極のエレクトレットを有する場合は、隣り合う電極同士が放電してしまうおそれがあった。
特許文献1(特開平2−285978号公報)には、固体表面の間に静電気を発生させたフィルムを利用した静電アクチュエータを提供する目的で、絶縁体内に配線される複数の帯状電極を具備する固定子と、その固定子上に設置され、フィルム上の絶縁体層および抵抗体層からなる移動子(可動子)と帯状電極への電圧の切り換えにより、移動子を浮上させ駆動するとともに、位置決めを行う構成が開示されている。
特許文献2(特開平4−112683号公報)には、移動子側の永久分極された誘電体を利用して立ち上がり時間短縮とトルクを大きくする目的で、表面に複数の電極が所定間隔で形成された絶縁基板を有し、かつこれら各電極表面が絶縁処理された固定子と、前記絶縁基板表面に対向して前記固定子上に載置され、前記絶縁基板表面に対向する面に永久分極された誘電体領域が形成され、該誘電体領域が前記電極の間隔に応じた間隔で複数配置された移動子と、互いに対向する前記電極と前記誘電体領域との間に前記移動子を移動せしめる移動電界を形成するように、前記複数の電極に多相電圧を印加する駆動手段とを具備したことを特徴とする静電アクチュエータが開示されている。
特許文献3(特開平5−184162号公報)には、零またはごくわずかな摩擦力で駆動する空間保持装置を提供する目的で、間隔をあけて配置されかつ相対的に予め定める移動方向に移動自在に第1手段と第2手段とが設けられ、第1手段は、移動方向に隣接して第1、第2および第3電極から成る第1組合せ領域が設けられて構成され、第2手段は、移動方向に延びる電気絶縁層の表面に、移動方向に隣接して第1および第2エレクトレットから成る第2組合せ領域が設けられて構成され、第1および第2エレクトレットにそれぞれ帯電されている電荷は相互に逆極性であり、第1、第2および第3電極には、第1手段と第2手段とが静電力によって移動方向に移動するための電圧を与える電源が接続されることを特徴とする静電アクチュエータが開示されている。
特許文献1の構成では、可動子にブラシ等の給電手段が無くてもよく、駆動回路が要らないという利点はあるものの、この構成でモータを構成した場合、可動子の剛性がないため、軸トルクによって可動子自身が破壊され実用上は使用できないという課題がある。また、可動子に給電しないため、固定子側の電極との電位差が小さく、十分な静電気による吸引力(駆動力)が発生しないという課題がある。
特許文献2の構成では、固定子と移動子の電極比率が3:1であり、駆動方法が記載されている。この構成の場合、常に固定子側の電極と可動子側のエレクトレットが重なる位置に存在するため、電圧を十分大きくするか、電極ABCの電極間距離を十分小さくし、固定子と可動子のギャップ距離を十分小さして、固定電極と斜めにあるエレクトレットを静電力が十分働く距離まで近づけなければならない。よって、Micro−Electro−Mechanical−Systems(以下、「MEMS」と記す)レベルでは駆動可能でもマクロレベルでは駆動できないおそれがある。また、その際、隣り合う逆極性の電極が近接し、放電を起す可能性がある。さらに駆動したとしても断続的な駆動になるため、トルクリップルが大きくなってしまう。
特許文献3の構成では、隣接し合っているエレクトレットに帯電させる手段が明確に記載されていない。特許文献3の構成でトルクを大きくしようとすれば、エレクトレットの極数を増加させる必要があるが、極数が増加すると、その分、隣り合う逆極性のパターンが近接し、放電を起す可能性がある。また、エレクトレットを用いる場合、極性を交互に帯電させること自体が非常に難しい。
本発明は、前記の問題点を解決するためのものであり、構成の簡略化を図ることで、小型・軽量とするとともに、十分な駆動力を得られる静電電動機を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る静電電動機は、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極を有する固定子と、固定子に対向するように配置され、複数の帯状電極を有する可動子とを有し、固定子の帯状電極に電圧を印加し、固定子と可動子間に作用する静電気のクーロン力で移動子を移動せしめる静電電動機であって、可動子が単極であって、固定子の帯状電極と可動子の帯状電極の一部が重ならないことを特徴としている。
本発明によれば、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極を有する固定子と対向する側に配置され、複数の帯状電極を有する可動子が単極であって、固定子の帯状電極と可動子の帯状電極の一部が重ならないことで、構成の簡略化を図って小型・軽量とするとともに、固定子の複数の帯状電極と可動子の帯状電極間の静電気のクーロン力を、可動子に給電しない場合よりも多く得ることができ、駆動時常に力が働いているため、電極幅が同じで電極比率3:1の場合よりも十分な駆動力を得られ、トルクリップルも小さい静電電動機を提供することができる。
本発明に係る静電電動機の第1の実施形態の主要構成をと示す斜視図。 (a)は第1の実施形態における固定子の構成を示す平面視図、(b)は(a)の断面図。 (a)は第1の実施形態における可動子の構成を示す平面視図、(b)は(a)の断面図。 本発明に係る静電電動機の第2の実施形態の概略構成を示す一部破断斜視図 本発明に係る静電電動機の第3の実施形態の概略構成を示す斜視図。 本発明に係る静電電動機の第4の実施形態の主要構成をと示す斜視図。 (a)は第4の実施形態における可動子の構成を示す平面視図、(b)は(a)の断面図。 固定子と可動子の電極数比率が3対2の場合における駆動制御を示すもので、(a)は電圧切替えと可動子の移動状態を模式的に示す図、(b)は固定子への印加する電圧の切替えパターンを示す図。 固定子と可動子の電極数比率が3対4の場合における、電圧切替えパターンと可動子の移動状態を模式的に示す図。 電荷の注入に用いるコロナ荷電装置の概略構成図。 従来構成の電極比率3:1の駆動方法を説明する図。 電極比率の違いによるトルクリップルの概略図。 解析モデルの概略図。 電極比率3:2における電極幅w/電極ピッチpのトルクに対する影響を説明する図。 電極比率3:2w/p=0.5におけるステータ・ロータ間ギャップG/電極ピッチpのトルクに対する影響を説明する図。
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお各図面、各実施形態において、同一部材又は同一機能を有する部材には、基本的には同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1、図2、図3を用いて、本発明に係る静電電動機の第1の実施形態の構成について説明する。
第1の実施形態に係る静電電動機は、アキシャルギャップ型の静電モータ1である。図1に示すように、静電モータ1は薄い平面上に帯状電極としてのパターン電極5を形成した固定子(以下「ステータ」と記す)2と、帯状電極としてのパターン電極6を形成した可動子(以下「ロータ」記す)3と、駆動軸4を備えている。ステータ2とロータ3とは互いに対向して配置されていて、微小ギャップを保ちながら複数枚積層(複数層積層)されて構成されている。駆動軸4は金属製で、ロータ3だけに連結されていて、ロータ3が回転移動することで一体回転するように構成されている。ステータ2とロータ3の間に微小ギャップを設ける方法としては、例えば特開2005−278324号公報に記載のように数十μmのビーズをステータ2とロータ3の間に入れることや、特開2005−210852号公報に記載のようにロータ3の側面にスペーサを挟む周知技術を用いて達成することができる。
ステータ2に形成された複数のパターン電極5には、ここでは、3相の配線が3つのパターン電極5を1組としてそれぞれ接続されている。この3相の配線はU、V、Wと記載する。ロータ3に形成された複数のパターン電極6には、単相の配線7がされている。ロータ3への給電は、スリップリング8と呼ばれる内面に給電ブラシがついたものを駆動軸4に装着し、このスリップリング8に配線7を接続することで、駆動軸4経由で行なわれる。図1に示す第1の実施形態では、ステータ2のパターン電極5にU、V、Wの3相の配線を接続して極数を3層として構成しているが、ステータ2側の相数は3相に限定されるものでしなく、2相の配線をして駆動するようにしても良い。
図2を用いてステータ2の構成についてより詳細に説明する。
ステータ2は、図2(a)、図2(b)に示すように、中心に貫通孔2Cを有する円環状の基板2A上に複数のパターン電極5が形成されている。基板2Aは、例えばガラス、セラミックス、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド等の絶縁体で構成されている。基板2A上に形成された複数のパターン電極5は、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。図2の例では、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号5Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号5Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号5Cを付して区別している。基板2Aの貫通孔2Cには、駆動軸4が絶縁部材を介してあるいは非接触状態で挿入される。パターン電極5の電極形状は、図2(a)に示すように、放射状のパターンとして形成されている。また、パターン電極5の各個別電極5A、5B、5Cは、エッジからの絶縁破壊を防ぐために、曲率化処理を行うこともある。
図3を用いてロータ3の構成についてより詳細に説明する。
ロータ3は、図3(a)、図3(b)に示すように、中心に貫通孔3Cを有する円環状の基板3A上に複数のパターン電極6が形成されている。基板3Aも、基板2A同様に、ガラス、セラミックス、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド等の絶縁体で構成されている。パターン電極6は、基板3A上に金属により複数の個別電極6Aが放射状に形成されていて、各個別電極6Aに単相の配線が接続する。本実施形態では、基板3Aの貫通孔3Cに駆動軸4が挿入されることで駆動軸4と金属電極6Aと接触するとともに、駆動軸4と基板3Aとが固定されて一体化される。
このような構成において、ステータ2の各個別電極5A、5B、5Cに3相電圧を印加するとともに、ロータ3の個別電極6Aを単極とし、個別電極5A、5B、5Cの極を、順次切り替えることで、ステータ2とロータ3間に静電気のクーロン力が作用する。このクーロン力は、ロータ3の個別電極6Aの極性に対して対極となるステータ側の個別電極との間には引力が発生し、同極となるステータ側の個別電極との間には斥力が発生する。このため、個別電極5A、5B、5Cの極の切換え方向、すなわち、各相で発生する電界の合成電界が順次方向を変えて移動する方向にロータ3を移動することができる。また、本実施形態のように、ロータ3のパターン電極6の各個別電極6Aが単極であることで、ステータ2への給電手段が簡素化でき、駆動ドライバの部品も少なくて済むことから、小型化を図り易くなる。また、ロータ3に給電しない場合よりも、パターン電極5、6間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。個別電極5A、5B、5Cに対する極性切換え制御については、後述する。
(第2の実施形態)
次に図4を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、静電電動機としてラジアルギャップ型の静電モータ10を示している。図4に示すように、静電モータ10は、円筒状の固定子となるステータ12と、ステータ12内に配置された可動子となる円柱状のロータ13とを備えている。ステータ12とロータ13とは半径方向に隙間を有するように配置されていて、それぞれに帯状電極として形成されたパターン電極15とパターン電極16が接触しないように構成されている。パターン電極15は、軸線方向に延びていて、絶縁性のステータ12の内周面12Aの周方向に、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。図4の例では、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号15Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号15Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号15Cを付して区別している。
絶縁性を有する円筒状のロータ13の外周面13Aには、複数のパターン電極16が形成されている。パターン電極16は、外周面13A上に金属により複数の個別電極16Aが軸線方向に延び、周方向に並んで形成されていて、各個別電極16Aに、単相の配線7がスリップリング8、駆動軸14を介して接続されている。本実施形態では、ロータ13の回転中心に金属製の駆動軸14が装着されていて、駆動軸14と金属電極16Aとがロータ内部で接触している。
このような構成において、ステータ12の各個別電極15A、15B、15Cに3相電圧を印加するとともに、ロータ13の個別電極16Aを単極とし、個別電極15A、15B、15Cの極を、順次切り替えることで、ステータ12とロータ13間に静電気のクーロン力が作用する。このクーロン力は、ロータ13の個別電極16Aの極性に対して対極となるステータ側の個別電極との間には引力が発生し、同極となるステータ側の個別電極との間には斥力が発生する。このため、個別電極15A、15B、15Cの極の切換え方向、すなわち、各相で発生する電界の合成電界が順次方向を変えて移動する方向にステータ12を移動することができる。
また、本実施形態のように、ロータ13のパターン電極16の各個別電極16Aが単極であることで、ロータ13への給電手段が簡素化でき、駆動ドライバの部品も少なくて済むことから、小型化を図り易くなる。また、ロータ13に給電しない場合よりも、パターン電極15、16間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。
第1の実施形態のようにアキシャルギャップ型は放射状に電極パターン5Aを形成する際、内周と外周の長さが異なるためピッチが可変するが、本実施形態のようにラジアル型の場合、ピッチが可変するということはない。個別電極15A、15B、15Cに対する極の切換え制御については、後述する。
(第3の実施形態)
次に図5を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、静電電動機としてリニア型の静電電動機20を説明する。基本的な構成はアキシャルギャップ型、ラジアルギャップ型と同じであり、帯状電極としてのパターン電極25を備えた固定子としてのステータ22と、帯状電極としてのパターン電極26を備えた可動子23とが互いて隙間を持って配置構成されている。
ステータ22は、絶縁性の基板22A上に複数のパターン電極25が可動方向と直交する方向に延びていて、可動方向に間隔を空けて形成されている。基板22A上に形成された複数のパターン電極25は、複数の金属電極をパターン化して形成したもので、それぞれの個別電極に3相配線が行われている。本実施形態にでは、U、V、Wの1組の配線のみを例示している。本実施形態において、U配線が成されてU電極となる個別電極には符号25Aを付し、V配線が成されてV電極となる個別電極には符号25Bを付し、W配線が成されてW電極となる個別電極には符号25Cを付して区別している。
可動子23は、絶縁性の基板23A上に金属により複数の個別電極26Aが可動方向と直交する方向に延びていて、可動方向に間隔を空けて形成されている。パターン電極26は、基板23A上に金属により複数の個別電極26Aが形成されていて、各個別電極26Aに単相の配線7が接続する。
このような構成において、ステータ22の各個別電極25A、25B、25Cに3相交流電流を流すとともに、可動子23の個別電極26Aを単極とし、個別電極25A、25B、25Cの極を、順次切り替えることで、ロータ22と可動子23間に静電気のクーロン力が作用する。このクーロン力は、可動子23の個別電極26Aの極性に対して対極となるステータ側の個別電極との間には引力が発生し、同極となるステータ側の個別電極との間には斥力が発生する。このため、個別電極25A、25B、25Cの極の切換え方向、すなわち、各相で発生する電界の合成電界が順次方向を変えて移動する方向に可動子23を移動することができる。また、本実施形態のように、可動子23のパターン電極26の各個別電極26Aが単極であることで、可動子23への配線を簡略化することができるので、静電電動機20および印加するための駆動ドライバの小型化、軽量化を図ることができる。可動子23に給電しない場合よりも、パターン電極25、26間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。
リニア型の静電電動機の特徴としては、回転型であるアキシャルギャップ型やラジアルギャップ型に比べて、電極パターン25、26の寸法精度が緩和でき、比較的製作しやすい点にある。このようなリニア型の静電電動機20の場合、可動子23への給電手段が簡素化でき、駆動ドライバの部品も少なくて済むことから、より小型化を図り易くなる。
(第4の実施形態)
図6、図7、図8を用いて第4実施形態について説明する。第4の実施形態に係る静電電動機は、アキシャルギャップ型の静電モータ30である。図6に示すように、静電モータ30は薄い平面上にパターン電極5を形成した固定子としてのステータ2と、帯状電極としてのパターン電極36を形成した可動子としてのロータ33と、駆動軸34を備えている。ステータ2とロータ33とは互いに対向して配置されていて、微小ギャップを保ちながら複数枚積層されて構成されている。駆動軸34は第1の実施形態同様、ロータ33だけに連結されていて、ロータ33が回転移動することで一体回転するように構成されている。
第4の実施形態に係る静電モータ30は、第1の実施形態に係る静電モータ1に対してロータ33の構成が異なっている。このため、ロータ33の構成を中心に説明する。ロータ33は、図7(a)に示すように、中心に貫通孔33Cを有する円環状の基板33A上に複数のパターン電極36が形成されている。基板33Aは、絶縁性の板であって、図7(b)に示すように、その表面にアルミ等の導電パターン電極33Bを介してエレクトレットパターン電極36が形成されている。
本実施形態において、パターン電極36は、帯状パターン膜に電荷を注入したエレクトレットとして形成されている。ここでエレクトレットとは、フッ素樹脂などの絶縁体に電場を加えて電気分極(正と負の電気に分かれた状態)を起させ、その状態が半永久的に保持されているものをいう。本実施形態の場合、図7(b)に示すように、絶縁性の基板33Aに導電パターン33Bを形成しているので、電場を加えた際の電気分極の状態が安定し、パターン電極36をエレクトレットとして安定した状態で形成することができる。
上述した特許文献3には、静電引力に加え反発力(斥力)を利用してトルクを大きくする目的で、偶数個のエレクトレットを等間隔に形成し、隣接し合っているエレクトレットを互いに逆極性となるように帯電させて可動子とし、各エレクトレットの個数の倍数の電極をエレクトレットと対面するように等間隔に配置して各エレクトレットにそれぞれ2つの電極を対応させて固定子としている。そして固定子の電極の極性を順次切り替えることで、可動子を駆動させる駆動回路が開示されている。しかし、この構成でトルクを大きくしようとすれば、エレクトレットの極数を増加させる必要があるが、極数が小さくなるとその分隣り合う逆極性のパターンが近接し、隣接するパターン(個別電極)間で放電を起す可能性がある。また、極性を交互に帯電させること自体が非常に難しい。
そこで本実施形態のように基板33Aの同一平面上に形成されるエレクトレット電極となる個別電極36Aは、全て+極あるいは−極の何れかの同一極(単極)に帯電させて、単極の電極とした。このため、製造上容易に形成することができる。
このようにステータ2のパターン電極5に、エレクトレットされたパターン電極36を形成されたロータ33を近づけると、ステータ2とロータ33の間に電界が生じるため、ロータ33に給電手段が不要になり、モータ構造が大幅に簡素化できる。さらに、ロータ33のエレクトレット製の電極(パターン電極36/個別電極36A)の表面電荷密度を向上させることによって、ステータ2側に印加する2相又は3相の電圧を低減することができる。このため、低電圧駆動が可能になり、モータ本体だけでなく駆動ドライバも小型化することができる。また、ロータ33に給電しない場合よりも、パターン電極5、36間の静電気のクーロン力を多く得ることができ、十分な駆動力を得ることができる。
本実施形態では、アキシャルギャップ型のロータ33のパターン電極36をエレクトレットにしたが、エレクトレットのパターン電極を用いる実施形態としては、第2、3の実施形態のようなラジアルギャップ型やリニア型の静電電動機にも適用することができる。このような実施形態に適用した場合、ロータ13や可動子23に給電手段が不要になり、静電電動機の大幅な簡素化を図ることができる。また、エレクトレット電極(パターン電極16,26)の表面電荷密度を向上させることによって、ステータ12、22側に印加する2相又は3相の電圧を低減することができ、低電圧駆動が可能になり、駆動ドライバも小型化することができる。
次に、上述した静電電動機の駆動原理となる極性切換え制御の実施形態について従来構成と比較しながら説明する。
図11は、従来技術である特許文献2(特開平4−112683号公報)に記載の静電アクチュエータを示す図であって、断面構造を示している。この静電アクチュエータは、図11(a)に示すように、固定子10Aと、これに載置された移動子20Bと、アクチュエータを駆動するための駆動回路(不図示)とから構成されている。固定子10Aは、絶縁基板11Aの表面に複数の固定子電極12Aが所定間隔で形成されていて、さらにこれら固定子電極12A上に絶縁膜13Aが成膜されている。また、各固定子電極12Aには、電圧印加端子A、B、Cがそれぞれ設けられている。各固定子電極12Aには、三相駆動電圧が駆動回路から印加される。移動子20Aは、絶縁基板21Aの固定子20Aとの対向面に永久分極された誘電体(以下、「エレクトレット」と呼ぶ)22Aが複数箇所に形成されていて、もう一方の面には導電膜23Aが形成されている。エレクトレット22Aは、固定子電極12Aの電極幅と同一幅で、固定子電極12Aの3ピッチに1つ形成されている。つまり、電極比率は3:1である。
次に、特許文献2の構成による動作について図11、図12を参照して説明する。図12は、固定子と可動子の電極比率によるトルクリップルを示す線図である。図12において、横軸は固定子に対する可動子の移動角度(極性切換え角度)を示し、縦軸はトルクを示す。
先ず、移動子20Aのエレクトレット22Aが固定子10Aの所定の固定子電極12Aの真上にくるように設定する。この状態で、固定子電極12Aの各端子A−Cに印加する電圧を全て負電圧にすると、図11(a)に示すように、移動子20A側から固定子10A側へ向かう電気力線が生じ、移動子20Aが固定子10Aに吸着される(ステップ1)。
次に、A端子に正電圧、B端子に負電圧、C端子に0電位がそれぞれ印加され、図11(b)に示すような、A端子電極側から隣接したB端子電極側へ向かう電気力線が形成される(ステップ2)。その結果、エレクトレット22Aの正電荷は電気力線に沿った力を受けて、浮上し、かつ図中右方向へ電極1ピッチ分移動する。図11(c)は移動後の状態を示す。
次に、全ての固定子電極12Aが負電位とされて、図11(d)に示すような電気力線が形成され、移動子20Aが固定子10Aに吸着される(ステップ3)。以下、図示しないシーケンスで上記ステップ1〜3を繰返すことにより、移動子20Aが図中右方向へ移動する。
特許文献2では上記のような3:1の電極比率で固定子の帯状電極幅と可動子の帯状電極幅が同じことを特徴としていた。この構成の場合、固定子側の電極と可動子側のエレクトレットが完全に重なる位置に存在するため、固定側電極と斜めにある可動子側エレクトレットを静電力が十分働く距離まで近づけなければならない。電極A、B、Cの電極間距離を十分小さくし、固定子と可動子のギャップ距離を十分小さくすることで達成できるが、MEMSレベルでは駆動可能でもマクロレベルでは駆動できないおそれがある。また、電極A、B、Cの隣り合う逆極性の電極が近接し、放電を起す可能性がある。さらに駆動したとしても極性が切り替わる瞬間トルクが零になるので、断続的な駆動になり、トルクリップルが非常に大きく、騒音や振動も大きいおそれがあった。
上記従来技術に対し、本発明に係る静電電動機としての静電モータ1、静電モータ10、静電電動機20、静電モータ30は、互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極(パターン電極5、15、25)を有する固定子(ステータ2、12、22)と対向する側に配置され、複数の帯状電極(パターン電極6、16、26、36)を有する可動子(ステータ2、13、23、33)が単極であって、固定子の帯状電極(パターン電極5、15、25)と可動子の帯状電極(パターン電極6、16、26、36)の一部が重ならないことを特徴としている。
(第5の実施形態)
図8は、本発明に係る静電電動機の駆動原理となる極性切換え制御を説明する図である。図8(a)は、固定子(ステータ)と可動子(ロータ)の各個別電極と、各個別電極への電圧の印加状態を模式的に示し、図8(b)は固定子へ印加する電圧の切り替えパターンを示す。本実施形態では可動子側は1相であり、固定子側は3相電圧を印加するようにしている。そして、固定子と可動子の個別電極数の比率を、固定子側が可動子側よりも大きくして異なるようにしている。また、固定側の電極幅と可動子側の電極幅は異なっている。図8の例では、固定子の個別電極を450極とし、可動子の個別電極を300極とし、電極比率を3:2としている。つまり固定子の個別電極と可動子の個別電極比率をn:(n−1)*2(nは3以上の正の整数としている。図8(a)は、回転角度0°を開始位置として回転角度0.6°まで移動した状態を示している。本実施形態では、可動子は単相に接続して−極(マイナス極)に給電した状態であり、エレクトレットの場合は−帯電した状態とする。ここでは、説明上、便宜的に−極(マイナス極)としたが、+極(プラス極)としてもよい。
固定子側は、図8(b)に示すように、3相電圧に給電し、所定角度(ここでは0.1°)毎に、V電極、W電極、U電極に対して+極、0、−極に電極の極性切換え制御がなされている。なお、所定角度は0.1°に限定されるものではない。
このように各個別電極を定義した場合、固定子の+極と可動子の−極の間には引力が発生する。同時に固定子の−極と可動子の−極の間には斥力が発生する。固定子の0と可動子の−極の間には引力が発生するが、固定子の+極と可動子の−極の間に発生する引力に比べて小さい。図8(a)の例では、これら引力と斥力(静電気のクーロン力)を利用して可動子が右方向へ移動する。このように固定子の電極にかける電圧を角度毎に+、0、−に極性切換え制御すべくスイッチングさせることで、可動子は右方向に持続的に移動する。すなわち、図8に示す極性切換え制御では、斥力と引力の双方を駆動力として利用しているので、十分な駆動力を得ることができる。
この極性切換え制御を、第1、第2、第4の実施形態で示した各静電モータに適用することで、駆動軸4、14、34を持続的に回転駆動することができ、第3の実施形態で示した静電電動機20に利用することで、モータ以外のリニア型の静電電動機の駆動を持続的に行うことができるようになる。
このような静電電動機(静電モータ1、静電モータ10、静電電動機20、静電モータ30)の駆動方法とすることにより、図12に示すように駆動時常に力が働いているため、固定側電極と斜めにある可動子側エレクトレットの距離を電極比率3:1の場合よりも離すことができ、寸法上余裕によってマクロレベルのモータも製作することが可能である。また、固定子の隣接間の電極を十分距離を離すことで放電を防ぐことが可能になる。
さらに、図12に示すように、連続的な駆動になるため、トルクリップルが非常に小さく、騒音や振動も抑えることが可能である。また、可動子が単相であっても駆動することができるので、実用上十分な駆動トルクと剛性を実現しつつも、小型・軽量・薄型な静電電動機を実現することができる。
(第6の実施形態)
図9を用いて、極性切換え制御の別な実施形態について説明する。
図9は、固定子と可動子の各個別電極と、各個別電極への電圧の印加状態を模式的に示す。本実施形態では可動子(ロータ)側は1相であり、固定子側はパルス電圧を印加するようにしている。そして、固定子と可動子の個別電極数の比率を、固定子側よりも可動子側を大きくして異ならせている。図9の例では、固定子の個別電極を450極とし、可動子の個別電極を600極とし、電極比率を3:4としている。つまり固定子の個別電極と可動子の個別電極比率をn:n±1(nは3以上の正の整数)としている。図9は、回転角度0°を開始位置として回転角度0.2°まで移動した状態を示している。
本実施形態では、可動子は単相に接続して−極(マイナス極)に給電した状態であり、エレクトレットの場合は−帯電した状態とする。ここでは、説明上、便宜的に−極(マイナス極)としたが、+極(プラス極)としてもよい。
固定子側は、パルス電圧に給電し、ここでは、V電極、W電極、U電極に対して初期において+極、−極、−極とし、第1の所定角度(0.15°)移動後に電極の極性切換え制御を行って+極、+極、−極とし、第2の所定角度(0.2°)となると、電極の極性切換え制御を行って−極、+極、−極とする。
このように各個別電極を定義した場合、固定子の+極と可動子の−極の間には引力が発生し、この引力を利用して可動子が図中、右方向へ移動する。このように固定子の個別電極への電圧の極性切換え制御をすべくスイッチングさせることで、可動子は右方向に持続的に移動する。すなわち、図9に示す極性切換え制御では、引力のみを駆動力として利用している。そしてこの実施形態の場合、固定子の+極と可動子の−極とが対向して引力が作用する極数が増えることで、駆動トルクが増大することになり、十分な駆動力を得ることができる。
この極性切換え制御を、第1、第2、第4の実施形態で示した各静電モータに適用することで、駆動軸4、14、34を持続的に回転駆動することができ、第3の実施形態で示した静電電動機20に利用することで、モータ以外のリニア型の静電電動機の駆動を持続的に駆動することができるようになる。
次に固定子と可動子の電極数比率について説明する。
図8に示すように固定子と可動子の個別電極の電極数比率が3:2の場合と、図9に示すように固定子と可動子の個別電極の電極数比率が3:4の場合の駆動原理を説明する。
電極数比率が3:2の場合は、上記で記載した通り、引力と斥力を利用した駆動方法とする。この駆動方法は可動子の電極パターン(個別電極)が第4の実施形態で示したエレクトレットの場合は問題ないが、可動子が単なる電極の場合は斥力を働かせるために大きな電圧(数kV〜)を必要とする。このことは、MEMSの静電アクチュエータの分野では知られており、静電アクチュエータは引力駆動が一般的である。
そこで、可動子がエレクトレットではない電極の場合は、引力のみによって駆動する方法を考えると、電極数比率は図9に示すように3:4とするのが好ましい。これは固定子と可動子の電極数比率を3:4にし、図9に示した電極の極性切換え制御を行なうことで、引力によって、可動子が図9中、持続的に右方向へと移動することになる。電極数比率が3:4の電極の切換え制御は、単に電極の場合だけでなく、エレクトレット製の電極の場合に用いても構わない。
このような静電電動機の駆動方法とすることにより、駆動時常に力が働いているため、固定側電極と斜めにある可動子側エレクトレットの距離を電極比率3:1の場合よりも離すことができ、寸法上余裕によってマクロレベルのモータも製作することが可能である。また、ステータの隣接間の電極を十分距離を離すことで放電を防ぐことが可能になる。さらに、図12に示すように連続的な駆動になるため、トルクリップルが非常に小さく、騒音や振動も抑えることが可能である。また、可動子が単相であっても駆動することができるので、実用上十分な駆動トルクと剛性を実現しつつも、小型・軽量・薄型な静電電動機を実現することができる。
次に、静電電動機の駆動力について説明する。
ここで1987年にW.S.N.Trimmer,K.J.Gabrielが発表した非特許文献1に記載のコンデンサモデルを使った平均トルクTを求める式を下記に記載する。
Figure 2015015881
:平均トルク
ε:空気の誘電率
V:印加電圧[V]
G:固定子・可動子間のギャップ [mm]
n:可動子有効極数
p:可動子ピッチ、[mm]
:外半径、[mm]
ri:内半径 [mm]
N:積層数
上記数1から、トルクを増やすためには以下の方法が考えられる。
(1)電圧を上げる。
(2)固定子や可動子の基板に形成される電極数および積層数を増やす。
(3)固定子・可動子間のギャップを小さくする。
(4)各個別電極の長さを大きくする。
駆動トルクを増やすには(1)の電圧を上げる方法が一番効果的だが、絶縁破壊の課題や駆動ドライバが大型化する課題がある。このため、最大でも印加電圧を1kV程度しか上げることができない。また、(3)の固定子・可動子間のギャップを小さくする方法も機械公差や回転時のブレの観点から大変難しく、実現できたとしてもコストが大幅にアップしてしまう。(4)の各個別電極の長さを大きくすることは、静電電動機が大型化してしまう。このような観点から、静電電動機の小型化を実現しつつ、駆動トルクを増やすには(2)の固定子や可動子の基板に形成される個別電極数および積層数を増やす方法が好ましい。
上記「数1」に記載の式は、あくまでは平行平板におけるコンデンサモデルを基に作られている。よって、可動子回転時、エレクトレット幅と電極幅の重なる領域が変化する際の静電エネルギの影響は考慮されていない。実際のトルクは電極ピッチpと電極幅wの影響を考慮しなければならない。そこで、コンピュータを用いたシミュレーションによる解析を行った。図13は、解析に用いたモデルを示す。図13に示す解析モデルは、電極比率3:2でステータが3相電極、可動子がエレクトレット単極とする。固定子、可動子ともに外形65mm、内径43.4mmのアキシャルギャップモータを考える。ステータは500μmのポリイミド上に厚さ10μmの3相アルミ電極UVWを電極ピッチ0.8°で配列する。ロータは厚さ10μmのエレクトレットがアルミ基板上に0Vで接地された状態でピッチ1.2°で配列する。電圧はUVW電極に0V、−300V、+300V、エレクトレットに−300Vを設定する。固定子・可動子間のギャップ120μm、固定子、可動子ともに電極ピッチ固定の条件で電極幅を振ったときのトルクを計算した。このモデルを用いた解析結果を図14に示す。縦軸のトルクは上記「数1」で計算されたトルクで解析トルクを割っている。図14の結果から、固定子の電極幅w/電極ピッチpが0.5の場合、トルクが最大となることがわかる。
次にw/p=0.5固定で、固定子・可動子間のギャップGを変更した場合の解析結果を図15に示す。図15の解析結果から、固定子・可動子間のギャップGが小さいほど上記「数1」に近づきトルクが大きくなることがわかる。
このシミュレーション結果から電極比率3:2の場合、固定子、可動子ともに電極幅w/電極ピッチp=0.5でパターンを作製すると最大トルクが得られ、その状態でさらにステータ・ロータ間ギャップを小さくすることでよりトルクを大きくすることができる。
次は、固定子および可動子の製造方法について説明する。
本発明に係る固定子および可動子の製造方法は、既存技術が使用できる。例えば特開2012−257368号公報に記載の方法が挙げられる。
(電極形成工程)
固定子および可動子のパターン電極の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を利用できる。具体的には、たとえば基板上に導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜をパターニングする方法が挙げられる。導電性薄膜の形成方法としては、物理的蒸着法、無電解めっき法等が挙げられる。物理蒸着法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
無電解めっき法とは、金属塩、還元剤等を含む無電解めっき液に、表面に触媒が付着した基板を浸漬し、還元剤から生じる電子の還元力によって、触媒が付着した基板表面において選択的に金属を析出させ、無電解めっき膜を形成する方法である。無電解めっき液に含まれる金属塩としては、ニッケル塩(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等。)、第二銅塩(硫酸銅、塩化銅、ピロリン酸等。)、コバルト塩(硫酸コバルト、塩化コバルト等。)、貴金属塩(塩化白金酸、塩化金酸、ジニトロジアンミン白金、硝酸銀等。)等が挙げられる。無電解めっき液に含まれる還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、テトラヒドロほう酸ナトリウム、ジアルキルアミンボラン、ヒドラジン等が挙げられる。
無電解めっき法により導電性薄膜を形成する場合、導電性薄膜を形成する前に、予め、基板の表面に触媒を付着させておくことが好ましい。無電解めっき法に用いる触媒としては、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体等が挙げられる。
導電性薄膜のパターニングは、フォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせ、ナノメタルインク等を印刷することによる配線形成、等により実施できる。例えばフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせによるパターニングは、導電性薄膜上にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成した後、該レジスト膜に対し、露光、現像を行うことでパターン(レジストマスク)を形成し、該レジストマスクをマスクとして導電性薄膜をエッチングすることにより実施できる。
導電性薄膜のエッチングは、例えばエッチング液として導電性薄膜を溶解する液体(通常は酸性溶液)を用いたウェットエッチングにより実施できる。また、ナノメタルインク等を印刷する方法としてはスクリーン印刷法、インクジェット法またはマイクロコンタクトプリンティング法等を用いることができる。ナノメタルインクとは前述の導電性材料のナノ粒子を有機溶媒や水等に分散させたインクのことをいう。
(パターン膜形成工程)
パターン膜の形成方法としては、特に限定されず、公知のパターニング技術を利用できる。具体例として、たとえば下記方法(Ia)〜(Ie)等が挙げられる。
方法(Ia):前記パターン電極が形成された基板上に、前記含フッ素重合体(A)を含むコーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、エッチングにより、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして前記パターン膜を形成する方法。
方法(Ib):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜上に、パターン電極に対応するパターンでパターニングされたレジスト膜を形成し、該レジスト膜をマスクとして前記コーティング膜をドライエッチングして、該レジスト膜の形状を前記コーティング膜に転写する方法。
方法(Ic):電極付き基板上に、前記コーティング液を塗布し、ベークしてコーティング膜を形成し、該コーティング膜を、インプリント法により、前記パターン電極に対応するパターンにパターニングして前記パターン膜を形成する方法。
方法(Id):電極付き基板上に、前記コーティング液の印刷により、前記パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン液層を形成し、乾燥して、パターン膜を形成する方法。
方法(Ie):電極付き基板表面に、前記パターン電極に対応する撥油・親油のパターニングを施した後、前記コーティング液のディップまたは印刷により、前記パターン電極を被覆し、該パターン電極に対応するパターンで形成されたパターン液層を形成し、乾燥して、パターン膜を形成する方法。
パターニング後、さらに、形成されたパターン膜の角(上面と側面との連絡部分)を曲面とするための処理(曲面化処理)を行ってもよい。該曲面化処理方法としては、該パターン膜を熱処理する方法、該パターン膜をウェットエッチングする方法、該パターン膜上にポリマー溶液を塗布してポリマー膜を形成し、該ポリマー膜をドライエッチングする方法等が挙げられる。これらの中でも、熱処理する方法が好ましい。特に、コーティング液としてシランカップリング剤を含有するものを用いる場合、熱処理を行うことで、保持した電荷の熱安定性がさらに向上する。上記方法(Ia)〜(Ie)や曲面化処理については、特開2011−50212号公報に記載の方法により実施できる。
(電荷注入工程)
上述のようにして形成されたパターン膜に電荷を注入することで、該パターン膜をエレクトレットとすることができる。
電荷の注入方法としては、一般的に絶縁体を帯電させる方法であれば手段を選ばずに用いることができる。たとえば、G.M.Sessler, Electrets Third Edition,pp20,Chapter2.2“Charging and Polarizing Methods”(Laplacian Press, 1998)に記載のコロナ放電法、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が適用可能である。本発明においては特にコロナ放電法、電子ビーム衝突法を用いることが好ましい。
コロナ放電法による電荷の注入方法の一例を、図10を用いて説明する。図10は、電荷の注入に用いるコロナ荷電装置の概略構成図である。コロナ荷電装置においては、コロナ針72と、電極73とが対向配置され、直流高圧電源装置71(たとえばHAR−20R5;松定プレシジョン製)により、コロナ針72と電極73との間に高電圧を印加できるように構成されている。コロナ針72と電極73との間にはグリッド74が配置され、該グリッド74にはグリッド用電源75からグリッド電圧を印加できるように構成されている。パターン膜に注入される電荷の安定を図るため、ホットプレート76によって、電荷注入工程中のパターン膜をガラス転移温度以上に加熱できるように構成されている。符号77は電流計である。このコロナ荷電装置の電極73上に、パターン膜が形成された基板を戴置し、ホットプレート76によって加熱し、グリッド用電源75からグリッド74にグリッド電圧を印加するとともに、直流高圧電源装置71によりコロナ針72と電極73との間に高電圧を印加する。これにより、コロナ針72から放電した負イオンが、グリッド74で均一化された後、電極73上に戴置したガラス基板61表面のパターン膜上に降り注ぎ、電荷が注入されることで、エレクトレットの電極パターン(個別電極)を得ることができる。
(実験結果)
上記の知見を元に実際に固定子と可動子を製作し駆動実験を行った。固定子は電極内径44mm、電極外径112mm電極数675個の3相のFlexible printed circuits(FPC)製のプリント回路基板(FPC基板)を製作した。可動子はΦ125mmのガラス基板に電極内径44mm、電極外径112mm、電極数450個のアルミ電極を蒸着し、パターン電極上にエレクトレット材料であるサイトップ(旭硝子製)を約10μmスピンコートしてフォトリソプロセスでパターン化した。固定子/可動子の電極比率は3:2であり、固定子/可動子ともに電極幅w/電極ピッチp=0.5で試作した。
パターン化したエレクトレットはグリット加熱装置付きのコロナ帯電器で100℃にサンプルを加熱しながらチャージャー印加電圧5kV、グリット電圧1.3kV、グリット-サンプル間距離1.5mmの条件で40回帯電した。その結果、平均−400Vの電位を得た。
駆動実験は3相のFPC基板をガラス板に固定し、ギャップに10μmのミクロパール(積水化学製)の微粒子をまき、その上からエレクトレットロータを載せて、3相のFPC基板に10Hz、±300Vの矩形波を印加した。その結果、可動子が1rpmで回転することを確認した。
上述した実施形態によると、電極パターンを有する固定子と、固定子に対向するように配置され、複数の帯状電極となる個別電極で構成された電極パターンを有する可動子とを設け、固定子の帯状電極に電圧を印加し、固定子と可動子間の静電気のクーロン力で可動子を移動せしめる静電電動機において、固定子の帯状電極と可動子の帯状電極の一部が重ならないことで、駆動時常に力が働いく。このため、固定側電極と斜めにある可動子側エレクトレットの距離を電極比率3:1の場合よりも離すことができ、寸法上余裕によってマクロレベルのモータも製作することが可能である。また、固定子の隣接間の電極を十分距離を離すことで放電を防ぐことが可能になる。さらに、連続的な駆動になるため、トルクリップルが非常に小さく、騒音や振動も抑えることが可能である。また、可動子が単相であっても駆動することができるので、実用上十分な駆動トルクと剛性を実現しつつも、小型・軽量・薄型な静電電動機を実現することができる。
第4の実施形態に係る静電電動機としての静電モータ30では、ステータ2の電極パターン5に対応したロータ33の電極パターン36となる帯状パターン膜に電荷を注入して可動子側をエレクトレットとすることで、磁石を用いた電動機に比べて巻線が不要となり、薄くすることができるとともに、ロータ33への給電機構が不要になり、ブラシレス化を図れる。また、必要電圧−エレクトレット帯電電圧が実施際の給電電圧となるので、低電圧駆動を実現できる。このため、より小型化と軽量化を図ることができるとともに、高出力化を図ることができる。
さらに、エレクトレット化したパターン電極36を高電圧とすることで、印加電圧をより低減することができるので、高電圧を印加するための回路などが不要となり、省スペース、軽量化をより一層図ることができる。
第5、第6の実施形態に係る静電電動機では、固定子の個別電極数と移動子の個別電極数の比率を3:2あるいは3:4として、可動子側の電極ピッチを変更することで、静電電動機の出力を調整することができる。また、静電電動機の製造を考えると、電極ピッチを変更するよりも、パターン電極の積層枚数を必要な駆動トルクに応じて増減することで製造するのが現実的である。しかし、電極ピッチ(比率)だけを変更して出力を変更すると、積層する場合よりも容易に出力調整がし易くなる。静電電動機の駆動トルクを調整するためには、電極パターンの積層枚数と個別電極のピッチ(比率)の双方を変更して調整するようにしても良い。
また、固定子の個別電極数と移動子の個別電極数の比率を3:2とする場合、可動子の隣り合う電極の間隔を十分に維持して、電極間の放電を防止しながらも、可動子の電極に対する三相交流電極の極性切換えを行なうことで、固定側と可動側の電極間に作用する引力と斥力を調整しやすく、駆動力を調整しやすくなる。
さらに、固定子の個別電極数と移動子の個別電極数の比率を3:4とした場合、単位面積当たりの移動子の個別電極数を多くできるので、駆動力を得易くなるとともに、可動子が単相であって、斥力が弱い場合であっても駆動することができる。
1、10、30、 静電モータ(静電電動機)
2、12、22 ステータ(固定子)
3、13、33 ロータ(可動子)
5、15、25 パターン電極(固定子の複数の帯状電極)
6、16、26、36 パターン電極(可動子の複数の帯状電極))
20 静電電動機
23 可動子
特開平2−285978号公報 特開平4−112683号公報 特開平5−184162号公報
『DESIGN CONSIDERATION FOR A PRACTICAL ELECTRO STATIC MICRO MOTOR』Sensor and Actuators Vol.11,No2,pp189〜206 W.S.N.Trimmer,K.J.Gabriel

Claims (9)

  1. 互いに絶縁され、所定の方向でかつ所定の間隔を設けて配置された複数の帯状電極を有する固定子と、前記固定子に対向するように配置され、複数の帯状電極を有する可動子とを有し、前記固定子の帯状電極に電圧を印加し、前記固定子と前記可動子間に作用する静電気のクーロン力で前記移動子を移動せしめる静電電動機であって、
    前記可動子が単極であって、前記固定子の帯状電極と前記可動子の帯状電極の一部が重ならない静電電動機。
  2. 前記可動子の帯状電極は、前記固定子の帯状電極のパターンに対応した帯状パターン膜に電荷を注入したエレクトレットである請求項1記載の静電電動機。
  3. 前記固定子の帯状電極の数と前記可動子の帯状電極の数の比率がn:n±1(nは3以上の正の整数)である請求項1又は2に記載の静電電動機。
  4. 前記固定子の帯状電極の数と前記可動子の帯状電極の数の比率がn:(n−1)*2(nは3以上の正の整数)である請求項1又は2に記載の静電電動機。
  5. 前記固定子の帯状電極の数と前記可動子の帯状電極の数の比率が3:2である請求項1又は2に記載の静電電動機。
  6. 前記固定子の帯状電極に印加する電圧は、前記可動子の帯状電極との間に引力と斥力とが作用するように切り替えられる請求項5記載の静電電動機。
  7. 前記固定子の帯状電極の数と前記可動子の帯状電極の数の比率が3:4である請求項1又は2に記載の静電電動機。
  8. 前記固定子の帯状電極に印加する電圧は、前記可動子の帯状電極の数との間に引力が作用するように切り替えられる請求項7記載の静電電動機。
  9. 前記固定子及び前記可動子の対が、複数層積層されている請求項1乃至8の何れか1項に記載の静電電動機。
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